種苗の育苗装置
【課題】イチゴ等の育苗では頭上潅水がほとんど行われているが、灌水ムラ、水滴の飛散による病害の蔓延等、問題点が多い。また、夏場の育苗であるため育苗培土の温度が高温となるため根ぐされも多く発生し、良苗生産が難しい。
【解決手段】育苗装置は、種苗4を植え付けする培地3を充填する収納部2を複数形成したセルトレイ1と、セルトレイ1の上面に被せられる保水性シート5と、保水性シート5に水分を供給するための潅水具6とを備える。保水性シート5は、各セルトレイ1に設けている各々の収納部2の開口部内に位置する点滴部7を備え、開口部に位置する点滴部7が、保水性シート5に供給される水を収納部2に滴下して供給する。
【解決手段】育苗装置は、種苗4を植え付けする培地3を充填する収納部2を複数形成したセルトレイ1と、セルトレイ1の上面に被せられる保水性シート5と、保水性シート5に水分を供給するための潅水具6とを備える。保水性シート5は、各セルトレイ1に設けている各々の収納部2の開口部内に位置する点滴部7を備え、開口部に位置する点滴部7が、保水性シート5に供給される水を収納部2に滴下して供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の種苗を植え付けしている培地に点滴状に灌水するための種苗の育苗装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の農作物等の植物の灌水方式は、頭上灌水が広く利用されてきた。例えば、種苗の育苗においては、頭上灌水では、複数の種苗を配置した種苗ポットの上方に配置された散水口からシャワー状に散水されて水分が供給される。しかしながら、この方式では、各種苗に対して均一な給水が難しいという問題があった。育苗して葉が生い茂るようになると、葉に遮られて根本まで水がかからず、種苗毎に給水のムラができやすくなり、育成の良い種苗程、給水ができなくなる傾向にあり、均質な種苗を育成できないという問題があった。
【0003】
とくに、イチゴの育苗においては、炭疽病などの病害の伝染が問題となっている。炭疽病等の病害は、一般に雨や散水の水滴によって周囲の株に伝搬する。したがって、頭上潅水では、散水によって水と共に病害も散布してしまうこととなる。特に散水した水滴が土や泥を跳ね上げる結果、葉や茎の表面を傷付けてしまい、ここから病原菌が侵入して感染する。
【0004】
さらに、イチゴの栽培においては、炭疽病に対する対策が最重視されている。炭疽病が満延するとイチゴは収穫できなくなる。このため、炭疽病が原因でイチゴの生産を中止する農家もあるなど、日本全国において、炭疽病をいかに少なくできるが最重要課題となっている。さらに、農薬の使用量を少なくしながら炭疽病を有効に阻止する技術が切望されている。さらに、このことに加えて、近年のイチゴは、炭疽病に対する耐性が弱くなる傾向がある。それは、品種改良が、炭疽病に対する耐性よりも、イチゴの甘さや風味を優先して行われるからである。困ったことに、美味なイチゴは炭疽病に弱くなる傾向にある。このことから、美味で高品質なイチゴの栽培には、炭疽病対策が極めて重要である。
【0005】
イチゴの炭疽病は、水滴による感染を有効に防止すると共に、育苗環境を快適にして改善できる。たとえば、夏期のイチゴの育苗環境において、培地の温度を低くすることが大切である。培地の理想的な温度は20℃前後であるが、外気温度の高い夏期において、培地温度は35℃〜40℃と極めて高くなる。このため、根の生育が悪くなると共に、培地の水に含まれる酸素濃度が低下し、根腐れを生じる可能性が高くなる。このような、植物の生育環境が悪くなった状態では、炭疽病等になりやすくなる。ただ、外気温度が極めて高い夏期に培地温度を低くすることは現実には極めて難しく、炭疽病を有効に防止する方式が切望されているのが実状である。
【0006】
複数の培地に均一に潅水する灌水方式として、ドリップ灌水あるいは点滴灌水と呼ばれる方式が開発されている(例えば、特許文献1参照)。ドリップ灌水では、灌水チューブを分岐して各種苗までドリップ灌水チューブを延長し、ドリップ状に水分を供給する。これにより、周囲に水を発散しないため水滴に起因する炭疽病などの病害の伝染を防止できる。
【0007】
しかしながら、ドリップ灌水は各々の培地に均一に給水できない欠点がある。それは、ドリップ灌水は、送水の動力源として、圧力ポンプや水中ポンプを使用し、これに送水パイプを連結し、この送水パイプに、培地に連結している灌水チューブを連結している。この構造は、水圧は送水パイプのポンプに近い部分で高く、送水パイプが長くなるほど送水圧力が次第に低くなる。その結果、30分間も灌水するとポンプに近い部分では水量が多くなって過水状態となり、ポンプから離れた部分では水量不足の不均衡状態が生ずる。従って農作物に対する影響も大きなばらつきを生じる。また、水源は、主として河川や井戸水を利用するので不純物の混入も多く、これが口径の小さい噴出ノズルに詰まりやすい欠点もある。このため、余分の水を給水する必要があって灌水量が相当に多くなり、農作物が実際に必要とする水量のほぼ10倍以上の水量を無駄に消費しているが実状である。
【0008】
また、ドリップ灌水では、各種苗にドリップ灌水チューブを延長しなければならず、設営に極めて手間がかかる欠点もある。また、各セルまで延長するドリップ灌水チューブは細いチューブを使用するため、設備コストも高くなるという問題がある。また、ドリップ灌水は、夏場の育苗において培地温度を低くできない問題もある。とくに、育苗床を複数のセルに区画したセル方式では、各々の培地が地面から離され、かつ培地の容積が小さいために周囲温度の影響を受けやすく、暑い夏期に高温になって酸欠となり易く、生育環境が悪くなって根ぐされ等が発生して、良苗生産が難しい。
【特許文献1】特開2001−186823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、極めて簡単な構造で設備コストを安価にしながら、各々の培地に水滴の跳ね返りがなく均一に潅水でき、しかも、高温環境においては、保水性シートの気化熱で培地を効率よく冷却して培地温度を低くでき、植物の生育環境を快適とし、これによって、炭疽病等の病気の発生を有効に阻止できる種苗の育苗装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の種苗の育苗装置は、上記の目的を達成するために以下の構成を備える。
本発明の第1の育苗装置は、種苗4を生育させる育苗装置であって、収納部2に充填している培地3に種苗4を植え付けし、培地3に点滴潅水して種苗4を生育させる。この育苗装置は、種苗4を植え付けする培地3を充填する収納部2を複数形成したセルトレイ1と、セルトレイ1の上面に被せられる保水性シート5と、保水性シート5に水分を供給するための潅水具6とを備えている。
保水性シート5は、各セルトレイ1に設けている各々の収納部2の開口部内に位置する点滴部7を備える。開口部に位置する点滴部7が、保水性シート5に供給される水を収納部2に滴下して培地3に供給する。
【0011】
