説明

移植機

【課題】植付対象物を1個づつ所定区画に投入する単調な操作によることなく、精神的負担の少ない投入作業形態を可能とする移植機を提供する。
【解決手段】移植機は、圃場走行可能な支持機台(2a)と、植付対象物を定位置搬送するための仕切板(11)によって上部開放の収容区画を形成した搬送ベルト(6)と、この搬送ベルト(6)の搬送端から受けた植付対象物を上下動作によって圃場に植付けする植付ホッパ(7)とから構成され、上記搬送ベルト(6)は、搬送端に及ぶ範囲の両側面に植付対象物を搬送案内する側板(12)を備え、その一側方に沿って植付対象物を受ける周壁付き保持部(13a)と、この周壁付き保持部(13a)から上記側板(12)の上端部に至る傾斜ガイド板(14a)とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行可能な支持機台に定位置搬送区画付きの搬送ベルトと植付ホッパとを備えて植付対象物を1個ずつ圃場に植付けする移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載のような移植機があるが、圃場走行可能な支持機台に仕切板による収容区画を形成した定位置搬送用の搬送ベルトと植付ホッパとを備えて構成され、搬送ベルトの各区画に植付対象物である球根芋類を1個ずつ収容して定位置搬送することにより、その搬送端位置から、順次、植付ホッパに渡され、植付ホッパが上下動作して植付対象物を圃場に植付けすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−25309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記移植機は、植付対象物を1個づつ搬送ベルトの区画に投入する単調な操作を常時必要とすることから、作業者に大きな精神的負担を強いることとなり、作業能率の点で問題があった。
【0005】
本発明の目的は、植付対象物を1個づつ所定区画に投入する単調な操作によることなく、精神的負担の少ない投入作業形態を可能とする移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場走行可能な支持機台と、植付対象物を定位置搬送するための仕切板によって上部開放の収容区画を形成した搬送ベルトと、この搬送ベルトの搬送端から受けた植付対象物を上下動作によって圃場に植付け動作する植付ホッパとからなる移植機において、上記搬送ベルトは、搬送端に及ぶ範囲の両側面に植付対象物を搬送案内する側板を備え、その一側方に沿って植付対象物を受ける周壁付き保持部と、この周壁付き保持部から上記側板の上端部に至る傾斜ガイド板とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記周壁付き保持部は、作業者によって散開投入された植付対象物を受け、この植付対象物は、作業者が傾斜ガイド板に沿って搬送ベルトまで手で押出し操作することにより、側板の上端部から搬送ベルトの収容区画に収容され、順次、植付ホッパによって植付けされる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記傾斜ガイド板は、周壁付き保持部から側板の上端部に至る案内溝を搬送ベルトの収容区画と対応して並列に形成してなることを特徴とする。
傾斜ガイド板は、周壁付き保持部の植付対象物を作業者が押出し操作することにより、案内溝に沿って植付対象物が側板の上端部に到達する。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、前記搬送ベルトは、その一側方の周壁付き保持部および傾斜ガイド板と同様に、他側方にも周壁付き保持部および傾斜ガイド板を備えることを特徴とする。
作業者の押出し操作の際に、1つの区画に複数の植付対象物が到達して溢れた場合は、同区画を通過して反対側の周壁付き保持部に散開保持される。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1の構成において、前記搬送ベルトと植付ホッパとの間に、受けた植付対象物を保持するホルダを設け、このホルダは、植付ホッパの上下動作と連動して開閉動作する底蓋を備えることを特徴とする。
上記ホルダは、植付ホッパの上下動作と連動して開閉動作することから、所定の開閉タイミングで植付対象物が植付ホッパに移行される。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1の構成において、前記搬送ベルトの近傍に、植付対象物を収容したコンテナを高さ調節可能に保持するコンテナ支持台を設け、このコンテナ支持台は、植付ホッパの植付け動作と連動して保持高さ位置を上昇する連動駆動機構を備えることを特徴とする。
