説明

積層成形装置及び射出成形方法

【課題】使用可能な金型の大きさの制約を低減することが可能な積層成形装置及び射出成形方法を提供する。
【解決手段】固定盤と、固定盤と対向して配置され、固定盤に対して接近及び離間する方向に移動可能に設けられた可動盤と、固定盤と可動盤との間において、接近及び離間する方向に移動可能に設けられた中間盤であって、固定盤と対向する面及び可動盤と対向する面を有し、かつ、固定盤と対向する面から可動盤と対向する面に亘って貫通する収容空間を有する中間盤と、中間盤の収容空間の内部において中間盤に回転可能に支持された回転盤であって、固定盤及び可動盤に対向する少なくとも1組の平行な面を有する回転盤と、を備え、中間盤の固定盤と対向する面及び可動盤と対向する面の少なくとも一方の面は、金型を直接的又は間接的に取り付け可能な金型取付面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定盤と、可動盤と、固定盤及び可動盤の間に配置される中間盤(回転盤)とを備える積層成形装置及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、異なる材料からなる複数の樹脂成形体を組み合わせた積層成形品、同じ材料からなる複数の樹脂成形体を組み合わせた積層成形品、異なる色の材料からなる複数の樹脂成形体を組み合わせた積層成形品及び同じ色の材料からなる複数の樹脂成形体を組み合わせた積層成形品等の、様々な樹脂成形体の組み合わせからなる積層成形品が知られている。また、この積層成形品の成形方法として、成形装置に特徴のあるもの、あるいは成形用金型に特徴のあるもの等、種々の成形方法が知られている。その成形方法の一つが、固定盤と、可動盤と、固定盤及び可動盤の間に配置される中間盤(回転盤)とを備える積層成形装置に、固定金型、可動金型、及び、回転金型を取り付けて積層成形品を成形する方法である。
【0003】
特許文献1(特開2006−168223号公報)には、固定型(固定金型)と、可動型(可動金型)と、固定型及び可動型の間で回動する回動型(回転金型)とからなる金型を用いて多材質成形品(積層成形品)を成形する射出成形機であって、前記固定型に当接して溶融材料を射出する第1射出装置(第1射出ユニット)と、前記可動型に当接して溶融材料を射出する第2射出装置と、前記固定盤側から前記回動型を支持する回動型支持装置であって、前記回動型を回動自在かつ可動型の移動方向に移動自在に支持する回動型支持装置と、前記回動型を介して前記固定型と前記可動型を圧縮する圧縮手段(型締機構)とからなる多材質射出成形機(積層成形装置)が開示されている。
【0004】
特許文献2(米国特許第7488167号)には、少なくとも一方が他方に対して移動可能な第1及び第2プラテン(固定盤及び可動盤:順不同)と、前記第1及び第2プラテン間に配置された中間盤(回転盤)と、前記第1及び第2プラテンの一方と中間盤との間に取り付けられた金型と、前記第1及び第2プラテンの他方と前記中間盤との間での金型の移動を抑制する手段であって、前記第1及び第2プラテンの他方と前記中間盤との間に取り付けられ、成形品を成形しないダミー金型を含む手段と、前記中間盤の内部、あるいは、表面に配置された少なくとも1個の製品押出機構(製品押出手段)とを備えた型締装置(型締機構)が開示されている。
【0005】
尚、上記特許文献1及び特許文献2に関する記載中の括弧は、括弧直前の構成要件に相当あるいは類似すると考えられる本発明の構成要件等を、本発明の理解が容易になるように記載したものであり、括弧直前の構成要件等と括弧内構成要件とが一致することを示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−168223号公報
【特許文献2】米国特許第7488167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の多材質射出成形機及び特許文献2の型締装置では、使用可能な金型の大きさが制約されるという問題がある。
【0008】
すなわち、特許文献1の多材質射出成形機において、回動型は、平行な金型分割面にそれぞれ金型キャビティが形成されるため、金型の厚さ方向の長さ(以下、「型厚寸法」という)が大きく、その回動型を保持する上盤(特許文献1の図1における符号18が付された構成)及び下盤(特許文献1の図1における符号19が付された構成)は、回動型の型厚寸法よりも型開閉方向に更に長い必要がある。そして、特許文献1の多材質射出成形機は、使用する金型の合計の型厚寸法が上盤及び下盤の型開閉方向の長さより大きく、かつ、使用する金型の高さ方向の長さ(高さ寸法)が、上盤及び下盤の上下間距離より小さくなければ、上盤及び下盤が障害となり型締めができないものである。このため、特許文献1の多材質射出成形機では、型厚寸法の小さい金型や上盤及び下盤の上下間距離より高さ寸法が大きい金型を用いることができないという問題がある。
【0009】
また、特許文献2の型締装置は、中間盤の2つの金型取付面にそれぞれ金型(回転金型)が取り付けられた状態で、少なくとも180度回転されるものである。このため、特許文献2の型締装置は、中間盤の金型取付面の面積が第1及び第2プラテンの金型取付面の面積よりも小さくなくてはならないものである。このように、特許文献2の型締装置は、中間盤の金型取付面の面積に合わせた大きさの金型しか用いることができず、仮に第1及び第2プラテンに大きな金型が取り付け可能な場合であっても、大きな金型を用いることができないという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献2の型締装置は、第1及び第2プラテンの一方と中間盤との間の金型で1次成形体を成形させた後、1次成形体を中間盤側の金型に保持させた状態で中間盤を回転させて、第1及び第2プラテンの他方と中間盤との間の金型で、1次成形体に2次成形体を積層成形させる積層成形装置の型締装置である。このような特許文献2の型締装置では、中間盤側の金型に保持された1次成形体の非意匠面側を押し出して製品取り出しを行う必要があるため、中間盤の内部あるいは表面に少なくとも1個の押出機構が備えられている。また、このような特許文献2の型締装置では、連続して積層成形品を成形するために、中間盤の第1及び第2プラテンに対向する2つの金型取付面それぞれに、樹脂成形品を押し出すことができる押出機構が備えられることが必要であり、それぞれの押出機構は同じ構成にされる必要がある。さらに、特許文献2の型締装置は、それぞれの押出ストロークを確保するために、特許文献2のFig3及びFig4に示すように、中間盤の型開閉方向の厚み寸法が大きくなる。そのため、特許文献2の型締装置は、第1及び第2プラテンの一方と中間盤との間のデーライト寸法が小さくなり、使用可能な金型の最大型厚寸法が制約されるという問題がある。ここで、デーライト寸法とは、最大型開き時の対向する金型取付面間の距離をいい、特許文献2の積層成形装置においては、最大型開き時の第1及び第2プラテンの一方の金型取付面と中間盤の金型取付面との間の距離をいう。
【0011】
