説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】加工性および高湿熱環境下での接着性に優れる積層ポリエステルフィルム。
【解決手段】ポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面に易接着層を有する積層ポリエステルフィルムであって、前記易接着層は、ポリエステル系グラフト共重合体と、ポリカーボネート系ポリウレタンを含み、前記ポリエステル系グラフト共重合体が、疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体がグラフトされたものであり、且つ易接着層のガラス転移点(Tig)が30℃〜55℃である、積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着層を有するポリエステルフィルムに関する。特に、加工性と耐湿熱性に優れた用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、機械的性質、透明性、寸法安定性等の優れた特性を有することから、印刷層を設けた加飾フィルムやハードコートフィルム、反射防止フィルム、光拡散シート、レンズシート、近赤外線遮断フィルム、透明導電性フィルム、防眩フィルムなどの光学機能性フィルムのベースフィルムとして使用されている。
【0003】
しかしながら、配向ポリエステルフィルムの表面は高度に結晶配向されているため、各種機能層との接着性が乏しい等の欠点を有している。特に、フィルムの後加工では各種鋳型ロールへの追従が要求されたり、また銘板やメンブランスイッチなどの用途によっては曲面加工やエンボス、刻印などの加工が施される場合がある。この時、基材フィルムと被覆物(ハードコートなどの機能層)との接着性が乏しいと、界面で剥離し製品外観を損なうことになる。そのため、従来からポリエステルフィルム表面に種々の方法により接着性を付与する検討がなされてきた。
【0004】
一方、ポリエステルフィルムの接着性を改良する方法として、これまで種々の提案がされている。例えば、特許文献1では、共重合ポリエステルを、特許文献2では、共重合ポリエステルと水溶性ポリウレタン樹脂を易接着層として利用する方法が検討されている。また、特許文献3では傷付き防止のためにガラス転移点が40〜100℃のポリエステル樹脂と架橋剤を含む易接着層を有する光学用易接着ポリエステルフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−30475号公報
【特許文献2】特開2005−290354号公報
【特許文献3】特開2003−49011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LCD、PDP等のディスプレイや、ハードコートフィルムを部材とする携帯用機器などは、屋内、屋外を問わず種々の環境で用いられる。特に、携帯用機器では、高い透明性以外にも、浴室、高温多湿地域などにも耐えうる耐湿熱性が要求される場合がある。すなわち、このような用途に使用される積層フィルムでは、高温高湿下でも高い密着性が求められるのである。
【0007】
一般に、塗膜自体の耐湿熱性を向上させるためには、塗膜の架橋度を高くし、ガラス転移点の高い易接着層を形成する方法が行われる。しかしながら、このような高い架橋度を有する易接着層は、塗膜が硬質で成型追従性が低下するため、成型などの後加工により、結果として湿熱環境下での接着性が低下する場合がある。
【0008】
これに対して、ガラス転移点が低い易接着層を積層すると成形性が向上し、加工後においても初期接着性は向上する。しかし、塗膜自体の耐湿熱性が低下しやすい傾向にあるため、湿熱環境下の印刷層との接着性が低下する。このため、前記加工に耐えうる柔軟性を有し、耐湿熱性を有する積層ポリエステルフィルムを得ることは極めて困難であった。
【0009】
本発明の目的は、前記課題を解決することにある。すなわち、易接着層の柔軟性と耐湿熱性という二律背反する特性を高度に両立させることで、湿熱環境下での接着性や加工性に優れる積層ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決することができる、本発明の積層ポリエステルフィルムは以下
の構成からなる。
第1の発明は、ポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面に易接着層を有する積層ポリエステルフィルムであって、前記易接着層は、ポリエステル系グラフト共重合体と、ポリカーボネート系ポリウレタンを含み、前記ポリエステル系グラフト共重合体が、疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体がグラフトされたものであり、且つ易接着層のガラス転移点(Tig)が30℃〜55℃である、積層ポリエステルフィルムである。
第2の発明は、前記易接着層における、ポリエステル系グラフト共重合体とポリカーボネート系ポリウレタンの配合割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリカーボネート系ポリウレタン(質量比)=80/20〜30/70であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリカーボネート系ポリウレタンの合計量100質量部に対して5〜40質量部の架橋剤を含む前記積層ポリエステルフィルムである。
第3の発明は、前記架橋剤がブロックイソシアネート系架橋剤であることを特徴とする前記積層ポリエステルフィルムである。
第4の発明は、前記ブロックイソシアネート系架橋剤の再生イソシアネート基含有量が3.0〜15.0質量%である前記積層ポリエステルフィルムである。
第5の発明は、前記基材フィルムがA層/B層/A層の積層構造であり、A層に無機粒子を含有し、B層には実質的に粒子を含有しない前記積層ポリエステルフィルムである。
第6の発明は、ヘーズが3.0%以下である前記積層ポリエステルフィルムである。
第7の発明は、25℃で65%RHにおける前記易接着層表面の表面固有抵抗値が1×10〜1013Ω/□である前記積層ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、特定の樹脂構成と特定のガラス転移点とを有する易接着層が積層されている。よって、良好な加工性と、耐湿熱環境下においても良好な接着性を有する。そのため、ハードコート層、印刷層などの機能層を積層するベースフィルムとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(易接着層)
本発明の易接着層について詳細に述べる。
本発明者は、易接着層の柔軟性と耐湿熱性という二律背反する特性を如何に両立すべきか、鋭意検討を行った。その結果、これまで易接着層の柔軟性を規定する指標としてガラス転移点を制御することが考えられていたが、同じガラス転移温度を有するものであっても、易接着層を構成する樹脂組成の構造により耐湿熱性が変化することに着眼し、本発明に至ったものである。すなわち、本発明の易接着層は後述するポリエステル系グラフト共重合体と、ポリカーボネート系ポリウレタンを含み、且つ易接着層のガラス転移点(Tig)が30℃〜55℃であることを特徴とする。
【0013】
本発明の易接着層のガラス転移点(Tig)の下限は30℃、好ましくは35℃、上限は55℃、好ましくは50℃である。易接着層のガラス転移点(Tig)が35℃未満では十分な耐湿熱性が得られない場合があり、さらに耐ブロッキング性も低下する。易接着層のガラス転移点(Tig)が55℃を越えると易接着層の柔軟性が低下する傾向にあり、成形などの後加工処理後の耐湿熱接着性が低下する場合がある。耐湿熱性と成型性の両立を図るためには、易接着層のガラス転移点(Tig)をこのように極狭い特定の範囲に設定することが望ましい。ポリエステル成分、及びポリウレタン成分がそれぞれ前記範囲内のガラス転移点(Tig)であっても、架橋剤と共に、製膜工程で、架橋構造を有する易接着層を積層した場合、ガラス転移点(Tig)は38℃を越える場合があり、十分な成形性や耐湿熱環境下での接着性が得られない。架橋構造を有していてもガラス転移点(Tig)を維持するためには、適度な架橋剤の配合量、ポリウレタンの配合量とポリエステル系グラフト共重合体配合量及び、疎水性共重合性ポリエステル樹脂と重合性不飽和単量体との質量比率を後述する範囲にすることで達成できる。
【0014】
なお、本発明で言うガラス転移点とは製膜工程で易接着層として積層された状態、すなわち、ポリエステル系グラフト共重合体と、ポリカーボネート系ポリウレタンが架橋剤で架橋された状態でのJIS−K7121に準拠した方法で測定した補外ガラス転移開始温度(Tig)を意味する。
【0015】
(ポリエステル系グラフト共重合体)
本発明では前述のように易接着層にポリエステル系グラフト共重合体を含有する。ポリエステル系グラフト共重合体は基材フィルム及び機能層との接着性を付与させるために必要である。ポリエステル系グラフト共重合体は、高度な自己架橋構造を形成することができるため耐湿熱性に良好な効果を奏し、さらに、ポリエステル系グラフト共重合体は、基材フィルムと易接着層の接着性を向上させることができる。ポリエステル系グラフト共重合体を含まないと微小な易接着層の剥がれが発生しやすくなり、結果として印刷層や機能層の欠け等が発生しやすくなるだけでなく、耐湿熱環境下での接着性の低下をきたす。本発明で用いるポリエステル系グラフト共重合体は、易接着層の耐湿熱性の点から、疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体がグラフトされたものを用いる。以下、本発明に用いるポリエステル系グラフト共重合体について説明する。
【0016】
易接着層中に含まれるポリエステル系グラフト共重合体は、基材フィルムと易接着層の接着性を付与させるため、易接着層の固形分全体に対して、5〜90質量%の範囲で配合することが好ましく、より好ましくは30〜80質量%である。
【0017】
本発明において「グラフト化」とは、幹ポリマー主鎖に、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することである。本発明では、疎水性共重合性ポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤を使用して少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体を反応せしめることによりグラフト重合を行うことが好ましい。グラフト化反応終了後の反応生成物は、所望の疎水性共重合性ポリエステルと重合性不飽和単量体とのグラフト共重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性共重合性ポリエステル樹脂及び疎水性共重合性ポリエステルにグラフト化しなかった上記不飽和単量体の重合体をも含有している。本発明におけるポリエステル系グラフト共重合体とは、上記したポリエステル系グラフト共重合体ばかりではなく、これに未反応の疎水性共重合性ポリエステル、グラフト化しなかった不飽和単量体の重合体等も含む反応混合物もいう。