本発明の第2の育苗装置は、保水性シート5が、収納部2の開口部の上方に位置する部分を放射状に切断して、先細り状の点滴部7を設けている。この保水性シート5は、点滴部7でもって、収納部2のほぼ中央部に点滴して灌水できる。また、切断部から種苗4を生育できる特徴もある。
【0012】
本発明の第3の育苗装置は、保水性シート5に、点滴部7の先端を重力で降下させる可撓性を有するものを使用する。この育苗装置は、保水性シート5の点滴部7から収納部2の内部に正確に点滴して灌水できる。
【0013】
本発明の第4の育苗装置は、保水性シート5を不織布とし、また本発明の第5の育苗装置は、保水性シート5を布地とする。これらの育苗装置は、保水性シート5を安価な材料としながら、充分な保水性を持たせることができる。
【0014】
本発明の第6の育苗装置は、セルトレイ1が収納部2の培地3でイチゴの種苗4を生育させる。また、本発明の第7の育苗装置は、潅水具6として、複数の給水孔12を設けている潅水ホース6Aを使用し、この潅水ホース6Aを保水性シート5の上面に配置して、潅水ホース6Aから保水性シート5に給水する。この育苗装置は、潅水具6を極めて安価としながら、保水性シート5の特定の位置に簡単に配置できる特徴がある。
【0015】
本発明の第8の育苗装置は、保水性シート5を、脱着連結具8を介してセルトレイ1の上に脱着できるように連結している。この育苗装置は、保水性シート5をセルトレイ1の特定の位置に簡単に配置できる。さらに、本発明の第9の育苗装置は、セルトレイ1の収納部2にポット15を介して培地3を充填している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の育苗装置によれば、極めて簡単な構造で設備コストを安価にしながら、各々の培地に均一に潅水できる特徴がある。それは、本発明の育苗装置が、セルトレイの上に保水性シートを配設し、この保水性シートに潅水具で水を補給して、保水性シートに設けた点滴部から各々の収納部に点滴できるからである。この構造は、ドリップ灌水のように、各々の収納部の培地に潅水チューブを連結する必要がなく、セルトレイの上に保水性シートに敷設する極めて簡単な構造となる。このため、設備コストを著しく低減できる。また、従来の潅水チューブを使用するドリップ灌水では、各々の潅水チューブが均一に収納部へ潅水するのが難しいが、本発明では、保水性シートが過剰な水を点滴部から収納部に滴下して補給するので、多数の収納部に均一に給水できる。
【0017】
また、本発明の育苗装置の特筆すべき特徴は、簡単な構造とするにもかかわらず、夏期の暑いときにおいては、理想的な状態で培地を強制的に冷却できることにある。セルトレイを使用する育苗装置では、各培地が小さい収納部毎に隔離されており土の量が少ないため、露地による育苗に比べて熱がこもりやすいという欠点がある。とくに、夏場の暑い時期には、セルトレイが加熱されて培地が高温多湿状態となり、水分中の酸素が抜けて酸欠状態となり、根腐れを生じるおそれがある。特にイチゴは根が弱いため、夏場の損傷が懸念されていた。これに対して、本発明の育苗装置では、培地の上に保水性シートを配設して保水性シートに給水するので、保水性シートが、気化熱で強制的に冷却される。水の気化熱は、約540カロリーと極めて大きいために、気化熱は保水性シートを効率よく冷却する。気化熱で冷却された保水性シートは、収納部の培地を極めて能率よく冷却する。このように、保水性シートが培地を効率よく冷却して培地温度を低くできるのは、保水性シートが培地を上から冷却するからである。これには、保水性シートと培地の上下位置関係が極めて大切である。仮に、保水性シートの上に培地を配置すると、保水性シートは効率よく培地を冷却できなくなる。それは、加熱された空気が上昇し、冷却された空気が下降するからである。本発明の育苗装置では、空気のこの性質によって、保水性シートで冷却された空気が培地に向かって下降して、培地を効率よく冷却する。この原理は、たとえば、室内の空気を冷却するときに、室内の上部の天井部分の空気を冷却すると室内全体を効率よく冷却できるが、床部を冷却すると下部のみが冷却されて室内全体を冷却できないのと同じである。
【0018】
図1は、本発明の育苗装置における培地温度と、従来のドリップ灌水による培地温度の差を示している。この図において、曲線Aは従来のドリップ灌水における培地温度、曲線Bは本発明の育苗装置における培地温度を示している。この図から明かなように、従来のドリップ灌水において、培地温度の最高温度が40℃近くなる暑いときにおいても、本発明の育苗装置においては、培地温度を約5℃も低くできる。このため、植物をより快適な根圏環境で生育できる。
【0019】
このことは、本発明の育苗装置でイチゴの種苗を同じ環境で生育して明らかとなった。すなわち、従来の頭上潅水における炭疽病の発病率が95%となる生育環境において、本発明の育苗装置の発病率が5%と極めて低い値となり、発病率を約1/20に極減することができた。これは、水滴の跳ね返りがなく、各々の培地に均一に理想的な状態で給水できることと、培地温度を極めて低くして、根圏環境を快適にできることで実現される。
【0020】
図11は、本発明の育苗装置が、イチゴの炭疽病の伝染を抑制する効果を示す実験結果を示す図である。この実験は、4×6の収納部を有する6枚のセルトレイを水平に並べて使用する。本発明の実施例の育苗装置は、セルトレイの上に保水性シートを配設して、保水性シートに灌水ホースから給水する。従来例の育苗装置は、セルトレイに保水性シートを配設することなく、セルトレイの収納部に頭上潅水する。この状態で、各々の収納部で育苗される種苗が炭疽病に発病する状態を試験したものである。この試験において、実施例と従来例の育苗装置は、直接に雨水が当たらないように、雨よけを設けている。また、セルトレイの特定の収納部には、炭疽病の感染源として、イチゴ炭疽病感染株を中央の2株に8月3日に配置し、その後、8月16日、8月30日、9月6日に炭疽病の発病を確認して図11を作製した。
【0021】
この図から、本発明の実施例で生育される種苗は、イチゴ炭疽病の発病が極めて少ないのに対し、従来例で生育される種苗は、その殆どがイチゴ炭疽病を発病する。すなわち、本発明の実施例の装置は、著しく高い炭疽病の伝染抑制効果が認められた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための育苗装置を例示するものであって、本発明は育苗装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、以下の説明において、同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0023】
図2と図3に示す育苗装置は、収納部2に充填している培地3に種苗4を植え付けし、培地3に点滴潅水して種苗4を生育させる。この育苗装置は、種苗4を植え付けする培地3を充填する収納部2を複数形成したセルトレイ1と、セルトレイ1の上面に被せられる保水性シート5と、保水性シート5に水分を供給するための潅水具6とを備えている。
【0024】