本発明は、使用可能な金型の大きさの制約を低減することが可能な積層成形装置及び射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る一の積層成形装置は、固定盤と、前記固定盤と対向して配置され、前記固定盤に対して接近及び離間する方向に移動可能に設けられた可動盤と、前記固定盤と前記可動盤との間において、前記接近及び離間する方向に移動可能に設けられた中間盤であって、前記固定盤と対向する面及び前記可動盤と対向する面を有し、かつ、前記固定盤と対向する前記面から前記可動盤と対向する前記面に亘って貫通する収容空間を有する中間盤と、前記中間盤の前記収容空間の内部において前記中間盤に回転可能に支持された回転盤であって、前記固定盤及び前記可動盤に対向する少なくとも1組の平行な面を有する回転盤と、を備え、前記中間盤の前記固定盤と対向する面及び前記可動盤と対向する面の少なくとも一方の面は、金型を直接的又は間接的に取り付け可能な金型取付面であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る一の積層成形装置において、前記中間盤及び前記回転盤は、前記接近及び離間する方向の厚さが実質的に同一であり、前記積層成形装置は、前記中間盤の前記金型取付面に、前記金型を直接的に取り付け可能であるとしても良い。
【0014】
本発明に係る一の積層成形装置において、前記中間盤及び前記回転盤は、前記接近及び離間する方向の厚さが異なっており、前記積層成形装置は、前記中間盤及び前記回転盤の前記接近及び離間する方向の厚さの差分を埋める金型取付板を更に備え、前記金型取付板は、前記回転盤と前記金型との間に介在する部分と、前記中間盤と前記金型との間に介在する部分とを有し、前記積層成形装置は、前記中間盤の前記金型取付面に、前記金型取付板を介して、前記金型を間接的に取り付け可能であるとしても良い。
【0015】
本発明に係る一の積層成形装置において、前記積層成形装置は、前記金型を前記中間盤の前記金型取付面に取り付ける金型取付手段を更に備え、前記金型取付手段は、前記中間盤の前記金型取付面側に設けられるとしても良い。
【0016】
本発明に係る一の積層成形装置において、前記積層成形装置は、前記固定盤及び前記可動盤の少なくとも一方の盤側に配置された製品押出手段を更に備え、前記製品押出手段は、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品を押し出すための押出ピンを有し、前記回転盤は、前記押出ピンと整合する位置に、前記押出ピンが貫通する押出ピン用貫通穴を有するとしても良い。
【0017】
本発明に係る一の積層成形装置において、前記積層成形装置は、前記固定盤及び前記可動盤の少なくとも一方の盤側に配置された製品押出手段を更に備え、前記製品押出手段は、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品を押し出すための押出ピンを有し、前記金型取付板及び前記回転盤は、前記押出ピンと整合する位置に、前記押出ピンが貫通する押出ピン用貫通穴を有するとしても良い。
【0018】
本発明に係る一の積層成形装置において、前記回転盤は、前記少なくとも1組の平行な面の一方の面と他方の面との間に樹脂流路が形成されているとしても良い。
【0019】
本発明に係る一の積層成形装置において、前記金型取付板は、前記回転盤と前記金型との間に介在する前記部分に、射出ユニットが挿入可能な射出ユニット挿入用貫通穴、又は、射出ユニットから射出された樹脂を流動させる樹脂流路が形成されているとしても良い。
【0020】
また、本発明に係る一の射出成形方法は、前記積層成形装置を使用した射出成形方法であって、前記中間盤及び前記回転盤の少なくとも一方を前記固定盤及び前記可動盤の一方に固定させ、前記固定盤及び前記可動盤の他方と前記中間盤との間に取り付けられた金型を型締めさせることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る一の射出成形方法は、前記積層成形装置として、前記固定盤及び前記可動盤の少なくとも一方の盤側に配置された製品押出手段を更に備え、前記製品押出手段が、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品又は前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品を押し出すための押出ピンを有するものであり、前記回転盤が、前記押出ピンと整合する位置に、前記押出ピンが貫通する押出ピン用貫通穴を有するものである積層成形装置を用いる射出成形方法であって、前記製品押出手段の前記押出ピンを、前記回転盤に形成された前記押出ピン用貫通穴に貫通させることにより、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品の取り出しを行うものであっても良い。
【0022】
さらに、本発明に係る他の射出成形方法は、前記積層成形装置を使用した射出成形方法であって、前記中間盤及び前記回転盤の少なくとも一方を、前記中間盤及び前記回転盤の前記接近及び離間する方向の厚さの差分を埋める取付板を介して、前記固定盤及び前記可動盤の一方に間接的に固定させ、前記固定盤及び前記可動盤の他方と前記中間盤との間に取り付けられた金型を型締めさせることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る一の射出成形方法及び他の射出成形方法は、前記積層成形装置として、前記固定盤及び前記可動盤の少なくとも一方の盤側に配置された製品押出手段を更に備え、前記製品押出手段が、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品を押し出すための押出ピンを有するものであり、前記金型取付板及び前記回転盤が、前記押出ピンと整合する位置に、前記押出ピンが貫通する押出ピン用貫通穴を有するものである積層成形装置を用いる射出成形方法であって、前記製品押出手段の前記押出ピンを、前記金型取付板及び前記回転盤に形成された前記押出ピン用貫通穴に貫通させることにより、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品の取り出しを行うものであっても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、使用可能な金型の大きさの制約を低減することが可能な積層成形装置及び射出成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る積層成形装置の概略側面図である。
【図2】図1のA−A矢視における概略正面図である。
【図3】図1のB−B矢視における概略断面平面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る積層成形装置の概略断面平面図である。
【図5】図4のC−C矢視における概略正面図である。
【図6】本発明の実施例3に係る積層成形装置の概略断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1から図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る積層成形装置の概略側面図である。図2は図1のA−A矢視における概略正面図である。図3は図1のB−B矢視における概略断面平面図である。
