説明

移載装置

【課題】色替機構における色替バルブや配管の交換作業の手間を軽減することのできる移載装置を提供する。
【解決手段】移載装置1は、塗料カートリッジ5をストックするストック機構7と、当該ストック機構7からの塗料カートリッジ5の取出し及び塗装機の装着部までの塗料カートリッジ5の運搬を行うカートリッジ交換機構8と、ストック機構7から取出された塗料カートリッジ5に塗料を充填する充填機構9と、所定の塗料供給源から供給される各色塗料を択一的に選択して充填機構9へ供給する色替機構10とを備えている。さらに、色替機構10は、摺動移動可能に構成され、充填機構9との相対位置が可変となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料カートリッジに塗料を充填し、当該塗料カートリッジを塗装装置に搭載する移載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディ等のワークの塗装は、例えば塗料カートリッジを搭載した塗装装置によって行われる。この塗料カートリッジは塗装装置に対し着脱可能に装着されるものであり、所定の移載装置によって塗料を充填し、塗装装置に搭載されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
塗料カートリッジには様々な色の塗料が充填されるため、移載装置には、塗料カートリッジへ塗料を充填するための充填機構とともに、塗料供給源から塗料配管を介して供給される各色塗料を色替バルブで択一的に選択して充填機構へ供給する色替機構が設けられている。
【0004】
色替機構には、充填機構と接続されるマニホールドに多数の色替バルブが装着されており、各色替バルブには各種接続ポートを介して、塗料供給源から塗料を供給する塗料配管や、当該色替バルブを空気圧により開閉操作するためのエアを供給するエア配管等が接続されている。
【特許文献1】特開平11−000591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、色替機構には多数の配管が重なり合うように接続され、配管の接続部が他の配管によって覆われるなどしているため、色替バルブや配管の交換時等において所定の色替バルブや配管を取外したり、取付けたりする作業を容易には行えなかった。加えて、移載装置が塗装ブース内に配置される場合には、移載装置を比較的コンパクトな構成とせざるを得ず、色替機構の上記配管接続側とは反対側においても、色替機構と充填機構との距離が必然的に近くなってしまうため、作業スペースが狭くなり、さらに上記作業が困難となるおそれがある。移載装置の配置位置によっては作業者の手すら届かなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明では、色替機構における色替バルブや配管の交換作業の手間を軽減することのできる移載装置を提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.塗料カートリッジに塗料を充填し、当該塗料カートリッジを塗装装置に搭載する移載装置であって、
複数の塗料カートリッジをストックするストック機構と、
少なくとも前記ストック機構からの塗料カートリッジの取出し及び前記塗装装置までの塗料カートリッジの運搬を行うカートリッジ交換機構と、
前記ストック機構から取出された塗料カートリッジに塗料を充填する充填機構と、
色替バルブを複数装着した少なくとも1つのマニホールドを具備し、塗料供給源から塗料配管を介して供給される各色塗料を色替バルブで択一的に選択して前記充填機構へ供給する色替機構と、
前記充填機構と前記色替機構との相対位置が可変となるよう前記色替機構を摺動移動させる摺動機構とを備えたことを特徴とする移載装置。
【0009】
上記手段1によれば、色替機構を摺動移動させる摺動機構を備えることによって、充填機構と色替機構との距離を変化させることができる。従って、色替機構において多数の配管が重なり合うように接続され、配管の接続部が他の配管によって覆われるなどしていたとしても、色替バルブや配管の交換時等においては、前記摺動機構によって色替機構を充填機構から引き離し、作業者が作業を行いやすい作業スペースを確保した上で、色替バルブや配管の取外し及び取付けなどの作業を行うことができる。結果として、予め色替機構と充填機構との距離を長めに設定しておくなど装置を大型化することなく、色替機構における色替バルブや配管の交換作業を容易に行うことができるようになる。
【0010】
手段2.前記色替機構の塗料吐出部と前記充填機構の塗料導入部との間を、ワンタッチで着脱可能な継手手段を介して接続したことを特徴とする手段1に記載の移載装置。
