説明

積層型電子部品の製造方法

【課題】クラックの有無を高い精度で判別できる積層型電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層したのち加圧して、グリーンチップを得る。得られたグリーンチップを焼成して素体を得る。素体を流体に浸漬した状態で、当該流体を加圧する。流体の加圧後、当該流体から素体を取り出して素体におけるクラックの有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層型電子部品のクラックを検出する方法として、例えば特許文献1記載のように、積層型電子部品に高周波を入射させてその反射波を解析するものが知られている。また、例えば特許文献2記載のように、積層型電子部品にDCバイアスを印加し、このDCバイアスの周波数を変化させたときに得られるインピーダンスの周波数特性を解析するものも知られている。
【特許文献1】特開2004−325266号公報
【特許文献2】特開平10−293107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、クラックが小さい場合、反射波やインピーダンスの周波数特性には変化が生じにくい。そのため、特許文献1及び2記載の方法では微小なクラックの検出が困難となっていた。
【0004】
積層型電子部品は通常、クラックの有無を判別する工程を経て製造される。クラックの有無の判別に特許文献1,2に記載の方法を適用した場合、上述の理由で正確な判別結果が得られないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、クラックの有無を高い精度で判別できる積層型電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層型電子部品の製造方法は、複数のセラミックグリーンシートを積層して第1の所定の圧力で加圧した後、切断してグリーンチップを得るグリーンチップ形成工程と、グリーンチップを焼成して素体を得る素体形成工程と、素体を流体に浸漬した状態で、流体を第2の所定の圧力で加圧する流体加圧工程と、流体の加圧後、当該流体から素体を取り出して素体におけるクラックの有無を判別する判別工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、素体を流体に浸漬した状態で当該流体を加圧する工程を有している。素体を流体に浸漬することにより、素体表面の微小なクラックにも流体を浸入させることができる。この状態で流体を加圧することにより、クラックを内側から押し広げて成長させることができる。このように本発明に係る積層型電子部品の製造方法によれば、流体加圧工程を経ることにより微小なクラックであってもより大きく成長させることができるので、判別工程にてクラックの有無を高い精度で判別することが可能となる。
【0008】
好ましくは、第2の所定の圧力は、第1の所定の圧力よりも小さい。
【0009】
この場合、流体加圧工程にて流体に加える圧力は、グリーンチップ形成工程にて複数のセラミックグリーンシートに加える圧力よりも小さくなる。よって、流体内にて素体に過度な圧力がかかることを抑止でき、クラックの無い素体が流体加圧工程で破壊されることを未然に防げる。
【0010】
好ましくは、素体の外表面に端子電極を形成する端子形成工程を更に有し、流体加圧工程では、端子電極が形成される前の素体を流体に浸漬し、端子形成工程では、判別工程にてクラックが無いと判断された場合に素体の外表面に端子電極を形成する。
【0011】
この場合、端子形成工程の前に流体加圧工程を実施するので、例えばクラックが端子電極下に隠れてしまい当該クラックに対する流体の浸漬が困難になる、ということがない。よって、クラックを確実に成長させることができ、判別工程にてクラックの有無を高い精度で判別することが可能となる。
【0012】
好ましくは、素体の外表面に端子電極を形成する端子形成工程と、端子電極上にめっき層を形成するめっき工程と、を更に有し、流体加圧工程では、端子電極が既に形成され且つめっき層が形成される前の素体を流体に浸漬し、めっき工程では、判別工程にてクラックが無いと判断された場合に素体の端子電極上にめっき層を形成する。
【0013】
クラックを有する素体にめっき層を形成した場合、めっき液がクラックを介して素体内部に浸入し、素体の特性を悪化させてしまうことがある。本発明ではめっき工程の前に流体加圧工程および判別工程を実施するので、クラックを有する素体にめっき層を形成してしまうことを抑制できる。その結果、素体の特性の悪化が防げると共に、めっき工程にかかるコストを低下させることができる。
【0014】
好ましくは、素体の外表面に端子電極を形成する端子形成工程と、端子電極上にめっき層を形成するめっき工程と、を更に有し、流体加圧工程では、端子電極及びめっき層が形成された素体を流体に浸漬する。
【0015】