【0028】
最初に、本実施例に係る積層成形装置1の基本構成について説明する。積層成形装置1は、図1、図2及び図3に示すように、ベッド2に固定された固定盤3と、固定盤3と対向して配置され、固定盤3に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動盤5と、固定盤3と可動盤5との間において、型開閉方向に移動可能に設けられた中間盤4であって、固定盤3と対向する面及び可動盤5と対向する面を有し、かつ、固定盤3と対向する面から可動盤5と対向する面に亘って貫通する収容空間を有する中間盤4と、中間盤4の収容空間の内部において中間盤4に回転可能に支持された回転盤40であって、固定盤3及び可動盤5に対向する少なくとも1組の平行な面を有する回転盤40と、固定盤3側に設けられた第1射出ユニット17と、可動盤5を固定盤3に対して型開閉方向に移動させる型締機構14と、を備えている。ここで、型開閉方向とは、固定盤3に対して可動盤5が接近及び離間する方向(図1中の左右方向)をいう。
【0029】
固定盤3には、正面側(可動盤5と対向する側)の面に金型が取り付けられると共に、背面側から正面側に亘って第1射出ユニット17を該金型に向けて進退させるための貫通穴3aが形成されている。固定盤3の四隅からはタイバー9が突出して設けられ、このタイバー9は、中間盤4と可動盤5とを貫通している。
【0030】
可動盤5は、固定盤3と対向する面に金型取付面を有する。また、可動盤5はタイバー9に案内され、型締機構14によって、固定盤3に対して進退自在に設けられている。
【0031】
中間盤4は、固定盤3と可動盤5との間に配置され、可動盤5と同様にその四隅を貫通するタイバー9に案内され、可動盤5に配置された中間盤移動機構12により型開閉方向に進退自在に設けられている。中間盤移動機構12は、油圧シリンダ等のアクチュエータで構成され、可動盤5の略対角線上に2個配置されている。中間盤4は、固定盤3と対向する面から可動盤5と対向する面に亘って貫通する収容空間を有している。ここで、中間盤4は、その荷重をタイバー9により支持させても良いが、回転ローラ、直動ガイド等、摺動抵抗を減らすことができる構造を介して、可動盤5と同様にベッド部2に支持させ、タイバー9が型開閉方向の案内としてのみ機能するように構成されることが好ましい。
【0032】
回転盤40は、固定盤3及び可動盤5に対向する1組の平行な金型取付面を有している。また、回転盤40は、回転盤回転機構11を介して、型開閉方向と直交する鉛直方向の回転軸13を中心として中間盤4の収容空間の内部に回転可能に設けられている。回転盤40は、その型開閉方向の厚さが、中間盤4の型開閉方向の厚さと実質的に同一に形成されている。すなわち、回転盤40のそれぞれの金型取付面は、固定盤3及び可動盤5に対向する位置において、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面から突出しないように、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面と同一平面上に形成されている。また、回転盤回転機構11は、回転盤40及び回転盤40に取り付けられた金型等の荷重を支持し、回転させることができるスラストベアリング等の回転支持部材と、サーボモータ等の駆動手段とにより構成される。回転盤回転機構11の駆動手段の駆動軸による回転力は、ギヤ、チェーン、ベルト等を介して、あるいは、カップリング等を介して直接回転軸13に伝達されても良い。なお、いずれの場合においても、回転盤回転機構11の駆動手段の駆動軸に、回転モーメント以外の、軸方向のスラスト荷重や曲げモーメントが作用しないように配慮されるべきである。
【0033】
このような積層成形装置1において通常成形を行う場合、先に説明したように、使用可能な金型の寸法が制約されるという問題があるため、これを解決する本実施例の構成について説明する。ここで、通常成形とは、回転盤40を回転させずに行う射出成形であって、固定盤3又は可動盤5に取り付けられた金型と、回転盤40に取り付けられた金型とを使用して行う射出成形のことをいう。
【0034】
回転盤40は、その固定盤3及び可動盤5に対向する2つの金型取付面それぞれに回転金型が取り付けられて、固定盤3及び可動盤5の間で、かつ、タイバー9の間で、一般的には180度回転されるため、その金型取付面は固定盤3及び可動盤5の金型取付面より小さく成らざるを得ない。そのため、通常成形を行う場合、固定盤3及び可動盤5にもっと大きな金型が取り付け可能であっても、回転盤40に取り付け可能な金型の大きさ基準で、使用可能な金型の最大取付寸法が制約される。これを回避するために、回転盤40を大きくしてその金型取付面を固定盤3及び可動盤5の金型取付面と同程度の面積にすることは可能ではある。
【0035】
しかしながら、その場合、図3に示すように、回転盤40の最大回転軌跡41と比較して、固定盤3及び可動盤5に取り付け可能な大きな金型の取り付けを想定した回転盤の最大回転軌跡4bは非常に大きくなり、積層成形時に、この回転スペースを確保するために、同程度の大きさの金型を使用する汎用の射出成形機より大きな型開閉ストロークが必要となる。また、この大きくした回転盤を回転可能に支持するためにより大きな中間盤や回転盤の支持構造が必要となる。その結果、同程度の取付寸法を要する金型を使用する汎用の射出成形機と比較して、装置全長が長く、大きな中間盤、あるいは、回転盤の大きな支持構造を有する積層成形装置にならざるを得ない。
【0036】
本実施例の積層成形装置のように、回転盤40の金型取付面が、固定盤3及び可動盤5に対向する位置において、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面と同一平面上に形成されると共に、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面に、ねじ穴加工やT溝等で構成される金型取付手段4aが設けられれば、上述したような回転盤を大きくした積層成形装置でなくても、回転盤40の金型取付面に取り付け可能な2点鎖線42で示す金型よりも、2点鎖線4cで示す、より大きな金型を中間盤4に直接、容易に取り付けることができる。中間盤4の金型を取り付ける面が決まっていれば、金型取付手段4aはその面にのみ設けられれば良い。
【0037】
また、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面には、中間盤4を固定盤3や可動盤5に固定するための固定用ボルト4dを取り付けるための固定用ボルト穴4eが設けられている。より確実な固定のために、回転盤40にも回転盤40を可動盤に固定するための固定用ボルト43を取り付けるための固定用ボルト穴44が設けられることが好ましい。固定用ボルト穴4e及び固定用ボルト穴44は共に、それぞれに取り付けられるボルトの頭がそれぞれの金型取付面に突出しないように座繰り部が形成されている。中間盤4及び回転盤40は、それぞれの金型取付面を保護するためのダミープレート6a、及び、可動盤の金型取付面を保護するためのダミープレート6bを介して可動盤5に固定される。
