積層フィルムの融着構造、袋体、および袋体の製造方法
【課題】基材層と融着層とが少なくとも積層された積層フィルムの基材層側同士を融着する際に、切除片や煙などが発生するのを防止可能な積層フィルムの融着構造、袋体、および袋体の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性を有する融着材からなる融着層11と該融着層11よりも融点が高い基材層12とが少なくとも積層された積層フィルム10を基材層12が外側となるように対向配置してなる第1対向配置部16および第2対向配置部17を備え、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが対向する側の基材層12には、前記基材層12から融着層11まで到達する切込み18を複数有する切込み群19が対向配置され、該切込み群19の位置でヒートシールされてなることを特徴とする。
【解決手段】熱可塑性を有する融着材からなる融着層11と該融着層11よりも融点が高い基材層12とが少なくとも積層された積層フィルム10を基材層12が外側となるように対向配置してなる第1対向配置部16および第2対向配置部17を備え、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが対向する側の基材層12には、前記基材層12から融着層11まで到達する切込み18を複数有する切込み群19が対向配置され、該切込み群19の位置でヒートシールされてなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材層と融着層とが少なくとも積層された積層フィルムの融着構造、およびこの融着構造を有する袋体、並びに、この袋体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
底面ガゼットを備えるスタンドパウチにあっては、一般に、2枚の胴部フィルムと1枚の底部フィルムとの縁部がそれぞれシールされて形成されるが、底部フィルムが開く状態であると自立不能となるため、底部フィルムを二つ折りしてその左右縁部を融着する必要がある。例えば、胴部フィルムや底部フィルムとして、熱可塑性を有する融着層と、この融着層よりも融点が高く設定される基材層とが積層されて構成されるフィルムを利用した場合、胴部フィルムと底部フィルムとは互いの融着層同士をシールすればよいが、底部フィルムの左右縁部を融着する場合には、融着層が存在しない基材層側で融着する必要がある。
【0003】
そのため従来は、底部フィルムの左右縁部の対向する基材層をパンチング等により部分的に切除して融着層同士を露出させ、これら融着層の露出部分を互いに当接させた状態でヒートシールすることでフィルム同士を融着していた。しかし、パンチング等により基材層を切除する場合、切除片が生じるため、この切除片を回収する必要があり、例えば、回収漏れなどが発生した場合には、切除片が製品内に混入したり、シール部に付着してシール不良が生じて密封性が保てなくなる虞がある。
そこで近年、切除片が生じないように、レーザーマーカーの熱により基材層のみを部分的に昇華させて除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−111419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した基材層のみを昇華させて除去する方法を用いることで切除片は生じないものの、レーザーマーカーの熱によって基材層が昇華する際に煙が発生して、この煙がフィルム内面に付着してしまい、フィルムを汚したり、昇華に伴う煙のにおいがフィルムに吸着されてしまう虞があるという課題がある。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材層と融着層とが少なくとも積層された積層フィルムの基材層側同士を融着する際に、切除片や煙などが発生するのを防止可能な積層フィルムの融着構造、袋体、および袋体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、熱可塑性を有する融着材からなる融着層と該融着層よりも融点が高い基材層とが少なくとも積層された積層フィルムを前記基材層が外側となるように対向配置してなる複数の対向配置部を備え、前記対向配置部同士が融着されてなる積層フィルムの融着構造において、前記対向配置部同士が対向する側の前記基材層には、該基材層から融着層まで到達する切込みを複数有する切込み群が対向配置され、該切込み群の位置でヒートシールされてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記基材層の表面のうち、少なくとも前記切込み群が形成される部分が粗面であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載の融着構造を有する袋体である。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載の袋体の製造方法であって、前記融着層と前記基材層とが積層された積層フィルムを製造する工程と、前記基材層の前記対向配置部同士が対向する予定箇所に前記切込み群を形成する工程と、前記積層フィルムを前記基材層が外側になるように対向配置して前記対向配置部を形成する工程と、前記切込み群を対向配置させて該切込み群が配置された位置で前記対向配置部をヒートシールする工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明のフィルムの融着構造によれば、対向配置部同士が融着される箇所の基材層に切込み群を設け、切込み群同士を対向配置した状態でヒートシールを行うことで、対向配置部の基材層よりも内側にある融着層が加熱により溶融され、さらにその部分が押圧されることで切込み群を介して基材層の外面に融着層を構成する融着材が染み出て、これら対向する切込み群からそれぞれ染み出た融着材同士が融合一体化されて融着されることとなる。したがって、フィルムの切除片や煙などが発生することなしに隣接する対向配置部同士を確実に融着させることができる。
【0012】
さらに、この発明の袋体によれば、フィルムの切除片や煙などが発生することなしに対向配置部同士を融着させることができるため、切除片による袋体内部への異物混入やシール不良、さらには煙によるフィルムの汚れを防止することができる効果がある。
そして、この発明の袋体の製造方法によれば、フィルムに予め切込み群を形成した後に、フィルムをヒートシールにより融着して袋体を形成することができるため、袋体を形成した後に切込み群を形成する場合と比較して、複雑な作業が不要になり、容易に対向配置部同士を融着させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態における積層フィルムの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における積層フィルムの融着構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における袋体の斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態における袋体の正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるガゼットフィルムの製造工程を示す図であって、積層フィルムに切込み群を形成する工程を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態におけるガゼットフィルムの製造工程を示す図であって、切込み群を形成した積層フィルムを二つ折りにする工程を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における袋体の製造工程を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるヒートシール前の第1フィルム、第2フィルムおよびガゼットフィルムの配置を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の第1変形例における袋体の斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態の第1変形例における袋体の正面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の第2変形例における袋体の斜視図である。
【図12】本発明の第2実施形態の第2変形例における袋体の正面図である。
【図13】本発明の第3実施形態における図5に相当する図である。
【図14】本発明の第3実施形態における一方の切込み群の拡大図である。
【図15】本発明の第3実施形態における他方の切込み群の拡大図である。
【図16】本発明の第3実施形態におけるガゼットフィルムに形成された切込み群の重なりを示す透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の第1実施形態の積層フィルムの融着構造について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、この実施形態の積層フィルム10は、熱可塑性を有する融着材からなる融着層11と該融着層11よりも融点が高い基材層12とが積層された多層構造を有する積層フィルムである。
融着層11は、ヒートシールにより積層フィルム10同士を融着させる機能を有しており、この融着層11を構成する融着材としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。融着層11の厚さは、10μm〜200μmであり、より好ましくは20μm〜100μmである。
【0015】
基材層12は、主に積層フィルム10に機械的な強靱性を持たせる機能を有しており、この基材層12としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、および、ポリアセタールなどの合成樹脂からなるフィルム、又は、これらの合成樹脂を多層共押出ししたフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは無延伸フィルムであってもよく、一軸方向又は二軸方向に延伸した延伸フィルムであっても良い。また、基材層12に用いるフィルムは印刷適正の観点から、一軸方向又は二軸方向に延伸した延伸フィルムを用いることが好ましい。また、基材層12の厚さは、6μm〜50μmであり、より好ましくは9μm〜25μmである。なお、基材層12は1層に限られず、2層以上設けても良い。
【0016】
