説明

積層体及び包装材料

【課題】優れた撥水性及び非付着性を持続的に発揮できる積層体、ならびに包装材料の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含有する層2の表面の少なくとも一部に、一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子3が付着している積層体ならびに包装材料。さらに有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子6が、前記熱可塑性樹脂を含有する層2に含まれている。前記熱可塑性樹脂を含有する層2の表面の少なくとも一部に、さらに抗菌剤粒子が付着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び包装材料に関する。特に、テーブルクロス、ナプキン、エプロン、テーブルカバー、床マット、壁面クロス、壁紙、ラベル、剥離紙、タグ、椅子カバー、防水シート、傘、スキーウェア、建築材、ベッドカバー、靴表面材、靴カバー、防水着、撥水フィルム、撥水シート等に用いる積層体ならびに食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等を包装するために用いる包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より多種多様の包装材料が知られているが、その内容物も多岐にわたる。例えば、ゼリー菓子、プリン、ヨーグルト、液体洗剤、練り歯磨き、カレールー、シロップ、ワセリン、洗顔クリーム、洗顔ムース等のように、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等がある。また、内容物の性状も、例えば固体、半固体、液体、粘性体、ゲル状物等のように様々なものがある。
【0003】
これらの内容物を包装するための包装材料においては、密封性が要求されるほかに、内容物、包装形態、用途等に応じて熱接着性、遮光性、耐熱性、耐久性等が要求される。ところが、これらの特性を満たしている包装材料であっても、次のような問題がある。すなわち、内容物が包装材料に付着するという問題である。内容物が包装材料に付着すれば、内容物をすべて使い切ることが困難になり、それだけ無駄が生じることになる。また、内容物をすべて使い切るためには包装材料に付着した内容物を別途に回収しなければならず、手間がかかる。このため、包装材料では、上記のような密封性等のほか、内容物が包装材料に付着しにくい性質(非付着性)を備えていることが必要である。
【0004】
これに対し、接着層を介して一体化された基材層とヒートシール層とを備えた蓋材において、ヒートシール層が、付着防止効果を有するグリセリン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アミド等を含むポリオレフィンからなり、その厚さが10μmよりも厚く、接着層と該ヒートシール層との間にポリオレフィンからなる中間層が設けられていることを特徴とする充填物付着防止蓋材が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−37310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような蓋材では、付着防止効果が十分なものとは言えない。この点において、実用化を進める上ではさらなる改善が必要である。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、従来技術よりも優れた非付着性を持続的に発揮できる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する積層体ないし包装材料を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の積層体ないし包装材料に係る。
1. 熱可塑性樹脂を含有する層の表面の少なくとも一部に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子が付着している積層体。
2. 前記層に有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子が含有されている、前記項1記載の積層体。
3. 前記層の表面の少なくとも一部にさらに抗菌剤粒子が付着している、前記項1又は2に記載の積層体。
4. 疎水性酸化物微粒子の付着量が0.01〜10g/mである、前記項1〜3のいずれかに記載の積層体。
5. 疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成している、前記項1〜4のいずれかに記載の積層体。
6. 疎水性酸化物微粒子のBET法による比表面積が50〜300m/gである、前記項1〜5のいずれかに記載の積層体。
7. 疎水性酸化物微粒子が疎水性シリカである、前記項1〜6のいずれかに記載の積層体。
8. 疎水性シリカがその表面にトリメチルシリル基を有する、前記項7に記載の積層体。
9. 前記充填粒子の平均粒子径が0.5〜100μmである、前記項2〜8のいずれかに記載の積層体。
10. 前記項1〜9のいずれかに記載の積層体を含む包装材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体及び包装材料は、良好な撥水性及び非付着性(又は防汚性)を発揮することができる。特に、熱可塑性樹脂を含む層(以下「熱可塑性樹脂層」ともいう。)に有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子が含有されている場合は、疎水性酸化物微粒子の脱落を効果的に抑制ないしは防止することができる結果、良好な撥水性及び非付着性をより効果的に持続させることが可能となる。