【0038】
それぞれのダミープレートには、固定用ボルト4d及び固定用ボルト43に対応する固定用ボルト穴が設けられている。また、可動盤5には、固定ボルト4d及び固定ボルト43に対応するねじ穴加工等が設けられている。これらのねじ穴加工等は、可動盤5の金型取付面に金型取付用に元々設けられているT溝に、同T溝に挿入可能なナット等を挿入させて設けても良い。中間盤4及び回転盤40や、可動盤5のそれぞれの金型取付面を保護することができれば、これらのダミープレートは1枚物であっても良い。
【0039】
また、本実施例に係る積層成形装置1と同様の積層成形装置、すなわち、固定盤3及び可動盤5の間に配置される中間盤4(回転盤40)とを備える積層成形装置を使用して行われる一般的な積層成形方法においては、固定盤3と中間盤4(回転盤40)との間の金型で1次成形体を成形させた後、1次成形体を中間盤4(回転盤40)側の金型に保持させた状態で中間盤4(回転盤40)を回転させて、可動盤5と中間盤4(回転盤40)との間の金型で、1次成形体に2次成形体を積層成形させるのが通常である。よって、中間盤4(回転盤40)側の金型に保持された1次成形体の非意匠面側を押し出して製品取り出しを行わせるため、中間盤4(回転盤40)の2つの金型取付面それぞれに、樹脂成形品を押し出すことができる製品押出手段が備えられ、中間盤4(回転盤40)の型開閉方向の厚み寸法が大きくなる。
【0040】
しかしながら、樹脂成形品や成形方法等により、中間盤(回転盤)に製品押出手段を設けず、固定盤、あるいは、可動盤に取り付けた金型側から製品押し出しを行う積層成形装置も考えられる。前者の例としては、1次成形体の非意匠面側が固定盤側の金型に保持されて型開きされ、中間盤(回転盤)側の金型を回転させて、意匠面となる2次成形体が1次成形体に積層成形される積層成形装置である。この場合、製品押出手段は固定盤側、すなわち、固定盤あるいは固定盤側の金型に配置される。後者の例としては、1次成形体に意匠面があり、その1次成形体の意匠面が中間盤(回転盤)側の金型に保持されて型開きされ、そのままその金型を回転させて、非意匠面側となる2次成形体が1次成形体の非意匠面側に積層成形される積層成形装置であり、この場合、製品押出手段は可動盤側、すなわち、可動盤あるいは可動盤側の金型に配置される。また、前者及び後者の積層成形装置は、通常の射出成形機に、中間盤(回転盤)や第2射出ユニット等を追加して積層成形装置に転用する形態もあり、その形態において可動盤に取り付けた金型側から製品押し出しを行う場合は、転用前の射出成形機の可動盤に本来備えられている製品押出手段が流用されることが好ましい。ここで、通常の射出成形機とは、固定盤3に取り付けられた金型と、可動盤5に取り付けられた金型とを使用して射出成形を行う射出成形機のことをいう。
【0041】
ここで、本実施例の積層成形装置1は、後者の積層成形装置、あるいは、通常の射出成形機を転用した積層成形装置を前提としており、製品押出手段8が可動盤5に配置されるものである。そのため、製品押出手段がその内部、あるいは、表面に備えられた積層成形装置(例えば特許文献2の積層成形装置)の中間盤と比較して、中間盤4(回転盤40)の型開閉方向の厚み寸法が小さい。更に、回転盤40には、可動盤5に配置された製品押出手段8の押出ピン8aと同じ配置を含む押出ピン用貫通穴45が設けられているため、ダミープレート6a、ダミープレート6b及び回転盤40の型開閉方向の厚み寸法分だけその長さを延長させた押出ピン8aを使用すれば、可動盤5に配置された製品押出手段8により、中間盤4、あるいは、回転盤40の固定盤3に対向する面に取り付けられた金型から樹脂成形品を押し出すことができる。
【0042】
すなわち、本実施例の積層成形装置1は、製品押出手段が設けられていない中間盤4(回転盤40)に、新たに通常成形用の製品押出手段を設ける必要がないため、中間盤4(回転盤40)の型開閉方向の厚み寸法が大きくならず、使用可能な金型の最大型厚寸法の制約を少なくすることができる。なお、固定用ボルト4d及び固定用ボルト43に対応する固定用ボルト穴と同様に、ダミープレート6a及び6bに製品押出手段8の押出ピン8aと同じ配置を含む押出ピン用貫通穴が設けられている。また、押出ピン8aの長さ延長方法は、延長部分を従来の押出ピンに追加する形態であっても、押出ピンそのものの長さを延長させたものに交換する形態であっても良い。
【0043】
また、本実施例の積層成形装置1で通常成形を行うために、積層成形時に使用する第2射出ユニットは取り外されることが好ましい。しかしながら、第2射出ユニットが通常成形用の金型の取り付けや通常成形時に問題にならないのであれば、射出位置から後退させて、養生が必要な部位を適宜養生してそのまま配置させておいても良い。
【0044】
このような形態により、本実施例1の積層成形装置1は、中間盤4及び回転盤40がダミープレート6a及び6bを介して可動盤5に固定される。本実施例の積層成形装置は、中間盤4の型開閉方向の厚さと回転盤40の型開閉方向の厚さとが実質的に同一であることにより、中間盤4の固定盤3と対向する面を金型取付面として利用することが可能となり、大きな製品コア金型21を中間盤4の金型取付面に直接的に取り付けることができるため、使用可能な金型の最大取付寸法の制約を少なくすることができる。すなわち、本実施例1の積層成形装置1は、回転盤40の金型取付面が、固定盤及び可動盤に対向する位置において、中間盤の固定盤及び可動盤に対向する面から突出しないように、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面と同一平面上に形成されると共に、中間盤の固定盤及び可動盤に対向する面にねじ穴加工やT溝等で構成される金型取付手段4aが設けられているため、回転盤40の金型取付面に取り付け可能な2点鎖線42で示す金型よりも、2点鎖線4cで示すより取付寸法の大きな製品コア金型21を中間盤4に直接、容易に取り付けることができる。
【0045】
この製品コア金型21と組み合わされる製品キャビティ金型19が固定盤3の正面側(可動盤5と対向する側)に取り付けられる。そして、中間盤4及び回転盤40と一体化された可動盤5が、型締機構14により型開閉方向に移動され、固定盤3と中間盤4(回転盤40)との間に取り付けられた製品キャビティ金型19と製品コア金型21とが型締めされる。その後、固定盤3に設けられた貫通穴3aに挿入された第1射出ユニット17を、製品キャビティ金型19の樹脂ゲート19aに当接させて製品キャビティ金型19と製品コア金型21とが組み合わされて形成される金型キャビティに溶融樹脂を射出充填させる通常の射出成形方法が行われる。
【0046】
また、本実施例1の積層成形装置1は、中間盤4(回転盤40)に製品押出手段を設けず、可動盤5に取り付けられた金型側から製品押し出しを行う積層成形装置であるため、中間盤4(回転盤40)の型開閉方向の厚み寸法が小さい上、可動盤5に配置された製品押出手段8の押出ピン8aにより、ダミープレート6a及び6b,回転盤40を介して、中間盤4(回転盤40)に取り付けられた製品コア金型21から樹脂成形品を押し出すことができるので、中間盤4(回転盤40)の型開閉方向の厚み寸法が大きくならず、使用可能な金型の最大型厚寸法の制約を少なくすることができる。
