説明

移植機

【課題】本発明は、苗を適正且つ円滑に供給できる構成とし、供給カップの開閉底蓋を不要としながら、適正な移植作業が行なえる移植機を提供することを目的とする。
【解決手段】苗Cが補給される上端と下端に開口を有する複数個の供給カップ72をループ状に移動自在に構成し、供給カップ72内の苗Cを下方に供給する供給口201が形成された受け部材200をループ状に移動する供給カップ72の下側に設け、該供給口201から供給される苗Cを上動位置で受けて下動位置で圃場に植付ける植付具26を設けた移植機において、受け部材200上面の供給カップ72下端開口に対応する位置に供給カップ72がループ状に移動する軌跡に沿って凹部200aを形成した移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を圃場に移植する移植機に関するものであり、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機の載置台上に準備された苗を、その移植機の走行にあわせてループ状に回転搬送される複数の供給カップに、作業者が一個ずつ手で供給することで、自動的に圃場に植付ける移植機が知られている。
【0003】
この移植機は、その機体の走行と共に歩行する作業者が、苗収納部にある苗を一つずつ手でつかんで、機体の走行にあわせて回転している複数の供給カップに、それぞれ入れていく。
【0004】
供給カップの底の開閉底蓋は、供給カップの回転に伴って、植付具が上死点に来た時に開放され、供給カップ内の苗が下方の植付具に供給される。植付具の先端部は、ほぼ楕円状の軌跡を描いて駆動し、最下端に来た時に圃場に所定深さまで進入するとともに鳥のくちばしの如く開いて、内部に保持されていた苗が土中に落下して植付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−51613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この様な従来の移植機の構造では、供給カップ毎に開閉底蓋が設けられているため、部品点数が多くなると共に、製造時の組立作業に手間がかかるという課題があった。
【0007】
また、作業者は、この様な従来の移植機を使用する場合、全ての開閉底蓋がスムーズな開閉動作をするように、開閉底蓋毎に可動部の汚れを落としたりする必要があり、保守点検に手間がかかるという課題もあった。
【0008】
本発明は、上記従来の移植機の課題に鑑み、苗を適正且つ円滑に供給できる構成とし、供給カップの開閉底蓋を不要としながら、適正な移植作業が行なえる移植機を提供することを目的とする。
【0009】
また、圃場に開ける穴が小さくて良好な苗移植作業が行なえる移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
請求項1に係る発明は、苗Cが補給される上端と下端に開口を有する複数個の供給カップ72をループ状に移動自在に構成し、供給カップ72内の苗Cを下方に供給する供給口201が形成された受け部材200をループ状に移動する供給カップ72の下側に設け、該供給口201から供給される苗Cを上動位置で受けて下動位置で圃場に植付ける植付具26を設けた移植機において、受け部材200上面の供給カップ72下端開口に対応する位置に供給カップ72がループ状に移動する軌跡に沿って凹部200aを形成した移植機とした。
【0011】
従って、請求項1記載の発明は、従来のような供給カップの開閉蓋を不要とし、シンプルな構造で苗Cを適正且つ円滑に植付具26に供給できると共に、部品点数を削減した簡潔な構成の移植機を提供することができる。また、受け部材200上面の供給カップ72下端開口に対応する位置に供給カップ72がループ状に移動する軌跡に沿って凹部200aを形成したので、供給カップ72内に作業者によって供給された苗Cの下端は、受け部材200上面に設けた凹部200aに案内され、供給カップ72の移動と共に受け部材200上を適正な姿勢で摺接移動し、受け部材200の供給口201から植付具26内に適切に落下供給されて、適正な移植作業が行なえる。
請求項2に係る発明は、供給カップ72の内壁面を苗Cが回転テーブル71の回転方向前方に傾斜して立った状態で供給カップ72の移動方向中央部に保持できる傾斜面72aに構成した請求項1記載の移植機とした。
【0012】
従って、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の作用に加えて、供給カップ72内に作業者によって供給された苗Cの下端は、受け部材200に設けた凹部200aに案内され、且つ、苗Cの茎は、供給カップ72の移動方向中央部に傾斜面72aにて回転方向前方に傾斜して立った状態で保持されるので、作業者によって供給カップ72内に供給された苗Cは、供給カップ72の回転と共に受け部材200上を適正な姿勢で摺接移動し、受け部材200の供給口201から植付具26内に適切に落下供給されて、更に適正な移植作業が行なえる。
請求項3に係る発明は、受け部材200の凹部200aに対向する位置の供給カップ72下端部に清掃部材72bを設けた請求項1又は請求項2記載の移植機とした。
【0013】
従って、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の作用に加えて、清掃部材72bが凹部200aに接当した状態で供給カップ72が受け部材200上を回転するので、該清掃部材72bにて凹部200a内が清掃されて、凹部200a内の土やゴミ等が受け部材200の供給口201から苗Cとともに落下するので、苗Cの下端は、受け部材200上面に設けた凹部200aに適正に案内され、供給カップ72の移動と共に受け部材200上を適正な姿勢で摺接移動し、受け部材200の供給口201から植付具26内に適切に落下供給されて、長期に亘り適正な移植作業が行なえる。
【0014】
請求項4に係る発明は、植付具26を機体の左右方向に開閉する左右植付体26L・26Rで構成し、該左右植付体26L・26Rの内部前壁面を機体側面視で緩やかに前方傾斜した構成とし、内部後壁面を機体側面視で垂直又は略々垂直状に構成した請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機とした。
【0015】
