説明

積層型電気二重層キャパシタ

【課題】パッキンの損傷を防止し、パッキンのシール性を保持することが可能な積層型電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】導電性基材7を介して積層された複数のセル1と、複数のセル1を挟む二つのエンドプレート2,3と、導電性基材7の外周部に沿って隣り合う導電性基材7間に挟まれる複数のパッキン11と、セル1の積層方向にパッキン11を貫通する絶縁スペーサ4と、絶縁スペーサ4の両端に螺着し二つのエンドプレート2,3を介してセル1を固定するボルト5,6とを有するバイポーラ積層型電気二重層キャパシタにおいて、一端がボルト5の頭部を押圧する一方、他端がエンドプレート2を押圧するように圧縮バネ17を配設するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電気二重層キャパシタに関し、とくにバイポーラ積層型電気二重層キャパシタの締め付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは分極性電極に電解液中のアニオン、カチオンを正極、負極表面に物理吸着させて電気を蓄えることを原理としている。
【0003】
図8に従来のバイポーラ積層型電気二重層キャパシタ(以下、単にキャパシタという)の一例を簡略化して示す断面構造図、図9に従来のキャパシタにおいて使用されるパッキンの一例を示す。図8に示すように、キャパシタは、必要な電圧分のキャパシタセル(以下、単にセルという)1を積層したものをエンドプレート22,3及び絶縁スペーサ4を介してボルト23,6で固定した構成を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
より詳しくは、導電性基材7を介して積層された複数のセル1からなる多積層体(キャパシタユニット本体)8の上下をエンドプレート22,3で挟み、エンドプレート22,3の上下から挿入されたボルト23,6をエンドプレート22,3間に配された絶縁スペーサ4の両端に螺着して多積層体8を締め付ける構造となっている。このようなキャパシタは導電性基材7の表裏で極性が異なる。
【0005】
セル1は、キャパシタの最小単位であって、平板状に形成され対向して配置される2つの活性炭電極9,9と、該活性炭電極9,9間に設けられイオンが通過可能なセパレータ10とから構成されている。
【0006】
また、導電性基材7間には、その外周部に沿って内部の電解液が漏れ出さないように導電性基材7間をシールするパッキン24を挟んでいる。このパッキン24は電解液のシールと同時に導電性基材7間の電気絶縁、及び、隣り合う導電性基材7間のスペーサを兼ねている。
【0007】
パッキン24は、ロール状のシートから型抜きプレス加工により形状の加工を行うものであり、図9(a)に示すように矩形の枠状に形成され、四つの内角が略直角に屈曲した状態に形成されている。該パッキン24には、複数の貫通孔24aが設けられ、この貫通孔24aに、エンドプレート22,3側から挿入されたボルト23,6が螺着される絶縁スペーサ4が挿入されている。
【0008】
さらに、キャパシタユニット両端において、セル1とエンドプレート22,3との間には、集電極板12,13及び該集電極板12,13に接触する集電端子14,15が設けられている。キャパシタはこの集電端子14,15を経由して充放電を行うようになっている。キャパシタは、外部の水分がセル内に浸透しないようにアルミラミネートフィルム16にて封止されている。
【0009】
なお、エンドプレート22,3にはそれぞれボルト23,6の頭部が収まるようにザグリ加工が施されている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−217986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図8に示すようなキャパシタにあっては、パッキン24の熱膨張率が絶縁スペーサ4、ボルト23,6の熱膨張率より大きいため、キャパシタの温度が上昇すると、パッキン24と、絶縁スペーサ4及びボルト23,6との熱膨張率差によりパッキン24が圧縮力を受け、この圧縮力が所定値以上となった場合、パッキン24に永久歪が残る可能性があった。そして、パッキン24に永久歪が残った場合、低温時においてパッキン24が収縮したときにこの永久歪の影響で該パッキン24のシール性が保てなくなる虞があった。
【0012】
さらに、パッキン24が該パッキン24と、絶縁スペーサ4及びボルト23,6との膨張率差により過度な圧力を受けてパッキン24自体が損傷する虞があった。
【0013】
さらに加えて、パッキン24は内周の四つの内角が略直角に屈曲するような形状となっているため、キャパシタユニット製作工程などにおけるパッキン24の扱い方によっては図9(b)のC部に示すように、角部からパッキン24が裂けてしまうという問題があった。一部に亀裂が入ったパッキン24を気づかずにキャパシタユニットに組み込んだ場合、シール不良を起こし、キャパシタユニットの特性を低下させる虞がある。
