説明

穀粉の判別方法及び装置

【課題】コスト、手間及び時間をかけずに、前処理を必要とすることなく、穀粉の品種等の種別を容易かつ確実に判別することができる穀粉の判別方法及び装置を提供する。
【解決手段】測定対象となる穀粉MFの粒度を取得する工程と、各所定波長範囲で、励起波長及び蛍光波長を段階的に変化させながら、励起光が照射された穀粉から発生する蛍光の蛍光強度を測定して、穀粉の励起・蛍光マトリックス(EEM)情報を取得する工程と、このEEM情報を統計解析処理して、穀粉の蛍光特性をパラメータ化して抽出する工程と、予め、既知の穀粉の粒度及び種別のパラメータ化された蛍光特性を取得し、データベースに格納しておく工程と、得られた粒度を用いて、抽出された穀粉の蛍光特性と、既知の穀粉の種別及びその粒度に応じて、予め得られている既知の穀粉のパラメータ化された蛍光特性とを照合して、測定対象となる穀粉の種別を判別する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粉の判別方法及び装置並びに穀粉製品の品質管理方法及び穀粉製品に関し、詳しくは、励起・蛍光マトリックス(EEM:Excitation-Emission Matrix)計測を用いて穀粉の種別を判別する穀粉の判別方法及びこれを適用する穀粉の判別装置並びに穀粉の判別方法を用いる穀粉製品の品質管理方法及びこれによって品質管理された穀粉製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品中の成分は、食品の味覚、食感及び安全性等に大きな影響を持つことから、食品中に含まれる特定の成分を化学分析等によって抽出・同定することが行われている。特に、農産物やその加工品、例えば、穀粉やこれらの加工食品等は、その品質に応じて品種が設定され、品種に応じて用途や価格が決められていることから、品種を適正に維持することが重要であり、品種に応じて含まれる成分とその含有量とを適正に維持するための成分及びその含有量の検出が行われている。また、これらの農産物やその加工食品等は、生産段階、流通段階、加工段階で、農薬、保存料等の様々な化学物質が使用される場合があり、これらの人体への影響が指摘されているため、食品衛生法や農薬取締法等により農薬等の化学物質の残留や細菌等の発生が厳しく制限されているため、これらの化学物質の検出や、その含有量の検出や、放射線照射の検出等が厳格に行われている。
【0003】
しかしながら、食品中の各成分や残留農薬等の検出やその含有量の検出は、化学分析等によって行われるため、時間と手間とがかかるばかりか、食品の一部又は全部を化学処理する必要があるため、食品の一部又は食品全体を平均値として検出することしかできず、食品の一部の検出の場合には、これを食品全体に均一であるとして検出することしかできず、そのままの状態、すなわち非破壊の状態で検査することができない。
これに対し、近年、分光スペクトル計測や励起・蛍光マトリックス(Excitation-Emission Matrix:EEM)計測と、二次元画像化や三次元グラフィック画像化技術を融合して、ミクロトーム等によって薄片化された食品中の成分分布や食品の内部構造等を可視化して、食品内部の特定成分情報、成分分布情報、形態情報及び安全性情報等を目視により容易に観察できるようにすることが行われている。
【0004】
このため、本発明者らは、特許文献1に、所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で、照射する励起波長及び観測する蛍光波長を段階的に変化させながら、測定対象物上の複数の測定箇所における蛍光強度を測定することにより、測定対象物上の各測定箇所の励起・蛍光マトリックス(以下、単にEEMともいう)情報を取得する励起・蛍光マトリックス情報取得工程、各測定箇所ごとに取得したEEM情報を、統計解析処理により圧縮することにより、各測定箇所の蛍光特性を抽出する蛍光特性抽出工程、圧縮されたEEM情報に基づいて各測定箇所に彩色すべき色を決定する色決定工程、及び、各測定箇所に彩色すべき色をカラーマッピングすることにより測定対象物の成分分布を可視化する成分分布可視化工程を含む成分分布可視化方法を提案している。
上記特許文献1には、前記可視化方法が、測定対象物の断面において成分分布情報を取得し、またその成分分布を可視化することで測定対象物の内部構造の分析や残留農薬、放射線照射の検出等に用いることができると記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3706914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の成分分布可視化方法を用いた場合には、確かに、測定対象物を化学処理することなく、測定対象物の薄片化断面において、その内部構造の成分分布情報を簡単な操作で一度に取得することができ、さらに、複数の特定成分を同時に画像表示して、可視化することができる。
しかしながら、特許文献1の成分分布可視化方法では、測定対象物の薄片化断面の分布を検出する必要があるため、薄片化断面上に存在する全ての測定箇所において、複数の励起波長及び複数の蛍光波長の組合せに対して膨大なEEM情報を取得する必要があるばかりか、取得された膨大なEEM情報を統計解析処理して全ての測定箇所に対して彩色すべき色を決定する必要があるため、成分分布を画像表示し可視化するために長時間を要するという問題がある。そのため、適用するアルゴリズムは、可視化を最終目的とした、できるだけ計算量が少ないアルゴリズムに限られていた。
【0007】
一方、穀物の製粉による穀粉製品の品種、特に、小麦の製粉による小麦粉製品の品種においては、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、デュラム粉(デュラム・セモリナ)等に応じて、それぞれ、和洋菓子やてんぷら、めん類、パン類、マカロニやスパゲッティ等のように主たる用途が決まっており、その成分を厳密に調整する必要がある。
このため、従来、製粉原料である小麦は、生産時期、生産場所、天候状態、収穫後の保存状態及び品種等により、その品質が大きく異なる場合が多いため、製粉では予め、各原料小麦の一部をサンプルとして用いて一連の製粉操作を行い、それによって得られた小麦粉の最終製品の品質(特定成分)を、上述したように、化学分析等によって解析することによって原料小麦の品種のみならず、品質をも判定し、その結果に基づいて、製品としての小麦粉を実際に製造することが行われている。また、このような小麦粉等の穀粉の製造においては、製品の品種に応じて、製粉の種々の段階や工程において生成される中間生成物(粉)や最終製品等を製造中に抽出し、それらの種類や品種(成分の混合状態)又は成分等を上述の化学分析等によって検出し、その検出結果に基づいてその後の製粉操作を行うことも行われている。
【0008】
しかしながら、これらの化学的な方法は、前処理が必要な場合が多く、上述したように、コスト、手間及び時間がかかるという問題があり、また、予め、各原料小麦(製品)のサンプルを一連の製粉操作にかける場合には、さらに、コスト、手間及び時間がかかるという問題があり、その結果、化学分析の結果が出るまで、分析結果を製粉の操作に反映させることができないという問題がある。
このため、小麦粉等の製粉現場においては、上記のような化学分析等を用いた原料小麦や中間生成物(粉)や最終製品等の検出は、新しい原料小麦の使用や新しい最終製品の製造等の場合に用いられ、通常は、製粉の種々の段階や工程において生成される中間生成物(粉)の状態を熟練者が目視判定して、中間生成物(粉)の混合等の製粉操作の調整が行われているのが現状である。
このため、このような小麦粉等の穀粉の製造においては、熟練者による調整に頼ることなく、製品の品種に応じた調整を製造中に行うために、製粉の種々の段階や工程において生成される中間生成物(粉)や最終製品等を製粉中に短時間で、好ましくはリアルタイムで簡便に検出する方法が求められている。
【0009】
しかしながら、特許文献1の成分分布可視化方法は、多成分系の成分分布の可視化を可能にするものであるので、小麦粉の断面の成分分布の可視化は可能であるが、製粉における中間生成物(粉)や最終製品の品種や成分の特定は容易ではないという問題があるし、仮に、これらの品種や成分の特定が成分分布の可視化により可能であるとしても、可視化に長時間を要するため、製造中における上記の品種や成分の特定には適用できず、短時間での測定が必要とされる製粉工場等の製造現場では適用できないという問題があった。
また、特許文献1の成分分布可視化方法は、その厚みが一定の薄片化小麦等のように、厚み等の測定対象物の物理的条件が一定の場合の多数の測定箇所におけるEEM情報を取得するので、EEM情報に応じた成分分布の彩色による可視化は可能であるが、測定対象物が、小麦粉のような穀粉である場合、取得されるEEM情報は、穀粉の粒度によっても異なるため、単なるEEM情報の相違だけでは、十分な穀粉の品種の種別の判別ができないという問題があった。
【0010】
さらに、従来、食品中(製品中)にアレルゲンが含まれている場合、アトピー等、人体に様々な健康被害(食品アレルギー)をもたらすため、社会的な問題として非常によく取り上げられているが、現状では、食品中のアレルゲンの検出も、化学分析等に依存しており、コストや手間や時間がかかるという問題があった。
このような食品アレルギーを未然に防ぐためにも、コストや手間や時間をかけずにアレルゲンを含む食品であるかどうか判別するための情報を取得することが求められている。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、コスト、手間及び時間をかけずに、穀粉の種別、例えば、穀粉の最終製品の品種や、穀粉の製造中に生成される中間生成物(粉)の品種や、特定成分を含む品種等の種別を前処理を必要とせずに、容易かつ確実に判別することができる穀粉の判別方法及び装置を提供することを主目的とする。
また、本発明の他の目的は、上記主目的に加え、穀粉の製造現場において、製造中の穀粉の種別を判別することができ、穀粉の製造工程において、最終製品等の製品の品質やその主成分等の化学的な成分情報、すなわち製品の品種に応じた製粉操作の調整にリアルタイムで反映させることができる穀粉の判別方法及び装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、所定の品質を持つ穀物製品であることを判別することができる穀粉の品質管理方法及び所定の品質を持つ穀粉製品を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、上記主目的に加え、アレルゲンを含む穀粉の種別及びその穀粉中に含まれるアレルゲンを容易かつ確実に特定することができる穀粉の判別方法及び装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、アレルゲンを含まない所定の品質を持つ穀物製品であることを判別することができる穀粉の品質管理方法及びアレルゲンを含まない所定の品質を持つ穀粉製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、コスト、手間及び時間をかけずに、容易、かつ確実に、また、リアルタイムで、穀粉の品種の種別を判別することについて鋭意研究を重ねた結果、所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で励起波長及び蛍光波長を段階的に変化させながら励起光を測定の対象となる穀粉に照射すると共に、測定対象穀粉から発生する蛍光の蛍光強度を測定して励起・蛍光マトリックス(EEM)情報を得、得られたEEM情報に主成分分析等の様々な統計解析処理を施してパラメータ化された蛍光特性を算出することにより、パラメータ化された蛍光特性が所定粒度の測定対象穀粉に特有の蛍光指紋を表すパラメータとして用いることができることを知見し、その結果、所定粒度において、測定対象穀粉のパラメータ化された蛍光特性を求めることにより、測定対象穀粉を分離、識別又は判別できることを知見し、さらに、予め、多数又は所要数の既知の品種の穀粉の粒度及びこれに応じたパラメータ化された蛍光特性(参照蛍光特性)を求め、穀粉の既知の種別及び得られた粒度と、パラメータ化された蛍光特性とを関連付けて予めデータベースに格納しておき、測定対象穀粉の粒度及びパラメータ化された蛍光特性を用いて、データベース内を検索し、測定対象となる穀粉の粒度に応じて、測定対象となる穀粉のパラメータ化された蛍光特性と、予め得られている既知の品種の穀粉の粒度及び参照蛍光特性と照合することにより、測定対象穀粉の品種の種別を判別でき、かつ、特定できること、並びに、粒度及び蛍光特性のパラメータ同士であるので、簡単に照合できることを知見し、本発明に至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は、第1の態様として、穀物を粉砕して得られた穀粉の持つ所定の特性に応じて、測定対象となる穀粉の種別を判別する穀粉の判別方法であって、前記穀粉の粒度を取得する粒度取得工程と、所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で、前記穀粉に照射する励起波長及び測定する蛍光波長を段階的に変化させながら、励起光が照射された前記穀粉から発生する蛍光の蛍光強度を測定して、前記穀粉の励起・蛍光マトリックス情報を取得する励起・蛍光マトリックス情報取得工程と、この情報取得工程において取得された前記穀粉の励起・蛍光マトリックス情報を統計解析処理して、前記穀粉の蛍光特性をパラメータ化して抽出する蛍光特性抽出工程と、既知の種別の穀粉について、予め、前記粒度取得工程、励起・蛍光マトリックス情報取得工程及び蛍光特性抽出工程とを行って、前記粒度及び前記パラメータ化された蛍光特性とを取得し、前記穀粉の前記既知の種別及び得られた前記粒度と、前記パラメータ化された蛍光特性とを関連付けて予めデータベースに格納しておく参照蛍光特性取得・格納工程と、前記粒度取得工程で取得された前記測定対象となる穀粉の前記粒度及び前記蛍光特性抽出工程で抽出された前記測定対象となる穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性を用いて、前記データベース内を検索し、前記測定対象となる穀粉の前記粒度に応じて、前記測定対象となる穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性と、予め前記データベースに格納されている前記穀粉の前記既知の種別についての前記穀粉のパラメータ化された蛍光特性とを照合して、前記測定対象となる前記穀粉の種別を判別する蛍光特性照合工程とを含むことを特徴とする穀粉の判別方法を提供するものである。