従って、請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明の作用に加えて、供給カップ72内の苗Cが受け部材200の供給口201から落下して植付具26内に供給されると、苗Cは植付具26内で左右植付体26L・26Rの内部で前側の緩やかに前方傾斜した前壁面に前傾斜した状態で保持され、植付具26が下動位置で圃場に苗Cを植付ける時に、簡潔な構成で苗Cを土中に横たわるような状態で植付けることができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、植付具26が下動位置で圃場に苗Cを植付ける時に、植付具26を前傾傾斜状態に姿勢変更する姿勢変更機構Dを設けた請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移植機とした。
【0017】
従って、請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の発明の作用に加えて、植付具26が下動位置で圃場に苗Cを植付ける時に、植付具26が前傾傾斜状態に姿勢変更するので、簡潔な構成で苗Cを土中に更に横たわるような状態で植付けることができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、供給カップ72内の苗Cが供給口201から落下した後で作業者が供給カップ72内に苗Cを供給する位置よりも前に、供給カップ72内に粉粒状薬剤を供給する薬剤供給装置250を設けた請求項1から請求項5の何れか1項に記載の移植機とした。
【0019】
従って、請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の発明の作用に加えて、薬剤供給装置250が、供給カップ72内の苗Cが供給口201から落下した後で作業者が供給カップ72内に苗Cを供給する位置よりも前に、供給カップ72内に粉粒状薬剤を供給するので、粉粒状薬剤が供給された後の供給カップ72に作業者が苗Cを供給することとなり、供給された苗Cの葉に粉粒状薬剤が付着することを防止できて、粉粒状薬剤により植付けた苗Cの成育を悪化させるようなことを防止できる。
【0020】
また、薬剤供給装置250により供給カップ72内に供給された粉粒状薬剤は、供給カップ72内を通過して、受け部材200上面及び凹部200a内に落下供給されるので、受け部材200に設けた凹部200aに案内される苗Cの下端は、凹部200a内の粉粒状薬剤にて凹部200aに対する摺接抵抗が少なくなって、該受け部材200に設けた溝200aに良好に案内され、苗Cは受け部材200の供給口201から適正に落下して植付具26内に適切に供給され、良好なる苗Cの移植作業が行なえる。
【0021】
請求項7に係る発明は、植付具26が下動位置で圃場に苗Cを植付ける時に、植付具26内部に保持された苗Cの上部に水を放出する灌水装置230を設けた請求項1から請求項6の何れか1項に記載の移植機とした。
【0022】
従って、請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発明の作用に加えて、灌水装置230が、植付具26が下動位置で圃場に苗Cを植付ける時に、植付具26内部に保持された苗Cの上部に水を放出するので、植付具26内部から苗Cが放出されるのを助長すると共に、植付具26内部に付着した泥土を洗い流し、その水は植付けた苗C付近の土中に灌水することができ、良好な苗移植作業が行なえる。
【0023】
請求項8に係る発明は、苗Cを上動位置で受けて下動位置で圃場に植付ける植付具26を設けた移植機において、上動位置で苗Cを受ける時は閉じており下動位置まで内部に苗を保持し、下動位置で機体左右方向に平行又は略々平行に移動して開いて圃場に苗Cを植付ける左右植付体26L・26Rを設けた移植機とした。
【0024】
従って、請求項8記載の発明は、植付具26の左右植付体26L・26Rが上動位置で受けた苗Cを下動位置で圃場に植付ける時に、左右植付体26L・26Rは、機体左右方向に平行又は略々平行に移動して開くので、左右植付体26L・26Rの下端から上方位置まで所定幅Wで開き、該左右植付体26L・26Rの開き幅Wが狭くても、苗Cは左右植付体26L・26Rの開き幅Wで適切に土中に放出され、且つ、左右植付体26L・26Rの開き幅Wが狭いので、圃場に開ける穴も小さくなり、良好な苗移植作業が行なえる。
【発明の効果】
【0025】
よって、この発明は、供給カップ72の開閉蓋を不要としたことで、部品点数を削減した簡潔な構成の移植機を提供することができ、また、苗Cを適正且つ円滑に供給カップ72から植付具26に供給できて適正な苗移植作業が行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態である甘薯苗移植機の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態である甘薯苗移植機の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態である甘薯苗供給部を説明するための概略平面図である。
【図4】本発明の一実施形態である甘薯苗供給部を説明するための一部断面を含む概略正面図である。
【図5】本発明の一実施形態である甘薯苗供給部を説明するための概略側面図である。
【図6】本発明の一実施形態である甘薯苗供給部の要部を説明するための拡大側面図である。
【図7】本発明の一実施形態である甘薯苗供給部の各構成部品を説明するための分解斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態である甘薯苗移植機の甘薯苗供給部の回転駆動機構の主要部を説明するための概略平面図である。
【図9】本発明の一実施形態である甘薯苗植付装置の側面図である。
【図10】本発明の一実施形態である甘薯苗植付装置の作動を説明するための作用説明用側面図である。
【図11】本発明の一実施形態である植付具の作用説明用正面図である。
【図12】本発明の一実施形態である植付具の作用説明用側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の移植機の一実施の形態である蔓状の甘薯苗を圃場に移植する甘薯苗の移植機についてその構成と動作を説明する。
図1は、本発明の移植機の一例として蔓状の甘薯苗を移植する甘薯苗移植機1を示す側面図であり、図2は、甘薯苗移植機1の平面図である。
【0028】
この甘薯苗移植機1は、前部にエンジン2及びミッションケース3と走行車輪としての左右一対の前輪4及び後輪5と、後部に甘薯苗植付装置60、甘薯苗供給部70、鎮圧輪8及び操縦ハンドル9とを備えて構成されている。
【0029】
この甘薯苗移植機1は、機体が圃場内の畝Uをまたぐように、前輪4及び後輪5が畝間を走行し、畝の上面の左右幅方向における中央位置に甘薯苗植付装置60により甘薯苗を植付けていくようになっている。
