説明

積層ジョイントコネクタ

【課題】例えば車両に配索される信号線の終端部においてこの信号線にノイズが重畳しない積層ジョイントコネクタを提供する。
【解決手段】複数のハーネス側端子を収容可能とするハウジングを互いに着脱可能に積層させたハウジングアッシー20と、一側がハウジングアッシーを挿入する開口部をなし、他側がハーネス側端子と嵌合する雄端子の挿入開口部をなすケース30と、ケースの他側開口部に取り付けられ表側面に雄端子が多数立設した回路基板100を備え、かつ回路基板の裏側面に実装され、回路基板の雄端子に一端が電気的に接続した歪抑制回路130と、回路基板に実装され、歪抑制回路の他端に一端が電気的に接続した終端接続回路120と、回路基板に形成され、終端接続回路の他端に電気的に接続したグランドパターン160を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の信号線の終端接続等に好適に用いられる積層ジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電源配線の終端接続等に用いられる積層型ジョイントコネクタは公知である。(例えば特許文献1参照)この積層型ジョイントコネクタは、複数の相手側端子を収容可能とするハウジングを互いに着脱可能に積層させたハウジングアッシーと、一側がハウジングアッシーを挿入する開口部をなし、他側が相手側端子と嵌合する端子の挿入開口部をなすケースと、ケースの他側開口部に取り付けられ表側面に端子が多数立設した回路基板を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−363080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の積層ジョイントコネクタは、車両の電源パワーウィンドウやオーディオ等の電源に供給する複数の電源ラインの終端間を接続するためのものである。そして、この終端間を接続する回路基板上には、電源ラインを流れる電流の終端部における干渉や反射を防止するために抵抗(R)とコンデンサ(C)からなる終端接続回路が備わっている。この終端接続回路は、電源ラインと電気的に接続する雄端子の立設部に形成された基板のパターン面の所定位置に実装されている。
【0005】
一方、近年の車両の高性能化に伴い、いわゆるVSC(Vehicle Stability Control)と呼ばれる車両安定制御システムを車両に搭載したり、いわゆるVSA(Vehicle Stability Assist)と呼ばれる車両挙動安定化制御システムを車両に搭載したりすることが多くなっている。このようなシステムを実効あらしめるために、車両に多数の信号線用ケーブルが配索される。係る信号線用ケーブルからなるワイヤーハーネスの終端接続部に上述した電源回路の終端接続用積層ジョイントコネクタを用いたのでは、機能上不十分となっている。
【0006】
これは、上述した積層ジョイントコネクタには電源ラインの電流の終端接続部における干渉や反射を防止するための終端接続回路のみしか実装されていないため、信号線のノイズから受ける影響を確実に除去することができないからである。
【0007】
本発明の目的は、例えば車両に配索される信号線の終端部においてこの信号線にノイズが重畳しないような終端接続部として用いられる積層ジョイントコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために本発明の請求項1に係る積層ジョイントコネクタは、
複数のハーネス側端子を収容可能とするハウジングを互いに着脱可能に積層させたハウジングアッシーと、一側が前記ハウジングアッシーを挿入する開口部をなし、他側が前記ハーネス側端子と嵌合する雄端子の挿入開口部をなすケースと、前記ケースの他側開口部に取り付けられ表側面に前記雄端子が多数立設した回路基板を備えた積層ジョイントコネクタにおいて、
前記回路基板の裏側面に実装され、当該回路基板の雄端子に一端が電気的に接続した歪抑制回路と、前記回路基板に実装され、前記歪抑制回路の他端に一端が電気的に接続した終端接続回路と、前記回路基板に形成され、前記終端接続回路の他端に電気的に接続したグランドパターンと、を備えることを特徴としている。
【0009】
このような積層ジョイントコネクタを信号線の終端接続部として利用することで、信号線に重畳したノイズが雄端子と終端接続回路を電気的に接続する歪抑制回路によって取り除かれる。積層ジョイントコネクタは多数の信号線の終端部をまとめて接続する機能を有しているので、多数の信号線のノイズ除去をこの積層ジョイントコネクタにおいてまとめて行なうことが可能となる。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る積層ジョイントコネクは、請求項1に記載の積層ジョイントコネクにおいて、
前記雄端子に電気的に接続する基端部が前記回路基板の裏側面に備わり、前記回路基板裏側面において前記雄端子の基端部と前記グランドパターンとが少なくとも一部の歪抑制回路を挟んだ状態で配置されたことを特徴としている。