【0047】
射出充填後、樹脂成形品の冷却固化時間経過後、樹脂成形品が中間盤4(回転盤40)側の製品コア金型21に保持された状態で型開きされる。製品キャビティ金型19と製品コア金型21との間に製品取出手段を挿入させ、樹脂成形品を把持させた後、可動盤5に配置された製品押出手段8を作動させて、押出ピン8aをダミープレート6a及び6b、更に、回転盤40の押出ピン用貫通穴45を貫通させて、製品コア金型21内部に設けられた型内押出機構の押出板等を固定盤3側へ押圧させると、樹脂成形品が押し出され、製品取出手段により金型外へ搬送される。
【0048】
本実施例1においては、中間盤4及び回転盤40を可動盤5に固定する形態としたが、後述する実施例2のように、回転盤40のその平行な金型取付面間に中継樹脂流路を設ければ、中間盤4及び回転盤40を固定盤3に固定する形態も可能である。
【0049】
図4及び図5を参照しながら本発明の実施例2を説明する。図4は本発明の実施例2に係る積層成形装置の概略断面平面図である。図5は図4のC−C矢視における概略正面図である。実施例2における実施例1との相違点は、中間盤4(回転盤40)を可動盤5ではなく、固定盤3に固定させ、中間盤4(回転盤40)と可動盤4との間に取り付けられた金型が型締めされる点と、回転盤40の金型取付面が、固定盤3及び可動盤5に対向する位置において、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面から突出するように形成され、型開閉方向に凹凸形状が形成されるため、この凹凸形状部に、同じ凹凸形状が形成された取付面と、該取付面と平行で、回転盤の金型取付面より広い金型取付面とを有する金型取付板を取り付ける点である。それ以外の積層成形装置の基本構成や射出成形方法は実施例1と基本的に同じため、実施例1との相違点についてのみ説明する。また、先に説明した相違点以外、実施例1及び実施例2の積層成形装置は同じ構成なので、図4の概略断面平面図は、本実施例2において、図1のB−B矢視における概略断面平面図に相当するものと考えて良い。
【0050】
図4に示すように、実施例2の積層成形装置においては、中間盤4及び回転盤40の型開閉方向の厚さが異なっており、回転盤40の金型取付面が、固定盤3及び可動盤5に対向する位置において、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面から型開閉方向に突出した凹凸形状が形成されている。そこで、本実施例の積層成形装置は、中間盤4及び回転盤40の型開閉方向の厚さの差分を埋める第1金型取付板60及び第2金型取付板61を備えている。第1金型取付板60及び第2金型取付板61は、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状と同じ凹凸形状が形成された取付面と、該取付面と平行で、回転盤40の金型取付面より広い金型取付面とを有する。この第1金型取付板60を固定盤3と中間盤4及び回転盤40との間に配置させると、型開閉方向の凹凸形状が解消され、中間盤4及び回転盤40を固定盤3に固定させることができる。第1金型取付板60には、射出ユニット挿入用貫通穴60aが設けられており、固定盤3の背面側に設けられた第1射出ユニット17は、この射出ユニット挿入用貫通穴60aに挿入されて、回転盤40の平行な金型取付面間に設けられた中継樹脂流路46に当接されるように構成されている。
【0051】
この射出ユニット挿入用貫通穴60aの代わりに、第1金型取付板60の取付面と金型取付面との間に中継樹脂流路60bを設け、第1射出ユニット17をこの樹脂流路60bに当接させるように構成されても良い。また、固定盤3に第1金型取付板60を介して固定された中間盤4の位置が、可動盤5に配置された中間盤移動機構12の移動ストロークを超える場合は、中間盤移動機構12の摺動するアクチュエータの先端部と中間盤4との固定部を予め分離させる。固定された中間盤4の位置が中間盤移動機構12の移動ストロークを超えない場合は、中間盤移動機構12を中間盤4の固定盤3への固定位置への移動に利用すると共に、中間盤移動機構12のアクチュエータが金型交換や成形作業、あるいは、製品取出作業の上で問題にならなければ、同アクチュエータに必要な養生のみ実施し、同アクチュエータの先端部と中間盤4との固定部を分離する必要はない。
【0052】
中間盤(回転盤)は、その平行な金型取付面それぞれに同じ金型が取り付けられ、回転されるという構成上、その回転軸を通り固定盤及び可動盤に平行な面に対して対照に構成されることが一般的である。そのため、第1金型取付板60を介して固定盤3に固定された中間盤4及び回転盤40の可動盤5に対向する面にも、固定盤3に対向する面と同じ凹凸形状が形成されるため、第2金型取付板61により型開閉方向の凹凸形状を解消させ、第2金型取付板61の金型取付面に製品キャビティ金型19が取り付けられる。すなわち、第2金型取付板61は、回転盤40と製品キャビティ金型19との間に介在する部分と、中間盤4と製品キャビティ金型19との間に介在する部分とを有することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させる。そして、中間盤4の可動盤5と対向する面(金型取付面)には、第2金型取付板61を介して、製品キャビティ金型19が間接的に取り付けられる。第2金型取付板61の金型取付面は、回転盤40の金型取付面より広いので、図5に示すように、回転盤40の金型取付面に取り付け可能な2点鎖線42で示す金型よりも、2点鎖線4c’で示す、より取付寸法の大きな製品キャビティ金型19を取り付けることができ、使用可能な金型の最大取付寸法の制約を少なくすることができる。
【0053】
第2金型取付板61には、その取付面と金型取付面との間に中継樹脂流路61bが設けられており、製品キャビティ金型19の樹脂ゲート19aと回転盤40の中継樹脂流路46とを中継して、製品キャビティ金型19と後述する製品コア金型21とが組み合わされて形成される金型キャビティに溶融樹脂を射出充填させることができる。ここで、回転盤40の樹脂流路46と第2金型取付板の樹脂流路61bとで構成される、第1射出ユニット17から製品キャビティ金型19の樹脂ゲート19aまでの樹脂流路には、射出充填の際、溶融樹脂の温度低下を防止することができる断熱・保温手段、あるいは、加熱手段が設けられることが好ましい。
【0054】
第1金型取付板60と、中間盤4と、第2金型取付板61とは、固定用ボルト穴4e’に固定用ボルト4d’を貫通させて固定盤3に固定される。より確実な固定のために、第1金型取付板60と、回転盤40と、第2金型取付板61とも、固定用ボルト穴44’に固定用ボルト43’を貫通させて固定盤3に固定されることが好ましい。図面と説明を簡単にするために、これら金型取付板と中間盤4及び回転盤40とを、ボルト穴を貫通させて一体で固定盤3に固定させる形態としたが、ボルト頭が各面に突出しないように座繰り穴等を設け、第1金型取付板60を固定盤3に固定させ、次に、中間盤4及び回転盤40を第1金型取付板60に固定させ、最後に、第2金型取付板61を中間盤4及び回転盤40に固定させるように、各平面上でのボルト等の配置が重複しないようにそれぞれ1つずつを固定させる形態でも良い。この形態の場合、第1金型取付板60及び第2金型取付板61を中間盤4へ固定させるのに、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面に設けられた金型取付手段4aや、回転盤40の金型取付面に設けられた金型取付手段を利用することができる。また、第1金型取付板60及び第2金型取付板61が、固定盤3、中間盤4及び回転盤40のそれぞれの金型取付面を保護するため、実施例1のようなダミープレートは不要である。