素体にクラックがある場合、めっき工程においてクラックに水分が浸入することがある。本発明ではめっき工程の後に流体加圧工程を実施するので、クラックに浸入した水分を流体加圧工程で加圧することができ、その結果クラックを成長させることができる。よって、判別工程においてクラックの有無を高い精度で判別することが可能となる。
【0016】
好ましくは、流体は液体である。
【0017】
チャンバ等の密封容器を用いて流体加圧工程を実施する場合、流体が液体であれば、比較的簡便な装置で加圧を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クラックの有無を高い精度で判別できる積層型電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
【0020】
第1実施形態に係る積層型電子部品の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。
【0021】
積層型電子部品1は、図1に示されるように、略直方体形状の素体2と、素体2の長手方向の両側面にそれぞれ形成された一対の端子電極3とを備えている。素体2は、誘電体層(図示せず)と内部電極(図示せず)とが交互に積層されることで構成されている。内部電極は、素体2の長手方向の側面に引き出されて端子電極3に接続されている。
【0022】
このような積層型電子部品1の製造方法について説明する。図2は、第1実施形態に係る積層型電子部品1の製造方法を示すフローチャートである。
【0023】
まず、誘電体層となるセラミックグリーンシートを複数作製する(ステップS01)。
【0024】
より具体的には、内部電極となる導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートと、導電パターンが形成されてないセラミックグリーンシートとを作製する。導電パターンが形成されてないセラミックグリーンシートは、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料にバインダ樹脂(例えば有機バインダ樹脂等)に、溶剤、可塑剤等を加えて混合分散したセラミックスラリーを支持体上に塗布後、乾燥させることにより得られる。セラミックスラリーを支持体上に塗布する手段としては、例えばドクターブレード法が用いられる。導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートは、上述のようにして得られた導電パターンが形成されてないセラミックグリーンシートの上面に、電極ペーストをスクリーン印刷することによって得られる。電極ペーストは、例えばNi、Ag、Pdなどの金属粉末にバインダ樹脂や溶剤等を混合したペースト状の組成物である。印刷手段としては、例えばスクリーン印刷が用いられる。
【0025】
続いて、得られたセラミックグリーンシートからグリーンチップを作製する(グリーンチップ形成工程、ステップS02)。
【0026】
より具体的には、導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートと、導電パターンが形成されていないセラミックグリーンシートとを所定枚数ずつ交互に積層して、グリーンシート積層体を作製する。そして、金型プレス成形法や温間静水圧プレス(WIP:Warm Isostatic Press)法といった静水圧プレス成形法により、グリーンシート積層体を所定の圧力(第1の所定の圧力)で圧着する。金型プレス成形法で圧着する場合、グリーンシート積層体には50〜150MPa程度の圧力が加えられることになる。温間静水圧プレス法で圧着する場合、グリーンシート積層体には100〜200MPa程度の圧力が加えられることになる。圧着後、グリーンシート積層体をダイシングブレードによって複数に切断する。これにより、複数のグリーンチップが得られる。
【0027】
続いて、得られたグリーンチップを所定の温度(例えば、1200℃〜1300℃程度)で焼成する(素体形成工程、ステップS03)。グリーンチップを焼成することにより、セラミックグリーンシートが誘電体層となり、導電パターンが内部電極となる。つまり、グリーンチップを焼成することにより素体2が得られる。
【0028】
続いて、得られた素体2に端子電極3を形成する(端子形成工程、ステップS04)。端子電極3は、素体2の長手方向の両端面にそれぞれ銀、ニッケル又は銅を主成分とする電極ペースト塗布して、所定温度(例えば、600℃〜1200℃程度)で焼き付けることにより形成される。
【0029】
続いて、端子電極3が形成された素体2をイオン交換水(流体)に浸漬した状態で、イオン交換水を加圧する(流体加圧工程、ステップS05)。
【0030】