【0014】
このようなことから本発明は、パッキンの損傷を防止し、パッキンのシール性を保持することが可能な積層型電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る積層型電気二重層キャパシタは、導電性基材を介して複数のキャパシタセルを積層した多積層体と、前記多積層体を挟む二つのエンドプレートと、隣り合う前記導電性基材間であって前記導電性基材の外周部に沿って介装される複数のパッキンと、前記キャパシタセルの積層方向に前記パッキンを貫通する絶縁スペーサと、前記絶縁スペーサの両端に螺着し前記二つのエンドプレートを介して前記キャパシタセルを固定するボルトとを有する積層型電気二重層キャパシタにおいて、温度変化に伴う前記パッキンの膨張収縮に応じて前記二つのエンドプレート間の距離の変動を吸収する膨張収縮歪吸収手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
第2の発明に係る積層型電気二重層キャパシタは、第1の発明において、前記膨張収縮歪吸収手段が、弾性力によって一端が前記ボルトの頭部を押圧する一方、他端が前記エンドプレートを押圧するように前記ボルトの頭部と前記エンドプレートとの間に介装された弾性部材であることを特徴とする。
【0017】
第3の発明に係る積層型電気二重層キャパシタは、第1の発明において、前記膨張収縮歪吸収手段が、前記ボルトに、前記パッキンの膨張収縮歪を吸収しうる塑性範囲を設けてなることを特徴とする。
【0018】
第4の発明に係る積層型電気二重層キャパシタは、第2の発明において、開口端から径方向外側に延設され前記エンドプレートに支持される鍔部と、前記ボルトを貫通する一方前記弾性部材を支持可能な底部とを有して前記エンドプレートに埋設される有底筒状の介挿部材を備えるとともに、前記ボルトが該ボルトの頭部が前記介装部材に埋没し且つ前記介装部材の底部と間隙を有するように前記絶縁スペーサの一端に螺着され、前記弾性部材が前記ボルトの頭部と前記介装部材の底部との間に介装されて前記介装部材を介して前記エンドプレートを押圧することを特徴とする。
【0019】
第5の発明に係る積層型電気二重層キャパシタは、第3の発明において、前記ボルトが、ネジ部と頭部との間に、両端がそれぞれ前記ネジ部、前記頭部に滑らかに接続するとともに前記ネジ部の谷径に比較して縮径された小径部を備え、且つ、前記頭部がサラ状に形成される一方、前記エンドプレートに前記ボルトの頭部が嵌入されるサラモミ部が形成されたことを特徴とする。
【0020】
第6の発明に係る積層型電気二重層キャパシタは、第1乃至第5のいずれかの発明の発明において、前記パッキンの内角部が滑らかに湾曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上述した本発明に係る積層型電気二重層キャパシタによれば、膨張収縮歪吸収手段を設けたことによって積層型電気二重層キャパシタの温度変化に伴うパッキンの膨張収縮歪を吸収することができるため、パッキンが膨張した場合にパッキンが過大な圧縮力を受けて永久歪や損傷が発生することを防止するとともに、パッキンが収縮した際のパッキンのシール性を保持することができる。
【0022】
また、膨張収縮歪吸収手段として、弾性力を有し、一端がボルトの頭部を押圧する一方、他端がエンドプレートを押圧するように配設された弾性部材を設ける構成とすれば、簡素な構成で、パッキンの膨張収縮歪を吸収することができる。
【0023】
また、膨張収縮歪吸収手段として、ボルトに、パッキンの膨張収縮歪を吸収しうる塑性範囲を設ける構成とすれば、部品点数を維持しつつ、パッキンの膨張収縮歪を吸収することができる。
【0024】
また、開口端から径方向外側に延設されエンドプレートに支持される鍔部と、ボルトを貫通する一方弾性部材を支持可能な底部とを有してエンドプレートに埋設される有底筒状の介挿部材を備えるとともに、ボルトが該ボルトの頭部が介装部材に埋没し且つ介装部材の底部と間隙を有するように絶縁スペーサの一端に螺着され、弾性部材がボルトの頭部と介装部材の底部との間に介装されて介装部材を介してエンドプレートを押圧する構成とすれば、複数の積層型電気二重層キャパシタを積層して使用する際にエネルギー密度を向上させることができ、且つ、アルミラミネートが容易となる。
【0025】
また、ボルトが、ネジ部と頭部との間に、両端がそれぞれネジ部、頭部に滑らかに接続するとともにネジ部の谷径に比較して縮径された小径部を備え、且つ、頭部がサラ状に形成される一方、エンドプレートにボルトの頭部が嵌入されるサラモミ部が形成される構成とすれば、位置決めの誤差を減らすことができる。
【0026】
また、パッキンの角部が曲率半径を有するように構成すれば、パッキンの損傷を防止してパッキンのシール性を保持する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下の実施例において本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0028】
