積層フィルムの製造方法
【課題】 本発明は、樹脂フィルムと透明フィルムを接着剤を介して貼り合わせる際に、金属異物の混入を防止することができる積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、樹脂フィルムと透明フィルムを、接着剤を介して一対のロール間を通過させて貼り合わせる積層フィルムの製造方法に関し、ロールのフィルム搬入口に設けられ、かつ樹脂フィルムと透明フィルムの間に設けられた接着剤溜まりに磁石を設けることを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、樹脂フィルムと透明フィルムを、接着剤を介して一対のロール間を通過させて貼り合わせる積層フィルムの製造方法に関し、ロールのフィルム搬入口に設けられ、かつ樹脂フィルムと透明フィルムの間に設けられた接着剤溜まりに磁石を設けることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に透明フィルムを接着層を介して貼り合わせる積層フィルムの製造方法に関する。
【０００２】
本発明の製造方法は、各種積層フィルムの製造に適用でき、例えば、樹脂フィルムとして偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて偏光板を製造する方法において好適に用いることができる。その他、食品、医療機器などの包装に用いられる積層フィルムの製造において適用できる。
【背景技術】
【０００３】
液晶表示装置（ＬＣＤ）は、卓上電子計算機、電子時計、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、自動車及び機械の計器類等に広く用いられている。このような液晶表示装置は、通常、液晶の配向変化を可視化させるための偏光板を備えており、この偏光板は、液晶表示装置の表示特性に大きな影響を与える重要な部材である。
【０００４】
前記偏光板としては、一般に、ヨウ素又は有機染料等の二色性物質を吸着配向させたポリビニルアルコール系偏光フィルムの片面又は両面に、トリアセチルセルロース等の透明保護フィルムを積層したものが用いられている。
【０００５】
このような偏光板の製造方法としては、例えば、偏光子の両面に透明保護フィルムを配置し、偏光子と透明保護フィルムとの間に接着剤を供給しながら一対のロール間を通過させ、圧着して積層する方法が挙げられる。
【０００６】
近年、偏光板が使用される液晶表示装置の高品位化に伴い、従来の偏光板と比べてより外観欠陥が少なく、より表示特性に優れる偏光板の開発が望まれている。
【０００７】
しかし、従来の偏光板の製造方法は、貼り合せ時に微小な異物が混入しやすいという問題があった。
【０００８】
異物を除去する方法として、以下の技術が提案されている。
【０００９】
特許文献１では、単板の表面の異物を除去する方法であって、単板の搬送方向に沿って順にブラシ、及び吸入口を単板の搬送路に配置した吸入装置と磁石（吸着装置）とからなる異物除去装置を設け、前記ブラシで単板表面の異物をかき取ったのち、前記異物除去装置で異物を除去する方法が提案されている。
【００１０】
特許文献２では、圧延機のロール表面に磁石を接近させ、ロール表面の金属粉を磁力により磁石に吸引することによりロール表面を清浄に保つことを特徴とするロール表面の異物付着防止方法が提案されている。
【００１１】
特許文献３では、保護フィルム表面の異物を取り除くために、偏光フィルムと積層させる直前に保護フィルムを水洗する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１２】
【特許文献１】特開昭６３−１５８１８０号公報
【特許文献２】特開平４−１２３８０５号公報
【特許文献３】特開２００９−１８１０４６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１３】
本発明は、樹脂フィルムと透明フィルムを接着剤を介して貼り合わせる際に、金属異物の混入を抑制することができる積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討したところ、以下に示す積層フィルムの製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【００１５】
本発明は、樹脂フィルムと透明フィルムを、接着剤を介して一対のロール間を通過させて貼り合わせる積層フィルムの製造方法において、
ロールのフィルム搬入口に設けられ、かつ樹脂フィルムと透明フィルムの間に設けられた接着剤溜まりに磁石を設けることを特徴とする積層フィルムの製造方法、に関する。
【００１６】
本発明の積層フィルムの製造方法において、樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、透明フィルムは、透明保護フィルムであることが好ましい。
【００１７】
また、ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、水分率が１０〜３５重量％であることが好ましい。偏光フィルムの水分率は、低い方が乾燥工程において乾燥効率が高くなるので生産性の面で好ましい。しかし、水分率が１０重量％未満になると、偏光フィルムの剛性が高くなるため、スジ状の凹凸ムラなどのダメージを受けやすくなったり、偏光フィルムと透明保護フィルムの間に気泡が発生しやすくなる。また、偏光フィルムと透明保護フィルムとが剥がれやすくなる。一方、水分率が３５重量％を超えると、長時間の乾燥時間が必要になるため過大な乾燥設備が必要になったり、生産性が低下するため好ましくない。
