説明

種々の形式の検査のための眼科用診断装置

本発明は、所与の位置(4)から視認可能な第1の物体(6)及び所与の位置(4)から視認可能な第2の物体(7,8)を有し、各物体は、眼科用テストパターンを表示するよう具体化されており、視認可能な第2の物体(7,8)は、視認可能な第1の物体(2,6)と所与の位置(4)との間に配置されている眼科用診断装置に関する。この装置は、視認可能な第1及び第2の物体を視認可能な第2の物体(7,8)がその記号を示す状態にあり且つ視認可能な第1の物体(6)がその一様な状態にある第1の形態と、視認可能な第2の物体(7,8)がその透明な状態にあり且つ視認可能な第1の物体(6)がその記号を示す状態にある第2の形態に配置するよう具体化された視認可能な第1及び第2の物体用の制御モジュール(5)を更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用診断装置に関する。
本発明は特に、視覚の欠陥、例えば、屈折異常(非正視)、斜位及び色覚異常(部分色盲)を識別するために検査を患者に対して行い、測定、例えば患者の視力の測定を行う装置に関する。
【0002】
この種の装置は、検出されるべき欠陥に適合した種々のテスト又は検査表を表示するようになっている。患者は、検査が進むにつれて何が見えるかを尋ねられ、診断は、その人の応答の関数として行われる。
【0003】
かくして、検査表の中には、色付きのものがあり(例えば、融像又は色覚に関する視覚欠陥を検出するよう設計された検査)、大きなパターン(例えば、乱視の検査又は斜位の測定のための「ペアレントダイヤル(Parent dial)」を表示するものもあり、更に、これとは対照的に、非常に高い精度で製造されなければならない非常に小さなパターン(ランドルト環又は高い明瞭度又は視力のための他の指標)を表示するものもある。これら検査表も又、国ごとに様々である。
【0004】
したがって、これらの検査表には、非常に異なる特性を持つ多種多様な検査表を表示するようになった装置を製造するのが困難なほど色、寸法及び表示精度の異なる非常に多種類のものがある。
【0005】
事実、例えばISO規格8596に適合する小さな寸法の指標を利用した検査表は、高い表示精度を必要とし、これに対し、他の検査表、例えば乱視検査表は、特定の表示精度を必要としないで、大きな画像又はカラー画像の表示を必要とする。
【0006】
図形スクリーンに関し、表示精度は、小さな画素サイズ、換言すると、単位面積当たりの高い解像度で達成される。
【0007】
精度を必要とする検査表と大きなパターンを表示する検査表の両方を表示することができる解像度を持つ市販のスクリーンは存在しない。それにもかかわらず、互いに異なる眼科用検査表を表示する可能性は種々ある。或る装置は、例えば検査表の全てが印刷されているスクリーン印刷ストリップを用いている。ストリップの一部は、アクティブな窓内に表示され、機械式システムは、ストリップを動かしてアクティブな窓の前に所要の検査表を表示する。
【0008】
上述のシステムは、事実上全ての選別試験を生じさせる機械的システムであり、スクリーン印刷されたストリップを他の国又は用途に適合させるようスクリーン印刷ストリップを変えることができるよう設計されている。
【0009】
他のこれに類似した装置は、ドラム又はターンテーブル上に印刷された検査表を用い、ドラム又はターンテーブルの回転により、アクティブな窓内に表示しようと考えるテストが提供される。
【0010】
他の装置は、例えば、陰極線管(CRT)タイプ又は液晶ディスプレイ(LCD)タイプの図形スクリーンを用いている。これらスクリーンは、機械的な動きを全く必要としないで、非常に多くの検査表を単一の表面上に提供する。したがって、検査表を従来型コンピュータスクリーン上に表示するための多くのスクリーニングソフトウェアパッケージがある。検査表は又、修正するのが非常に容易であり又は国に合わせて適合させるのが非常に容易である。というのは、かかる検査表は、ソフトウェアの修正を必要とするに過ぎないからである。これらシステムの欠点は、スクリーンの解像度が、妥当なサイズの画像と所要の精度、例えば、上述のISO規格により必要とされる精度で小さな指標を製造するのに十分小さな画素の両方を得るには不十分であるということにある。
【0011】
さらに、他の装置は、スクリーン上のあらかじめ定められたパターンを表示することに限定されるが、小さな指標を非常に正確に表示することができる。
【0012】
本発明の目的は、大きなパターンと小さな指標の両方を含む検査表の表示を可能にするために上述したタイプの装置を改良するよう構成可能な図形表示を用いることにある。
【0013】