セルトレイ1は、プラスチックを射出成形し、あるいは真空成形して全体を製作される。図のセルトレイ1は、上面を平面部1Aとし、この平面部1Aに縦横に複数に並べて、収納部2を設けている。各々の収納部2は、開口部の周囲を平面部1Aに連結する形状として、平面部1Aを介して隣の収納部2を連結している。図2のセルトレイ1は、平面部1Aに縦横に並べて、4×6個の収納部2を設けている。収納部2は、培地3を取り出しやすいように、開口部に向かって次第に開口面積を大きくするテーパー状としている。図の収納部2は、平面形状を円形として、収納部2の全体形状を円錐状として、底の面積を開口部よりも小さくしている。以上のセルトレイ1は、収納部2を円錐状とするが、収納部は、必ずしも円錐状とする必要はなく、角錘状あるいは円柱状等とすることもできる。
【0025】
収納部2の大きさ形状は、生育させる種苗4により一定ではないが、たとえば開口部の直径を4〜10cm、底の直径を2〜8cmとし、深さを5〜15cmとする。収納部2の底は、培地3に給水された過剰な水を排水するための排水孔10を開口している。また、底は下面に突出して凸部11を設け、セルトレイ1を台の上に載せる状態で、排水口10を塞がないようにしている。
図3のセルトレイ1は、収納部2に直接に培地3を充填しているが、培地はポットを介して収納部に充填することもできる。この構造は、培地を直接には収納部に充填することなくポットに充填し、培地を充填しているポットを収納部に充填する。
【0026】
セルトレイ1は、脱着連結具8を介して上面に保水性シート5を脱着できるように連結することができる。図4のセルトレイ1は、脱着連結具8として周囲の上面に凸起8Aを設けている。凸起8Aは上端を大きくして、連結する保水性シート5を抜け難くしている。このセルトレイ1に連結される保水性シート5は、凸起8Aを挿入できる連結孔8Bを設けている。この脱着連結具8は、凸起8Aを連結孔8Bに入れて、保水性シート5をセルトレイ1の定位置に連結できる。この脱着連結具8は、凸起8Aと連結孔8Bで構成するが、脱着連結具には、保水性シートをセルトレイの定位置に脱着できるように連結する全てのもの、たとえば、マジックテープ(登録商標)のようなもの、あるいはボタンやホック等も使用できる。
【0027】
保水性シート5は、供給される水を吸収して保水し、さらに過剰な水を点滴部7から収納部2に滴下するもので、不織布が使用される。ただし、保水性シートには、布地も使用できる。また、耐水性のあるろ紙、あるいはこれ等を積層して所定の厚さとするものも使用できる。
【0028】
保水性シート5は、供給される水を収納部2に滴下して供給するための点滴部7を設けている。点滴部7は、収納部2に点滴して給水するので、セルトレイ1の各々の収納部2の開口部に位置して設けている。開口部に配置される点滴部7が、保水性シート5に供給される水を収納部2に滴下して供給する。
【0029】
図2の保水性シート5は、収納部2の開口部の上方に位置する部分を十字状に切断して、先細り状の点滴部7を設けている。保水性シート5は、十字状に限らず、放射状に切断して、先細り状の点滴部7を設けることができる。この形状の点滴部7は、先端の幅を次第に狭くしているので、先端が重力で降下しやすく、降下した先端から収納部2に滴下させて水を補給する。
【0030】
保水性シート5を放射状に切断して点滴部7を設ける構造は、収納部2の上に点滴部7を設けることができ、さらに切断された部分から種苗4を生育できる。このため、この構造の保水性シート5は、種苗4を生育させる貫通孔9と、点滴部7とを同時に設けることができる。また、点滴部7が収納部2の中心部分に水分を点滴して潅水できる特徴もある。
【0031】
保水性シート5は、点滴部7を図2に示す形状には特定しない。保水性シート5は、たとえば、図5に示すように、収納部2の中心部で貫通孔9を設け、この貫通孔9から半径方向に切込みを設けた形状とすることができる。また、切込みのない形状とすることもできる。切込みのない点滴部を設ける保水性シートは、点滴部の先端となる貫通孔の周縁を重力で降下できる程度の可撓性のある不織布や布地で製作される。
【0032】
さらに、図6ないし図9の保水性シート5は、収納部2に向かって垂れ下がる誘導点滴部7を設けている。誘導点滴部7は、それ自体の自重と供給される水の重量で垂れ下がる可撓性を有し、垂れ下がる先端から収納部2に水を誘導して滴下させる。図の保水性シート5は、誘導点滴部7を貫通孔9の内側に設けている。誘導点滴部7は、所定の幅の細長い形状として、先端を収納部2に突出させている。保水性シート5は、誘導点滴部7を設けるために、貫通孔9の内側に沿って平行に切断している。誘導点滴部7は、幅(W)よりも全長(L)を長くして、先端を収納部2に垂れ下がるようにしている。誘導点滴部7は、全長(L)を長く、幅(W)を狭くして、先端の垂れ下がりを大きくして、給水される水をスムーズに収納部2に滴下できる。この誘導点滴部7を設けている保水性シート5は、多数の収納部2に均一に給水できる。誘導点滴部7に誘導される水をスムーズに収納部2に滴下して給水できるからである。
【0033】
さらに、図6と図7の保水性シート5は、貫通孔9とは別に、肥料の供給口13を開口している。この保水性シート5は、貫通孔9に苗を植え付けする状態で、供給口13から培地の上に簡単かつ容易に、しかも能率よく肥料を供給できる。
【0034】
さらにまた、図6ないし図9の保水性シート5は、貫通孔9を四角形として、四隅から外周に向かって、あるいは各辺の中間から外周に向かって切込み14を設けている。切込み14は収納部2の開口部に等しく、あるいは収納部2の開口部よりも大きくしている。この保水性シート5は、切込み14を拡開して、種苗4を能率よく植え付けでき、また生育した種苗4を収納部2から取り出しできる。また、培地を充填しているポットを収納部に充填する構造にあっては、切込みを拡開してポットを簡単に出し入れできる。
【0035】
さらに、図10に示す育苗装置は、セルトレイ1の収納部2に直接に培地を充填しない。培地3はポット15を介してセルトレイ1の収納部2に充填される。このセルトレイ1は、培地を直接には収納部2に充填することなくポット15に充填し、培地3を充填しているポット15を収納部2に充填する。したがって、このセルトレイ1は、収納部2をポット15を入れて保持できる形状に成形している。培地を収納部に直接に充填するセルトレイは、収納部を培地が漏れない構造に成形する必要がある。ただ、図10のセルトレイ1は、培地3をポット15に入れて収納部2に入れるので、収納部2はポット15の漏れない形状に成形できる。図のセルトレイ1は、収納部2の上端の開口部を四角形として、縦横に碁盤格子状に収納部2を配列している。
【0036】
保水性シート5は、セルトレイ1に設けている収納部2の境界に位置する縦ラインの上に載置される縦延長部5Aと、この縦延長部5Aの両側に突出するように連結している誘導点滴部7とを備える。誘導点滴部7は、セルトレイ1に設けている各々の収納部2の開口部内に位置する。縦延長部5Aに沿って潅水ホース6Aが配設される。潅水ホース6Aは、縦延長部5Aに水を供給し、縦延長部5Aの水は誘導点滴部7から収納部2に配設されるポット15の培地3に滴下して供給される。
【0037】