【００１８】
また、本発明は、前記製造方法により得られる偏光板、前記偏光板が少なくとも１枚積層されている光学フィルム、前記偏光板または前記光学フィルムを含む画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【００１９】
樹脂フィルムと透明フィルムを接着剤を介して貼り合わせる際に、ロールのフィルム搬入口に設けられ、かつ樹脂フィルムと透明フィルムの間に設けられた接着剤溜まりに磁石を設けておくことにより、接着剤に含まれる金属異物を磁石により吸着除去することができる。本発明の製造方法によると、ラミネート時に樹脂フィルムと透明フィルムの間に金属異物が混入することがなく、外観良好な積層フィルムが得られる。特に、本発明の製造方法は、偏光板を製造する場合に好適である。当該偏光板を用いると、表示特性に優れた液晶表示装置（ＬＣＤ）、エレクトロルミネッセンス表示装置（ＥＬＤ）等の画像表示装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明の積層フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【００２１】
以下に本発明の積層フィルムの製造方法を、図面を参照しながら説明する。図１は、本発明の積層フィルムの製造方法の一例である。詳しくは、樹脂フィルム１及び透明フィルム２を搬送しつつ、これらフィルムを貼り合せる直前に、一対のロール３のフィルム搬入口に設けられた接着剤溜まり４を通過させることにより、樹脂フィルム１と透明フィルム２との間に接着剤の液層を形成し、その状態でロール３間を通過させて圧着し、接着剤を硬化させることにより積層フィルム５を製造する。
【００２２】
図１の積層フィルム５は、樹脂フィルム１の両面に透明フィルム２が貼り合わされた態様であるが、樹脂フィルム１の片面にのみ透明フィルム２が貼り合わされた態様であってもよい。また、樹脂フィルム１の両面に透明フィルム２を貼り合せる方法としては、ロール３間に樹脂フィルム１を搬送するとともにその両面に透明フィルム２を搬送して透明フィルム２を同時に貼り合せる同時ラミネート法であってもよく、又はロール３間に樹脂フィルム１を搬送するとともにその片面に透明フィルム２を搬送して貼り合わせた後、次いで、樹脂フィルム１の他の片面に透明フィルム２を搬送して貼り合せる逐次ラミネート法であってもよい。
【００２３】
本発明の製造方法は、接着剤溜まり４に磁石６を設けることを特徴としている。接着剤溜まり４に磁石６を設けておくことにより、接着剤に混入した微小な金属異物を磁石６により吸着除去することができる。
【００２４】
磁石６は公知のものを特に制限なく使用することができる。磁石６の形状も特に制限されず、例えば、球状、立方体状、円柱状、四角柱状、多角柱状などが挙げられる。
【００２５】
磁石６はロール３に巻き込まれない状態で接着剤溜まり４中に保持されていればよく、その設置方法は特に制限されないが、例えば、吊り下げる方法、保持具を用いて固定する方法などが挙げられる。また、金属異物の除去効率の観点から、磁石６は接着剤溜まりの幅方向全体に設けておくことが好ましい。
【００２６】
フィルムの搬送速度は特に制限されず、通常、２ｍ／分〜５０ｍ／分程度である。
【００２７】
また、貼り合わせるときのロール間のラミネート圧力は特に制限されず、適宜設定される。ラミネート圧力は、調整のしやすさ、積層フィルムの生産性等の観点から、好ましくは２〜５ＭＰａであり、より好ましくは３〜４ＭＰａである。ラミネート圧力が２ＭＰａより小さいと十分な押圧ができないためフィルム間に気泡が発生する。ラミネート圧力が５ＭＰａより大きいとロールや装置への負荷がかかり過ぎるため破損の原因となる。ラミネート圧力の測定は、富士写真フイルム社製の感圧紙「プレスケール」を用いて、当該感圧紙の色変化をコンピュータ画像処理により二値化し、その発色面積と濃度について作製された圧力標準線の近似式から求められる。
【００２８】
本発明の積層フィルムの製造方法に用いる樹脂フィルムは、公知のものを特に制限なく使用できる。また、透明フィルムも公知のものを特に制限なく使用できる。透明フィルムを樹脂フィルムの両面に設ける場合、２枚の透明フィルムの材料は同じものあってもよく、異なるものであってもよい。
【００２９】
以下、樹脂フィルムとして偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用い、接着剤を介してこれらを貼り合わせて偏光板を製造する場合について述べる。
【００３０】
偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）系フィルム等のポリマーフィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色して一軸延伸したものが通常用いられる。このような偏光フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、５〜８０μｍ程度、好ましくは５〜４０μｍ、より好ましくは１５〜３５μｍである。偏光フィルムの厚さが薄すぎるとラミネート時にダメージを受けやすくなる。一方、厚すぎると乾燥効率が悪くなるため生産性に劣る。
【００３１】
偏光フィルムを形成するポリマーフィルムとしては、特に限定されることなく各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）系フィルム、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルム、これらの部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム、ＰＶＡの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ヨウ素等の二色性物質による染色性に優れることから、ＰＶＡ系フィルムを用いることが好ましい。