上記コンテナ支持台は、連動駆動機構によりコンテナの保持高さが植付け動作と連動して上昇する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明は、搬送ベルトの側方に沿って周壁付き保持部と傾斜ガイド板とを備えたことから、周壁付き保持部の植付対象物は、作業者が傾斜ガイド板に沿って手で押出し操作することにより、側板の上端部から搬送ベルトの収容区画に収容され、順次、植付ホッパによって植付けされる。したがって、植付対象物を1個づつ収容区画に投入する単調な操作を要することなく、複数個の植付対象物の一括操作による搬送ベルトによる定位置搬送が可能となるので、簡易な間欠的操作によって精神的な負担が軽減され、植付け能率の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1の効果に加え、傾斜ガイド板に案内溝を形成したことから、周壁付き保持部の植付対象物を作業者が押出し操作することにより、案内溝に沿って植付対象物が側板の上端部に到達する。したがって、搬送ベルトの収容区画が溝位置と一致するタイミングで操作することにより、植付対象物が効率よく区画別に収容される。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1の効果に加え、搬送ベルトの両側方に周壁付き保持部および傾斜ガイド板を設けたことから、過剰な数量の植付対象物を周壁付き保持部から作業者の押出し操作した場合に、溢れた植付対象物は、同区画を通過して反対側の周壁付き保持部に散開保持される。したがって、逆方向の押出し操作によって搬送区画に収容されて定位置搬送が可能となることから、区画内の収容の有無を気にすることなく、間欠的な押出し操作によって処理することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1の効果に加え、植付ホッパと連動開閉するホルダを設けたことから、搬送ベルトからホルダに受けた植付対象物は、大きさ形状によることなく、所定の開閉タイミングで植付ホッパに移行されて確実に植付けすることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1の効果に加え、連動駆動機構によりコンテナ支持台が植付け動作とともにコンテナを上昇保持することから、上昇動作をコンテナの残留量の減少と対応させることにより、コンテナからの植付対象物の取出しに際して、その残留量の上端位置を一定の高さに維持することができるので、作業性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】発明適用構成例を示す移植機の側面図
【図2】植付部の拡大斜視図
【図3】搬送部の別の構成例の斜視図
【図4】コンテナ支持台の動作側面図(a,b)を付帯した要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明を適用した構成例を示す移植機の側面図である。
移植機1は、一体構成のエンジン2及び主伝動部2aと、機体前部を案内支持する左右の案内輪4,4と、左右の伝動支持部5a,5aを介して機体高さと左右高さを調整可能に駆動支持する左右の駆動輪5,5と、主伝動部2aの後部から一体的に延びるハンドルフレーム3と、その後端に一体形成した歩行操縦用の操縦ハンドル3aと、作業者が投入した植付対象物であるジャガイモ等の種芋を含む球根芋類を周回動作によって搬送する搬送ベルト6と、圃場に植付けするために昇降動作する觜型の植付ホッパ7と、作業座席8、コンテナ支持台9等から構成される。
【0019】
(搬送部)
搬送ベルト6は、植付部の拡大斜視図を図2に示すように、植付対象物を定位置搬送するための等間隔の仕切板11によって上部開放の収容区画を形成し、搬送線を機体の幅方向に配置し、その搬送端に及ぶ範囲の両側面に仕切板11と同等の高さの側板12,12を備え、その両側方に沿って植付対象物を散開状に受ける周壁付き保持部13a,13bと、この周壁付き保持部13a,13bから側板12,12の上端部に至る傾斜ガイド板14a,14bとを備える。
【0020】
搬送ベルト6の搬送端部は、植付対象物を植付ホッパ7まで案内するガイド板15で両側板12,12の間を覆い、その入口側に植付対象物をガイドするためのテーパ部15aを形成する。また、ベルトの張り側で搬送するべく搬送ベルト6の搬送端側の支軸16を主伝動部2aと一体構成の植付動部2bからギヤ伝動等の伝動系によって植付ホッパ7と連動して連続動作または間欠動作で周回駆動する。
【0021】
植付ホッパ7は、搬送ベルト6の搬送端の下方位置で、その各収容区画から落下する植付対象物を昇降動作ストロークの上端位置で受け、下端位置まで下降して畝土壌に突入しつつ下端部を開いて植付対象物を圃場に植付け、この昇降動作を搬送ベルト6の搬送動作と対応するように、植付伝動部2bにより機体走行と連動して駆動する。
【0022】
上記構成の移植機1は、作業者がコンテナから取出した植付対象物を一方の周壁付き保持部13aに散開投入し、傾斜ガイド板14aに沿って搬送ベルト6まで手で押出し操作することにより、側板12の上端部から搬送ベルト6の収容区画に植付対象物が収容され、定位置搬送により、順次、植付ホッパ7によって植付けされる。
【0023】
したがって、植付対象物を1個づつ収容区画に投入する単調な操作を要することなく、複数個の植付対象物の一括間欠的な操作による定位置搬送が可能となるので、簡易な間欠的作業によって精神的な負担が軽減され、植付け能率の向上を図ることができる。
【0024】
この場合において、作業者による押出し操作によって1つの区画に複数の植付対象物が到達すると、溢れた植付対象物は、同区画を通過して反対側の周壁付き保持部13bに散開保持されることから、逆方向の押出し操作により、同様に側板12の上端部から搬送ベルト6の収容区画に収容され、定位置搬送により、順次、植付ホッパ7によって植付けされるので、区画内の収容の有無を気にすることなく、簡易な押出し操作の繰返しによって処理することができる。
【0025】
(搬送部別例)
次に、搬送部の別の構成例について説明する。