【0011】
また、本発明の積層体又は包装材料において、熱可塑性樹脂層の表面の少なくとも一部に、疎水性酸化物微粒子とともに抗菌剤粒子を付着させることにより、優れた抗菌作用を発揮させることが可能となる。
【0012】
また、本発明の積層体又は包装材料において、熱可塑性樹脂層を熱接着層として利用する場合は、良好な熱接着性を維持しながらも、優れた非付着性を持続的に発揮することができる。すなわち、熱接着層の種類、厚み等の制限を受けることなく、熱接着性を実用上阻害せずに、高い非付着性を得ることができる。より具体的には、熱接着時において、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子は当該熱接着層中に埋め込まれるので熱接着を阻害しない一方、熱接着される領域外に存在する疎水性酸化物微粒子はそのまま熱接着層上に保持されているのでその高い非付着性を発揮することができる。
【0013】
このような積層体は、例えばテーブルクロス、ナプキン、エプロン、テーブルカバー、床マット、壁面クロス、壁紙、ラベル、剥離紙、タグ、椅子カバー、防水シート、傘、スキーウェア、建築材、ベッドカバー、靴表面材、靴カバー、防水着、撥水フィルム、撥水シート等に好適に用いることができる。また、この積層体は、そのまま又は加工することにより、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等を包装するための包装材料としても好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の積層体の一例の断面構造の模式図である。
【図2】本発明の積層体を容器の蓋材として用いて作製された包装体の断面構造の模式図である。
【図3】実施例4の包装材料の一部の断面観察写真を示す。図3中、「Lotus表面」は「疎水性酸化物微粒子の三次元網目状構造からなる多孔質層の表面」を示す。
【図4】本発明の積層体の他の一例の断面構造の模式図である。
【符号の説明】
【0015】
1 基材層
2 熱可塑性樹脂層
3 疎水性酸化物微粒子
4 容器
5 内容物
6 充填粒子
7 抗菌剤粒子
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.積層体・包装材料
本発明の積層体は、熱可塑性樹脂を含有する層(以下「熱可塑性樹脂層」ともいう。)の表面の少なくとも一部に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子が付着していることを特徴とする。
【0017】
図1に本発明の積層体の一例の断面構造の模式図を示す。図1の積層体では、基材層1の一方面に、充填粒子6を含んだ熱可塑性樹脂層2が積層されており、その熱可塑性樹脂層2の表面に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子3が付着している。熱可塑性樹脂層2は包装材料(積層体)の一方の最外層に積層されている。最外層である熱可塑性樹脂層2において、他の層(図1では基材層)と隣接していない側の面(最外面)に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子3が付着している。疎水性酸化物微粒子3は熱可塑性樹脂層2に付着して固定されている。すなわち、疎水性酸化物微粒子と内容物とが接触しても疎水性酸化物微粒子が脱落しないように付着している。図1において、疎水性酸化物微粒子3は、一次粒子が含まれていても良いが、その凝集体(二次粒子)が多く含まれていることが望ましい。特に、疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層をなしていることがより好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂層2の上には疎水性酸化物微粒子により形成された三次元網目状構造からなる多孔質層が積層されていることが好ましい。
【0018】
本発明においては、熱可塑性樹脂層中に充填粒子を含有させる場合は、熱可塑性樹脂層の表面(疎水性酸化物微粒子が付着する面)がその断面において凹凸状になり、その凹部に疎水性酸化物微粒子が凝集状態で入り込むことにより、非付着性を長期間維持すると考えられる。すなわち、内容物のほか、工程中の機器又は装置との接触が生じても、当該凹部に入り込んだ疎水性酸化物微粒子は当該凹部に入り込んで固定された状態を維持することによって疎水性酸化物微粒子の脱落を効果的に抑制ないしは防止できる結果、優れた非付着性を持続的に発揮することができる。換言すれば、良好な非付着性を比較的長期にわたり発揮することができる。
【0019】
図2には、本発明の積層体を容器の蓋材として用いて作製された包装体の断面構造の模式図を示す。なお、図2では、疎水性酸化物微粒子3及び充填粒子6の表記は省略されている。容器4に内容物5が充填され、その開口部と積層体の熱可塑性樹脂層2とが接するような状態で密封される。つまり、熱可塑性樹脂層2に付着している疎水性酸化物微粒子が内容物5と接触可能な状態で本発明の積層体(包装材料)が使用されることになる。このような場合であっても、熱可塑性樹脂層2は疎水性酸化物微粒子によって保護され、優れた非付着性を有するので、たとえ内容物が熱可塑性樹脂層2近傍に接触しても(接近しても)、内容物の熱可塑性樹脂層への付着が疎水性酸化物微粒子(又は疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層)によって遮られ、なおかつ、はじかれる。このため、内容物が熱可塑性樹脂層近傍に付着したままの状態とならずに、疎水性酸化物微粒子(又は疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層)にはじかれて内容物が容器内に戻る。なお、容器4の材質としては、金属、合成樹脂、ガラス、紙、それらの複合材等から適宜選択でき、その材質に応じて熱可塑性樹脂層の種類、成分等を適宜調整することができる。