【0011】
少なくとも一部の歪抑制回路が雄端子の基端部とグランドパターンとで挟まれた状態で配置されることで、歪抑制回路によるノイズ除去の効果をより高める。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る積層ジョイントコネクは、請求項1又は請求項2に記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記回路基板の裏側面に設けられ、前記雄端子に電気的に接続するランドが前記歪抑制回路の一方の側の端部のランドを兼ねていることを特徴としている。
【0013】
このように雄端子と歪抑制回路の一方の端部のランドを一体化することで、歪抑制回路と雄端子との距離が短くなるので、歪抑制回路によるノイズ除去の効果が高まる。また、ランドの面積が小さくなることで回路基板全体の小型化を図ることも可能となる。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る積層ジョイントコネクは、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記雄端子に電気的に接続するランドが、雄端子に隣接しかつ当該ランドとは直接電気的に接続していない歪抑制回路との干渉を防止する形状を有していることを特徴としている。
【0015】
雄端子に電気的に接続するランドがこのような形状を有することで、雄端子がこれに隣接する歪抑制回路にノイズの影響を与えることを防止すると共に、回路基板全体の小型化を図ることができる。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る積層ジョイントコネクは、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記回路基板の表側面で前記グランドパターンの対向する面に更なるグランドパターンを設けたことを特徴としている。
【0017】
このように回路基板の表側面にもグランドパターンを形成することで、グランドパターンが回路基板の表裏に形成されることになり、この面積を大きくとることができる。その結果、ノイズ低減の効果を更に高めることができる。
【0018】
また、本発明の請求項6に係る積層ジョイントコネクは、請求項5に記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記回路基板の表側面であって前記終端接続回路の形成位置と対向する位置にグランドパターンを設けたことを特徴としている。
【0019】
このように回路基板の表面で回路基板のうち側面に形成された終端接続回路と対向する位置にグランドパターンが備わることで、ノイズ除去の効果をより一層高める。
【0020】
また、本発明の請求項7に係る積層ジョイントコネクは、請求項6に記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記回路基板の裏側面に形成されたグランドパターンと前記回路基板の表側面に形成されたグランドパターンが、スルーホールを介して電気的に接続されていることを特徴としている。
【0021】
このようなスルーホールを介して基板の表裏面のグランドパターンを電気的に接続することで、ノイズ低減の効果を更に高める。
【0022】
また、本発明の請求項8に係る積層ジョイントコネクタは、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記回路基板には、多重通信用の複数のノード間を繋ぐ複数の信号線の組が接続可能な接続パターンであって冗長性を持たせる終端接続パターンが並列に形成されていることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の請求項9に係る積層ジョイントコネクタは、請求項8記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記終端接続パターンが前記回路基板に並列に二組形成されていることを特徴としている。
【0024】
本発明がこのような構成を有することで、信号線の終端接続部に冗長性をもたせてこの部分の信頼性を高める。
【0025】
また、本発明の請求項10に係る積層ジョイントコネクタは、請求項1乃至請求項9の何れかに記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記積層ジョイントコネクタが車載ネットワーク通信の終端接続部として用いられることを特徴としている。
【0026】
また、本発明の請求項11に係る積層ジョイントコネクは、請求項1乃至請求項10の何れかに記載の積層ジョイントコネクタにおいて、
前記積層ジョイントコネクタが車両の通信規格プロトコルであるFlex Rayを適用した信号線の終端接続部として用いられることを特徴としている。
【0027】