【0011】
上記手段2によれば、色替機構を摺動移動させる場合に、両者間の塗料供給経路をワンタッチで接続したり、接続解除したりすることができ、色替バルブや配管の交換作業をより効率よく行うことができる。色替機構を摺動移動させる場合には、色替機構と充填機構をフレキシブルな長めの塗料配管で接続することも考えられるが、このようにすると両者間の塗料供給経路(配管長)が長くなってしまい、塗装終了後や色替時の洗浄に時間がかかるだけでなく、多量の残存塗料が無駄になってしまうおそれがある。これに対し、本手段によれば両者間の塗料供給経路をできる限り短くすることができ、そのような不具合を低減することができる。ひいては、洗浄時におけるシンナー量を低減し、VOC(揮発性有機化合物)の排出量を低減することができる。
【0012】
手段3.前記マニホールドは、前記色替バルブを上下方向に沿って複数装着可能に構成されるとともに、上下方向を軸に回動可能に構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の移載装置。
【0013】
上記手段3によれば、色替バルブや配管の交換時等において、マニホールドの向きを変えることができ、色替バルブや配管の交換作業をさらに容易に行うことができるようになる。
【0014】
手段4.前記色替機構は、摺動操作用の把手部を備えていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の移載装置。
【0015】
上記手段4によれば、色替機構の摺動操作が容易となり、操作性の向上を図ることができる。
【0016】
手段5.前記色替機構の摺動を規制する規制手段を備えたことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の移載装置。
【0017】
上記手段5によれば、色替機構を摺動量させる際に、色替機構が周囲の部材にぶつかってしまうような不具合を防止でき、色替機構の破損や故障を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、移載装置の一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。図1は移載装置の側面斜視図であり、図2は移載装置の概略構成を説明するための平面模式図であり、図3は充填機構及び色替機構の概略構成を説明するための側面模式図である。なお、各図面では、便宜上、各種配管を点線で示すか又は省略している。
【0019】
図1,2に示す移載装置1は、塗装ブース内において、自動車ボディ等のワークの塗装を行う塗装装置(塗装用ロボット又は自動塗装装置)の近傍に配置され、前記塗装装置の塗装機3に着脱可能に装着される塗料カートリッジ5を交換するものである。
【0020】
移載装置1は、塗料未充填の塗料カートリッジ5をストックするストック機構7と、当該ストック機構7からの塗料カートリッジ5の取出し及び塗装機3の装着部3aまでの塗料カートリッジ5の運搬を行うカートリッジ交換機構8と、ストック機構7から取出された塗料カートリッジ5に塗料を充填する充填機構9と、所定の塗料供給源から供給される各色塗料を択一的に選択して前記充填機構9へ供給する色替機構10とを備え、これら各機構がフレームセット11によって一体的に組付けられてユニット化されている。
【0021】
塗料カートリッジ5は、略円柱形状をなし、塗装機3の装着部3aに対向する側に塗料充填及び吐出用の図示しない塗料充填吐出口が形成されている。
【0022】
ストック機構7は、上下方向に並ぶ複数のターンテーブル12を備えており、各ターンテーブル12上に複数の塗料カートリッジ5が等角度間隔に格納されるように構成されている。
【0023】
カートリッジ交換機構8は、リフト15により昇降しかつ水平方向に回動するチャッキングテーブル16と、塗料カートリッジ5を把持しチャッキングテーブル16の長手方向に沿って往復動するハンドリングユニット17とを備えている。
【0024】
図3に示すように、充填機構9は、塗料カートリッジ5の塗料充填吐出口に接続される充填コネクタ21を有する充填部22と、当該充填部22を昇降させる駆動部23と、後述する中継部55と塗料配管25を介して接続される塗料導入部26とを備えている。
【0025】