【００３２】
前記ポリマーフィルムの材料であるポリマーの重合度は、一般に５００〜１００００であり、１０００〜６０００の範囲であることが好ましく、１４００〜４０００の範囲にあることがより好ましい。さらに、ケン化フィルムの場合、そのケン化度は、例えば、水への溶解性の点から、７５モル％以上が好ましく、より好ましくは９８モル％以上であり、９８．３〜９９．８モル％の範囲にあることがより好ましい。
【００３３】
前記ポリマーフィルムとしてＰＶＡ系フィルムを用いる場合、ＰＶＡ系フィルムの製法としては、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等任意の方法で成膜されたものを適宜使用することができる。このときの位相差値は、５ｎｍ〜１００ｎｍのものが好ましく用いられる。また、面内均一な偏光フィルムを得るために、ＰＶＡ系フィルム面内の位相差バラツキはできるだけ小さい方が好ましく、ＰＶＡ系フィルムの面内位相差バラツキは、測定波長１０００ｎｍにおいて１０ｎｍ以下であることが好ましく、５ｎｍ以下であることがより好ましい。
【００３４】
偏光フィルムと透明保護フィルムを貼り合わせる際の偏光フィルムの水分率は特に限定されるものではないが、１０〜３５重量％であることが好ましく、より好ましくは１５〜２５重量％である。偏光フィルムの水分率は、一般に偏光フィルム製造工程中の乾燥処理の条件により調整できるが、必要に応じて別途調湿処理工程を設け、水浴中への浸漬や水滴の噴霧または、再度の加熱乾燥や減圧乾燥を施しても良い。
【００３５】
透明保護フィルムは、偏光フィルムの保護を目的とするため、透明性、機械的強度、熱安定性、等方性等に優れるものが好ましい。透明保護フィルムの厚みは一般に１〜３００μｍ程度であり、好ましくは２０〜２００μｍであり、より好ましくは３０〜１００μｍである。透明保護フィルムの厚みが厚くなりすぎると乾燥効率が低下して生産性が低下するため、２００μｍ以下であることが好ましい。また、偏光特性や耐久性および接着特性向上等の点より、透明保護フィルム表面をコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理により表面改質処理を行ってもよい。これら表面改質処理のなかでも、アルカリなどでケン化処理することが好ましい。
【００３６】
透明保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体（ＡＳ樹脂）等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物などが挙げられる。透明保護フィルムには任意の適切な添加剤が１種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。
【００３７】
透明保護フィルムの形成材料としては、セルロース樹脂（ポリマー）、ポリカーボネート樹脂（ポリマー）、環状ポリオレフィン樹脂（シクロ系又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン）、及び（メタ）アクリル樹脂から選ばれる少なくとも１つを用いるのが好ましい。
【００３８】
偏光フィルムと透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤又はラジカル硬化型接着剤が好適である。
【００３９】
接着層が水系接着剤等により形成される場合には、接着層の厚みは、３０〜３００ｎｍであるのが好ましく、より好ましくは６０〜２５０ｎｍである。一方、接着層が硬化型接着剤により形成される場合には、接着層の厚みは、０．１〜２００μｍであるのが好ましく、より好ましくは０．５〜５０μｍであり、さらに好ましくは０．５〜１０μｍである。
【００４０】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板（１／２や１／４等の波長板を含む）、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を１層または２層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【００４１】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【００４２】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばＴＮ型やＳＴＮ型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【００４３】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に１層又は２層以上配置することができる。
【実施例】
【００４４】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。
【００４５】
（偏光フィルムの水分率測定方法）
得られた偏光フィルムから、１８０ｍｍ×５００ｍｍのサンプルを切り出し、その初期重量（Ｗ（ｇ））を測定した。そのサンプルを１２０℃の乾燥機内で２時間放置した後、乾燥後重量（Ｄ（ｇ））を測定した。これらの測定値より、下記式により水分率を求めた。
水分率（％）＝｛（Ｗ−Ｄ）／Ｗ｝×１００
【００４６】