本発明態に係る積層ジョイントコネクタを車載ネットワーク通信、特にそのプロトコルとして注目を浴びているFlex Rayに適用することで、車両の電子機器や電気機器間及び制御コントローラとの通信の信頼性を高める。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、例えば車両に配索される信号線の終端部においてこの信号線にノイズが重畳しないような終端接続部として用いられる積層ジョイントコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る積層ジョイントコネクタの分解斜視図である。
【図2】図1に示した積層ジョイントコネクタの回路基板の雄端子立設側と反対側面を示す平面図である。
【図3】図2に示した回路基板に実装された歪抑制回路及びランドを示す拡大平面図である。
【図4】図2に示した回路基板の雄端子立設側(表側)の平面図である。
【図5】図2及び図4に示した回路基板の側面図である。
【図6】図2及び図4に示した回路基板の第1変形例を示す図であり、雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図(図6(a))及び雄端子立設側(表側)の平面図(図6(b))である。
【図7】図2及び図4に示した回路基板の第2変形例を示す図であり、雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図(図7(a))及び雄端子立設側(表側)の平面図(図7(b))である。
【図8】図2及び図4に示した回路基板の第3変形例を示す図であり、雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図(図8(a))及び雄端子立設側(表側)の平面図(図8(b))である。
【図9】図2及び図4に示した回路基板の第4変形例を示す図であり、雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図(図9(a))及び雄端子立設側(表側)の平面図(図9(b))である。
【図10】図2に示した回路基板に実装された歪抑制回路及びランドの別の形態を示す拡大平面図である。
【図11】図2に示した回路基板に実装された歪抑制回路及びランドの更に別の形態を示す拡大平面図である。
【図12】図2に示した回路基板に歪抑制回路を実装しない場合の実施例を示す雄端子立設側と反対側面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る積層ジョイントコネクタについて図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る積層ジョイントコネクタ1の分解斜視図である。本発明の一実施形態に係る積層ジョイントコネクタ1は、同図から明らかなように、互いに積層されるハウジング25と、ハウジング25の上部に被せられるカバー22と、積層されたハウジング25とこの上部に被せられたカバー22を収容する四角筒状のアッパーケース30と、アッパーケース30の一方の開口部31から積層されたハウジング25に雄端子11を挿入する回路基板アッシー10と、アッパーケース30と協働して回路基板100を挟み込むロアケース40を備えている。
【0031】
ハウジング25は、例えば成型性に優れたPP(ポリプロピレン)でできており、信号線の端部に備わった雌端子(ハーネス側端子)を並列に収容する端子収容部を備えると共に、隣接するハウジング25に収容された雌端子に係合する片持ち梁状のランスを備えている。また、ハウジング25の各側部には隣接するハウジング25やカバー22と係合する係合凸部及び係合凹部が備わっている。また、ハウジング25の底面には隣接するハウジング25の窓部を介してハウジング内に入り込んで隣接するハウジング25に収容された図示しない雌端子(ハーネス側端子)の抜けを防止する係止突起が幅方向所定間隔を隔てて形成されている。そして、ハウジング25を積層させて更にその上面にカバー22を係合させることでハウジングアッシー20が構成されるようになっている。
【0032】
アッパーケース30は、例えば成型性に優れたPP(ポリプロピレン)でできており、上述したように四角筒型形状を有し、ハウジングアッシー20を一方の開口部31から挿入した際にハウジングアッシー20がアッパーケース30の他方の開口部32に向かって摺動するように対向する内壁面にガイド溝33が備わっている。
【0033】
回路基板アッシー10は矩形状の回路基板100と、回路基板100と一方の面(表側面)に平面視マトリックス状に立設した雄端子11等から構成されている。なお、回路基板100の詳細な構造については、本発明の要旨に関わるので後に詳細に説明する。
【0034】
ロアケース40は、例えば成型性に優れたPP(ポリプロピレン)でできており、アッパーケース30に収容されたハウジングアッシー内の雌端子に回路基板から立設した雄端子11が十分嵌合するように回路基板100をアッパーケース30に押し付けると共に、この押し付け後にアッパーケース30と係合して回路基板100をケース内に確実に収容するようになっている。