【0014】
ここで、前記蛍光特性抽出工程は、前記励起・蛍光マトリックス情報から前記穀粉の蛍光特性を二次元パラメータとして取得することが好ましい。
また、前記蛍光特性抽出工程は、前記統計解析処理を、多変量解析又はデータマイニングにより行うことが好ましい。
また、前記多変量解析又は前記データマイニングを、データ構造分析、判別分析、パターン分類、多元データ解析、回帰分析及び学習機械からなる群より選ばれる少なくとも1つの手法を用いて行うことが好ましい。
また、前記データ構造分析を、主成分分析、因子分析、対応分析及び独立成分分析からなる群より選ばれる少なくとも1つの手法を用いて行うことが好ましい。
【0015】
また、前記蛍光特性抽出工程は、前記多変量解析又は前記データマイニングを、前記主成分分析の手法を用いて行い、前記励起・蛍光マトリックス情報から、2つ以下の主成分得点をパラメータとすることで迅速に、それらを前記穀粉の蛍光特性として取得することが好ましい。
また、前記判別分析を、線形判別分析又は非線形判別分析の手法を用いて行うことが好ましい。
また、前記蛍光特性抽出工程は、前記多変量解析又は前記データマイニングを、前記判別分析の手法を用いて行い、前記励起・蛍光マトリックス情報を、予め前記データベースに格納されている判別式に当てはめることでパラメータを算出し、それらを予め前記データベースに格納されたパラメータと照合し、前記穀粉の種別を判別することが好ましい。
また、前記パターン分類を、クラスター分析又は多次元尺度法で行うことが好ましい。
また、前記回帰分析を、線形回帰、非線形回帰又は重回帰分析の手法を用いて行うことが好ましい。
【0016】
また、前記蛍光特性抽出工程は、前記多変量解析又は前記データマイニングを、前記重回帰分析の手法を用いて行い、前記励起・蛍光マトリックス情報を、予め前記データベースに格納されている検量線に当てはめることでパラメータを算出し、それらを予め前記データベースに格納されたパラメータと照合することが好ましい。
また、前記学習機械は、ニューラルネットワーク、自己組織化マップ、集団学習及び遺伝的アルゴリズムからなる群より選択される少なくとも1つの手法を用いて行うことが好ましい。
また、前記穀粉は、前記穀物の特定の成分を主成分として含む穀粉であり、前記蛍光特性照合工程は、前記蛍光特性抽出工程において抽出された前記穀粉の蛍光特性と、前記穀粉の各成分毎の穀粉及びその粒度に応じて、予め得られ、前記データベースに格納されている前記穀物の各成分を主成分として含む穀粉のパラメータ化された蛍光特性とを照合して、前記測定対象となる穀粉を、前記穀物の特定の成分を主成分として含む穀粉であることを特定することが好ましい。
【0017】
また、前記穀粉が、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、コーン粉、蕎麦粉及び豆粉類及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、前記小麦粉が、デュラム小麦粉、強力粉、中力粉及び薄力粉からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、前記測定対象となる穀粉は、その中にアレルゲンを含む穀粉であり、前記測定対象となる前記穀粉の種別及びこの穀粉中に含まれる前記アレルゲンが特定されることが好ましい。
また、前記測定対象となる前記穀粉は、多種類の穀粉の混合物であり、前記測定対象となる前記穀粉の種別及びこの穀粉中に含まれる特定の穀粉が特定されることが好ましい。
また、前記粒度取得工程は、前記測定対象となる前記穀粉の予め測定された既知の粒度を情報として取得するものであることが好ましい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明は、第2の態様として、穀物を粉砕して得られた穀粉の持つ所定の特性に応じて、測定対象となる穀粉の種別を判別する穀粉の判別装置であって、前記穀粉の粒度を取得する粒度取得手段と、所定の励起波長範囲で、励起波長を段階的に変化させながら、前記穀粉に前記励起光を照射する分光照明手段と、この分光照明手段によって前記穀粉に照射される前記励起光の前記励起波長の段階的な変化に応じて、所定の蛍光波長範囲で、測定する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記励起光が照射された前記穀粉から発生する蛍光の蛍光強度を測定して、前記穀粉の励起・蛍光マトリックス情報を取得する情報取得手段と、この情報取得手段によって取得された前記穀粉の励起・蛍光マトリックス情報を統計解析処理して、前記穀粉の蛍光特性をパラメータ化して抽出する蛍光特性抽出手段と、その種別及び粒度が既知の穀粉について、予め、前記分光照明手段、前記情報取得手段及び前記蛍光特性抽出手段を用いて取得された、その種別及び粒度が既知の穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性と、前記穀粉の既知の種別及び粒度とを関連付けて予め格納しておくためのデータベースと、前記測定対象となる穀粉の既知の粒度及び前記蛍光特性抽出手段によって抽出された前記測定対象となる穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性を用いて、前記データベース内を検索し、前記測定対象となる穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性と、予め前記データベースに格納されている、前記測定対象となる穀粉の既知の粒度に対応する粒度を持つ前記穀粉の前記既知の種別についての前記穀粉のパラメータ化された蛍光特性とを照合して、前記測定対象となる前記穀粉の種別を判別する蛍光特性照合手段とを含むことを特徴とする穀粉の判別装置を提供するものである。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明は第3の態様は、上記穀粉の判別方法又は判別装置を用いて、所定の品質を持つ穀粉製品であることを判別することを特徴とする穀粉製品の品質管理方法を提供するものである。
また、上記課題を解決するために、本発明は第4の態様は、上記穀粉の判別方法又は判別装置を用いて管理された、所定の品質を持つ穀粉製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の穀粉の判別方法及び装置によれば、コスト、手間及び時間をかけずに、前処理を必要とすることなく、穀粉の種別、例えば、穀粉の最終製品の品種や、穀粉の製造中に生成される中間生成物(粉)の品種や、特定成分を含む品種等の種別を容易かつ確実に判別することができる。
また、本発明の穀粉の判別方法及び装置によれば、上記効果に加え、穀粉の製造現場において、製造中の穀粉の化学的な成分情報及び粒度等の物理的な情報も含めた穀粉の種別を判別することができ、穀粉の製造工程において、最終製品等の製品の品質やその主成分等の化学的な成分情報、すなわち製品の品種に応じた製粉操作の調整にリアルタイムで反映させることができる。
したがって、本発明の穀粉の品質管理方法及び穀粉製品によれば、上記の穀粉の判別方法又は判別装置を用いることにより、所定の品質を持つ穀物製品であることが管理でき、その結果、所定の品質を持つ穀粉製品を提供することができる。
【0021】
さらに、本発明の穀粉の判別方法及び装置によれば、上記効果に加え、アレルゲンを含む穀粉の種別及びその穀粉中に含まれるアレルゲンを容易かつ確実に特定することができる。
その結果、本発明の穀粉の品質管理方法及び製品によれば、アレルゲンを含まない所定の品質を持つ穀物製品であることが管理でき、その結果、アレルゲンを含まない所定の品質である穀粉製品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る穀粉の判別方法及び当該判別方法を実施する穀粉の判別装置並びに前記判別方法又は判別装置を用いる穀粉の品質管理方法及びこれにより品質管理された製品を添付の図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
[1]穀粉の判別方法
まず、図1及び図2を参照して、本発明の穀粉の種別を判別する方法について説明する。なお、本発明の穀粉の判別方法は、これに限定されるものではない。
【0024】
図1に、本発明の穀粉の判別方法のフローチャートの一例を示す。
本発明の穀粉の判別方法は、穀物を粉砕して得られた穀粉の持つ所定の特性に応じて、穀粉の種別を判別する穀粉の判別方法であって、予め、既知の穀粉の種別及びその粒度に対する参照蛍光特性として、各穀粉の種別及びその粒度に応じて穀粉のパラメータ化された蛍光特性を取得し、既知の種別及び粒度と、パラメータ化された蛍光特性とを関連付けて予めデータベースに格納しておく参照蛍光特性取得・格納工程(ステップS10)と、測定対象となる穀粉の粒度を取得する粒度取得工程 (ステップS12)と、所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で、測定対象となる穀粉に照射する励起波長及び測定する蛍光波長を段階的に変化させながら、励起光が照射された穀粉から発生する蛍光の蛍光強度を測定して、穀粉の励起・蛍光マトリックス(Excitation-Emission Matrix)情報を取得するEEM情報取得工程 (ステップS14)と、このステップS14のEEM情報取得工程において取得された穀粉のEEM情報を統計解析処理して、穀粉の蛍光特性をパラメータ化して抽出する蛍光特性抽出工程(ステップS16)と、ステップS12の粒度取得工程で得られた粒度を用いて、ステップS16の蛍光特性抽出工程において抽出された穀粉の蛍光特性と、ステップS10の参照蛍光特性取得・格納工程で予め得られている穀粉の粒度に応じた参照蛍光特性とを照合して、測定対象となる穀粉の種別を判別する蛍光特性照合工程 (ステップS18)とを含むことを特徴とするものである。
【0025】
ここで、励起・蛍光マトリックス(EEM)とは、励起波長λEx、蛍光波長(測定波長)λEm、蛍光強度IEx,Emの3軸からなる等高線状のグラフ(蛍光指紋)であり、穀粉の含有成分特有のパターンを示す。
なお、EEMの一例として、例えば、後述する実施例1のパスタ用粉(デュラム粉)のEEMを図6(a)に示す。
図6(a)に示すように、EEMは、横軸を励起波長、縦軸を蛍光波長として各ポイントの蛍光強度を色分けして等高線プロットすることにより平面的に表すことができる。EEMは、試料を前処理することなくキャラクタリゼーションが可能であること、操作が容易で短時間で計測できること、さらに紫外吸収度に比べ感度が高い等の長所を有することから、海水汚染物質の同定や、染色の原料特定等に汎用されている手法である。本発明は、このEEMを対象として、その中から目的とする情報を統計解析処理により見いだし、穀粉を判別する新しい技術である。
ここで、本発明の対象となる種々の成分が混合されている穀粉の場合には、各成分のEEMが重畳されたパターンとなるものと思われる。このため、本発明においては、種々の成分の混合状態が異なる穀粉の品種の種別に応じて個々に特有のEEMが得られるので、この特有のEEMを用いて穀粉の種別を判別しようとするものである。
【0026】
本発明においては、穀物を粉砕した穀粉であれば、どのような穀粉でも、穀粉中にどのような成分や物質(アレルゲン、化学物質、農薬、夾雑物、保存料等)が混入していたとしても、原理的に全ての穀粉が測定対象物となり得る。
どんな分子もその分子構造に対応した吸光・蛍光のパターンをもっており、たとえ全く蛍光を発さなくとも、「蛍光を出さないEEM」という情報があり、それをもとに他の物質と識別可能だからである。
なお、測定対象となる穀粉は、水分を含んでいてもよい。水の蛍光強度は低いため、赤外線(IR)や近赤外線(NIR)で測定した場合よりも水分の影響を受けることがなく測定することができる。
【0027】
ここで、測定対象となる穀粉としては、主として、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、コーン粉、蕎麦粉及び豆粉類及びこれらの混合物が挙げられる。
小麦粉としては、デュラム粉(デュラム・セモリナ)、強力粉、中力粉及び薄力粉が挙げられる。
また、測定対象となる穀粉の中に含まれるアレルゲンや夾雑物としては、大豆、菜種、マイロ、メイズ、蕎麦かずら、卵、牛乳・乳製品、蕎麦及び落花生等が挙げられる。
また、測定対象となる穀粉の中に含まれる化学物質としては、農薬、保存料等が挙げられる。
【0028】
まず、ステップS12の測定対象となる穀粉の粒度を取得する粒度取得工程について説明する。
本発明において、粒度取得工程は、測定対象となる穀粉の粒度を取得できれば、どのような方法で取得しても良く、予め粒度の測定方法や装置によって測定されて既知となっている穀粉の粒度を粒度の情報として取得しても良いし、粒度取得工程において粒度の測定方法や装置によって測定対象となる穀粉の粒度を測定して取得しても良い。なお、穀粉の既知の粒度を情報として取得する場合には、本発明の穀粉の判別方法の実施に際して予め測定された粒度であっても、本発明の穀粉の判別方法の実施とは無関係に予め測定され、穀粉に粒度の情報として与えられている粒度であっても良い。
本発明において、穀粉の粒度を取得する理由は、穀粉の同一の品種(化学的な成分が同一)であっても、粒度の違いによって得られるEEM情報が異なるからである。すなわち、穀粉の品種の種別を正確に判別するには、粒度の違いによるEEM情報の違いを考慮する必要があるからである。
【0029】
ここで、穀粉の粒度測定方法としては、特に制限的ではないが、穀粉の粒度を測定できれば、どのような方法でも良く、従来公知の穀粉の粒度測定方法を始めとして、種々の公知の穀粉の粒度取得方法を用いることができる。例えば、マイクロトラック(日機装社製)、マスターサイザ(マルバーン社製)等のレーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置を用いる測定方法が好適に用いられる。