製造例１
（偏光フィルムの作製）
厚さ７５μｍのポリビニルアルコールフィルム（（株）クラレ製：ＶＦ−ＰＳ７５００，幅２５００ｍｍ）を用いて、３０℃の純水中に６０秒間浸漬しながら延伸倍率２．５倍まで延伸し、３０℃のヨウ素水溶液（重量比：純水／ヨウ素（Ｉ）／ヨウ化カリウム（ＫＩ）＝１００／０．０１／１）中で４５秒間染色し、４重量％ホウ酸水溶液中で延伸倍率が５．８倍になるように延伸し、純水中に１０秒間浸漬した後、フィルムの張力を保ったまま４０℃で３分間乾燥して偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの幅は１２５０ｍｍ、厚さは２５μｍ、水分率は２５重量％であった。
【００４７】
製造例２
（透明保護フィルムの作製）
アクリル系樹脂として、三菱レイヨン（株）製「アクリペットＶＨ」（Ｔｇ＝１１３℃）を使用し、以下の方法にて透明保護フィルムを作製した。
アクリペットＶＨを１００℃にて真空乾燥し、水分および溶存酸素を脱気した。当該アクリペットＶＨ１００重量部にアクリルゴム（日本ゼオン社製、ＡＲ１２）３０重量部を添加した混合物を、原料ホッパーから押出機までを窒素置換した、東芝機械製の二軸押出機「ＴＥＭ３５Ｂ」に供給して、シリンダセット温度２３０〜２７０℃で溶融し、ペレタイジングして原料ペレットを得た。
原料ペレットを１００℃にて真空乾燥し、原料ホッパーから押出機までを窒素置換した東芝機械製の単軸押出機「ＳＥ−６５」に供給して、シリンダセット温度２３０〜２７０℃で溶融し、コートハンガータイプのＴダイを通過させ、１２０℃のクロムメッキ製キャスティングロールおよび９０℃の冷却クロムメッキ製キャスティングロールにて冷却したのち、フィルム巻取り装置にて透明保護フィルム（幅１３００ｍｍ、厚さ３０μｍ）を作製した。
【００４８】
製造例３
（接着剤の調製）
ＰＶＡ樹脂（日本合成化学工業（株）製：ゴセノール）１００重量部、及び架橋剤（大日本インキ化学工業（株）製：ウォーターゾール）３５重量部を純水３７６０重量部に溶解して接着剤を調製した。
【００４９】
実施例１
（偏光板の作製）
図１に示すように、一対のロール間に前記偏光フィルムを搬送するとともにその両面に前記透明保護フィルムを搬送し、これらフィルムを貼り合せる直前に、ロールのフィルム搬入口に設けられた前記接着剤の液溜まりを通過させることにより、偏光フィルムと透明保護フィルムとの間に接着剤の液層を形成し、その状態でロール間を通過させて圧着した。その後、８０℃で２分間加熱乾燥することにより接着剤を硬化させて偏光板を作製した。なお、サマリウムコバルト磁石（有限会社マグネットプラン社製）を、２枚の透明保護フィルムの両端位置の接着剤溜まり中にそれぞれ１個ずつ（合計４個）設けた。
【００５０】
実施例２
前記サマリウムコバルト磁石を、２枚の透明保護フィルムの両端位置及び中央位置の接着剤溜まり中にそれぞれ１個ずつ（合計６個）設けた以外は実施例１と同様の方法で偏光板を作製した。
【００５１】
実施例３
前記サマリウムコバルト磁石を、２枚の透明保護フィルムの一端から他端まで等間隔で５か所の位置の接着剤溜まり中にそれぞれ１個ずつ（合計１０個）設けた以外は実施例１と同様の方法で偏光板を作製した。
【００５２】
比較例１
接着剤溜まり中に磁石を設けなかった以外は実施例１と同様の方法で偏光板を作製した。
【００５３】
実施例および比較例で作製した偏光板について下記評価を行った。
【００５４】
（金属異物の測定）
得られた偏光板から１０００ｍｍ×１０ｍのサンプルを切り出し、偏光フィルムと透明保護フィルムとの間の金属異物の数を確認した。その結果は以下のとおりである。
実施例１：６個
実施例２：３個
実施例３：１個
比較例１：２０個
【産業上の利用可能性】
【００５５】
本発明の製造方法は、各種積層フィルムの製造に適用でき、例えば、樹脂フィルムとして偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて偏光板を製造する方法において好適に用いることができる。その他、食品、医療機器などの包装に用いられる積層フィルムの製造において適用できる。
【符号の説明】
【００５６】
１：樹脂フィルム
２：透明フィルム
３：ロール
４：接着剤溜まり
５：積層フィルム
６：磁石
【技術分野】
【０００１】
本発明は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に透明フィルムを接着層を介して貼り合わせる積層フィルムの製造方法に関する。
【０００２】
本発明の製造方法は、各種積層フィルムの製造に適用でき、例えば、樹脂フィルムとして偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて偏光板を製造する方法において好適に用いることができる。その他、食品、医療機器などの包装に用いられる積層フィルムの製造において適用できる。
【背景技術】
【０００３】
液晶表示装置（ＬＣＤ）は、卓上電子計算機、電子時計、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、自動車及び機械の計器類等に広く用いられている。このような液晶表示装置は、通常、液晶の配向変化を可視化させるための偏光板を備えており、この偏光板は、液晶表示装置の表示特性に大きな影響を与える重要な部材である。
【０００４】
前記偏光板としては、一般に、ヨウ素又は有機染料等の二色性物質を吸着配向させたポリビニルアルコール系偏光フィルムの片面又は両面に、トリアセチルセルロース等の透明保護フィルムを積層したものが用いられている。
【０００５】