この目的のため、本発明は、眼科用診断装置であって、所定の位置から視認されるべき第1の物体及び前記所定の位置から視認されるべき第2の物体を有し、各物体は、眼科用テストパターンを表示するようになっており、視認されるべき前記第2の物体は、視認されるべき前記第1の物体と前記所定の位置との間に配置され、視認されるべき前記第1の物体は、一様な状態及び記号を提示するための状態を呈し、視認されるべき前記第2の物体は、透明な状態及び記号を提示するための状態を呈し、前記眼科用診断装置は、視認されるべき前記第1及び前記第2の物体が、視認されるべき前記第2の物体がその記号を示す状態にあり且つ視認されるべき前記第1の物体がその一様な状態にある第1の形態と、視認されるべき前記第2の物体がその透明な状態にあり且つ視認されるべき前記第1の物体がその記号を示す状態にある第2の形態とを取らせるようになった視認されるべき前記第1及び前記第2の物体用の制御モジュールを更に有する装置に関する。
【0014】
大きなパターンを表示するようになった視認されるべき第1の物体と小さな指標を表示するようになった視認されるべき第2の物体の組合せにより、装置に二重の機能が与えられる。
【0015】
視認されるべき物体の各々の2つの取り得る状態は、制御モジュールによって管理され、したがって、所要の形態を検査表のタイプの関数として選択できるようになる。
【0016】
かくして、互いに異なる形式の検査表を同一装置で容易且つ迅速に実施できる。また、視認されるべき各物体の専門化又は細分化は、物体をこれらのそれぞれの用途に合わせて最適化でき、安価に製造できるということを意味している。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、本装置は、以下に列記された特徴を別々に又は組み合わせた状態で更に組み合わせることができる。
【0018】
−視認されるべき前記第1の物体は、第1の図形スクリーンを含み、
−視認されるべき前記第2の物体は、第2の図形スクリーンを含み、
−視認されるべき前記物体のうちの一方は、視認されるべき前記物体のうちの他方よりも単位面積当たりの解像度が高く、
−解像度の高い方の視認されるべき前記物体は、視認されるべき前記他方の物体と前記位置との間に配置され、
−前記第1の図形スクリーンと前記第2の図形スクリーンは、互いに実質的に平行であり、
−前記第1の図形スクリーンと前記第2の図形スクリーンは、重ね合わされており、
−前記第1の図形スクリーンは、カラースクリーンであり、前記第2の図形スクリーンは、液晶ディスプレイであり、
−前記第2の図形スクリーンは、あらかじめ定められた眼科用テストパターンがエッチングされた液晶ディスプレイを含み、
−視認されるべき前記第2の物体は、第2の図形スクリーン及び前記第2の図形スクリーンを反射するようになった反射物体を含み、
−視認されるべき前記第1の物体の一部である第1の図形スクリーンは、視認されるべき前記第2の物体の一部である前記第2の図形スクリーンに垂直であり、前記反射物体は、2つの前記図形スクリーンに対して斜めに設けられた半透明シートを含み、
−前記第2の図形スクリーンは、前記第1の図形スクリーンよりも面積が小さい。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の非限定的な好ましい実施形態についての以下の説明に照らして明らかになろう。なお、かかる説明は、添付の図面を参照して行われる。
【0020】
図1は、眼科用診断装置の主構成要素を概略的に示している。制御モジュール1が、第1の図形スクリーン2及び第2の図形スクリーン3に連結されている。この第1の実施形態では、図形スクリーン2,3は、色の検査表を含む多くのタイプの検査表を表示するようになったディスプレイを形成すると共に機械的な動き無く高い精度を必要とする検査表を表示するよう重ね合わされている。
【0021】
第1の図形スクリーン2は、中程度の解像度、例えば、15インチスクリーンの場合横800本、縦600本のLCD、CRT又はこれらと同等な形式のカラー図形スクリーンである。このスクリーンは、色を必要とする検査表、例えば、斜位検査表、融像検査表、2色検査表、ヒシアラ(Hishiara)検査表を表示するために使用される。これは又、他のタイプの検査表、例えば、追跡検査表、視力検査表(比較的低い視力用)及び乱視検査表を表示するのにも用いられる。
【0022】
これら種々の検査表は、高い表示解像度を必要とはしないという共通の特徴を持っている。したがって、図形スクリーン2は、比較的安価な通常のコンピュータディスプレイであってもよい。
【0023】
第2の図形スクリーン3は、第1の図形スクリーン2では可能ではない高い精度を必要とする検査表、例えば、高視力のための視力検査表を表示するために用いられる。
【0024】
この形態では、第2の図形スクリーン3は、第1の図形スクリーン2と同一サイズの透過型液晶ディスプレイスクリーンである。高視力指標に対応したパターン9が、製造の際に液晶ディスプレイスクリーンに直接エッチングされている。かくして、これらパターンは、画素から成っているわけではなく、所定の形状を持つ液晶スクリーンの領域をアクティブな状態にしたときに見える。各指標は、他のものとは独立して照明されるのがよい。