なお、ステップS12の粒度取得工程は、ステップS18の蛍光特性照合工程より前であれば、何時行っても良い。また、測定対象となる穀粉の粒度が既知の場合には、上述したように、粒度測定等を行うことなく、既知の粒度を用いて、測定対象穀粉の粒度を情報として取得すれば良い。
【0030】
なお、穀粉の粒度としては、その平均粒径に換算して取得すれば良く、特に制限的ではなく、どのような粒度であっても良い。
なお、穀粉の粒度分布は、できるだけ少なく、シャープであるのが好ましく、穀粉の平均粒径に対して分散が小さいのが好ましい。その理由は、穀粉の種別を判別するので、種別の判別に用いるEEM情報に影響を与える穀粉の粒度のばらつきは少ない方が好ましいからであり、穀粉の粒度のばらつきが少なければ、粒度のばらつきを考慮せずに、穀粉の1点のみを測定しても穀粉の判別が可能だからである。1点測定であれば、短時間で測定することが要求される製造現場でも使用することができる。
なお、穀粉の粒度分布が広がっており、いわゆるブロードである場合には、穀粉のEEM情報の測定を複数点において行い、それらを平均して用いても良いが、穀粉を再粉砕する等粒度分布を揃えてから本発明における測定対象としても良い。
【0031】
次に、測定対象となる穀粉のEEM情報を取得するEEM情報取得工程について説明する(ステップS14)。
測定対象となる穀粉のEEM情報は、所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で当該穀粉に照射する励起波長λEx及び測定する蛍光波長λEmを段階的に変化させながら、励起光が照射された穀粉から発生する蛍光の蛍光強度(スペクトル情報)IEx,Emを測定することにより取得することができる。
【0032】
EEM情報が何次元のデータになるかは、何種類の励起波長λEx及び蛍光波長λEmの組み合わせで蛍光強度IEx,Emを測定するかによって決まる。例えば、1種類の励起波長λEx及びm種類の蛍光波長λEmの組み合わせ(1×m=m)で蛍光強度IEx,Emを測定すれば、m次元のEEM情報が取得できる。
励起波長λEx及び蛍光波長λEmの組み合わせの数mは、正の整数であり、5以上の整数であることが好ましいが、mが小さいと得られるEEM情報の情報量が小さく、正確な成分の情報が得られないので、mは50以上がより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。また、mがあまり大きいと、後の統計処理が煩雑となるので、mは好ましくは1000以下、より好ましくは500以下である。
【0033】
図2に、所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で、励起波長及び蛍光波長とを段階的に変化させながら、穀粉のEEM情報を取得するために、測定対象である穀粉の蛍光強度を測定する蛍光強度測定工程のフローチャートの一例を示す。
励起波長範囲、励起/蛍光スリット幅(励起波長ピッチ)、蛍光波長範囲、励起/蛍光取得間隔(蛍光波長ピッチ)及びスキャンスピードは、測定対象である穀粉に応じて、測定者が適宜設定することができる。
【0034】
図2に示すように、測定対象である穀粉はセルに収納される(ステップS20)。所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で、励起波長及び蛍光波長とを段階的に変化させながら(ステップS22、S26)、測定対象である穀粉の蛍光強度(スペクトル情報)を測定する(ステップS30)。
例えば、[励起波長範囲:200〜900nm/10nm間隔、蛍光波長範囲:200〜900nm/10nm間隔]の測定条件で、EEM情報を取得する場合、測定対象である穀粉に照射する励起波長を200nmに設定し(ステップS22)、測定する蛍光波長を200nm、210nm、・・・と10nmずつ上げて(ステップS26、S28)、測定蛍光波長900nmまでの蛍光強度を測定する(ステップS30)。測定蛍光波長が900nmを超えたら(ステップS28)、次いで、照射する励起波長を200nmから210nmへと1ピッチ上げて(ステップS22、S24)、再び測定蛍光波長を200nm、210nm、・・・と段階的に上げて(ステップS26、S28)、測定蛍光波長900nmまでの蛍光強度を測定していく(ステップS30)。この測定蛍光波長200nmから900nmまでの蛍光強度の測定(ステップS26、S28、S30)を、照射励起波長を200nmから900nmまでと10nmずつ上げて(ステップS22、S24)繰り返す。照射励起波長が900nmを超えた時点(ステップS24)で穀粉の蛍光強度の測定を終了する。
この測定条件では、合計5041条件の蛍光強度の測定値を取得することになる。こうして得られた5041条件の蛍光強度の測定値を励起波長及び蛍光波長に対してマトリックス表示することにより、EEM情報とすることができる。
【0035】
所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で、励起波長及び蛍光波長とを段階的に変化させながら、測定対象である穀粉の蛍光強度を測定することにより、穀粉のEEM情報を得ることができる。EEM情報が何次元のデータになるかは、何種類の励起波長λEx及び蛍光波長λEmの組み合わせで蛍光強度IEx,Emを測定するかによって決まる。すなわち、蛍光強度の測定数がmの場合、m次元のEEM情報が取得できる。
上記測定条件の例では、励起波長範囲200〜900nm、蛍光波長範囲200〜900nmで、IEx200,Em200、IEx200,Em210、・・・IEx890,Em900、IEx900,Em900の合計5041条件のパラメータからなる蛍光強度の測定値を取得するので、5041次元のEEM情報を有している。
【0036】
なお、測定対象である穀粉が発する蛍光波長は励起波長より長波長であるため、励起波長より長波長の蛍光波長で蛍光強度を測定してもよい。
例えば、照射励起波長を500nmに設定する場合では、測定蛍光波長が500nm未満では蛍光は観察されないので、測定蛍光波長200〜490nmの範囲の蛍光強度を測定する必要はなく、500〜900nm程度の範囲の蛍光強度を測定すれば足りる。
又は、上記測定条件[励起波長範囲200〜900nm、蛍光波長範囲200〜900nm]で取得した穀粉から発生する蛍光の蛍光強度の測定結果から、励起波長より短波長の蛍光波長の範囲における蛍光強度を削除してもよい。
なお、後述する蛍光特性抽出工程において、励起波長と蛍光波長が或る限られた範囲、又は特定の波長で十分に判別できることが明らかになった場合は、当該波長範囲又は当該波長における計測のみを行うだけでも良い。
【0037】
また、こうして取得したEEM情報には、穀物の品質以外のノイズ情報を低減し、外乱を除去する目的として、さまざまな既知の信号処理を施しても良い。
信号処理の方法としては、ウェーブレット変換、フーリエ変換、ピーク検出、平滑化、微分、スペクトル補正、近似・補間及び波形除去、Savitzky-Golay、移動平均、正規化等が挙げられる。
【0038】
ステップS14のEEM情報取得工程において、上記測定条件[励起波長範囲200〜900nm、蛍光波長範囲200〜900nm]で取得した5041条件のパラメータIEx200,Em200、IEx200,Em210、・・・IEx890,Em900、IEx900,Em900に基づいて、EEM情報を5041次元空間に分布させることができる。5041次元空間における分布情報は、すなわち、穀粉の品種の種別(化学的な成分情報)及び粒度の違いを表す。しかし、5041次元空間における分布情報は高次元であるため、穀粉の種別の判別にそのまま用いることができない。
そこで、測定対象である穀粉のEEM情報を統計解析処理によって、より低次元にすると共に、穀粉の品種の種別の特徴を端的に表すようにパラメータ化して、好ましくは、2次元パラメータ化して、測定対象となる穀粉の蛍光特性を抽出する。
以下に、この蛍光特性抽出工程について説明する(ステップS16)。
【0039】
統計解析処理としては、穀粉の品種の種別の特徴を端的に表すようにパラメータ化、好ましくは、2次元パラメータ化できればどのようなものでも良いが、多変量解析又はデータマイニングにより行うことが好ましい。
また、その具体例としては、データ構造分析、判別分析、パターン分類、多元データ解析、回帰分析及び学習機械等が挙げられる。
【0040】
また、データ構造分析としては、主成分分析、因子分析、対応分析及び独立成分分析が挙げられる。
また、判別分析としては、線形判別分析又は非線形判別分析が挙げられる。
ここで、線形判別分析としては、正準判別分析が挙げられ、非線形判別分析としては、決定木が挙げられる。
また、パターン分類としては、クラスター分析、多次元尺度法が挙げられる。
また、回帰分析としては、線形回帰及び非線形回帰が挙げられる。
ここで、線形判別分析としては、Partial Least Square(PLS)回帰、単回帰分析、重回帰分析及び主成分回帰が挙げられ、非線形判別分析としては、ロジスティック回帰及び回帰木が挙げられる。
また、学習機械としては、ニューラルネットワーク、自己組織化マップ、集団学習及び遺伝的アルゴリズムが挙げられる。
統計解析処理は、測定対象となる穀粉の品種の個々の差(種別差)が最も的確に解析できる手法であれば、どの分析方法を用いても良い。
【0041】
ステップS16の蛍光特性抽出工程において、m次元のEEM情報は、2次元パラメータとして取得されることが好ましい。EEM情報をm次元から2次元パラメータとして取得することにより、EEM情報の特徴を保持しながら、測定対象となる穀粉の粒度及び品種(化学的な成分)におけるEEMの違いを、測定対象となる穀粉の品種の種別が判別可能な簡単なパラメータとして取得できる。
例えば、ステップS14のEEM情報取得工程で得られた多次元のEEM情報に対して主成分分析を行って、2次元パラメータとして2つの主成分得点1及び2を得ることができる。この2つの主成分得点は、所定の粒度における測定対象となる穀粉の品種の種別を表す。すなわち、ステップS16の蛍光特性抽出工程において、統計解析処理として主成分分析を行う場合には、パラメータ化された蛍光特性として2つの主成分得点1及び2からなる2次元パラメータを求めるのが好ましい。
【0042】
次に、予め、照合の対象となる既知の穀粉の粒度及び品種の種別に応じてパラメータ化された蛍光特性を算出し、データベースに格納しておく参照蛍光特性取得・格納工程について説明する(ステップS10)。
本発明においては、その粒度及び品種の種別が既知である、照合の対象となる穀粉に対して、予め、上述したステップS14のEEM情報取得工程及びステップS16の蛍光特性抽出工程を全く同様に行っておき、パラメータ化された蛍光特性を参照蛍光特性として求めておく必要がある。
あらゆる穀粉を測定対象とする場合には、照合の対象となるあらゆる穀粉の品種及び粒度に対して参照蛍光特性を求めておく必要があるので、多数の穀粉種(穀粉の種別)について、その粒度毎の参照蛍光特性を求めておき、データベース等のデータ記憶装置に照合のために保存(格納)しておく必要がある。なお、参照蛍光特性としてはパラメータ化されており、データ量としては、限られたものとなっているので、予め求めて記憶しておく必要がある穀粉種についての参照蛍光特性及び粒度のデータは、データベース等のデータ記憶装置に容易に保存することができる。
【0043】
なお、照合の対象となる穀粉の品種の種別が未知の場合には、予め、もしくは、参照蛍光特性抽出後に、化学分析等によって化学的な成分情報を求めておき、穀粉の品種の種別を特定しておくことが好ましい。また、穀粉の粒度が未知の場合には、予め、もしくは、参照蛍光特性抽出後に、上述したステップS12の粒度取得工程を行って粒度を特定しておくことが好ましい。
なお、照合の対象となる穀粉の品種、粒度及びパラメータ化蛍光特性(参照蛍光特性)の3つの特性は、いずれを先に、いずれを後に求めておいても良いが、少なくともステップS18の蛍光特性照合工程よりも前に、少なくとも参照蛍光特性を、好ましくは、3つの特性の全てを求めておくのが良い。
【0044】
また、本発明者らの知見によれば、ステップS16の蛍光特性抽出工程において抽出された参照蛍光特性、例えば、主成分分析によって参照蛍光特性として抽出された主成分得点1及び2は、参照蛍光特性(パラメータ化蛍光特性)のパラメータ数を次元とする空間座標や平面座標において、穀粉の品種の種別内における化学的な成分情報や粒度に多少のばらつきがあっても、所定の空間領域や平面領域内に入ることが分かっている(例えば、図8、図11及び図14参照)。
したがって、穀粉の品種の種別及び粒度に応じた参照蛍光特性自体をデータ記憶装置に保存するのではなく、ステップS16の蛍光特性抽出工程において、未知試料の蛍光特性を抽出する際に用いることができる、既知の穀粉の粒度及び種別から求められたEEM情報から作成された一般式 Y=f(x)(x:EEM情報、Y:出力情報)や、穀粉の品種の種別及び粒度に応じた参照蛍光特性の空間座標における空間領域や平面座標における平面領域(既知の穀粉の粒度及び種別から求められたEEM情報の平均値や標準偏差等の分布状況)をデータ記憶装置に保存(格納)するようにしても良い。こうすることにより、データ記憶装置に保存するデータ量を減らすことができ、ステップS18の蛍光特性照合工程における照合を容易なものとすることができる。
【0045】
ところで、蛍光特性抽出工程において抽出された穀粉の蛍光特性を照合する対照となる参照蛍光特性として、既知の穀粉及びその粒度に応じて、穀物の各成分を主成分として含む既知の穀粉のパラメータ化された蛍光特性を求めておき、これらの参照蛍光特性を用いて照合することにより、測定対象となる穀粉を穀物の特定の成分を主成分として含む穀粉であることを特定することができる。なお、既知の穀粉製品の品種の種別について参照蛍光特性を求めておくことにより、測定対象となる穀粉の種別を穀粉製品の品種の種別とすることができる。
