説明

移植機

【課題】非植付走行時に植付クラッチ入れ忘れ警報を行ってオペレータに不快感を与えるという問題を解決する。
【解決手段】走行機体1の後部に昇降自在に連結され、下降接地状態で植付作業を行う植付作業機3と、植付作業機3の植付動力を入り/切りする植付クラッチ21と、植付作業機3から左右外方に選択的に振り出されて次行程に走行基準線を引く左右一対のマーカ33L、33Rと、植付作業機3の下降時にマーカ33L、33Rを自動的に振り出すマーカ自動制御手段(制御部35)とを備える乗用型田植機において、植付クラッチ21を入れ忘れた状態で植付走行を開始した、または、開始する可能性があると判断したとき、所定の警報を行う植付クラッチ入れ忘れ警報手段(制御部35の警報制御)を備えると共に、マーカ自動制御がOFFのときは、植付クラッチ入れ忘れ警報手段による警報を行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機などの移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後部に植付作業機を連結してなる乗用型田植機などの移植機が知られている。この種の移植機で植付作業を行う場合は、植付作業機の下降操作と、植付クラッチの入り操作と、走行機体の植付走行操作(走行開始操作又は枕地旋回後の直進走行操作)とが要求されるが、植付クラッチを入れ忘れた状態で植付走行を開始する可能性があった。
【0003】
そこで、従来においては、植付クラッチの入り/切り状態や植付作業機の昇降状態を表示するものや(例えば、特許文献1参照)、植付クラッチを入れ忘れた状態で植付走行を開始したと判断したとき、所定の警報を行うもの(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−88215号公報
【特許文献2】実全昭62−134316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、植付クラッチの入れ忘れ警報を行うにあたり、植付作業機の昇降状態と、植付クラッチの入り/切り状態にもとづいて植付クラッチの入れ忘れを判断していたので、植付クラッチを切ったまま植付作業機を下降させて行う非植付走行時(例えば、整地作業走行時、畔際移動走行時など)にも警報を行い、オペレータに不快感を与える可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、走行機体の後部に昇降自在に連結され、下降接地状態で植付作業を行う植付作業機と、植付作業機の植付動力を入り/切りする植付クラッチと、植付作業機から左右外方に選択的に振り出されて次行程に走行基準線を引く左右一対のマーカと、植付作業機の下降時にマーカを自動的に振り出すマーカ自動制御手段とを備える移植機において、前記植付クラッチを入れ忘れた状態で植付走行を開始した、または、開始する可能性があると判断したとき、所定の警報を行う植付クラッチ入れ忘れ警報手段を備えると共に、マーカ自動制御がOFFのときは、植付クラッチ入れ忘れ警報手段による警報を行わないことを特徴とする。
また、前記植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のまま植付走行を開始したとき、所定の警報を行うことを特徴とする。
また、前記植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のとき、所定の警報を行うことを特徴とする。
また、前記植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のとき、視覚的な警報を行い、さらに、植付クラッチが切り状態のまま植付走行を開始したとき、聴覚的な警報を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、通常、植付走行時に実行されるマーカ自動制御がOFFのときは、植付クラッチ入れ忘れ警報手段による警報を行わないようにしたので、非植付走行時に植付クラッチ入れ忘れ警報を行ってオペレータに不快感を与えるという問題を解決することができる。
また、請求項2の発明によれば、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のまま植付走行を開始したとき、所定の警報を行うようにしたので、未植えの発生を確実に報知することができる。