【0030】
また、ミッションケース3の左右端には該ミッションケース3に対して回動可能な走行エクステンションケース10を左右それぞれ設け、左右の走行エクステンションケース10のそれぞれの端部に走行チェーンケース11を取り付けている。従って、エンジン2から入力されるミッションケース3内の動力を走行チェーンケース11内に伝動する構成となっている。
【0031】
走行チェーンケース11の回動先端部の左右外側には、走行車輪である左右一対の後輪5をそれぞれ取り付け、この左右一対の後輪5の駆動により機体が走行するようになっている。従って、ミッションケース3は、走行車輪としての後輪5に伝動する伝動装置となっている。
【0032】
一方、エンジン載置台の下部には左右方向に延びる前輪支持フレーム12を前後方向のローリング軸13(図1参照)回りに回動可能に設け、この前輪支持フレーム12の左右両端部に前輪4を取り付けた構成としている。
【0033】
また、ミッションケース3の後端の左右方向に配置された横フレーム14の後部には、機体の左右方向右寄りの位置に延びる主フレーム15を設けている。該主フレーム15の後端部には操縦ハンドル9を設け、この操縦ハンドル9が主フレーム15及び、横フレーム14を介してミッションケース3に支持された構成となっている。
【0034】
また、ミッションケース3の後部で左右方向の中央には、油圧昇降シリンダ16を設けている。この油圧昇降シリンダ16は、ミッションケース3に取り付けられた油圧切替バルブ部17に固着して設けられ、ミッションケース3に取り付けられた油圧ポンプからの油圧を切り替える油圧切替バルブ部17に備えられた昇降操作バルブを操作することにより作動するようになっている。
【0035】
また、油圧昇降シリンダ16のシリンダロッド端には左右に延びる横杆19を設け、この横杆19の左右端部にそれぞれ後輪昇降ロッド20,21を枢着し該ロッド20,21の他端をそれぞれの走行エクステンションケース10に取り付けられた上側アーム10aに枢着して、横杆19と走行エクステンションケース10とが連結された構成となっている。
【0036】
従って、油圧昇降シリンダ16の伸縮により横杆19、後輪昇降ロッド20,21を介してミッションケース3の左右の出力軸回りに走行チェーンケース11が回動され、該走行チェーンケース11の回動により後輪5が上下して機体が昇降する構成となっている。
【0037】
また、左側の後輪昇降ロッド20が伸縮するように該ロッド20の中途部に油圧ポンプからの油圧により作動する水平用油圧シリンダ22を設けており、該水平用油圧シリンダ22の伸縮により右側の後輪5の上下位置に対して左側の後輪5を上下させて、畝の谷部の凹凸に関係なく機体を左右水平に維持できるようになっている。
【0038】
尚、ミッションケース3の右側には振り子式の左右傾斜センサ23が設けられて、この左右傾斜センサ23の検出により油圧切替バルブ部17に備えられた水平操作バルブを介して水平用油圧シリンダ22を作動させ機体を左右水平に維持する構成となっている。
【0039】
本実施の形態の甘薯苗植付装置60は、甘薯苗を1個ずつ圃場の畝部に植付けるべく、ミッションケース3内からの動力がミッションケース3の後側に設けた植付伝動ケース24と、その植付伝動ケース24に取り付けられた植付装置駆動ケース25aを介して伝達され作動するようになっている。
【0040】
甘薯苗植付装置60は、先端が尖ったカップ状の植付具26と該植付具26を昇降させるべく作動する植付具作動機構27とで構成される。植付具26の先端は、植付具26の昇降動作によって、図1に示すように、機体進行停止状態で概ね楕円形の軌跡Bを描いて図中の矢印方向に繰り返し作動する。
【0041】
次に、本実施の形態の甘薯苗移植機1の甘薯苗載置台30及び甘薯苗供給部70について、図面を参照しながら、その構成を説明する。
図3〜図5は、甘薯苗供給部70を説明するための概略平面図、回転テーブル71の中心部に断面を含む概略正面図、及び概略側面図である。
【0042】
甘薯苗載置台30は、基部が植付伝動ケース24に固着された苗枠フレーム31上に杆体にて枠組みされ、移植対象物の一例としての蔓状の甘薯苗Cを収容したコンテナAを載置する載置枠32にて構成されている。
【0043】
甘薯苗供給部70は、甘薯苗植付装置60の上方に設けられた、上端と下端に開口を有する供給カップ72を8つ貫通させてループ状に配置した回転可能な回転テーブル71と、その下側に配置されて且つ甘薯苗移植機1の機体側に固定配置された受け部材としての甘薯苗支持板200と、回転テーブル71を反時計回りに回転させるための回転駆動機構76と、所定位置G(図3参照)に移動してきた供給カップ72の中に作業者の指などが誤って入らないようにするための安全カバー40と、作業者が植付具26等の可動部に接触しないようにするための防護カバー50等を備えている。
【0044】
回転テーブル71は、外周縁部71aが平面視で円形で、その円形平面部(主面部)71bの外周寄りに等間隔に開けられた8つの貫通孔71cに、両端が開放された円筒状の供給カップ72がそれぞれ貫通して設けられている。また、回転テーブル71の中央部には、回転駆動機構76からの回転力により回転テーブル71を反時計回りに回転するための回転軸76fが固定配置されている。
【0045】
甘薯苗支持板200は、所定位置に供給口201開口が設けられた円盤状の板部材であって、その外周部に安全カバー40を固定するための出っ張り部203を有し、図1、図4〜図6に示すように、供給カップ72の直ぐ下側で、回転テーブル71の円形平面部(主面部)71bに平行であって、後述する支柱93に溶接にて固定されている。甘薯苗支持板200の更に下側には、回転駆動機構76が設けられている。
【0046】
以下、上記甘薯苗供給部70を構成する回転テーブル71、甘薯苗支持板200、回転駆動機構76、安全カバー40、及び防護カバー50の構成を、具体的に説明する。
図7は、甘薯苗供給部70の各構成部品を説明するために分解して図示した斜視図である。
(1)回転テーブル71について
回転テーブル71は、その円形平面部71bの外周寄りに等間隔に開けられた8つの貫通孔71cに、両端が開放された円筒状の供給カップ72がそれぞれ貫通して固定して設けられている。
【0047】
供給カップ72は、外形は円筒状であるが、内壁面は蔓状の甘薯苗Cが回転テーブル71の回転方向前方に傾斜して立った状態で保持できるように湾曲状の傾斜面72aになっている。
【0048】
