説明

積層体の製造方法および光学フィルムの製造方法

【課題】 塗布層の膜厚ムラやスジ状欠陥等の塗布欠陥を抑制し、かつ塗液中に含まれる粒子を均一に塗布層中に分散させることで、面内での塗布層の膜厚のバラツキが小さく、均一な光学特性を持つ積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 ダイヘッドを用い、支持体上に粒子とバインダマトリックスを備える塗布層を形成する積層体の製造方法であって、前記粒子の平均粒子径をd(μm)が0.03μm以上10μm以下であり、且つ、前記塗液を前記ダイヘッドのリップ先端から吐出させた際の前記支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断速度をD(1/sec)、リップ先端の下流側の幅をH(mm)としたときのD・Hが20以上20000以下であることを特徴とする積層体の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヘッドを用いたダイコーティング法によりプラスチックフィルムなどのウェブ状の支持体上に粒子とバインダマトリックスからなる塗布層を積層してなる積層体の製造方法に関し、層中で粒子が均一に分散した塗布層を積層してなる積層体の製造方法に関する。さらには、粒子として光拡散粒子を用い、ウェブ状の支持体上に防眩層を積層してなる光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに代表される各種ディスプレイの表面には、外光の反射によるコントラストの低下や像の映り込みを防止するための光学機能層が設けられている。光学機能層には、蒸着法・イオンプレーティング法・スパッタリング法等により成膜した金属・金属酸化物の単層又は積層からなる低屈折率薄膜や、ワイヤードクターコーティング法・マイクログラビアコーティング法・ダイコーティング法等により塗布したフッ素系の粒子等からなる低屈折率剤を含む低屈折率薄膜がある。一方、外光に入射する光に対して表面の凹凸によって光を散乱させて像の映り込みを防ぐ光学機能層として、例えば、塗布層表面にエンボス加工を施すことで表面に凹凸を形成した防眩層やバインダに粒子を混入させ表面に凹凸を形成した防眩層がある。
【0003】
反射防止層や防眩層といった光学機能膜は、その機能性ゆえ膜厚の均一性あるいは塗布欠陥の解消が要求されるため、精密な塗工技術が必要になる。例えば、表面の凹凸による光散乱現象を利用することを目的として、粒子とバインダマトリックス形成材料を含む塗液を支持体上に塗布し防眩層を形成するにあっては粒子の分散性が問題となる。形成される防眩層において粒子の分散が均一でない場合、防眩層の膜厚の面内のばらつきが大きくなり、ムラやスジ状の欠陥として確認される。
【0004】
そのため、光学機能層の製造方法の一つでダイヘッドを用いたダイコーティング法により塗布層を形成するにあっては、諸問題を解決するため多くの方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0005】
特許文献1の方法によれば、送液タンクからダイ内までの送液区間内に攪拌装置を設け、塗液の流れを乱すことによって分散性を向上させ、ダイコーティング法により形成される塗布層の膜厚ムラやスジ状欠陥を抑制する方法がある。特許文献2の方法によれば、ダイに塗液を導入する配管内のレイノルズ数を25以下にすることで、形成される塗布層の膜厚ムラやスジ状欠陥を抑制する方法がある。特許文献3の方法によれば、スリットに連通するエクストルーダーの液溜りに塗布量よりも多い塗液を供給し、液溜り内の塗液の一部をスリットを介さずに流出させることで、流れの停滞部における塗液の凝集を抑え、形成される塗布層の縦スジの発生を抑制することができる。
【特許文献1】特開2004−321969号公報
【特許文献2】特開2005−305423号公報
【特許文献3】特開昭57−19060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、送液タンクからダイ内までの送液区間における塗液の流れを乱しても、ダイリップ先端で均一性が保持されていなければ、形成される塗布層において膜厚が不均一なことによるムラやスジ状欠陥を回避するのは困難である。また、特許文献2に記載の方法では、ダイへ塗液を導入する前段階の流動状態を規定しても、ダイリップから吐出される塗液の流動状態が形成される塗布層の膜厚ムラやスジ状欠陥に大きく影響するため、これらの抑制は困難である。