より具体的には、イオン交換水が入ったチャンバを用意し、当該チャンバ内に端子電極3が形成された素体2を入れる。このとき、端子電極3が形成された素体2がイオン交換水中に浸漬されるようにする。そして、チャンバを密栓する。密栓後、チャンバの内圧を上昇させることにより、イオン交換水を所定の圧力(第2の所定の圧力)まで加圧する。ここで、所定の圧力は、グリーンシート積層体を圧着するときの圧力よりも小さいものとする。チャンバの内圧を所定の値まで上昇させた状態を、所定の時間(例えば、1時間程度)保持する。このとき、チャンバの内部を所定の速さ(例えば、100rpm程度)で攪拌させ、チャンバ内部のイオン交換水の温度を均一とする。ここで、端子電極3が形成された素体2の表面がまんべんなくイオン交換水と接するようにすることが好ましい。
【0031】
続いて、素体2におけるクラックの有無を判別する(判別工程、ステップS06)。
【0032】
より具体的には、チャンバ内を減圧し、端子電極3が形成された素体2をチャンバから取り出す。そして、端子電極3が形成された素体2を所定の条件(例えば、約60℃で8時間程度)で乾燥させる。乾燥後、端子電極3が形成された素体2の外観検査を行い、クラックを確認する。外観検査は目視にて行っても良いが、公知の画像認識装置を用いることが好ましい。また、公知の非破壊検査方法を適用することもできる。クラックが確認されたものは不良品と判定し、クラックが確認されなかったものは良品と判定する。
【0033】
続いて、端子電極3上にめっき層を形成する(めっき工程、ステップS07)。めっき層の形成は、端子電極3が形成された素体2のうちステップS06にて良品と判定されたものに対してのみ、実施される。この工程ではめっき液が用いられる。めっき液は、例えばCu、Ni及びSn等を含んでいる。
【0034】
以上述べた第1実施形態に係る積層型電子部品1の製造方法によれば、ステップS05において、端子電極3が形成された素体2をイオン交換水に浸漬する。これにより、素体2表面の微小なクラックにもイオン交換水を浸入させることができる。端子電極3が形成された素体2をイオン交換水に浸漬した状態で、イオン交換水を加圧する。これにより、クラックを内側から押し広げて成長させることができる。その結果、微小なクラックであってもより大きく成長させることにできるので、ステップS06にてクラックの有無を高い精度で判別することが可能となる。
【0035】
また、第1実施形態に係る積層型電子部品1の製造方法によれば、ステップS05にてイオン交換水に加える圧力は、ステップS02にてグリーンシート積層体を圧着するときの圧力よりも小さい。これにより、ステップS05にて素体2に過度な圧力がかかることを抑止できる。その結果、クラックを効果的に成長させることを可能にすると共に、クラックの無い素体2がステップS05にて破壊されることを未然に防げる。
【0036】
また、第1実施形態に係る積層型電子部品1の製造方法によれば、ステップS07にてめっき層を形成する前に、ステップS05,S06にてクラックの成長およびクラックの有無の判定を行っている。これにより、クラックを有する素体に対してめっき工程を施す可能性が低くなる。その結果、内部にめっき液が浸入した素体2が得られる可能性を抑制できると共に、めっき工程にかかるコストを低減できる。
【0037】
また、第1実施形態に係る積層型電子部品の製造方法によれば、ステップS05にてイオン交換水を用いている。イオン交換水は液体であるため、素体2のクラックに確実に浸入することができる。よって、微小なクラックであっても大きく成長させることがより確実に可能となる。また、イオン交換水は液体であるため、比較的簡便な装置で加圧を行うことができる。
(第2実施形態)
【0038】
第2実施形態に係る積層型電子部品の製造方法について説明する。この方法は、第1実施形態に係る積層型電子部品の製造方法と同様に、積層型電子部品1を製造するためのものである。図3は、第2実施形態に係る積層型電子部品1の製造方法を示すフローチャートである。
【0039】
まず、導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートを含む、複数のセラミックグリーンシートを作製する(ステップS11)。続いて、得られたセラミックグリーンシートからグリーンチップを作製する(ステップS12)。そして、得られたグリーンチップを所定の温度で焼成する(ステップS13)。ステップS11〜S13の具体的内容は、第1実施形態におけるステップS01〜S03と同様である。
【0040】
続いて、焼成により得られた素体2をイオン交換水に浸漬した状態で、イオン交換水を加圧する(ステップS14)。ステップS14の具体的内容は、イオン交換水に浸漬される素体2が端子電極3を形成する前のものである点を除き、第1実施形態におけるステップS05と同様である。
【0041】
続いて、素体2におけるクラックの有無を判別する(ステップS15)。ステップS15の具体的内容は、判別対象となる素体2が端子電極3を形成する前のものである点を除き、第1実施形態におけるステップS06と同様である。
【0042】