【0020】
図4には、本発明の積層体の他の一例の断面構造の模式図を示す。図1との相違点は、基材層1の一方面に積層されている充填粒子6を含んだ熱可塑性樹脂層2の表面にさらに抗菌剤粒子7が付着している点である。図4では、疎水性酸化物微粒子3に加えてさらに抗菌剤粒子7が付着し、疎水性酸化物微粒子3とともに抗菌剤粒子7が熱可塑性樹脂層2に付着して固定されている。すなわち、抗菌剤粒子が内容物と接触しても、抗菌剤粒子が脱落しないように熱可塑性樹脂層2の表面に付着している。
【0021】
図4に示すように、熱可塑性樹脂層中に充填粒子を含有させる場合は、熱可塑性樹脂層の表面(疎水性酸化物微粒子及び抗菌剤粒子が付着する面)がその断面において凹凸状になり、その凹部に疎水性酸化物微粒子と抗菌剤粒子が入り込むことにより、非付着性と抗菌性を長期間維持すると考えられる。すなわち、内容物のほか、工程中の機器又は装置との接触が生じても、当該凹部に入り込んだ疎水性酸化物微粒子と抗菌剤粒子は当該凹部に入り込んで固定された状態を維持することによって疎水性酸化物微粒子と抗菌剤粒子の脱落を効果的に抑制ないしは防止できる結果、優れた非付着性と抗菌性を持続的に発揮することができる。換言すれば、良好な非付着性と抗菌性を比較的長期にわたり発揮することができる。
【0022】
熱可塑性樹脂(層)
熱可塑性樹脂は、公知の熱可塑性樹脂を採用することができる。例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、フッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル系樹脂等のほか、これらのブレンド樹脂、これらを構成するモノマーの組合せを含む共重合体、変性樹脂等を用いることができる。
【0023】
熱可塑性樹脂層の厚みは特に限定的ではないが、生産性、コスト等の観点より0.01μm〜5mm程度とすることが好ましく、0.01μm〜2mm程度とすることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂層を熱接着層として機能させる場合は、熱接着性を考慮し、1〜150μmの厚みとするのが好ましい。特に、本発明の包装材料では、熱接着するに際して、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子が熱可塑性樹脂層中に埋め込まれ、熱可塑性樹脂層が最表面となることにより熱接着を行うことができる。このため、上記厚みの範囲内において、疎水性酸化物微粒子を熱可塑性樹脂層にできるだけ多く埋め込むことができる厚みに設定することが望ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂層中における熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂の種類、充填粒子及びその他の添加剤の使用の有無等によって異なるが、通常は20〜100重量%とし、特に30〜99重量%とすることが好ましく、さらに好ましくは50〜99重量%とする。
【0025】
本発明では、必要に応じて、熱可塑性樹脂(層)を補強したり、他の特性(耐水分透過性、耐酸素透過性、遮光性、断熱性、耐衝撃性等)を付与する目的で、熱可塑性樹脂(層)に他の層(基材層と称す)を積層することもできる。この場合、通常は、図1に示すように基材層/熱可塑性樹脂層/疎水性酸化物微粒子を順次積層した3層構造とすれば良い。
【0026】
基材層を用いる場合、基材層としては、公知の材料を採用することができる。例えば、紙、合成紙、樹脂フィルム、蒸着層付き樹脂フィルム、合成樹脂板、アルミニウム箔、その他の金属箔、金属板、織布、不織布、皮、合成皮革、木材、ガラス板等の単体又はこれらの複合材料・積層材料を好適に用いることができる。
【0027】
基材層には、公知の包装材料、建築材料、服飾材、日用品等で採用されている各層が任意の位置に積層されていても良い。例えば、印刷層、印刷保護層(いわゆるOP層)、着色層、接着剤層、接着強化層、プライマーコート層、アンカーコート層、防滑剤層、滑剤層、防曇剤層等が挙げられる。
【0028】
基材層の積層方法、基材層と熱可塑性樹脂層との積層方法も限定的でなく、例えばドライラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、ヒートラミネート法等の公知の方法を採用することができる。
【0029】
熱可塑性樹脂層を熱接着層として機能させる場合は、公知の熱接着性材料を採用することができる。例えば、公知のシーラントフィルムのほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤により形成される層を採用することができる。すなわち、本明細書においては、熱可塑性樹脂には、樹脂成分を含有する公知の熱接着剤も含む。本発明では、この中でも、ラッカータイプ接着剤又はホットメルト接着剤を採用するのが好ましく、特にラッカータイプ接着剤により形成される熱接着層を好適に採用することができる。ホットメルト層を形成する場合には、ホットメルト接着剤を溶融状態で塗布した後、冷却固化するまでに疎水性酸化物微粒子を付与すれば熱接着層に疎水性酸化物微粒子をそのまま付着させることができるため、本発明積層体(又は包装材料)の連続的な生産が容易となる。
【0030】
充填粒子
本発明では、必要に応じて熱可塑性樹脂層に充填粒子を含有させることもできる。熱可塑性樹脂層中に充填粒子を分散させることにより、より優れた耐摩耗性等を熱可塑性樹脂層に付与することができる。