測定対象となる穀粉がアレルゲンを含む穀粉であるか否かを検出する場合、既知の特定のアレルゲンを含む既知の穀粉について参照蛍光特性を求めておくことにより、測定対象となる穀粉の種別を特定のアレルゲンを含む穀粉であると判別することができ、この穀粉中に含まれるアレルゲンを特定することができる。
【0046】
多種類の穀粉の混合物からなる混合穀粉が測定対象となる穀粉である場合、既知の多種類の穀粉の既知の混合物について参照蛍光特性を求めておくことにより、測定対象となる混合穀粉の種別を特定することができ、この混合穀粉中に含まれる特定の穀粉を特定することができる。
また、農薬等の化学物質を含む穀粉が測定対象となる穀粉である場合、既知の農薬等の化学物質を含む既知の穀粉について参照蛍光特性を求めておくことにより、測定対象となる、残留農薬等の化学物質を含む穀粉の種別を特定することができ、その結果、穀粉中に含まれる残留農薬等の化学物質を特定することができる。
【0047】
次に、蛍光特性照合工程について説明する(ステップS18)。
ステップS18の蛍光特性照合工程において、ステップS12の粒度取得工程で得られた測定対象である穀粉の粒度と、ステップS16の蛍光特性抽出工程において抽出された穀粉の蛍光特性を検索キーとして用いて、データベースを検索し、データベースから検索キーとなる粒度及び蛍光特性と、一致又は略一致する、もしくは対応する粒度及び参照蛍光特性、並びにこれらの粒度及び参照蛍光特性を持つ穀粉の種別を読み出し、抽出された穀粉の蛍光特性と読み出された穀粉の参照蛍光特性とを照合することにより、測定対象となる穀粉の種別を、蛍光特性が一致する照合の対象となる穀粉の種別として、特定し、判別することができる。なお、データベースには、ステップS10の参照蛍光特性取得・格納工程において、照合の対象となる穀粉の種別及びその粒度に応じて、予め得られている穀粉の参照蛍光特性が格納されているのは上述した通りである。
【0048】
すなわち、蛍光特性抽出工程において抽出された穀粉の蛍光特性を、穀物の各成分ごとの穀粉及びその粒度に応じて、予め得られている、穀物の各成分を主成分として含む穀粉のパラメータ化された蛍光特性と照合することにより、測定対象となる穀粉を穀物の特定の成分を主成分として含む穀粉であることを特定することができる。本発明における測定された蛍光特性と参照蛍光特性との照合は、パラメータ同士の照合であるため、極めて簡単に、また、正確に行うことができる。
【0049】
なお、粒度が同じ又は略同じである時、測定された蛍光特性と参照蛍光特性との照合方法は、特に制限的ではないが、パラメータ同士の比較により、パラメータの一致度を算出し一致度が所定閾値以上であれば、測定された蛍光特性を持つ穀粉の種別を、参照蛍光特性を持つ穀粉の種別として特定することができる。
また、上述したように、照合の対象となる参照蛍光特性がパラメータ空間座標の空間領域やパラメータ平面座標の平面領域として求められている場合には、測定された蛍光特性が、これらの空間領域や平面領域の内部に入るか否かによって、両者を照合することができる。これらの空間領域や平面領域の内部に入る場合には、測定された蛍光特性を持つ穀粉の種別を、これらの空間領域や平面領域を持つ穀粉の種別として特定することができるのはもちろんである。
【0050】
本発明の穀粉の判別方法によれば、測定対象となる穀粉がアレルゲンを含む穀粉である場合、測定対象となる穀粉の種別を特定のアレルゲンを含む穀粉であると判別することができ、この穀粉中に含まれるアレルゲンを特定することができる。
また、本発明の穀粉の判別方法によれば、測定対象となる穀粉が多種類の穀粉の混合物である場合、測定対象となる混合穀粉の種別を特定することができ、この混合穀粉中に含まれる特定の穀粉を特定することができる。
また、同様にして、本発明の穀粉の判別方法によれば、測定対象となる穀粉中に含まれる残留農薬等の化学物質を特定することができる。
なお、測定対象となる穀粉の種別は、穀粉製品の品種の種別であってもよい。
ところで、本発明の穀粉の判別方法は、予め、既知の穀粉の品種の種別、粒度及び参照蛍光特性が取得済みであるので、小麦粉製品等の穀粉製品の判別や、穀粉製品の製造工程の管理のための中間生成穀粉の判別や、穀物の各成分からなる穀粉又は各成分を主成分とする穀粉の判別や、既知のアレルゲンや既知の他成分等を含む穀粉の判別及びこの判別結果により、穀粉中に含まれるアレルゲンや他成分等を特定等するのに好適である。
本発明の穀粉の判別方法は、基本的に以上のように構成される。
【0051】
[II]穀粉の判別装置
次に、図3〜図5を参照して、本発明の穀粉の判別方法を実施する本発明の穀粉の判別装置について説明する。なお、本発明の穀粉の判別装置は、図示例の穀粉の判別装置に限定されるものではない。
図3は、本発明の穀粉の判別装置の一実施形態のブロック図であり、図4は、図3に示す穀粉の判別装置の測定ユニットの一実施形態のブロック図である。
【0052】
図3に示すように、本発明の穀粉の判別装置10は、穀物を粉砕して得られた測定対象穀粉(測定対象となる穀粉)MFの持つ所定の特性に応じて、測定対象穀粉MFの品質の種別を判別するものであって、蛍光強度(スペクトル情報)を測定する測定ユニット12と、測定対象穀粉MFの粒度を取得する粒度取得部20と、測定対象穀粉MFの品質の種別を判別する穀粉判別ユニット14と、測定ユニット12による測定操作や穀粉判別ユニット14による判別操作等の指示や入力を行う操作部16と、測定ユニット12による測定結果や粒度取得部20により取得された粒度や穀粉判別ユニット14による判別結果や操作部16による操作の指示や入力等を表示するディスプレイ18とを有する。
なお、測定対象穀粉MFの粒度が予め測定されて情報として得られている場合には、操作部16によって測定対象穀粉MFの粒度を情報として入力することにより、測定対象穀粉MFの粒度を取得するようにしても良い。この場合には、操作部16による入力が粒度の取得となるので、粒度取得部20を設けなくても良い。
【0053】
また、本発明の穀粉の判別装置10は、測定対象穀粉MFの品質の種別を判別するための照合の対象となる、穀粉の品質の種別や粒度が既知の参照蛍光特性(パラメータ化された蛍光特性)を、予め求める場合にも用いることができる。この場合は、その種別及び粒度が既知の穀粉を測定対象穀粉MFとすれば良い。
また、本発明の穀粉の判別装置10は、測定対象穀粉MFの品質の種別を判別するための照合の対象となる、品質の種別が既知の穀粉の粒度や参照蛍光特性(パラメータ化された蛍光特性)を、予め求める場合にも用いることができることはいうまでもない。この場合には、その種別が既知の穀粉を、測定対象穀粉MFとすれば良い。
また、参照蛍光特性を持つ穀粉の種別を既知とするために予め求めておくには、穀粉の化学分析等を予め行えば良いし、逆に化学分析等によって予め種別や粒度が既知である標準となる穀粉を用いても良い。
【0054】
ここで、測定ユニット12は、測定対象穀粉MFからの蛍光を分光して測定するものであって、測定対象穀粉MFを所定の測定位置に位置決めして支持する測定対象穀粉支持部(以下、単に支持部という)21と、支持部21に位置決めされた測定対象穀粉MFに所定の波長の励起光を照射して測定対象穀粉MFから蛍光を生じさせる分光照明部22と、この分光照明部22によって所定の波長の励起光が照射された測定対象穀粉MFから発生する所定の蛍光波長の蛍光を測定し、測定された蛍光の測定値を穀粉判別ユニット14に送信する蛍光測定部24とを備えている。なお、分光照明部22及び蛍光測定部24は、上述した本発明の穀粉の判別方法のステップS14のEEM情報取得工程(図1参照)の蛍光強度測定工程を実施する分光測定ユニットを構成する。
【0055】
また、穀粉判別ユニット14は、蛍光測定部24によって得られた蛍光の測定値から測定対象穀粉MFの励起・蛍光マトリックス(EEM)情報を取得する情報取得部26と、この情報取得部26によって取得された測定対象穀粉MFのEEM情報を統計解析処理して、測定対象穀粉MFの蛍光特性をパラメータ化して抽出する蛍光特性抽出部28と、粒度取得部20によって得られた粒度を用いて、蛍光特性抽出部28によって抽出された測定対象穀粉MFのパラメータ化された蛍光特性と、予め得られているパラメータ化された参照蛍光特性とを照合して、測定対象穀粉MFの種別を判別する蛍光特性照合部30と、粒度取得部20で取得された測定対象穀粉MFの粒度、情報取得部26で取得された測定対象穀粉MFのEEM情報及び蛍光特性抽出部28で抽出された測定対象穀粉MFのパラメータ化蛍光特性、並びに、照合の対照となる多数の穀粉の種別、粒度、参照蛍光特性等を記憶しておくメモリ(DB)32と、粒度取得部20、測定ユニット12の分光照明部22及び蛍光測定部24の各部、並びに、穀粉判別ユニット14の情報取得部26、蛍光特性抽出部28、蛍光特性照合部30及びメモリ(DB(データベース))32の各部を制御すると共に、本発明の判別装置10全体の制御も行う制御部34とを備えている。
なお、穀粉判別ユニット14は、図3に示すように、メモリ(DB)32に加え、照合の対照となる多数の穀粉の種別、粒度、参照蛍光特性等を記憶しておくための外部メモリ36を備えているのが好ましい。
【0056】
まず、粒度取得部20について説明する。
粒度取得部20は、測定対象穀粉MFの粒度を取得するためのものである。粒度取得部20は、上述した本発明の穀粉の判別方法のステップS12の粒度取得工程(図1参照)において、測定対象穀粉MFの粒度が取得できるものであればどのようなものでも良い。例えば、予め粒度の測定方法や装置によって測定されて既知となっている測定対象穀粉MFの粒度を、粒度の情報として取得する粒度情報の入力デバイスや読取デバイスなどであっても良いし、測定対象穀粉MFの粒度を測定する粒度測定装置であっても良い。なお、粒度取得部20によって情報として取得される測定対象穀粉MFの既知の粒度は、粒度取得部20の粒度測定装置で事前に測定された粒度であっても良いし、本発明の穀粉の判別装置10とは無関係の粒度測定装置によって予め測定され、測定対象穀粉MFに粒度の情報として与えられている粒度であっても良い。この粒度の情報は、測定対象穀粉MFに添付された書類に記載されたものでも、記録媒体にデータとして格納されているものであっても良いし、メモリ(DB)に測定対象穀粉MFの種別と関連付けて格納されているものであっても良い。
【0057】
ここで、粒度取得部20に用いられる穀粉の粒度測定装置としては、特に制限的ではなく、穀粉の粒度を測定できれば、どのような装置でも良く、従来公知の穀粉の粒度測定装置を始めとして、種々の公知の穀粉の粒度取得装置を用いることができる。例えば、マイクロトラック(日機装社製)、マスターサイザ(マルバーン社製)等のレーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置が好適に用いられる。
なお、測定対象穀粉MFの粒度が予め測定されて既知の場合には、上述したように、粒度取得部20に粒度測定装置を備えていなくても良いし、既知の粒度を操作部16によって入力する場合には、粒度取得部20自体がなくても良いのはもちろんである。
【0058】
次に、測定ユニット12の各構成要素について説明する。
測定ユニット12の測定対象穀粉支持部21(以下、単に支持部21ともいう。)は、測定対象穀粉MFを分光測定のための所定の測定位置に位置決めして支持するものであり、測定対象穀粉MFを内部に収納するセルを所定測定位置に支持する支持台であっても良いし、又は、支持部21自体が測定対象穀粉MFを固定する粉体の固定装置であっても良い。なお、このようなセルとしては、本出願人らの出願に係る特願2007−215672号明細書に提案されたセルを用いることができるし、粉体の固定装置としては、本出願人の1人の出願に係る特開2002−228563号公報に開示の固定装置等を用いることができる。
【0059】
次に、分光照明部22は、測定対象穀粉MFから蛍光を発生させるために、所定の励起波長範囲で、励起波長を段階的に変化させながら、測定対象穀粉MFに所定の波長の励起光を照射するものである。すなわち、分光照明部22は、測定対象穀粉MFに照射する励起光の励起波長を任意に変えることができるものである。
なお、分光照明部22は、図4に示すように、所定の励起波長範囲の励起光を射出するための光源38と、測定対象穀粉MFに照射するために所定の励起波長を有する励起光に分光する分光デバイス40と、分光デバイス40によって分光される励起光の励起波長を任意に設定するように調整する分光デバイス40の励起波長調節部42と、分光デバイス40によって分光された所定の励起波長を有する励起光を導波する光学デバイス44と、光学デバイス44によって導波された励起光を測定対象穀粉MFに向けて照射する励起光照射部46とを備えている。
【0060】
ここで、分光照明部22の光源38としては、所定の励起波長範囲、例えば、200nm〜900nmの励起光を射出することができるものであればどのようなものでも良い。光源38としては、例えば、キセノンランプ、タングステンランプ、波長可変レーザ、水銀ランプ、重水素ランプ等を用いることができる。
また、分光デバイス40としては、光源38から射出された励起光を、所定の励起波長範囲において、所定波長間隔、例えば10nm間隔で、分光できればどのようなものでも良い。分光デバイス40としては、例えばAOTF(Acousto Optic Tunable Filter)、チューナブルフィルタ(液晶チューナブルフィルタ)、干渉フィルタ、回折格子等を用いることができる。
【0061】
分光デバイス40の励起波長調節部42は、分光デバイス40によって分光される励起光の励起波長を所望の励起波長に任意に設定するためのものであり、測定者が分光デバイス40によって分光される励起光の励起波長自体を所望の励起波長に任意に設定可能な手動調節部であっても良いし、測定者は、励起波長の初期値、可変ピッチ(変化させる励起波長間隔)、最終設定値又は可変回数を入力又は指定し、励起波長の変更を自動的に行っても良い。
光学デバイス44は、分光デバイス40によって分光された所定の励起波長を有する励起光を励起光照射部46まで導波するものであり、分光測定に供される励起光を導波できればどのようなものでも良く、例えば、光ファイバーやレンズや反射鏡等からなる光学系等を挙げることできる。
励起光照射部46は、支持部21の所定の測定位置に位置決めして支持された測定対象穀粉MFに適切に励起光が照射されるように励起光の照射位置を決めるものである。