【0055】
このような形態により、本実施例2の積層成形装置1は、中間盤4及び回転盤40が第1金型取付板60を介して固定盤3に固定される。また、中間盤4及び回転盤40に取り付けられる第2金型取付板61の金型取付面は回転盤40の金型取付面より広いため、回転盤40の金型取付面に取り付け可能な2点鎖線42で示す金型よりも、2点鎖線4c’で示すより取付寸法の大きな製品キャビティ金型19を取り付けることができ、使用可能な金型の最大取付寸法の制約を少なくすることができる。
【0056】
この製品キャビティ金型19と組み合わされる製品コア金型21が可動盤5に取り付けられる。そして、可動盤5が、型締機構14により型開閉方向に移動され、中間盤4(回転盤40)と可動盤5との間に取り付けられた製品キャビティ金型19と製品コア金型21とが型締めされる。その後、固定盤3に設けられた貫通穴3aと射出ユニット挿入用貫通穴60aに挿入された第1射出ユニット17を、回転盤40の中継樹脂流路46に当接させ、中継樹脂流路46と製品キャビティ金型19の樹脂ゲート19aとを中継する第2金型取付板61の中継樹脂流路61bを経由して、製品キャビティ金型19と製品コア金型21とが組み合わされて形成される金型キャビティに溶融樹脂を射出充填させる単層の射出成形方法が行われる。
【0057】
射出充填後、樹脂成形品の冷却固化時間経過後、樹脂成形品が可動盤5側の製品コア金型21に保持された状態で型開きされる。製品キャビティ金型19と製品コア金型21との間に製品取出手段を挿入させ、樹脂成形品を把持させた後、可動盤5に配置された製品押出手段8を作動させて、押出ピン8aにより、製品コア金型21内部に設けられた型内押出機構の押出板等を固定盤3側へ押圧させると、樹脂成形品が押し出され、製品取出手段により金型外へ搬送される。
【0058】
本実施例2の積層成形装置1も、中間盤4(回転盤40)に製品押出手段を設けず、可動盤5に取り付けられた金型側から製品押し出しを行う積層成形装置であるため、中間盤4(回転盤40)の型開閉方向の厚み寸法が小さい上、可動盤5に配置された製品押出手段8の押出ピン8aにより、可動盤5に取り付けられた製品コア金型21から樹脂成形品を押し出すことができるので、中間盤4(回転盤40)の型開閉方向の厚み寸法が大きくならず、使用可能な金型の最大型厚寸法の制約を少なくすることができることは先に説明したとおりである。また、樹脂成形品を保持させた製品コア金型21は可動盤5に取り付けられ、本来の積層成形装置の製品取り出し状態と何ら変わることがないため、製品押出手段8の押出ピン8aの長さを延長する必要はない。一方、製品形状により、製品キャビティ金型19、あるいは、固定盤3側に取り付けられた金型から製品を押し出す必要がある場合は、実施例1で説明したように、回転盤40等に設けられた押出ピン用貫通穴を介して、固定盤3に設けられた製品押出手段により製品押し出しを行わせても良いし、製品キャビティ金型19、あるいは、固定盤3側に取り付けられた金型に設けられた製品押出手段により製品押し出しを行わせても良い。
【0059】
本実施例2の積層成形装置1で通常成形を行う場合、中間盤4(回転盤40)等を介して射出充填させるため樹脂流路が若干長くなり、溶融樹脂の温度低下を防止する配慮が必要になるものの、可動盤5に金型以外の構成部品が一切取り付けられないため、通常の射出成形方法に加えて、成形高精度の型開閉位置制御を必要とする射出成形方法、例えば、拡張発泡成形方法、射出プレス成形方法、射出圧縮成形方法、金型内塗装方法(型内被覆成形方法)等を行う場合に好適である。
【0060】
また本実施例2と同様に、中間盤4及び回転盤40の型開閉方向の厚さの差分を埋める第1金型取付板60及び第2金型取付板61を使用して、中間盤4及び回転盤40を可動盤5に固定する形態も可能である。
【0061】
更に、本実施例2では、図4に示すように、中間盤4及び回転盤40の型開閉方向の厚さの差分を埋める第1金型取付板60及び第2金型取付板61が、それぞれ単独で一つの面(新たな金型取付面等)を形成させる形態とした。すなわち、本実施例2において、第1金型取付板60は、回転盤40と固定盤3との間に介在する部分と、中間盤4と固定盤3との間に介在する部分とを有することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させるものであった。また、本実施例2において、第2金型取付板61は、回転盤40と製品キャビティ金型19との間に介在する部分と、中間盤4と製品キャビティ金型19との間に介在する部分とを有することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させるものであった。しかしながら、これに限定されず、第1金型取付板60及び第2金型取付板61は、中間盤4の回転盤40に対する型開閉方向の凹部形状のみを解消し、回転盤40の金型取付面と合わせて一つの面(新たな金型取付面等)を形成させる形態であっても良い。すなわち、本実施例2において、第1金型取付板60は、中間盤4と固定盤3との間にのみ介在することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させるものであっても良い。また、本実施例2において、第2金型取付板61は、中間盤4と製品キャビティ金型19との間にのみ介在することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させるものであっても良い。この第1金型取付板60及び第2金型取付板61の形態は、中間盤4及び回転盤40が固定盤3及び可動盤5のいずれに固定される場合であっても採用することができる。この形態の場合、第1金型取付板60及び第2金型取付板61を含む中間盤4及び回転盤40の型開閉方向の厚みをより薄くすることができ、通常成形に使用可能なデーライト寸法をより多く確保することができる。
【0062】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、実施例1及び実施例2において、製品キャビティ金型が固定盤側に、製品コア金型が可動盤側に取り付けられ、可動盤側に配置された製品押出手段により樹脂成形品が金型から押し出される形態としたが、製品コア金型が固定盤側に、製品キャビティ金型が可動盤側に取り付けられ、固定盤側に配置された製品押出手段により樹脂成形品が金型から押し出される形態も可能である。
【0063】