保水性シート5は、供給される水分を充分に保水できるように、好ましくは非圧縮状態における厚さを約3mmとする。ただし、保水性シート5は、非圧縮状態における厚さを1.5〜5mm、好ましくは2〜5mmとすることもできる。保水性シート5は、非圧縮状態における厚さを大きくして保水性を向上できる。ただ、保水性シートが厚くなるとコストも高くなるので、保水性シートはコストと保水性を考慮して、好ましくは以上の範囲のものが使用される。
【0038】
保水性シート5は、セルトレイ1の平面部1Aの上に載せられる。図の保水性シート5の外形は、セルトレイ1の外形にほぼ等しい。ただ、保水性シートは、セルトレイに設けている全ての収納部に点滴部から点滴して潅水できる大きさであれば、セルトレイの外形よりも大きく、あるいは多少は小さくすることもできる。
【0039】
不織布、布地、ろ紙等の保水性シート5、あるいはこれ等を積層した保水性シート5は、親水性があり、セルトレイ1の上に水平に載せられて、供給される水を保水しながら全面に拡散する。全面に拡散された水は、点滴部7から収納部2に滴下して培地3に供給される。
【0040】
図の潅水具6は、保水性シート5の上に配置している潅水ホース6Aである。潅水ホース6Aは、所定の間隔で複数の給水孔12を設けている。給水孔12は、水平ないし下向きに開口されて、保水性シート5に給水する。図の育苗装置は、保水性シート5の中央に縦方向に潅水ホース6Aを配設している。潅水ホース6Aは、給水ポンプや水道等の給水装置(図示せず)に連結され、給水装置から供給される水を給水孔12から排水して、保水性シート5に供給する。
【0041】
給水装置は、設定時間を特定するタイマー(図示せず)と、このタイマーに開閉が制御される開閉弁(図示せず)とを備えている。開閉弁は、潅水ホースの途中に連結している。タイマーは、設定時間になると開閉弁を所定の時間開いて、潅水具6に給水し、保水性シート5に所定量の給水をした後、開閉弁を閉弁して給水を停止する。この給水装置は、自動的に決められた量の水を保水性シート5に供給する。
【0042】
図3は、ひとつのセルトレイ1を示しているが、セルトレイ1は縦横に並べられて、多数の種苗4を生育させる。潅水ホース6Aは、縦横に並べている各々のセルトレイ1の上に配置されて、各々のセルトレイ1に載せた保水性シート5に給水する。図の潅水具6は潅水ホース6Aであるが、潅水具には、潅水ホースに代わって、給水孔のある配管とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の育苗装置は、イチゴの他、果物、野菜の種苗育成に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】培地の温度変化を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施例にかかる種苗の育苗装置の平面図である。
【図3】図2に示す育苗装置のA−A線断面図である。
【図4】図2に示す育苗装置のB−B線断面図であって、保水性シートとセルトレイとの連結部を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の平面図である。
【図6】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の一部拡大平面図である。
【図7】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の一部拡大平面図である。
【図8】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の一部拡大平面図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の一部拡大平面図である。
【図10】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の平面図である。
【図11】本発明の実施例の育苗装置と従来例の装置で栽培される種苗の炭疽病の発病を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1…セルトレイ 1A…平面部
2…収納部
3…培地
4…種苗
5…保水性シート 5A…縦延長部
6…潅水具 6A…潅水ホース
7…点滴部
8…脱着連結具 8A…凸起
8B…連結孔
9…貫通孔
10…排水孔
11…凸部
12…給水孔
13…供給口
14…切込み
15…ポット
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の種苗を植え付けしている培地に点滴状に灌水するための種苗の育苗装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の農作物等の植物の灌水方式は、頭上灌水が広く利用されてきた。例えば、種苗の育苗においては、頭上灌水では、複数の種苗を配置した種苗ポットの上方に配置された散水口からシャワー状に散水されて水分が供給される。しかしながら、この方式では、各種苗に対して均一な給水が難しいという問題があった。育苗して葉が生い茂るようになると、葉に遮られて根本まで水がかからず、種苗毎に給水のムラができやすくなり、育成の良い種苗程、給水ができなくなる傾向にあり、均質な種苗を育成できないという問題があった。
【0003】
とくに、イチゴの育苗においては、炭疽病などの病害の伝染が問題となっている。炭疽病等の病害は、一般に雨や散水の水滴によって周囲の株に伝搬する。したがって、頭上潅水では、散水によって水と共に病害も散布してしまうこととなる。特に散水した水滴が土や泥を跳ね上げる結果、葉や茎の表面を傷付けてしまい、ここから病原菌が侵入して感染する。
【0004】
さらに、イチゴの栽培においては、炭疽病に対する対策が最重視されている。炭疽病が満延するとイチゴは収穫できなくなる。このため、炭疽病が原因でイチゴの生産を中止する農家もあるなど、日本全国において、炭疽病をいかに少なくできるが最重要課題となっている。さらに、農薬の使用量を少なくしながら炭疽病を有効に阻止する技術が切望されている。さらに、このことに加えて、近年のイチゴは、炭疽病に対する耐性が弱くなる傾向がある。それは、品種改良が、炭疽病に対する耐性よりも、イチゴの甘さや風味を優先して行われるからである。困ったことに、美味なイチゴは炭疽病に弱くなる傾向にある。このことから、美味で高品質なイチゴの栽培には、炭疽病対策が極めて重要である。
【0005】
イチゴの炭疽病は、水滴による感染を有効に防止すると共に、育苗環境を快適にして改善できる。たとえば、夏期のイチゴの育苗環境において、培地の温度を低くすることが大切である。培地の理想的な温度は20℃前後であるが、外気温度の高い夏期において、培地温度は35℃〜40℃と極めて高くなる。このため、根の生育が悪くなると共に、培地の水に含まれる酸素濃度が低下し、根腐れを生じる可能性が高くなる。このような、植物の生育環境が悪くなった状態では、炭疽病等になりやすくなる。ただ、外気温度が極めて高い夏期に培地温度を低くすることは現実には極めて難しく、炭疽病を有効に防止する方式が切望されているのが実状である。