【0018】
本発明において、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に重合性不飽和単量体をグラフト重合させて得られるポリエステル系グラフト共重合体の酸価は、600eq/10g以上であることが好ましい。より好ましくは、1200eq/10g以上である。グラフト共重合体の酸価が600eq/10g未満である場合は、基材フィルムとの接着性が十分とは言えなくなる。
【0019】
また、本発明の目的に適合する望ましいグラフト共重合体を得るための、疎水性共重合性ポリエステル樹脂と重合性不飽和単量体との質量比率は、ポリエステル/重合性不飽和単量体=40/60〜95/5の範囲が望ましく、更に望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。疎水性共重合性ポリエステル樹脂の質量比率が40質量%未満であると、得られた易接着層のガラス転移点(Tig)が高くなり、成形時の追従性が低下し、耐湿熱環境下での接着性が低下する場合がある。一方、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の質量比率が95質量%より大きいときは、ブロッキングが起こりやすくなる。
【0020】
グラフト共重合体は、有機溶媒の溶液または分散液、あるいは水系溶媒の溶液または分散液の形態になる。特に水系溶媒の分散液、つまり水分散樹脂の形態が、作業環境、塗布性の点で好ましい。このような水分散樹脂は、通常、有機溶媒中で、前記疎水性共重合性ポリエステル樹脂に、少なくとも1種の親水性の重合性不飽和単量体をグラフト重合し、次いで、水添加、有機溶媒留去により得ることができる。
【0021】
グラフト共重合体のガラス転移点(Tig)は、70℃以下、好ましくは50℃以下である。ガラス転移点(Tig)が70℃以下のグラフト共重合体をグラフト共重合体含有層に用いることにより、印刷層積層後の成形加工時の追従性がよく、耐湿熱環境下においても優れた印刷層の接着性が得られやすい。
【0022】
(疎水性共重合性ポリエステル樹脂)
本発明において、疎水性共重合性ポリエステル樹脂とは、本来それ自身で水に分散または溶解しない本質的に水不溶性であるものである。水に分散するまたは溶解するポリエステル樹脂を、グラフト重合に使用すると、本発明の目的である耐湿熱環境下での接着性が悪くなる。この疎水性共重合性ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分の組成は、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸0.5〜10モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が60モル%未満である場合や脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が40モル%を越えた場合は、印刷層や機能層との接着性が低下する。
【0023】
また、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、疎水性共重合性ポリエステル樹脂に対する重合性不飽和単量体の効率的なグラフト化が行われにくくなり、逆に10モル%を越える場合は、グラフト化反応により粘度が上昇し、反応の均一な進行を妨げるので好ましくない。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸は70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸2〜7モル%である。
【0024】
芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等を挙げることができる。5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の親水基含有ジカルボン酸は、本発明の目的である耐ブロッキング性が低下するので、用いない方が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等を挙げることができる。重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸の例としては、α、β−不飽和ジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等を挙げることができる。このうち好ましいのは、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸である。
【0025】
一方、グリコール成分は、炭素数2〜10の脂肪族グリコールおよび/または炭素数6〜12の脂環族グリコールおよび/またはエーテル結合含有グリコール等が挙げられる。炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等を挙げることができる。炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0026】
エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基に、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要により使用しうる。
【0027】
疎水性共重合性ポリエステル樹脂中には、0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合することができるが、3官能以上のポリカルボン酸としては、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)等が使用される。一方、3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用される。3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、全酸成分あるいは全グリコール成分に対し0〜5モル%、望ましくは0〜3モル%の範囲で共重合されるが、5モル%を越えると重合時のゲル化が起こりやすく、好ましくない。また、疎水性共重合性ポリエステル樹脂の分子量は、重量平均で5000〜50000の範囲が好ましい。分子量が5000未満の場合は接着性の低下する場合があり、逆に50000を越えると重合時のゲル化等の問題が起きる場合がある。
【0028】
(ポリエステル系グラフト共重合体のグラフト部位)
疎水性共重合性ポリエステル樹脂にグラフトさせる重合性不飽和単量体とは、親水性のラジカル重合性単量体をいい、親水基を有するか、後で親水基に変化できる基をもつラジカル重合可能な単量体である。親水基として、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基等を挙げることができる。一方、親水基に変化できる基として、酸無水物基、グリシジル基、クロル基等を挙げることができる。これらの基の中でも水分散性、グラフト共重合体の酸価を上げる点から、カルボキシル基が好ましい。したがって、重合性不飽和単量体として二重結合を有する酸無水物を少なくとも1種含むことが望ましい。
【0029】
重合性不飽和単量体としては、例えば、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸のモノエステルまたはジエステル;マレイン酸とその無水物、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸のモノエステルまたはジエステル;イタコン酸とその無水物、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル;フェニルマレイミド等のマレイミド等;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等である。また重合性不飽和単量体の一つであるアクリル重合性単量体は、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等):2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのヒドロキシ含有アクリル単量体:アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドのアミド基含有アクリル単量体:N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートのアミノ基含有アクリル単量体:グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのエポキシ基含有アクリル単量体:アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等のカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル単量体が挙げられる。しかし、アクリル重合性単量体は、本発明の表面エネルギー水素結合力成分項(γsh)を低下させる効果が少ないので本発明で用いるのはあまり好ましくない。上記重合性不飽和単量体は、1種もしくは2種以上を用いて共重合させることができるが、二重結合を有する酸無水物を少なくとも1種含むことが望ましい。上記単量体の中でも、二重結合を有する酸無水物としてはマレイン酸無水物を用いることが好ましい。マレイン酸無水物と組み合わせる他の重合性不飽和単量体としては、スチレンが好ましい。また、これら酸無水物のエステルを含んでも良い。
【0030】
(重合開始剤およびその他添加剤)
本発明で用い得るグラフト重合開始剤としては、当業者には公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類を用い得る。有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、有機アゾ化合物として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を挙げることができる。グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、重合性不飽和単量体に対して少なくとも0.2質量%、好ましくは0.5質量%以上である。重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えばオクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール等を必要に応じて用い得る。この場合、重合性不飽和単量体に対して0〜5質量%の範囲で添加されるのが望ましい。