また、実施例1及び実施例2において、回転盤の金型取付面より取付寸法の大きな金型が取り付けられる形態としたが、回転盤に取り付け可能な金型でも通常成形が可能である。更に、実施例1及び実施例2において、中間盤(回転盤)を可動盤や固定盤に固定する手段としてボルトを使用する形態を提示したが、必要な固定力が得られれば、固定する手段に特に制約はなく、公知の固定手段から好適な手段が選択されれば良い。この固定手段が電気的に作動・解除が可能になるように構成されれば、積層成形から単層成形、あるいは、単層成形から積層成形への切り替え作業が更に容易になる。
【0064】
次に、実施例2において、回転盤40の金型取付面が、固定盤3及び可動盤5に対向する位置において、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面から型開閉方向に突出した凹凸形状が形成されている形態としたが、例えば図6に示すように、回転盤40の金型取付面が型開閉方向に凹んでいる凹凸形状が形成されている形態であっても良い(実施例3)。この実施例3に係る積層成形装置は、積層成形装置の基本構成や射出成形方法は実施例1及び2と基本的に同様であり、また、中間盤4(回転盤40)が可動盤5側に固定される点においては上述した実施例1の積層成形装置と同様であり、さらに、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消するために金型取付板60、61を用いる点においては上述した実施例2の積層成形装置と同様である。そして、これら実施例1及び実施例2の積層成形装置の説明を参照することにより、実施例3の積層成形装置を容易に把握することができるため、実施例3の積層成形装置の詳細な説明は省略する。
【0065】
実施例3の積層成形装置の態様においても、実施例2で説明したように、第1金型取付板60及び第2金型取付板61が、回転盤40の中間盤4に対する型開閉方向の凹部形状のみを解消し、中間盤4の金型取付面と合わせて一つの面(新たな金型取付面等)を形成させても良い。すなわち、本実施例3において、第1金型取付板60は、回転盤40と可動盤5との間に介在する部分と、中間盤4と可動盤5との間に介在する部分とを有することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させるものであった。また、本実施例3において、第2金型取付板61は、回転盤40と製品コア金型21との間に介在する部分と、中間盤4と製品コア金型21との間に介在する部分とを有することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させるものであった。しかしながら、これに限定されず、第1金型取付板60は、回転盤40と可動盤5との間にのみ介在することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させるものであっても良い。また、第2金型取付板61は、回転盤40と製品コア金型21との間にのみ介在することにより、中間盤4及び回転盤40が形成する凹凸形状を解消させるものであっても良い。この第1金型取付板60及び第2金型取付板61の形態は、中間盤4及び回転盤40が固定盤3及び可動盤5のいずれに固定される場合であっても採用することができる。
【0066】
同様に、実施例1のように、回転盤40の金型取付面が、固定盤3及び可動盤5に対向する位置において、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面と同一平面上に形成される形態であっても、実施例2のように、金型取付板を使用すれば、回転盤40の金型取付面に取付可能な大きさの金型が使用される場合でも、回転盤40の金型取付面と中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面とに、型締力を分散させることができるため、回転盤40の回転軸13や回転盤回転機構11の摺動部へ作用する負荷を低減させることができる。この効果は、先に説明した実施例3のような、回転盤40の金型取付面が型開閉方向に凹んでいる凹凸形状が形成されている形態において、回転盤40の金型取付面に取付可能な大きさの金型が使用される場合でも得ることができる。
【0067】
上述した実施例の積層成形装置によれば、以下のような効果を奏することができる。
すなわち、上述した実施例1の積層成形装置は、回転盤40の金型取付面が、固定盤3及び可動盤5に対向する位置において、回転盤40を支持する中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面から突出しないように、中間盤4の固定盤3及び可動盤5に対向する面と同一平面上に形成されているので、中間盤4に回転盤40の金型取付面より大きな金型を直接取り付けることができる。
上述した実施例2及び3の積層成形装置は、中間盤4及び回転盤40の型開閉方向の厚さが異なることにより生じる凹凸形状を、金型取付板60、61により解消することが可能となるため、回転盤40の金型取付面より大きな金型取付面を得ることができる。
上述した実施例1及び3の積層成形装置は、回転盤40や金型取付板60、61に押出ピン用貫通穴が設けられているため、中間盤4及び回転盤40の少なくとも一方を可動盤5に固定させた際、可動盤5に配置された押し出し手段8の押出用ピン8aを回転盤40や金型取付板60、61の押出ピン用貫通穴に貫通させて、中間盤4、あるいは、回転盤40に取り付けられた金型から樹脂成形品を押し出すことができる。
上述した実施例1乃至3の積層成形装置は、固定盤3、あるいは、可動盤5に取り付けた金型側から製品押し出しを行うものであり、中間盤4(回転盤40)に製品押出手段を設けるものではない。そのため、上述した実施例1乃至3の積層成形装置は、中間盤4(回転盤40)の型開閉方向の厚み寸法を小さくすることができ、これにより、固定盤3及び可動盤5の他方と、固定盤3及び可動盤5の一方に固定させた中間盤4(回転盤40)との間のデーライト寸法を大きく確保できるので、使用可能な金型の最大型厚寸法の制約を少なくすることができる。
上述した実施例2の積層成形装置は、回転盤40に中継樹脂流路46が形成され、第1金型取付板60に射出ユニット挿入用貫通穴60aが形成され、第2金型取付板61に中継樹脂流路61bが形成されている。このため、上述した実施例2の積層成形装置は、第1金型取付板60の射出ユニット挿入用貫通穴60aに射出ユニット17を挿入させて射出ユニット17を回転盤40に当接させ、回転盤40の中継樹脂流路46と第2金型取付板61の中継樹脂流路61bとを経由させて、射出ユニット17から金型に樹脂を射出充填させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
固定盤と、可動盤と、固定盤及び可動盤の間に配置される中間盤(回転盤)とを備える一般的な積層成形装置は、その構成から積層成形専用機と成らざるを得ず、無理に通常成形を行おうとすれば、使用可能な金型の寸法の制約が多いため、通常成形品と積層成形品の製造量が日々変化するような樹脂成形品の製造業者にとって積層成形装置導入の大きな障害となる。本発明の積層成形装置とそれを使用する射出成形方法により、積層成形装置において通常成形が可能な上、使用可能な金型の寸法の制約を少なくすることができるので、積層成形装置において通常成形を行う場合に、積層成形に使用する回転金型より大きな寸法の通常成形用金型が使用可能となり、通常成形品と積層成形品の製造量に応じて積層成形装置を高い効率で稼動させることができる。そのため、樹脂成形品の製造業者にとって産業上利用価値が極めて高い。
