説明

移植機

【課題】線引きマーカの収納忘れを防止した移植機を提供する。
【解決手段】機体左側の線引きマーカは、作業機操作レバーが後方側に操作されることによって、収納姿勢と作業姿勢とに交互に切換わり(ステップS44〜S47)、機体右側の線引きマーカは、作業機操作レバーが前方側に操作されることによって、収納姿勢と作業姿勢とに交互に切換わる(ステップS48〜S51)。また、これら左右の線引きマーカは、マーカ自動スイッチが切操作されると、両上げ状態となり、マーカ自動スイッチが入操作されると、両上げ状態まえの姿勢に復帰する(ステップS52〜S54)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば田植機などの移植機に係り、詳しくは、機体外側に振出されて植付け次工程における走行予定線を線引きする線引きマーカの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圃場の未植付け側に振出されて植付け次工程における走行予定線を線引きする線引きマーカを備えた乗用型田植機が広く知られている。従来、このような線引きマーカを備えた乗用型田植機において、ステアリングハンドルの下方に設けられた操作レバー61によって、左右の線引きマーカ(マーカ)50の振出し設定をするものが案出されている(特許文献1参照)。このものは、苗植付装置10が下降した状態で、操作レバー61の一方側の操作で一方の線引きマーカ20を振出し、この一方の線引きマーカが振出された状態で操作レバー61を他方側に操作すると他方側の線引きマーカ20が振出されて両落ち状態となり、そして、この両落ち状態から再度、操作レバー61を他方側に操作すると一方側の線引きマーカ20が上昇するものも案出されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3633835号公報
【特許文献2】特開2007−306814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の田植機のように、操作レバー61の操作方向と、線引きマーカ20の振出し方向とを一致させると、操作性を向上させることができるが、メインスイッチ70を切ってしまうと、左右の線引きマーカ20が収納されずにその時の姿勢を維持したまま保持されてしまっていた。そのため、線引きマーカ20の収納を忘れた場合、再度、マーカ自動制御をオンにしてから収納操作を行う必要があると共に、このような左右の線引きマーカ20が共に収納された両上げ状態にしたい場合、いちいち操作レバー61によって設定しなければならず面倒であった。
【0005】
そこで、本発明は、マーカの振出しを行うかどうかを切換えるマーカ自動スイッチの切操作により、左右の線引きマーカを両上げ状態とし、該マーカ自動スイッチの入操作により、左右の線引きマーカを両上げ状態前の姿勢に復帰させるようにしたことによって、上記課題を解決した移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前後の走行輪(2,3)に支持された走行機体(5)と、該走行機体(5)の後方側で昇降自在に設けられた植付部(12)と、機体外側に振出されて植付け次工程における走行予定線を圃場に線引きする左右の線引きマーカ(20)と、前記線引きマーカ(20)の振出し設定を行うマーカ操作部材(25)と、該マーカ操作部材(25)の操作に基づいて前記線引きマーカ(20)を機体外側に振出された作業姿勢(図4の2点鎖線位置)にするか、機体側に収納された収納姿勢(図4の実線位置)にするか設定するマーカモード設定手段(40a)と、該マーカモード設定手段(40a)の設定に基づいて左右の前記線引きマーカ(20)の姿勢を切換えるマーカ出力手段(40b)と、を備えた移植機(1)において、
左右の前記線引きマーカ(20)の振出しを行うかどうかを切換えるマーカ自動スイッチ(55)を設け、
前記マーカモード設定手段(40a)が、