なお、分光デバイス40によって分光された所定波長の励起光を、直接、支持部21に支持された測定対象穀粉MFに適切に照射できる場合には、光学デバイス44及び励起光照射部46を設けなくても良い。
【0062】
光源38から射出された励起光は、分光デバイス40において、励起波長調節部42によって測定者により又は自動的に設定された所定の励起波長を有する励起光に分光される。
分光デバイス40において所定の波長を有する励起光に変換された励起光は、光学デバイス44によって導波され、励起光照射部46から、測定対象穀粉MFに照射される。所定の励起波長を有する励起光が照射されることにより、測定対象穀粉MFは、その成分(化学的な成分)及び粒度に特有なパターンの(蛍光強度を持つ)蛍光を発する。
なお、光源38として波長可変レーザを用いる場合、光源38から直接所望の波長を有する励起光が得られるので分光デバイス40は不要である。
なお、測定者は、光源38に対して励起波長調節部42を持つ分光デバイス40を用いることにより、又は、光源38として波長可変レーザを用いることにより、測定対象穀粉MFに照射する励起光の波長を任意の励起波長に設定することができる。
なお、分光照明部22としては、上述した特許文献1に開示された分光照明装置を用いることができる。
【0063】
測定ユニット12の蛍光測定部24は、所定の蛍光波長において、支持部21の所定測定位置に支持された測定対象穀粉MFが発した蛍光の内、特定の蛍光波長を選択的に捕えて、その蛍光強度を測定し、測定結果を穀粉判別ユニット14に送信するものであるが、本発明では特に、分光照明部22によって測定対象穀粉MFに照射される励起光の励起波長の段階的な変化に応じて、所定の蛍光波長範囲で測定する蛍光波長を段階的に変化させながら、所定の波長の励起光が照射された測定対象穀粉MFから発生する蛍光の蛍光強度を測定するものである。すなわち、蛍光測定部24は、測定対象穀粉MFから発生する蛍光を測定する蛍光波長を任意に変えることができるものである。
【0064】
なお、蛍光測定部24は、図4に示すように、所定の励起波長範囲において、支持部21の測定位置に位置決めされた測定対象穀粉MFから発生する蛍光を測定する際に蛍光波長を任意に変える蛍光波長可変手段として機能する分光デバイス48と、測定対象穀粉MFから発生し、分光デバイス48で分光された所定の蛍光波長の蛍光の蛍光強度を測定する蛍光測定デバイス50とを備えている。
なお、支持部21の所定測定位置に支持された測定対象穀粉MFから発生した蛍光の蛍光強度を測定する際に、測定対象穀粉MFの測定対象サイズによっては、例えば、測定する穀粉のサイズがミクロなサイズである場合には、測定対象穀粉MFと分光デバイス48との間に光学デバイスを介在させ、測定対象サイズを測定に適した大きさに拡大しても良いし、多点測定のためにマクロなサイズである場合には、縮小しても良い。このような光学デバイスとしては、例えば、顕微鏡、ズームレンズ、マクロレンズ、広角レンズ等を用いることができる。
【0065】
ここで、分光デバイス48は、分光照明部22から射出された所定励起波長の励起光が照射された測定対象穀粉MFから発生する蛍光を所定の波長を有する蛍光に分光するものである。この分光デバイス48は、測定対象穀粉MFから発生する蛍光を、所定の蛍光波長範囲において、所定波長間隔、例えば10nm間隔で、分光できればどのようなものでも良い。分光デバイス48としては、測定する蛍光の蛍光波長を任意に設定する手段を有するものであれば良く、例えば、分光デバイス40と同様に、AOTF(Acousto Optic Tunable Filter)、液晶チューナブルフィルタ、干渉フィルタ、回折格子等を用いることができる。
【0066】
また、蛍光測定デバイス50は、分光デバイス48によって、測定対象穀粉MFが発した蛍光の内から選択的に分光されて捕らえられた所定の波長を有する蛍光のみの蛍光強度を測定するものである。
蛍光測定デバイス50は、所定の波長を有する蛍光の蛍光強度を測定できればどのようなものでも良く、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、光電管等の光検出素子や、CCDセンサやMOSセンサ等の光センサ、フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)、光検出器等を用いることができ、さらには、多点測定の場合には、CCDカメラ、走査型画像カメラ等も用いることができる。特に、光検出器は、一点測定であるため計測が迅速に行えるとともに、感度を高くすることができるために僅かな違いの判別もでき、本願の目的とする品質管理に適していることに大きな特徴がある。
【0067】
蛍光測定デバイス50においては、分光デバイス48を通過することにより、測定対象穀粉MFが発した蛍光の内、所定の波長を有する蛍光のみが選択的に捕えられ、その蛍光強度が測定される。
蛍光測定デバイス50により測定された蛍光強度から、特定の励起波長λEx(照射波長)及び特定の蛍光波長λEm(測定波長)における蛍光強度IEx,Emの情報が得られる。したがって、蛍光測定デバイス50を用いることにより、測定対象穀粉MFの特定の励起波長及び蛍光波長における蛍光強度を測定することができる。
蛍光測定デバイス50により測定された測定対象穀粉MFに関する情報(取得された蛍光強度)は、EEM情報を取得する穀粉判別ユニット14へ伝送され、制御部34を介して穀粉判別ユニット14の情報取得部26に送信され、また、必要に応じて、メモリ32に直接格納される。
【0068】
蛍光測定デバイス50により、測定対象穀粉MFの測定点においてm次元のEEM情報を取得する場合には、励起波長及び蛍光波長の組み合わせを変えながらm種の蛍光の蛍光強度を測定する。こうして、蛍光測定デバイス50によって測定されたm種の蛍光の蛍光強度の情報が、穀粉判別ユニット14に伝送される。
【0069】
ところで、測定ユニット12の分光照明部22及び蛍光測定部24においては、それぞれ、照射する励起波長及び測定する蛍光波長を、手動又は自動で、測定者が任意に変えることができる。本発明において、測定ユニット12の分光照明部22及び蛍光測定部24は、それぞれ励起波長及び蛍光波長を自動的に変更する手段を有するのが好ましい。例えば、穀粉判別ユニット14の制御部34の制御に基づいて、測定ユニット12の分光照明部22及び蛍光測定部24は、それぞれ励起波長及び蛍光波長を自動的に変更するのが好ましい。
図5は、制御部による制御下で、測定ユニット12において、励起波長及び蛍光波長を自動的に変更しながら蛍光強度を測定する工程(上述の本発明の蛍光強度測定工程参照)のフローチャートの一例である。
【0070】
まず、分光照明部22の励起波長及び蛍光測定部24の蛍光波長を自動的に変更するため、測定者は、キーボード・マウス等からなる操作部16を通じて、測定するEEMの励起波長範囲、励起波長ピッチを入力する(ステップS50)。次いで、蛍光波長範囲、蛍光波長ピッチを入力する(ステップS52)。
次に、制御部34は、分光照明部22及び蛍光測定部24に対し、入力された励起波長範囲、蛍光波長範囲、各波長ピッチに基づいて、最低励起波長、最低蛍光波長を初期値に設定し(ステップS54)、1つ目の蛍光強度を測定するよう指示する(ステップS56)。
【0071】
蛍光波長を1ピッチ上げても、蛍光波長が設定された蛍光波長範囲外とならない場合(ステップS58のN)には、制御部34は、蛍光測定部24に、蛍光波長を1ピッチだけ上げて2回目の蛍光強度を測定するよう命令する(ステップS60、ステップS56)。同様にして、蛍光波長を1ピッチ上げると、蛍光波長が設定された蛍光波長範囲外となるまで、蛍光波長を1ピッチずつ上げて蛍光強度の測定を繰り返す(ステップS58のN、ステップS60、ステップS56)。
【0072】
蛍光波長を1ピッチ上げると、蛍光波長が設定された蛍光波長範囲外となる場合(ステップS58のY)で、かつ、励起波長を1ピッチ上げても波長が設定された励起波長範囲外とならない場合(ステップS62のN)には、制御部34は、分光照明部22に、励起波長を1ピッチ上げ、蛍光測定部24に、蛍光波長を初期値(ここでいう蛍光波長の初期値とは、1ピッチ上げた励起波長と同じ波長を意味する)に設定するように命令し(ステップS64)、蛍光測定部24に蛍光強度を測定するように命令する(ステップS56)。この後、励起波長を1ピッチ上げると、波長が設定された励起波長範囲外となるまで、励起波長を1ピッチずつ上げて測定を繰り返す(ステップS62のN、ステップS64)。
蛍光波長を1ピッチ上げると、蛍光波長が設定された蛍光波長範囲外となる場合(ステップS58のY)で、かつ、励起波長を1ピッチ上げると、波長が設定された励起波長範囲外となる場合(ステップS62のY)には、測定を終了し、測定した蛍光の蛍光強度の測定値を穀粉判別ユニット14に送信する。
【0073】
なお、本実施形態は、所定の波長の励起光を照射して測定対象となる穀粉(の各成分)から蛍光を生じさせる分光照明部22と測定対象となる穀粉が発した蛍光の内、所定の波長を有する蛍光を選択的に捕え、蛍光強度を測定する蛍光測定部24とを有する装置としたが、両者を一体とした1つの装置としてもよい。
また、上述した測定ユニット12は、ステップS10の参照蛍光特性取得・格納工程(図1参照)を実施して、予め、照合の対象となる既知の穀粉の粒度及び品種の種別に応じたパラメータ化された蛍光特性を、参照蛍光特性として算出しておく場合にも用いることができる。
本発明に用いられる測定ユニット12は、基本的に以上のように構成される。
【0074】
次に、穀粉判別ユニット14の各構成要素について説明する。
情報取得部26は、特定の励起波長λEx(照射波長)及び特定の蛍光波長λEm(測定波長)における蛍光強度IEx,Emの測定値から、測定対象穀粉MFのEEM情報を取得するもので、上述した本発明のステップS14のEEM情報取得工程(図1参照)の蛍光強度測定後の後工程を実施するためのものある。すなわち、情報取得部26は、測定ユニット12において、所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で、励起波長及び蛍光波長を段階的に変化させながら、測定ユニット12の蛍光測定部24によって得られた蛍光強度の測定値を蛍光測定部24から受け取り、受け取った蛍光強度の測定値から測定対象穀粉MFのEEM情報を取得する。
【0075】
蛍光特性抽出部28は、情報取得部26によって取得された測定対象穀粉MFのEEM情報を統計解析処理して、測定対象穀粉MFの蛍光特性をパラメータ化して抽出するもので、上述した本発明のステップS16の蛍光特性抽出工程(図1参照)を実施するためのものある。
ここで、蛍光特性抽出部28は、EEM情報から測定対象穀粉MFの蛍光特性を二次元パラメータとして取得するのが好ましいが、特性が適確に把握できれば多次元パラメータとして取得しても良い。
【0076】
また、蛍光特性抽出部28は、蛍光特性抽出として、統計解析処理を、多変量解析又はデータマイニングにより行うことが好ましく、データ構造分析、判別分析、パターン分類、多元データ解析、回帰分析及び学習機械からなる群より選ばれる少なくとも1つの手法を用いて行うのが好ましい。
さらに、蛍光特性抽出部28は、データ構造分析を、主成分分析、因子分析、対応分析及び独立成分分析からなる群より選ばれる少なくとも1つの手法を用いて行うのが好ましい。
さらにまた、蛍光特性抽出部28は、蛍光特性抽出として、統計解析処理を主成分分析の手法を用いて行い、EEM情報から2つの主成分得点を2次元パラメータとして算出し、算出された2つの主成分得点を測定対象穀粉MFの蛍光特性として取得するのが好ましい。
【0077】
さらに、蛍光特性抽出部28は、判別分析を、線形判別分析又は非線形判別分析の手法を用いて行うのが好ましい。
さらにまた、蛍光特性抽出部28は、蛍光特性抽出として、多変量解析又は前記データマイニングを、判別分析の手法を用いて行い、EEM情報を、予めメモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36に格納されている判別式に当てはめることでパラメータを算出し、予めメモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36に格納されたパラメータと照合し、前記穀粉の種別を判別することが好ましい。
さらに、蛍光特性抽出部28は、パターン分類を、クラスター分析又は多次元尺度法で行うのが好ましい。
さらに、蛍光特性抽出部28は、回帰分析を、線形回帰、非線形回帰又は重回帰分析の手法を用いて行うのが好ましい。
さらにまた、蛍光特性抽出部28は、蛍光特性抽出として、多変量解析又は前記データマイニングを、重回帰分析の手法を用いて行い、パラメータとして、EEM情報を、予め前記データベースに格納されている検量線に当てはめることで算出し、予めメモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36に格納されたパラメータと照合することが好ましい。
【0078】
さらに、蛍光特性抽出部28は、学習機械を、ニューラルネットワーク、自己組織化マップ、集団学習及び遺伝的アルゴリズムからなる群より選択される少なくとも1つの手法を用いて行うことが好ましい。
なお、上述した穀粉判別ユニット14の情報取得部26及び蛍光特性抽出部28は、ステップS10の参照蛍光特性取得・格納工程(図1参照)を実施して、予め、照合の対象となる既知の穀粉の粒度及び品種の種別に応じたパラメータ化された蛍光特性を、参照蛍光特性として算出しておく場合にも用いることができる。
【0079】
蛍光特性照合部30は、粒度取得部20で得られた粒度を用いて、蛍光特性抽出部28によって抽出された測定対象穀粉MFのパラメータ化された蛍光特性を、穀粉の種別及びその粒度に応じて、予め得られている既知の穀粉のパラメータ化された蛍光特性(参照蛍光特性)と照合して、測定対象穀粉MFの品種の種別を判別するもので、上述した本発明のステップS18の蛍光特性照合工程(図1参照)を実施するためのものである。
なお、蛍光特性照合部30は、蛍光特性抽出部28で抽出された測定対象穀粉MFの蛍光特性を、穀物の各成分ごとの穀粉及びその粒度に応じて、予め得られている既知の穀物の各成分を主成分として含む既知の穀粉のパラメータ化された蛍光特性と照合して、測定対象穀粉MFを既知の穀物の特定の成分を主成分として含む既知の穀粉であると特定することもできる。