【符号の説明】
【0069】
1 積層成形装置
3 固定盤
4 中間盤
4a 金型取付手段
4c 中間盤に取り付け可能な金型を示す2点鎖線
4c’ 第2金型取付盤に取り付け可能な金型を示す2点鎖線
5 可動盤
6a ダミープレート
6b ダミープレート
8 製品押出手段
8a 押出ピン
40 回転盤
42 回転盤に取り付け可能な金型を示す2点鎖線
45 押出ピン用貫通穴
46 中継樹脂流路
60 第1金型取付板
60a 射出ユニット挿入用貫通穴
60b 中継樹脂流路
61 第2金型取付板
61b 中継樹脂流路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と、
前記固定盤と対向して配置され、前記固定盤に対して接近及び離間する方向に移動可能に設けられた可動盤と、
前記固定盤と前記可動盤との間において、前記接近及び離間する方向に移動可能に設けられた中間盤であって、前記固定盤と対向する面及び前記可動盤と対向する面を有し、かつ、前記固定盤と対向する前記面から前記可動盤と対向する前記面に亘って貫通する収容空間を有する中間盤と、
前記中間盤の前記収容空間の内部において前記中間盤に回転可能に支持された回転盤であって、前記固定盤及び前記可動盤に対向する少なくとも1組の平行な面を有する回転盤と、を備え、
前記中間盤の前記固定盤と対向する面及び前記可動盤と対向する面の少なくとも一方の面は、金型を直接的又は間接的に取り付け可能な金型取付面である
ことを特徴とする積層成形装置。
【請求項2】
前記中間盤及び前記回転盤は、前記接近及び離間する方向の厚さが異なっており、
前記積層成形装置は、前記中間盤及び前記回転盤の前記接近及び離間する方向の厚さの差分を埋める金型取付板を更に備え、
前記金型取付板は、前記回転盤と前記金型との間に介在する部分と、前記中間盤と前記金型との間に介在する部分とを有し、
前記積層成形装置は、前記中間盤の前記金型取付面に、前記金型取付板を介して、前記金型を間接的に取り付け可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の積層成形装置。
【請求項3】
前記積層成形装置は、前記固定盤及び前記可動盤の少なくとも一方の盤側に配置された製品押出手段を更に備え、
前記製品押出手段は、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品を押し出すための押出ピンを有し、
前記金型取付板及び前記回転盤は、前記押出ピンと整合する位置に、前記押出ピンが貫通する押出ピン用貫通穴を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の積層成形装置。
【請求項4】
前記金型取付板は、前記回転盤と前記金型との間に介在する前記部分に、射出ユニットが挿入可能な射出ユニット挿入用貫通穴、又は、射出ユニットから射出された樹脂を流動させる樹脂流路が形成されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の積層成形装置。
【請求項5】
前記中間盤及び前記回転盤は、前記接近及び離間する方向の厚さが実質的に同一であり、
前記積層成形装置は、前記中間盤の前記金型取付面に、前記金型を直接的に取り付け可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の積層成形装置。
【請求項6】
前記積層成形装置は、前記固定盤及び前記可動盤の少なくとも一方の盤側に配置された製品押出手段を更に備え、
前記製品押出手段は、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品を押し出すための押出ピンを有し、
前記回転盤は、前記押出ピンと整合する位置に、前記押出ピンが貫通する押出ピン用貫通穴を有する
ことを特徴とする請求項1又は5に記載の積層成形装置。
【請求項7】
前記積層成形装置は、前記金型を前記中間盤の前記金型取付面に取り付ける金型取付手段を更に備え、
前記金型取付手段は、前記中間盤の前記金型取付面側に設けられる
ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の積層成形装置。
【請求項8】
前記回転盤は、前記少なくとも1組の平行な面の一方の面と他方の面との間に樹脂流路が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の積層成形装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれか1項に記載の積層成形装置を使用した射出成形方法であって、
前記中間盤及び前記回転盤の少なくとも一方を前記固定盤及び前記可動盤の一方に固定させ、前記固定盤及び前記可動盤の他方と前記中間盤との間に取り付けられた金型を型締めさせる
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項10】
請求項6に記載の積層成形装置を使用した射出成形方法であって、
前記製品押出手段の前記押出ピンを、前記回転盤に形成された前記押出ピン用貫通穴に貫通させることにより、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品の取り出しを行う
ことを特徴とする請求項9に記載の射出成形方法。
【請求項11】
請求項2乃至4いずれか1項に記載の積層成形装置を使用した射出成形方法であって、
前記中間盤及び前記回転盤の少なくとも一方を、前記中間盤及び前記回転盤の前記接近及び離間する方向の厚さの差分を埋める取付板を介して、前記固定盤及び前記可動盤の一方に間接的に固定させ、前記固定盤及び前記可動盤の他方と前記中間盤との間に取り付けられた金型を型締めさせる
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項12】
請求項3に記載の積層成形装置を使用した射出成形方法であって、
前記製品押出手段の前記押出ピンを、前記金型取付板及び前記回転盤に形成された前記押出ピン用貫通穴に貫通させることにより、前記固定盤と前記中間盤との間において成形された成形品、又は、前記可動盤と前記中間盤との間において成形された成形品の取り出しを行う
ことを特徴とする請求項9又は11に記載の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−192734(P2012−192734A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40539(P2012−40539)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【特許番号】特許第4978758号(P4978758)
【特許公報発行日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】