【0035】
図2は、図1に示した積層ジョイントコネクタ1の回路基板100の雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図である。また、図3は、図2に示した回路基板100に実装された歪抑制回路130及びランド150を示す拡大平面図である。また、図4は、図2に示した回路基板100の雄端子立設側(表側)の平面図である。また、図5は、図2及び図4に示した回路基板100の側面図である。
【0036】
そして、本実施形態にかかる積層ジョイントコネクタ1は、車搭用通信プロトコルの一つであるFlex Rayと呼ばれる車両内での通信を行うための通信線の終端接続回路に使用するようになっている。ここで、Flex Rayとは、次世代の自動車としてより安全性や快適性を要求されていることに伴う車両の制御システムのデータ量の増加や複雑化に対応する高速でかつ信頼性の高いネットワークを構築するための通信プロトコルである。
【0037】
なお、本実施形態においては、冗長性を持たせてフォルトトレラント(耐故障性)を向上させるために、信号線をデュアルチャンネルとし、このデュアルチャンネルの信号線の終端部が一つの積層ジョイントコネクタ1に接続されるようになっている。
【0038】
回路基板100には上述したように表側面に雄端子11が多数立設すると共に、裏側面にこれら雄端子11とそれぞれを電気的に接続した基端部111が多数備わっている。複数の雄端子11は、車両用通信プロトコルとしてのFlex Rayに対応する通信線のハーネス側端子と接続されるようになっており、フォルトトレラント(耐故障性)を実効あらしめるために、第1の端子群(チャンネル1)及び第2の端子群(チャンネル2)からなっている。従って、図2に示す各雄端子の基端部も基板上に並列に隣接するチャンネル1(110A)とチャンネル2(110B)の2つのグループのチャンネル群として配置されている。
【0039】
なお、以下の説明では一方のチャンネル(チャンネル1)の回路配置構成について述べるが、他方のチャンネル(チャンネル2)の回路配置構成についても同様である。
【0040】
チャンネル1(110A)において回路基板100の裏側面には雄端子11の基端部111、終端接続回路120、歪抑制回路130、グランドパターン(アースパターン)160が形成されている。これらの構成要素の接続関係は以下の通りとなっている。
【0041】
雄端子11の基端部111は、チャンネル1においては図2に示すように、それぞれ7個からなる第1の基端部列及び第2の基端部列から構成されている。そして、各基端部111は、図中左側を底辺とし右側を幅狭の対向辺とした異型の台形形状を有したランド150の中心部に位置している(図3参照)。
【0042】
即ち、雄端子11と電気的に接続するランド150が、雄端子11と隣接しかつランド150と直接電気的に接続していない歪抑制回路130との干渉を防止する形状を有している。
【0043】
歪抑制回路130は、各雄端子11にそれぞれ1つずつ対応して実装された抵抗(R)131とインダクタンス(L)132からなり、それぞれの一端が各雄端子11の基端部111の周囲のランド150と電気的に接続している。即ち、本実施形態の場合、図2に示すように1列目の7つの雄端子11にそれぞれ1つの抵抗131と1つのインダクタンス132が対応して実装され、2列目の7つの雄端子11にもそれぞれ1つの抵抗131と1つのインダクタンス132が対応して実装されている。
【0044】
また、抵抗131とインダクタンス132のそれぞれの他端は共通バス135に接続されている。即ち、歪抑制回路130は、一端が雄端子11のランドと一体化したランド150に接続され、他端が共通バス135に接続された並列回路を形成している。
【0045】
終端接続回路120は2組実装され、それぞれ2つの抵抗(R)121,122と1つのコンデンサ(C)123とからなり、各抵抗121,122の一端がそれぞれ共通バス135に接続され、他端がコンデンサ123 に接続されている。コンデンサ122の他端は、回路基板100の裏面に幅広の略L字状をなしてパターニングされたグランドパターン(アース)160に接続している。
【0046】
グランドパターン160が図2に示すように配置されることによって、回路基板裏側面において雄端子11の基端部111とグランドパターン160とが少なくとも一部の歪抑制回路130を挟んだ(囲んだ)状態で配置されている。
【0047】
一方、回路基板100の雄端子立設面、即ち表側面にも、グランドパターンが形成されている。このグランドパターン170は、図4に示すように、平面視略L字状をなし、この回路基板の表面側に設けられたグランドパターン170と上述した裏側面に設けられたグランドパターン160とは回路基板100を挟んで互いに対向する位置関係となっている。また、ここでは詳細断面を図示しないが、基板表面側のグランドパターン170と裏側面のグランドパターン160とはスルーホール180を介して電気的に接続されている。
【0048】