【0025】
第2の図形スクリーン3の液晶は励起されないとき、スクリーン3は、透明な状態なままである。
【0026】
コンピュータ及び適当なソフトウェアから成る制御モジュール1は、例えば、それ自体で第1の表示機能をもたらす。この制御モジュールは、第1のスクリーン2上にユーザにより選択された或る特定の検査表を表示するために用いられ、又、この第1のスクリーン2上に、一様な表面、例えば白色背景を表示するためにも用いられる。
【0027】
制御モジュール1は、第2のスクリーン3を構成する液晶セルの各々を動作状態にしたり非動作状態にしてこれにエッチングされている指標のうちの或る特定のものが見えるようにし、或いは、セルの全てを非動作状態にすることによりこの第2のスクリーン3を完全に透明にするようになっている。
【0028】
制御モジュール1は、第1のスクリーン2上及び第2のスクリーン3上の表示を協調させる第2の機能を更に有する。制御モジュール1は、事実、第1のスクリーン2がテストパターンを表示するよう指令され、第2のスクリーン3が透明なままの第1の表示形態及び第1のスクリーン2が一様な白色画像を表示するよう指令され、第2のスクリーン3がエッチングされた指標を表示する第2の表示形態を提供するようになっている。
【0029】
第1の表示形態では、診断装置を視認している患者の目4は、第1のスクリーン2によって表示された検査表のみを見ている。
【0030】
第2の表示形態では、第2のスクリーン3により表示された検査表は、第1のスクリーン2が構成している背景とのこれらのコントラストにより見える。後者は好ましくは、この場合これがその一様な状態にあるときに照明される。この形態で目4が見ているものは、図2に示されており、図2は、2つの重ね合わされたスクリーン2,3を示しており、第1のスクリーン2のクロスハッチングは、第1のスクリーンがその「白色スクリーン」形態にあることを示し、これに対し、第2のスクリーン3上の指標(この場合、円が途切れた記号9)が、白色背景に対して前景に見える。
【0031】
図3及び図4は、本発明の第2の実施形態に対応している。
【0032】
眼科用診断装置は、第1の図形スクリーン6及び第2の図形スクリーン7に連結された制御モジュール5を更に有している。図形スクリーン6,7は、互いに垂直に配置され、半透明シート8が、スクリーン6,7の各々に対して約45°の角度をなして2つのスクリーン6,7相互間に斜めに挿入されている。
【0033】
第1の図形スクリーン6は、図1及び図2に示す第1の実施形態の第1の図形スクリーン2とほぼ同じである。第2の図形スクリーン7は、第1のスクリーン6と実質的に同じ解像度であるが、サイズがこれよりも非常に小さなスクリーンであり、したがって、第2のスクリーン7は、第1のスクリーン6よりも高い単位面積当たりの解像度を有するようになっている(即ち、第2のスクリーン7の画素の最小サイズは、第1のスクリーン6の画素の最小サイズよりも小さい)。
【0034】
この場合、制御モジュール5は又、第1のスクリーン6が動作状態にされ、テストパターンを表示し、第2のスクリーン7がオフにされている第1の形態をとるようになっている。銀で被覆されていない鏡の特性を有する半透明シート8は、患者の目4が第1のスクリーン6を見ることができるようにするが、オフにされた状態の第2のスクリーン7の画像を反射しない。
【0035】
患者の目4が図4に示された画像を見ている制御モジュール5の第2の形態では、第1のスクリーン6は、オフにされ、第2のスクリーン7は、指標9を表示するよう動作状態にされている。半透明シート8が設けられているので、目4は、シート8の表面から反射された第2のスクリーン7上のパターンだけを知覚する。この第2の形態の変形例は、これまた照明されるべき第1のスクリーン6についてのものである。この場合、スクリーン7の反射画像が重ね合わされていないスクリーン6の部分だけが、照明されなければならない。
【0036】
第1の実施形態及び第2の実施形態として今説明した眼科用診断装置は、以下に示す仕方で用いられる。
【0037】
この装置は、安価に製造された第1の図形スクリーン2,6を有し、その特性(単位面積当たりの解像度)は、ソフトウェアインタフェースによりユーザにより選択された多くの眼科用テストパターンを表示するようになっている。
【0038】
第2の図形スクリーン3,7は、高い精度で製造されなければならない検査表を表示するようになっている。
【0039】
第2のスクリーン2,3,6,7は、物理的に又は光学的に重ね合わされ、これらスクリーンは、制御モジュール1,5によって協調され、かかる制御モジュールは、スクリーンのうちの一方を動作状態にし、他方、他方のスクリーンは非動作状態のままであるようにする。ユーザは、制御モジュール1,5のどの形態が最も適しているかを直接選択することができる。さらに、制御モジュール1,5は、ユーザにより選択された検査表に適当な形態を自動的に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】患者の目が本発明の診断装置の第1の実施形態を見ている状態の側面図である。
