説明

積層構造のシートおよびその製造方法

【課題】カーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造であって、とくに天然のカーボングラファイトを用いた場合における脆弱性あるいは機械的強度不足を補った積層構造のシートを提供する。
【解決手段】カーボングラファイト11とガラスクロス12とを、液晶ポリマーフィルム13を挟むようにして30〜50Kg/cmの加圧下で、約300℃の温度に加熱することによって、液晶ポリマーフィルム13を溶融させ、この液晶ポリマーフィルム13を両側のカーボングラファイト11とガラスクロス12とに含浸させ、これによってカーボングラファイト11とガラスクロス12とを強固に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層構造のシートおよびその製造方法に係り、とくにカーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボングラファイトは、優れた熱伝導性を有するとともに、通電すると発熱するという特徴を有しており、このために例えば特開2002−284514号公報に示すように、電子部品等の放熱冷却手段として用いられる。あるいはまた通電することによって発熱するために、特開2003−272807号公報に示すように、面状発熱体として用いることができる。
【0003】
とくに米国特許第3404061号に示されるような天然グラファイトを用い、これを膨張させた後にシート状に圧延したものは、低コストで上述のような放熱材料あるいは面状発熱体を作製することが可能になる。ところが天然のカーボングラファイトを圧延して製造したカーボングラファイトシートは、それ自身が脆く、シート状にしても破断し易い性質を有している。すなわち天然のカーボングラファイトのシートは、機械的強度に劣る欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−284514号公報
【特許文献2】特開2003−272807号公報
【特許文献3】米国特許3404061号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明の課題は、天然のカーボングラファイトから得られグラファイトシートの機械的強度を改善するようにした積層構造のシートおよびその製造方法を提供することである。
【0006】
本願発明の別の課題は、極めて薄いカーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートおよびその製造方法を提供することである。
【0007】
本願発明のさらに別の課題は、カーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートであって、面方向のみならず厚さ方向にも熱伝導性が改善されるようにした積層構造のシートおよびその製造方法を提供することである。
【0008】
本願発明のさらに別の課題は、カーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造から成り、しかも他の部材に対して容易に接合することができる積層構造のシートを提供することである。
【0009】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の主要な発明は、カーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートであって、前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間にポリマーが介在され、該ポリマーは接合時の熱によって溶融流動化して前記カーボングラファイトおよび/または前記ガラスクロス内に含浸した状態で前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとを接合している積層構造のシートに関するものである。
【0011】
ここで、カーボングラファイトとガラスクロスの2層構造であってよい。またガラスクロスに対してその両側にカーボングラファイトが接合された3層構造であってよい。またカーボングラファイトに対してその両側にガラスクロスが接合された3層構造であってよい。また前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に介在されるポリマーが熱によって溶解するフィルム状の液晶ポリマーであってよい。また前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に介在されるポリマーが熱によって溶融するフィルム状の熱可塑性高分子物質または熱硬化性高分子物質であってよい。また前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に介在されるポリマーが液状ポリマーであって、該液状ポリマーは接合時の熱によって流動化するようにしてよい。
【0012】
また前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に介在されるポリマー中に金属の粉末が混入され、前記ポリマーが接合時の熱によって溶融流動化して前記カーボングラファイトおよび/または前記ガラスクロス内に含浸すると前記金属粉末が前記カーボングラファイトおよび/または前記ガラスクロス中に分散されてよい。また前記金属粉末がニッケル粉末であってよい。
【0013】
また表面にさらに粘着層が形成されてよい。またガラスクロス側の表面に前記粘着層が形成されてよい。また前記粘着層の外表面に離型紙が接合されてよい。
【0014】
製造方法に関する発明は、カーボングラファイトとガラスクロスとをポリマーを介して重合わせ、厚さ方向に加圧しながら加熱して前記ポリマーを溶融流動化して前記カーボングラファイトおよび/またはガラスクロス内に含浸させて前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとを接合するものである。