また、請求項3の発明によれば、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のとき、所定の警報を行うようにしたので、植付走行を開始する前の段階で未植えの発生を事前に警告することができる。
また、請求項4の発明によれば、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のとき、視覚的な警報を行い、さらに、植付クラッチが切り状態のまま植付走行を開始したとき、聴覚的な警報を行うようにしたので、植付走行を開始する前の段階で未植えの発生を事前に警告することができるだけでなく、未植えが発生した場合も確実に報知することができる。しかも、未植えの事前警告は、視覚的な警報によって行われるので、オペレータに不快感を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の動力伝達経路を示す説明図である。
【図3】作業機操作カムを示す側面図である。
【図4】マーカを示す植付作業機の要部正面図である。
【図5】植付走行経路を示す説明図である。
【図6】操作パネルの正面図である。
【図7】作業機操作具の斜視図である。
【図8】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図9】メインルーチンを示すフローチャートである。
【図10】作業機操作制御を示すフローチャートである。
【図11】マーカモード制御を示すフローチャートである。
【図12】警報制御を示すフローチャートである。
【図13】警報制御の他例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は乗用型田植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付作業機3が連結されている。植付作業機3は、下降接地状態で植付作業を行うように構成されており、走行機体1と昇降リンク機構2との間に介設されるリフトシリンダ4の伸縮に応じて昇降するようになっている。また、本実施形態の植付作業機3は、前端部にロータ式の整地装置3aを備えており、植付走行中や非植付走行中に整地作業を行うことができるようになっている。
【0010】
走行機体1は、エンジン5が搭載されるエンジン搭載部6、エンジン動力を変速するミッションケース7、オペレータが乗車する操作部8、操舵輪及び駆動輪を兼ねる前輪9、駆動輪である後輪10などを備える乗用型の四輪車両であり、操作部8には、運転座席11や操作パネル12が設けられている。
【0011】
図2に示すように、エンジン5の動力は、ベルトテンション方式のクラッチ機構13を介して、HST(静油圧式無段変速装置)からなる主変速機構14に入力される。主変速機構14に入力されたエンジン動力は、主変速機構14内で無段変速され、ミッションケース7に入力される。
【0012】
ミッションケース7内には、入力軸15、植付伝動軸16、走行伝動軸17などの伝動軸が設けられている。主変速機構14から入力軸15に入力された動力は、株間変速機構19を介して植付伝動軸16に伝動されると共に、トルクリミッタ20及び植付クラッチ21を介して、植付伝動軸16から植付PTO軸22に伝動される。そして、植付PTO軸22から取り出される動力は、ミッションケース7外の伝動機構を経由して植付作業機3に伝動される。
【0013】
また、主変速機構14から入力軸15に入力された動力は、副変速機構23を介して走行伝動軸17に伝動される。走行伝動軸17に伝動された動力は、前輪差動機構24を介して左右の前輪駆動軸25L、25Rに伝動されると共に、走行PTO軸26に伝動される。そして、走行PTO軸26から取り出される動力は、ミッションケース7外の伝動機構を経由してリヤアクスルケース27及び整地装置3aに伝動される。
【0014】
リヤアクスルケース27は、左右の後輪11に動力を伝動する左右の後輪動力伝動経路と、各後輪動力伝動経路に介設される左右のサイドクラッチ28L、28Rとを備えており、機体旋回時に旋回内側のサイドクラッチ28L、28Rを切ることにより小回り旋回が可能になる。尚、サイドクラッチ28L、28Rの下流には、後輪11の回転を検出する後輪回転センサ29L、29Rが設けられており、これらの後輪回転センサ29L、29Rが検出する後輪回転にもとづいて、走行機体1の走行状態(直進状態、旋回状態、停止状態など)を判断することが可能になる。
【0015】