【0031】
共重合ポリエステルは、塗工性の点から水溶性もしくは水分散性を有することが好ましい。このような共重合ポリエステルとしては、スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基が結合した共重合ポリエステル(以下、スルホン酸基含有共重合ポリエステルという)を用いるのが好ましい。
【0032】
ここでスルホン酸基含有共重合ポリエステルとは、ジカルボン酸成分又はグリコール成分の一部にスルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基が結合したポリエステルをいい、なかでも、スルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有した芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分に対して2〜10モル%の割合で用いて調整した共重合ポリエステルが好ましい。
【0033】
このようなジカルボン酸の例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が好適である。この場合、他のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0034】
なお、表面硬度を高くし、良好な耐ブロッキング性を維持するためには、全酸性分中の96〜90モル%をテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とすることが好ましく、これらの芳香族ジカルボン酸の4〜10モル%を前記のスルホン酸基又はそのアルカリ金属塩基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含有させることがさらに好ましい。
【0035】
スルホン酸基含有共重合ポリエステルを製造するためのグリコール成分としては、エチレングリコールが主として用いられ、この他に、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を共重合成分として用いると、ポリスチレンスルホン酸塩との相溶性が向上するという点で好ましい。
【0036】
この他、共重合ポリエステルの共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分、グリコール成分を含んでも良い。さらに、得られる塗膜の表面硬度を向上させるために、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多カルボキシル基含有モノマーを5モル%以下の割合で上記ポリエステルの共重合成分として用いることも可能である。これらの多カルボキシル基含有モノマーが5モル%を越える場合には、得られるスルホン酸基含有共重合ポリエステルが熱的に不安定となり、ゲル化しやすく好ましくない。
【0037】
スルホン酸基含有共重合ポリエステルは、例えば、前記ジカルボン酸成分、グリコール成分、及び必要に応じて、多カルボキシル基含有モノマーを用いて、常法により、エステル化、エステル交換、重縮合反応等により得ることができる。得られたスルホン酸基含有共重合ポリエステルは、例えば、n−ブチルセロソルブのような溶媒とともに加熱攪拌され、さらに攪拌しながら徐々に水を加えることにより、水溶液又は水分散液として用いることができる。
【0038】
(ポリカーボネート系ポリウレタン)
本発明において、ポリウレタンは易接着層の柔軟性を付与し、優れた成形性のために添加される。しかしながら、ポリウレタンによる柔軟性が増すと、さらに加温条件下の高速加工での耐ブロッキング性や耐湿熱性が低下する場合がある。そのため、本発明においては、ポリウレタンとしてポリカーボネート系ポリウレタンを用いることを特徴とする。
【0039】
ポリウレタンには大きくポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンに分類されるがポリエステル系ポリウレタンは湿熱環境下で加水分解しやすく、ポリエーテル系ポリウレタンは吸湿性が高いため易接着層の膜強度が低下しやすく接着性が不足する。一方、ポリカーボネート系ポリウレタンは、ハードセグメントとしてポリカーボネート構造を有するため、優れた耐湿熱性を有する。本発明でポリカーボネート系ポリウレタンを用いるのはこの理由による。
【0040】
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネートジオールと脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートと、必要に応じて鎖延長剤を添加した重合物を用いることができる。なお、これらウレタンの構成成分は、核磁気共鳴分析などにより特定することが可能である。
【0041】
ポリカーボネートジオールは、下記一般式で示されるものである。
【0042】
HO−[−R−O−COO−]−R−OH
(Rは脂肪族系、または脂環族系置換基)
【0043】
ポリカーボネートジオールは、例えばアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物とジオール類及び/またはポリエーテルポリオール類を反応させて得られる。
【0044】
アルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等があげられる。
【0045】
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、フェニル−ナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチル−ジフェニルカーボネート、4,4’−ジエチル−ジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピル−ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0046】
ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等が挙げられる。
【0047】
これらカーボネート類に対する共反応物質として、まずジオール類の例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−ペンタンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチルペンタンジオール等が挙げられる。
【0048】
また、ポリエーテルポリオール類の例としては、例えばテトラヒドロフランの開環重合により得られるポリテトラメチレングリコール、ジオール類のアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。ここで用いるジオール類の例として、たとえばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、異性体ペンタンジオール類、異性体ヘキサンジオール類またはオクタンジオール類例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサノン、トリメチロールプロパン、グリセリン等をあげることができ、アルキレンオキサイドの例として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等が挙げられ、これらは2種以上混合して使用することも可能である。
【0049】
上述のジオール類及びポリエーテルポリオール類は1種単独でも、あるいはこれらを2種以上混合して使用しても差し支えない。これらはいずれも公知の方法で前述のアルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物と反応してポリカーボネートジオールを形成することができる。
【0050】
本発明において、ウレタンの構成成分であるポリカーボネートポリオールの組成モル比は、ウレタンの全ポリイソシアネート成分を100モル%とした場合、3〜100モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることがより好ましく、6〜20モル%であることがさらに好ましい。前記組成モル比が低い場合は、ポリカーボネートポリオールによる耐湿熱性の効果が得られない場合がある。また、前記組成モル比が高い場合は、密着性が低下する場合がある。
【0051】
本発明のウレタンの構成成分であるポリイソシアネートとしては、例えば、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
【0052】
鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
【0053】
本発明の易接着層は、水系の塗布液を用い後述のインラインコート法により設けることが好ましい。そのため、本発明のウレタン樹脂は水溶性であることが望ましい。なお、前記の「水溶性」とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解することを意味する。
【0054】
ウレタン樹脂に水溶性を付与させるためには、ウレタン分子骨格中にスルホン酸(塩)基又はカルボン酸(塩)基を導入(共重合)することができる。スルホン酸(塩)基は強酸性であり、その吸湿性能により耐湿性を維持するのが困難な場合があるので、弱酸性であるカルボン酸(塩)基を導入するのが好適である。
【0055】
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのN−アルキルモルホリン類、N−ジメチルエタノールアミン、N−ジエチルエタノールアミンなどのN−ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。
【0056】
水溶性を付与するために、カルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物を共重合成分として用いる場合は、ウレタン樹脂中のカルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%としたときに、3〜60モル%であることが好ましく、10〜40モル%であることが好ましい。前記組成モル比が3モル%未満の場合は、水分散性が困難になる場合がある。
【0057】