【0006】
複数の培地に均一に潅水する灌水方式として、ドリップ灌水あるいは点滴灌水と呼ばれる方式が開発されている(例えば、特許文献1参照)。ドリップ灌水では、灌水チューブを分岐して各種苗までドリップ灌水チューブを延長し、ドリップ状に水分を供給する。これにより、周囲に水を発散しないため水滴に起因する炭疽病などの病害の伝染を防止できる。
【0007】
しかしながら、ドリップ灌水は各々の培地に均一に給水できない欠点がある。それは、ドリップ灌水は、送水の動力源として、圧力ポンプや水中ポンプを使用し、これに送水パイプを連結し、この送水パイプに、培地に連結している灌水チューブを連結している。この構造は、水圧は送水パイプのポンプに近い部分で高く、送水パイプが長くなるほど送水圧力が次第に低くなる。その結果、30分間も灌水するとポンプに近い部分では水量が多くなって過水状態となり、ポンプから離れた部分では水量不足の不均衡状態が生ずる。従って農作物に対する影響も大きなばらつきを生じる。また、水源は、主として河川や井戸水を利用するので不純物の混入も多く、これが口径の小さい噴出ノズルに詰まりやすい欠点もある。このため、余分の水を給水する必要があって灌水量が相当に多くなり、農作物が実際に必要とする水量のほぼ10倍以上の水量を無駄に消費しているが実状である。
【0008】
また、ドリップ灌水では、各種苗にドリップ灌水チューブを延長しなければならず、設営に極めて手間がかかる欠点もある。また、各セルまで延長するドリップ灌水チューブは細いチューブを使用するため、設備コストも高くなるという問題がある。また、ドリップ灌水は、夏場の育苗において培地温度を低くできない問題もある。とくに、育苗床を複数のセルに区画したセル方式では、各々の培地が地面から離され、かつ培地の容積が小さいために周囲温度の影響を受けやすく、暑い夏期に高温になって酸欠となり易く、生育環境が悪くなって根ぐされ等が発生して、良苗生産が難しい。
【特許文献1】特開2001−186823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、極めて簡単な構造で設備コストを安価にしながら、各々の培地に水滴の跳ね返りがなく均一に潅水でき、しかも、高温環境においては、保水性シートの気化熱で培地を効率よく冷却して培地温度を低くでき、植物の生育環境を快適とし、これによって、炭疽病等の病気の発生を有効に阻止できる種苗の育苗装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の種苗の育苗装置は、上記の目的を達成するために以下の構成を備える。
本発明の第1の育苗装置は、種苗4を生育させる育苗装置であって、収納部2に充填している培地3に種苗4を植え付けし、培地3に点滴潅水して種苗4を生育させる。この育苗装置は、種苗4を植え付けする培地3を充填する収納部2を複数形成したセルトレイ1と、セルトレイ1の上面に被せられる保水性シート5と、保水性シート5に水分を供給するための潅水具6とを備えている。
保水性シート5は、各セルトレイ1に設けている各々の収納部2の開口部内に位置する点滴部7を備える。開口部に位置する点滴部7が、保水性シート5に供給される水を収納部2に滴下して培地3に供給する。
【0011】
本発明の第2の育苗装置は、保水性シート5が、収納部2の開口部の上方に位置する部分を放射状に切断して、先細り状の点滴部7を設けている。この保水性シート5は、点滴部7でもって、収納部2のほぼ中央部に点滴して灌水できる。また、切断部から種苗4を生育できる特徴もある。
【0012】
本発明の第3の育苗装置は、保水性シート5に、点滴部7の先端を重力で降下させる可撓性を有するものを使用する。この育苗装置は、保水性シート5の点滴部7から収納部2の内部に正確に点滴して灌水できる。
【0013】
本発明の第4の育苗装置は、保水性シート5を不織布とし、また本発明の第5の育苗装置は、保水性シート5を布地とする。これらの育苗装置は、保水性シート5を安価な材料としながら、充分な保水性を持たせることができる。
【0014】
本発明の第6の育苗装置は、セルトレイ1が収納部2の培地3でイチゴの種苗4を生育させる。また、本発明の第7の育苗装置は、潅水具6として、複数の給水孔12を設けている潅水ホース6Aを使用し、この潅水ホース6Aを保水性シート5の上面に配置して、潅水ホース6Aから保水性シート5に給水する。この育苗装置は、潅水具6を極めて安価としながら、保水性シート5の特定の位置に簡単に配置できる特徴がある。
【0015】
本発明の第8の育苗装置は、保水性シート5を、脱着連結具8を介してセルトレイ1の上に脱着できるように連結している。この育苗装置は、保水性シート5をセルトレイ1の特定の位置に簡単に配置できる。さらに、本発明の第9の育苗装置は、セルトレイ1の収納部2にポット15を介して培地3を充填している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の育苗装置によれば、極めて簡単な構造で設備コストを安価にしながら、各々の培地に均一に潅水できる特徴がある。それは、本発明の育苗装置が、セルトレイの上に保水性シートを配設し、この保水性シートに潅水具で水を補給して、保水性シートに設けた点滴部から各々の収納部に点滴できるからである。この構造は、ドリップ灌水のように、各々の収納部の培地に潅水チューブを連結する必要がなく、セルトレイの上に保水性シートに敷設する極めて簡単な構造となる。このため、設備コストを著しく低減できる。また、従来の潅水チューブを使用するドリップ灌水では、各々の潅水チューブが均一に収納部へ潅水するのが難しいが、本発明では、保水性シートが過剰な水を点滴部から収納部に滴下して補給するので、多数の収納部に均一に給水できる。
【0017】
また、本発明の育苗装置の特筆すべき特徴は、簡単な構造とするにもかかわらず、夏期の暑いときにおいては、理想的な状態で培地を強制的に冷却できることにある。セルトレイを使用する育苗装置では、各培地が小さい収納部毎に隔離されており土の量が少ないため、露地による育苗に比べて熱がこもりやすいという欠点がある。とくに、夏場の暑い時期には、セルトレイが加熱されて培地が高温多湿状態となり、水分中の酸素が抜けて酸欠状態となり、根腐れを生じるおそれがある。特にイチゴは根が弱いため、夏場の損傷が懸念されていた。これに対して、本発明の育苗装置では、培地の上に保水性シートを配設して保水性シートに給水するので、保水性シートが、気化熱で強制的に冷却される。水の気化熱は、約540カロリーと極めて大きいために、気化熱は保水性シートを効率よく冷却する。気化熱で冷却された保水性シートは、収納部の培地を極めて能率よく冷却する。このように、保水性シートが培地を効率よく冷却して培地温度を低くできるのは、保水性シートが培地を上から冷却するからである。これには、保水性シートと培地の上下位置関係が極めて大切である。仮に、保水性シートの上に培地を配置すると、保水性シートは効率よく培地を冷却できなくなる。それは、加熱された空気が上昇し、冷却された空気が下降するからである。本発明の育苗装置では、空気のこの性質によって、保水性シートで冷却された空気が培地に向かって下降して、培地を効率よく冷却する。この原理は、たとえば、室内の空気を冷却するときに、室内の上部の天井部分の空気を冷却すると室内全体を効率よく冷却できるが、床部を冷却すると下部のみが冷却されて室内全体を冷却できないのと同じである。