【0031】
充填粒子としては、有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子を採用することができる。
【0032】
無機成分としては、例えば1)アルミニウム、銅、鉄、チタン、銀、カルシウム等の金属又はこれらを含む合金又は金属間化合物、2)酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の酸化物、3)リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等の無機酸塩又は有機酸塩、4)ガラス、5)窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック等を好適に用いることができる。
【0033】
有機成分としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。
【0034】
本発明の充填粒子は、無機成分からなる粒子あるいは有機成分からなる粒子のほか、無機成分及び有機成分の両者を含む粒子を用いることができる。この中でも特に、アクリル系樹脂粒子、親水性シリカ粒子、リン酸カルシウム粒子、炭粉、焼成カルシウム粒子、未焼成カルシウム粒子、ステアリン酸カルシウム粒子等の少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0035】
充填粒子の平均粒子径(レーザー回折式粒度分布計による)は0.5〜100μm程度が好ましく、1〜50μmがさらに好ましく、5〜30μmが最も好ましい。0.5μm未満では取扱い性、前述の凹凸形成等の点で不向きである。他方、100μmを超える場合は、充填粒子の脱落、分散性等の点で不向きである。
【0036】
充填粒子の形状は限定的でなく、例えば球状、回転楕円体状、不定形状、涙滴状、扁平状、中空状、多孔質状等のいずれであっても良い。
【0037】
熱可塑性樹脂層中における充填粒子の含有量は、熱可塑性樹脂又は充填粒子の種類、所望の物性等に応じて適宜変更できるが、一般的には固形分重量基準で1〜80重量%が好ましく、3〜50重量%がさらに好ましい。
【0038】
充填粒子を含有させる方法は、特に限定されないが、一般的には熱可塑性樹脂層を形成するための原料(熱可塑性樹脂を含む組成物)に充填粒子を配合する方法等が挙げられる。混合する方法は、乾式混合又は湿式混合のいずれであっても良い。一般的に熱可塑性樹脂層の主成分は1)熱可塑性樹脂又はそれを構成するモノマーもしくはオリゴマー、2)溶剤、3)必要に応じて架橋剤等からなるため、それらの混合物中に充填粒子を添加混合すれば良い。
【0039】
疎水性酸化物微粒子
熱可塑性樹脂層に付着する疎水性酸化物微粒子は、一次粒子平均径が通常3〜100nmであり、好ましくは5〜50nmであり、より好ましくは5〜20nmである。一次粒子平均径を上記範囲とすることにより、疎水性酸化物微粒子が適度な凝集状態となり、その凝集体中にある空隙に空気等の気体を保持することができる結果、優れた非付着性を得ることができる。すなわち、この凝集状態は、熱可塑性樹脂層に付着した後も維持されるので、優れた非付着性を発揮することができる。本発明において、疎水性酸化物微粒子は、熱可塑性樹脂(層)の片面あるいは両面に付着させることができる。
【0040】
なお、本発明において、一次粒子平均径の測定は、走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で実施することができ、走査型電子顕微鏡の分解能が低い場合には透過型電子顕微鏡等の他の電子顕微鏡を併用して実施しても良い。具体的には、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径と最短径との平均値を直径とみなし、走査型電子顕微鏡等による観察により任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を一次粒子平均径とする。
【0041】
疎水性酸化物微粒子の比表面積(BET法)は特に制限されないが、通常50〜300m/gとし、特に100〜300m/gとすることが好ましい。
【0042】
疎水性酸化物微粒子としては、疎水性を有するものであれば特に限定されず、表面処理により疎水化されたものであっても良い。例えば、親水性酸化物微粒子をシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子を用いることもできる。酸化物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。例えばシリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア等の少なくとも1種を用いることができる。これらは公知又は市販のものを採用することができる。例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(以上、エボニック デグサ社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
【0043】
この中でも、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。とりわけ、より優れた非付着性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。これに対応する市販品としては、例えば前記「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」(いずれもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