なお、図2中のグランドパターン160の横方向延在部の幅Waよりも図4中のグランドパターン170の横方向延在部Wbの方が広くなっている。これは、グランドパターン170の図中横方向延在部が、回路基板100の表側面であって終端接続回路120の形成位置と対向する位置に設けられているからである。
【0049】
なお、チャンネル2における雄端子の基端部がほぼ中央に備わったランド、このランドに一端が接続された抵抗とインダクタンスからなる歪抑制回路、歪抑制回路の他端に共通バスを介して接続された抵抗とコンデンサからなる終端接続回路、終端接続回路の他端に接続されたグランドパターンの構成及び位置関係についても同様である。
【0050】
続いて、上述した構成を有する積層ジョイントコネクタ1の作用について説明する。このような積層ジョイントコネクタ1を信号線の終端接続部として利用することで、信号線に重畳したノイズが終端接続回路120と雄端子11の双方に電気的に接続される歪抑制回路130によって取り除かれる。積層ジョイントコネクタ1は多数の信号線の終端部をまとめて接続する機能を有しているので、多数の信号線のノイズ除去をこの積層ジョイントコネクタ1においてまとめて行なうことが可能となる。
【0051】
また、雄端子11と電気的に接続される基端部111が回路基板100の裏側面に備わり、回路基板裏側面において雄端子11の基端部111とグランドパターン160とが複数実装された歪抑制回路130の一部を挟んだ状態で配置されているので、歪抑制回路130によるノイズ除去の効果をより高める。
【0052】
また、回路基板100の裏側面に設けられ、雄端子11に電気的に接続するランド150が、図3に示すように歪抑制回路130の一方の側の端部のランドを兼ねている。この結果、雄端子11と歪抑制回路130の一方の端部のランドを一体化するので、歪抑制回路130と雄端子11との距離が短くなり、歪抑制回路130によるノイズ除去の効果が高まる。また、ランド150の面積が小さくなることで、回路基板全体の小型化を図ることも可能となる。
【0053】
また、雄端子11と電気的に接続するランド150が、雄端子11と隣接するがランド150と電気的に直接接続していない歪抑制回路130との干渉を防止する形状を有しているので、雄端子11がこの隣接する歪抑制回路130にノイズの影響を与えることを防止すると共に、回路基板全体の小型化を図ることができる。
【0054】
また、回路基板100の表側面でグランドパターン160の対向する面に更なるグランドパターン170を形成したので、グランドパターン160,170が回路基板100の表裏に備わっていることになる。その結果、グランドパターン全体の面積を大きく確保し、ノイズ低減の効果を高めている。
【0055】
なお、これに加えて回路基板100の表面で回路基板裏面の終端接続回路120に対向する位置にもグランドパターン170が形成されているので、ノイズ除去の効果を高めている。
【0056】
また、回路基板100の裏側面に形成されたグランドパターン160と、回路基板100の表側面に形成されたグランドパターン170がスルーホール180を介して電気的に接続されているので、ノイズ低減の効果を高めている。
【0057】
また、本発明に係る積層ジョイントコネク1を、車両の通信規格プロトコルであるFlex Rayにおける信号線の終端接続部として用いているので、車両の電子機器や電気機器間及び制御コントローラとの通信の信頼性を高めている。
【0058】
続いて、上述した積層ジョイントコネクタの各種変形例について図面に基づいて説明する。なお、この各種変形例においては上述した実施形態と同等の構成については対応する符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0059】
最初に回路基板に形成されたグランドパターンの形状が異なる第1変形乃至第4変形例について説明する。図6は、この第1変形を示す図であり、雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図(図6(a))及び雄端子立設側(表側)の平面図(図6(b))である。また、図7は、この第2変形例を示す図であり、雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図(図7(a))及び雄端子立設側(表側)の平面図(図7(b))である。また、図8は、この第3変形例を示す図であり、雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図(図8(a))及び雄端子立設側(表側)の平面図(図8(b))である。また、図9は、この第4変形例を示す図であり雄端子立設側と反対側(裏側)の平面図(図9(a))及び雄端子立設側(表側)の平面図(図9(b))である。
【0060】