また、特許文献3に記載の方法では、塗液を引き抜くことでスリットの幅方向に塗液の吐出分布が生じることがあり、精度よく塗液を引き抜かないと膜厚ムラ等の欠陥が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、塗布層の膜厚ムラやスジ状欠陥等の塗布欠陥を抑制し、かつ塗液中に含まれる粒子を均一に塗布層中に分散させることで、面内での塗布層の膜厚のバラツキが小さく、均一な光学特性を持つ積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、 連続的に搬送されるウェブ状の支持体の少なくとも一方の面に、少なくとも粒子とバインダマトリックス形成材料を含む塗液をダイヘッドのリップ先端より吐出し前記支持体上に粒子とバインダマトリックスを備える塗布層を形成する工程を有する、前記支持体上に前記塗布層が積層されてなる積層体の製造方法であって、前記粒子の平均粒子径をd(μm)が0.03μm以上10μm以下であり、且つ、前記塗液を前記ダイヘッドのリップ先端から吐出させた際の前記支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断速度をD(1/sec)、リップ先端の下流側の幅をH(mm)としたときのD・Hが20以上20000以下であることを特徴とする積層体の製造方法とした。
【0009】
また、請求項2に係る発明としては、前記ダイヘッドのリップ先端から吐出される塗液の流量をs(cm/min)、前記ダイヘッドの塗工幅をl(cm)としたときの、ダイヘッドの単位塗工幅当たりの流量s/l(cm/min)が0.15cm/min以上20cm/min以下であることを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法とした。
【0010】
また、請求項3に係る発明としては、前記塗液の粘度が1mPa・s以上60mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の製造方法とした。
【0011】
また、請求項4に係る発明としては、前記支持体と前記ダイヘッドのリップ先端との距離が50μm以上300μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに1項に記載の積層体の製造方法とした。
【0012】
また、請求項5に係る発明としては、前記支持体の搬送速度が1m/min以上80m/min以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法とした。
【0013】
また、請求項6に係る発明としては、ウェブ状の支持体上に、光拡散粒子とバインダマトリックス形成材料を含む塗液を用い、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法により、ヘイズ値が5%以上50%未満の防眩層を形成したことを特徴とする光学フィルムの製造方法とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明の積層体の製造方法を用いることにより、塗布層中に粒子を均一に分散させることができ、ムラやスジ状欠陥等の塗布欠陥を抑制することができ、面内で均一な光学特性を備える積層体を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に本発明の積層体の説明断面図を示した。
本発明の積層体1は、支持体2の少なくとも一方の面に粒子3とバインダマトリックス4からなる塗布層5を形成してなる積層体である。本発明にあっては、塗布層5はダイヘッドを用いてダイコーティング法により形成されるが、このとき、粒子が塗布層内で均一に分散していない場合、形成される塗布層の膜厚のバラツキが大きくなることによって塗布層表面にムラやスジ状の欠陥として確認される。また、粒子として、光拡散粒子や低屈折粒子を用いた際には、粒子が塗布層内で均一に分散していないことにより、面内で光学特性が変化しムラやスジ状の欠陥として確認される。また、支持体をウェブ状とすることにより、支持体上に塗布層を連続して形成することが可能となる。
【0016】
本発明の積層体にあっては、粒子の分散状態が製品上欠陥として認識され、面内で均一な光学特性が要求される光学フィルムの分野において好適に用いられる。特に、本発明の積層体は、光学フィルムの中でもディスプレイ表面に好適に設けられる光学フィルムとして使用される。本発明の積層体の塗布層としては、光拡散粒子とバインダマトリックスを備える防眩層、低屈折粒子とバインダマトリックスとを備え反射防止機能を有する低屈折率層、導電性粒子とバインダマトリックスとを備える帯電防止層等をあげることができる。また、このとき、塗布層は複数の種類の粒子を形成してもよい。また、本発明の積層体にあっては、他の機能層を含んでいてもよく、積層体の少なくとも1層が本発明の製造方法により形成されていればよい。
【0017】
特に、本発明にあっては、支持体上に粒子として光拡散粒子を用いた防眩層を積層した光学フィルムに好適に使用できる。特に、防眩層のヘイズ値が5〜50%の防眩層を積層してなる光学フィルムにおいては、粒子の分散が防眩層内で不均一のときにムラやスジ状の欠陥のある光学フィルムとして確認されやすく、面内で均一な光学特性を有する光学フィルムとすることができなくなってしまう。したがって、本発明を好適に使用することができる。