【図2】図1の患者により視認された画像を表す図である。
【図3】図1と類似した図であり、本発明の診断装置の第2の実施形態を示す図である。
【図4】図2に類似した図であり、本発明の診断装置の第2の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用診断装置であって、所定の位置(4)から視認されるべき第1の物体(2,6)及び前記所定の位置(4)から視認されるべき第2の物体(3,7,8)を有し、各物体は、眼科用テストパターンを表示するようになっており、視認されるべき前記第2の物体(3,7,8)は、視認されるべき前記第1の物体(2,6)と前記所定の位置(4)との間に配置され、視認されるべき前記第1の物体(2,6)は、一様な状態及び記号を提示するための状態を呈し、視認されるべき前記第2の物体(3,7,8)は、透明な状態及び記号を提示するための状態を呈し、前記眼科用診断装置は、視認されるべき前記第1及び前記第2の物体が、視認されるべき前記第2の物体(3,7,8)がその記号を示す状態にあり且つ視認されるべき前記第1の物体(2,6)がその一様な状態にある第1の形態と、視認されるべき前記第2の物体(3,7,8)がその透明な状態にあり且つ視認されるべき前記第1の物体(2,6)がその記号を示す状態にある第2の形態とを取らせるようになった視認されるべき前記第1及び前記第2の物体用の制御モジュール(1,5)を更に有する、装置。
【請求項2】
視認されるべき前記第1の物体は、第1の図形スクリーン(2,6)を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
視認されるべき前記第2の物体は、第2の図形スクリーン(3,7)を含む、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
視認されるべき前記物体のうちの一方は、視認されるべき前記物体のうちの他方よりも単位面積当たりの解像度が高い、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項5】
解像度の高い方の視認されるべき前記物体は、視認されるべき前記他方の物体と前記位置との間に配置されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記第1の図形スクリーン(2)と前記第2の図形スクリーン(3)は、互いに実質的に平行である、請求項2又は3記載の装置。
【請求項7】
前記第1の図形スクリーン(2)と前記第2の図形スクリーン(3)は、重ね合わされている、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記第1の図形スクリーンは、カラースクリーン(2)であり、前記第2の図形スクリーンは、液晶ディスプレイ(3)である、請求項6又は7記載の装置。
【請求項9】
前記第2の図形スクリーンは、あらかじめ定められた眼科用テストパターン(9)がエッチングされた液晶ディスプレイ(3)を含む、請求項8記載の装置。
【請求項10】
視認されるべき前記第2の物体は、第2の図形スクリーン(7)及び前記第2の図形スクリーン(7)を反射するようになった反射物体(8)を含む、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項11】
視認されるべき前記第1の物体の一部である第1の図形スクリーン(6)は、視認されるべき前記第2の物体の一部である前記第2の図形スクリーン(7)に垂直であり、前記反射物体は、2つの前記図形スクリーン(6,7)に対して斜めに設けられた半透明シート(8)を含む、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記第2の図形スクリーン(7)は、前記第1の図形スクリーン(6)よりも面積が小さい、請求項11記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−511311(P2007−511311A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540517(P2006−540517)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002942
【国際公開番号】WO2005/053520
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(591019759)エシロール アンテルナショナル コムパニー ジェネラル ドプテイク (27)