この実施形態の積層フィルム10の融着構造は、図2に示すように、上述した積層フィルム10からなる、第1フィルム13と、第2フィルム14と、これら第1フィルム13と第2フィルム14との間に設けられるガゼットフィルム15とが互いに融着される。第1フィルムとガゼットフィルム15とは、互いの基材層12が外側となるように対向配置される第1対向配置部16を形成し、同様に、第2フィルム14とガゼットフィルム15とは、互いに基材層12が外側となるように対向配置される第2対向配置部17を形成する。そして、これら第1対向配置部16と、第2対向配置部17とがそれぞれガゼットフィルム15の基材層12の表面を対向させた状態で融着される。なお、この実施形態では、第1対向配置部16および第2対向配置部17を第1フィルム13と、第2フィルム14と、ガゼットフィルム15とにより構成する場合について説明するが、一枚の積層フィルム10を屈曲形成して、基材層12が外側となる二つの対向配置部(第1対向配置部16、および、第2対向配置部17)を形成することも可能である。
【0017】
前記第1対向配置部16と第2対向配置部17とは、互いに対向する基材層12の表面12a側に、基材層12を貫通する複数の切込み18からなる切込み群19を備える。この切込み群19を構成する複数の切込み18は、ピナクル刃、トムソン刃、カッター刃、針などの刃物をガゼットフィルム15の基材層12側に突き刺すことで形成され、第1対向配置部16では、ガゼットフィルム15の基材層12の表面12aから、ガゼットフィルム15の融着層11にまで到達する深さで切込み18が形成され、第2対向配置部17では、ガゼットフィルム15の基材層12の表面12aからガゼットフィルム15の融着層11にまで到達する深さで切込み18が形成される。なお、切込み18の深さは、上記深さに限られるものではなく、切込み18を、例えば、ガゼットフィルム15の基材層12の表面12aから、ガゼットフィルム15の融着層11の途中まで到達する深さに形成するようにしてもよく、ガゼットフィルム15の基材層12の表面12aからガゼットフィルム15の融着層11まで貫通して、第1フィルム13の融着層11や第2フィルム14の融着層11の基材層12側の境界面まで到達する深さに形成していてもよい。
【0018】
ここで、切込み18を形成するための刃物は、基材層12および融着層11がガゼットフィルム15から切り取られてしてしまわないように、突き刺す方向から見た端縁の形状が円形や矩形などの連続する閉じた形状ではなく、断続的に(例えば破線のごとく)形成される。また、切込み群19が形成される箇所の基材層12の表面12aは、上述した切込み18よりも十分に微細な貫通・非貫通の孔を複数散在させて微小な凹凸面を形成した粗面とするのが好ましい。このように切込み群19が形成される箇所の基材層12の表面12aを粗面とすることで、基材層12の強度(例えば、突き刺し強度)を低下させることができるため、ピナクル刃などの刃物による切込み18の形成を安定的に行うことが可能となる。
【0019】
第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とは、互いに当接された状態で、少なくとも切込み群19,19を含む領域がヒートシールされる。このヒートシールによって、第1対向配置部16の切込み群19が形成された箇所では、加熱・押圧されて融着層11を構成する融着材が溶融して切込み18を通じて基材層12の表面12a側に染み出し、同様に、第2対向配置部17の切込み群19が形成された箇所では、融着層11を構成する融着材が溶融されて、その一部が切込みを通じて基材層12の表面12a側に染み出して、これら基材層12の表面12a側に染み出した第1対向配置部16の融着材11aと第2対向配置部17の融着材11aとが融合して、この一体化した融着材11aの温度が低下して冷却固化されることで、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着される。
【0020】
ここで、切込み群19は、切込み18が形成される領域が広く、切込み18が多いほど、より多くの融着材が染み出して融着強度が増加される。つまり、切込み群19の切込み18が形成される領域の広さ、および、切込み18の数は、必要とされる融着強度に応じて設定される(以下、他の実施形態も同様)。また、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とは、互いの切込み18同士の位置が重なるように形成され、これにより融着材が染み出す位置が一致して、融着材同士がより一層一体化され易くなっている。
【0021】
なお、上述した第1実施形態の積層フィルム10は、基材層12と融着層11とが積層される構造である場合について説明したが、気体遮断性、機械的強靱性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等、積層フィルム10に要求される機能に応じて、基材層12と融着層11との間に機能層(図示せず)を設けるようにしても良い。
【0022】
機能層の材質としては、金属箔や各種プラスチックフィルムが挙げられ、金属箔を構成する金属としては、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム等が挙げられる。また、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニル共重合体など、又は、これらのプラスチックフィルムにポリ塩化ビニリデンなどを始めとする気体遮断性を有する樹脂を塗工したもの、若しくはこれらのプラスチックフィルムにアルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの無機物を蒸着した各種蒸着フィルムを用いることができる。機能層の厚さは、6μm〜50μm、より好ましくは6μm〜25μmである。なお、機能層は複数層設けてもよい。
【0023】
さらに、上記機能層を設ける代わりに、基材層12として、蒸着層を設けた蒸着フィルムを用いてもよい。蒸着層としては、例えば、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機物が挙げられる。
基材層12、融着層11、機能層との積層は、ドライラミネート法、押し出しラミネート法、ノンソルベントラミネート法などが挙げられるが、接着強度の面でドライラミネート法を用いるのが好ましい。
【0024】
以下、本発明の実施例について説明する。
<第1実施例>
第1実施例の積層フィルムは、基材層12として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の内側に、機能層として順次、7μmのアルミニウム箔、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン(ONY)を積層し、さらに、機能層の内側に、融着層11として厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を積層した。これら基材層12、機能層、および、融着層11をそれぞれドライラミネートにより接合した。なお、基材層12であるポリエチレンテレフタレートのアルミニウム箔側に印刷を施した。
【0025】
そして、ピナクル刃により基材層12であるポリエチレンテレフタレートから融着層11であるポリエチレンまで到達する複数の切込み18を入れて切込み群19を形成し、ポリエチレンテレフタレートが外側となるように第1対向配置部16と第2対向配置部17とを形成し、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とを対向させて、第1対向配置部16および第2対向配置部17の両外側から、切込み群19を少なくとも含む領域を挟むようにヒートシールした。
この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分において十分な融着強度(0.25〜0.75N/mm2程度)が得られた。
【0026】
<第2実施例>
第2実施例の積層フィルム10は、第1実施例の積層フィルムのアルミニウム箔を、厚さ12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートに置き換えたものである。すなわち、基材層12として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートの内側に、機能層として順次、厚さ12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンを積層し、さらに、機能層の内側に、融着層11として厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレンを積層した。これら基材層12、機能層、および、融着層11をそれぞれドライラミネートにより接合した。なお、基材層12であるポリエチレンテレフタレートのアルミ蒸着面側に印刷を施した。
【0027】
第2実施例の積層フィルムに対して、ピナクル刃により基材層12であるポリエチレンテレフタレートから融着層11であるポリエチレンをまで到達する複数の切込み18を入れて切込み群19を形成し、ポリエチレンテレフタレートが外側となるように第1対向配置部16と第2対向配置部17とを構成し、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とを対向させて、第1対向配置部16および第2対向配置部17の両外側から、切込み群19を少なくとも含む領域を挟むようにヒートシールした。
この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分において十分な融着強度(0.25〜0.75N/mm2程度)が得られた。
【0028】
<第3実施例>
第3実施例の積層フィルムは、順次、基材層12として厚さ12μmの透明蒸着ポリエチレンテレフタレート、機能層として厚さ15μmの二軸延伸ナイロン、融着層11として厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレンの各層をドライラミネートにより接合した。なお、基材層12である透明蒸着ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸ナイロン側に印刷を施した。
この積層フィルムに対して、ピナクル刃により基材層12であるポリエチレンテレフタレートから融着層11であるポリエチレンまで到達する複数の切込み18を入れて切込み群19を形成し、ポリエチレンテレフタレートが外側となるように第1対向配置部16と第2対向配置部17とを構成し、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とを対向させて、第1対向配置部16および第2対向配置部17の両外側から、切込み群19を少なくとも含む領域を挟むようにヒートシールした。
この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分において十分な融着強度(0.25〜0.75N/mm2程度)が得られた。
【0029】
<第4実施例>
第4実施例の積層フィルムは、順次、基材層12として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート、機能層として厚さ15μmのエチレンビニルアルコール(EVOH)、および、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン、融着層11として厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレンをそれぞれ積層して、各層をドライラミネートにより接合した。なお、基材層12であるポリエチレンテレフタレートの機能層側に印刷を施した。