前記マーカ操作部材(25)の一方側の操作(例えば、前方側)により、該マーカ操作部材(25)の一方側の操作と対応する一方側の前記線引きマーカ(例えば、機体右側の線引きマーカ20)を、作業姿勢と収納姿勢とに交互に切換えると共に、前記マーカ操作部材(25)の他方側(例えば、後方側)の操作により、該マーカ操作部材(25)の他方側の操作と対応する他方側の前記線引きマーカ(例えば、機体左側の線引きマーカ20)を、作業姿勢と収納姿勢とに交互に切換える切換えモードと、
前記マーカ自動スイッチ(55)の切操作により左右の線引きマーカ(20)を共に収納姿勢にする両上げ状態にすると共に、この両上げ状態になる前の前記線引きマーカ(20)の姿勢を記憶し、前記マーカ自動スイッチ(55)の入操作によって、記憶された両上げ状態前の姿勢にする収納モードと、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によると、線引きマーカの振出しを行うかどうかを設定するマーカ自動スイッチに、線引きマーカを両上げ状態にする収納スイッチの機能を付加したことにより、線引きマーカの収納忘れがなくなると共に、両上げ状態にしたい場合には、上記マーカ自動スイッチを切操作することによって、容易に両上げ状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る乗用田植機の側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る乗用田植機の作業機操作レバーを示す模式図。
【図3】本発明の実施形態に係る乗用田植機の植付部の昇降操作部を示す側面図。
【図4】本発明の実施形態に係る線引きマーカを示す正面図。
【図5】本発明の実施形態に係る線引きマーカの取付け構造を示す側面図。
【図6】本発明の実施形態に係る線引きマーカの収納時のマーカモータユニットを示す側面図。
【図7】本発明の実施形態に係る線引きマーカの振出し時のマーカモータユニットを示す側面図。
【図8】本発明の実施形態に係る移植機の制御ブロック図。
【図9】本発明の実施形態に係る移植機の線引きマーカの振出しに関する制御のメインフローチャート。
【図10】本発明の実施形態に係る乗用田植機の作業機操作制御のメインフローチャート。
【図11】本発明の実施形態に係る乗用田植機のマーカモード制御のフローチャート。
【図12】本発明の実施形態に係る乗用田植機のマーカ出力制御のフローチャート。
【図13】本発明の実施形態に係る乗用田植機の植付け工程を示した工程図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明をする。図1に示すように、移植機としての乗用田植機1は、前輪(走行輪)2及び後輪(走行輪)3に支持された機体(走行機体)5を有しており、該機体5の前方には、センターポール6が設けられていると共に、ボンネット7に覆われたエンジンが搭載されている。ボンネット7の後方には、ステアリングハンドル9や、作業者が着座する運転座席10などが配設された運転操作部11が設けられていると共に、該運転座席10の後方側では、植付部12が昇降リンク機構14を介して昇降自在に機体5に連結されている。
【0011】
上記植付部12は、マット苗を載置する苗載せ台13と、該苗載せ台13から苗を掻きとって圃場に植付ける植付部12と、を有していると共に、その後端にてロータリケース16を回転自在に支持するプランタケース17の下方には、圃場を均すための複数のフロート19が設けられている。そして、これら複数のフロート19の内、1つは作業時に圃場面の状況に応じて植付部12を昇降制御し、植付け深さを調節するための感知フロートとなっている。
【0012】
また、植付部12の左右両側方には、圃場の未植付け側に振り出されて、植付け次工程における走行基準線を圃場に線引きする線引きマーカ20が設けられており、該線引きマーカ20は、マーカアーム22の先端に回転自在に支持されたマーカホイール21と、該マーカアーム21の振出及び収納を行うマーカモータユニット23と、を有して構成されている。
【0013】
一方、上記ステアリングハンドル9の下方側には、図2に示すように、中立位置に復帰付勢され上下方向及び前後方向に傾倒操作可能な作業機操作レバー25が設けられており、該作業機操作レバー(マーカ操作部材)25を上下に操作することによって、エンジンから植付部12への伝動系に介在し、その動力伝達を断接する植付クラッチの入切及び植付部12の昇降操作が可能になっている。