本発明ではポリカーボネート系ポリウレタンのガラス転移点(Tig)を特定の範囲に制御することが好ましい。すなわち、本発明のポリウレタンのガラス転移点(Tig)は、下限40℃、好ましくは50℃、上限100℃、好ましくは90℃、である。該ポリウレタン樹脂のガラス転移点(Tig)が40℃未満の場合、耐ブロッキング性が低下する場合がある。逆に100℃を超えると易接着層の柔軟性、接着性が低下する場合がある。ポリウレタンのガラス転移点(Tig)を上記範囲に制御するためには、下記のポリオール成分、もしくはポリウレタンの分子量を適宜選択、調整することにより行うことができる。
【0058】
本発明において、易接着層の柔軟性と耐湿熱性をより高度に両立させるためには、前記共重合ポリエステルと前記ポリウレタンの配合割合が共重合ポリエステル/ポリウレタン(質量比)=80/20〜30/70であることが好ましい。前記配合割合は75/25〜40/60であることがさらに好ましい。共重合ポリエステル/ポリウレタン(質量比)=100/0〜90/10では易接着層の柔軟性が低下し、20/80〜0/100では耐ブロッキング性および接着性が低下する場合がある。
【0059】
本発明の易接着層は、ポリエステルからなる基材フィルムに対して好適な密着性を示すポリエステルと、印刷用インキに対して相溶性が高いポリウレタンとを主成分とするため、優れた初期密着性を示す。さらに、ポリエステルとしては高度な自己架橋性を形成することができるポリエステル系グラフト共重合体を用い、かつ、ポリウレタンとしては加水分解されにくいポリカーボネート系ポリウレタンを用いることを特徴とする。そのため、初期密着性だけでなく、湿熱環境下においても優れた密着性(耐湿熱性)を維持することが可能である。ポリエステル系グラフト共重合体とポリカーボネート系ポリウレタンとの組合せが耐湿熱性の付与に特に好適であることについては、本発明者は以下のように考えている。すなわち、本発明のポリエステル系グラフト共重合体は側鎖として酸無水物を構成成分として有する。一方、本発明のポリウレタンはカーボネート基を有する。これら側鎖とカーボネート基が水素結合様の相互作用を示し、易接着層としての耐久性がより高度に発揮されると考えられる。いずれにしても、本発明では、易接着層としてポリエステル系グラフト共重合体とポリカーボネート系ポリウレタンとを用いることで、密着性ならびに耐湿熱性を優れた特性を奏するのである。
【0060】
(架橋剤)
耐ブロッキングの点から本発明の易接着層には架橋剤を含むことが好ましい。これにより、易接着層に適度な架橋構造が形成されるため、架橋剤の添加は耐湿熱性の付与に好適である。架橋剤の配合割合は、共重合ポリエステルとポリウレタンの合計量100質量部に対して5〜40質量部であることが好ましく、8〜25質量部であることがさらに好ましい。上記架橋剤の配合割合が共重合ポリエステルとポリウレタンの合計量100質量部に対して5質量部未満では耐ブロッキング性が低下したり、接着性が低下することがあるので好ましくない。逆に、40質量部を超えると成型性に追従するための柔軟性が低下する場合がある。
【0061】
上記架橋剤としては、アルキル化フェノール類、クレゾール類などのホルムアルデヒドとの縮合物のフェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、この付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂;多官能性エポキシ化合物;多官能性イソシアネート化合物;ブロックイソシアネート化合物;多官能性アジリジン化合物;オキサゾリン化合物などを用いる。
【0062】
フェノールホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−、m−、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4’−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物を挙げることができる。
【0063】
アミノ樹脂としては、例えば、メトキシ化メチロール尿素、メトキシ化メチロールN,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメチロール化ベンゾグアナミンなどを挙げることができる。
【0064】
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0065】
多官能性イソシアネート化合物としては、低分子または高分子の芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートを用い得る。ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート化合物の3量体がある。さらに、これらのイソシアネート化合物の過剰量と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物、またはポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類などの高分子活性水素化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物を挙げることができる。
【0066】
架橋剤の中でも、本発明に用いる架橋剤としては、ブロックイソシアネート系架橋剤が好ましい。ブロックイソシアネート系架橋剤を添加することにより高度に接着性、耐ブロッキング性を両立させることが可能となる。
【0067】
ブロック化イソシアネート系架橋剤は上記イソシアネート化合物とブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて調製し得る。イソシアネートブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類;チオフェノール、メチルチオフェノールなどのチオフェノール類;アセトキシム、メチルエチケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類;芳香族アミン類;イミド類;アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物;メルカプタン類;イミン類;尿素類;ジアリール化合物類;重亜硫酸ソーダなどを挙げることができる。
【0068】
ブロックイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基含有量が3.0〜15.0質量%であることが好ましい。ブロックイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基含有量が4.0〜10.0質量%であることがより好ましく、4.5〜9.0質量%であることがさらに好ましく、5.0〜8.0質量%であることがよりさらに好ましい。該ブロックイソシアネート系架橋剤中のイソシアネート基含有量が3.0質量%未満では、インキ接着性が悪化するので好ましくない。逆に、15.0質量%を超えると接着性が悪化するので好ましくない。
【0069】
なお、上記ブロックイソシアネート系架橋剤を用いる場合は、後述の方法により再生して評価を行なう、再生イソシアネート基(再生NCO)含有量として評価する。
【0070】
(粒子)
本発明では、易接着層の耐ブロッキング性をより向上させるために、易接着層に粒子を添加することも好ましい態様である。本発明において易接着層中に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレーなど或いはこれらの混合物であり、更に、他の一般的無機粒子、例えばリン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムその他と併用、等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。
【0071】
易接着層中の性粒子の平均粒径(SEMによる個数基準の平均粒径。以下同じ)は、0.04〜2.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0μmである。不活性粒子の平均粒径が0.04μm未満であると、フィルム表面への凹凸の形成が不十分となるため、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下してしまうし、加工性も低下する場合がある。逆に、2.0μmを越えると、粒子の脱落が生じやすく好ましくない。易接着層中の粒子濃度は、固形成分中0.01〜1.0質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがさらに好ましい。
【0072】
本発明においては易接着層の厚みは、0.001〜1.00μmの範囲で適宜設定することができるが、高い透明性と接着性とを両立させるには0.01〜0.10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜0.09μm、さらに好ましくは0.03〜0.08μmである。易接着層の厚みが0.01μm未満であると、接着性が不十分となる。易接着層の厚みが0.10μmを超えると、易接着層が粒子を含む場合、フィルムのヘイズが悪化してしまい、高度な透明性が得られない場合がある。
【0073】
本発明の塗液中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤等を添加しても良い。
【0074】
(帯電防止剤)
本発明のフィルムに防塵性を付与する場合、好ましい態様としては、25℃で65%RHにおける易接着層表面の表面固有抵抗値が1×10〜1013Ω/□であることが好ましい。表面抵抗値を上記範囲にすることで、フィルム表面に付着する異物欠点を低減したり、印刷時に湿し水適性(水負け性)が悪化し、かすれ、にじみのトラブルを生じやすくなる。
【0075】
易接着層表面の表面固有抵抗値を上記範囲にするためには、易接着層に帯電防止剤を添加することが好ましい。本発明の効果を阻害しないものであれば、用いる帯電防止剤の種類は限定されないが、スルホン酸塩基または燐酸塩基を分子内に少なくとも1種有する高分子系帯電防止剤を用いることが好ましい。この高分子型帯電防止剤の特徴は、親水性の高いスルホン酸成分や燐酸成分を多数有する構造にある。これらの高分子系帯電防止剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもかまわない。
【0076】
分子内にスルホン酸塩基成分を含有する樹脂としては、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのホモポリマー、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどのアクリル系単量体とスチレンスルホン酸単量体との共重合物、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸と不飽和単量体の共重合体などが挙げられる。本発明において、スルホン酸塩は金属塩とアミン塩の混合物でも可能である。