このような偏光板の製造方法としては、例えば、偏光子の両面に透明保護フィルムを配置し、偏光子と透明保護フィルムとの間に接着剤を供給しながら一対のロール間を通過させ、圧着して積層する方法が挙げられる。
【０００６】
近年、偏光板が使用される液晶表示装置の高品位化に伴い、従来の偏光板と比べてより外観欠陥が少なく、より表示特性に優れる偏光板の開発が望まれている。
【０００７】
しかし、従来の偏光板の製造方法は、貼り合せ時に微小な異物が混入しやすいという問題があった。
【０００８】
異物を除去する方法として、以下の技術が提案されている。
【０００９】
特許文献１では、単板の表面の異物を除去する方法であって、単板の搬送方向に沿って順にブラシ、及び吸入口を単板の搬送路に配置した吸入装置と磁石（吸着装置）とからなる異物除去装置を設け、前記ブラシで単板表面の異物をかき取ったのち、前記異物除去装置で異物を除去する方法が提案されている。
【００１０】
特許文献２では、圧延機のロール表面に磁石を接近させ、ロール表面の金属粉を磁力により磁石に吸引することによりロール表面を清浄に保つことを特徴とするロール表面の異物付着防止方法が提案されている。
【００１１】
特許文献３では、保護フィルム表面の異物を取り除くために、偏光フィルムと積層させる直前に保護フィルムを水洗する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１２】
【特許文献１】特開昭６３−１５８１８０号公報
【特許文献２】特開平４−１２３８０５号公報
【特許文献３】特開２００９−１８１０４６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１３】
本発明は、樹脂フィルムと透明フィルムを接着剤を介して貼り合わせる際に、金属異物の混入を抑制することができる積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１４】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討したところ、以下に示す積層フィルムの製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【００１５】
本発明は、樹脂フィルムと透明フィルムを、接着剤を介して一対のロール間を通過させて貼り合わせる積層フィルムの製造方法において、
ロールのフィルム搬入口に設けられ、かつ樹脂フィルムと透明フィルムの間に設けられた接着剤溜まりに磁石を設けることを特徴とする積層フィルムの製造方法、に関する。
【００１６】
本発明の積層フィルムの製造方法において、樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、透明フィルムは、透明保護フィルムであることが好ましい。
【００１７】
また、ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、水分率が１０〜３５重量％であることが好ましい。偏光フィルムの水分率は、低い方が乾燥工程において乾燥効率が高くなるので生産性の面で好ましい。しかし、水分率が１０重量％未満になると、偏光フィルムの剛性が高くなるため、スジ状の凹凸ムラなどのダメージを受けやすくなったり、偏光フィルムと透明保護フィルムの間に気泡が発生しやすくなる。また、偏光フィルムと透明保護フィルムとが剥がれやすくなる。一方、水分率が３５重量％を超えると、長時間の乾燥時間が必要になるため過大な乾燥設備が必要になったり、生産性が低下するため好ましくない。
【００１８】
また、本発明は、前記製造方法により得られる偏光板、前記偏光板が少なくとも１枚積層されている光学フィルム、前記偏光板または前記光学フィルムを含む画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【００１９】
樹脂フィルムと透明フィルムを接着剤を介して貼り合わせる際に、ロールのフィルム搬入口に設けられ、かつ樹脂フィルムと透明フィルムの間に設けられた接着剤溜まりに磁石を設けておくことにより、接着剤に含まれる金属異物を磁石により吸着除去することができる。本発明の製造方法によると、ラミネート時に樹脂フィルムと透明フィルムの間に金属異物が混入することがなく、外観良好な積層フィルムが得られる。特に、本発明の製造方法は、偏光板を製造する場合に好適である。当該偏光板を用いると、表示特性に優れた液晶表示装置（ＬＣＤ）、エレクトロルミネッセンス表示装置（ＥＬＤ）等の画像表示装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明の積層フィルムの製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【００２１】
以下に本発明の積層フィルムの製造方法を、図面を参照しながら説明する。図１は、本発明の積層フィルムの製造方法の一例である。詳しくは、樹脂フィルム１及び透明フィルム２を搬送しつつ、これらフィルムを貼り合せる直前に、一対のロール３のフィルム搬入口に設けられた接着剤溜まり４を通過させることにより、樹脂フィルム１と透明フィルム２との間に接着剤の液層を形成し、その状態でロール３間を通過させて圧着し、接着剤を硬化させることにより積層フィルム５を製造する。
【００２２】
図１の積層フィルム５は、樹脂フィルム１の両面に透明フィルム２が貼り合わされた態様であるが、樹脂フィルム１の片面にのみ透明フィルム２が貼り合わされた態様であってもよい。また、樹脂フィルム１の両面に透明フィルム２を貼り合せる方法としては、ロール３間に樹脂フィルム１を搬送するとともにその両面に透明フィルム２を搬送して透明フィルム２を同時に貼り合せる同時ラミネート法であってもよく、又はロール３間に樹脂フィルム１を搬送するとともにその片面に透明フィルム２を搬送して貼り合わせた後、次いで、樹脂フィルム１の他の片面に透明フィルム２を搬送して貼り合せる逐次ラミネート法であってもよい。