【0014】
具体的には、例えば、植付クラッチが接続(植付入)されている状態から作業機操作レバー25を上方に操作すると、植付クラッチが切断(植付切)され、この植付クラッチが切断されている状態から更に作業機操作レバー25を上方に操作すると、植付部12が上昇する。
【0015】
また、この植付クラッチが切断され、かつ植付部12が上昇している状態から作業機操作レバー25を下方に傾倒操作すると、植付クラッチが接続し、更にもう、一度作業機操作レバー25を下方に傾倒操作すると、作業機15が下降する。
【0016】
更に、植付部12が昇降作動中に、その昇降方向とは反対側に作業機操作レバー25を操作することで作業機15の昇降を停止させることもできる。
【0017】
一方、作業機操作レバー25は、前後方向に操作することによって、左右の線引きマーカ20を、起立した状態で機体側に収納された収納姿勢(図4実線位置)と、機体外側に振り出されて伸展した作業姿勢(図4二点鎖線位置)とに切換えることができるようにも構成されている。
【0018】
ついで、植付部12の昇降機構について説明をする。植付部12を昇降させる昇降リンク機構14の昇降シリンダ14a(図1参照)の伸縮は、図3に示すコントロールバルブ26によって制御され、該コントロールバルブ26は、側面視略矩形状の作動アーム27を有している。該作動アーム27の近傍には、上述した植付クラッチを断接するクラッチアーム29が設けられており、該クラッチアーム29及び上記コントロールバルブ26を作動させる作動アーム27は、作業機操作カム30によって連動して操作されるように構成されている。作業機操作カム30は、作業機操作カムモータ31によって回転駆動すると共に、その回動位置を作業機操作カムポテンショ32によって検出されている。
【0019】
即ち、上記作業機操作レバー25の上下方向への傾倒操作に応じて、作業機操作カム30を、植付クラッチが切断され、かつ植付部12が上昇位置となる上げポジションと、植付クラッチが切断され、かつ植付部12が停止状態となる固定ポジションと、植付クラッチが切断され、かつ植付部12が下降位置となる下げポジションと、植付クラッチが接続され、かつ植付部12が下降位置となる植付ポジションと、の何れかの位置に作業機操作カムモータ31によって設定することによって、上記植付部12の昇降及び植付クラッチの断接が操作されている。
【0020】
ついで、左右の線引きマーカ20の構成について基づいて詳しく説明をする。線引きマーカ20は、上述したマーカモータユニット23によって、収納姿勢と作業姿勢とに切換えられており、該マーカモータユニット23は、図5乃至図7に示すように、マーカモータ35と、該マーカモータ35の出力ギヤ35aと噛合するラック36と、ラック36の取付軸37に取付けられたマーカ保持部材39と、から構成されている。
【0021】
マーカアーム22の基端部22aは、上記取付軸37に回転自在に取付けられており、スプリング44によって作業姿勢側に付勢されていると共に、上記取付軸37に一体に設けられたマーカ保持部材39と当接することにより位置決めされている。
【0022】
このマーカアーム22は、マーカモータ35の回転がラック36を介して取付軸37に伝達され、マーカ保持部材39が該取付軸37と一体となって回転することによって、その位置を切換え可能になっている。
【0023】
また、図6及び図7に示すように、ラック36の上方側には、線引きマーカ20の収納姿勢を検出するマーカ収納検出スイッチ41が設けられていると共に、ラック36の下方側には、線引きマーカ20の振出姿勢を検出するマーカ振出検出スイッチ42が設けられており、マーカアーム22が上方に起立して収納された場合には、ラック36の上方カム部36aがマーカ収納検出スイッチ41と当接して、線引きマーカ20の収納姿勢が検出され(図6の状態)、マーカアーム22が振出されている場合にはラック36の下方カム部36bがマーカ振出検出スイッチ42に当接して、線引きマーカ20の振出姿勢が検出される(図7の状態)。
【0024】