【0018】
次に、本発明の積層体の製造方法について述べる。
【0019】
図2に本発明のダイコーティング装置の説明概略図を示した。
本発明のダイコーティング装置は、ダイヘッド6と塗液タンク7が配管8によって接続され、送液ポンプ9によって、塗液タンク中の塗液がダイヘッドの液溜まりであるマニホールド部内に送液される構造となっている。ダイヘッド6のマニホールド内に送液された塗液はリップ先端部から塗液を吐出し、支持体上2に塗液を塗布する。ウェブ状の支持体を用い回転ロール10を使用することにより、ロール・ツー・ロール方式により連続して支持体上に塗布層を形成することができる。
【0020】
本発明の積層体の製造方法としては、少なくとも粒子とバインダマトリックス形成材料を含む塗液をダイヘッドのリップ先端より吐出し、前記支持体上に粒子とバインダマトリックスを備える塗布層を形成し、前記支持体上に前記塗布層が積層されてなる積層体の製造方法であって、前記粒子の平均粒子径をd(μm)が0.03μm以上10μm以下であり、且つ、前記塗液を前記ダイヘッドのリップ先端から吐出させた際の前記支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断速度をD(1/sec)、リップ先端の下流側の幅をH(mm)をしたときのD・Hが20以上20000以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明者らは、ダイヘッドを用いたダイコーティング法において、塗液が押し出されるダイリップ先端と連続して走行する支持体の間の流れ場を制御することで、形成される塗布層内に粒子が均一に分散した積層体を製造できることを見出し、本発明にいたった。
【0022】
図3に、図2のダイコーティング装置のリップ先端部の拡大図を示した。ダイヘッドを用いたダイコーティング法により連続的に走行する支持体上に塗液を塗布する場合、塗液が押し出されるダイリップ先端6´と連続して走行する支持体の間に流速分布が生じ、この流速分布によって支持体とダイヘッドのリップ先端との間に形成される塗液の流れ場にせん断が生じる。ここで、支持体2とダイヘッドのリップ先端6´との間の流れ場に生じるせん断速度Dは、支持体の搬送速度をV(m/s)、支持体とダイリップ先端との距離をLとすると、(式1)で求めることができる。
D=V/L (式1)
また、支持体2とダイヘッドのリップ先端6´との間の流れ場はリップ先端の下流側の幅H(mm)まで形成される。
【0023】
本発明においては、平均粒子径dが0.03μm以上10μm以下の粒子を含む塗液をダイヘッドのリップ先端から吐出させたときに、支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断速度をD(1/sec)、リップ先端の下流側の幅をH(mm)としたときのD・Hを20以上20000以下とすることにより、支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場において粒子が分散し、粒子が塗布層内で均一に分散した塗布層を形成することができるというものである。
【0024】
ダイヘッドのリップ先端から吐出される塗液において粒子は均一に分散していない。そして、リップ先端から吐出された塗液は、支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場においてせん断力が働く。このとき、流れ場において塗液が受けるせん断速度はDで表される。一方、リップ先端の下流側の幅をHによって、塗液がせん断を受ける時間は変化し、リップ先端の下流側の幅Hが長ければ長いほど塗液がせん断を受ける時間は長くなる。したがって、せん断速度Dとリップ先端の下流側の幅Hを掛け合わせた値D・Hを適正な値とすることにより、塗布層中での粒子の分散の度合いを制御することが可能となるのである。
【0025】
本発明において、支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断速度をD(1/sec)、リップ先端の下流側の幅をH(mm)としたときのD・Hを20に満たない場合、ダイヘッドのリップ先端との間の流れ場において塗液は十分なせん断を受けることができない。したがって、粒子が均一に分散していない状態でリップ先端から吐出された塗液を均一な分散状態とするための十分なせん断を塗液に与えることができないため、不均一に粒子が分散した状態で支持体上に塗布層は形成され、得られた積層体はムラやスジ状の塗布欠陥が発生する。
【0026】
一方、本発明において、支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断速度をD(1/sec)、リップ先端の下流側の幅をH(mm)としたときのD・Hが20000を超えるような場合、ダイヘッドのリップ先端との間の流れ場において塗液は過度にせん断を受けることにより、塗液内で粒子が逆に凝集する傾向を示す。したがって、粒子が凝集し、不均一な分散状態で支持体上に塗布層は形成され、得られた積層体はムラやスジ状欠陥等の塗布欠陥が発生する。