図3に示すように、走行機体1には、リフトシリンダ用油圧バルブ30及び植付クラッチ21に連繋される作業機操作カム31が設けられている。作業機操作カム31は、「上昇」、「固定」、「自動昇降(下降)」、「植付」の4つのポジションを有し、作業機操作カムモータ32によってポジションが切換えられる。そして、「上昇」ポジションでは、リフトシリンダ用油圧バルブ30が上昇位置、植付クラッチ21が切り状態となり、「固定」ポジションでは、リフトシリンダ用油圧バルブ30が停止状態、植付クラッチ21が切り状態となり、「自動昇降(下降)」ポジションでは、リフトシリンダ用油圧バルブ30が自動位置(感知フロートFの上下動に応じて自動的に昇降制御を行う位置。ただし、作業機上昇時は感知フロートFが下がっているため、下降位置として使用。)、植付クラッチ21が切り状態となり、「植付」ポジションでは、リフトシリンダ用油圧バルブ30が自動位置、植付けクラッチ21が入り状態となる。
【0016】
図4及び図5に示すように、植付作業機3の左右両側には、次行程に走行基準線を引くためのマーカ33L、33Rが設けられている。各マーカ33L、33Rは、左右側方に振り出されて走行基準線を引く振出姿勢と、植付作業機3の側部に沿って起立する収納姿勢とに回動変姿自在に構成されている。本実施形態のマーカ33L、33Rは、それぞれマーカモータ34L、34Rの動力で独立的に回動変姿されるようになっており、マーカモータ34L、34Rの駆動制御にもとづいて様々なマーカ状態を現出させることができるようになっている。例えば、図5に示すように、左右いずれかのマーカ33L、33Rを選択的に振り出して機体一側方に走行基準線を引くマーカ片落ち状態、左右のマーカ33L、33Rを振り出して機体両側方に走行基準線を引くマーカ両落ち状態、左右のマーカ33L、33Rを収納したマーカ収納状態などを現出することができる。
【0017】
マーカモータ34L、34Rは、後述する制御部35によって駆動制御されるようになっている。制御部35は、植付作業機3の下降時にマーカ33L、33Rを自動的に振り出すマーカ自動制御手段を備えており、マーカ自動制御がONの状態では、植付作業機3が下降する毎にマーカ33L、33Rの振出方向が自動的に左右反転されるようになっている。尚、マーカ自動制御は、通常、枕地(旋回スペース)に植え付けを行う回り植え時や、植付クラッチ21を切ったまま植付作業機3を下降させて行う非植付走行時(例えば、整地作業走行時、畔際移動走行時など)にはOFFとする。
【0018】
図6に示すように、操作パネル12には、作業準備スイッチ36、マーカ自動スイッチ37、警報停止スイッチ38、作業機操作具39の上方操作に応じてONする上側作業機操作スイッチ40、作業機操作具39の下方操作に応じてONする下側作業機操作スイッチ41、作業機操作具39の前方操作に応じてONする前側マーカ操作スイッチ42、作業機操作具39の後方操作に応じてONする後側マーカ操作スイッチ43などが配置されている。これらのスイッチ36〜43は、制御部35に電気的に接続されており、制御部35の制御処理にもとづいて、以下に示すような操作機能が付与される。
【0019】
作業準備スイッチ36は、植付作業時にON操作される操作スイッチであり、そのON/OFFにもとづいて作業状態が判断される。マーカ自動スイッチ37は、マーカ自動制御をON/OFFするための操作スイッチであり、操作毎にマーカ自動制御のON/OFF状態が反転される。警報停止スイッチ38は、各種の警報を停止するための操作スイッチであり、本実施形態では、後述する植付クラッチ入れ忘れ警報の停止操作に用いられる。前側マーカ操作スイッチ42及び後側マーカ操作スイッチ43は、左右のマーカ33L、33Rの振り出しや収納を行うための操作スイッチであり、各マーカ操作スイッチ42、43の操作に応じたマーカ動作は、現在のマーカ状態や植付作業機3の高さにもとづいて切り換えられる。
【0020】
上側作業機操作スイッチ40は、植付作業機3の上昇操作、植付作業機3の下降停止操作、植付クラッチ21の切り操作に兼用される操作スイッチである。つまり、制御部35は、上側作業機操作スイッチ40の操作時に、植付作業機3が植付状態の場合は植付クラッチ21を切り動作させ、植付クラッチ21が切り状態で、かつ、植付作業機3が下降接地状態の場合は植付作業機3を上昇動作させ、植付作業機3が下降動作中の場合は植付作業機3の下降動作を停止させる。
【0021】