【0018】
図1は、本発明の育苗装置における培地温度と、従来のドリップ灌水による培地温度の差を示している。この図において、曲線Aは従来のドリップ灌水における培地温度、曲線Bは本発明の育苗装置における培地温度を示している。この図から明かなように、従来のドリップ灌水において、培地温度の最高温度が40℃近くなる暑いときにおいても、本発明の育苗装置においては、培地温度を約5℃も低くできる。このため、植物をより快適な根圏環境で生育できる。
【0019】
このことは、本発明の育苗装置でイチゴの種苗を同じ環境で生育して明らかとなった。すなわち、従来の頭上潅水における炭疽病の発病率が95%となる生育環境において、本発明の育苗装置の発病率が5%と極めて低い値となり、発病率を約1/20に極減することができた。これは、水滴の跳ね返りがなく、各々の培地に均一に理想的な状態で給水できることと、培地温度を極めて低くして、根圏環境を快適にできることで実現される。
【0020】
図11は、本発明の育苗装置が、イチゴの炭疽病の伝染を抑制する効果を示す実験結果を示す図である。この実験は、4×6の収納部を有する6枚のセルトレイを水平に並べて使用する。本発明の実施例の育苗装置は、セルトレイの上に保水性シートを配設して、保水性シートに灌水ホースから給水する。従来例の育苗装置は、セルトレイに保水性シートを配設することなく、セルトレイの収納部に頭上潅水する。この状態で、各々の収納部で育苗される種苗が炭疽病に発病する状態を試験したものである。この試験において、実施例と従来例の育苗装置は、直接に雨水が当たらないように、雨よけを設けている。また、セルトレイの特定の収納部には、炭疽病の感染源として、イチゴ炭疽病感染株を中央の2株に8月3日に配置し、その後、8月16日、8月30日、9月6日に炭疽病の発病を確認して図11を作製した。
【0021】
この図から、本発明の実施例で生育される種苗は、イチゴ炭疽病の発病が極めて少ないのに対し、従来例で生育される種苗は、その殆どがイチゴ炭疽病を発病する。すなわち、本発明の実施例の装置は、著しく高い炭疽病の伝染抑制効果が認められた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための育苗装置を例示するものであって、本発明は育苗装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、以下の説明において、同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0023】
図2と図3に示す育苗装置は、収納部2に充填している培地3に種苗4を植え付けし、培地3に点滴潅水して種苗4を生育させる。この育苗装置は、種苗4を植え付けする培地3を充填する収納部2を複数形成したセルトレイ1と、セルトレイ1の上面に被せられる保水性シート5と、保水性シート5に水分を供給するための潅水具6とを備えている。
【0024】
セルトレイ1は、プラスチックを射出成形し、あるいは真空成形して全体を製作される。図のセルトレイ1は、上面を平面部1Aとし、この平面部1Aに縦横に複数に並べて、収納部2を設けている。各々の収納部2は、開口部の周囲を平面部1Aに連結する形状として、平面部1Aを介して隣の収納部2を連結している。図2のセルトレイ1は、平面部1Aに縦横に並べて、4×6個の収納部2を設けている。収納部2は、培地3を取り出しやすいように、開口部に向かって次第に開口面積を大きくするテーパー状としている。図の収納部2は、平面形状を円形として、収納部2の全体形状を円錐状として、底の面積を開口部よりも小さくしている。以上のセルトレイ1は、収納部2を円錐状とするが、収納部は、必ずしも円錐状とする必要はなく、角錘状あるいは円柱状等とすることもできる。
【0025】
収納部2の大きさ形状は、生育させる種苗4により一定ではないが、たとえば開口部の直径を4〜10cm、底の直径を2〜8cmとし、深さを5〜15cmとする。収納部2の底は、培地3に給水された過剰な水を排水するための排水孔10を開口している。また、底は下面に突出して凸部11を設け、セルトレイ1を台の上に載せる状態で、排水口10を塞がないようにしている。
図3のセルトレイ1は、収納部2に直接に培地3を充填しているが、培地はポットを介して収納部に充填することもできる。この構造は、培地を直接には収納部に充填することなくポットに充填し、培地を充填しているポットを収納部に充填する。
【0026】
セルトレイ1は、脱着連結具8を介して上面に保水性シート5を脱着できるように連結することができる。図4のセルトレイ1は、脱着連結具8として周囲の上面に凸起8Aを設けている。凸起8Aは上端を大きくして、連結する保水性シート5を抜け難くしている。このセルトレイ1に連結される保水性シート5は、凸起8Aを挿入できる連結孔8Bを設けている。この脱着連結具8は、凸起8Aを連結孔8Bに入れて、保水性シート5をセルトレイ1の定位置に連結できる。この脱着連結具8は、凸起8Aと連結孔8Bで構成するが、脱着連結具には、保水性シートをセルトレイの定位置に脱着できるように連結する全てのもの、たとえば、マジックテープ(登録商標)のようなもの、あるいはボタンやホック等も使用できる。
【0027】
保水性シート5は、供給される水を吸収して保水し、さらに過剰な水を点滴部7から収納部2に滴下するもので、不織布が使用される。ただし、保水性シートには、布地も使用できる。また、耐水性のあるろ紙、あるいはこれ等を積層して所定の厚さとするものも使用できる。
【0028】
保水性シート5は、供給される水を収納部2に滴下して供給するための点滴部7を設けている。点滴部7は、収納部2に点滴して給水するので、セルトレイ1の各々の収納部2の開口部に位置して設けている。開口部に配置される点滴部7が、保水性シート5に供給される水を収納部2に滴下して供給する。
【0029】
図2の保水性シート5は、収納部2の開口部の上方に位置する部分を十字状に切断して、先細り状の点滴部7を設けている。保水性シート5は、十字状に限らず、放射状に切断して、先細り状の点滴部7を設けることができる。この形状の点滴部7は、先端の幅を次第に狭くしているので、先端が重力で降下しやすく、降下した先端から収納部2に滴下させて水を補給する。
【0030】
保水性シート5を放射状に切断して点滴部7を設ける構造は、収納部2の上に点滴部7を設けることができ、さらに切断された部分から種苗4を生育できる。このため、この構造の保水性シート5は、種苗4を生育させる貫通孔9と、点滴部7とを同時に設けることができる。また、点滴部7が収納部2の中心部分に水分を点滴して潅水できる特徴もある。
【0031】