ついで、移植機1の制御部40について説明をする。図8は、移植機1の制御ブロック図であり、制御部40の入力側には、上述した作業機操作レバー25の上方側への傾倒操作を検出する作業機操作スイッチ(上側)50a、作業機操作レバー25の下方側への傾倒操作を検出する作業機操作スイッチ(下側)50b、作業機操作レバー25の前方側への傾倒操作を検出するマーカ操作スイッチ(前側)51a、作業機操作レバー25の後方側への傾倒操作を検出するマーカ操作スイッチ(後側)51b、左右の線引きマーカ20それぞれについて設けられた、マーカ収納検出スイッチ41L,41R、マーカ振出検出スイッチ42L,42R及び作業機操作カムポテンショ32が接続されていると共に、植付部12への動力を断接する植付クラッチの入切操作を可能とする作業準備スイッチ53、線引きマーカの振出し操作を実行するかどうかを設定するマーカ自動スイッチ(収納スイッチ)、植付部12の高さ位置を検知するリフト角ポテンショ56などが接続されている。
【0025】
一方、制御部40の出力側には、上述した作業機操作カムモータ31、左右のマーカモータ35R,35Lなどが接続されている。
【0026】
また、制御部40は、作業機操作レバー25の前後操作に基づいて線引きマーカ20を作業姿勢にするか、収納姿勢にするか設定するマーカモード設定手段40aと、該マーカモード設定手段40aの設定に基づいて左右の線引きマーカ20の姿勢を切換えるマーカ出力手段40bとを有していると共に、リフト角ポテンショ56からの信号に基づいて植付部12の昇降高さを検知し、該植付部12が切換え基準位置(切換え高さ、所定の基準高さ)以上の上昇位置にあるか、切換え基準位置以下の下降位置にあるかを検出する昇降位置検出手段40cを有している。なお、切換え基準位置は、線引きマーカ20の振出しを実行するかどうかの基準となる振出し基準位置(振出し高さ)よりも上方側に設置されており、詳しくは後述する上方モードで設定操作を行っている際に、線引きマーカ20の振出しが実行されることが無いようになっている。
【0027】
ついで、上記線引きマーカ20の制御について、図9乃至図12に基づいて説明をする。図9は、線引きマーカ20の振出しに関するメインフローであり、上記制御部40は、作業中、線引きマーカ20の振出しに係り、作業機操作制御(ステップS2)、マーカモード制御(スッテプS3)、マーカ出力制御(ステップS4)の各制御を、この順番で繰り返し実行している。
【0028】
[作業機操作制御]
上記作業機操作制御は、作業機操作レバー25による植付部12の昇降に関する制御であり、図10に示すように、まず作業機操作レバー25が上方側又は下方側へ傾倒操作されたかを判断する(スッテプS10、S11)。そして、作業機操作レバー25が上方側へと操作された場合(ステップS11)、植付部12が、下降位置にあり植付けクラッチが接続されている植付状態であると(ステップS12,S13,S14)、制御部40は、作業機操作カムモータ31を作動させて作業機操作カム30を下降ポジションとし、植付クラッチを切断する。
【0029】
また、植付部12が下降動作中の場合には(ステップS16)、その下降動作を停止して植付部12の位置を固定し(ステップS17)、植付部12が植付けクラッチが切断された状態で下降位置にある下降状態の場合には(ステップS13、ステップS16)、植付部12を上昇させて上昇位置にする(ステップS18)。なお、植付部12が上昇位置にあるか、上昇動作中の場合には、植付部12はそのまま上昇位置となる(ステップS12)。
【0030】
一方、作業操作レバー25が下方側に操作された場合、まず、作業準備スイッチ53のオン・オフが判断され(ステップS20)、植付部12を植付状態にしても良いかどうかが判断される。そして、作業準備スイッチ53がオンされている場合に、植付部12が下降状態にあると(ステップS22,ステップS24)、制御部40は、作業機操作カムモータ31を作動させて作業機操作カム30を植付ポジションとし、植付クラッチを接続する(ステップS23,ステップS25)。
【0031】
また、植付部12が下降動作中の場合には、植付クラッチ入待ち状態とし(ステップS26,S31)、この植付部12の下降動作が停止してから(ステップS32)、植付クラッチを接続する(ステップS33)。