【0080】
なお、蛍光特性照合部30おける測定対象穀粉MFの蛍光特性と既知の穀粉の参照蛍光特性との照合は、上述したように、測定対象穀粉MFの粒度と蛍光特性(パラメータ)とを検索データとして、多数の既知の品種の穀粉の粒度及び参照蛍光特性が格納されているメモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36を検索して一致するもの、又は、一致度が所定閾値以上のものを求めて、穀粉の品種の種別を特定するようにしても良いし、穀粉の所定の品種の種別が、穀粉の粒度に応じて蛍光特性空間(3次元パラメータ以上)の空間領域や蛍光特性平面(2次元パラメータ)の平面領域として与えられている場合には、当該空間領域や平面領域内に入るものを求めて、穀粉の品種の種別を特定するようにしても良い。
【0081】
制御部34は、粒度取得部20、測定ユニット12の分光照明部22及び蛍光測定部24の各部、並びに、穀粉判別ユニット14の情報取得部26、蛍光特性抽出部28、蛍光特性照合部30及びメモリ(DB)32、さらには、外部メモリ(DB)36の各部を制御すると共に、本発明の穀粉の判別装置10全体の制御も行い、判別装置10に本発明の穀粉の判別方法を実施させるように制御するものである。
すなわち、制御部34は、粒度取得部20に対し、測定対象穀粉MFの粒度を取得する指示や命令、また、測定ユニット12の分光照明部22及び蛍光測定部24に対して、測定者が操作部16によって入力した励起波長範囲、蛍光波長範囲及び波長ピッチを用いて、測定する励起波長及び測定する蛍光波長を調整して測定対象穀粉MFの蛍光データを測定する指示や命令、さらに、情報取得部26に対して、蛍光測定部24から伝送された蛍光強度の測定値からEEM情報を取得する指示や命令を出すことができる。
【0082】
なお、制御部34は、情報取得部26に対し、さらに、蛍光測定部24から伝送された蛍光強度の測定値に前処理を施し、蛍光強度の測定値から外乱光の影響を削除したEEM情報を取得する指示や命令や、蛍光強度の測定結果から取得されたEEM情報及び前処理後のEEM情報に統計解析処理を行う指示や命令を出すこともできる。
また、制御部34は、蛍光特性抽出部28に対して情報取得部26で得られたEEM情報をパラメータ化するための統計解析処理を行う指示や命令を出し、また、蛍光特性照合部30に対し、パラメータ化された蛍光特性と、予め得られている既知の品種及びその粒度の穀粉の参照蛍光特性とを照合して、測定対象穀粉MFの品種の種別を判別する指示や命令を出すことができる。
【0083】
メモリ32は、粒度取得部20で取得された測定対象穀粉MFの粒度、穀粉判別ユニット14の情報取得部26で取得された測定対象穀粉MFのEEM情報及び蛍光特性抽出部28で抽出された測定対象穀粉MFのパラメータ化蛍光特性を記憶しておくためのものであり、また、照合の対照となる多数の穀粉の品種の種別、粒度、参照蛍光特性等を記憶しておくためのデータベース(DB)としての機能も持つものである。
すなわち、メモリ32は、粒度取得部20から伝送された粒度の値、及び測定ユニット12の蛍光測定部24で測定され、蛍光測定部24から伝送された蛍光強度の測定結果(測定値)を格納することができ、蛍光測定部24から伝送された蛍光強度の測定結果から情報取得部26において得られたEEM情報を格納することもできる。
【0084】
また、メモリ32は、蛍光特性抽出部28において、情報取得部26によって取得された穀粉のEEM情報を統計解析処理して抽出された測定対象穀粉MFのパラメータ化蛍光特性、及び蛍光特性照合部30で照合されて特定された測定対象穀粉MFの品種の種別、粒度及び蛍光特性を一体として格納することもできる。
さらに、メモリ32は、データベースとして、照合の対照となる予め得られている多数の既知の穀粉の品種の種別(既知の穀物の各成分ごとの穀粉の場合は各成分の種別)及びその粒度に応じた既知の穀粉(各成分を主成分として含む穀粉)の参照蛍光特性(パラメータ化された蛍光特性)の3者を一体として格納することもできる。
【0085】
また、穀粉の品種の種別及び粒度に応じた参照蛍光特性自体をメモリ32に保存するだけでなく、蛍光特性抽出工程において、未知試料の蛍光特性を抽出する際に用いることができる、既知の穀粉の粒度及び種別から求められたEEM情報をもとに作成された一般式 Y=f(x)(x:EEM情報、Y:出力情報)や、穀粉の品種の種別及び粒度に応じた参照蛍光特性の空間座標における空間領域や平面座標における平面領域(既知の穀粉の粒度及び種別から求められたEEM情報の平均値や標準偏差等の分布状況)をメモリ32に保存(格納)することもできる。
【0086】
なお、外部メモリ36は、データベースとして、メモリ32の代わりに、又はメモリ32に加え、照合の対照となる多数の既知の穀粉の品種の種別、粒度及び参照蛍光特性の3者を一体として格納するものである。なお、外部メモリ36に照合の対照となる多数の既知の穀粉の品種の種別、粒度及び参照蛍光特性を格納する場合、メモリ32にこれらのデータを格納しなくても良く、また、データベースとしての機能を持たせなくても良いので、メモリ32の容量を小さくすることができる。従って、上記理由から、外部メモリ36は、設けなくても良いが、備えている方が好ましい。
また、外部メモリ36に、粒度の測定値、蛍光強度の測定結果、種々のEEM情報、パラメータ化蛍光特性、特定された測定対象穀粉MFの品種の種別、粒度及び蛍光特性等を格納しても良い。
穀粉判別ユニット14は、基本的に以上のように構成される。
【0087】
また、操作部16は、キーボードやマウス等から構成され、測定者が判別装置10に対し、粒度取得部20による粒度取得や測定ユニット12による測定操作や穀粉判別ユニット14による判別操作等の指示や入力、また、本発明の穀粉の判別方法を実施させるための様々な指示や命令のための入力や、さらに、データベース作成のための多数の既知の穀粉の品種の種別、粒度及び参照蛍光特性等の入力等を行うためのものである。
また、ディスプレイ18は、粒度取得部20による取得粒度の値、及び、測定ユニット12による測定結果、例えば、蛍光測定部24による蛍光強度の測定結果、及び、穀粉判別ユニット14による種々の結果、例えば、情報取得部26による種々のEEM情報、蛍光特性抽出部28によるパラメータ化蛍光特性、蛍光特性照合部30による特定された測定対象穀粉MFの品種の種別、粒度及び蛍光特性等、さらに、操作部16による操作の指示や入力等の一部又は全部を表示するためのものである。なお、ディスプレイ18には、操作部16のキーボードやマウス等からの入力結果のみならず、操作部16による入力を支援するGUI等を表示するように構成しても良い。
【0088】
以下に、穀粉判別ユニット14による穀粉の判別操作の一例について説明する。
本発明においては、測定ユニット12において、測定対象穀粉MFの蛍光強度の測定値が得られると、測定ユニット12の蛍光測定部24から穀粉判別ユニット14に伝送された蛍光強度の測定結果は、メモリ32に格納される。
ここで、測定者によって操作部16から制御部34に、穀粉判別ユニット14による穀粉の判別操作の指示又は命令が出されると、制御部34は、情報取得部26に、メモリ32に格納された蛍光強度の測定結果を読み出して、m次元のEEM情報を取得するよう命令する。上述したように、情報取得部26は、読み出された蛍光強度の測定結果からm次元のEEM情報を取得し、取得したEEM情報をメモリ32に格納させる。
【0089】
次に、制御部34が、蛍光特性抽出部28にm次元のEEM情報の蛍光特性を抽出するように指示すると、蛍光特性抽出部28は、メモリ32に格納されているm次元のEEM情報を読み出し、デフォルトで設定されていた、又は測定者が指定した主成分分析法等の統計解析処理により、蛍光特性をパラメータ、例えば2次元パラメータとして取得し、取得したパラメータ化蛍光特性をメモリ32に格納する。
また、蛍光特性抽出部28は、情報取得部26により得られたEEM情報を統計解析処理して、パラメータ化、好ましくは2次元パラメータ化した蛍光特性を抽出すると、ディスプレイ18に送信し、ディスプレイ18上に表示させることができる。
【0090】
次に、制御部34が、蛍光特性照合部30に測定対象穀粉MFの品種の種別を判別する指示を出すと、蛍光特性照合部30は、メモリ32に格納されているパラメータ化蛍光特性と、メモリ32又は外部メモリ36にデータベースとして格納されている既知の穀粉の同じ又は略同じ粒度の参照蛍光特性(パラメータ)を次々と読み出し、それらを各統計処理方法を用いて、一致した既知の穀粉の品種の種別を測定対象穀粉MFの種別として特定して、あるいは、一致する既知の穀粉の参照蛍光特性がなかった場合には、測定対象穀粉MFの種別は判別不可又は判別不能であるとして、判別操作を終了する。
なお、各統計解析処理方法による照合方法については、実施例にて詳述する。
【実施例】
【0091】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
〔実施例1〕
測定対象穀粉MFとして、穀粉製品を用いて、測定対象穀粉MFの判別を行った。
未知試料として、穀粉製品のパスタ用粉(デュラム小麦粉 商品名 DF 日清製粉社製)及びパン用粉(強力小麦粉 商品名 カメリヤ 日清製粉社製)を用いて、穀粉製品の判別を行った。
なお、用いたパスタ用粉及びパン用粉の平均粒径は、それぞれ68μm、65μmであった。
まず、パスタ用粉の試料とパン用粉の試料とをそれぞれ石英セルに封入した。各試料を封入した石英セルを、それぞれ図1に示す判別装置10の測定ユニット12の支持部21の所定の測定位置に位置決めして載置し、各試料に対し、測定ユニット12の分光照明部22及び蛍光測定部24を用いて、下記の測定条件で、上述した本発明の穀粉の判別方法のステップ14のEEM情報取得工程の蛍光強度測定を実施し、2反復で蛍光強度を測定した。
測定条件
励起波長範囲:200〜900nm/10nm間隔
蛍光波長範囲:200〜900nm/10nm間隔
スキャンスピード:1000nm/min
【0093】
ここでは、測定ユニット12の分光照明部22、測定対象穀粉支持部21及び蛍光測定部24が一体となった分光測定装置を用いた。
また、図3に示す判別装置10の穀粉判別ユニット14には、市販のパーソナルコンピュータに、本発明者らが開発した穀粉判別ソフトウェアを組み込んだものを用いた。
【0094】
こうして得られた各試料の蛍光強度の測定値(測定結果)から各資料のEEM情報を得た。その結果を図6(a)及び(b)に示す。なお、図6(a)及び(b)は、それぞれパスタ用粉の試料及びパン用粉の試料の結果を示す。
このEEM情報から、統計解析処理として主成分分析を行い、パラメータ化した蛍光特性として2次元パラメータを得た。その結果を図7に示す。
【0095】
なお、予め、既知の穀粉製品の参照用穀粉(既知試料)として、複数の既知のパスタ用粉及び複数の既知のパン用粉を用いて、同様の装置構成、同様の測定条件で、各参照穀粉の蛍光強度の測定結果を得、各参照穀粉のEEM情報を得た。なお、ここで、参照用に測定したパスタ用粉及びパン用粉の各参照穀粉は、測定対象穀粉と平均粒径が同じであるものを使用した。得られた各参照穀粉のEEM情報は、統計解析処理として同じ主成分分析を行い、各穀粉製品別の参照蛍光特性(2次元パラメータ)を求めておいた。その結果を図8に示す。
図7及び図8を照合することにより、各試料の蛍光特性(2次元パラメータで表される2次元座標(主成分軸1(寄与率96.6%)と主成分軸2(寄与率3.3%))上の位置)が、予め得られている各穀粉製品(既知試料)の参照蛍光特性の領域内の95%確率楕円(既知試料の参照蛍光特性の95%が分布する範囲)にプロットされていることから、パスタ用粉とパン用粉が判別でき、かつ、特定できることが確認された。
なお、主成分分析による未知試料と既知試料の照合方法については、実施例4で詳述する。
【0096】
〔実施例2〕
測定対象穀粉MFとして、粒度の異なる穀粉を用いて、測定対象穀粉MFの判別を行った。
未知試料として、乾麺(商品名 ナンバーワン 日清フーズ社製)を、まず、粗粉砕して、粒度の粗い粉末(平均粒径200μm)を調整した後、さらに粉砕し、粒度の細かい粉末(平均粒径80μm)を調整したものを用いた。
まず、粒度の粗い粉末の試料と粒度の細かい粉末の試料をそれぞれ石英セルに封入した。
実施例1と同様の判別装置10を用い、各試料を封入した石英セルを、それぞれ測定ユニット12の支持部21の所定の測定位置に位置決めして載置し、各試料に対し、実施例1と同様の測定条件で蛍光測定を実施し、これらの粉末試料の蛍光強度を測定し、その結果から、実施例1と同様にして、EEM情報を得た。その結果を図9(a)及び(b)に示す。なお、図9(a)及び(b)は、それぞれ粗い粉末の試料及び細かい粉末の試料の結果を示す。
【0097】
さらに、蛍光強度の測定結果から得られたEEM情報から、実施例1と同様に主成分分析を実施し、パラメータ化した蛍光特性として2次元パラメータを得た。その結果を図10に示す。なお、予め、既知試料として、未知試料と同じ粒度(平均粒径80μm又は平均粒径200μm)の乾麺粉末試料を別途用意し、実施例1と同様にして、粒度の異なる各乾麺粉末試料につき、複数の乾麺粉末試料の参照蛍光特性(2次元パラメータ)を求めておいた。その結果を図11に示す。
図10及び図11を照合することにより、各試料の蛍光特性(2次元パラメータで表される2次元座標(主成分軸1(寄与率86.7%)と主成分軸3(寄与率2.5%))上の位置)が、予め得られている各粒度の粉末(既知試料)の参照蛍光特性の領域内の95%確率楕円(既知試料の参照蛍光特性の95%が分布する範囲)にプロットされていることから、粗い粉末と細かい粉末が判別でき、かつ、特定できることが確認された。
なお、主成分分析による未知試料と既知試料の照合方法については、実施例4で詳述する。
【0098】
〔実施例3〕
異種穀粉試料(純度の異なる穀粉、すなわち純粋な穀粉と異種穀粉の混合物(アレルゲンを含む穀粉ともいえる))を用いて、穀粉の判別を行った。
未知試料として、国内産蕎麦粉(商品名 さらしな粉 石森製粉社製)100%の試料と、同蕎麦粉に小麦粉(商品名 カメリヤ 日清製粉社製)を30%配合した混合試料との2つの試料を用意した。なお、ここで、用いられた蕎麦粉及び小麦粉の平均粒径は、それぞれ90μm、63μmであった。