下側作業機操作スイッチ41は、植付作業機3の下降操作、植付作業機3の上昇停止操作、植付クラッチ21の入り操作に兼用される操作スイッチである。つまり、制御部35は、下側作業機操作スイッチ41の操作時に、植付作業機3が上方で停止している場合は植付作業機3を下降動作させ、植付作業機3が上昇動作中の場合は植付作業機3の上昇動作を停止させ、植付作業機3が下降接地状態の場合は植付クラッチ21を入り動作させる。ただし、本実施形態では、作業準備スイッチ36のON/OFFに応じて、下側作業機操作スイッチ41の操作機能が切換えられる。
【0022】
次に、制御部35の接続構成及び制御動作について説明する。制御部35は、マイコン(CPU、ROM、RAM、I/Oなどを含む。)を用いて構成され、その入力側には、前述した左側後輪回転センサ29L、右側後輪回転センサ29R、作業準備スイッチ36、マーカ自動スイッチ37、警報停止スイッチ38、上側作業機操作スイッチ40、下側作業機操作スイッチ41、前側マーカ操作スイッチ42、後側マーカ操作スイッチ43の他に、作業機操作カム31の位置を検出する作業機操作カムポテンショ44、左側マーカ33Lの収納を検出する左側マーカ収納検出スイッチ45L、右側マーカ33Rの収納を検出する右側マーカ収納検出スイッチ45R、左側マーカ33Lの振出を検出する左側マーカ振出検出スイッチ46L、右側マーカ33Rの振出を検出する右側マーカ振出検出スイッチ46R、植付作業機3の昇降高さを検出するリフト角ポテンショ47などが接続されている。
【0023】
また、制御部35の出力側には、前述した作業機操作カムモータ32、左側マーカモータ34L、右側マーカモータ34Rの他に、植付クラッチ21の状態を表示する植付クラッチモニタ48、左側マーカ33Lの状態を表示する左側マーカモニタ49L、右側マーカ33Rの状態を表示する右側マーカモニタ49R、警報音を出力する警報ブザー50などが接続されている。そして、制御部35は、予めROMに格納されているプログラムに従い、作業機操作制御、マーカモード制御、マーカ出力制御、警報制御などを行うようになっている。
【0024】
警報制御は、植付クラッチ21を入れ忘れた状態で植付走行を開始した、または、開始する可能性があると判断したとき、所定の警報を行う植付クラッチ入れ忘れ警報手段を構成している。従来の植付クラッチ入れ忘れ警報手段によれば、植付クラッチ21を切ったまま植付作業機3を下降させて行う非植付走行時(例えば、整地作業走行時、畔際移動走行時など)にも警報が行われるので、オペレータに不快感を与える可能性があったが、本発明によれば、このような問題を解決することができる。つまり、本発明の実施形態に係る植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、植付走行時に実行されるマーカ自動制御がOFFのとき、警報を行わないようにしてある。このようにすると、非植付走行時に植付クラッチ入れ忘れ警報を行ってオペレータに不快感を与えるという問題を解決することができる。
【0025】
植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のまま植付走行を開始したとき、所定の警報を行うことが好ましい。このようにすると、未植えの発生を確実に報知することができる。
【0026】
また、植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のとき、所定の警報を行うことが好ましい。このようにすると、植付走行を開始する前の段階で未植えの発生を事前に警告することができる。
【0027】
さらに、植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のとき、視覚的な警報を行い、さらに、植付クラッチ21が切り状態のまま植付走行を開始したとき、聴覚的な警報を行うことが好ましい。例えば、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のとき、植付クラッチモニタ48の点滅によって視覚的な警報を行い、さらに、植付クラッチ21が切り状態のまま植付走行を開始したとき、警報ブザー50によって聴覚的な警報を行う。このようにすると、植付走行を開始する前の段階で未植えの発生を事前に警告することができるだけでなく、未植えが発生した場合も確実に報知することができる。しかも、未植えの事前警告は、視覚的な警報によって行われるので、オペレータに不快感を与えることもない。
【0028】