【0027】
また、本発明に用いられる粒子の平均粒子径は0.03μm以上10μm以下である。用いられる粒子の平均粒子径が0.03μmに満たない場合、粒子が小さすぎることにより支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断の影響よりも粒子間の相互作用の影響を大きく受けてしまう。一方、用いられる粒子の平均粒子径が10μmを超えるような場合、粒子が大きいために支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断によって塗液中の粒子の分散状態を制御することは困難となる。なお、本発明に用いられる粒子の平均粒子径は、光散乱式粒子径分布測定法により求めることができる。
【0028】
また、本発明においては、ダイヘッドのリップ先端から吐出される塗液の流量をs(cm/min)、前記ダイヘッドの塗工幅をl(cm)としたときの、ダイヘッドの単位塗工幅当たりの流量s/l(cm/min)が0.15cm/min以上20cm/min以下であることが好ましい。
【0029】
塗液と支持体に塗布する際のダイヘッドの単位塗工幅当たりの流量が0.15cm/minを下回る場合、ダイヘッド内で塗液が滞留する部分が生じ、塗液内の粒子の分散性が悪くなる。また、ダイヘッドの単位塗工幅当たりの流量が20cm/minを超えるような場合、塗布幅方向に流量分布が生じやすくなり、結果として膜厚ムラ等の塗布欠陥が発生する。
【0030】
また、本発明においては、用いられる塗液の粘度は1mPa・s以上60mPa・s以下であることが好ましい。用いられる塗液の粘度が1mPa・sを下回る場合、ダイヘッドのリップ先端の端部において塗液の吐出が不安定になりやすい。一方、用いられる塗液の粘度が60mPa・sを超えるような場合、ダイヘッドのリップ先端から安定的に塗液を吐出することが困難となる。
【0031】
また、本発明においては、支持体とダイリップ先端との距離Lは50μm以上300μm以下であることが好ましい。支持体とダイリップ先端との距離Lが50μmに満たない場合、過剰なせん断が塗液中の粒子にかかり、逆に均一に分散しないことがある。一方、支持体とダイリップ先端との距離Lが300μmを超えるような場合、塗液中の粒子が均一に分散するのに十分なせん断が生じない。
【0032】
また、本発明においては、支持体の搬送速度は1m/min以上80m/min以下であることが好ましい。支持体の搬送速度が1m/minに満たない場合、塗液中の粒子が均一に分散するのに十分なせん断が生じない。一方、支持体とダイリップ先端との距離Lが300μmを超えるような場合、過剰なせん断が塗液中の粒子にかかり、逆に均一に分散しないことがある。
【0033】
本発明に用いられるウェブ状の支持体としては、プラスチックフィルムを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。中でも、液晶表示装置の前面に本発明の積層体を用いる場合、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムは光学異方性がないため、好ましく用いられる。
【0034】
本発明に用いられる平均粒子径が0.03μm以上10μm以下粒子としては、シリカ粒子、アクリル粒子、アクリル−スチレン粒子、スチレン粒子、メラミン粒子、タルク、各種アルミノケイ酸塩、カオリンクレー、MgAlハイドロタルサイト等の光拡散粒子、フッ化カルシウム粒子、フッ化マグネシウム粒子、多孔質シリカ粒子等の低屈折粒子、金属粒子等の導電性粒子を用いることができるかこれらに限定されるものではない。
【0035】
本発明に用いられるバインダマトリックス形成材料としては、紫外線硬化型材料、電子線硬化型材料などの電離放射線硬化型材料、熱硬化性型材料、熱可塑性樹脂、金属アルコキシド等を用いることができる。
【0036】
本発明のバインダマトリックス形成材料として用いられる電離放射線硬化型材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタンアクリレート等が挙げられる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も使用することができる。
【0037】
本発明のバインダマトリックス形成材料として用いられる電離放射線硬化型材料のうち、紫外線硬化型材料を用いる場合、光重合開始剤を加える。光重合開始剤は、どのようなものを用いても良いが、用いる材料にあったものを用いることが好ましい。
【0038】
光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型材料100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。