【0030】
この積層フィルムに対して、ピナクル刃により基材層12であるポリエチレンテレフタレートから融着層11であるポリエチレンまで到達する複数の切込み18を入れて切込み群19を形成し、ポリエチレンテレフタレートが外側となるように第1対向配置部16と第2対向配置部17とを構成し、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とを対向させて、第1対向配置部16および第2対向配置部17の両外側から、切込み群19を少なくとも含む領域を挟むようにヒートシールした。
この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分において十分な融着強度(0.25〜0.75N/mm2程度)が得られた。
【0031】
したがって、上述した第1実施形態の積層フィルム10の融着構造によれば、第1対向配置部16と第2対向配置部17とを融着する箇所の基材層12に切込み群19を設け、切込み群19同士を対向配置した状態でヒートシールを行うことで、第1対向配置部16の基材層12よりも内側にある融着層11が溶融され、第1対向配置部16の切込み群19を介して基材層12の表面12a側に融着材11aが染み出るとともに、第2対向配置部17の基材層12よりも内側にある融着層11が溶融され、第2対向配置部17の切込み群19を介して基材層12の表面12a側に融着材11aが染み出るため、これら切込み群19から染み出た融着材11a同士が融合され隣接する第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着される。この結果、積層フィルム10のパンチングによる切除片や昇華した煙などが発生することなしに、隣接する第1対向配置部16と第2対向配置部17とを確実に融着することができる。
【0032】
次に、この発明の第2実施形態における袋体20および袋体20の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態は、上述した第1実施形態の積層フィルム10の融着構造を、袋体20に適用したものであるため、袋体20の断面形状については図1を援用して説明し、さらに第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
図3、図4に示すように、この実施形態における袋体20は、自立可能な底面ガゼットタイプのいわゆるスタンディングパウチタイプのものであって、一対の第1フィルム13および第2フィルム14と、底部を構成するガゼットフィルム15とにより略有底筒状に形成される。
【0033】
第1フィルム13、第2フィルム14、および、ガゼットフィルム15は、第1実施形態と同様に、融着材からなる融着層11と、この融着層11よりも融点が高い基材層12とが積層されて構成される。第1フィルム13と第2フィルム14とは、融着層11が内側となるように対向配置され、底部側を除く周縁部25が互いにヒートシールにより融着されて、主に袋体20の胴部21を構成する。第1フィルム13と第2フィルム14との底部側には、第1フィルム13と第2フィルム14との間に袋体20の底部材となるガゼットフィルム15がヒートシールにより融着される。
【0034】
図2に示すように、袋体20のガゼットフィルム15は、その周縁部の融着層11が第1フィルム13の底部側の周縁部25の融着層11および第2フィルム14の底部側の周縁部25の融着層11にそれぞれ対向するように二つ折りに屈曲形成される。ガゼットフィルム15と第1フィルム13とは、互いの基材層12を外側にして対向配置されて第1対向配置部16を構成し、さらに、ガゼットフィルム15と第2フィルム14とは、互いの基材層12を外側にして対向配置されて第2対向配置部17を構成する。
【0035】
第1対向配置部16と第2対向配置部17とは袋体20の幅方向の両側縁26(図3、図4参照)で、袋体20の厚さ方向に隣接して配置され、この両側縁26では4枚の積層フィルム10が重なっている。第1対向配置部16と第2対向配置部17とには、基材層12の表面12a(図2参照)同士が対向する上記両側縁26に、断続的に形成された複数の切込み18からなる切込み群19が形成され、この切込み群19を構成する切込み18が、正面から見て複数の同心半円形状に配置されている。ここで、正面から見た一つの切込み18の長手方向の長さを0.5mm〜3mm程度、一つの半円を形成する隣り合う切込み18同士の間隔を0.3mm〜1mm程度、一つの切込み群19を構成する各半円の半径差(間隔)を0.5mm〜5mm程度とするのが好ましい。なお、この実施形態では、切込み18が3重の同心半円形状に配置された一例を示したが、3重に限られるものではない。
【0036】
切込み群19を少なくとも含む領域がシーラ(図示せず)によりヒートシールされることで、第1実施形態と同様に、第1対向配置部16の融着層11が溶融されて切込み群19を通じて基材層12の表面12a側に融着材が染み出ると共に、第2対向配置部17の融着層11が溶融されて切込み群19を通じて基材層12の表面側に融着材が染み出て、これら第1対向配置部16側から染み出た融着材11aと第2対向配置部17側から染み出た融着材11aとが融合して、この一体化した融着層11aの温度が低下して冷却固化されることで、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着される。
【0037】
この実施形態の袋体20は上述した構成を備え、次に、この袋体20の製造方法の一例について説明する。なお、この製造方法の説明では、基材層12に対する印刷工程の説明を省略する。
【0038】
まず、ガゼットフィルム15を形成するべく、フィルム状の基材層12と融着層11とを積層した積層フィルム10のロールを製袋機に装填する。
製袋機は、図5に示すように、積層フィルム10を送りながら(図5中、積層フィルム10の送り方向を矢印で示す)、積層フィルム10に順次ピナクル刃を突き刺すことで、帯状の積層フィルム10の両側縁29に、所定の等間隔、且つ、左右対称となる位置に切込み群19を形成する。ここで、所定の等間隔とは、製造する袋体20の幅寸法と略等しい間隔である。
さらに、図6に示すように、切込み群19を形成した積層フィルム10を二つ折り、より具体的には、左右の切込み群19同士が対向配置されるように積層フィルム10の幅方向の略中央の折れ線30に沿って折り曲げてガゼットフィルム15を形成する。
【0039】
次いで、図7に示すように、帯状の第1フィルム13と第2フィルム14との間の一側(底部側)にガゼットフィルム15を挿入する。より具体的には、ガゼットフィルム15の折れ線30とは反対側の側縁31を、第1フィルム13の側縁32及び第2フィルム14の側縁33と重ならせる(図8参照)。そして、この状態で、少なくとも切込み群19を含む領域(図7中、網掛けで示す)をヒートシールして、シール部35を形成する。ここで、シール部35は、切込み群19上で、且つ、第1フィルム13及び第2フィルム14の幅方向に延びる帯状の領域に形成される。なお、シール部35を形成する領域は、切込み群19を含む領域であれば上述した領域に限られるものではない。
【0040】
これにより、第1実施形態と同様に、第1対向配置部16の融着材11aの一部と第2対向配置部17の融着材11aの一部とがそれぞれ切込み18を介して基材層12の表面12a側に染み出して、これら染み出した融着材11a同士が融合されて、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着される。この際、基材層12の表面12a側に染み出た融着材11aは、切込み群19を通じて第1対向配置部16の内部の融着層11と第2対向配置部17との内部の融着層11とにそれぞれ繋がった状態となり、この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分における十分な融着強度が得られる。
【0041】
その後、第1フィルム22、第2フィルム23、および、ガゼットフィルム15の側縁31〜33や、これら側縁31〜33とは反対側の側縁を切断して揃える工程や、帯状のシール部35の幅方向中央(図7中、破線で示す位置)で第1フィルム13および第2フィルム14を切断する工程を行う。これにより、底部にガゼットを有し、底部とは反対側に開口を有する袋体20が完成する。この袋体20は、充填機(図示せず)で内容物が充填されると、袋体20の幅方向中央部が膨らみ、これにより、第1対向配置部16と第2対向配置部17の袋体20の幅方向中央部が袋体20の厚さ方向に離間されて自立可能な状態となる。なお、上述した製造方法の説明では、第1フィルム13と第2フィルム14とをそれぞれ個別のロールで供給する場合について説明したが、一つのロールから供給された積層フィルム10を半折りにして第1フィルム13と第2フィルム14を構成するようにしても良い。
【0042】
したがって、上述した第2実施形態の袋体20によれば、積層フィルム10の切除片や煙などが発生することなしに第1対向配置部16と第2対向配置部17とを融着させることができるため、切除片による袋体20内部への異物混入やシール不良、さらには煙による積層フィルム10の汚れや、煙のにおいの付着を防止することができる。
また、上述した第2実施形態の袋体20の製造方法によれば、積層フィルム10に予め切込み群19を形成してガゼットフィルム15を形成した後に、ガゼットフィルム15を第1フィルム13と第2フィルム14とにヒートシールにより融着して袋体20を形成することができるため、袋体20を形成した後に切込み群19を形成する場合と比較して、複雑な作業が不要になり、容易に第1対向配置部16と第2対向配置部17とを融着させることができる。
【0043】
なお、上述した第2実施形態では、スタンディングパウチタイプの袋体20を一例に説明したが、スタンディングパウチタイプ以外の袋体にも、上述した第1実施形態の融着構造を適用可能である。
以下、上述した第2実施形態の変形例について図面を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態の変形例は、上述した第2実施形態の袋体20と、ガゼット位置などが異なるだけで同様の融着構造を有しているため、同一部分に同一符号を付して説明すると共に、主に切込み群の配置について説明する。
【0044】
図9、図10は、第2実施形態の第1変形例の袋体を示している。この袋体40は、左右両側部にガゼット部41が形成された、いわゆるサイドガゼットパウチである。