次に、上記の警報制御を含む制御部35の処理手順について、図9〜図12を参照して説明する。尚、以下の説明において、植付作業機3の状態判断のうち、「上昇」、「固定」、「自動昇降(下降)」及び「植付」は、作業機操作カム31の検出位置にもとづいて判断でき、「下降動作停止」は、リフト角ポテンショ47の検出高さにもとづいて判断することができる。また、マーカ出力制御は、マーカモード制御で設定されたマーカモード(マーカ動作設定フラグ)に従って実際にマーカモータ34L、34Rを駆動制御する一般的な処理手順を適用しているので、フローチャートの図示及び説明は省略する。
【0029】
図9は、制御部35のメインルーチンを示しており、該メインルーチンでは、作業機操作制御、マーカモード制御、マーカ出力制御及び警報制御が繰り返し実行される。
【0030】
図10は、作業機操作制御の制御手順を示しており、該作業機操作制御では、まず、作業機操作具39の下方操作及び上方操作を判断する(S101、S102)。ここで、作業機操作具39の下方操作があったと判断した場合は、続いて作業準備スイッチ36のON/OFFを判断する(S103)。この判断結果がONの場合は、植付作業機3の状態を判断し(S104〜S106)、ここで植付作業機3の状態が「上昇」の場合は、作業機操作カム31を「固定」ポジションに切換え(S107)、植付作業機3の上昇動作を停止させる。また、植付作業機3の状態が「自動昇降(下降)」の場合は、「下降動作停止」状態であるか否かを判断し(S108)、この判断結果がNOの場合は、「植付クラッチ入り待ち状態」とする一方(S109)、判断結果がYESの場合は、作業機操作カム31を「植付」ポジションに切換えて植付クラッチ21を入りにすると共に(S110)、植付クラッチフラグをONにする(S111)。また、植付作業機3の状態が「上昇」、「自動昇降(下降)」、「植付」のいずれにも該当しない場合も、作業機操作カム31を「植付」ポジションに切換えて植付クラッチ21を入りにすると共に(S112)、植付クラッチフラグをONにする(S113)。
【0031】
また、ステップS103の判断結果がOFFの場合も、植付作業機3の状態を判断し(S114、S115)、ここで植付作業機3の状態が「上昇」の場合は、作業機操作カム31を「固定」ポジションに切換え(S107)、植付作業機3の上昇動作を停止させる。また、植付作業機3の状態が「上昇」、「自動昇降(下降)」のいずれにも該当しない場合は、作業機操作カム31を「自動昇降(下降)」ポジションに切換える(S116)。
【0032】
一方、作業機操作具39の上方操作があったと判断した場合は、植付作業機3の状態を判断し(S117〜S119)、ここで植付作業機3の状態が「自動昇降(下降)」の場合は、作業機操作カム31を「上昇」ポジションに切換え(S120)、植付作業機3を上昇させる。また、植付作業機3の状態が「植付」の場合は、作業機操作カム31を「自動昇降(下降)」ポジションに切換えて植付クラッチ21を切りにすると共に(S121)、植付クラッチフラグをOFFにする(S122)。また、植付作業機3の状態が「上昇」、「自動昇降(下降)」、「植付」のいずれにも該当しない場合は、「下降動作停止」状態であるか否かを判断し(S123)、該判断結果がYESの場合は、作業機操作カム31を「上昇」ポジションに切換え(S120)、植付作業機3を上昇させる一方、判断結果がNOの場合は、作業機操作カム31を「固定」ポジションに切換え(S124)、植付作業機3の昇降動作を停止させる。
【0033】
また、作業機操作具39の上方操作及び下方操作がない状態では、「植付クラッチ入り待ち状態」であるか否かを判断すると共に(S125)、植付作業機3が「下降動作停止」状態であるか否かを判断する(S126)。そして、両者の判断結果がYESの場合は、作業機操作カム31を「植付」ポジションに切換えて植付クラッチ21を入りにすると共に(S127)、植付クラッチフラグをONにする(S128)。
【0034】
図11は、マーカモード制御の処理手順を示しており、該マーカモード制御では、まず、作業準備スイッチ36のON/OFFを判断し(S201)、この判断結果がYESの場合は、マーカ自動制御に係るマーカ振出方向の反転処理を行う。具体的には、植付作業機3が所定のマーカ切換え高さ以上であって、かつ、マーカモードが「自動ON」であるか否かを判断し(S202)、該判断結果がYESの場合は、植付クラッチフラグがONであるか否かを判断する(S203)。そして、この判断結果がYESの場合は、マーカ振出方向を反転してマーカモードにセットすると共に、植付クラッチフラグをクリアする(S204)。
【0035】