【００２３】
本発明の製造方法は、接着剤溜まり４に磁石６を設けることを特徴としている。接着剤溜まり４に磁石６を設けておくことにより、接着剤に混入した微小な金属異物を磁石６により吸着除去することができる。
【００２４】
磁石６は公知のものを特に制限なく使用することができる。磁石６の形状も特に制限されず、例えば、球状、立方体状、円柱状、四角柱状、多角柱状などが挙げられる。
【００２５】
磁石６はロール３に巻き込まれない状態で接着剤溜まり４中に保持されていればよく、その設置方法は特に制限されないが、例えば、吊り下げる方法、保持具を用いて固定する方法などが挙げられる。また、金属異物の除去効率の観点から、磁石６は接着剤溜まりの幅方向全体に設けておくことが好ましい。
【００２６】
フィルムの搬送速度は特に制限されず、通常、２ｍ／分〜５０ｍ／分程度である。
【００２７】
また、貼り合わせるときのロール間のラミネート圧力は特に制限されず、適宜設定される。ラミネート圧力は、調整のしやすさ、積層フィルムの生産性等の観点から、好ましくは２〜５ＭＰａであり、より好ましくは３〜４ＭＰａである。ラミネート圧力が２ＭＰａより小さいと十分な押圧ができないためフィルム間に気泡が発生する。ラミネート圧力が５ＭＰａより大きいとロールや装置への負荷がかかり過ぎるため破損の原因となる。ラミネート圧力の測定は、富士写真フイルム社製の感圧紙「プレスケール」を用いて、当該感圧紙の色変化をコンピュータ画像処理により二値化し、その発色面積と濃度について作製された圧力標準線の近似式から求められる。
【００２８】
本発明の積層フィルムの製造方法に用いる樹脂フィルムは、公知のものを特に制限なく使用できる。また、透明フィルムも公知のものを特に制限なく使用できる。透明フィルムを樹脂フィルムの両面に設ける場合、２枚の透明フィルムの材料は同じものあってもよく、異なるものであってもよい。
【００２９】
以下、樹脂フィルムとして偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用い、接着剤を介してこれらを貼り合わせて偏光板を製造する場合について述べる。
【００３０】
偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）系フィルム等のポリマーフィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色して一軸延伸したものが通常用いられる。このような偏光フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、５〜８０μｍ程度、好ましくは５〜４０μｍ、より好ましくは１５〜３５μｍである。偏光フィルムの厚さが薄すぎるとラミネート時にダメージを受けやすくなる。一方、厚すぎると乾燥効率が悪くなるため生産性に劣る。
【００３１】
偏光フィルムを形成するポリマーフィルムとしては、特に限定されることなく各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）系フィルム、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルム、これらの部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム、ＰＶＡの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ヨウ素等の二色性物質による染色性に優れることから、ＰＶＡ系フィルムを用いることが好ましい。
【００３２】
前記ポリマーフィルムの材料であるポリマーの重合度は、一般に５００〜１００００であり、１０００〜６０００の範囲であることが好ましく、１４００〜４０００の範囲にあることがより好ましい。さらに、ケン化フィルムの場合、そのケン化度は、例えば、水への溶解性の点から、７５モル％以上が好ましく、より好ましくは９８モル％以上であり、９８．３〜９９．８モル％の範囲にあることがより好ましい。
【００３３】
前記ポリマーフィルムとしてＰＶＡ系フィルムを用いる場合、ＰＶＡ系フィルムの製法としては、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等任意の方法で成膜されたものを適宜使用することができる。このときの位相差値は、５ｎｍ〜１００ｎｍのものが好ましく用いられる。また、面内均一な偏光フィルムを得るために、ＰＶＡ系フィルム面内の位相差バラツキはできるだけ小さい方が好ましく、ＰＶＡ系フィルムの面内位相差バラツキは、測定波長１０００ｎｍにおいて１０ｎｍ以下であることが好ましく、５ｎｍ以下であることがより好ましい。
【００３４】
偏光フィルムと透明保護フィルムを貼り合わせる際の偏光フィルムの水分率は特に限定されるものではないが、１０〜３５重量％であることが好ましく、より好ましくは１５〜２５重量％である。偏光フィルムの水分率は、一般に偏光フィルム製造工程中の乾燥処理の条件により調整できるが、必要に応じて別途調湿処理工程を設け、水浴中への浸漬や水滴の噴霧または、再度の加熱乾燥や減圧乾燥を施しても良い。
【００３５】