搬送部の別の構成例は、図3の斜視図に示すように、傾斜ガイド板21a,21bは、周壁付き保持部13a,13bから側板12,12の上端部に至る案内溝T…を搬送ベルト6の収容区画と対応して並列して形成する。また、搬送ベルト6と植付ホッパ7との間に、植付対象物を保持するホルダ22を設ける。このホルダ22は、底蓋23をリターンスプリング付きの支軸23aに開放用のアーム23bを設けて開閉可能に構成し、また、植付ホッパ7には、その上昇端位置でアーム23bに干渉する作用部24を突設する。
【0026】
上記構成例の搬送部は、作業者が一方の周壁付き保持部13aから植付対象物を押出し操作することにより、傾斜ガイド板21aの案内溝Tに沿って側板12の上端部に到達する。したがって、搬送ベルト6の区画が溝位置と一致するタイミングで操作することにより、植付対象物が区画別に収容される。
【0027】
植付対象物が搬送ベルト6の搬送終端位置から落下するとホルダ22に保持され、このホルダ22まで植付ホッパ7が上昇した時点で作用部24が支軸23aのアーム23bに干渉することによって底蓋23が開放され、植付対象物が植付ホッパ7の中に落下する。したがって、底蓋開閉式のホルダ22により、植付対象物が大きさや形状によることなく、所定のタイミングで植付ホッパ7に移行されて確実に植付けすることができる。
【0028】
(コンテナ支持台)
コンテナ支持台は、その動作側面図(a,b)を付帯した要部斜視図を図4に示すように、コンテナCの持手穴に係合可能なフック31と受座32を高さ調節可能に2本のチェーン33,33によって支持し、作業座席8の左右位置に搬送ベルト6に近接して配置する。2本のチェーン33,33は、植付ホッパの植付け動作と連動して上昇動作するように、主伝動部2aから走行系と連動する連動駆動機構36によって駆動する。
【0029】
フック31は、図4(a)のトルクスプリング付きの支軸31aによる回動付勢構造によってコンテナCの持手穴との係合操作を容易にすることができる。また、図4(b)のコンテナCの傾斜による底上げ動作のために、2本のチェーン33,33の上部位置を傾斜し、上昇端位置にコンテナCのストッパ34を設けるとともに、スプロケット35,35の駆動軸35aにトルクリミッタとしてのクラッチ35bを介設する。この駆動軸35aを連動駆動機構36と連結する。
【0030】
上記構成のコンテナ支持台は、フック31によるコンテナCの保持高さが、連動駆動機構36により植付け動作と連動して上昇することから、コンテナCの残留量の減少と対応させることにより、コンテナCからの植付対象物の取出しに際して、その残留量の上端位置を一定の高さに維持することができるので、作業性を確保することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 移植機
2a 主伝動部(支持機台)
6 搬送ベルト
7 植付ホッパ
9 コンテナ支持台
11 仕切板
12 側板
13a 保持部
13b 保持部
14a 傾斜ガイド板
14b 傾斜ガイド板
21a 傾斜ガイド板
21b 傾斜ガイド板
22 ホルダ
23 底蓋
24 作用部
31 フック
33 チェーン
34 ストッパ
35b クラッチ
36 連動駆動機構
C コンテナ
T 案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場走行可能な支持機台(2a)と、植付対象物を定位置搬送するための仕切板(11)によって上部開放の収容区画を形成した搬送ベルト(6)と、この搬送ベルト(6)の搬送端から受けた植付対象物を上下動作によって圃場に植付け動作する植付ホッパ(7)とからなる移植機において、上記搬送ベルト(6)は、搬送端に及ぶ範囲の両側面に植付対象物を搬送案内する側板(12)を備え、その一側方に沿って植付対象物を受ける周壁付き保持部(13a)と、この周壁付き保持部(13a)から上記側板(12)の上端部に至る傾斜ガイド板(14a)とを備えることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記傾斜ガイド板(14a)は、周壁付き保持部(13a)から側板(12)の上端部に至る案内溝(T)を搬送ベルト(6)の収容区画と対応して並列に形成してなることを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記搬送ベルト(6)は、その一側方の周壁付き保持部(13a)および傾斜ガイド板(14a)と同様に、他側方にも周壁付き保持部(13b)および傾斜ガイド板(14b)を備えることを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項4】
前記搬送ベルト(6)と植付ホッパ(7)との間に、受けた植付対象物を保持するホルダ(22)を設け、このホルダ(22)は、植付ホッパ(7)の上下動作と連動して開閉動作する底蓋(23)を備えることを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項5】
前記搬送ベルト(6)の近傍に、植付対象物を収容したコンテナ(C)を高さ調節可能に保持するコンテナ支持台(9)を備え、このコンテナ支持台(9)は、植付ホッパ(7)の植付け動作と連動して保持高さ位置を上昇する連動駆動機構(36)を備えることを特徴とする請求項1記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−147361(P2011−147361A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9433(P2010−9433)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】