【0077】
分子内に燐酸塩基を含有する樹脂としては、燐酸基を含有する不飽和単量体である各種のホスマー(ユニケミカル製)を重合または共重合した樹脂を挙げることができる。
【0078】
前記帯電防止剤の重量平均分子量は、1千〜100万の範囲であることが好ましく、より好ましくは5千〜100万である。重量平均分子量が1千未満では塗膜の光沢に優れるものの、塗膜の耐水密着性が得られにくくなる。一方、100万を超えると耐水密着性は高くなるものの、変性樹脂との均一混合が困難になり、塗膜光沢が低下しやすくなる。
【0079】
易接着層表面の表面固有抵抗値を上記範囲にするためには、前記スルホン酸塩基含有帯電防止剤の含有量を易接着層の樹脂組成物に対して5質量%以上とすることが好ましい。しかしながら、前記含有量が60質量%を超えると、基材フィルムへの密着力や膜強度、耐溶剤性の性能が不十分になる場合がある。
【0080】
(基材フィルム)
本発明の基材フィルムを構成するポリエステル樹脂は、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とする。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステルフィルムは二軸延伸することで耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。
【0081】
本発明のフィルムのヘーズは3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下がさらに好ましい。
【0082】
光学用途など高い透明性が求められる用途においては、基材フィルムの少なくとも片面に粒子を含有する易接着層を設け、基材フィルムには実質的に粒子を含有させない構成をとることが望ましい。なお、「基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に検出限界以下となる含有量を意味する。これは意識的に粒子を基材フィルムに添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
【0083】
また、本発明の好ましい実施態様として、良好な透明性と安定な作業性(特に表面摩擦特性)を得るためには、多層構成を有するフィルムであって表面層にのみ微粒子を含有するポリエステル層を用いることもできる。この場合、基材フィルムの好ましい実施態様は少なくとも3層からなる基材フィルムである。3層構成における層構成としては、表裏の最外層の構成は同組成であっても異組成であっても構わないが、2種3層(A層/B層/A層)が平面性の点から好適である。
【0084】
3層構成とする場合、最外層(A層/B層/A層の場合はA層)に粒子を含有し、中心層(B層)には実質的に粒子を含まないことが好ましい。A層に粒子を含有させる理由は、適度な表面粗さにすることによって基材フィルムと塗布層界面の接触面積を増やすことができ、より高い密着性を得る効果が得られ、さらに、フィルムの滑り性、巻き取り性、耐ブロッキング性などのハンドリング性や、耐摩耗性、耐スクラッチ性などの摩耗特性を向上させるためである。前記特性は積層フィルム面同士の静摩擦係数(μs)により評価することができる。
【0085】
3層構成の基材フィルムを用いる場合、各層の厚み比率は限定なく任意であるが、両最外層の厚みの合計は、上限がそれぞれ全厚みの100μmであることが好ましく、80μmであることが特に好ましい。100μmを越えると透明性が低下するため、好ましくない場合がある。
【0086】
なお、「実質的に粒子を含有しない」とは、例えば、無機粒子の場合、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm未満、好ましくは10ppm未満、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0087】
本発明で用いる基材フィルムの厚さは、特に制限しないが、30〜500μmの範囲で、使用する規格に応じて任意に決めることができる。基材フィルムの厚みの上限は、350μmが好ましく、特に好ましくは250μmである。一方、フィルム厚みの下限は、50μmが好ましく、さらに好ましくは75μmであり、特に好ましくは100μmである。フィルム厚みが下限未満では、剛性や機械的強度が不十分となりやすい。一方、フィルム厚みが上限を超えると、コスト高となる場合がある。
【0088】
これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0089】
最外層に含まれる粒子の種類及び含有量は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどのポリエステルに対し不活性な無機粒子が例示される。これらの不活性な無機粒子は、いずれか一種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0090】
前記の粒子は、平均粒子径が0.1〜3.5μmであることが好ましい。前記平均粒子径の下限は、0.5μmがより好ましく、0.8μmがさらに好ましく、1.0μmがよりさらに好ましい。また、前記平均粒子の上限は、3.0μmであることがより好ましく、2.8μmであることがよりさらに好ましい。平均粒子径が下限未満では十分なハンドリング性が得られない場合がある。上限を越えると透明性が低下する場合がある。
【0091】
また、これらの粒子は多孔質粒子、特に多孔質シリカが好ましい。多孔質粒子はフィルム製膜工程での延伸時に扁平型に変型しやすく、延伸時に粒子周囲に空洞が発生しにくく高い透明性が得やすい。
【0092】
最外層の無機粒子の含有量は最外層を構成するポリエステルに対し、0.01〜0.20質量%であることが好ましい。前記濃度の下限は、0.02質量%がより好ましく、0.03質量%がさらに好ましい。また前記濃度の上限は、0.15質量%がより好ましく、0.10質量%がさらに好ましい。下限未満では十分なハンドリング性が得られない。上限を越えると透明性が低下する。
【0093】
前記粒子の平均粒径の測定は下記方法によって求めることができる。
粒子を電子顕微鏡または光学顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(多孔質シリカの場合は凝集体の粒径)を測定し、その平均値を平均粒径とする。また、積層フィルムの塗布層中の粒子の平均粒径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、塗布層の断面に存在する粒子の最大径を求めることができる。
【0094】
ポリエステル樹脂に上記粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0095】
(製造方法)
本発明の積層ポリエステルフィルムは、逐次二軸延伸もしくは同時二軸延伸により得られた二軸配向積層ポリエステルが望ましい。以下、最も好んで用いられる逐次二軸延伸方法について説明する。
【0096】
フィルム原料を十分に真空乾燥した後、押出し機で溶融し、T−ダイよりシート状に押出し、未延伸フィルムを得る。
【0097】
本発明において、基材のポリエステルフィルムは単層構造でも、多層構造でも構わないが、積層構造とする場合には、A層とB層の樹脂を別々の押出し機に供給した後、例えば、溶融状態でA層/B層の2層構造とする、A層/B層/A層の3層構成などに積層して、同一のダイから押出す共押出し法を採用することが最も好ましい。
【0098】
その後、一軸延伸ポリエステルフィルムをグリップ方式の横延伸機に導き、80〜180℃に加熱した後、横方向に2.5〜5.0倍延伸し、次いで、200〜240℃で熱固定処理した後、必要に応じて縦方向および/または横方向に1〜10%緩和処理し、次いで、フィルムワインダーで巻き取って二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0099】
易接着層の塗布する段階としては、フィルムの延伸前に塗布する方法、縦延伸後に塗
布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法などのいずれの方法も可能であるが中でも、基材ポリエステルフィルムの結晶配向が完了する前に塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる、インラインコート法が本発明の効果をより顕著に発現させることができるので好ましい方法である。
【0100】
易接着層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法が適用できる
【実施例】
【0101】
次に本発明の実施例および比較例を示す。まず本発明に用いる測定・評価方法を以下に示す。
【0102】
(1)ガラス転移点(Tig)
易接着層のガラス転移点(Tig)の測定は易接着フィルムから易接着層のみを削りとり、試料とした。
測定はJIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、DSC曲線からガラス転移開始温度(Tig)を求めた。
測定条件
(a)測定温度範囲:0〜200℃
(b)昇温速度:20℃/min
(c)窒素ガスフロー有り
【0103】
(2)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
【0104】
(3)易接着層の厚み
フィルム断面をフィルム面に対し直角にミクロトームで切断し、透過型電子顕微鏡(TEM)でフィルムの断面写真を撮り、その写真上で樹脂成分の厚みを計測する。同様の計測を場所を変えて10回行い、その計測値の平均を樹脂成分の厚み(μm)とした。
【0105】
(4)ヘーズ
JIS−K7105に準拠し、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業社製)を用いて評価した。
【0106】
(5)接着性
UV硬化型樹脂溶液(株式会社セイコーアドバンス製、UVA710 ブラック)をフィルム表面(易接着層が設けられている場合は、易接着層表面)にテトロン・スクリーン(#300メッシュ)によって印刷した後に、500mJ/cmでUV露光した。
硬化した印刷層に対し、カッターナイフにより2mm角100マスのクロスカット面を入れ、その上にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製、CT−24)を気泡が入らないように貼りつけ、さらにその上をこすって十分に密着させる。その後、上記インキ面のセロテープ(登録商標)が密着されていない前後の両端部を手で押さえ、90°方向に急速に剥離した。