図6に示す第1変形例は、回路基板200の裏側面のグランドパターン260が角型U字状をなし、回路基板200の雄端子立設側である表側面に設けられたグランドパターン270も角型U字状をなしている。そして、回路基板200の裏側面のグランドパターン260と表側面のグランドパターン270は回路基板200を挟んで互いに対向する位置に形成されている。なお、図6(a)中のグランドパターン260の横方向延在部の幅よりも図6(b)中のグランドパターン270の横方向延在部の方が広くなっている。これは、グランドパターン270の図中横方向延在部が、回路基板200の表側面であって終端接続回路220の形成位置と対向する位置に設けられているからである。また、各グランドパターンは、上述の実施形態と同様にスルーホール280を介して互いに電気的に接続している。
【0061】
第1変形例がこのような構成を有することで、回路基板裏側面において雄端子21の基端部211とグランドパターン260とが少なくとも一部の歪抑制回路230を挟んだ状態で配置されていることになる。その結果、信号線に重畳したノイズを歪抑制回路230で確実に除去することができる。
【0062】
一方、図7に示す第2変形例は、回路基板300の裏側面のグランドパターン360が雄端子31の基端部311と歪抑制回路330との周囲をチャンネル1とチャンネル2を纏めて囲っている。また、回路基板300の表側面のグランドパターン370は、裏側面のグランドパターン360及び終端接続回路320に対応する位置に形成されている。
【0063】
第2変形例がこのような構成を有することで、回路基板裏側面において雄端子31の基端部311とグランドパターン360とが歪抑制回路330を囲んだ状態で配置されていることになる。その結果、信号線に重畳したノイズを歪抑制回路で確実に除去することができる。
【0064】
一方、図8に示す第3変形例は、回路基板400の裏側面のグランドパターン460が雄端子41の基端部411と歪抑制回路430との周囲をチャンネル1とチャンネル2に分けてそれぞれ独自に囲っている。また、回路基板400の表側面のグランドパターン470は、裏側面のグランドパターン460及び終端接続回路420に対応する位置に形成されている。また、各グランドパターンは、上述の実施形態と同様にスルーホール480を介して互いに電気的に接続している。
【0065】
第3変形例がこのような構成を有することで、回路基板裏側面において雄端子41の基端部411とグランドパターン460とが歪抑制回路430を囲んだ状態で配置されていることになる。その結果、信号線に重畳したノイズを歪抑制回路430で確実に除去することができる。また、雄端子41の基端部411と歪抑制回路430との周囲をチャンネル1とチャンネル2に分けてそれぞれ独自に囲っているので、各チャンネルのノイズに伴う悪影響が隣接するチャンネルに及ぶことが少なくなり、チャンネル1とチャンネル2で構成される信号線の耐ノイズ性を高めている。
【0066】
一方、図9に示す第4変形例は、回路基板500の裏側面のグランドパターン560が雄端子51の基端部511と歪抑制回路530との周囲を一部除いてチャンネル1とチャンネル2に分けてそれぞれ独自に囲っている。また、回路基板500の表側面のグランドパターン570は、裏側面のグランドパターン560及び終端接続回路520に対応する位置に形成されている。また、各グランドパターンは、上述の実施形態と同様にスルーホール580を介して互いに電気的に接続している。
【0067】
第4変形例がこのような構成を有することで、回路基板裏側面において雄端子51の基端部511とグランドパターン560とが少なくとも一部の歪抑制回路530を挟んだ状態で配置されていることになるので、信号線に重畳したノイズを歪抑制回路530で確実に除去することができる。また、雄端子51の基端部511と歪抑制回路530との周囲をチャンネル1とチャンネル2に分けてそれぞれ独自に挟んでいるので、各チャンネルのノイズに伴う悪影響が隣接するチャンネルに及ぶことが少なくなり、チャンネル1とチャンネル2で構成される信号線の耐ノイズ性を高めている。
【0068】
続いて、回路基板100の裏面に形成され雄端子11の基端部111をほぼ中心とするランド150(図3)の変形例について説明する。図10は、図2に示した回路基板に実装された歪抑制回路及びランドの別の形態を示す拡大平面図である。この第5変形例に係るランド650は、雄端子61の基端部611と電気的に接続した円形のランド651の一方向(図10中左方向)に偏倚してランド652が繋がって一体化され、このランド652に終端接続回路620を構成する抵抗631とインダクタンス632の一方の側の端部がそれぞれ電気的に接続している。
【0069】
このようなランド650であっても、歪抑制回路630と雄端子61との距離が相当程度短くなるので、歪抑制回路630によるノイズ除去の効果が高まる。また、ランド650の面積が相当程度小さくなることで回路基板全体の小型化を図ることも可能となる。
【0070】
続いて、図10に示したランドの変形例である第5変形例の更なる変形例、即ち第6変形例について説明する。図11は、図2に示した回路基板に実装された歪抑制回路及びランドの更に別の形態を示す拡大平面図である。この第6変形例は、雄端子71の基端部711がほぼ中央に位置するランド751と、終端接続回路720を形成する抵抗721の一方の側の端部に接続したランド752と、インダクタンス722の一方の側の端部に接続したランド753がそれぞれ別々のランドを構成している。そして、ランド751と752、ランド751と753がそれぞれ別の導体パターン755,756で電気的に繋がれている。