【発明の効果】
【0015】
本願の主要な発明は、カーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートであって、前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に熱によって溶融するポリマーが介在され、該ポリマーは接合時の熱によって溶融して前記カーボングラファイトおよび/または前記ガラスクロス内に含浸した状態で前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとを接合しているものである。
【0016】
このような積層構造のシートによると、カーボングラファイトが溶融するポリマーを介してガラスクロスと接合されることになり、ガラスクロスがカーボングラファイトの機械的強度を補うようになり、これによって十分な機械的強度を有する面状の柔軟な放熱材料あるいは発熱体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】カーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートの拡大断面図である。
【図2】ガラスクロス側の表面に粘着層を形成したカーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートの拡大断面図である。
【図3】粘着層の表面にさらに離型紙を備えたカーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートの拡大断面図である。
【図4】ガラスクロスに対してその両側にカーボングラファイトを接合した3層の積層構造のシートの拡大断面図である。
【図5】ガラスクロスに対してその両側にカーボングラファイトを接合し、さらに一方の表面に粘着層を形成した積層構造のシートの拡大断面図である。
【図6】ガラスクロスに対してその両側にカーボングラファイトを接合し、さらに両側の表面に粘着層を形成した積層構造のシートの拡大断面図である。
【図7】カーボングラファイトの両面にガラスクロスを接合した3層構造のシートの拡大断面図である。
【図8】カーボングラファイトの両面にガラスクロスを接合した3層構造のシートであって、さらに表面に粘着層を形成し、離型紙を備えた積層構造のシートの拡大断面図である。
【図9】ニッケル粉末入りアクリルフィルムによって接合されたカーボングラファイトとガラスクロスの積層構造のシートの拡大断面図である。
【図10】ガラスクロスの両側にニッケル粉末入りアクリル樹脂フィルムを介してカーボングラファイトを接合した3層の積層構造のシートの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。本願発明は、カーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートに係り、とくにガラスクロスによってカーボングラファイトの脆さを補い、機械的強度を改善するようにした積層構造のシートに関する。ここでカーボングラファイトとガラスクロスとは、互いに1層ずつが積層されてよい。あるいはガラスクロスの両側にカーボングラファイトが接合されてよい。あるいはまた、カーボングラファイトの両側にガラスクロスを接合し、これによってカーボングラファイトの脆さを両面から補ってより完全に機械的強度を改善するようにしたシートであってよい。さらにこれらの積層構造を互いに積層したものであってよい。すなわちカーボングラファイトとガラスクロスとが、互いに接合された積層構造のシートである。
【0019】
カーボングラファイトとガラスクロスとは、両者の接合面に介在するポリマーによって接合される。ポリマーは熱によって溶解流動化してカーボングラファイトおよび/またはガラスクロス内に含浸し、このために、積層状態においては、ポリマーフィルムが独立した状態では存在しなくなる特徴を有している。このために、カーボングラファイトとガラスクロスとの結合が極めて高く、両者は分離不能な状態となる。
【0020】
接合構造の一方の構成要素であるカーボングラファイトは、天然鱗状黒鉛等の原料を浮遊選鉱し、さらに薬品処理を行なった後に濃硫酸と酸化剤との混酸によって酸処理を行なう。そしてこの後に膨張化処理を行なう。膨張化処理は炉内においてバーナで高温急加熱を行なうことにより達成される。そしてこの後にロール圧延を行なって成形される。これによってシート状のカーボングラファイトが得られる。カーボングラファイトは、50〜500μmの厚さのものが用いられる。
【0021】
このようなカーボングラファイトと接合されるガラスクロスは、溶融紡糸された太さが4〜10μmのガラスフィラメントを引揃えたものを、平織、斜紋織、その他の組織に製織した布状のクロスである。なおこのようなガラスクロスとしては、例えば旭化成株式会社製の平織のガラスクロス等が好適に用いられる。
【0022】
上記カーボングラファイトとガラスクロスとを接合するための溶融するポリマーとして、液晶ポリマーを用いてよい。一般に液晶ポリマーであって、とくに分子配向を緩和された液晶ポリマーは、極めて柔らかであって、フレキシブルな積層構造のシートを製造するのに好適である。本願発明においては、芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族または脂肪族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸の化合物、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族アミノカルボン酸化合物等の化合物およびその誘導体から得られる各種のサーモトロピック液晶ポリエステルおよびサーモトロピック液晶ポリエステルアミドを用いることが可能であって、半1型液晶ポリマー、全1型液晶ポリマー、半2型液晶ポリマー、全2型液晶ポリマー等総ての液晶ポリマーを用いることが可能である。