剥離後のインキ面を観察し、100個のマス目におけるインキ残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を以下の4段階の基準で接着性を評価し、◎及び○を合格とした。なお、本発明でいう易接着性とは、上記評価を行った際にインキ残留率が90%以上を有するものと定義する。
◎:残留率100%(全く剥離しない)
○:残留率90%以上100%未満(実用上問題なく使用できる)
△:残留率70%以上90%未満(接着性が若干弱く、実用上問題が発生する
可能性有り)
×:残留率70%未満(接着性不良)
【0107】
(6)湿熱後の接着性
酸化型重合樹脂溶液(十条化工株式会社製、黒)と希釈溶剤(十条加工株式会社製、テトロン)をインキ:希釈溶剤=4:1で希釈し、フィルム表面(易接着層が設けられている場合は、易接着層表面)にテトロン・スクリーン(#250メッシュ)によって印刷した後、65℃のギアオーブンで15分間乾燥させた。
次に、このインキを印刷したフィルムを80℃のお湯に2分間入れる。取り出して水気を拭き取った後、3時間以上風乾させる。続いて印刷面上にカッターナイフにより2mm目100マスのクロスカット面を入れ、その上にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製、CT−24)を気泡が入らないように貼り付け、更にその上をこすって十分に密着させる。その後、上記インキ面のセロテープ(登録商標)が密着されていない前後の両端部を手で押さえ、90°方向にクロスカット面を急速に剥離した。
剥離後のインキ面を観察し、100個のマス目におけるインキ残留率(マス目の一部分でも剥がれたものも剥がれた個数として扱う)を以下の4段階の基準で接着性を評価し、◎及び○を合格とした。なお、本発明でいう易接着性とは、上記評価を行った際にインキ残留率が90%以上を有するものと定義する。
◎:残留率100%(全く剥離しない)
○:残留率90%以上100%未満(実用上問題なく使用できる)
△:残留率70%以上90%未満(接着性が若干弱く、実用上問題が発生する
可能性有り)
×:残留率70%未満(接着性に問題有り)
【0108】
(7)成型性(伸張測定)
未延伸のポリエステルフィルムに固形分11質量%の塗布液A〜Wを、マイヤーバー#10で塗布し、100℃のギアオーブンで2分間乾燥させる。さらに、200℃のギアオーブンで30秒間熱を加え、コートしたフィルムサンプルを作製する。続いて、このフィルムを長さ25mm、幅80mmの短冊状に切り出し、縦横10mmのマス目を書く。短冊状のフィルムサンプルを引張り試験機にかけ、フィルム試料片の実温が110℃の環境下で、外観を目視観察しながら、フィルム両端を把持して90mm/ 秒の速度で引っ張り、コート層に白化が発生した時のマス目の長さを測定した。
試験後のフィルム試料片長をaとしたとき、下記式により伸度を算出した。(試験前のフィルムのマス目の長さは10mm)
伸度(%)=(a−10)×100/10
ここで伸度が300%以上のものを成型性に優れているとし、200%以上300%未満のものを成型性に問題なしとし、100%以上200%未満のものを成型性に問題が発生する可能性があるとし、100%未満のものを成型性に問題があると判断した。
○:伸度が100%以上(成型性が良)
×:伸度が100%未満(成型性が不良)
【0109】
(8)NCO含量(再生NCO含有量)
NCO含量(再生NCO含有量)を測定すべき試料(易接着層成分)を5〜100mgを、「摺り合わせ」開口を有する三角フラスコに精秤する。上記三角フラスコに、0.5mol/lのジブチルアミン−モノクロルベンゼン溶液25mlを加え、オルト−ジクロロベンゼンと沸石を入れた後、該フラスコの開口に適合する「摺り合わせ」球管冷却器を取り付ける。あらかじめ用意した加熱板上に、上記三角フラスコを乗せて、該フラスコ中の溶剤が沸騰を始めてから30分間反応させる。その後、三角フラスコを加熱板上から外し、室温まで冷却した後、摺り合わせ球管冷却器の上から20〜30mlのメタノールを注ぎ、該冷却器の内壁部を該メタノールで洗い流す。上記冷却器を三角フラスコから外した後、該三角フラスコにメタノール100mlと、ブロモフェノール・ブルー指示薬1滴とを入れ、フラスコの内容物に対して、0.5mol/lの塩酸標準液を用いた逆滴定を行う。この際、試料の滴定に要した上記の塩酸標準液の滴定量をA(ml)とする。上記した加熱を行わない以外は、上記と同様の操作を行って、「ブランク」試料を得る。該ブランクは、上記同様に滴定する。この際、ブランクの滴定に要した上記の塩酸標準液の滴定量をB(ml)とする。滴定の終点は、ブロモフェノール・ブルー指示薬の藍色が黄色に変わる点とする。得られた結果から、下記の計算式を用いて、NCO含量(再生NCO含有量)を算出する。
有効イソシアネート含量(質量%)={(B−A)×42×0.5×f}×100/(S×1000)
【0110】
(9)表面固有抵抗値
フィルムを23℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、その雰囲気下で表面抵抗値測定装置(三菱油化株式会社製、ハイレスタ−IP)を用い、印加電圧500Vにてフィルム表面(易接着層が設けられている場合は、易接着層表面)の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0111】
実施例1
(疎水性重合ポリエステル樹脂の調製)
攪拌機、温度計および部分還流式冷却器を具備したステンレス製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート218重量部、ジメチルイソフタレート194重量部、エチレングリコール488重量部、ネオペンチルグリコール200重量部およびテトラ−N−ブチルチタン0.5重量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、フマル酸13重量部およびセバシン酸51重量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温しエステル化反応を行った。次いで、255℃まで昇温し反応系を徐々に減圧した後、0.22mmHgの減圧下で1時間30分反応させ、疎水性共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた疎水性共重合ポリエステルは、淡黄色透明であった。
【0112】
(水分散したポリエステル系グラフト共重合体の調製)
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、疎水性共重合ポリエステル75質量部、メチルエチルケトン56質量部およびイソプロピルアルコール19質量部
を入れ、65℃で加熱、撹拌し樹脂を溶解した。樹脂が完溶した後、無水マレイン酸15質量部をポリエステル溶液に添加した。次いで、スチレン10質量部およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5質量部を12質量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から
分析用のサンプリングを行った後、メタノールを5質量部添加した。次いで、イオン交換水300質量部とトリエチルアミン15質量部を反応溶液に加え、1時間半撹拌した。その後、反応器内温を100℃に上げメチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散したポリエステル系グラフト共重合体を得た。得られたポリエステル系グラフト共重合体は、淡黄色透明で、ガラス転移点は40℃であった。この樹脂をポリエステル系グラフト共重合体(a1)とした。
【0113】
(ポリカーボネート系ウレタン樹脂の合成)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、ポリイソシアネートとして、1,3−シクロヘキサンビス(メチルイソシアネート)73.0質量部と、数平均分子量2000のポリヘキサンジオールカーボネート112.7質量部と、ネオペンチルグリコール11.7質量部と、ジメチロールプロピオン酸12.6質量部と、有機溶媒として、アセトニトリル60質量部、N−メチルピロリドン30質量部とを仕込み、窒素雰囲気下で、反応液温度を75〜78℃に調整して、反応触媒としてオクチル酸第1錫を0.06質量部加え、7時間で反応率99%以上まで反応させた。次いで、これを30℃まで冷却し、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min−1で攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35%の水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂の水溶液(b1)を調製した。ガラス転移点(Tig)は86℃であった。
【0114】
(塗布液Aの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=95/5であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0115】
(1)フィルムの製造
基材フィルムの中間層用原料として粒子を含まない固有粘度0.62(フェノール:1,1,2,2−テトラクロルエタン=6:4混合溶媒で溶解し30℃で測定)のPET(A)を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層B層用)に、ペレット状PET(A)と固有粘度が0.62(フェノール:1,1,2,2−テトラクロルエタン=6:4混合溶媒で溶解し30℃で測定)であり、平均粒径2.5μmのシリカ粒子を0.025質量%含有するPET(B)を押出機1(外層A層用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリエステル樹脂を、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを得た。この時、A層、B層、A層の厚さの比は1.5:7:1.5となるように各押し出し機の吐出量を調整した。次にこの未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後、周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。
【0116】
次いで、前記塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、100℃で5秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布厚みが0.07μmになるように調整した。次いでこの一軸延伸ポリエステルフィルムをクリップ方式の横延伸機に導き、100℃で予熱した後、130℃で横方向に4.0倍延伸し、次いで、230℃で熱固定処理した後、150℃で横方向に3%緩和処理し、次いで、フィルムワインダーで巻き取って厚み250μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0117】