【0032】
更に、作業準備スイッチ53のオン・オフに係らず、植付部12が上昇動作中には(ステップS20,S28)、植付部12は、その上昇動作を停止してその位置で固定される(ステップS27)。
【0033】
また、作業準備スイッチ53がオフの場合には、植付クラッチを接続して植付部12の植付状態にできないため、植付部12が上昇動作をしていなければ、自動昇降制御の下降位置とされる(ステップS29,S30)。
【0034】
[マーカモード制御]
ついで、線引きマーカ20の振出し/収納を制御するマーカモード制御について説明をする。図11に示すように、マーカモード制御では、まず作業準備スイッチ53のオン・オフによって、植付作業が可能な状態か否かが判断される(ステップS40)。
【0035】
マーカモード設定手段40bは、作業準備スイッチ53がオンされかつ、マーカ自動スイッチ55がオンされて線引きマーカ20の自動制御が有効となっていると、オートマーカモードとなり、リフト角ポテンショ56に基づいて昇降位置検出手段40cが、植付部12が所定の切換え基準位置(切換え高さ)よりも低い下方位置(下降位置及び基準位置よりも下方における下降動作中)から、所定の切換え基準位置よりも高い上方位置(上昇位置及び植付部の上昇動作中)になったことを検知した際に(即ち、植付部12の昇降を検知すると)、植付けクラッチが接続されている場合、その度、線引きマーカ20の振出し方向を切換える(ステップS41〜S43,S44,S48,S56)。
【0036】
一方、上記オートマーカモードにおいて、作業機操作レバー25が前後に傾倒操作されたことが検出されると(ステップS44,S48)、マーカモード設定手段40bは、左右の線引きマーカ20の振出し設定を作業機操作レバー25の操作によって切換える切換えモードとなる。
【0037】
具体的に切換えモードにおいては、作業機操作レバー25の前方操作(例えば、一方側の操作)が機体右側の線引きマーカ20(例えば、作業機操作レバー25の一方側の操作に対応する一方側の線引きマーカ)の振出し及び収納の操作に割り当てあれ、作業機操作レバー25の後方操作(例えば、一方側の操作)が機体左側の線引きマーカ20(例えば、作業機操作レバー25の他方側の操作に対応する他方側の線引きマーカ)の振出し及び収納の操作に割当てられている。
【0038】
即ち、マーカモード設定手段40bは、切換えモードにおいて、作業機操作レバー25が後方側に操作されると、その操作の度に機体左側の線引きマーカ20の姿勢を、収納姿勢と作業姿勢とで交互に切換える(ステップS44〜S47)。また、切換えモードにおいて、作業機操作レバー25が前方側に操作されると、その操作の度に機体右側の線引きマーカ20の姿勢を、収納姿勢と作業姿勢とで交互に切換える(ステップS48〜S51)。
【0039】
ところで、作業中にマーカ自動スイッチ55が操作されると(ステップS52)、マーカモード設定手段40bは、収納モードとなり、線引きマーカ20の自動制御が行われている場合(ステップS53)、即ち、マーカモード設定手段40bが、上述したオートマーカモード、上方位置モードあるいは下方位置モードの場合には、現在(両上げ状態になる前)の左右の線引きマーカ20の姿勢を記憶すると共に、左右の線引きマーカ20を両上げ状態に設定する(切操作ステップS54)。
【0040】
一方、マーカ自動スイッチ55が操作された際に(ステップS52)、線引きマーカ20の自動制御が行われていない場合、即ち、マーカ自動スイッチ55によって、線引きマーカ20が両上げ状態に設定されている場合は、マーカモード設定手段40bは、記憶された両上げ状態前の姿勢に左右の線引きマーカ20の設定を復帰させる(入操作ステップS55)。
【0041】
即ち、マーカモード設定手段40bは、線引きマーカ20の自動制御を無効(オフ)にするマーカ自動スイッチ55の切操作により両上げ状態にすると共に、この両上げ状態になる前の前記線引きマーカ20の姿勢を記憶し、線引きマーカ20の自動制御を有効(オン)にするマーカ自動スイッチ55の入操作によって、記憶された両上げ状態前の姿勢にする。
【0042】
[マーカ出力制御]