【0044】
熱可塑性樹脂層に付着させる疎水性酸化物微粒子の付着量(乾燥後重量)は限定的ではないが、通常0.01〜10g/mとするのが好ましく、0.2〜1.5g/mとするのがより好ましく、0.2〜1g/mとするのが最も好ましい。上記範囲内に設定することによって、より優れた非付着性が長期にわたって得ることができる上、疎水性酸化物微粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。熱可塑性樹脂層に付着した疎水性酸化物微粒子は、三次元網目構造を有する多孔質層を形成していることが好ましく、その厚みは0.1〜5μm程度が好ましく、0.2〜2.5μm程度がさらに好ましい。このようなポーラスな層状態で付着することにより、当該層に空気を多く含むことができ、より優れた非付着性を発揮することができる。
【0045】
また、疎水性酸化物微粒子は、熱可塑性樹脂層の全面(基材層側と反対側の面の全面)に付着していても良いし、熱可塑性樹脂層が熱接着される領域(いわゆる接着しろ)を除いた領域に付着していても良い。本発明では、熱可塑性樹脂層の全面に付着している場合でも、熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子のほとんど又は全部が当該熱可塑性樹脂層中に埋没するので熱接着が阻害されることはなく、工業的生産上でも熱可塑性樹脂層の全面に付着している方が望ましい。
【0046】
抗菌剤粒子
本発明では、必要に応じて抗菌性を付与するために熱可塑性樹脂層に抗菌剤粒子を付着させることもできる。
【0047】
抗菌剤粒子としては、抗菌作用を有するものであれば特に限定されず、公知の抗菌剤を利用することもできる。例えば、銀系、銅系、ホウ酸カルシウム系、酸化亜鉛系等の無機系抗菌剤;イソチアン酸アリル系、β-ラクタム系、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、モノバクタム系、アミノグリコシド系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ピリドンカルボン酸系、オキサゾリジノン系等の有機系抗菌剤;有機無機ハイブリッド型抗菌剤;キトサン、ヒノキチオ−ル等の天然系抗菌剤を使用することができる。これらの中でも、特に食品添加物用の抗菌剤あるいは可食性の抗菌剤が適しており、このような抗菌剤として市販品も使用することができる。例えば、大阪化成株式会社製炭化水素系抗菌剤「商品名:マルカサイドP300、812A」、バイオベンチャーバンク株式会社製アミノ酸系抗菌剤「商品名:パワーアンチ」、西日本イシダ株式会社製カラシ抽出物抗菌剤「ハイパー24ST食品添加物」、株式会社シナネンゼオミック製銀ゼオライト系抗菌剤「ゼオミック」等を用いるのが好ましい。
【0048】
抗菌剤粒子の平均粒子径は限定的ではないが、通常0.5〜10μmであり、好ましくは2〜7μmであり、より好ましくは5〜7μmとすれば良い。平均粒子径を上記範囲に設定することにより、抗菌剤粒子がより効果的に熱可塑性樹脂層表面の凹凸の凹部に入り込み、脱落が抑止され、優れた抗菌性を長期間発揮させることが可能となる。本発明において、抗菌剤粒子は、疎水性酸化物微粒子と同様、熱可塑性樹脂(層)の片面あるいは両面に付着させることができる。
【0049】
なお、本発明において、平均粒子径の測定は、走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で実施することができ、走査型電子顕微鏡の分解能が低い場合には透過型電子顕微鏡等の他の電子顕微鏡を併用して実施しても良い。具体的には、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径と最短径との平均値を直径とみなし、走査型電子顕微鏡等による観察により任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を一次粒子平均径とする。
【0050】
熱可塑性樹脂層に付着させる抗菌剤粒子の付着量(乾燥後重量)は限定的ではないが、通常0.01〜10g/mとするのが好ましく、0.1〜1.5g/mとするのがより好ましく、0.1〜1.0g/mとするのが最も好ましい。上記範囲内に設定することによって、より優れた抗菌性を長期にわたって得ることができる上、抗菌剤粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。また、抗菌剤粒子は、疎水性酸化物微粒子と同様、熱可塑性樹脂層の全面(基材層側と反対側の面の全面)に付着していても良いし、熱可塑性樹脂層が熱接着される領域(いわゆる接着しろ)を除いた領域に付着していても良い。本発明では、熱可塑性樹脂層の全面に付着している場合でも、熱接着される領域上に存在する抗菌剤粒子のほとんど又は全部が当該熱可塑性樹脂層中に埋没するので熱接着が阻害されることはなく、工業的生産上でも熱可塑性樹脂層の全面に付着している方が望ましい。
【0051】
包装材料及びその他の用途
本発明の積層体は、そのままで又は加工を施した上で包装材料をはじめ、他の様々な用途に用いることができる。他の用途としては、非付着性、防汚性、撥水性等が要求される分野であれば限定的でなく、例えばテーブルクロス、ナプキン、エプロン、テーブルカバー、床マット、壁面クロス、壁紙、ラベル、剥離紙、タグ、椅子カバー、防水シート、傘、スキーウェア、建築材、ベッドカバー、靴表面材、靴カバー、防水着、撥水フィルム、撥水シート等を挙げることができる。
【0052】
2.積層体・包装材料の製造方法