得られた積層ポリエステルフィルムの評価結果を表1に示す。
【0118】
(塗布液Bの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、水分散性ポリカーボネート系ウレタン樹脂(b1)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0119】
実施例2
実施例1において、塗布液Aを塗布液Bに代えたこと以外は実施例1と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0120】
(塗布液Cの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=70/30であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0121】
実施例3
実施例2において塗布液Bを塗布液Cに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0122】
(塗布液Dの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=40/60であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0123】
実施例4
実施例2において、塗布液Bを塗布液Dに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0124】
(塗布液Eの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=30/70であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0125】
実施例5
実施例2において、塗布液Bを塗布液Eに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0126】
(塗布液Fの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=10/90であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0127】
実施例6
実施例2において、塗布液Bを塗布液Fに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0128】
(塗布液Gの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ガラス転移点が85℃(カタログ値)のポリウレタン樹脂(三井武田ケミカル株式会社製:商品名 タケラックW615)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0129】
実施例7
実施例2において、塗布液Bを塗布液Gに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0130】
(塗布液Hの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ガラス転移点が85℃(カタログ値)のポリウレタン樹脂(三井武田ケミカル株式会社製:商品名 タケラックW615)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量が12.4質量%であるポリイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0131】
実施例8
実施例2において、塗布液Bを塗布液Hに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0132】
(塗布液Iの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ガラス転移点が85℃(カタログ値)のポリウレタン樹脂(三井武田ケミカル株式会社製:商品名 タケラックW615)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が7質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0133】
実施例9
実施例2において、塗布液Bを塗布液Iに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0134】
(塗布液Jの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ガラス転移点が85℃(カタログ値)のポリウレタン樹脂(三井武田ケミカル株式会社製:商品名 タケラックW615)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が4.5質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0135】
実施例10
実施例2において、塗布液Bを塗布液Jに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0136】
(塗布液Kの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ガラス転移点が85℃(カタログ値)のポリウレタン樹脂(三井武田ケミカル株式会社製:商品名 タケラックW615)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が3.0質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0137】
実施例11
実施例2において、塗布液Bを塗布液Kに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0138】
(塗布液Lの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物40質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0139】
実施例12
実施例2において、塗布液Bを塗布液Lに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0140】
(塗布液Mの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物25質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0141】
実施例13
実施例2において、塗布液Bを塗布液Mに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表2に示す。
【0142】
(塗布液Nの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物8質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0143】
実施例14
実施例2において、塗布液Bを塗布液Nに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0144】
(塗布液Oの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物5質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0145】
実施例15
実施例2において、塗布液Bを塗布液Oに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0146】
(塗布液Pの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.4μmのものを全樹脂に対し3.0質量%および平均粒径0.2μmのシリカ粒子を全樹脂に対して0.02質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0147】
実施例16
実施例2において、塗布液Bを塗布液Pに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0148】
実施例17
易接着層の塗布厚みが0.2μmである以外は実施例1と同様の積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0149】
実施例18
易接着層の塗布厚みが0.09μmである以外は実施例1と同様の積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0150】
実施例19
易接着層の塗布厚みが0.04μmである以外は実施例1と同様の積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0151】
実施例20
易接着層の塗布厚みが0.02μmである以外は実施例1と同様の積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表2に示す。
【0152】
(塗布液Q調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、更にポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩、分子量1万の帯電防止剤含有量が1.5%質量%になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.4μmのものを全樹脂に対し3.0質量%および平均粒径0.2μmのシリカ粒子を全樹脂に対して0.02質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0153】
実施例21
実施例2において、塗布液Bを塗布液Qに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。本実施例で得られたフィルムについてオフセット印刷を行なったところ、印刷によるかすれも少なく、印字性が良好であった。
【0154】
(塗布液R調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=100/0であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が12.0質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0155】