以下、図1乃至図3に基づき本発明の第1の実施例を詳細に説明する。図1は本実施例に係るキャパシタを部分的に示す構造断面図、図2は本実施例に係るキャパシタに用いられるパッキンを示す正面図、図3は本実施例に係るキャパシタの他の膨張収縮歪吸収手段を示す部分断面図である。
【0029】
本実施例に係るキャパシタは、図8及び図9に示し上述した従来のキャパシタのエンドプレート22,ボルト23、パッキン24に代えて、図1及び図2に示すエンドプレート2,ボルト5、パッキン11を用い、さらに膨張収縮歪吸収手段を設けた例である。その他の構成は図8に示し上述した従来の構成と概ね同様であり、以下、同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は適宜省略する。
【0030】
図1に示すように、本実施例に係るキャパシタにおいて、導電性基材7間には、その外周部に沿って内部の電解液が漏れ出さないように導電性基材7間をシールするパッキン11が設けられている。エンドプレート2及びパッキン11には、エンドプレート3と同様に、各々ボルト5を挿通する複数の貫通孔2a、11aが形成されており、パッキン11の貫通孔11aには絶縁スペーサ4が挿入されている。なお、本実施例においてはエンドプレート2にザグリ加工は施していない。
【0031】
ボルト5は図8に示したボルト23に比較して長尺であり、その頭部5aがエンドプレート2と所定間隔離間するように絶縁スペーサ4に締結されている。なお、ボルト5は圧力調整手段としての圧縮バネ17に挿通された状態で絶縁スペーサ4に締結されており、そのためエンドプレート2とボルト5の頭部5aとの間に圧縮バネ17が介在した状態となっている。これにより、本実施例ではエンドプレート2、ボルト5の頭部5aがそれぞれ圧縮バネ17によって下方、上方に押圧されている。なお、圧縮バネ17はパッキン11の膨張収縮を吸収し得る可動範囲を有するものとする。
【0032】
さらに、図2(a)に示すように、パッキン11は概ね矩形の枠状に形成され、ボルト5を挿通するための複数の貫通孔11aを有するとともに、その四つの内角11bが図2(b)に示すように半径R(例えば、R=1)で湾曲するような形状になっている。
【0033】
本実施例に係るキャパシタによれば、膨張収縮歪吸収手段として圧縮バネ17を設ける構成としたことにより、キャパシタの温度変化に伴って発生する絶縁スペーサ4及びボルト5,6と、パッキン11との膨張収縮の差を吸収することができる。すなわち、キャパシタの温度が上昇し、絶縁スペーサ4、ボルト5,6の膨張率がパッキン11の膨張率に比較して大きくなったとしても、この膨張率の差分を圧縮バネ17によって吸収することにより、パッキン11にかかる圧縮力を低減することができる。そのため、パッキン11に永久歪が発生することを防止して低温時にパッキン11が収縮しても十分にシール性を保つことができるとともに、パッキン11が過度な圧力を受けて損傷することを防止することができる。
【0034】
さらに、パッキン11の四つの内角を半径Rで湾曲するようにしたため、内角部分の耐性が向上し、キャパシタユニット製作工程等においてパッキン11が裂ける等のおそれがなく、シール不良を防止し、キャパシタユニットの特性を維持して品質の安定化を図ることができる。
【0035】
なお、本実施例では膨張収縮歪吸収手段として図1に示す圧縮バネ17を用いる例を示したが、膨張収縮歪吸収手段は圧縮バネ17に限らず、例えば図3に示すように、複数のサラバネ18を交互に向きを変えて配設し、パッキンの膨張収縮を吸収しうる可動範囲を有するようにしたものを用いる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であって、キャパシタの温度変化に伴うスペーサ、ボルトの拡縮と、パッキンの拡縮の差分を吸収することができる構成とすればよい。
【実施例2】
【0036】
以下、図4及び図5に基づき本発明の第2の実施例を説明する。図4は本実施例に係るキャパシタの一部を示す構造断面図、図5は本実施例に係る他のキャパシタの構造断面図である。
【0037】
本実施例に係るキャパシタは、図1に示し上述した実施例1に係るキャパシタのエンドプレート2に代えて、図4に示すエンドプレート19を用いるとともに、介装部材を追加した例である。その他の構成は図1及び図2に示し上述した実施例1の構成と概ね同様であり、以下、同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は適宜省略する。
【0038】
図4に示すように、本実施例にかかるキャパシタにおいて、エンドプレート19には、複数の貫通孔19aが形成され、該貫通孔19aに有底の筒状に形成された介装部材としての金具20が埋設されている。この金具20は、ボルト5を挿通可能な孔部20aを有する底部20bと、底部20bとは反対側にあって周縁から径方向外側に延びる環状の鍔部20cとを有している。エンドプレート19上面において、貫通孔19aの周囲には鍔部20cを収納するためにザグリ加工が施され、環状の凹状部19bが設けられている。