袋体40は、一般的なサイドガゼットパウチの構造を有しており、この第1変形例の一例では、積層フィルムである第1フィルム13および第2フィルム14と、これら第1フィルム13の一側縁と第2フィルム14の一側縁との間に設けられる第1ガゼットフィルム15aと、第1フィルム13の他側縁と第2フィルム14の他側縁との間に設けられる第2ガゼットフィルム15bとを備えて構成される。第1ガゼットフィルム15aと第2ガゼットフィルム15bとは、それぞれ袋体40の内側に向かって屈曲形成される。第1フィルム13、第2フィルム14、第1ガゼットフィルム15a、および、第2ガゼットフィルム15bは、基材層12が外側、融着層11が内側とされ、周縁部25がヒートシールされて融着層11同士が融着される。袋体40は、さらに胴部21の底部縁部42がヒートシールにより閉塞され、内容物が充填された後に上部開口部43が同様にヒートシールにより閉塞される。なお、図10中、第1ガゼットフィルム15aおよび第2ガゼットフィルム15bが折り返される折れ線30を破線で示す。
【0045】
ここで、第1変形例の袋体40は、左右にそれぞれ上述した第1対向配置部16および第2対向配置部17を有する。袋体40の一側では、第1ガゼットフィルム15aと第1フィルム13とによって第1対向配置部16が構成され、第1ガゼットフィルム15aと第2フィルム14とによって第2対向配置部17が構成される。同様に、袋体40の他側では、第2ガゼットフィルム15bと第1フィルム13とによって第1対向配置部16が構成され、第2ガゼットフィルム15bと第2フィルム14とによって第2対向配置部17が構成される。
【0046】
袋体40の第1対向配置部16と第2対向配置部17との底部縁部42には、それぞれ上述した第2実施形態と同じ切込み群19が形成される。これら切込み群19は、上述した切込み群19と同様の複数の切込み18が第1ガゼットフィルム15aおよび第2ガゼットフィルム15bの各基材層12から融着層11に到達する深さで形成され、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とが対向配置される。なお、切込み群19の形状は、上述した第2実施形態の切込み群19と同様であり、第2実施形態と同様に切込み群19を含む領域をヒートシールすることで、切込み群19を介して基材層12の表面12a側に融着材が染み出て、これら融着材が融合することで第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着されることとなる。
【0047】
すなわち、上述した第1変形例のように構成することで、サイドガゼットパウチタイプの袋体40においても、上述したスタンディングパウチタイプの袋体20と同様に、積層フィルム10のパンチングによる切除片や昇華した煙などが発生することなしに隣接する第1対向配置部16と第2対向配置部17との基材層12同士を確実に融着することができると共に、第1対向配置部16と第2対向配置部17との底部縁部42側が融着されることでサイドガゼットパウチタイプの袋体40の意匠性の向上を図ることが可能となる。
【0048】
図11、図12は、第2実施形態の第2変形例の袋体50を示している。この袋体50は、上述した第1変形例と同様のサイドガゼットパウチタイプのものに、外部に連通する管路を形成するスパウト51を取り付けたものである。
この袋体50は、その左右両側に、袋体50の幅方向中央に向かって折り込まれるガゼット部41を備え、その上部中央部にスパウト51が取り付けられている。この袋体50は、上述した第1変形例と同様に、第1フィルム13、第2フィルム14、第1ガゼットフィルム15a、および、第2ガゼットフィルム15bの計4枚の積層フィルム10の互いに隣り合う周縁部25の内側の融着層11同士がヒートシールにより融着される。なお、上記スパウト51には、蓋体52が螺合して装着され、この蓋体52が装着された状態で袋体50が密閉状態となる一方、蓋体52が外されている状態では、スパウト51の管路が外部と連通され、袋体50に外部から荷重が加わり、その力に応じて内圧が上昇すると、押圧された力に応じて内容物がスパウト51を介して袋体50の外部へと押し出される。
【0049】
上述した第1変形例の袋体40が、第1対向配置部16と第2対向配置部17との底部縁部42に切込み群19を有していたのに対して、この第2変形例の袋体50は、天部側の縁部53に切込み群19を有している。スパウト51は、天部側の縁部53をヒートシールすることによって取り付けられるが、このスパウト51の取り付けと略同時に切込み群19を含む袋体50の天部側の縁部53がヒートシールされて、これにより袋体50の天部側で、上述した各実施形態と同様に、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着されることとなる。
【0050】
すなわち、上述した第2変形例の袋体50のように構成することで、スパウト51を有する袋体50においても、上述したスタンディングパウチタイプの袋体20と同様に、積層フィルム10のパンチングによる切除片や昇華した煙などが発生することなしに隣接する第1対向配置部16と第2対向配置部17との基材層12同士を確実に融着することができると共に、第1対向配置部16と第2対向配置部17との天部側の縁部53が融着されるため、袋体50の意匠性の向上を図ることが可能となる。
【0051】
次に、この発明の第3実施形態の積層フィルムの融着構造について説明する。なお、この第3実施形態は、上述した第2実施形態における袋体20の切込み群19の形状を変更したものであるため、第1実施形態の図1を援用すると共に、同一部分に同一符号を付して説明する。
この第3実施形態の積層フィルム10は、融着層11と基材層12とが積層されて構成される(図1参照)。図13に示すように、帯状の積層フィルム10の両側縁26,26には、所定の等間隔、且つ、左右対称となる位置に切込み群70,71が形成される。
【0052】
積層フィルム10の一方の側縁には、図14に示すように、積層フィルム10の送り方向(図14中、矢印で示す)と平行な直線部73と、この直線部73に直交する直線部74とからなる正面視で略「+」形状の切込み72を複数有する切込み群70が形成される。さらに、他方の側縁には、「+」形状とは異なる切込み、より具体的には、図15に示すように、「+」を形成する直線部73,74に対する角度が45度程度となる直線部75を有すると共に、この直線部75に対して直交する平行な2本の直線部76,76とからなる切込み77を複数有する(以下、単に「×」形状と称す)切込み群71が形成される。
【0053】
これら切込み72,77は、ピナクル刃などの刃物を突き刺すことで形成される。図14に示すように、「+」形状の切込み72の各直線部73,74の長さa、長さa’は、それぞれ0.5〜3mm程度とするのが好ましく、また、隣り合う切込み72の直線部73同士の間隔b、および、隣り合う切込み72の直線部74同士の間隔b’は、0.3〜1mm程度とするのが好ましい。なお、「+」形状の切込み72を一例に説明したが、「×」形状の切込み77も同様に、直線部75および直線部76の長さを0.5〜3mm程度とし、隣り合う切込み72の直線部75同士の間隔と直線部76同士の間隔を、それぞれ0.3〜1mm程度とするのが好ましい。ここで、上述した切込み72の直線部73,74の両端部には、略Y字状に枝分かれした分岐部79が形成されている。これにより、直線部73,74の延長方向への切込みの拡大を防止することが可能となっている。なお、分岐部79は必要に応じて設ければよく、省略しても良い。また、図示都合上、図15では、切込み77の分岐部を省略しているが切込み77に分岐部79と同様の分岐部を形成しても良い。
【0054】
上述した積層フィルム10を、左右の切込み群70,71が対向配置されるように幅方向の略中央で二つ折りにして、ガゼットフィルム15が形成される。
【0055】
ここで、両側縁26,26にそれぞれ同一形状の切込みを有する切込み群を形成した場合、基材層12の表面12a(図2参照)に沿う位置ズレがなく完全に重なる場合には、対向する各切込みの略全域で染み出た融着材が融合されることとなるが、基材層12の表面12aに沿って若干の位置ズレが生じた場合には、融着材が染み出る箇所が一致しなくなるため融着材同士の融合が十分になされないことが想定される。
【0056】
これに対して、図16に示すように、「×」形状の切込み77と「+」形状の切込み72とのように、異形のものを対向させて当接させた場合、切込み72の直線部73,74および切込み77の直線部75,76が交差する点が多数生じ、同じ形状の切込みを対向させて当接させた場合と比較して、若干の位置ズレが生じた場合であっても、この交差する点の数が減少し難いため、第1対向配置部16から融着材が染み出る地点と第2対向配置部17から融着材がしみ地点とを、多地点で一致させることができ、この結果、必要十分な融着強度を確保することが可能となる。
【0057】
したがって、第3実施形態における積層フィルム10の融着構造によれば、切込み群70,71同士の若干の位置ズレが生じた場合であっても、第1対向配置部16の基材層12表面12a側に染み出た融着材11aと第2対向配置部17の基材層12表面12a側に染み出た融着材11aとを十分に融合させることが可能となるため、第1対向配置部16と第2対向配置部17との若干の位置ズレによる融着強度の低下を抑制することが可能となり、この結果、融着構造の信頼性向上を図ることができる。
【0058】
なお、この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した各実施形態では、第1対向配置部16と第2対向配置部17とを融着する場合について説明したが、3つ以上の対向配置部を重ねて融着するようにしてもよく、この場合、基材層12が対向配置されている箇所に切込み群19や、切込み群70,71を形成して、対向する基材層12の切込み群19(又は切込み群70,71)同士を当接させて、これら切込み群19を含む領域をヒートシールするようにすれば良い。
【0059】
さらに、上述した各実施形態では、ヒートシールにより各積層フィルム10を融着する場合について説明したが、融着層11を溶融可能であればヒートシールに限られず、超音波融着などを用いてもよい。
また、上述した各実施形態では、切込みの形状を略半円状や、「+」形状、「×」形状に形成する一例を説明したが、これらの形状に限られるものではなく、切込み群を配置するスペース等を鑑みて適宜設定するようにすればよい。
【符号の説明】
【0060】
11 融着層
12 基材層
10 積層フィルム
16 第1対向配置部(対向配置部)
17 第2対向配置部(対向配置部)
18 切込み
19 切込み群
51 スパウト(口部材)
70 切込み群
71 切込み群
72 切込み
77 切込み
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材層と融着層とが少なくとも積層された積層フィルムの融着構造、およびこの融着構造を有する袋体、並びに、この袋体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