本発明の積層体(包装材料)は、例えば、少なくとも熱可塑性樹脂層を有する積層体ないし包装材料を製造する方法であって、当該熱可塑性樹脂層表面に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子を付着させる工程(以下「付着工程」ともいう。)を含む製造方法によって好適に得ることができる。
【0053】
また、抗菌剤粒子を付着させる場合は、抗菌剤粒子を付着させる工程(この場合は、前記付着工程とまとめて「付着工程」という。)を含む製造方法によって、本発明の積層体(包装材料)を得ることができる。この場合、疎水性酸化物微粒子と抗菌剤粒子とは、同時に付着させても良いし、別々の工程で付着させても良い。また、別々の工程で実施する場合も、いずれを先に付着させても良い。
【0054】
熱可塑性樹脂層は、フィルム状あるいはシート状のものであればそのまま用いることもできる。必要に応じて公知の基材層を公知の方法に従って積層することができる。例えば、単層基材又はドライラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、ヒートラミネート法等により作製された積層材料に対して、前記1.で説明した方法により熱可塑性樹脂層を形成すれば良い。充填粒子を用いる場合は、充填粒子は前述のとおり、熱可塑性樹脂層を形成するための原料に予め含有させれば良い。
【0055】
疎水性酸化物微粒子及び抗菌剤粒子の付着工程を実施する方法は特に限定されない。例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、刷毛塗り、粉体静電法等の公知の方法を採用することができる。ロールコーティング等を採用する場合は、疎水性酸化物微粒子を溶媒に分散させてなる分散体を用いて熱可塑性樹脂層上に塗膜を形成した後に乾燥する方法により付着工程を実施することができる。この場合の溶媒は限定されず、水のほか、例えばアルコール(エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、IPA、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤を適宜選択することができる。この際、微量の分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤等を併用することもできる。溶媒に対する疎水性酸化物微粒子の分散量は通常10〜100g/L程度とすれば良い。また、溶媒に対する抗菌剤粒子の分散量は通常5〜100g/L程度とすれば良い。乾燥する場合は、自然乾燥又は強制乾燥(加熱乾燥)のいずれであっても良いが、工業的には強制乾燥するのが良い。乾燥温度は、熱可塑性樹脂層に影響を与えない範囲であれば制限されないが、通常は150℃以下、特に80〜120℃とすることが好ましい。なお、疎水性酸化物微粒子と抗菌剤粒子とは、同時に(同一の溶媒を使用して)付着させても良いし、別々の工程(同一あるいは別々の溶媒を使用して)で付着させても良い。
【0056】
本発明の製造方法では、前記の付着工程中及び/又は付着工程後に積層体を加熱することもできる。積層体を加熱することにより熱可塑性樹脂層に対する疎水性酸化物微粒子及び抗菌剤粒子の付着力(固定力)をより高めることができる。この場合の加熱温度Tは、熱可塑性樹脂層の種類等に応じて適宜設定することができ、通常は用いる熱可塑性樹脂層の融点Tm(溶融開始温度)℃に対してTm−50≦T≦Tm+50の範囲とすることが好ましい。
【0057】
このようにして得られた積層体は、そのままで又は加工を施して包装材料として用いることができる。加工方法は、公知の包装材料の場合と同様の方法を採用することができる。例えば、エンボス加工、ハーフカット加工、ノッチ加工等を施しても差し支えない。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0059】
実施例1〜9及び比較例1
熱可塑性樹脂層を有する積層体に対して疎水性酸化物微粒子を付着させたサンプルを作製した。具体的には下記のようにして各サンプルを作製した。
【0060】
(1)積層体の作製
(実施例1、比較例1)
坪量55g/mの紙の一方面に表印刷及びOPコート(オーバープリントコート)を施し、他方表面にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m;Dと略称)を用いて、アルミニウムを蒸着した厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(AL蒸着PETと略称)の蒸着面と貼り合わせた。さらにこの貼り合せ材のポリエチレンテレフタレートフィルム上に熱可塑性樹脂層としてヒートシールラッカー(主成分:ポリエステル系樹脂160重量部+アクリル系樹脂10重量部+溶剤(トルエン+MEKの混合溶剤)40重量部:ラッカーと略称)を乾燥後重量約3g/m(乾燥条件は150℃×10秒)となるように塗布した。これによって、「OP/印刷/紙/D/AL蒸着PET/ラッカー」なる構成の積層体を得た。
(実施例2〜6)
上記ヒートシールラッカー中にアクリル樹脂ビーズ(平均粒子径:30μm、積水化成工業株式会社製)をさらに1〜20重量部(表中に示す)添加混合し、乾燥後重量3g/m(乾燥条件は150℃×10秒)となるように塗布した以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。
(実施例7〜8)
上記実施例1において、ヒートシールラッカー中にアクリル樹脂ビーズ(平均粒子径:15μm、積水化成工業株式会社製)をさらに10重量部添加混合し、乾燥後重量3g/m(乾燥条件は150℃×10秒)となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
(実施例9)