【0071】
このようなランド751,752,753によると、歪抑制回路730と雄端子71との距離が本実施形態及びその第5変形例のように十分縮まらず回路基板の小型化を図ることはできないが、上述の実施形態及びその第1変形例乃至第4変形例のように歪抑制回路730を雄端子71の基端部711とグランドパターンで挟み込むことで、信号線のノイズ除去の効果を発揮する。
【0072】
なお、図12は、車載用通信プロトコルであるFlex Rayを適用した2チャンネルの信号線に抵抗とコンデンサからなる終端接続回路820のみを電気的に接続した回路基板800の裏面図である。この図12と図2に示した本実施形態の回路基板100の裏側面とを比較すると明らかなように、本実施形態の場合、雄端子11の基端部111のそれぞれに隣接して抵抗131とインダクタンス132からなる歪抑制回路130が備わっている。即ち、本実施形態の場合、チャンネル1(110A)をなす1列が7つの雄端子11の基端部111にそれぞれ1つずつ合計7個の歪抑制回路130が備わり、これが2列並列に配置されている。つまり、信号線のチャンネル1(110A)中に合計14個の歪抑制回路が備わっている。これと同様にチャンネル2(110B)においても合計14個の歪抑制回路130が備わっている。この構成と図12の構成を比較すると、本実施形態にかかる積層ジョイントコネクタ1が雄端子11としてのノイズ除去の効果を十分に有していることが視覚的にも容易に理解できる。
【0073】
なお、本発明は、上述した本発明に係る実施形態及びその変形例に限定されるものではない。具体的には、少なくとも一部の歪抑制回路が雄端子の基端部とグランドパターンとで挟まれた状態で配置されていれば、歪抑制回路によるノイズ除去の効果をより高めることができ、雄端子に電気的に接続するランドが歪抑制回路の一方の側の端部のランドを兼ねている必要はない(図11参照)。
【0074】
しかしながら、雄端子と歪抑制回路の一方の端部のランドを一体化することで、歪抑制回路と雄端子との距離が短くなるので、歪抑制回路によるノイズ除去の効果が高まる。また、ランドの面積が小さくなることで回路基板全体の小型化を図ることも可能となる。
【0075】
また、雄端子に電気的に接続するランドが、雄端子と隣接するがこのランドに直接電気的に接続していない歪抑制回路との干渉を防止する形状を有していることで、雄端子がこれに隣接する歪抑制回路にノイズの影響を与えることを防止すると共に、回路基板全体の小型化を図ることができる。
【0076】
また、回路基板の表側面でグランドパターンの対向する面に更なるグランドパターンを必ずしも形成する必要はない。しかしながら、回路基板の表側面にもグランドパターンを形成することで、グランドパターンが回路基板の表裏に形成されることになり、この面積を大きくとることができる。その結果、ノイズ低減の効果を更に高めることができる。
【0077】
また、回路基板の表側面であって終端接続回路の形成位置と対向する位置にグランドパターンを必ずしも形成する必要はない。しかしながら、このように回路基板の表面で終端接続回路の実装領域に対向する位置にグランドパターンが備わることで、ノイズ除去の効果をより一層高める。
【0078】
また、回路基板の裏側面に形成されたグランドパターンと表側面に形成されたグランドパターンが、スルーホールを介して電気的に接続されていることは必ずしも必要とされない。しかしながら、このようなスルーホールを介して基板の表裏面のグランドパターンを電気的に接続することで、ノイズ低減の効果を更に高める。
【0079】
また、本発明に係る積層ジョイントコネクについては、多重通信用の複数のノード間を繋ぐ複数の信号線の組が接続可能な接続パターンであって冗長性を持たせる終端接続パターンが並列に二組形成されていることは必ずしも必要としない。しかしながら、本発明がこのような構成を有することで、信号線の終端接続部に冗長性をもたせて信号線の終端接続部における信頼を高めることができる。
【0080】
また、本発明に係る積層ジョイントコネクは、車両の通信規格プロトコルであるFlex Rayにおける信号線の終端接続部として用いられることは必ずしも必要とはしない。しかしながら、本発明態に係る積層ジョイントコネクタをFlex Rayに適用することで、車両の電子機器や電気機器間及び制御コントローラとの通信の信頼性を高めることができる。
【0081】
なお、本発明に係る積層ジョイントコネクタを車搭用通信プロトコルの1つであるCANを利用した信号線の終端接続に適用しても同等の効果を得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
1 積層ジョイントコネクタ
10 回路基板アッシー
11 雄端子
20 ハウジングアッシー