次に、マーカモード制御においては、作業機操作具39(前側マーカ操作スイッチ42、後側マーカ操作スイッチ43)の操作に応じたマーカ33L、33Rの振出/収納処理を行う。本実施形態では、植付作業機3が下降状態であっても、作業機操作具39の操作にもとづいて左右のマーカ33L、33Rを任意に振出/収納することが可能となっている。例えば、左右のマーカ33L、33Rがいずれも収納状態である場合は、作業機操作具39の左側マーカ振出操作(例えば、前方操作)に応じて左側マーカ33Lを振り出す一方、作業機操作具39の右側マーカ振出操作(例えば、後方操作)に応じて右側マーカ33Rを振り出す。また、左右いずれかのマーカ33L、33Rが振出状態である場合は、作業機操作具39の逆側マーカ振出操作に応じて振出状態のマーカ33L、33Rを収納すると共に、逆側のマーカ33L、33Rを振り出す。
【0036】
また、植付作業機3が上昇状態の場合も、作業機下降時に振り出すマーカ33L、33Rを任意に設定することが可能となっている。例えば、作業機下降時に左右のマーカ33L、33Rを振り出さない設定となっている場合は、作業機操作具39の左側マーカ振出操作に応じて作業機下降時に左側マーカ33Lを振り出す設定とする一方、作業機操作具39の右側マーカ振出操作に応じて作業機下降時に右側マーカ33Rを振り出す設定とする。また、作業機下降時に左右いずれかのマーカ33L、33Rを振り出す設定となっている場合は、作業機操作具39の逆側マーカ振出操作に応じて作業機下降時に左右両側のマーカ33L、33Rを振り出す設定とする。また、作業機下降時に左右両側のマーカ33L、33Rを振り出す設定となっている場合は、作業機操作具39の左側マーカ振出操作に応じて作業機下降時に左側マーカ33Lのみを振り出す設定とする一方、作業機操作具39の右側マーカ振出操作に応じて作業機下降時に右側マーカ33Rのみを振り出す設定とする。
【0037】
具体的には、作業機操作具39の左側マーカ振出操作を判断し(S205)、該判断結果がYESの場合は、植付作業機3が所定のマーカ切換え高さ以上であるか否かを判断する(S206)。この判断結果がNOの場合は、マーカモードに「右収納」と「左振出」をセットする(S207、S208)。また、ステップS206の判断結果がYESの場合は、マーカモードが「右振出」であるか否かを判断すると共に(S209)、マーカモードが「左振出」であるか否かを判断する(S210)。そして、「右振出」と「左振出」が両方セットされている場合は、マーカモードに「右収納」と「左振出」をセットし(S207、S208)、それ以外の場合は、マーカモードに「左振出」のみをセットする(S208)。
【0038】
一方、ステップS205の判断結果がNOの場合は、作業機操作具39の右側マーカ振出操作を判断し(S211)、該判断結果がYESの場合は、植付作業機3が所定のマーカ切換え高さ以上であるか否かを判断する(S212)。この判断結果がNOの場合は、マーカモードに「左収納」と「右振出」をセットする(S213、S214)。また、ステップS212の判断結果がYESの場合は、マーカモードが「左振出」であるか否かを判断すると共に(S215)、マーカモードが「右振出」であるか否かを判断する(S216)。そして、「左振出」と「右振出」が両方セットされている場合は、マーカモードに「左収納」と「右振出」をセットし(S213、S214)、それ以外の場合は、マーカモードに「右振出」のみをセットする(S214)。
【0039】
次に、マーカモード制御においては、マーカ自動スイッチ37の操作に応じたマーカモードの切換処理を行う。具体的には、マーカ自動スイッチ37の操作を判断し(S217)、該判断結果がYESの場合は、マーカモードが「自動ON」であるか否かを判断する(S218)。そして、この判断結果がYESの場合は、現在のマーカモードを記憶した後、マーカモードに「自動OFF」及び「左右収納」をセットする一方(S219)、判断結果がNOの場合は、記憶している前回のマーカモードを読み込むと共に、読み込んだ記憶マーカモードと「自動ON」をマーカモードにセットする(S220)。これにより、前回の自動終了時の設定でマーカ自動制御を再開することが可能になる。
【0040】
図12は、警報制御の処理手順を示しており、該警報制御では、まず、作業準備スイッチ36のON/OFFを判断し(S301)、該判断結果がOFFの場合は、警報ブザー50をOFFにして上位ルーチンへ復帰する(S302)。一方、作業準備スイッチ36がONであると判断した場合は、マーカモードに「自動OFF」がセットされているか否かを判断し(S303)、この判断結果がYESの場合は、以下の植付クラッチ入れ忘れ警報処理を行うことなく、上位ルーチンへ復帰する。