色替機構10は、上記フレームセット11の底部11aに固定された台座部31上に摺動可能に取付けられている。より詳しくは、色替機構10は、台座部31の上面に形成されたガイドレール32に摺動可能に係合されたベース部33と、当該ベース部33の前端側(充填機構9側)において立設された支持軸部35と、当該支持軸部35の上端部において上下方向を軸に回動可能に設けられたゲートブロック36と、ベース部33の後端側において立設された後基部37と、当該後基部37の上端部に立設された一対の支持軸部38a,38bと、当該支持軸部38a,38bの上端部においてそれぞれ上下方向を軸に回動可能に設けられたマニホールドブロック39a,39bと、前記後基部37の後面に設けられた摺動操作用の把手部40とから構成されている。また、台座部31の前後端部には、ベース部33の前後端部にそれぞれ当接可能なように規制手段としてのストッパ41a,41bが設けられている。上記ガイドレール32及びベース部33によって本実施形態における摺動機構が構成される。ゲートブロック36やマニホールドブロック39a,39bは本実施形態におけるマニホールドを構成する。
【0026】
各マニホールドブロック39a,39bには、それぞれ上下方向に沿って複数の色替バルブ43が装着されている。各色替バルブ43には、図示しない塗料供給源から塗料を供給する塗料配管44や、当該色替バルブ43を空気圧により開閉操作するためのエアを供給するエア配管45等の各種配管が各種接続ポート46を介して接続されている。一方、各マニホールドブロック39a,39bには、前記塗料配管44と連通する図示しない塗料供給経路が形成され、当該塗料供給経路が塗料配管50を介してゲートブロック36の図示しない塗料供給経路に接続されている。また、ゲートブロック36の塗料供給経路の下流側端部には塗料吐出部51が設けられている。
【0027】
充填機構9と色替機構10との間には中継部55が設けられており、当該中継部55とゲートブロック36の塗料吐出部51とが、ワンタッチで着脱可能な継手手段としての連結カプラ57によって接続されている。
【0028】
次に移載装置1の一連の動作態様について説明する。上記ストック機構7、カートリッジ交換機構8及び充填機構9は、所定の制御装置により駆動制御されるよう構成されている。
【0029】
まず、ストック機構7においてターンテーブル12が回転制御され、所定の塗料カートリッジ5が取出位置P1(図2参照)に位置決めされると、チャッキングテーブル16がその位置まで上昇し、ハンドリングユニット17が塗料カートリッジ5を取出す。
【0030】
続いて、チャッキングテーブル16が塗料充填位置P2において下降した後、充填機構9の充填部22が上昇し、充填コネクタ21が塗料カートリッジ5の塗料充填吐出口に接続され、塗料が充填される。塗料の充填が終了すると、充填部22が下降する。
【0031】
そして、塗装機3が交換位置P3に位置決めされると、チャッキングテーブル16が回動し、交換位置P3に向く。続いて、ハンドリングユニット17が塗料充填済みの塗料カートリッジ5を交換位置P3まで押し込んでいくと、当該塗料カートリッジ5がチャッキングテーブル16から塗装機3の装着部3aに乗り移る。当該塗料カートリッジ5に押されるようにして、それまで塗装機3の装着部3aに搭載されていた使用済み塗料カートリッジ5が回収テーブル60に押出される。その後、塗装機3が交換位置P3を離れると、再び回収テーブル60からハンドリングユニット17によって使用済みの塗料カートリッジ5が回収され、洗浄後、ストック機構7に戻される。
【0032】
次に、色替バルブ43の交換作業について説明する。まず、中継部55において連結カプラ57をワンタッチ操作し、中継部55とゲートブロック36の塗料吐出部51と接続を解除する。
【0033】
そして、色替機構10の把手部40を持ち、当該色替機構10を充填機構9と離間する方向へ、図4,5に示すようにベース部33の後端部がストッパ41bに当接するまで摺動させる。その後、所望のゲートブロック36又はマニホールドブロック39a,39bの向きを変え、所望の色替バルブ43を交換する。
【0034】
交換作業終了後、再び色替機構10を充填機構9方向へ摺動させ、中継部55において連結カプラ57を介して中継部55とゲートブロック36の塗料吐出部51と接続する。
【0035】
以上詳述したように、色替機構10が摺動移動可能なように構成されているため、充填機構9と色替機構10との距離を変化させることができる。従って、色替機構10において多数の塗料配管44等が重なり合うように接続され、塗料配管44等の接続ポート46が他の配管によって覆われるなどしていたとしても、色替バルブ43や塗料配管44等の交換時においては、色替機構10を充填機構9から引き離し、作業者が作業を行いやすい作業スペースを確保した上で、色替バルブ43や塗料配管44等の取外し及び取付けなどの作業を行うことができる。結果として、予め色替機構10と充填機構9との距離を長めに設定しておくなどユニットを大型化することなく、色替機構10における色替バルブ43や塗料配管44等の交換作業を容易に行うことができるようになる。