22 カバー
25 ハウジング
30 アッパーケース
31,32 開口部
33 ガイド溝
40 ロアケース
100 回路基板
110A チャンネル1
110B チャンネル2
111 基端部
120 終端接続回路
121,122 抵抗
123 コンデンサ
130 歪抑制回路
131 抵抗
132 インダクタンス
135 共通バス
150 ランド
160,170 グランドパターン(アースパターン)
180 スルーホール
200 回路基板
211 基端部
230 歪抑制回路
260,270 グランドパターン
280 スルーホール
31 雄端子
300 回路基板
311 基端部
330 歪抑制回路
360 グランドパターン
41 雄端子
400 回路基板
411 基端部
430 歪抑制回路
460 グランドパターン
51 雄端子
500 回路基板
511 基端部
530 歪抑制回路
560 グランドパターン
61 雄端子
611 基端部
620 終端接続回路
630 歪抑制回路
631 抵抗
632 インダクタンス
650,651 ランド
71 雄端子
711 基端部
720 終端接続回路
721 抵抗
722 インダクタンス
730 歪抑制回路
751,752,753 ランド
755,756 導体パターン
800 回路基板
820 終端接続回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハーネス側端子を収容可能とするハウジングを互いに着脱可能に積層させたハウジングアッシーと、一側が前記ハウジングアッシーを挿入する開口部をなし、他側が前記ハーネス側端子と嵌合する雄端子の挿入開口部をなすケースと、前記ケースの他側開口部に取り付けられ表側面に前記雄端子が多数立設した回路基板を備えた積層ジョイントコネクタにおいて、
前記回路基板の裏側面に実装され、当該回路基板の雄端子に一端が電気的に接続した歪抑制回路と、前記回路基板に実装され、前記歪抑制回路の他端に一端が電気的に接続した終端接続回路と、前記回路基板に形成され、前記終端接続回路の他端に電気的に接続したグランドパターンと、を備えることを特徴とする積層ジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記雄端子に電気的に接続する基端部が前記回路基板の裏側面に備わり、前記回路基板裏側面において前記雄端子の基端部と前記グランドパターンとが少なくとも一部の歪抑制回路を挟んだ状態で配置されたことを特徴とする、請求項1に記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記回路基板の裏側面に設けられ、前記雄端子に電気的に接続するランドが前記歪抑制回路の一方の端部のランドを兼ねていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記雄端子に電気的に接続するランドが、雄端子に隣接しかつ当該ランドとは直接電気的に接続していない歪抑制回路との干渉を防止する形状を有していることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項5】
前記回路基板の表側面で前記グランドパターンの対向する面に更なるグランドパターンを設けたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項6】
前記回路基板の表側面であって前記終端接続回路の形成位置と対向する位置にグランドパターンを設けたことを特徴とする、請求項5に記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項7】
前記回路基板の裏側面に形成されたグランドパターンと前記回路基板の表側面に形成されたグランドパターンが、スルーホールを介して電気的に接続されていることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項8】
前記回路基板には、多重通信用の複数のノード間を繋ぐ複数の信号線の組が接続可能な接続パターンであって冗長性を持たせる終端接続パターンが並列に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項9】
前記終端接続パターンが前記回路基板に並列に二組形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項10】
前記積層ジョイントコネクタが車載ネットワーク通信の終端接続部として用いられることを特徴とする、請求項1乃至請求項9の何れかに記載の積層ジョイントコネクタ。
【請求項11】
前記積層ジョイントコネクタが車両の通信規格プロトコルであるFlex Rayを適用した信号線の終端接続部として用いられる、請求項1乃至請求項10の何れかに記載の積層ジョイントコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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