保水性シート5は、点滴部7を図2に示す形状には特定しない。保水性シート5は、たとえば、図5に示すように、収納部2の中心部で貫通孔9を設け、この貫通孔9から半径方向に切込みを設けた形状とすることができる。また、切込みのない形状とすることもできる。切込みのない点滴部を設ける保水性シートは、点滴部の先端となる貫通孔の周縁を重力で降下できる程度の可撓性のある不織布や布地で製作される。
【0032】
さらに、図6ないし図9の保水性シート5は、収納部2に向かって垂れ下がる誘導点滴部7を設けている。誘導点滴部7は、それ自体の自重と供給される水の重量で垂れ下がる可撓性を有し、垂れ下がる先端から収納部2に水を誘導して滴下させる。図の保水性シート5は、誘導点滴部7を貫通孔9の内側に設けている。誘導点滴部7は、所定の幅の細長い形状として、先端を収納部2に突出させている。保水性シート5は、誘導点滴部7を設けるために、貫通孔9の内側に沿って平行に切断している。誘導点滴部7は、幅(W)よりも全長(L)を長くして、先端を収納部2に垂れ下がるようにしている。誘導点滴部7は、全長(L)を長く、幅(W)を狭くして、先端の垂れ下がりを大きくして、給水される水をスムーズに収納部2に滴下できる。この誘導点滴部7を設けている保水性シート5は、多数の収納部2に均一に給水できる。誘導点滴部7に誘導される水をスムーズに収納部2に滴下して給水できるからである。
【0033】
さらに、図6と図7の保水性シート5は、貫通孔9とは別に、肥料の供給口13を開口している。この保水性シート5は、貫通孔9に苗を植え付けする状態で、供給口13から培地の上に簡単かつ容易に、しかも能率よく肥料を供給できる。
【0034】
さらにまた、図6ないし図9の保水性シート5は、貫通孔9を四角形として、四隅から外周に向かって、あるいは各辺の中間から外周に向かって切込み14を設けている。切込み14は収納部2の開口部に等しく、あるいは収納部2の開口部よりも大きくしている。この保水性シート5は、切込み14を拡開して、種苗4を能率よく植え付けでき、また生育した種苗4を収納部2から取り出しできる。また、培地を充填しているポットを収納部に充填する構造にあっては、切込みを拡開してポットを簡単に出し入れできる。
【0035】
さらに、図10に示す育苗装置は、セルトレイ1の収納部2に直接に培地を充填しない。培地3はポット15を介してセルトレイ1の収納部2に充填される。このセルトレイ1は、培地を直接には収納部2に充填することなくポット15に充填し、培地3を充填しているポット15を収納部2に充填する。したがって、このセルトレイ1は、収納部2をポット15を入れて保持できる形状に成形している。培地を収納部に直接に充填するセルトレイは、収納部を培地が漏れない構造に成形する必要がある。ただ、図10のセルトレイ1は、培地3をポット15に入れて収納部2に入れるので、収納部2はポット15の漏れない形状に成形できる。図のセルトレイ1は、収納部2の上端の開口部を四角形として、縦横に碁盤格子状に収納部2を配列している。
【0036】
保水性シート5は、セルトレイ1に設けている収納部2の境界に位置する縦ラインの上に載置される縦延長部5Aと、この縦延長部5Aの両側に突出するように連結している誘導点滴部7とを備える。誘導点滴部7は、セルトレイ1に設けている各々の収納部2の開口部内に位置する。縦延長部5Aに沿って潅水ホース6Aが配設される。潅水ホース6Aは、縦延長部5Aに水を供給し、縦延長部5Aの水は誘導点滴部7から収納部2に配設されるポット15の培地3に滴下して供給される。
【0037】
保水性シート5は、供給される水分を充分に保水できるように、好ましくは非圧縮状態における厚さを約3mmとする。ただし、保水性シート5は、非圧縮状態における厚さを1.5〜5mm、好ましくは2〜5mmとすることもできる。保水性シート5は、非圧縮状態における厚さを大きくして保水性を向上できる。ただ、保水性シートが厚くなるとコストも高くなるので、保水性シートはコストと保水性を考慮して、好ましくは以上の範囲のものが使用される。
【0038】
保水性シート5は、セルトレイ1の平面部1Aの上に載せられる。図の保水性シート5の外形は、セルトレイ1の外形にほぼ等しい。ただ、保水性シートは、セルトレイに設けている全ての収納部に点滴部から点滴して潅水できる大きさであれば、セルトレイの外形よりも大きく、あるいは多少は小さくすることもできる。
【0039】
不織布、布地、ろ紙等の保水性シート5、あるいはこれ等を積層した保水性シート5は、親水性があり、セルトレイ1の上に水平に載せられて、供給される水を保水しながら全面に拡散する。全面に拡散された水は、点滴部7から収納部2に滴下して培地3に供給される。
【0040】
図の潅水具6は、保水性シート5の上に配置している潅水ホース6Aである。潅水ホース6Aは、所定の間隔で複数の給水孔12を設けている。給水孔12は、水平ないし下向きに開口されて、保水性シート5に給水する。図の育苗装置は、保水性シート5の中央に縦方向に潅水ホース6Aを配設している。潅水ホース6Aは、給水ポンプや水道等の給水装置(図示せず)に連結され、給水装置から供給される水を給水孔12から排水して、保水性シート5に供給する。
【0041】
給水装置は、設定時間を特定するタイマー(図示せず)と、このタイマーに開閉が制御される開閉弁(図示せず)とを備えている。開閉弁は、潅水ホースの途中に連結している。タイマーは、設定時間になると開閉弁を所定の時間開いて、潅水具6に給水し、保水性シート5に所定量の給水をした後、開閉弁を閉弁して給水を停止する。この給水装置は、自動的に決められた量の水を保水性シート5に供給する。
【0042】
図3は、ひとつのセルトレイ1を示しているが、セルトレイ1は縦横に並べられて、多数の種苗4を生育させる。潅水ホース6Aは、縦横に並べている各々のセルトレイ1の上に配置されて、各々のセルトレイ1に載せた保水性シート5に給水する。図の潅水具6は潅水ホース6Aであるが、潅水具には、潅水ホースに代わって、給水孔のある配管とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の育苗装置は、イチゴの他、果物、野菜の種苗育成に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】培地の温度変化を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施例にかかる種苗の育苗装置の平面図である。
【図3】図2に示す育苗装置のA−A線断面図である。
【図4】図2に示す育苗装置のB−B線断面図であって、保水性シートとセルトレイとの連結部を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の平面図である。
【図6】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の一部拡大平面図である。
【図7】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の一部拡大平面図である。
【図8】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の一部拡大平面図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の一部拡大平面図である。