底面ガゼットを備えるスタンドパウチにあっては、一般に、2枚の胴部フィルムと1枚の底部フィルムとの縁部がそれぞれシールされて形成されるが、底部フィルムが開く状態であると自立不能となるため、底部フィルムを二つ折りしてその左右縁部を融着する必要がある。例えば、胴部フィルムや底部フィルムとして、熱可塑性を有する融着層と、この融着層よりも融点が高く設定される基材層とが積層されて構成されるフィルムを利用した場合、胴部フィルムと底部フィルムとは互いの融着層同士をシールすればよいが、底部フィルムの左右縁部を融着する場合には、融着層が存在しない基材層側で融着する必要がある。
【0003】
そのため従来は、底部フィルムの左右縁部の対向する基材層をパンチング等により部分的に切除して融着層同士を露出させ、これら融着層の露出部分を互いに当接させた状態でヒートシールすることでフィルム同士を融着していた。しかし、パンチング等により基材層を切除する場合、切除片が生じるため、この切除片を回収する必要があり、例えば、回収漏れなどが発生した場合には、切除片が製品内に混入したり、シール部に付着してシール不良が生じて密封性が保てなくなる虞がある。
そこで近年、切除片が生じないように、レーザーマーカーの熱により基材層のみを部分的に昇華させて除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−111419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した基材層のみを昇華させて除去する方法を用いることで切除片は生じないものの、レーザーマーカーの熱によって基材層が昇華する際に煙が発生して、この煙がフィルム内面に付着してしまい、フィルムを汚したり、昇華に伴う煙のにおいがフィルムに吸着されてしまう虞があるという課題がある。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材層と融着層とが少なくとも積層された積層フィルムの基材層側同士を融着する際に、切除片や煙などが発生するのを防止可能な積層フィルムの融着構造、袋体、および袋体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、熱可塑性を有する融着材からなる融着層と該融着層よりも融点が高い基材層とが少なくとも積層された積層フィルムを前記基材層が外側となるように対向配置してなる複数の対向配置部を備え、前記対向配置部同士が融着されてなる積層フィルムの融着構造において、前記対向配置部同士が対向する側の前記基材層には、該基材層から融着層まで到達する切込みを複数有する切込み群が対向配置され、該切込み群の位置でヒートシールされてなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記基材層の表面のうち、少なくとも前記切込み群が形成される部分が粗面であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載の融着構造を有する袋体である。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載の袋体の製造方法であって、前記融着層と前記基材層とが積層された積層フィルムを製造する工程と、前記基材層の前記対向配置部同士が対向する予定箇所に前記切込み群を形成する工程と、前記積層フィルムを前記基材層が外側になるように対向配置して前記対向配置部を形成する工程と、前記切込み群を対向配置させて該切込み群が配置された位置で前記対向配置部をヒートシールする工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明のフィルムの融着構造によれば、対向配置部同士が融着される箇所の基材層に切込み群を設け、切込み群同士を対向配置した状態でヒートシールを行うことで、対向配置部の基材層よりも内側にある融着層が加熱により溶融され、さらにその部分が押圧されることで切込み群を介して基材層の外面に融着層を構成する融着材が染み出て、これら対向する切込み群からそれぞれ染み出た融着材同士が融合一体化されて融着されることとなる。したがって、フィルムの切除片や煙などが発生することなしに隣接する対向配置部同士を確実に融着させることができる。
【0012】
さらに、この発明の袋体によれば、フィルムの切除片や煙などが発生することなしに対向配置部同士を融着させることができるため、切除片による袋体内部への異物混入やシール不良、さらには煙によるフィルムの汚れを防止することができる効果がある。
そして、この発明の袋体の製造方法によれば、フィルムに予め切込み群を形成した後に、フィルムをヒートシールにより融着して袋体を形成することができるため、袋体を形成した後に切込み群を形成する場合と比較して、複雑な作業が不要になり、容易に対向配置部同士を融着させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態における積層フィルムの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における積層フィルムの融着構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における袋体の斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態における袋体の正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるガゼットフィルムの製造工程を示す図であって、積層フィルムに切込み群を形成する工程を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態におけるガゼットフィルムの製造工程を示す図であって、切込み群を形成した積層フィルムを二つ折りにする工程を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における袋体の製造工程を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるヒートシール前の第1フィルム、第2フィルムおよびガゼットフィルムの配置を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の第1変形例における袋体の斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態の第1変形例における袋体の正面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の第2変形例における袋体の斜視図である。
【図12】本発明の第2実施形態の第2変形例における袋体の正面図である。
【図13】本発明の第3実施形態における図5に相当する図である。
【図14】本発明の第3実施形態における一方の切込み群の拡大図である。
【図15】本発明の第3実施形態における他方の切込み群の拡大図である。
【図16】本発明の第3実施形態におけるガゼットフィルムに形成された切込み群の重なりを示す透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この発明の第1実施形態の積層フィルムの融着構造について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、この実施形態の積層フィルム10は、熱可塑性を有する融着材からなる融着層11と該融着層11よりも融点が高い基材層12とが積層された多層構造を有する積層フィルムである。
融着層11は、ヒートシールにより積層フィルム10同士を融着させる機能を有しており、この融着層11を構成する融着材としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。融着層11の厚さは、10μm〜200μmであり、より好ましくは20μm〜100μmである。
【0015】
基材層12は、主に積層フィルム10に機械的な強靱性を持たせる機能を有しており、この基材層12としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、および、ポリアセタールなどの合成樹脂からなるフィルム、又は、これらの合成樹脂を多層共押出ししたフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは無延伸フィルムであってもよく、一軸方向又は二軸方向に延伸した延伸フィルムであっても良い。また、基材層12に用いるフィルムは印刷適正の観点から、一軸方向又は二軸方向に延伸した延伸フィルムを用いることが好ましい。また、基材層12の厚さは、6μm〜50μmであり、より好ましくは9μm〜25μmである。なお、基材層12は1層に限られず、2層以上設けても良い。
【0016】
この実施形態の積層フィルム10の融着構造は、図2に示すように、上述した積層フィルム10からなる、第1フィルム13と、第2フィルム14と、これら第1フィルム13と第2フィルム14との間に設けられるガゼットフィルム15とが互いに融着される。第1フィルムとガゼットフィルム15とは、互いの基材層12が外側となるように対向配置される第1対向配置部16を形成し、同様に、第2フィルム14とガゼットフィルム15とは、互いに基材層12が外側となるように対向配置される第2対向配置部17を形成する。そして、これら第1対向配置部16と、第2対向配置部17とがそれぞれガゼットフィルム15の基材層12の表面を対向させた状態で融着される。なお、この実施形態では、第1対向配置部16および第2対向配置部17を第1フィルム13と、第2フィルム14と、ガゼットフィルム15とにより構成する場合について説明するが、一枚の積層フィルム10を屈曲形成して、基材層12が外側となる二つの対向配置部(第1対向配置部16、および、第2対向配置部17)を形成することも可能である。
【0017】
前記第1対向配置部16と第2対向配置部17とは、互いに対向する基材層12の表面12a側に、基材層12を貫通する複数の切込み18からなる切込み群19を備える。この切込み群19を構成する複数の切込み18は、ピナクル刃、トムソン刃、カッター刃、針などの刃物をガゼットフィルム15の基材層12側に突き刺すことで形成され、第1対向配置部16では、ガゼットフィルム15の基材層12の表面12aから、ガゼットフィルム15の融着層11にまで到達する深さで切込み18が形成され、第2対向配置部17では、ガゼットフィルム15の基材層12の表面12aからガゼットフィルム15の融着層11にまで到達する深さで切込み18が形成される。なお、切込み18の深さは、上記深さに限られるものではなく、切込み18を、例えば、ガゼットフィルム15の基材層12の表面12aから、ガゼットフィルム15の融着層11の途中まで到達する深さに形成するようにしてもよく、ガゼットフィルム15の基材層12の表面12aからガゼットフィルム15の融着層11まで貫通して、第1フィルム13の融着層11や第2フィルム14の融着層11の基材層12側の境界面まで到達する深さに形成していてもよい。
【0018】