また、後述の甘薯苗支持板200に設けた凹部としての溝200aに対向する供給カップ72の外周下端部には清掃部材としてのブラシ72bの基部が固定されており、該ブラシ72bの下端が溝200aに接当した状態で供給カップ72が甘薯苗支持板200上を回転するので、該ブラシ72bにて常に溝200a内が清掃されて、溝200a内の土やゴミや後述の薬剤Yは甘薯苗支持板200の供給口201から甘薯苗Cとともに落下する。尚、清掃部材としては、ブラシのほかに弾性体よりなるスクレーパーなど如何なる形態のものであっても良い。
【0049】
従って、供給カップ72内に作業者によって供給された甘薯苗Cの下端は、甘薯苗支持板200に設けた溝200aに案内され、甘薯苗Cの茎は、供給カップ72の中央部に傾斜面72aにて回転方向前方に傾斜して立った状態で保持される。よって、作業者によって供給カップ72内に供給された甘薯苗Cは、供給カップ72の回転と共に甘薯苗支持板200上を適正な姿勢で摺接移動し、甘薯苗支持板200の供給口201から甘薯苗植付装置60の植付具26内に適切に落下供給される。
(2)甘薯苗支持板200について
甘薯苗支持板200は、出っ張り部203を除き、回転テーブル71の直径より小さく、且つ、リング状に配置された8個の供給カップの下端の開口の投影領域を包括できる直径の円盤状の板部材であり、その板部材の一部には、供給カップ72の下端開口の直径より大きい円形状の供給口201が、植付部26が上死点に位置する時の植付具26上部の苗受け入れホッパ26a上部の開口26a’の上方に対応する位置に1つ形成されている。
【0050】
また、甘薯苗支持板200は、供給カップ72の下端の縁部から所定の距離を隔てて、回転テーブル71の主面に平行に配置されており、供給カップ72に補給された甘薯苗Cが、供給口201を除き、甘薯苗支持板200と供給カップ72の下端の縁部との隙間から落下することが無く、しかも、回転移動する供給カップ72が、動作中に多少振動などしても、甘薯苗支持板200にぶつかることが無い程度の間隔が確保されている。
【0051】
また、甘薯苗支持板200の上面には、回転する各供給カップ72の中心に対向した位置に溝200aが形成されており、前(1)項の回転テーブル71の説明で述べたように、各供給カップ72内に作業者によって供給された甘薯苗Cの下端は、該甘薯苗支持板200に設けた溝200aに案内されて、甘薯苗Cは甘薯苗支持板200の供給口201の左右中央部から落下して甘薯苗植付装置60の植付具26内に適切に供給される。
【0052】
ここで、出っ張り部203は、供給口201に近傍の外周側に所定寸法だけ突き出しており、安全カバー40を締結部品40a、40bで固定するための2つの貫通孔203aが設けられている。安全カバー40については、後述する。
【0053】
また、甘薯苗支持板200は、中心部に後述する軸受け部材76gを通すための円形の貫通孔202を有し、その裏面には、貫通孔202の縁部から外周部に向けて位置する長方形の第1板状部材211と第2板状部材212が、溶接固定されている。これら第1及び第2板状部材211、212は、防護カバー50を取り付けるための部材であると共に、甘薯苗支持板200を補強する機能をも兼ねている。尚、防護カバー50については後述する。
【0054】
また、甘薯苗支持板200は、甘薯苗移植機1の機体から真っ直ぐ機体の後方に向けて配置されている支柱93により支持されると共に、その支持部において溶接固定されている。尚、後述する軸受け部材76gの外周側面は、支柱93の後方端93aに固定されている。
【0055】
更にまた、甘薯苗支持板200の裏面には、後述する回転方向変換ユニット76bを固定するためのユニット固定用アングル260が溶接固定されている。
尚、上記構成によれば、供給カップ72の底面に蓋が無く、しかも甘薯苗支持板200の裏面に支柱93が直接固定されているので、供給カップ72の下端の開口位置と、植付具26の上死点との距離がより短く出来る。そのため、甘薯苗支持板200の供給口201から落下する甘薯苗Cを、植付具26に案内するためのガイド部材を設ける必要が無い。
(3)回転駆動機構76について
次に、上記回転駆動機構76を構成する各部の構成について、更に、具体的に説明する。
【0056】
図8は、甘薯苗供給部70の回転駆動機構76の主要部を説明するための概略平面図であり、各部品の配置の前後関係の理解を容易にするために、各部品の一部を切り取った状態で描いた図である。
【0057】
即ち、回転駆動機構76は、回転テーブル駆動ケース25bに一端76a1が回転可能に接続され、回転方向変換ユニット76bの入力側に他端76a2が回転可能に接続された回転力伝達部材76cと、回転方向変換ユニット76bの入力側の回転軸に対して直交配置された出力側の回転軸76dに固定された第1歯車76e1と、第1歯車76e1と噛み合って配置された第2歯車76e2とを備えている。第2歯車76e2は反時計方向に滑らかに回転する。
【0058】
また、図7に示すように、回転方向変換ユニット76bの上面には、回転方向変換ユニット固定用アングル270が締結部品270aによって固定されている。更に、回転方向変換ユニット76bは、回転方向変換ユニット固定用アングル270を介して、甘薯苗支持板200の裏面に固定されているユニット固定用アングル260に締結部品270bによって固定されている。
【0059】
また、軸受け部材76gは、第2歯車76e2の回転軸76fを回転可能に支持する軸受け部材であり、上述した通り、その外周側面の下端側において、支柱93の後方端93aと固定されている。一方、軸受け部材76gの上端側は、甘薯苗支持板200の中心部に設けられた貫通孔202を貫通しており、軸受け部材76gから上方に飛び出している回転軸76fが回転テーブル71の中心部に固定されている。これにより、回転テーブル71は、回転軸76fを介して、軸受け部材76gにより回転可能に支持されている。
(4)安全カバー40について
安全カバー40は、出っ張り部203に固定するための2つの貫通孔41aが一端側に形成された、断面がコの字型の安全カバー取付部41と、安全カバー取付部41の他端側に固定された、弾性変形可能なゴム製または樹脂製の安全カバー本体42とから構成されている。
【0060】
このように、安全カバー本体42は、供給カップ72が所定位置G(図3参照)に移動して来た時に、その供給カップ72の上端の開口を完全に覆うので、作業者が誤って指などを入れることを防止出来る。
【0061】
また、安全カバー本体42は弾性変形可能な部材で構成されているので、供給カップ72と安全カバー本体42の間に作業者が誤って指を挟んだとしても、直ぐにその指を引き抜くことが出来き、また、ダメージも少ない。
(5)防護カバー50について