【0036】
さらに、色替機構10の塗料吐出部51と、充填機構9の塗料導入部26とをワンタッチで接続したり、接続解除したりすることができるため、色替バルブ43や塗料配管44等の交換作業をより効率よく行うことができる。また、両者間の塗料供給経路をできる限り短くすることができ、塗装終了後や色替時の洗浄に時間がかかるだけでなく、多量の残存塗料が無駄になってしまうおそれを低減することができる。ひいては、洗浄時におけるシンナー量を低減し、VOC(揮発性有機化合物)の排出量を低減することができる。
【0037】
加えて、ゲートブロック36やマニホールドブロック39a,39bの向きを変えることができるため、色替バルブ43や塗料配管44等の交換作業をさらに効率よく行うことができる。
【0038】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0039】
(a)ストック機構7、カートリッジ交換機構8、充填機構9及び色替機構10の各々の構成は上記実施形態に限られるものではない。
【0040】
(b)中継部55を省略し、充填機構9及び色替機構10が直接的に接続される構成としてもよい。
【0041】
(c)連結カプラ57を省略し、充填機構9と色替機構10とをフレキシブルな長めの塗料配管で接続した構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】一実施形態における移載装置の側面斜視図である。
【図2】移載装置の概略構成を説明するための平面模式図である。
【図3】充填機構及び色替機構の概略構成を説明するための側面模式図である。
【図4】摺動移動させた状態の色替機構の平面図である。
【図5】摺動移動させた状態の色替機構の斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1…移載装置、3…塗装機、5…塗料カートリッジ、7…ストック機構、8…カートリッジ交換機構、9…充填機構、10…色替機構、26…塗料導入部、32…摺動機構を構成するガイドレール、33…摺動機構を構成するベース部、36…ゲートブロック、39a,39b…マニホールドブロック、40…把手部、43…色替バルブ、44…塗料配管、46…接続ポート、51…塗料吐出部、55…中継部、57…継手手段としての連結カプラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料カートリッジに塗料を充填し、当該塗料カートリッジを塗装装置に搭載する移載装置であって、
複数の塗料カートリッジをストックするストック機構と、
少なくとも前記ストック機構からの塗料カートリッジの取出し及び前記塗装装置までの塗料カートリッジの運搬を行うカートリッジ交換機構と、
前記ストック機構から取出された塗料カートリッジに塗料を充填する充填機構と、
色替バルブを複数装着した少なくとも1つのマニホールドを具備し、塗料供給源から塗料配管を介して供給される各色塗料を色替バルブで択一的に選択して前記充填機構へ供給する色替機構と、
前記充填機構と前記色替機構との相対位置が可変となるよう前記色替機構を摺動移動させる摺動機構とを備えたことを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記色替機構の塗料吐出部と前記充填機構の塗料導入部との間を、ワンタッチで着脱可能な継手手段を介して接続したことを特徴とする請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
前記マニホールドは、前記色替バルブを上下方向に沿って複数装着可能に構成されるとともに、上下方向を軸に回動可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移載装置。
【請求項4】
前記色替機構は、摺動操作用の把手部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移載装置。
【請求項5】
前記色替機構の摺動を規制する規制手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−341192(P2006−341192A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169215(P2005−169215)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】