続いて、素体2に端子電極3を形成する(ステップS16)。端子電極3の形成は、ステップS15にて良品と判定された素体2に対してのみ、実施される。端子電極3は、素体2の長手方向の両端面にそれぞれ銀、ニッケル又は銅を主成分とする電極ペースト塗布して、所定の温度(例えば、600℃〜1200℃程度)で焼き付けることにより形成される。端子電極3を形成した後、端子電極3上にめっき層を形成する(ステップS17)。
【0043】
以上述べた第2実施形態に係る積層型電子部品1の製造方法によれば、ステップS14にて素体2のクラックを内側から押し広げて成長させることができる。その結果、微小なクラックであってもより大きく成長させることができるので、ステップS15にてクラックの有無を高い精度で判別することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨が逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0045】
例えば、積層型電子部品の構成は上記実施形態に示したものに限られない。
【0046】
また、第1の実施形態では端子電極が既に形成され且つめっき層が形成される前の素体をイオン交換水に浸漬し、第2の実施形態では端子電極及びめっき層が形成される前の素体をイオン交換水に浸漬するとした。これに対し、端子電極及びめっき層が形成された後の素体をイオン交換水に浸漬する、としてもよい。素体がクラックを有する場合、めっき層の形成時にクラックに水分が浸入することがある。端子電極及びめっき層が形成された後の素体をイオン交換水に浸漬し、イオン交換水を加圧するようにすれば、クラックに浸入した水分も同時に加圧することができ、その結果クラックを成長させることができる。これにより判別工程にてクラックの有無を高い精度で判別することが可能となる。
【0047】
また、上記実施形態では、ステップS05,S14においてイオン交換水を用いているが、素体にダメージを与えるもの(例えば酸性溶媒)でなければ、その他の液体であっても良い。例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムといった界面活性剤を加えた純水や、アセトン、ベンゼン、エタノールといった有機溶剤を用いても良い。このような液体は浸透性が高いため、クラックに対してスムーズに浸入することが考えられる。また、流体加圧工程では、液体の代わりに気体を用いても良い。
【0048】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
【0049】
第1実施形態に係る積層型電子部品の製造方法と同様の工程を実施した。すなわち、上述したステップS01〜S03の工程を経て、3.2mm×1.6mm×1.6mmの大きさを有する素体を複数得た。これらの素体は全て同一ロット(ロットAとする)のものとする。複数の素体に対して、ステップS04に示すように端子電極をそれぞれ形成した。そして、ステップS05に示すように、イオン交換水に端子電極が形成された複数の素体を浸漬した。なお、この工程ではイオン交換水が入った水熱処理装置を用いることとした。体積一定のまま水熱処理装置の内部温度を150℃程度まで上昇させることで、水熱処理装置の内圧を588KPaまで上昇させた。この内圧を1時間保持しつつ、水熱処理装置の内部を100rpm程度の速さで攪拌させた。その後、ステップS06に示すように水熱処理装置の内部を減圧して端子電極が形成された複数の素体を取り出し、各素体の外観からクラックの有無を判別した。このとき、クラックを有する素体を不良品とした。
(比較例1)
【0050】
ロットAから得られた複数の素体に、ステップS04に示すように端子電極をそれぞれ形成した。その後、各素体の外観からクラックの有無を判別し、クラックを有する素体を不良品とした。
(比較例2)
【0051】
比較例1での判別によりクラックがないと判別された素体に対し、窒素雰囲気中でリフロー試験を行った。リフロー試験は、260℃をピークとしてイン〜アウトを5分ずつ行った。リフロー試験を2回行った後、端子電極が形成された複数の素体を121℃95%RHに設定した恒温恒湿槽に3時間放置することにより、プレッシャクッカ試験(PCT)を行った。PCT後、各素体の外観からクラックの有無を判別し、クラックを有する素体を不良品とした。
【0052】
実施例1及び比較例1,2の結果を図4(a)に示す。比較例1,2に比べ、実施例1は不良検出率が極めて高い。これにより、第1実施形態に係る積層型電子部品の製造方法では、クラックの有無を高い精度で判別できることが確認された。
(実施例2及び比較例3,4)
【0053】
実施例1は比較例1,2に比べて不良検出率が極めて高い。ただし、クラックをもともと有する素体が偶然にも実施例1に集中してしまったためにこのような結果となった可能性がある。そこで、本発明の効果を再度確認するため、別のロット(ロットBとする)から得た素体を用いて、実施例2では実施例1と同様の手順を実施し、比較例3では比較例1と同様の手順を実施し、比較例4では比較例2と同様の手順を実施した。