防護カバー50は、植付具26と作業者の作業位置(本実施の形態では、甘薯苗移植機1の機体の左右方向を基準として、回転テーブル71の左側のスペース)との間を仕切ると共に、回転テーブル71の下面側に突き出した供給カップ72の下端と甘薯苗支持板200との間の空間を覆い、更には回転駆動機構76と作業者の作業位置との間をも仕切るためのカバーであり、回転テーブル71を上から見て、甘薯苗移植機1の左右方向を基準として、回転テーブル71の左側から操縦ハンドル9側を経て右側に至る範囲を略U字型に保護している。また、防護カバー50は、上部よりも下部の方が外側に拡がった形状をしている。
【0062】
防護カバー50は、第1の固定部材51a、51bと、第2の固定部材52a、52bによって、甘薯苗支持板200の下面にて一端が固定配置された第1取付部材151と、第2取付部材152にそれぞれ固定され、且つ、第3の固定部材53によって、支柱93の外周面の下側に固定された第3取付部材153に固定されている。尚、第1取付部材151の一端は、甘薯苗支持板200の下面において、第1板状部材211に締結部品で固定されており、第2取付部材152の一端は、甘薯苗支持板200の下面において、第2板状部材212に締結部品で固定されている。
【0063】
このように防護カバー50を設けたことにより、作業者が、甘薯苗移植機1の作業位置に居る場合に限らず、作業位置と反対側(本実施の形態では、甘薯苗移植機1の機体の左右方向を基準として、回転テーブル71の右側)に居る場合でも、作業者が植付具26と接触したり、回転する各部の隙間に手などを挟まれることを防止出来る。
【0064】
また、第1板状部材211と第2板状部材212は、甘薯苗支持板200を補強する機能と共に、防護カバー50を取り付ける機能をも兼ね備えているので、部品点数を削減出来る。
【0065】
次に、甘薯苗植付装置60について詳細に説明する。
甘薯苗植付装置60は、上部に形成した開口26a’から苗株を受けて左右に開閉可能な嘴状の植付具26と、この植付具26を昇降駆動する植付装置駆動ケース25aに前端側を連結する昇降アーム27aと、この昇降アーム27aの下方に並行して昇降動作しつつ植付具26のホルダ26bと連結してその姿勢を保持する副リンク27bとから構成される。また、昇降アーム27aと副リンク27bの前端部27a−1・27b−1は連結リンクRにより連結されており、前後に揺動可能に上端27cを支軸に軸支した揺動アーム27dを介して前後移動可能に連結する。尚、植付具26上部の開口26a’を有する苗受け入れホッパ26aは、ホルダ26bにその下部が固定されて設けられている。
【0066】
副リンク27bと植付具26との連結部27b−3は、ホルダ26bの後部に配置してコンパクト化を図り、また、植付具26の開閉動作のための開閉レバー27fを昇降アーム27aとの支点27a−3に軸支する。開閉レバー27fには連結ロッド27gを介して並行動作が可能な開閉アーム27hを設けて昇降アーム27aの中間部分の連結点27a−2に軸支するとともに、副リンク27bの中間部分の連結点27i’を回転駆動するクランクアーム27iを設け、このクランクアーム27iと一体に開閉カム27jを設け、ローラ27h’を介して開閉アーム27hを所定のタイミング(植付具26が畝の土中に入って苗を植付けるタイミング)で作用し、植付具26が左右に開いて畝に苗を植付ける。
【0067】
昇降アーム27aと副リンク27bは、副リンク27bの連結点27i’がクランクアーム27iにより駆動されて上下動する平行リンクとなっており、各々の後端側が植付具26に連結されて、植付具26を所定の軌跡で上下動させる構成であるが、各々の前端側が連結リンクRにより連結されているので、該連結リンクRにより昇降アーム27aと副リンク27bが回動部の遊びにより平行リンクの姿勢が崩れるのを防止し、昇降アーム27aと副リンク27bは平行リンクの姿勢を適正に維持して作動し、植付具26を所定の軌跡で上下動させて適正な苗の移植作業が行える。
【0068】
また、昇降アーム27aの前端部27a−1には、円ローラ27kが回転自在に枢支され、該円ローラ27kの機体後方側に植付具傾斜駆動カム27lが駆動回転されるように駆動軸27mに軸着されており、植付具26が長円状軌跡Bの最下端位置に来て土中に甘薯苗Cを植付ける時に、植付具傾斜駆動カム27lが円ローラ27kを機体前方に押して、植付具26を大きく前に傾斜した状態にする。尚、これらの植付具26を大きく前に傾斜した状態にする部材にて姿勢変更機構Dが構成されている。
【0069】
従って、後述の甘薯苗Cが植付具26内で左右植付体26L・26R前側の緩やかに前方傾斜した壁面に前傾斜した状態で保持されていることと相俟って、甘薯苗Cは土中に横たわるような状態で植付けられる。
【0070】
そして、植付具26は、機体の左右方向に各々開閉する先端が尖った嘴状の左右植付体26L・26Rにて構成されている。そして、該左右植付体26L・26Rは、機体側面視で、前側が緩やかに前方傾斜した壁面となり、後側が垂直状の壁面となる先端が尖った嘴状のカップ構成となっている。従って、上方の甘薯苗供給部70の供給カップ72内の甘薯苗Cが甘薯苗支持板200の供給口201から落下して甘薯苗植付装置60の植付具26内に供給されると、甘薯苗Cは植付具26内で上記左右植付体26L・26R前側の緩やかに前方傾斜した壁面に前傾斜した状態で保持される。
【0071】
また、左右植付体26L・26Rの前側の下端から上端近くまで、圃場に敷かれたマルチフィルムを切断する前刃26Fが一体に形成されている。よって、甘薯苗Cを内部に保持した植付具26の左右植付体26L・26Rが閉じた状態で土中に突入する際には、前刃26Fにてマルチフィルムを適切に切断しながら、左右植付体26L・26Rは適切に土中に突入することができる。また、左右植付体26L・26Rの後側の下端部に後刃26Bを一体に形成しておけば、左右植付体26L・26Rが土中で左右方向に開いて甘薯苗Cを植付けた後に上昇して土中から抜け出る際に、左右植付体26L・26Rの下端部がマルチフィルムに下方から接当しても該後刃26Bがマルチフィルムを切断するので、左右植付体26L・26Rの下端部がマルチフィルムを引っ掛けて引き破ってしまうような事態を未然に回避できて良好な苗移植作業が行なえる。
【0072】
次に、左右植付体26L・26Rが各々左右方向に平行に移動して開閉する構成について説明する。
植付具26の左右植付体26L・26Rを開閉動作するための前記開閉レバー27fは、前述のとおり昇降アーム27aの後端部の支点27a−3に枢支され、そのL字状に曲がった下端部が連結ロッド27gに連結されているが、他端部は機体前方に延びて上下作動ロッド27nの上端部に連結されている。