ついで、マーカモード制御によって設定された線引きマーカ20の設定を実行するマーカ出力制御について説明をする。図12に示すように、マーカ出力制御は、まず、植付部12の高さが上述した振出し基準位置(マーカ振出し高さ)以下かどうか、即ち、植付部12が上述した該振出し基準位置以下の振出し可能高さ(振出し実行位置)にいるかどうかを判別する(ステップS70)。
【0043】
そして、マーカ出力手段40bは、植付部12が振出し可能高さにいる場合には、マーカモード設定手段40aに設定された線引きマーカ20の振出し設定に基づいて、左右のマーカモータ35L,35Rに電気信号を出力する。
【0044】
具体的には、マーカモード設定手段40aによって機体右側の線引きマーカ20の振出しが設定されると、機体右側のマーカ振出検出スイッチ42Rがオンされるまで、マーカモータ(右)35Rを駆動させて機体右側の線引きマーカ20を作業姿勢にする(ステップS77〜S80)。
【0045】
また、マーカモード設定手段40aによって機体右側の線引きマーカ20の収納が設定されると、機体右側のマーカ収納検出スイッチ41Rがオンされるまで、マーカモータ(右)35Rを駆動させて機体右側の線引きマーカ20を収納姿勢にする(ステップS85〜S88)。
【0046】
一方、機体左側の線引きマーカ20についても同様に、マーカモード設定手段40aによって機体左側の線引きマーカ20の振出しが設定されると、機体左側のマーカ振出検出スイッチ42Lがオンされるまで、マーカモータ(左)35Lを駆動させて機体左側の線引きマーカ20を作業姿勢にする(ステップS81〜S84)。
【0047】
また、マーカモード設定手段40aによって機体左側の線引きマーカ20の収納が設定されると、機体左側のマーカ収納検出スイッチ41Lがオンされるまで、マーカモータ(左)35Lを駆動させて機体左側の線引きマーカ20を収納姿勢にする(ステップS89〜S92)。
【0048】
また、植付部12が振出し基準位置よりも高い場合、即ち、該振出し基準位置よりも高い振出し待機高さ(振出し待機位置)にある場合には、マーカ出力手段40bは、左右のマーカ収納検出スイッチ41L,41Rがオンされているかどうかを検出し、マーカ収納検出スイッチ41L,41Rがオンされていない場合には、オンされていない側のマーカモータ35L,35Rを駆動させて、線引きマーカ20を収納姿勢とする(ステップS70〜S74)。言い換えると、マーカ出力手段40bは、植付部12が上方位置にある際には、左右の線引きマーカ20を収納姿勢とした両上げ状態にする。
【0049】
ついで、実際の圃場上での動作について説明をする。
【0050】
作業者は、植付作業を開始するにあたって機体5に乗り込んでエンジンをスタートさせると、圃場の入口から入り、入口とは対角位置から植付け作業を開始する。
【0051】
作業者は、植付け作業を開始するにあたって、1条分だけ圃場際から離れた位置を作業開始位置に設定すると共に、植付部12を上昇させて、線引きマーカ20の振出し設定を行う。この振出し設定を行う際に、作業者は、まず、植付け次工程で振出しを行いたい線引きマーカ20(図13においては機体左側の線引きマーカ20)を振出すように、作業機操作レバー25を後方側に傾倒操作すると共に、その後、作業機操作レバー25を前方側に傾倒操作して、両落ち状態を設定する。
【0052】
そして、この線引きマーカ20の設定が終わると、作業機操作レバー25を下方側に操作して、植付部12を下降させると共に、機体5の両側に左右の線引きマーカ20で走行予定線を線引きしながら、植付け作業を行う(工程1)。
【0053】
作業者は、田植機1が反対側の圃場端まで来ると旋回する。すると自動的に植付部12が上昇すると共に、左右の線引きマーカ20が一旦、収納される。旋回が終わり、作業者が作業機操作レバー25を下方側に操作して植付部12を下降させると、先に振出し設定された左側の線引きマーカ20が振出される。そして、その後、旋回の度に自動的に左右の線引きマーカ20の振出し方向を切換えて、圃場の未植付け側に走行予定線を線引きしながら、植付作業を進行する。
【0054】