【0039】
さらに、ボルト5は、その頭部5aが金具20の底部20bと所定間隔離間するとともに該頭部5aがエンドプレート19に完全に埋没するように、絶縁スペーサ4に締結されている。
【0040】
該ボルト5は膨張収縮歪吸収手段としての圧縮バネ17に挿通された状態で絶縁スペーサ4に締結されており、そのため金具20の底部20bとボルト5の頭部との間に圧縮バネ17が介在した状態となっている。これにより、本実施例では金具20の底部20b、ボルト5の頭部5aがそれぞれ圧縮バネ17によって下方、上方に押圧されている。なお、金具20の底部20bが圧縮バネ17によって押圧されることに伴い、エンドプレート19が、その上面に形成された凹状部19bを介して金具20の鍔部20cに押圧される。
【0041】
本実施例にかかるキャパシタによれば、エンドプレート19にボルト5を埋没させ、エンドプレート19の貫通孔19aに挿入された金具20の底部20bとボルト5の頭部5aとの間に介在する圧縮バネ17によって、キャパシタの温度変化に伴って発生する絶縁スペーサ4、ボルト5,6の膨張収縮と、パッキン11の膨張収縮との拡縮差を吸収するようにしたことにより、実施例1に係るキャパシタに比較してエンドプレート19上にボルト5が突出しないため、上述した実施例1の効果に加えてアルミラミネートを容易にするとともに、キャパシタを複数個使用する場合においてエネルギー密度を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施例では膨張収縮歪吸収手段として図4に示す圧縮バネ17を用いる例を示したが、膨張収縮歪吸収手段は圧縮バネ17に限らず、例えば図5に示すように、複数のサラバネ18を交互に向きを変えて配設したものを用いる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であって、キャパシタの温度変化に伴うスペーサ及びボルトと、パッキンとの熱膨張率差を吸収することができる構成とすればよい。
【実施例3】
【0043】
以下、図6に基づき本発明の第3の実施例を説明する。図6は本実施例に係るキャパシタの構造断面図である。
【0044】
本実施例は、図8に示し上述した従来のキャパシタ構造に対して、ボルト23に代えて、図6に示すボルト21を用いるとともに、パッキン24に代えて図2に示し上述したパッキン11を用いる例である。その他の構成は図8に示し上述したものと概ね同様であり、同一の部材には同一の符号を付して重複する説明は適宜省略する。
【0045】
図6に示すように、本実施例に係るキャパシタにおいて、ボルト21は、パッキン11の膨張収縮を吸収しうる可動範囲を有する膨張収縮歪吸収手段を備えている。詳しくは、頭部21aとネジ部21bとの間に膨張収縮歪吸収手段としての小径部21cを有している。小径部21cは、ネジ部21bにおける谷部分の径に比較して小径となるように加工されている。さらに、該小径部21cの両端は、頭部21a、ネジ部21bとの接続部分が屈曲しないように、頭部21a、ネジ部21bに対して滑らかに繋がるように加工されている。
【0046】
ボルト21は、小径部21cにより、ボルト21の材質の塑性範囲でパッキン11の膨張収縮を吸収するように構成され、パッキンの膨張収縮を吸収し得る可動範囲を有している。詳しくは、図7に示すような応力歪線図を有する。
【0047】
なお、ボルト21の頭部21aはサラ形状となっている。エンドプレート22には、ザグリ加工によってボルト21の頭部21aと略同一形状の凹状部(サラモミ部)22aが形成され、ボルト21の頭部21aはこの穴に埋設されることでエンドプレート22から突出しないようになっている。
【0048】
本実施例に係るキャパシタによれば、膨張収縮歪吸収手段としての小径部21cを備えたボルト21を用いる構成としたことにより、キャパシタの温度変化に伴って発生する絶縁スペーサ4、ボルト21,6の拡縮と、パッキン11の拡縮との拡縮差を吸収することができる。
【0049】
通常のボルトであれば弾性変形範囲であって軸力がなくなるような歪振幅でも、本実施例のボルト21では塑性変形範囲(本実施例のボルト21における弾性変形範囲は、例えば図7に示す範囲aである)となるため、例えば、図7の範囲bに示すように軸力の低下が起こらない。本実施例では、キャパシタの温度が上昇し、絶縁スペーサ4、ボルト21,6の膨張率がパッキン11の膨張率に比較して大きくなった場合、この膨張率の差分を小径部21cの塑性変形によって吸収することにより、パッキン11にかかる圧縮力を低減することができる。
【0050】
さらに、実施例1及び実施例2に比較して、ボルトの長さを短くすることができるため、とくにキャパシタユニットを複数積層する際におけるエネルギー密度を向上させることができる。
【0051】