まず、国内産蕎麦粉100%の純粋穀粉試料と蕎麦粉に小麦粉を30%配合した混合穀粉試料とをそれぞれ石英セルに封入した。
実施例1と同様の判別装置10を用い、各試料を封入した石英セルを、それぞれ測定ユニット12の支持部21の所定の測定位置に位置決めして載置し、各試料に対し、実施例1と同様の測定条件で蛍光測定を実施し、これらの穀粉試料の蛍光強度を測定し、その結果から、実施例1と同様にして、EEM情報を得た。その結果を図12(a)及び(b)に示す。なお、図12(a)及び(b)は、それぞれ蕎麦粉のみの純粋穀粉試料及び混合穀粉試料の結果を示す。
【0099】
さらに、蛍光強度の測定結果から得られたEEM情報から、実施例1と同様に主成分分析を実施し、パラメータ化した蛍光特性として2次元パラメータを得た。その結果を図13に示す。
なお、予め、既知試料として、同様に蕎麦粉のみの純粋穀粉試料及び同様な混合穀粉試料を別途用意し、実施例1と同様にして、様々な粒度の各穀粉試料につき、複数の穀粉試料の参照蛍光特性(2次元パラメータ)を求めておいた。そのうち、蕎麦粉及び小麦粉の各参照穀粉の平均粒度が、それぞれ90μm、63μmである場合の参照蛍光特性(2次元パラメータ)の結果を図14に示す。
図13及び図14を照合することにより、各穀粉試料の蛍光特性(2次元パラメータで表される2次元座標(主成分軸1(寄与率71.3%)と主成分軸2(寄与率10.0%))上の位置)が、予め得られている各穀粉試料(既知試料)の参照蛍光特性の領域内の95%確率楕円(既知試料の参照蛍光特性の95%が分布する範囲)にプロットされていることから、100%の蕎麦粉の純粋穀粉試料と小麦粉を30%配合する蕎麦粉の混合穀粉試料を判別でき、かつ、特定できることが確認された。
なお、主成分分析による未知試料と既知試料の照合方法については、実施例4で詳述する。
【0100】
〔実施例4〕
実施例1と同様の方法でEEM情報を取得し、統計解析処理法として主成分分析を用いて、異種穀粉の判別を行った。
未知試料として、蕎麦粉(商品名 さらしな粉 石森製粉社製)、ライ麦粉(商品名 メールダンケル 日清製粉社製)、強力粉(商品名 カメリヤ 日清製粉社製)及び米粉(商品名 リファリーヌ 群馬製粉社製)を用意した。なお、各穀粉の平均粒径は、それぞれ90μm、90μm、63μm、48μmである。
まず、試料をそれぞれ石英セルに封入した。
実施例1と同様の判別装置10を用い、各試料を封入した石英セルを、それぞれ測定ユニット12の支持部21の所定の測定位置に位置決めして載置し、各試料に対し、実施例1と同様の測定条件で蛍光測定を実施し、これらの穀粉試料の蛍光強度を測定し、その結果から、実施例1と同様にして、EEM情報を得た。
なお、同様の方法で、予め既知試料のEEM情報を取得し、そのEEM情報をもとに、主成分座標系に変換する数式(固有ベクトル):x がEEM情報、Yが出力結果となる一般式 Y=f(x)を作成し、さらに、主成分座標系における各試料群の分布状態をメモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36に格納しておく。なお、既知試料は、前述した試料をそれぞれ2サンプルずつ用いた。参照用に測定した蕎麦粉、ライ麦粉、強力粉及び米粉の平均粒径が、それぞれ90μm、90μm、63μm、48μmのものである場合の主成分座標系における各既知試料群の分布状態を図15に示す。
【0101】
未知試料のEEM情報を上記一般式に代入して得られた出力結果を、図15に示される既知試料をもとに作成された主成分座標系に重ねてプロットした場合、その主成分座標系における位置が、以下の(1)〜(3)のような条件を満たすかどうかでその穀粉の種別が決定される。
(1)未知試料の各主成分得点が、平均±2×標準偏差におさまる。
(2)未知試料のプロットが既知試料のプロット図の95%確立楕円(既知試料の95%が分布する範囲)の内部に存在する。
(3)未知資料の各主成分得点が、既知試料の各主成分得点の重心に最も近い。
なお、上記(1)及び(2)に記載の範囲は、任意に設定することができる。(例えば、平均±2.5×標準偏差、90%確率楕円)
本実施例においては、図15に示されるように、各未知試料が各既知試料に属することが確認された。
【0102】
〔実施例5〕
統計解析処理法としてクラスター分析を用いて、未知試料(穀粉)の属性を判定した。クラスター分析は、多次元空間における距離の近いサンプル同士を次々と結合させ、1つのクラスターを形成させる分析方法である。
未知試料として、蕎麦粉(商品名 さらしな粉 石森製粉社製)、ライ麦粉(商品名 メールダンケル 日清製粉社製)及び米粉(商品名 リファリーヌ 群馬製粉社製)を用意した。
なお、各穀粉の平均粒径は、それぞれ90μm、90μm、48μmである。
また、実施例1と同様の方法で、予め、各既知試料(蕎麦粉、ライ麦粉及び米粉)のEEM情報を取得し、そのEEM情報をもとに、各クラスターに分類された既知試料の分布状況(平均値、標準偏差等)をメモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36に格納しておく。なお、既知試料は、未知試料と同様の試料及び粒度のものを使用した。参照穀粉である蕎麦粉、ライ麦粉及び米粉の平均粒径が、それぞれ90μm、90μm、48μmである場合の各クラスターの分類状況を図16(a)に示す。
上記データベースに格納された既知試料のクラスターをもとに、3種の未知試料がどのクラスターに結合されるかにより、各未知試料の属性を判別する。
本実施例においては、図16(b)が示すように、3つの検証用データを追加したところ、それぞれの試料が各クラスターに結合することが確認された。
【0103】
〔実施例6〕
実施例1と同様の方法でEEM情報を取得し、統計解析処理法として判別分析を用いて、異種穀粉の判別を行った。判別分析は、既知試料を用いて、各既知試料の群を判別する判別式を作成し、その判別式に未知試料のEEM情報をあてはめて試料群を判別する方法である。
未知試料として、蕎麦粉(商品名 さらしな粉 石森製粉社製)、ライ麦粉(商品名 メールダンケル 日清製粉社製)、強力粉(商品名 カメリヤ 日清製粉社製)及び米粉(商品名 リファリーヌ 群馬製粉社製)を用意した。なお、各穀粉の平均粒径は、それぞれ90μm、90μm、63μm、48μmである。
まず、試料をそれぞれ石英セルに封入した。
実施例1と同様の判別装置10を用い、各試料を封入した石英セルを、それぞれ測定ユニット12の支持部21の所定の測定位置に位置決めして載置し、各試料に対し、実施例1と同様の測定条件で蛍光測定を実施し、これらの穀粉試料の蛍光強度を測定し、その結果から、実施例1と同様にして、EEM情報を得た。
なお、同様の方法で、予め、各既知試料(蕎麦粉、ライ麦粉、強力粉及び米粉)のEEM情報を2サンプル分ずつ取得し、そのEEM情報をもとに、x がEEM情報、Yが出力結果となる一般式 (判別式)Y=f(x)を作成し、さらに、判別分析における各試料群の分布状態をメモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36に格納しておく。なお、既知試料は、粒度が未知試料と同様のものを使用した。既知試料の蕎麦粉、ライ麦粉、強力粉及び米粉の平均粒径が、それぞれ90μm、90μm、63μm、48μmのものである場合の判別分析における各群の分布状態を図17に示す。
【0104】
未知試料である各穀粉のEEM情報を上記一般式(判別式)に代入して得られた出力結果は、その未知試料が各既知試料群に所属する確率として示される。従って、図17に示される既知試料をもとに作成された判別分析の各試料群の分布状態に、未知試料による出力結果を重ねてプロットした場合、最もその確立(出力結果)が大きい試料群にその未知試料が属することから、穀粉の種別を判別することができる。図18に各未知試料の判別結果を示した。本実施例においては、図18に示されるように、100%の精度で各未知試料を判別することが確認できた。
【0105】
〔実施例7〕
実施例1と同様の方法でEEM情報を取得し、統計解析処理法として回帰分析(PLS回帰分析)を用いて、異種穀粉の判別を行った。回帰分析は、既知試料のEEM情報から測定対象物の量(測定対象物の配合割合)を予測する検量線を作成し、その検量線に未知試料のEEM情報を当てはめてその測定対象物の含量を判別する方法である。
未知試料として、蕎麦粉(商品名 さらしな粉 石森製粉社製)と強力粉(商品名 カメリヤ 日清製粉社製)を配合した混合試料を用意した。なお、各穀粉の平均粒径は、それぞれ90μm、63μmである。
まず、試料を石英セルに封入した。
実施例1と同様の判別装置10を用い、各試料を封入した石英セルを、それぞれ測定ユニット12の支持部21の所定の測定位置に位置決めして載置し、各試料に対し、実施例1と同様の測定条件で蛍光測定を実施し、これらの穀粉試料の蛍光強度を測定し、その結果から、実施例1と同様にして、EEM情報を得た。
【0106】
なお、同様の方法で、予め、強力粉(既知試料)の粒度及びEEM情報を取得し、そのEEM情報をもとに、測定対象物である強力粉の配合割合を予測する検量線を作成し、メモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36に格納しておく。既知試料により作成された検量線を図19(a)に示す。なお、既知試料は、未知試料の強力粉と同様のものを用いた。また、粒度も未知試料と同様のものを使用した。
未知試料である強力粉のEEM情報を検量線に代入し、その出力結果、すなわち、未知試料に含まれる成分の含量(予測値)を得たところ、図19(b)に示すような予測値が得られた。上記既知試料における検量線と未知試料による予測値を照合した結果、未知試料中の強力粉の含量を決定係数0.99以上、誤差3.59%で予測できることが確認された。
【0107】
〔実施例8〕
実施例1と同様の方法でEEM情報を取得し、統計解析処理法としてニューラルネットワークを用いて、異種穀粉の判別を行った。
ニューラルネットワークは、図20が示すように、入力層、中間層及び出力層よりなるネットワーク構造を構築し、既知試料を用いて、強力粉のEEM情報を入力すれば、「強力粉」という応答が得られるような重み係数wを算出する方法である。
本実施例においては、未知試料として、蕎麦粉(商品名 さらしな粉 石森製粉社製)、ライ麦粉(商品名 メールダンケル 日清製粉社製)、強力粉(商品名 カメリヤ 日清製粉社製)及び米粉(商品名 リファリーヌ 群馬製粉社製)を用意した。
なお、蕎麦粉、ライ麦粉、強力粉及び米粉の各平均粒径は、それぞれ90μm、90μm、63μm、48μmである。
まず、試料をそれぞれ石英セルに封入した。
実施例1と同様の判別装置10を用い、各試料を封入した石英セルを、それぞれ測定ユニット12の支持部21の所定の測定位置に位置決めして載置し、各試料に対し、実施例1と同様の測定条件で蛍光測定を実施し、これらの穀粉試料の蛍光強度を測定し、その結果から、実施例1と同様にして、EEM情報を得た。
【0108】
なお、同様の方法で、予め、各既知試料(蕎麦粉、ライ麦粉、強力粉及び米粉)の粒度及びEEM情報を取得し、そのEEM情報をもとに、xがEEM情報、Yが出力結果となる一般式 Y=f(x)を作成し、上記ネットワーク構造、重み係数及び一般式をメモリ(DB)32及び/又は外部メモリ(DB)36に格納しておく。なお、既知試料は、未知試料と同様のものを用いた。また、粒度も未知試料と同様のものを使用した。
上記ネットワーク構造の出力層には、蕎麦粉、ライ麦粉、強力粉及び米粉の各群に対応する4つのノードがあり、上記一般式に未知試料のEEM情報を入力すると、各既知試料群に所属する確率が出力結果として得られ、最もその確率(出力結果)が大きい試料群にその未知試料が属することから、穀粉の種別を予測することができる。図21に各未知試料の予測結果を示した。
本実施例においては、図21に示すように、100%の精度で未知試料を各穀粉に正しく判別できることが確認された。
【0109】
〔実施例9〕
実施例1と同様の方法でEEM情報を取得し、統計処理方法として主成分分析を用いて、粒度が異なる穀粉の判別を行った。
未知試料の穀粉として、デュラム・セモリナを、粉砕機で粉砕し、下記4つのゾーンに該当する粒度の画分に分けて調整したものを用いた。各粒度は、粒度取得部20で測定し、確認した。粒度取得部20としては、粒度測定装置(商品名 マイクロトラック 日機装社製)を用いた。
ゾーン(1):粒度の粗い画分 300μm以上(平均粒径500μm)
ゾーン(2):粒度のやや粗い画分 150μm以上300μm未満(平均粒径200μm)
ゾーン(3):粒度の細かい画分 10μm以上150μm未満(平均粒径60μm)
ゾーン(4):粒度の非常に細かい画分 10μm未満(平均粒径1μm)
まず、各粒度の画分の穀粉試料をそれぞれ石英セルに封入した。
実施例1と同様の判別装置10を用い、各試料を封入した石英セルを、それぞれ測定ユニット12の支持部21の所定の測定位置に位置決めして載置し、各試料に対し、実施例1と同様の測定条件で蛍光測定を実施し、これらの穀粉試料の蛍光強度を測定し、その結果から、実施例1と同様にして、EEM情報を得た。
【0110】
さらに、蛍光強度の測定結果から得られたEEM情報から、実施例1と同様に主成分分析を実施し、パラメータ化した蛍光特性として2次元パラメータを得た。その結果を図22に示す。なお、予め、既知試料として、それぞれ略同じ粒度(平均粒径)のデュラム・セモリナの穀粉試料を別途用意し、実施例1と同様にして、各粒度における画分の穀粉試料につき、複数の参照蛍光特性(2次元パラメータ)を求めておいた。
図22に示される各試料の蛍光特性(2次元パラメータで表される2次元座標(主成分軸1:寄与率82.3%、主成分軸2:寄与率4.7%)上の位置)が、予め与えられている各粒度の穀粉の参照蛍光特性の領域内にほぼプロットされたことから、ゾーン(1)から(4)までの穀粉を判別でき、かつ、特定できることが確認された。