上記実施例1において、ヒートシールラッカー中にアクリル樹脂ビーズ(平均粒子径:8μm、積水化成工業株式会社製)をさらに10重量部添加混合し、乾燥後重量3g/m(乾燥条件は150℃×10秒)となるように塗布した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。
【0061】
(2)疎水性酸化物微粒子の付着
(実施例1〜9)
疎水性酸化物微粒子(製品名「AEROSIL R812S」エボニック デグサ社製、BET比表面積:220m/g、一次粒子平均径:7nm)5gをエタノール100mLに分散させてコート液を調製した。このコート液を前記(1)で作製された積層体の熱可塑性樹脂層の面に乾燥後重量で0.11〜0.4g/m(表中に示す)になるようにバーコート方式で付与した後、100℃で10秒程度をかけて乾燥させてエタノールを蒸発させることにより、サンプル(包装材料)を得た。
(比較例1)
実施例1の積層体において、疎水性酸化物微粒子を付着させていないものを試験用サンプルとした。
【0062】
(3)疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層の観察
実施例の包装材料において、疎水性酸化物微粒子からなる層の構造をFE−SEMにより観察した。その結果、いずれの包装材料についても、疎水性酸化物微粒子により形成された三次元網目構造を有する多孔質層が観察された。その一例として、実施例4の包装材料の一部断面観察写真を図3に示す。なお、同様の構造が形成されていることは他の実施例でも観察された。
【0063】
試験例1(開封強度)
各実施例及び比較例で得られたサンプルについて開封強度を調べた。
各包装材料から蓋材の形状(タブ付きの縦62mm×横67mmの矩形)に切り抜いた蓋材を用いて包装体を作製した。具体的には、フランジ付きポリスチレン製容器(フランジ幅4mm、フランジ外径60mm×65mm□、高さ約48mm、内容積約100cmになるように成形したもの)のフランジ上に前記蓋材をヒートシールすることによって包装体をそれぞれ作製した。前記ヒートシール条件は、温度210℃及び圧力2kg/cmにて1秒間で2mm幅のリング(凹状)シールとした。各包装体上の蓋材のタブを開封始点からみて仰角45度の方向に100mm/分の速度で引っ張り、開封時の最大荷重を開封強度(N)とし、各包装体についてn=6点測定し、その平均値を求めた。その結果を表1及び表2に示す。
【0064】
試験例2(密封性(封緘強度))
試験例1で作製した包装体を試験サンプルとし、{乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)}の封緘強度試験法に準じて封緘強度試験を行った。但し、容器内に空気を流入し続け、空気漏れする時点の内圧(mmHg)を測定した。各包装体についてn=3点測定したが、いずれも測定上限値300mmHg以上であった。その結果を表1及び表2に示す。
【0065】
試験例3(初期ヨーグルト非付着性)
各積層体の熱可塑性樹脂層側を試験面とし、この面を上面として水平な平台にクリップで固定し、市販のヨーグルト(製品名「おいしいカスピ海」ソフトヨーグルト、グリコ乳業株式会社製1滴:約0.4g)を至近距離から垂らし、水平な平台を傾け、ヨーグルト液滴が転げ落ちた場合は合格、平台を90度傾けても転げ落ちずに垂れ流れた場合を不合格とした。その結果を表1及び表2に示す。
【0066】
試験例4(倒立試験)
試験例1で用いたフランジ付きポリスチレン製容器中に市販のヨーグルト(製品名「おいしいカスピ海」ソフトヨーグルト、グリコ乳業株式会社製)を85gそれぞれ充填し、試験例1と同様にして蓋材をヒートシールした。各包装体を10秒間天地逆(開口部が地の方向の状態)にして保持した後、各包装体の天地を戻した状態(=開口部が天方向の状態)で、手指で蓋材を開封し、各蓋材の熱可塑性樹脂層側の面の状態を目視で観察した。ヨーグルトが付着していない場合を合格、ヨーグルトが付着している状態を不合格とした。その結果を表1及び表2に示す。
【0067】
試験例5(振動試験)
試験例4と同様に各包装体を作製し、これらの各包装体を振動試験機(アイデックス株式会社製BF−30U)を用いて20分間、30Hz(1分間に30回の上下往復振動)、2.2mm振幅(上下方向)、加速度約1Gの条件にて振動させた後、蓋材を手指で開封し、各蓋材に付着したヨーグルトの重量を測定した。0.5g/cup未満を合格、0.5g/cup以上を不合格とした。その結果を表1及び表2に示す。
【0068】
試験例6(耐磨耗試験)
各積層体の熱可塑性樹脂層側の面を試験面とし、学振形耐磨耗試験機(JIS K 5701-1)で往復回数100回、荷重200g、相手材:クロムメッキ面の条件にて耐磨耗試験を実施した。耐磨耗試験後に試験例3と同じヨーグルト非付着性試験を行い、ヨーグルト液滴が転げ落ちた場合は合格、平台を90度傾けても転げ落ちずに垂れ流れた場合を不合格とした。その結果を表1及び表2に示す。
【0069】
試験例7(接触角)
各積層体の熱可塑性樹脂層側を試験面とし、接触角測定装置(固液界面解析装置「Drop Master300」協和界面科学株式会社製)を用いて純水の接触角を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1及び表2の結果からも明らかなように、従来品(比較例)では非付着性(撥ヨーグルト性)は全く発揮せず、純水の接触角も85度であるのに対し、本発明(実施例)では高い非付着性を発揮していることがわかる。開封強度、密封性(封緘強度)の点においても実用上差し支えのない良好な性能を示していることがわかる。また、接触角の結果からも、本発明の積層体及び包装材料が高い撥水性を示すことがわかる。
【0073】