【0039】
本発明のバインダマトリックス形成材料として用いられる熱硬化型材料としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等があげられる。
【0040】
本発明のバインダマトリックス形成材料として用いられる熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が使用できる。
【0041】
無機系または有機無機複合系マトリックスとしては、珪素アルコキシド系の材料を原料とする酸化珪素系マトリックスを用いる材料を使用できる。具体的には、テトラエトキシシランを例示することができる。
【0042】
これら粒子及びバインダマトリックス形成材料を塗液化する際には、必要に応じて溶媒を加えることができる。このとき、溶媒としては、特に限定されないが、組成物の安定性、塗布層に対する揮発性などを考慮して、水や、メタノール・エタノール・イソプロパノール・ブタノール・2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン・メチルエチルケトン・メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル・酢酸エチル・酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール・プロピレングリコール・ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ・ブチルセロソルブ・エチルカルビトール・ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン・ヘプタン・オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン・トルエン・キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等の中から適宜選択される。これらの溶媒は1種で用いてもよいが、2種類以上の混合物として用いてよい。
【0043】
また、本発明の塗液にあっては、粒子やバインダマトリックス形成材料の他に、先ほど示した光重合開始剤やレベリング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防汚剤、撥水剤などの各種添加剤を必要に応じて加えることができる。
【0044】
本発明にあっては、塗液に溶媒を用いた場合にあっては、ダイヘッドを用いたダイコーティング法による塗液を支持体上に塗布する工程の後に、溶媒を除去するための乾燥工程が設けてもよい。また、バインダマトリックス形成材料とて電離放射線硬化型材料を用いた場合にあっては、塗液と支持体上に塗布する工程の後に、電子線や紫外線といった電離放射線を照射する工程が設けられる。また、バインダマトリックス形成材料として熱硬化型材料を用いた場合には、加熱工程が設けられる。また、バインダマトリックス形成材料として、金属アルコキシドを用いた場合には、金属アルコキシドを加水分解、脱水縮合がセルことによりバインダマトリックスが形成され、塗液を支持体上に塗布する工程の後に、加熱工程が設けられる。
【実施例】
【0045】
(実施例)
以下のようにして、支持体上に塗布層を形成した。
バインダマトリックス形成材料としてペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製)100重量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ社製)5重量部、溶媒としてトルエン100.5重量部、粒子としてアクリルビーズ(MPシリーズ、MXシリーズ、粒子径:0.5、5.0、10.0μm、綜研化学社製)0.5重量部を混合させ、塗液を調製した。調製した粘度は5mPa・sであった。
【0046】
次に連続して搬送される支持体として650mm幅のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用い、ダイヘッドを用いたダイコーティング法により塗液をTACフィルム上に塗布し、乾燥、紫外線硬化の工程を経てTACフィルム上に防眩層となる塗布層を形成し、光学フィルム(積層体)を作製した。ここで、用いたダイヘッドのリップ先端の下流側の幅Hは0.01、0.05、0.1、1、2(mm)からD・Hが20以上20000以下となるように選択した。また、ダイヘッドのリップ先端から押し出される塗液の流量は120cm/min、ダイヘッドの塗工幅は64cmであり、ダイヘッドの単位塗工幅当たりの流量は1.875cm/minである。また、TACフィルムとダイヘッドのリップ先端との間に生じるせん断速度Dは、TACフィルムの搬送速度とTAC基材とダイヘッドのリップ先端との間の距離を調節することで変化させた。
【0047】
(比較例)