【0041】
ステップS303の判断結果がNOの場合、つまり、マーカモードに「自動ON」がセットされている場合は、植付作業機3の状態が「自動昇降(下降)」であるか否かを判断し(S304)、この判断結果がNOの場合は、植付作業機3の状態が「植付」であるか否かを判断する(S305)。そして、この判断結果がYESの場合は、植付クラッチモニタ48を点灯して植付クラッチ21が入り状態であることを視覚的に報知する一方(S306)、判断結果がNOの場合は、植付クラッチモニタ48を消灯して植付クラッチ21が切り状態であることを視覚的に報知する(S307)。尚、植付作業機3の状態が「自動昇降(下降)」以外の場合は、警報ブザー50をOFFとする(S302)。
【0042】
一方、ステップS304において、植付作業機3の状態が「自動昇降(下降)」であると判断した場合は、植付作業機3が接地して下降動作が停止したか否かを判断する(S308)。この判断結果がYESの場合は、警報停止スイッチ38のON/OFF状態を判断し(S309)、該判断結果がONの場合は、警報ブザー50をOFFとするが(S302)、警報停止スイッチ38がOFFの場合は、植付クラッチモニタ48を点滅させて植付クラッチ21の入れ忘れを視覚的に警報する(S310)。また、この状態では、左右の後輪回転センサ29L、29Rのセンサ値が所定値以上であるか否かを判断し(S311)、該判断結果がYESの場合は、植付クラッチ21を入れ忘れた状態で植付走行(直進走行)を開始したと判断して警報ブザー50による聴覚的な警報を行う(S312)。
【0043】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1の後部に昇降自在に連結され、下降接地状態で植付作業を行う植付作業機3と、植付作業機3の植付動力を入り/切りする植付クラッチ21と、植付作業機3から左右外方に選択的に振り出されて次行程に走行基準線を引く左右一対のマーカ33L、33Rと、植付作業機3の下降時にマーカ33L、33Rを自動的に振り出すマーカ自動制御手段(制御部35)とを備える乗用型田植機において、植付クラッチ21を入れ忘れた状態で植付走行を開始した、または、開始する可能性があると判断したとき、所定の警報を行う植付クラッチ入れ忘れ警報手段(制御部35の警報制御)を備えると共に、マーカ自動制御がOFFのときは、植付クラッチ入れ忘れ警報手段による警報を行わないようにしたので、非植付走行時に植付クラッチ入れ忘れ警報を行ってオペレータに不快感を与えるという問題を解決することができる。
【0044】
また、植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のまま植付走行を開始したとき、所定の警報を行うようにしたので、未植えの発生を確実に報知することができる。
【0045】
また、植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のとき、所定の警報を行うようにしたので、植付走行を開始する前の段階で未植えの発生を事前に警告することができる。
【0046】
また、植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のとき、視覚的な警報を行い、さらに、植付クラッチ21が切り状態のまま植付走行を開始したとき、聴覚的な警報を行うようにしたので、植付走行を開始する前の段階で未植えの発生を事前に警告することができるだけでなく、未植えが発生した場合も確実に報知することができる。しかも、未植えの事前警告は、視覚的な警報によって行われるので、オペレータに不快感を与えることもない。
【0047】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲内で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施形態の警報制御では、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のとき、視覚的な警報を行い、さらに、植付クラッチ21が切り状態のまま植付走行を開始したとき、聴覚的な警報を行うようにしているが、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機3が下降中(作業機操作カム31が「自動昇降(下降)」ポジション)のとき、視覚的な警報を行い、植付作業機3が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチ21が切り状態のとき、聴覚的な警報を行うようにしてもよい。以下、このような実施形態を実現する制御部35の処理手順について、図13を参照して説明する。