特に、本発明の積層体及び包装材料の熱可塑性樹脂層側の最外面(疎水性酸化物微粒子が付着した面)は純水の接触角が150度以上を示し、従来の包装材料には見られない優れた内容物非付着性を有する。また、熱可塑性樹脂層に充填粒子として無機粒子あるいは有機粒子を含有させた場合は、耐摩耗性が飛躍的に向上し、疎水性酸化物微粒子の脱落を効果的に抑制ないしは防止できる結果、良好な非付着性を持続的に得られることがわかる。
【0074】
実施例10〜12及び比較例2
熱可塑性樹脂層を有する積層体に対して疎水性酸化物微粒子と抗菌剤粒子を付着させたサンプルを作製した。具体的には下記のようにして各サンプルを作製した。
【0075】
(1)積層体の作製
(比較例2)
厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)上に熱可塑性樹脂層としてアクリル樹脂ビーズ入りヒートシールラッカー(主成分:ポリエステル系樹脂160重量部+アクリル系樹脂10重量部+アクリル樹脂ビーズ(平均粒子径:20μm、積水化成工業株式会社製)を11重量部+溶剤(トルエン+MEKの混合溶剤)40重量部:ラッカーと略称)を乾燥後重量約3g/m(乾燥条件は150℃×10秒)となるように塗布した。これによって、「PET/ビーズ入りラッカー」なる構成の積層体を得た。
(実施例10〜12)
疎水性酸化物微粒子(製品名「AEROSIL R812S」エボニック デグサ社製、BET比表面積:220m/g、一次粒子平均径:7nm)5gと銀ゼオライト系抗菌剤粒子(製品名「ゼオミック」株式会社シナネンゼオミック製、平均粒子径:3μm)を1.0〜5.0g(表3に重量比を記載)を、エタノール100mLに分散させてコート液を調製した。このコート液を比較例2と同様に作製した積層体の熱可塑性樹脂層の面に乾燥後重量で0.5〜0.8g/m(表3に記載)になるようにバーコート方式で付与した後、100℃で10秒程度をかけて乾燥させてエタノールを蒸発させることにより、サンプル(包装材料)を得た。
【0076】
疎水性酸化物微粒子からなる多孔質層の観察
実施例10〜12の包装材料において、疎水性酸化物微粒子からなる層の構造をFE−SEMにより観察した。その結果、いずれの包装材料についても、疎水性酸化物微粒子により形成された三次元網目構造を有する多孔質層が観察された。
【0077】
試験例1〜7
各実施例及び比較例で得られたサンプルについて前記試験例1〜7と同様の試験を実施した。その結果を表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
試験例8(抗菌性試験)
実施例10〜12及び比較例2の各積層体の熱可塑性樹脂層側を試験面とし、次の条件により抗菌性試験を実施した。その結果を表5に示す。表4には、接種直後対照区の菌数と24時間後対照区の菌数を示しており、抗菌性試験が有効であることがわかる。
1)試験方法:JIS Z2801−2000(N=1)
2)菌液濃度:1/500NB
3)菌液滴下量:0.3ml
4)保存温度:35±1℃
5)保存湿度:>90%
6)使用細菌:黄色ブドウ球菌(NBRC12732)
大腸菌(NBRC3972)
7)備考:殺菌方法は紫外線10分間照射
被覆フィルムとしてメンブランフィルター(φ25mm円形を使用)
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

<10:菌を検出しなかったことを意味する。(測定限界以下)
判定0:抗菌効果有り(JIS Z2801の効果(抗菌活性値2.0以上)をいう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含有する層の表面の少なくとも一部に一次粒子平均径3〜100nmの疎水性酸化物微粒子が付着している積層体。
【請求項2】
有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子が前記熱可塑性樹脂を含有する層に含まれている、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記層の表面の少なくとも一部にさらに抗菌剤粒子が付着している、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
疎水性酸化物微粒子の付着量が0.01〜10g/mである、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
疎水性酸化物微粒子が三次元網目状構造からなる多孔質層を形成している、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
疎水性酸化物微粒子のBET法による比表面積が50〜300m/gである、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
疎水性酸化物微粒子が疎水性シリカである、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
疎水性シリカがその表面にトリメチルシリル基を有する、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記充填粒子の平均粒子径が0.5〜100μmである、請求項2〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の積層体を含む包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−93315(P2011−93315A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218768(P2010−218768)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】