【0054】
実施例2及び比較例3,4の結果を図4(b)に示す。比較例3,4に比べ、実施例2は不良検出率が極めて高い。これにより、第1実施形態に係る積層型電子部品の製造方法では、クラックの有無を高い精度で判別できることがあらためて確認された。
(実施例3)
【0055】
第2実施形態に係る積層型電子部品の製造方法と同様の工程を実施した。すなわち、上述したステップS11〜S13の工程を経て複数の素体を得た。これらの素体は全て同一ロットのものとする。ステップS14に示すように複数の素体をイオン交換水に浸漬したのち、イオン交換水を加圧した。浸漬、加圧に関する具体的内容は実施例1と同様である。その後、ステップS15に示すように水熱処理装置から複数の素体を取り出し、各素体の外観からクラックの有無を判別した。このとき、クラックを有する素体を不良品とした。
(比較例5)
【0056】
実施例3と同じロットから複数の素体を得た。そして、各素体の外観からクラックの有無を判別し、クラックを有する素体を不良品とした。
(比較例6)
【0057】
比較例5での判別によりクラックがないと判別された素体に対し、比較例2と同様にリフロー試験及びPCTを行った。試験後、各素体の外観からクラックの有無を判別し、クラックを有する素体を不良品とした。
【0058】
実施例3及び比較例5,6の結果を図4(c)に示す。比較例5,6に比べ、実施例3は不良検出率が極めて高い。これにより、第2実施形態に係る積層型電子部品の製造方法ではクラックの有無を高い精度で判別できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1実施形態に係る積層型電子部品を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る積層型電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係る積層型電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】実施例1〜3および比較例1〜6の結果等を示す図表である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・積層型電子部品、2・・・素体、3・・・端子電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミックグリーンシートを積層して第1の所定の圧力で圧着した後、切断してグリーンチップを得るグリーンチップ形成工程と、
前記グリーンチップを焼成して素体を得る素体形成工程と、
前記素体を流体に浸漬した状態で、前記流体を第2の所定の圧力で加圧する流体加圧工程と、
前記流体の加圧後、当該流体から前記素体を取り出して前記素体におけるクラックの有無を判別する判別工程と、
を有することを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記第2の所定の圧力は前記第1の所定の圧力よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記素体の外表面に端子電極を形成する端子形成工程を更に有し、
前記流体加圧工程では、前記端子電極が形成される前の前記素体を前記流体に浸漬し、
前記端子形成工程では、前記判別工程にてクラックが無いと判断された場合に前記素体の外表面に前記端子電極を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記素体の外表面に端子電極を形成する端子形成工程と、
前記端子電極上にめっき層を形成するめっき工程と、
を更に有し、
前記流体加圧工程では、前記端子電極が既に形成され且つ前記めっき層が形成される前の前記素体を前記流体に浸漬し、
前記めっき工程では、前記判別工程にてクラックが無いと判断された場合に前記素体の前記端子電極上にめっき層を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記素体の外表面に端子電極を形成する端子形成工程と、
前記端子電極上にめっき層を形成するめっき工程と、
を更に有し、
前記流体加圧工程では、前記端子電極及び前記めっき層が形成された前記素体を前記流体に浸漬することを特徴とする請求項1又は2記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記流体は液体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の積層型電子部品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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