【0073】
一方、左右植付体26L・26Rは、各々昇降アーム27aと副リンク27bの後端部に連結支持されたホルダ26bに設けた前後の左右方向長孔26cを貫通した支持ピン26dにてホルダー26bに左右移動自在に支持された構成となっている。
【0074】
また、ホルダー26b前壁の左右中央部に枢支した支軸26eにピニオン26fを固定すると共に、支軸26e軸端部に作動アーム26gの基部を固定し、該作動アーム26gの先端部を前記上下作動ロッド27nの下端部と連結している。そして、ピニオン26fの上部と右植付体26Rに設けた右ラック26hを噛合させ、ピニオン26fの下部と左植付体26Lに設けた左ラック26iを噛合させている。
【0075】
従って、昇降アーム27aと副リンク27bの作動により植付具26の左右植付体26L・26Rが土中に突入して縦長の長円状軌跡Bの最下端部に到達する時に、開閉カム27jがローラ27h’を機体前方に押して開閉アーム27h及び連結ロッド27gを介して開閉レバー27fを回動させ、上下作動ロッド27nを上動させる。すると、作動アーム26gが上方に揺動するので、ピニオン26fは機体正面視で反時計方向に回転し、該ピニオン26fの上部と右植付体26Rに設けた右ラック26hが噛合しているので、右植付体26Rは機体右方向に移動し、且つ、ピニオン26fの下部と左植付体26Lに設けた左ラック26iが噛合しているので、左植付体26Lは機体左方向に移動するために、左右植付体26L・26Rは互いに左右方向に平行移動して開く。よって、左右植付体26L・26Rは、左右に平行移動して開くので、左右植付体26L・26Rの下端から上方位置まで幅Wで開き、左右植付体26L・26Rの開き幅Wが狭くても、甘薯苗Cは左右植付体26L・26Rの開き幅Wで適切に土中に放出され、且つ、左右植付体26L・26Rの開き幅Wが狭いので、圃場に開ける穴も小さくなり、植付穴を鎮圧輪8が適切に鎮圧覆土することができ、良好な苗移植作業が行なえる。
【0076】
次に、灌水装置230について説明する。
231はプランジャポンプであって、走行チェーンケース11に設けたタンク載置部11aに載置した灌水タンク232内の水を給水パイプ233aにて吸い上げて左右植付体26L・26Rの内側に灌水パイプ233bで供給する。そして、該プランジャポンプ231は、その基部を主フレーム15に枢支し、プランジャポンプ231のピストンロッド231aの先端部を植付装置駆動ケース25aの側壁から突出して設けたクランクアーム軸234に設けた灌水用駆動クランク234aに連結している。
【0077】
そして、植付具26の左右植付体26L・26Rの上方に設けられた苗受け入れホッパ26aの後部壁に灌水ノズル235を設けて、該灌水ノズル235に前記プランジャポンプ231の灌水パイプ233b先端側を連結し、灌水ノズル235は左右植付体26L・26Rの内側上部に向けて水を放出する角度に固定している(植付具26内の左右植付体26L・26R前側の緩やかに前方傾斜した壁面に前傾斜した状態で保持されている甘薯苗Cの上部に水が放水される構成としている)。
【0078】
従って、プランジャポンプ231は、灌水タンク232から水を吸い上げて左右植付体26L・26R前側の緩やかに前方傾斜した壁面に前傾斜した状態で保持されている甘薯苗Cの上部に灌水する。その灌水タイミングは、左右植付体26L・26Rが左右に開いて甘薯苗Cを放出する時に水が噴射されるようになっており、左右植付体26L・26Rから甘薯苗Cが放出されるのを助長すると共に、左右植付体26L・26Rの内側に付着した泥土を洗い流し、同時に、甘薯苗Cの茎葉に付着した下記の薬剤を洗い流す作用もする。そして、その水は植付けた甘薯苗C付近の土中に灌水される。
【0079】
次に、薬剤供給装置250について詳細に説明する。
甘薯苗供給部70の上方には、殺菌剤や殺虫剤や肥料等の粉粒状薬剤を定量ずつ各供給カップ72内に供給する薬剤供給装置250が設けられている。該薬剤供給装置250は、供給カップ72が所定位置G(供給カップ72底開口部と甘薯苗支持板200の供給口201とが合致する位置)に来て、供給カップ72内の甘薯苗Cが落下して供給口201を通過して下方の植付具26に供給された直後の供給カップ72内に粉粒状薬剤を定量ずつ供給する構成となっている。即ち、所定位置Gの供給カップ72回転方向下手側に薬剤供給装置250は配置されている。
【0080】
薬剤供給装置250は、粒状の薬剤を貯留する薬剤タンク251と、該薬剤タンク251内の薬剤を所定量づつ繰り出す繰出部252と、該繰出部252から繰り出される薬剤を吐出する下向きの吐出口253とを備えている。また、吐出口253は前記の所定位置Gを通過した直後の供給カップ72上方に設けられている。従って、吐出口253により、粉粒状薬剤を所定位置Gの回転方向下手側(所定位置Gを通過した直後)の供給カップ72へ上方から供給する構成となっている。
【0081】
薬剤供給装置250は、植付伝動ケース24の上面に基部が固定された薬剤供給装置支持フレーム254に取付プレート255を介して取り付け支持されている。また、回転テーブル71を回転するための回転軸76fの上端部に連結された薬剤用出力軸256を介して薬剤伝動ケース257内に入力され、該薬剤伝動ケース257からの動力で繰出部252が駆動する。なお、薬剤伝動ケース257内には、同じ歯数の一対のベベルギヤが設けられ、上下方向の薬剤用出力軸256回りの回転を同じ回転速度で横方向の軸回りの回転に変換して繰出部252へ伝動するようになっている。
【0082】
繰出部252には横方向の軸回りに回転する繰出ローラを備え、該繰出ローラの外周面には薬剤を溜める複数の繰出溝(供給カップ72と同じ8個の繰出溝)を回転方向において等間隔で設けている。従って、回転テーブル71が供給カップ72の取付間隔分づつ回転するのに連動して、前記繰出ローラが繰出溝の配列ピッチづつ回転して繰出溝ごとに間欠的に薬剤が繰り出され、各供給カップ72ごとに確実に薬剤を供給することができる。また、供給カップ72の個数と繰出ローラの繰出溝の数を同じ数にしているので、回転テーブル71の1回転につき繰出ローラを1回転させればよく、薬剤伝動ケース257を含む繰出ローラへの伝動において変速機構を設ける必要がなく、回転テーブル71から繰出部252(繰出ローラ)への伝動機構を簡単に構成できる。
【0083】