さらに加えて、エンドプレート22には実施例2に示したように環状の凹状部を形成する等の複雑な加工を施す必要がないため組み立て工数を減少させることができるとともに、エンドプレート22にザグリ加工を施して凹状部を形成することにより、ボルト21の位置決めに係る誤差を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、バイポーラ積層型電気二重層キャパシタに適用して好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例1に係るキャパシタを部分的に示す断面構造図である。
【図2】図2(a)本発明の実施例1に係るパッキンを示す正面図、図2(b)は図2(a)のA部拡大図である。
【図3】本発明の実施例1に係るキャパシタの他の膨張収縮歪吸収手段を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係るキャパシタを部分的に示す断面構造図である。
【図5】本発明の実施例2に係るキャパシタの他の膨張収縮歪吸収手段を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例3に係るキャパシタを部分的に示す断面構造図である。
【図7】本発明の実施例3に係るボルトの応力歪線図を示すグラフである。
【図8】従来のキャパシタを部分的に示す断面構造図である。
【図9】図9(a)は従来のパッキンを示す正面図、図9(b)は図9(a)のB部拡大図である。
【符号の説明】
【0054】
1 キャパシタセル
2,3,19,22 エンドプレート
4 絶縁スペーサ
5,6,21 ボルト
5a,21a ボルトの頭部
7 導電性基材
8 多積層体
9 活性炭電極
10 セパレータ
11 パッキン
11a 貫通孔
12,13 集電極板
14,15 集電端子
16 アルミラミネートフィルム
17 圧縮バネ
18 サラバネ
20 金具
20a 孔部
20b 底部
20c 鍔部
21c 小径部
22a 凹状部(サラモミ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材を介して複数のキャパシタセルを積層した多積層体と、
前記多積層体を挟む二つのエンドプレートと、
隣り合う前記導電性基材間であって前記導電性基材の外周部に沿って介装される複数のパッキンと、
前記キャパシタセルの積層方向に前記パッキンを貫通する絶縁スペーサと、
前記絶縁スペーサの両端に螺着し前記二つのエンドプレートを介して前記キャパシタセルを固定するボルトと
を有する積層型電気二重層キャパシタにおいて、
温度変化に伴う前記パッキンの膨張収縮に応じて前記二つのエンドプレート間の距離の変動を吸収する膨張収縮歪吸収手段を備えた
ことを特徴とする積層型電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記膨張収縮歪吸収手段が、弾性力によって一端が前記ボルトの頭部を押圧する一方、他端が前記エンドプレートを押圧するように前記ボルトの頭部と前記エンドプレートとの間に介装された弾性部材である
ことを特徴とする請求項1記載の積層型電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記膨張収縮歪吸収手段が、前記ボルトに、前記パッキンの膨張収縮歪を吸収しうる塑性範囲を設けてなる
ことを特徴とする請求項1記載の積層型電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
開口端から径方向外側に延設され前記エンドプレートに支持される鍔部と、前記ボルトを貫通する一方前記弾性部材を支持可能な底部とを有して前記エンドプレートに埋設される有底筒状の介挿部材を備えるとともに、
前記ボルトが該ボルトの頭部が前記介装部材に埋没し且つ前記介装部材の底部と間隙を有するように前記絶縁スペーサの一端に螺着され、
前記弾性部材が前記ボルトの頭部と前記介装部材の底部との間に介装されて前記介装部材を介して前記エンドプレートを押圧する
ことを特徴とする請求項2記載の積層型電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
前記ボルトが、ネジ部と頭部との間に、両端がそれぞれ前記ネジ部、前記頭部に滑らかに接続するとともに前記ネジ部の谷径に比較して縮径された小径部を備え、且つ、前記頭部がサラ状に形成される一方、
前記エンドプレートに前記ボルトの頭部が嵌入されるサラモミ部が形成された
ことを特徴とする請求項3記載の積層型電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
前記パッキンの内角部が、滑らかに湾曲する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の積層型電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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