なお、主成分分析による未知試料と既知試料の照合方法については、実施例4で詳述したとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の穀粉の判別方法及び装置は、コスト、手間及び時間をかけずに、穀粉の種別、例えば、穀粉の最終製品の品種や、穀粉の製造中に生成される中間生成物(粉)の品種や、特定成分を含む品種等の種別を容易かつ確実に、また、リアルタイムで判別することができるので、小麦粉等の穀粉製品の品質管理や、穀粉製品の製造現場での製造工程(製粉工程)の管理や制御、特に、最終工程のみならず、中間生成穀粉の製造工程(製粉中間工程)の管理や制御、中間生成穀粉の品質管理等に用いることができる。
また、本発明の穀粉の判別方法及び装置は、穀物の各成分の粉末(穀粉)の判別や特定、あるいは、アレルゲンを含む穀粉及び穀粉中のアレルゲンの判別や特定に用いることができる。
特に、本発明は、予め、既知の穀粉の品種の種別、粒度及び参照蛍光特性を用意しておくので、小麦粉製品等の穀粉製品の判別、穀粉製品の製造工程の管理のための中間生成穀粉の判別、穀物の各成分からなる穀粉又は各成分を主成分とする穀粉の判別、既知のアレルゲンや既知の他成分等を含む穀粉の判別、及びこの判別結果による穀粉中に含まれるアレルゲンや他成分等の特定等に好適に用いることができる。
【0112】
したがって、本発明は、穀粉、穀粉混合物中の穀粉やその成分や異種穀粉、例えば、ライ麦粉中の小麦粉、デュラム粉中の小麦粉の簡易判別技術や簡易検出技術、穀粉、穀粉混合物中の豆類粉、米粉、コーン粉の簡易判別技術や簡易検出技術、蕎麦粉中の小麦粉、米粉中の小麦粉の簡易判別技術や簡易検出技術、穀粉、穀粉原料中のアレルゲン素材、例えば、卵、小麦、牛乳、乳製品、蕎麦、落花生等の簡易判別技術や簡易検出技術、として好適に用いることができる。
また、本発明の穀粉の品質管理方法及び穀粉製品は、所定の品質を持つ穀物製品であることが管理でき、その結果、所定の品質を持つ穀粉製品を提供することができる。また、本発明の穀粉の品質管理方法及び製品は、アレルゲンを含まない所定の品質を持つ穀物製品であることが管理でき、その結果、アレルゲンを含まない所定の品質である穀粉製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の穀粉の判別方法のフローチャートの一例である。
【図2】図1に示す穀粉の判別方法のEEM情報取得工程の蛍光強度測定工程のフローチャートの一例である。
【図3】本発明の穀粉の判別装置の一実施形態のブロック図である。
【図4】図3に示す穀粉の判別装置の測定ユニットの分光照明部及び蛍光測定部の一実施形態のブロック図である。
【図5】図4に示す測定ユニットにおける蛍光強度測定フローチャートの一例である。
【図6】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の実施例1のパスタ用粉及びパン用粉のEEMを表す図である。
【図7】本発明の実施例1の主成分分析の結果を示す蛍光特性のグラフである。
【図8】本発明の実施例1で用いられる既知の穀粉製品別の蛍光特性のグラフである。
【図9】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の実施例2の乾麺の粗い粉末及び細かい粉末のEEMを表す図である。
【図10】本発明の実施例2の主成分分析の結果を示す蛍光特性のグラフである。
【図11】本発明の実施例2で用いられる既知の粒度の乾麺の穀粉別の蛍光特性のグラフである。
【図12】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の実施例3の100%蕎麦粉と30%小麦粉配合蕎麦粉のEEMを表す図である。
【図13】本発明の実施例3の主成分分析の結果を示す蛍光特性のグラフである。
【図14】本発明の実施例3で用いられる既知の異種穀粉別の蛍光特性のグラフである。
【図15】本発明の実施例4の主成分分析の結果を示す蛍光特性のグラフである。
【図16】本発明の実施例5のクラスター分析の結果を示すグラフである。
【図17】本発明の実施例6の既知試料による判別分析の結果を示すグラフである。
【図18】本発明の実施例6の判別分析の結果を示す表である。
【図19】本発明の実施例7の回帰分析の結果を示すグラフである。
【図20】本発明のニューラルネットワークを説明する模式図である。
【図21】本発明の実施例8のニューラルネットワークによる結果を示す表である。
【図22】本発明の実施例9の主成分分析の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0114】
10 穀粉の判別装置(判別装置)
12 測定ユニット
14 穀粉判別ユニット
16 操作部
18 ディスプレイ
20 粒度取得部
21 測定対象穀粉支持部(支持部)
22 分光照明部
24 蛍光測定部
26 情報取得部
28 蛍光特性抽出部
30 蛍光特性照合部
32 メモリ(DB)
34 制御部
36 外部メモリ(DB)
38 光源
40,48 分光デバイス
42 励起波長調節部
44 光学デバイス
46 励起光照射部
50 蛍光測定デバイス
MF 測定対象物(測定対象穀粉)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を粉砕して得られた穀粉の持つ所定の特性に応じて、測定対象となる穀粉の種別を判別する穀粉の判別方法であって、
前記穀粉の粒度を取得する粒度取得工程と、
所定の励起波長範囲及び所定の蛍光波長範囲で、前記穀粉に照射する励起波長及び測定する蛍光波長を段階的に変化させながら、励起光が照射された前記穀粉から発生する蛍光の蛍光強度を測定して、前記穀粉の励起・蛍光マトリックス情報を取得する励起・蛍光マトリックス情報取得工程と、
この情報取得工程において取得された前記穀粉の励起・蛍光マトリックス情報を統計解析処理して、前記穀粉の蛍光特性をパラメータ化して抽出する蛍光特性抽出工程と、
既知の種別の穀粉について、予め、前記粒度取得工程、励起・蛍光マトリックス情報取得工程及び蛍光特性抽出工程とを行って、前記粒度及び前記パラメータ化された蛍光特性とを取得し、前記穀粉の前記既知の種別及び得られた前記粒度と、前記パラメータ化された蛍光特性とを関連付けて予めデータベースに格納しておく参照蛍光特性取得・格納工程と、
前記粒度取得工程で取得された前記測定対象となる穀粉の前記粒度及び前記蛍光特性抽出工程で抽出された前記測定対象となる穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性を用いて、前記データベース内を検索し、前記測定対象となる穀粉の前記粒度に応じて、前記測定対象となる穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性と、予め前記データベースに格納されている前記穀粉の前記既知の種別についての前記穀粉のパラメータ化された蛍光特性とを照合して、前記測定対象となる前記穀粉の種別を判別する蛍光特性照合工程とを含むことを特徴とする穀粉の判別方法。
【請求項2】
前記蛍光特性抽出工程は、前記励起・蛍光マトリックス情報から前記穀粉の蛍光特性を二次元パラメータとして取得することを特徴とする請求項1に記載の穀粉の判別方法。
【請求項3】
前記蛍光特性抽出工程は、前記統計解析処理を、多変量解析又はデータマイニングにより行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の穀粉の判別方法。
【請求項4】
前記多変量解析又は前記データマイニングを、データ構造分析、判別分析、パターン分類、多元データ解析、回帰分析及び学習機械からなる群より選ばれる少なくとも1つの手法を用いて行うことを特徴とする請求項3に記載の穀粉の判別方法。
【請求項5】
前記データ構造分析を、主成分分析、因子分析、対応分析及び独立成分分析からなる群より選ばれる少なくとも1つの手法を用いて行うことを特徴とする請求項4に記載の穀粉の判別方法。
【請求項6】
前記蛍光特性抽出工程は、前記多変量解析又は前記データマイニングを、前記主成分分析の手法を用いて行い、前記励起・蛍光マトリックス情報から、2つ以下の主成分得点をパラメータとして抽出し、それらを前記穀粉の蛍光特性として取得することを特徴とする請求項5に記載の穀粉の判別方法。
【請求項7】
前記判別分析を、線形判別分析又は非線形判別分析の手法を用いて行うことを特徴とする請求項4に記載の穀粉の判別方法。
【請求項8】
前記蛍光特性抽出工程は、前記多変量解析又は前記データマイニングを、前記判別分析の手法を用いて行い、前記励起・蛍光マトリックス情報を、予め前記データベースに格納されている判別式に当てはめることでパラメータを算出し、それらを予め前記データベースに格納されたパラメータと照合し、前記穀粉の種別を判別することを特徴とする請求項7に記載の穀粉の判別方法。
【請求項9】
前記パターン分類を、クラスター分析又は多次元尺度法で行うことを特徴とする請求項4に記載の穀粉の判別方法。
【請求項10】
前記回帰分析を、線形回帰、非線形回帰又は重回帰分析の手法を用いて行うことを特徴とする請求項4に記載の穀粉の判別方法。
【請求項11】
前記蛍光特性抽出工程は、前記多変量解析又は前記データマイニングを、前記重回帰分析の手法を用いて行い、前記励起・蛍光マトリックス情報を、それらを予め前記データベースに格納されている検量線に当てはめることでパラメータを算出し、予め前記データベースに格納されたパラメータと照合することを特徴とする請求項10に記載の穀粉の判別方法。
【請求項12】
前記学習機械は、ニューラルネットワーク、自己組織化マップ、集団学習及び遺伝的アルゴリズムからなる群より選択される少なくとも1つの手法を用いて行うことを特徴とする請求項4に記載の穀粉の判別方法。
【請求項13】
前記穀粉は、前記穀物の特定の成分を主成分として含む穀粉であり、
前記蛍光特性照合工程は、前記蛍光特性抽出工程において抽出された前記穀粉の蛍光特性と、前記穀粉の各成分毎の穀粉及びその粒度に応じて、予め得られ、前記データベースに格納されている前記穀物の各成分を主成分として含む穀粉のパラメータ化された蛍光特性とを照合して、前記測定対象となる穀粉を、前記穀物の特定の成分を主成分として含む穀粉であることを特定することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の穀粉の判別方法。
【請求項14】
前記穀粉が、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、コーン粉、蕎麦粉及び豆粉類及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の穀粉の判別方法。
【請求項15】
前記小麦粉が、デュラム小麦粉、強力粉、中力粉及び薄力粉からなる群より選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項14に記載の穀粉の判別方法。
【請求項16】
前記測定対象となる穀粉は、その中にアレルゲンを含む穀粉であり、
前記測定対象となる前記穀粉の種別及びこの穀粉中に含まれる前記アレルゲンが特定されることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の穀粉の判別方法。
【請求項17】
前記測定対象となる前記穀粉は、多種類の穀粉の混合物であり、
前記測定対象となる前記穀粉の種別及びこの穀粉中に含まれる特定の穀粉が特定される請求項1〜16のいずれかに記載の穀粉の判別方法。
【請求項18】
前記粒度取得工程は、前記測定対象となる前記穀粉の予め測定された既知の粒度を情報として取得するものである請求項1〜17のいずれかに記載の穀粉の判別方法。
【請求項19】
穀物を粉砕して得られた穀粉の持つ所定の特性に応じて、測定対象となる穀粉の種別を判別する穀粉の判別装置であって、
前記穀粉の粒度を取得する粒度取得手段と、
所定の励起波長範囲で、励起波長を段階的に変化させながら、前記穀粉に前記励起光を照射する分光照明手段と、
この分光照明手段によって前記穀粉に照射される前記励起光の前記励起波長の段階的な変化に応じて、所定の蛍光波長範囲で、測定する蛍光波長を段階的に変化させながら、前記励起光が照射された前記穀粉から発生する蛍光の蛍光強度を測定して、前記穀粉の励起・蛍光マトリックス情報を取得する情報取得手段と、
この情報取得手段によって取得された前記穀粉の励起・蛍光マトリックス情報を統計解析処理して、前記穀粉の蛍光特性をパラメータ化して抽出する蛍光特性抽出手段と、
予め、前記分光照明手段、前記情報取得手段及び前記蛍光特性抽出手段を用いて取得された、その種別及び粒度が既知の穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性と、前記穀粉の既知の種別及び粒度とを関連付けて予め格納しておくためのデータベースと、
前記測定対象となる穀粉の既知の粒度及び前記蛍光特性抽出手段によって抽出された前記測定対象となる穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性を用いて、前記データベース内を検索し、前記測定対象となる穀粉の前記パラメータ化された蛍光特性と、予め前記データベースに格納されている、前記測定対象となる穀粉の既知の粒度に対応する粒度を持つ前記穀粉の前記既知の種別についての前記穀粉のパラメータ化された蛍光特性とを照合して、前記測定対象となる前記穀粉の種別を判別する蛍光特性照合手段とを含むことを特徴とする穀粉の判別装置。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載の穀粉の判別方法又は請求項19に記載の判別装置を用いて、所定の品質を持つ穀粉製品であることを判別することを特徴とする穀粉製品の品質管理方法。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれかに記載の穀粉の判別方法又は請求項19に記載の判別装置を用いて管理された、所定の品質を持つことを特徴とする穀粉製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−185719(P2010−185719A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28847(P2009−28847)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】