以上により、苗移植作業時には、機体の進行に合わせて作業者が左側の後輪5の後方を歩きながら、甘薯苗載置台30に載置したコンテナAに収容した甘薯苗Cを各供給カップ72に供給する。この時、薬剤供給装置250により、供給カップ72内の甘薯苗Cが落下して供給口201を通過し下方の植付具26に供給された直後の供給カップ72内に粉粒状薬剤を定量ずつ供給され、その粉粒状薬剤が供給された後の供給カップ72に作業者が甘薯苗Cを供給することとなるので、供給された甘薯苗Cの葉に粉粒状薬剤が付着することを防止できて、粉粒状薬剤により植付けた甘薯苗Cの成育を悪化させるようなことを防止できる。
【0084】
更に、薬剤供給装置250により供給カップ72内に供給された粉粒状薬剤は、供給カップ72内を通過して、甘薯苗支持板200上面及び溝200a内に落下供給される。従って、供給カップ72内に供給された甘薯苗Cの茎は、供給カップ72の中央部に傾斜面72aにて回転方向前方に傾斜して立った状態で保持され、甘薯苗Cの下端は、甘薯苗支持板200に設けた溝200aに案内され、供給カップ72の回転と共に甘薯苗支持板200上を摺接移動するが、この時、粉粒状薬剤が甘薯苗支持板200の溝200a内に落下供給されているので、甘薯苗支持板200に設けた溝200aに案内される甘薯苗Cの下端は、溝200a内の粉粒状薬剤にて溝200aに対する摺接抵抗が少なくなって、甘薯苗Cの下端は、該甘薯苗支持板200に設けた溝200aに良好に案内され、甘薯苗Cは甘薯苗支持板200の供給口201の左右中央部から落下して甘薯苗甘薯苗植付装置600の植付具26内に適切に供給され、良好なる甘薯苗Cの移植作業が行なえる。
【0085】
次に、本実施の形態の甘薯苗移植機1の甘薯苗供給部70及び植付具26を中心とした動作を、説明する。
まず、甘薯苗載置台30に甘薯苗Cを収容したコンテナAを載置する。
【0086】
次に、エンジン2を始動して、植付作業の開始に伴って、甘薯苗移植機1は畝Uをまたぐようにしてゆっくりと前進する。一方、エンジン2の回転が回転力伝達部材76cに伝達されて、第1歯車76e1及び第2歯車76e2を介して、回転テーブル71が甘薯苗支持板200上で反時計方向に滑らかに回転する。そして、薬剤供給装置250により、供給カップ72内の甘薯苗Cが落下して供給口201を通過し下方の植付具26に供給された直後の供給カップ72内に粉粒状薬剤が定量ずつ供給される。
【0087】
作業者は、甘薯苗移植機1の左側の左後輪5後方の作業スペースに位置して、機体の前進に歩調を合わせながら、回転テーブル71の回転に伴って回転する供給カップ72の内、安全カバー40が設置されている所定位置G(図3参照)を通過して、すでに甘薯苗Cが植付具26側に供給されて空になり、薬剤供給装置250により粉粒状薬剤が定量ずつ供給された供給カップ72に対して、甘薯苗載置台30に載置されたコンテナAから甘薯苗Cを取出して1つずつ供給する。これを繰り返すことにより、8個の供給カップ72には順次、甘薯苗Cが供給されることになる。この時、作業者は、甘薯苗載置台30に載置したコンテナAから甘薯苗Cを取出して、すぐ近くの甘薯苗供給部70の各供給カップ72に容易に入れることができて、作業性良く且つ作業効率良く移植作業を行なうことができる。
【0088】
このように、作業者が甘薯苗Cを補給する作業中において、所定位置Gを通過する供給カップ72の中に、誤って指などを入れることを防止できる。仮に、この安全カバー40が設置されていないとすると、供給カップ72の内部に誤って指などを入れた場合、その供給カップ72の下面側の開口縁部と供給口201の内周縁部との間に指などが挟まれる可能性がある。
【0089】
更に、安全カバー本体42は弾性変形可能な部材で構成されているので、仮に、供給カップ72と安全カバー本体42の間に作業者が誤って指を挟んだとしても、安全カバー本体42が指に与えるダメージが少ないので安全性が高い。
【0090】
一方、供給カップ72の下端の開口は、回転テーブル71の回転により供給カップ72が所定の位置G(図3参照)に来たときを除いて、甘薯苗支持板200により閉じられている。
【0091】
そして、薬剤供給装置250により供給カップ72内に供給された粉粒状薬剤は、供給カップ72内を通過して、甘薯苗支持板200上面及び溝200a内に落下供給される。従って、供給カップ72内に供給された甘薯苗Cの茎は、供給カップ72の中央部に傾斜面72aにて回転方向前方に傾斜して立った状態で保持され、甘薯苗Cの下端は、甘薯苗支持板200に設けた溝200aに案内され、供給カップ72の回転と共に甘薯苗支持板200上を摺接移動するが、この時、粉粒状薬剤が甘薯苗支持板200の溝200a内に落下供給されているので、甘薯苗支持板200に設けた溝200aに案内される甘薯苗Cの下端は、溝200a内の粉粒状薬剤にて溝200aに対する摺接抵抗が少なくなって、甘薯苗Cの下端は、該甘薯苗支持板200に設けた溝200aに良好に案内され、甘薯苗Cは甘薯苗支持板200の供給口201の左右中央部から落下して甘薯苗甘薯苗植付装置600の植付具26内に適切に供給される。
【0092】
この時、薬剤供給装置250により供給カップ72内に粉粒状薬剤が定量ずつ供給され、その粉粒状薬剤が供給された後の供給カップ72に作業者が甘薯苗Cを供給することとなるので、供給された甘薯苗Cの葉に粉粒状薬剤が付着することを防止できて、粉粒状薬剤により植付けた甘薯苗Cの成育を悪化させるようなことを防止できる。
【0093】
植付具26は、長円状軌跡Bの最上端位置で上記のように甘薯苗供給部70から甘薯苗Cを受け取って、最下端位置に来て土中に甘薯苗Cを植付ける時に、大きく前に傾斜した状態になるので、甘薯苗Cが植付具26内で左右植付体26L・26R前側の緩やかに前方傾斜した壁面に前傾斜した状態で保持されていることと相俟って、甘薯苗Cは土中に横たわるような状態で適切に植付けられる。
【0094】
また、この植付具26の植付時において、左右植付体26L・26Rの前側の下端から上端近くまで、圃場に敷かれたマルチフィルムを切断する前刃26Fが一体に形成されているので、甘薯苗Cを内部に保持した左右植付体26L・26Rが閉じた状態で土中に突入する際には、前刃26Fにてマルチフィルムを適切に切断しながら、左右植付体26L・26Rは適切に土中に突入することができる。そして、右植付体26L・26Rは、左右に平行移動して開くので、左右植付体26L・26Rの下端から上方位置まで幅Wで開き、左右植付体26L・26Rの開き幅Wが狭くても、甘薯苗Cは左右植付体26L・26Rの開き幅Wで適切に土中に放出され、且つ、左右植付体26L・26Rの開き幅Wが狭いので、圃場に開ける穴も小さくなり、植付穴を鎮圧輪8が適切に鎮圧覆土することができ、良好な苗移植作業が行なえる。
【0095】