実施例22
実施例1において、A層を設けず、原料ポリマーとして、B層用に粒子を含有していない、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂ペレットを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で、積層ポリエステルフィルムを得た。実施例22のフィルムはヘーズは低かったものの、滑り性がやや不良であった。
【0156】
比較例1
実施例2において、塗布液Bを塗布液Rに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0157】
(塗布液Sの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=0/100であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が3.8質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0158】
比較例2
実施例2において、塗布液Bを塗布液Sに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0159】
(塗布液Tの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、ポリウレタン樹脂(b1)の固形分の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、全樹脂固形分濃度が3.8質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0160】
比較例3
実施例2において、塗布液Bを塗布液Tに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表2に示す。
【0161】
(塗布液Uの調製)
上記で得られた共重合ポリエステル樹脂液(a1)、温度が35℃(カタログ値)のポリウレタン樹脂(三井武田ケミカル株式会社製:商品名 タケラックW511)の割合が共重合ポリエステル樹脂/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、共重合ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が3.8質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0162】
比較例4
実施例2において、塗布液Bを塗布液Uに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0163】
(塗布液Vの調製)
共重合ポリエステル樹脂の調製
塗布液Vを以下の方法に従って調製した。ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)、2時間かけて重縮合反応を行い、数平均分子量19,500の共重合ポリエステル系樹脂(a2)を得た。
ポリウレタン系樹脂水溶液の調合
アジピン酸//1.6ーヘキサンジオール/ネオペンチルグリコール(モル比:4//2/3)の組成からなるポリエステルジオール(OHV:2000eq/ton)100質量部と、キシリレンジイソシアネートを41.4質量部混合し、窒素気流下、80〜90℃で1時間反応させた後、60℃まで冷却し、テトラヒドロフラン70質量部を加えて溶解し、ウレタンプレポリマー溶液(NCO/OH比:2.2、遊離イソシアネート基:理論値3.56質量%、実測値3.30質量%)を得た。引き続き、前記のウレタンプレポリマー溶液を40℃にし、次いで、20質量%の重亜硫酸ナトリウム水溶液を45.5質量部加えて激しく撹拌を行いつつ、40〜50℃で30分間反応させた。遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)の消失を確認した後、乳化水で希釈し、固形分20質量%のポリウレタン系樹脂水溶液(b2)を得た。
得られた共重合ポリエステル系樹脂(a2)の30質量%水分散液を7.5質量部、ポリウレタン系樹脂水溶液(b2)を11.3質量部、触媒(ジブチルチンラウレート)を0.03質量部、水を39.8質量部およびイソプロピルアルコールを37.4質量部、それぞれ混合した。さらに、ノニオン系界面活性剤の10質量%水溶液を0.6質量部、粒子としてコロイダルシリカ;平均粒径0.04μm)の20質量%水分散液を2.3質量部、次いで、5質量%の重曹水溶液で塗布液のpHを6.2に調整し、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液Vを調整した。
【0164】
比較例5
実施例2において、塗布液Bを塗布液Vに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた単層フィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0165】
(塗布液Wの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、ガラス転移点が90℃(カタログ値)のエーテル系ポリウレタン樹脂(三井武田ケミカル株式会社製:商品名 タケラックW6020)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が3.8質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0166】
比較例6
実施例2において、塗布液Bを塗布液Wに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた単層フィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0167】
(塗布液Xの調製)
上記で得られたポリエステル系グラフト共重合体(a1)、ガラス転移点が85℃(カタログ値)のエステル系ポリウレタン樹脂(三井武田ケミカル株式会社製:商品名 タケラックW5030)の固形分の割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリウレタン樹脂(質量比)=80/20であり、且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリウレタン樹脂の合計量100質量部に対してイソシアネート基含有量(再生NCO)が5.4質量%であるブロックイソシアネート化合物が20質量部になるように混合し、全樹脂固形分濃度が3.8質量%、粒子としてシリカ粒子平均粒径1.0μmのものを全樹脂に対し0.44質量%および平均粒径0.1μmのシリカ粒子を全樹脂に対して10質量%含有するように、水/イソプルピルアルコールの混合溶媒(=65/35;質量比)で希釈して水系塗布剤とした。
【0168】
比較例7
実施例2において、塗布液Bを塗布液Xに代えたこと以外は実施例2と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.07μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた単層フィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0169】
実施例23
塗布液Aの作製においてブロックイソシアネート化合物の代わりにメラミン化合物(DIC社製 ベッカミンM−3 固形分濃度60%)を固形分中16.7質量%になるよう変更した塗布液(Y)を用いた以外は実施例1と同様にして、易接着層の塗布厚みが0.2μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られた単層フィルムの特性と評価結果を表1に示す。
【0170】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明による積層ポリエステルフィルムは、成形性と接着性、特に耐湿熱下における接着性に優れているので幅広い用途に適用ができる。そのため、各種の光学機能フィルムの基材として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面に易接着層を有する積層ポリエステルフィルムであって、
前記易接着層は、ポリエステル系グラフト共重合体と、ポリカーボネート系ポリウレタンを含み、
前記ポリエステル系グラフト共重合体が、疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物を含む重合性不飽和単量体がグラフトされたものであり、
且つ易接着層のガラス転移点(Tig)が30℃〜55℃である、
積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記易接着層における、ポリエステル系グラフト共重合体とポリカーボネート系ポリウレタンの配合割合がポリエステル系グラフト共重合体/ポリカーボネート系ポリウレタン(質量比)=80/20〜30/70であり、
且つ、ポリエステル系グラフト共重合体とポリカーボネート系ポリウレタンの合計量100質量部に対して5〜40質量部の架橋剤を含む請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記架橋剤がブロックイソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ブロックイソシアネート系架橋剤の再生イソシアネート基含有量が3.0〜15.0質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記基材フィルムがA層/B層/A層の積層構造であり、A層に無機粒子を含有し、B層には実質的に粒子を含有しない請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ヘーズが3.0%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
25℃で65%RHにおける前記易接着層表面の表面固有抵抗値が1×10〜1013Ω/□である請求項1〜6のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−156848(P2011−156848A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22877(P2010−22877)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】