ここで、切込み18を形成するための刃物は、基材層12および融着層11がガゼットフィルム15から切り取られてしてしまわないように、突き刺す方向から見た端縁の形状が円形や矩形などの連続する閉じた形状ではなく、断続的に(例えば破線のごとく)形成される。また、切込み群19が形成される箇所の基材層12の表面12aは、上述した切込み18よりも十分に微細な貫通・非貫通の孔を複数散在させて微小な凹凸面を形成した粗面とするのが好ましい。このように切込み群19が形成される箇所の基材層12の表面12aを粗面とすることで、基材層12の強度(例えば、突き刺し強度)を低下させることができるため、ピナクル刃などの刃物による切込み18の形成を安定的に行うことが可能となる。
【0019】
第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とは、互いに当接された状態で、少なくとも切込み群19,19を含む領域がヒートシールされる。このヒートシールによって、第1対向配置部16の切込み群19が形成された箇所では、加熱・押圧されて融着層11を構成する融着材が溶融して切込み18を通じて基材層12の表面12a側に染み出し、同様に、第2対向配置部17の切込み群19が形成された箇所では、融着層11を構成する融着材が溶融されて、その一部が切込みを通じて基材層12の表面12a側に染み出して、これら基材層12の表面12a側に染み出した第1対向配置部16の融着材11aと第2対向配置部17の融着材11aとが融合して、この一体化した融着材11aの温度が低下して冷却固化されることで、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着される。
【0020】
ここで、切込み群19は、切込み18が形成される領域が広く、切込み18が多いほど、より多くの融着材が染み出して融着強度が増加される。つまり、切込み群19の切込み18が形成される領域の広さ、および、切込み18の数は、必要とされる融着強度に応じて設定される(以下、他の実施形態も同様)。また、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とは、互いの切込み18同士の位置が重なるように形成され、これにより融着材が染み出す位置が一致して、融着材同士がより一層一体化され易くなっている。
【0021】
なお、上述した第1実施形態の積層フィルム10は、基材層12と融着層11とが積層される構造である場合について説明したが、気体遮断性、機械的強靱性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等、積層フィルム10に要求される機能に応じて、基材層12と融着層11との間に機能層(図示せず)を設けるようにしても良い。
【0022】
機能層の材質としては、金属箔や各種プラスチックフィルムが挙げられ、金属箔を構成する金属としては、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム等が挙げられる。また、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニル共重合体など、又は、これらのプラスチックフィルムにポリ塩化ビニリデンなどを始めとする気体遮断性を有する樹脂を塗工したもの、若しくはこれらのプラスチックフィルムにアルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの無機物を蒸着した各種蒸着フィルムを用いることができる。機能層の厚さは、6μm〜50μm、より好ましくは6μm〜25μmである。なお、機能層は複数層設けてもよい。
【0023】
さらに、上記機能層を設ける代わりに、基材層12として、蒸着層を設けた蒸着フィルムを用いてもよい。蒸着層としては、例えば、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機物が挙げられる。
基材層12、融着層11、機能層との積層は、ドライラミネート法、押し出しラミネート法、ノンソルベントラミネート法などが挙げられるが、接着強度の面でドライラミネート法を用いるのが好ましい。
【0024】
以下、本発明の実施例について説明する。
<第1実施例>
第1実施例の積層フィルムは、基材層12として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の内側に、機能層として順次、7μmのアルミニウム箔、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン(ONY)を積層し、さらに、機能層の内側に、融着層11として厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を積層した。これら基材層12、機能層、および、融着層11をそれぞれドライラミネートにより接合した。なお、基材層12であるポリエチレンテレフタレートのアルミニウム箔側に印刷を施した。
【0025】
そして、ピナクル刃により基材層12であるポリエチレンテレフタレートから融着層11であるポリエチレンまで到達する複数の切込み18を入れて切込み群19を形成し、ポリエチレンテレフタレートが外側となるように第1対向配置部16と第2対向配置部17とを形成し、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とを対向させて、第1対向配置部16および第2対向配置部17の両外側から、切込み群19を少なくとも含む領域を挟むようにヒートシールした。
この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分において十分な融着強度(0.25〜0.75N/mm2程度)が得られた。
【0026】
<第2実施例>
第2実施例の積層フィルム10は、第1実施例の積層フィルムのアルミニウム箔を、厚さ12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートに置き換えたものである。すなわち、基材層12として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートの内側に、機能層として順次、厚さ12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンを積層し、さらに、機能層の内側に、融着層11として厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレンを積層した。これら基材層12、機能層、および、融着層11をそれぞれドライラミネートにより接合した。なお、基材層12であるポリエチレンテレフタレートのアルミ蒸着面側に印刷を施した。
【0027】
第2実施例の積層フィルムに対して、ピナクル刃により基材層12であるポリエチレンテレフタレートから融着層11であるポリエチレンをまで到達する複数の切込み18を入れて切込み群19を形成し、ポリエチレンテレフタレートが外側となるように第1対向配置部16と第2対向配置部17とを構成し、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とを対向させて、第1対向配置部16および第2対向配置部17の両外側から、切込み群19を少なくとも含む領域を挟むようにヒートシールした。
この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分において十分な融着強度(0.25〜0.75N/mm2程度)が得られた。
【0028】
<第3実施例>
第3実施例の積層フィルムは、順次、基材層12として厚さ12μmの透明蒸着ポリエチレンテレフタレート、機能層として厚さ15μmの二軸延伸ナイロン、融着層11として厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレンの各層をドライラミネートにより接合した。なお、基材層12である透明蒸着ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸ナイロン側に印刷を施した。
この積層フィルムに対して、ピナクル刃により基材層12であるポリエチレンテレフタレートから融着層11であるポリエチレンまで到達する複数の切込み18を入れて切込み群19を形成し、ポリエチレンテレフタレートが外側となるように第1対向配置部16と第2対向配置部17とを構成し、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とを対向させて、第1対向配置部16および第2対向配置部17の両外側から、切込み群19を少なくとも含む領域を挟むようにヒートシールした。
この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分において十分な融着強度(0.25〜0.75N/mm2程度)が得られた。
【0029】
<第4実施例>
第4実施例の積層フィルムは、順次、基材層12として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート、機能層として厚さ15μmのエチレンビニルアルコール(EVOH)、および、厚さ15μmの二軸延伸ナイロン、融着層11として厚さ70μmの直鎖状低密度ポリエチレンをそれぞれ積層して、各層をドライラミネートにより接合した。なお、基材層12であるポリエチレンテレフタレートの機能層側に印刷を施した。
【0030】
この積層フィルムに対して、ピナクル刃により基材層12であるポリエチレンテレフタレートから融着層11であるポリエチレンまで到達する複数の切込み18を入れて切込み群19を形成し、ポリエチレンテレフタレートが外側となるように第1対向配置部16と第2対向配置部17とを構成し、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とを対向させて、第1対向配置部16および第2対向配置部17の両外側から、切込み群19を少なくとも含む領域を挟むようにヒートシールした。
この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分において十分な融着強度(0.25〜0.75N/mm2程度)が得られた。
【0031】
したがって、上述した第1実施形態の積層フィルム10の融着構造によれば、第1対向配置部16と第2対向配置部17とを融着する箇所の基材層12に切込み群19を設け、切込み群19同士を対向配置した状態でヒートシールを行うことで、第1対向配置部16の基材層12よりも内側にある融着層11が溶融され、第1対向配置部16の切込み群19を介して基材層12の表面12a側に融着材11aが染み出るとともに、第2対向配置部17の基材層12よりも内側にある融着層11が溶融され、第2対向配置部17の切込み群19を介して基材層12の表面12a側に融着材11aが染み出るため、これら切込み群19から染み出た融着材11a同士が融合され隣接する第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着される。この結果、積層フィルム10のパンチングによる切除片や昇華した煙などが発生することなしに、隣接する第1対向配置部16と第2対向配置部17とを確実に融着することができる。
【0032】