更に、灌水装置230が、左右植付体26L・26R前側の緩やかに前方傾斜した壁面に前傾斜した状態で保持されている甘薯苗Cの上部に灌水し、その灌水タイミングは、左右植付体26L・26Rが左右に開いて甘薯苗Cを放出する時に水が噴射されるようになっているので、左右植付体26L・26Rから甘薯苗Cが放出されるのを助長すると共に、左右植付体26L・26Rの内側に付着した泥土を洗い流し、同時に、甘薯苗Cの茎葉に付着した下記の薬剤を洗い流す作用もする。そして、その水は植付けた甘薯苗C付近の土中に灌水される。
【0096】
その後、再び、植付具26は最上昇位置に戻る。植付具26の軌跡Bで示す動作は(図1参照)、回転テーブル71の回転動作と同期しており、供給カップ72が所定位置Gに来た時に(図3参照)、植付具26は最上昇位置に戻るように構成されている。
【0097】
尚、回転テーブル71の下方にある各駆動部を覆うように防護カバー50が、作業者の作業位置との間を仕切るように配置されているので、作業者が駆動部と接触することを防止出来る。
【0098】
また、植付具26の前方には圃場面感知プレート36が設けられている。圃場面感知プレート36は左右方向の回動支点軸36a回りに回動可能に設けられ、接地することによる圃場面感知プレート36の回動に伴って甘薯苗植付装置60が圃場に所定の深さで甘薯苗Cを植付けるように左右後輪5を昇降制御する。
【0099】
鎮圧輪8は、甘薯苗Cの植付位置の後方位置において設けられ、横軸37回りに上下揺動自在な鎮圧輪支持フレーム38に軸受支持されている。また、この鎮圧輪8は、甘薯苗移植機1の進行に伴って畝面を転動し、甘薯苗Cが植付けられた後の移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、植付具26で移植穴の前後、特に後方に盛り上がった土手を平らに鎮圧する。
【0100】
これにより、移植した甘薯苗Cの周辺の土壌を平らにすることができ、甘薯苗Cの成育を良好にできる。
尚、上記実施の形態では、振り子式の左右傾斜センサ23を設けて、この左右傾斜センサ23の検出により水平用油圧シリンダ22を作動させ機体を左右水平に維持する構成の場合について説明したが、これに限らず例えば、左右傾斜センサ23を備えずに、水平用油圧シリンダ22を作業者自身が手動でコントロールするためのマニュアル式の水平レバーが、作業者が甘薯苗Cを供給カップ72に補給する作業位置(作業スペース)側であって、左後輪5の上方に配置されている構成でも良い。
【0101】
この場合、油圧切替バルブ部17に備えられた左右傾斜バルブを、水平レバーによって操作することにより、水平用油圧シリンダ22が作動する構成である。即ち、作業者が水平レバーを左右方向に移動させることにより、左右傾斜バルブを操作する構成である。
【0102】
また、本発明の移植対象物の一例として上記実施の形態では、甘薯苗を移植する場合について説明したが、これに限らず如何なる苗を移植する場合においても本発明が適用できるものであり、上記と同様の効果を発揮する。
【符号の説明】
【0103】
26 植付具
26L 左植付体
26R 右植付体
72 供給カップ
72a 供給カップ内壁面の傾斜面
72b 清掃部材(ブラシ)
200 受け部材(甘薯苗支持板)
200a 凹部(溝)
201 供給口
230 灌水装置
250 薬剤供給装置
C 苗
D 姿勢変更機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗(C)が補給される上端と下端に開口を有する複数個の供給カップ(72)をループ状に移動自在に構成し、供給カップ(72)内の苗(C)を下方に供給する供給口(201)が形成された受け部材(200)をループ状に移動する供給カップ(72)の下側に設け、該供給口(201)から供給される苗(C)を上動位置で受けて下動位置で圃場に植付ける植付具(26)を設けた移植機において、受け部材(200)上面の供給カップ(72)下端開口に対応する位置に供給カップ(72)がループ状に移動する軌跡に沿って凹部(200a)を形成したことを特徴とする移植機。
【請求項2】
供給カップ(72)の内壁面を苗(C)が回転テーブル71の回転方向前方に傾斜して立った状態で供給カップ(72)の移動方向中央部に保持できる傾斜面(72a)に構成したことを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
受け部材(200)の凹部(200a)に対向する位置の供給カップ(72)下端部に清掃部材(72b)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の移植機。
【請求項4】
植付具(26)を機体の左右方向に開閉する左右植付体(26L・26R)で構成し、該左右植付体(26L・26R)の内部前壁面を機体側面視で緩やかに前方傾斜した構成とし、内部後壁面を機体側面視で垂直又は略々垂直状に構成したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移植機。
【請求項5】
植付具(26)が下動位置で圃場に苗(C)を植付ける時に、植付具(26)を前傾傾斜状態に姿勢変更する姿勢変更機構(D)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移植機。
【請求項6】
供給カップ(72)内の苗(C)が供給口(201)から落下した後で作業者が供給カップ(72)内に苗(C)を供給する位置よりも前に、供給カップ(72)内に粉粒状薬剤を供給する薬剤供給装置(250)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の移植機。
【請求項7】
植付具(26)が下動位置で圃場に苗(C)を植付ける時に、植付具(26)内部に保持された苗(C)の上部に水を放出する灌水装置(230)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の移植機。
【請求項8】
苗(C)を上動位置で受けて下動位置で圃場に植付ける植付具(26)を設けた移植機において、上動位置で苗(C)を受ける時は閉じており下動位置まで内部に苗を保持し、下動位置で機体左右方向に平行又は略々平行に移動して開いて圃場に苗(C)を植付ける左右植付体(26L・26R)を設けたことを特徴とする移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−187081(P2012−187081A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55638(P2011−55638)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】