透明保護フィルムは、偏光フィルムの保護を目的とするため、透明性、機械的強度、熱安定性、等方性等に優れるものが好ましい。透明保護フィルムの厚みは一般に１〜３００μｍ程度であり、好ましくは２０〜２００μｍであり、より好ましくは３０〜１００μｍである。透明保護フィルムの厚みが厚くなりすぎると乾燥効率が低下して生産性が低下するため、２００μｍ以下であることが好ましい。また、偏光特性や耐久性および接着特性向上等の点より、透明保護フィルム表面をコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理により表面改質処理を行ってもよい。これら表面改質処理のなかでも、アルカリなどでケン化処理することが好ましい。
【００３６】
透明保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体（ＡＳ樹脂）等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーのブレンド物などが挙げられる。透明保護フィルムには任意の適切な添加剤が１種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。
【００３７】
透明保護フィルムの形成材料としては、セルロース樹脂（ポリマー）、ポリカーボネート樹脂（ポリマー）、環状ポリオレフィン樹脂（シクロ系又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン）、及び（メタ）アクリル樹脂から選ばれる少なくとも１つを用いるのが好ましい。
【００３８】
偏光フィルムと透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤又はラジカル硬化型接着剤が好適である。
【００３９】
接着層が水系接着剤等により形成される場合には、接着層の厚みは、３０〜３００ｎｍであるのが好ましく、より好ましくは６０〜２５０ｎｍである。一方、接着層が硬化型接着剤により形成される場合には、接着層の厚みは、０．１〜２００μｍであるのが好ましく、より好ましくは０．５〜５０μｍであり、さらに好ましくは０．５〜１０μｍである。
【００４０】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板（１／２や１／４等の波長板を含む）、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を１層または２層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【００４１】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【００４２】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばＴＮ型やＳＴＮ型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【００４３】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に１層又は２層以上配置することができる。
【実施例】
【００４４】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。
【００４５】
（偏光フィルムの水分率測定方法）
得られた偏光フィルムから、１８０ｍｍ×５００ｍｍのサンプルを切り出し、その初期重量（Ｗ（ｇ））を測定した。そのサンプルを１２０℃の乾燥機内で２時間放置した後、乾燥後重量（Ｄ（ｇ））を測定した。これらの測定値より、下記式により水分率を求めた。
水分率（％）＝｛（Ｗ−Ｄ）／Ｗ｝×１００
【００４６】
製造例１
（偏光フィルムの作製）
厚さ７５μｍのポリビニルアルコールフィルム（（株）クラレ製：ＶＦ−ＰＳ７５００，幅２５００ｍｍ）を用いて、３０℃の純水中に６０秒間浸漬しながら延伸倍率２．５倍まで延伸し、３０℃のヨウ素水溶液（重量比：純水／ヨウ素（Ｉ）／ヨウ化カリウム（ＫＩ）＝１００／０．０１／１）中で４５秒間染色し、４重量％ホウ酸水溶液中で延伸倍率が５．８倍になるように延伸し、純水中に１０秒間浸漬した後、フィルムの張力を保ったまま４０℃で３分間乾燥して偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの幅は１２５０ｍｍ、厚さは２５μｍ、水分率は２５重量％であった。
【００４７】
製造例２
（透明保護フィルムの作製）
アクリル系樹脂として、三菱レイヨン（株）製「アクリペットＶＨ」（Ｔｇ＝１１３℃）を使用し、以下の方法にて透明保護フィルムを作製した。
アクリペットＶＨを１００℃にて真空乾燥し、水分および溶存酸素を脱気した。当該アクリペットＶＨ１００重量部にアクリルゴム（日本ゼオン社製、ＡＲ１２）３０重量部を添加した混合物を、原料ホッパーから押出機までを窒素置換した、東芝機械製の二軸押出機「ＴＥＭ３５Ｂ」に供給して、シリンダセット温度２３０〜２７０℃で溶融し、ペレタイジングして原料ペレットを得た。
原料ペレットを１００℃にて真空乾燥し、原料ホッパーから押出機までを窒素置換した東芝機械製の単軸押出機「ＳＥ−６５」に供給して、シリンダセット温度２３０〜２７０℃で溶融し、コートハンガータイプのＴダイを通過させ、１２０℃のクロムメッキ製キャスティングロールおよび９０℃の冷却クロムメッキ製キャスティングロールにて冷却したのち、フィルム巻取り装置にて透明保護フィルム（幅１３００ｍｍ、厚さ３０μｍ）を作製した。
【００４８】
製造例３
（接着剤の調製）
ＰＶＡ樹脂（日本合成化学工業（株）製：ゴセノール）１００重量部、及び架橋剤（大日本インキ化学工業（株）製：ウォーターゾール）３５重量部を純水３７６０重量部に溶解して接着剤を調製した。
【００４９】
実施例１
（偏光板の作製）