【図10】本発明の他の実施例にかかる種苗の育苗装置の平面図である。
【図11】本発明の実施例の育苗装置と従来例の装置で栽培される種苗の炭疽病の発病を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1…セルトレイ 1A…平面部
2…収納部
3…培地
4…種苗
5…保水性シート 5A…縦延長部
6…潅水具 6A…潅水ホース
7…点滴部
8…脱着連結具 8A…凸起
8B…連結孔
9…貫通孔
10…排水孔
11…凸部
12…給水孔
13…供給口
14…切込み
15…ポット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部(2)に充填している培地(3)に種苗(4)を植え付けし、培地(3)に点滴潅水して種苗(4)を生育させる育苗装置であって、
種苗(4)を植え付けする培地(3)を充填する収納部(2)を複数形成したセルトレイ(1)と、
前記セルトレイ(1)の上面に被せられる保水性シート(5)と、
前記保水性シート(5)に水分を供給するための潅水具(6)と、
を備えており、
前記保水シート(5)は、各セルトレイ(1)に設けている各々の収納部(2)の開口部内に位置する点滴部(7)を備え、開口部に位置する点滴部(7)が、保水性シート(5)に供給される水を収納部(2)に滴下して供給するようにしてなることを特徴とする育苗装置。
【請求項2】
請求項1に記載の育苗装置であって、
前記保水性シート(5)が、収納部(2)の開口部の上方に位置する部分を放射状に切断して、先細り状の点滴部(7)を設けていることを特徴とする育苗装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の育苗装置であって、
前記保水性シート(5)が、点滴部(7)の先端を重力で降下させる可撓性を有することを特徴とする育苗装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の育苗装置であって、
前記保水性シート(5)が、不織布で構成されてなることを特徴とする育苗装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の育苗装置であって、
前記保水性シート(5)が、布地で構成されてなることを特徴とする育苗装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の育苗装置であって、
セルトレイ(1)が収納部(2)の培地(3)でイチゴの種苗(4)を生育させることを特徴とする育苗装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の育苗装置であって、
潅水具(6)が複数の給水孔(12)を設けている潅水ホース(6A)で、潅水ホース(6A)を保水性シート(5)の上面に配置している育苗装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の育苗装置であって、
保水性シート(5)が、脱着連結具(8)を介してセルトレイ(1)の上に脱着できるように連結している育苗装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の育苗装置であって、
セルトレイ(1)の収納部(2)にポット(15)を介して培地(3)を充填してなる育苗装置。
【請求項1】
収納部(2)に充填している培地(3)に種苗(4)を植え付けし、培地(3)に点滴潅水して種苗(4)を生育させる育苗装置であって、
種苗(4)を植え付けする培地(3)を充填する収納部(2)を複数形成したセルトレイ(1)と、
前記セルトレイ(1)の上面に被せられる保水性シート(5)と、
前記保水性シート(5)に水分を供給するための潅水具(6)と、
を備えており、
前記保水シート(5)は、各セルトレイ(1)に設けている各々の収納部(2)の開口部内に位置する点滴部(7)を備え、開口部に位置する点滴部(7)が、保水性シート(5)に供給される水を収納部(2)に滴下して供給するようにしてなることを特徴とする育苗装置。
【請求項2】
請求項1に記載の育苗装置であって、
前記保水性シート(5)が、収納部(2)の開口部の上方に位置する部分を放射状に切断して、先細り状の点滴部(7)を設けていることを特徴とする育苗装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の育苗装置であって、
前記保水性シート(5)が、点滴部(7)の先端を重力で降下させる可撓性を有することを特徴とする育苗装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の育苗装置であって、
前記保水性シート(5)が、不織布で構成されてなることを特徴とする育苗装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の育苗装置であって、
前記保水性シート(5)が、布地で構成されてなることを特徴とする育苗装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の育苗装置であって、
セルトレイ(1)が収納部(2)の培地(3)でイチゴの種苗(4)を生育させることを特徴とする育苗装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の育苗装置であって、
潅水具(6)が複数の給水孔(12)を設けている潅水ホース(6A)で、潅水ホース(6A)を保水性シート(5)の上面に配置している育苗装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の育苗装置であって、
保水性シート(5)が、脱着連結具(8)を介してセルトレイ(1)の上に脱着できるように連結している育苗装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の育苗装置であって、
セルトレイ(1)の収納部(2)にポット(15)を介して培地(3)を充填してなる育苗装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−288392(P2006−288392A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76701(P2006−76701)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(592197108)徳島県 (30)
【出願人】(598012681)徳農種苗株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(592197108)徳島県 (30)
【出願人】(598012681)徳農種苗株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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