ところで、例えば図13の地点Aのように、植付け作業の途中で苗載せ台13に苗を補給する場合、作業者は、植付部12を上昇させる。苗の補給が完了して、植付部12を下降させると、線引きマーカ20の振出し方向が切換わって、機体右側の線引きマーカ20が振出されるため、作業者は、作業機操作レバー25を後方側に傾倒操作して、機体右側の線引きマーカ20を振出すと共に、作業機操作レバー25を前方側に傾倒操作して、機体左側の線引きマーカ20を収納し、植付作業を続行する。
【0055】
植付作業が進行して、図13の地点Bのように、最終植付け工程の1つ前の植付けが終了すると、作業者は、旋回する前にマーカ自動スイッチ55を押操作して左右の線引きマーカを両上げ状態にし、圃場端に苗を植付けて行く。
【0056】
この最終植付け工程が終了すると、作業者は、線引きマーカ20を両上げ状態にしたまま代掻き部を走行しながら植付けを行い(工程2)、反対側の圃場端まで来ると、最初に引いておいた走行予定線を目安として植付けを行いながら走行する(工程3)。
【0057】
そして、再度、反対側の代掻き部分に苗を植付けながら走行し、圃場の入口から圃場外へと出る。
【0058】
上述したように、線引きマーカ20の振出しを行うかどうかを設定するマーカ自動スイッチ55に、線引きマーカ20を両上げ状態にする収納スイッチの機能を付加したことにより、線引きマーカ20の収納忘れがなくなると共に、両上げ状態にしたい場合には、上記マーカ自動スイッチ55を切操作することによって、容易に両上げ状態にすることができる。また、作業機操作レバー25の操作方向と、左右の線引きマーカ20の操作方向とが固定されているため、作業者は、自己の感覚に従って、容易に線引きマーカ20を操作することができる。
【0059】
なお、上記線引きマーカ20は、スイッチなどによって切換えられても良い。また、本実施形態では、乗用型田植機について説明したが、歩行型の田植機など、本発明は、どのような移植機に適用しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 移植機(乗用型田植機)
2 走行輪(前輪)
3 走行輪(後輪)
5 走行機体
12 植付部
20 線引きマーカ
25 マーカ操作部材(作業機操作レバー)
40a マーカモード設定手段
40b マーカ出力手段
55 マーカ自動スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の走行輪に支持された走行機体と、該走行機体の後方側で昇降自在に設けられた植付部と、機体外側に振出されて植付け次工程における走行予定線を圃場に線引きする左右の線引きマーカと、前記線引きマーカの振出し設定を行うマーカ操作部材と、該マーカ操作部材の操作に基づいて前記線引きマーカを機体外側に振出された作業姿勢にするか、機体側に収納された収納姿勢にするか設定するマーカモード設定手段と、該マーカモード設定手段の設定に基づいて左右の前記線引きマーカの姿勢を切換えるマーカ出力手段と、を備えた移植機において、
左右の前記線引きマーカの振出しを行うかどうかを切換えるマーカ自動スイッチを設け、
前記マーカモード設定手段が、
前記マーカ操作部材の一方側の操作により、該マーカ操作部材の一方側の操作と対応する一方側の前記線引きマーカを、作業姿勢と収納姿勢とに交互に切換えると共に、前記マーカ操作部材の他方側の操作により、該マーカ操作部材の他方側の操作と対応する他方側の前記線引きマーカを、作業姿勢と収納姿勢とに交互に切換える切換えモードと、
前記マーカ自動スイッチの切操作により左右の線引きマーカを共に収納姿勢にする両上げ状態にすると共に、この両上げ状態になる前の前記線引きマーカの姿勢を記憶し、前記マーカ自動スイッチの入操作によって、記憶された両上げ状態前の姿勢にする収納モードと、を有する、
ことを特徴とする移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−200207(P2011−200207A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73398(P2010−73398)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】