次に、この発明の第2実施形態における袋体20および袋体20の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態は、上述した第1実施形態の積層フィルム10の融着構造を、袋体20に適用したものであるため、袋体20の断面形状については図1を援用して説明し、さらに第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
図3、図4に示すように、この実施形態における袋体20は、自立可能な底面ガゼットタイプのいわゆるスタンディングパウチタイプのものであって、一対の第1フィルム13および第2フィルム14と、底部を構成するガゼットフィルム15とにより略有底筒状に形成される。
【0033】
第1フィルム13、第2フィルム14、および、ガゼットフィルム15は、第1実施形態と同様に、融着材からなる融着層11と、この融着層11よりも融点が高い基材層12とが積層されて構成される。第1フィルム13と第2フィルム14とは、融着層11が内側となるように対向配置され、底部側を除く周縁部25が互いにヒートシールにより融着されて、主に袋体20の胴部21を構成する。第1フィルム13と第2フィルム14との底部側には、第1フィルム13と第2フィルム14との間に袋体20の底部材となるガゼットフィルム15がヒートシールにより融着される。
【0034】
図2に示すように、袋体20のガゼットフィルム15は、その周縁部の融着層11が第1フィルム13の底部側の周縁部25の融着層11および第2フィルム14の底部側の周縁部25の融着層11にそれぞれ対向するように二つ折りに屈曲形成される。ガゼットフィルム15と第1フィルム13とは、互いの基材層12を外側にして対向配置されて第1対向配置部16を構成し、さらに、ガゼットフィルム15と第2フィルム14とは、互いの基材層12を外側にして対向配置されて第2対向配置部17を構成する。
【0035】
第1対向配置部16と第2対向配置部17とは袋体20の幅方向の両側縁26(図3、図4参照)で、袋体20の厚さ方向に隣接して配置され、この両側縁26では4枚の積層フィルム10が重なっている。第1対向配置部16と第2対向配置部17とには、基材層12の表面12a(図2参照)同士が対向する上記両側縁26に、断続的に形成された複数の切込み18からなる切込み群19が形成され、この切込み群19を構成する切込み18が、正面から見て複数の同心半円形状に配置されている。ここで、正面から見た一つの切込み18の長手方向の長さを0.5mm〜3mm程度、一つの半円を形成する隣り合う切込み18同士の間隔を0.3mm〜1mm程度、一つの切込み群19を構成する各半円の半径差(間隔)を0.5mm〜5mm程度とするのが好ましい。なお、この実施形態では、切込み18が3重の同心半円形状に配置された一例を示したが、3重に限られるものではない。
【0036】
切込み群19を少なくとも含む領域がシーラ(図示せず)によりヒートシールされることで、第1実施形態と同様に、第1対向配置部16の融着層11が溶融されて切込み群19を通じて基材層12の表面12a側に融着材が染み出ると共に、第2対向配置部17の融着層11が溶融されて切込み群19を通じて基材層12の表面側に融着材が染み出て、これら第1対向配置部16側から染み出た融着材11aと第2対向配置部17側から染み出た融着材11aとが融合して、この一体化した融着層11aの温度が低下して冷却固化されることで、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着される。
【0037】
この実施形態の袋体20は上述した構成を備え、次に、この袋体20の製造方法の一例について説明する。なお、この製造方法の説明では、基材層12に対する印刷工程の説明を省略する。
【0038】
まず、ガゼットフィルム15を形成するべく、フィルム状の基材層12と融着層11とを積層した積層フィルム10のロールを製袋機に装填する。
製袋機は、図5に示すように、積層フィルム10を送りながら(図5中、積層フィルム10の送り方向を矢印で示す)、積層フィルム10に順次ピナクル刃を突き刺すことで、帯状の積層フィルム10の両側縁29に、所定の等間隔、且つ、左右対称となる位置に切込み群19を形成する。ここで、所定の等間隔とは、製造する袋体20の幅寸法と略等しい間隔である。
さらに、図6に示すように、切込み群19を形成した積層フィルム10を二つ折り、より具体的には、左右の切込み群19同士が対向配置されるように積層フィルム10の幅方向の略中央の折れ線30に沿って折り曲げてガゼットフィルム15を形成する。
【0039】
次いで、図7に示すように、帯状の第1フィルム13と第2フィルム14との間の一側(底部側)にガゼットフィルム15を挿入する。より具体的には、ガゼットフィルム15の折れ線30とは反対側の側縁31を、第1フィルム13の側縁32及び第2フィルム14の側縁33と重ならせる(図8参照)。そして、この状態で、少なくとも切込み群19を含む領域(図7中、網掛けで示す)をヒートシールして、シール部35を形成する。ここで、シール部35は、切込み群19上で、且つ、第1フィルム13及び第2フィルム14の幅方向に延びる帯状の領域に形成される。なお、シール部35を形成する領域は、切込み群19を含む領域であれば上述した領域に限られるものではない。
【0040】
これにより、第1実施形態と同様に、第1対向配置部16の融着材11aの一部と第2対向配置部17の融着材11aの一部とがそれぞれ切込み18を介して基材層12の表面12a側に染み出して、これら染み出した融着材11a同士が融合されて、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着される。この際、基材層12の表面12a側に染み出た融着材11aは、切込み群19を通じて第1対向配置部16の内部の融着層11と第2対向配置部17との内部の融着層11とにそれぞれ繋がった状態となり、この結果、第1対向配置部16と第2対向配置部17との融着部分における十分な融着強度が得られる。
【0041】
その後、第1フィルム22、第2フィルム23、および、ガゼットフィルム15の側縁31〜33や、これら側縁31〜33とは反対側の側縁を切断して揃える工程や、帯状のシール部35の幅方向中央(図7中、破線で示す位置)で第1フィルム13および第2フィルム14を切断する工程を行う。これにより、底部にガゼットを有し、底部とは反対側に開口を有する袋体20が完成する。この袋体20は、充填機(図示せず)で内容物が充填されると、袋体20の幅方向中央部が膨らみ、これにより、第1対向配置部16と第2対向配置部17の袋体20の幅方向中央部が袋体20の厚さ方向に離間されて自立可能な状態となる。なお、上述した製造方法の説明では、第1フィルム13と第2フィルム14とをそれぞれ個別のロールで供給する場合について説明したが、一つのロールから供給された積層フィルム10を半折りにして第1フィルム13と第2フィルム14を構成するようにしても良い。
【0042】
したがって、上述した第2実施形態の袋体20によれば、積層フィルム10の切除片や煙などが発生することなしに第1対向配置部16と第2対向配置部17とを融着させることができるため、切除片による袋体20内部への異物混入やシール不良、さらには煙による積層フィルム10の汚れや、煙のにおいの付着を防止することができる。
また、上述した第2実施形態の袋体20の製造方法によれば、積層フィルム10に予め切込み群19を形成してガゼットフィルム15を形成した後に、ガゼットフィルム15を第1フィルム13と第2フィルム14とにヒートシールにより融着して袋体20を形成することができるため、袋体20を形成した後に切込み群19を形成する場合と比較して、複雑な作業が不要になり、容易に第1対向配置部16と第2対向配置部17とを融着させることができる。
【0043】
なお、上述した第2実施形態では、スタンディングパウチタイプの袋体20を一例に説明したが、スタンディングパウチタイプ以外の袋体にも、上述した第1実施形態の融着構造を適用可能である。
以下、上述した第2実施形態の変形例について図面を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態の変形例は、上述した第2実施形態の袋体20と、ガゼット位置などが異なるだけで同様の融着構造を有しているため、同一部分に同一符号を付して説明すると共に、主に切込み群の配置について説明する。
【0044】
図9、図10は、第2実施形態の第1変形例の袋体を示している。この袋体40は、左右両側部にガゼット部41が形成された、いわゆるサイドガゼットパウチである。
袋体40は、一般的なサイドガゼットパウチの構造を有しており、この第1変形例の一例では、積層フィルムである第1フィルム13および第2フィルム14と、これら第1フィルム13の一側縁と第2フィルム14の一側縁との間に設けられる第1ガゼットフィルム15aと、第1フィルム13の他側縁と第2フィルム14の他側縁との間に設けられる第2ガゼットフィルム15bとを備えて構成される。第1ガゼットフィルム15aと第2ガゼットフィルム15bとは、それぞれ袋体40の内側に向かって屈曲形成される。第1フィルム13、第2フィルム14、第1ガゼットフィルム15a、および、第2ガゼットフィルム15bは、基材層12が外側、融着層11が内側とされ、周縁部25がヒートシールされて融着層11同士が融着される。袋体40は、さらに胴部21の底部縁部42がヒートシールにより閉塞され、内容物が充填された後に上部開口部43が同様にヒートシールにより閉塞される。なお、図10中、第1ガゼットフィルム15aおよび第2ガゼットフィルム15bが折り返される折れ線30を破線で示す。
【0045】
ここで、第1変形例の袋体40は、左右にそれぞれ上述した第1対向配置部16および第2対向配置部17を有する。袋体40の一側では、第1ガゼットフィルム15aと第1フィルム13とによって第1対向配置部16が構成され、第1ガゼットフィルム15aと第2フィルム14とによって第2対向配置部17が構成される。同様に、袋体40の他側では、第2ガゼットフィルム15bと第1フィルム13とによって第1対向配置部16が構成され、第2ガゼットフィルム15bと第2フィルム14とによって第2対向配置部17が構成される。
【0046】
袋体40の第1対向配置部16と第2対向配置部17との底部縁部42には、それぞれ上述した第2実施形態と同じ切込み群19が形成される。これら切込み群19は、上述した切込み群19と同様の複数の切込み18が第1ガゼットフィルム15aおよび第2ガゼットフィルム15bの各基材層12から融着層11に到達する深さで形成され、第1対向配置部16の切込み群19と第2対向配置部17の切込み群19とが対向配置される。なお、切込み群19の形状は、上述した第2実施形態の切込み群19と同様であり、第2実施形態と同様に切込み群19を含む領域をヒートシールすることで、切込み群19を介して基材層12の表面12a側に融着材が染み出て、これら融着材が融合することで第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着されることとなる。
【0047】