【0048】
図13に示す警報制御では、まず、作業準備スイッチ36のON/OFFを判断し(S401)、該判断結果がOFFの場合は、警報ブザー50をOFFにして上位ルーチンへ復帰する(S402)。一方、作業準備スイッチ36がONであると判断した場合は、マーカモードに「自動OFF」がセットされているか否かを判断し(S403)、この判断結果がYESの場合は、以下の植付クラッチ入れ忘れ警報処理を行うことなく、上位ルーチンへ復帰する。
【0049】
ステップS403の判断結果がNOの場合、つまり、マーカモードに「自動ON」がセットされている場合は、植付作業機3の状態が「自動昇降(下降)」であるか否かを判断し(S404)、この判断結果がNOの場合は、植付作業機3の状態が「植付」であるか否かを判断する(S405)。そして、この判断結果がYESの場合は、植付クラッチモニタ48を点灯して植付クラッチ21が入り状態であることを視覚的に報知する一方(S406)、判断結果がNOの場合は、植付クラッチモニタ48を消灯して植付クラッチ21が切り状態であることを視覚的に報知する(S407)。尚、植付作業機3の状態が「自動昇降(下降)」以外の場合は、警報ブザー50をOFFとする(S402)。
【0050】
一方、ステップS404において、植付作業機3の状態が「自動昇降(下降)」であると判断した場合は、、植付クラッチモニタ48を点滅させて植付クラッチ21の入れ忘れを視覚的に警報しつつ(S408)、植付作業機3が接地して下降動作が停止したか否かを判断する(S409)。この判断結果がYESの場合は、警報停止スイッチ38のON/OFF状態を判断し(S410)、該判断結果がONの場合は、警報ブザー50をOFFとするが(S402)、警報停止スイッチ38がOFFの場合は、警報ブザー50をONにして聴覚的な警報を行う(S411)。
【符号の説明】
【0051】
1 走行機体
3 植付作業機
21 植付クラッチ
31 作業機操作カム
32 作業機操作カムモータ
33 マーカ
34 マーカモータ
35 制御部
36 作業準備スイッチ
37 マーカ自動スイッチ
38 警報停止スイッチ
39 作業機操作具
48 植付クラッチモニタ
50 警報ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に昇降自在に連結され、下降接地状態で植付作業を行う植付作業機と、
植付作業機の植付動力を入り/切りする植付クラッチと、
植付作業機から左右外方に選択的に振り出されて次行程に走行基準線を引く左右一対のマーカと、
植付作業機の下降時にマーカを自動的に振り出すマーカ自動制御手段とを備える移植機において、
前記植付クラッチを入れ忘れた状態で植付走行を開始した、または、開始する可能性があると判断したとき、所定の警報を行う植付クラッチ入れ忘れ警報手段を備えると共に、マーカ自動制御がOFFのときは、植付クラッチ入れ忘れ警報手段による警報を行わないことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のまま植付走行を開始したとき、所定の警報を行うことを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のとき、所定の警報を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の移植機。
【請求項4】
前記植付クラッチ入れ忘れ警報手段は、マーカ自動制御がONの状態において、植付作業機が接地位置まで下降し、かつ、植付クラッチが切り状態のとき、視覚的な警報を行い、さらに、植付クラッチが切り状態のまま植付走行を開始したとき、聴覚的な警報を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−239705(P2011−239705A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112927(P2010−112927)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】