粒子として異なる粒子径のアクリルビーズ(MPシリーズ、MXシリーズ、粒子径:0.01、5.0、15.0μm、綜研化学社製)を用い、ダイヘッドのリップ先端の下流側の幅Hを変更し、TACフィルムとダイヘッドのリップ先端との間に生じるせん断速度Dを変化させた他は、(実施例)と同様に光学フィルムを作製した。
【0048】
(評価方法)
(実施例)および(比較例)で作製した光学フィルムに対し、塗液中の機能性粒子が均一に分散されているかを確認するため、形成した塗布層の膜厚分布Tとヘイズ分布Hを測定した。塗布層の膜厚分布Tは、形成した光学フィルムの幅方向5点を測定し、最大膜厚をTmax、最小膜厚をTmin、平均膜厚をTavとしたとき、下記式で表される。
T=(Tmax−Tmin)/Tav×100
このとき、塗布層の平均膜厚は接触式膜厚計(Anritsu Electric社製)を用いて測定した。
【0049】
また、塗布層のヘイズ分布Hは、最大ヘイズをHmax、最小ヘイズをHmin、平均ヘイズをHavとしたとき、下記式で表される。
H=(Hmax−Hmin)/Hav×100
このとき、ヘイズはJIS7150−1981に基づきヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0050】
(実施例)及び(比較例)で得られた積層体の評価は、膜厚分布・ヘイズ分布が共に3%以上の場合はバツ印、膜厚分布・ヘイズ分布どちらか一方のみが3%未満の場合は三角印、膜厚分布・ヘイズ分布が共に3%未満の場合は丸印で表した。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明の製造方法を用いて作製された光学フィルムは、塗布層の面内における膜厚のバラツキ、及び、ヘイズのバラツキが小さく、面内で均一な光学特性を備える光学フィルムであった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は本発明の積層体の説明断面図である。
【図2】図2は本発明のダイコーティング装置の説明概略図である。
【図3】図3は図2のダイコーティング装置のリップ先端部の拡大図である。
【符号の説明】
【0054】
1 積層体
2 支持体
3 粒子
4 バインダマトリックス
5 塗布層
6 ダイヘッド
6´ (ダイヘッドの)リップ先端
7 塗液タンク
8 配管
9 送液ポンプ
10 回転ロール
11 塗液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送されるウェブ状の支持体の少なくとも一方の面に、少なくとも粒子とバインダマトリックス形成材料を含む塗液をダイヘッドのリップ先端より吐出し前記支持体上に粒子とバインダマトリックスを備える塗布層を形成する工程を有する、前記支持体上に前記塗布層が積層されてなる積層体の製造方法であって、
前記粒子の平均粒子径をd(μm)が0.03μm以上10μm以下であり、
且つ、前記塗液を前記ダイヘッドのリップ先端から吐出させた際の前記支持体とダイヘッドのリップ先端との間の流れ場に生じるせん断速度をD(1/sec)、リップ先端の下流側の幅をH(mm)としたときのD・Hが20以上20000以下であることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記ダイヘッドのリップ先端から吐出される塗液の流量をs(cm/min)、前記ダイヘッドの塗工幅をl(cm)としたときの、ダイヘッドの単位塗工幅当たりの流量s/l(cm/min)が0.15cm/min以上20cm/min以下であることを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記塗液の粘度が1mPa・s以上60mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記支持体と前記ダイヘッドのリップ先端との距離が50μm以上300μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記支持体の搬送速度が1m/min以上80m/min以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
ウェブ状の支持体上に、光拡散粒子とバインダマトリックス形成材料を含む塗液を用い、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法により、ヘイズ値が5%以上50%未満の防眩層を形成したことを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−238089(P2008−238089A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84194(P2007−84194)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】