すなわち、上述した第1変形例のように構成することで、サイドガゼットパウチタイプの袋体40においても、上述したスタンディングパウチタイプの袋体20と同様に、積層フィルム10のパンチングによる切除片や昇華した煙などが発生することなしに隣接する第1対向配置部16と第2対向配置部17との基材層12同士を確実に融着することができると共に、第1対向配置部16と第2対向配置部17との底部縁部42側が融着されることでサイドガゼットパウチタイプの袋体40の意匠性の向上を図ることが可能となる。
【0048】
図11、図12は、第2実施形態の第2変形例の袋体50を示している。この袋体50は、上述した第1変形例と同様のサイドガゼットパウチタイプのものに、外部に連通する管路を形成するスパウト51を取り付けたものである。
この袋体50は、その左右両側に、袋体50の幅方向中央に向かって折り込まれるガゼット部41を備え、その上部中央部にスパウト51が取り付けられている。この袋体50は、上述した第1変形例と同様に、第1フィルム13、第2フィルム14、第1ガゼットフィルム15a、および、第2ガゼットフィルム15bの計4枚の積層フィルム10の互いに隣り合う周縁部25の内側の融着層11同士がヒートシールにより融着される。なお、上記スパウト51には、蓋体52が螺合して装着され、この蓋体52が装着された状態で袋体50が密閉状態となる一方、蓋体52が外されている状態では、スパウト51の管路が外部と連通され、袋体50に外部から荷重が加わり、その力に応じて内圧が上昇すると、押圧された力に応じて内容物がスパウト51を介して袋体50の外部へと押し出される。
【0049】
上述した第1変形例の袋体40が、第1対向配置部16と第2対向配置部17との底部縁部42に切込み群19を有していたのに対して、この第2変形例の袋体50は、天部側の縁部53に切込み群19を有している。スパウト51は、天部側の縁部53をヒートシールすることによって取り付けられるが、このスパウト51の取り付けと略同時に切込み群19を含む袋体50の天部側の縁部53がヒートシールされて、これにより袋体50の天部側で、上述した各実施形態と同様に、第1対向配置部16と第2対向配置部17とが融着されることとなる。
【0050】
すなわち、上述した第2変形例の袋体50のように構成することで、スパウト51を有する袋体50においても、上述したスタンディングパウチタイプの袋体20と同様に、積層フィルム10のパンチングによる切除片や昇華した煙などが発生することなしに隣接する第1対向配置部16と第2対向配置部17との基材層12同士を確実に融着することができると共に、第1対向配置部16と第2対向配置部17との天部側の縁部53が融着されるため、袋体50の意匠性の向上を図ることが可能となる。
【0051】
次に、この発明の第3実施形態の積層フィルムの融着構造について説明する。なお、この第3実施形態は、上述した第2実施形態における袋体20の切込み群19の形状を変更したものであるため、第1実施形態の図1を援用すると共に、同一部分に同一符号を付して説明する。
この第3実施形態の積層フィルム10は、融着層11と基材層12とが積層されて構成される(図1参照)。図13に示すように、帯状の積層フィルム10の両側縁26,26には、所定の等間隔、且つ、左右対称となる位置に切込み群70,71が形成される。
【0052】
積層フィルム10の一方の側縁には、図14に示すように、積層フィルム10の送り方向(図14中、矢印で示す)と平行な直線部73と、この直線部73に直交する直線部74とからなる正面視で略「+」形状の切込み72を複数有する切込み群70が形成される。さらに、他方の側縁には、「+」形状とは異なる切込み、より具体的には、図15に示すように、「+」を形成する直線部73,74に対する角度が45度程度となる直線部75を有すると共に、この直線部75に対して直交する平行な2本の直線部76,76とからなる切込み77を複数有する(以下、単に「×」形状と称す)切込み群71が形成される。
【0053】
これら切込み72,77は、ピナクル刃などの刃物を突き刺すことで形成される。図14に示すように、「+」形状の切込み72の各直線部73,74の長さa、長さa’は、それぞれ0.5〜3mm程度とするのが好ましく、また、隣り合う切込み72の直線部73同士の間隔b、および、隣り合う切込み72の直線部74同士の間隔b’は、0.3〜1mm程度とするのが好ましい。なお、「+」形状の切込み72を一例に説明したが、「×」形状の切込み77も同様に、直線部75および直線部76の長さを0.5〜3mm程度とし、隣り合う切込み72の直線部75同士の間隔と直線部76同士の間隔を、それぞれ0.3〜1mm程度とするのが好ましい。ここで、上述した切込み72の直線部73,74の両端部には、略Y字状に枝分かれした分岐部79が形成されている。これにより、直線部73,74の延長方向への切込みの拡大を防止することが可能となっている。なお、分岐部79は必要に応じて設ければよく、省略しても良い。また、図示都合上、図15では、切込み77の分岐部を省略しているが切込み77に分岐部79と同様の分岐部を形成しても良い。
【0054】
上述した積層フィルム10を、左右の切込み群70,71が対向配置されるように幅方向の略中央で二つ折りにして、ガゼットフィルム15が形成される。
【0055】
ここで、両側縁26,26にそれぞれ同一形状の切込みを有する切込み群を形成した場合、基材層12の表面12a(図2参照)に沿う位置ズレがなく完全に重なる場合には、対向する各切込みの略全域で染み出た融着材が融合されることとなるが、基材層12の表面12aに沿って若干の位置ズレが生じた場合には、融着材が染み出る箇所が一致しなくなるため融着材同士の融合が十分になされないことが想定される。
【0056】
これに対して、図16に示すように、「×」形状の切込み77と「+」形状の切込み72とのように、異形のものを対向させて当接させた場合、切込み72の直線部73,74および切込み77の直線部75,76が交差する点が多数生じ、同じ形状の切込みを対向させて当接させた場合と比較して、若干の位置ズレが生じた場合であっても、この交差する点の数が減少し難いため、第1対向配置部16から融着材が染み出る地点と第2対向配置部17から融着材がしみ地点とを、多地点で一致させることができ、この結果、必要十分な融着強度を確保することが可能となる。
【0057】
したがって、第3実施形態における積層フィルム10の融着構造によれば、切込み群70,71同士の若干の位置ズレが生じた場合であっても、第1対向配置部16の基材層12表面12a側に染み出た融着材11aと第2対向配置部17の基材層12表面12a側に染み出た融着材11aとを十分に融合させることが可能となるため、第1対向配置部16と第2対向配置部17との若干の位置ズレによる融着強度の低下を抑制することが可能となり、この結果、融着構造の信頼性向上を図ることができる。
【0058】
なお、この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した各実施形態では、第1対向配置部16と第2対向配置部17とを融着する場合について説明したが、3つ以上の対向配置部を重ねて融着するようにしてもよく、この場合、基材層12が対向配置されている箇所に切込み群19や、切込み群70,71を形成して、対向する基材層12の切込み群19(又は切込み群70,71)同士を当接させて、これら切込み群19を含む領域をヒートシールするようにすれば良い。
【0059】
さらに、上述した各実施形態では、ヒートシールにより各積層フィルム10を融着する場合について説明したが、融着層11を溶融可能であればヒートシールに限られず、超音波融着などを用いてもよい。
また、上述した各実施形態では、切込みの形状を略半円状や、「+」形状、「×」形状に形成する一例を説明したが、これらの形状に限られるものではなく、切込み群を配置するスペース等を鑑みて適宜設定するようにすればよい。
【符号の説明】
【0060】
11 融着層
12 基材層
10 積層フィルム
16 第1対向配置部(対向配置部)
17 第2対向配置部(対向配置部)
18 切込み
19 切込み群
51 スパウト(口部材)
70 切込み群
71 切込み群
72 切込み
77 切込み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性を有する融着材からなる融着層と該融着層よりも融点が高い基材層とが少なくとも積層された積層フィルムを前記基材層が外側となるように対向配置してなる複数の対向配置部を備え、前記対向配置部同士が融着されてなる積層フィルムの融着構造において、
前記対向配置部同士が対向する側の前記基材層には、該基材層から融着層まで到達する切込みを複数有する切込み群が対向配置され、該切込み群の位置でヒートシールされてなることを特徴とする積層フィルムの融着構造。
【請求項2】
前記基材層の表面のうち、少なくとも前記切込み群が形成される部分が粗面である請求項1に記載の積層フィルムの融着構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の融着構造を有する袋体。
【請求項4】
請求項3に記載の袋体の製造方法であって、
前記融着層と前記基材層とが積層された積層フィルムを製造する工程と、
前記基材層の前記対向配置部同士が対向する予定箇所に前記切込み群を形成する工程と、
前記積層フィルムを前記基材層が外側になるように対向配置して前記対向配置部を形成する工程と、
前記切込み群を対向配置させて該切込み群が配置された位置で前記対向配置部をヒートシールする工程とを備えることを特徴とする袋体の製造方法。
【請求項1】
熱可塑性を有する融着材からなる融着層と該融着層よりも融点が高い基材層とが少なくとも積層された積層フィルムを前記基材層が外側となるように対向配置してなる複数の対向配置部を備え、前記対向配置部同士が融着されてなる積層フィルムの融着構造において、
前記対向配置部同士が対向する側の前記基材層には、該基材層から融着層まで到達する切込みを複数有する切込み群が対向配置され、該切込み群の位置でヒートシールされてなることを特徴とする積層フィルムの融着構造。
【請求項2】
前記基材層の表面のうち、少なくとも前記切込み群が形成される部分が粗面である請求項1に記載の積層フィルムの融着構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の融着構造を有する袋体。
【請求項4】
請求項3に記載の袋体の製造方法であって、
前記融着層と前記基材層とが積層された積層フィルムを製造する工程と、
前記基材層の前記対向配置部同士が対向する予定箇所に前記切込み群を形成する工程と、
前記積層フィルムを前記基材層が外側になるように対向配置して前記対向配置部を形成する工程と、
前記切込み群を対向配置させて該切込み群が配置された位置で前記対向配置部をヒートシールする工程とを備えることを特徴とする袋体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−153403(P2012−153403A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14079(P2011−14079)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]