図１に示すように、一対のロール間に前記偏光フィルムを搬送するとともにその両面に前記透明保護フィルムを搬送し、これらフィルムを貼り合せる直前に、ロールのフィルム搬入口に設けられた前記接着剤の液溜まりを通過させることにより、偏光フィルムと透明保護フィルムとの間に接着剤の液層を形成し、その状態でロール間を通過させて圧着した。その後、８０℃で２分間加熱乾燥することにより接着剤を硬化させて偏光板を作製した。なお、サマリウムコバルト磁石（有限会社マグネットプラン社製）を、２枚の透明保護フィルムの両端位置の接着剤溜まり中にそれぞれ１個ずつ（合計４個）設けた。
【００５０】
実施例２
前記サマリウムコバルト磁石を、２枚の透明保護フィルムの両端位置及び中央位置の接着剤溜まり中にそれぞれ１個ずつ（合計６個）設けた以外は実施例１と同様の方法で偏光板を作製した。
【００５１】
実施例３
前記サマリウムコバルト磁石を、２枚の透明保護フィルムの一端から他端まで等間隔で５か所の位置の接着剤溜まり中にそれぞれ１個ずつ（合計１０個）設けた以外は実施例１と同様の方法で偏光板を作製した。
【００５２】
比較例１
接着剤溜まり中に磁石を設けなかった以外は実施例１と同様の方法で偏光板を作製した。
【００５３】
実施例および比較例で作製した偏光板について下記評価を行った。
【００５４】
（金属異物の測定）
得られた偏光板から１０００ｍｍ×１０ｍのサンプルを切り出し、偏光フィルムと透明保護フィルムとの間の金属異物の数を確認した。その結果は以下のとおりである。
実施例１：６個
実施例２：３個
実施例３：１個
比較例１：２０個
【産業上の利用可能性】
【００５５】
本発明の製造方法は、各種積層フィルムの製造に適用でき、例えば、樹脂フィルムとして偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて偏光板を製造する方法において好適に用いることができる。その他、食品、医療機器などの包装に用いられる積層フィルムの製造において適用できる。
【符号の説明】
【００５６】
１：樹脂フィルム
２：透明フィルム
３：ロール
４：接着剤溜まり
５：積層フィルム
６：磁石
【特許請求の範囲】
【請求項１】
樹脂フィルムと透明フィルムを、接着剤を介して一対のロール間を通過させて貼り合わせる積層フィルムの製造方法において、
ロールのフィルム搬入口に設けられ、かつ樹脂フィルムと透明フィルムの間に設けられた接着剤溜まりに磁石を設けることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項２】
樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、透明フィルムは、透明保護フィルムである請求項１記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項３】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、水分率が１０〜３５重量％である請求項２記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項４】
請求項２又は３記載の製造方法により得られる偏光板。
【請求項５】
請求項４記載の偏光板が少なくとも１枚積層されている光学フィルム。
【請求項６】
請求項４記載の偏光板または請求項５記載の光学フィルムを含む画像表示装置。
【請求項１】
樹脂フィルムと透明フィルムを、接着剤を介して一対のロール間を通過させて貼り合わせる積層フィルムの製造方法において、
ロールのフィルム搬入口に設けられ、かつ樹脂フィルムと透明フィルムの間に設けられた接着剤溜まりに磁石を設けることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項２】
樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、透明フィルムは、透明保護フィルムである請求項１記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項３】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、水分率が１０〜３５重量％である請求項２記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項４】
請求項２又は３記載の製造方法により得られる偏光板。
【請求項５】
請求項４記載の偏光板が少なくとも１枚積層されている光学フィルム。
【請求項６】
請求項４記載の偏光板または請求項５記載の光学フィルムを含む画像表示装置。
【図１】
【公開番号】特開２０１２−２２８８２０（Ｐ２０１２−２２８８２０Ａ）
【公開日】平成２４年１１月２２日（２０１２．１１．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−９８３６３（Ｐ２０１１−９８３６３）
【出願日】平成２３年４月２６日（２０１１．４．２６）
【出願人】（０００００３９６４）日東電工株式会社 (5,557)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１１月２２日（２０１２．１１．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年４月２６日（２０１１．４．２６）
【出願人】（０００００３９６４）日東電工株式会社 (5,557)
【Ｆターム（参考）】
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