【0023】
また上記液晶ポリマーに代えて、アクリル樹脂に代表される熱可塑性樹脂を用いてカーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造を達成してもよい。アクリル樹脂の場合には、アクリルニトリルとアクリル酸エステルとの共重合体、アクリルニトリルと酢酸ビニルの共重合体、アクリルニトリルと塩化ビニルとの共重合体等の各種のアクリル樹脂をフィルム状にしたものが好適に用いられる。なおアクリル樹脂に限定されることなく、ポリエステル、ポリオレフィン等のその他各種の熱可塑性樹脂を用いてカーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造としてよい。また熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0024】
さらに上記液晶ポリマーや熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂に代えて、液状ポリマーを用いることが可能である。液状ポリマーとしては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のポリマーであって、常温で液状のものが供給されている。従ってこのような液状ポリマーを接合手段として用いることができる。液状ポリマーは、接合する前に予め互いに接合されるカーボングラファイトとガラスクロスの内の一方の面、あるいは両方の面に塗布しておき、この後に接合して加圧しながら加熱することによって、カーボングラファイトとガラスクロスとを上記液状ポリマーによって接合することが可能になる。
【0025】
カーボングラファイトとガラスクロスとを接合する際には、両者に対して5〜100Kg/cmの加圧を行ないながらしかもカーボングラファイトとガラスクロスとの間に介在される熱によって溶融するポリマーをこのポリマーの融点よりも高い温度に加熱し、これによってポリマーを溶融させる。溶融したポリマーは、その両側に位置するカーボングラファイトおよび/またはガラスクロス内に含浸し、これによって元のフィルム状の形態を止めなくなって両者の間に深く侵入した状態でカーボングラファイトとガラスクロスとを強固かつ分離不能に接合する。
【0026】
接合構造体は、とくにガラスクロスと対をなして接合されるカーボングラファイトが面方向に高い熱伝導性を有しており、X軸およびY軸方向の熱伝導性に優れた構造になる。ところが厚さ方向に関しては、必ずしも十分な熱伝導性が得られない可能性がある。このような場合に、カーボングラファイトとガラスクロスとの間に介在して両者を接合するポリマー内に予めニッケル、銅、アルミニウム等の微細な金属粉末を混入しておき、溶融した後に、上記ポリマー内の金属粉末がカーボングラファイトおよび/またはガラスクロス内に分散すると、この金属粉末によって厚さ方向、すなわちZ軸方向の熱伝導性を高めることになる。
【0027】
このようなカーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造から成るシートは、何らかの接着手段によって使用する部位に接着される。ここで予め一方の外表面、例えばガラスクロスが露出する表面に粘着層を形成しておくことによって、この粘着層を用いて取付け部材に直接接着することができる。また上記粘着層を覆うように離型紙を接合しておき、使用時に離型紙を除去するようにすると、粘着層が他のものに粘着するのを防止できるようになり、取扱い性が改善される。
【実施例】
【0028】
以下本願発明を図示の実施例によって説明する。図1は、カーボングラファイト11とガラスクロス12との2層の積層構造のシートを示しており、ここでは図1Aに示すように、カーボングラファイト11とガラスクロス12との間に、液晶ポリマーフィルム13を介在させて互いに接合する。そしてこのような状態で、30〜50Kg/cmの加圧ロール下において、約300℃の温度に加熱し、これによって中間の液晶ポリマーフィルム13を溶融する。溶融した液晶ポリマーフィルム13は、カーボングラファイト11とガラスクロス12とに含浸するようになり、これによって図1Bに示すようにカーボングラファイト11とガラスクロス12とが強固に接合されるようになる。
【0029】
図2は、上記図1に示す方法によって作製された積層構造のシートのガラスクロス12側の表面に粘着層17を形成したものである。このような粘着層17を用いて、カーボングラファイト11とガラスクロス12との積層構造のシートを容易に取付け部位に接着することができる。
【0030】
図3に示す構成は、上記図2に示すように粘着層17を形成した積層構造のシートの表面にさらに離型紙18を接合した構造である。離型紙18は、使用時に除去されるために、使用する前の状態においては、粘着層17が露出されることなく、不用意に所望の部位以外に粘着することが回避される。
【0031】
図4に示す構成は、ガラスクロス12の両側にカーボングラファイト11を接合した3層構造の積層構造を示しており、図4Aに示すようにガラスクロス13の一方の表面に液晶ポリマーフィルム13を介してカーボングラファイト11を配し、さらにガラスクロス12の反対側の面にも液晶ポリマーフィルム13を介してカーボングラファイト11を配置したものである。ここで上記第1の実施の形態と同様に、30〜50Kg/cmの加圧下において、約300℃の温度に加熱すると、液晶ポリマーフィルム13が溶融し、両側のガラスクロス12とカーボングラファイト11とにそれぞれ含浸する。従って図4Bに示すように、ガラスクロス12の両側にカーボングラファイト11が接合した3層構造のシートが得られる。
【0032】
なお図4に示すようにガラスクロス12の両側にカーボングラファイト11を接合した構造においても、さらにその外表面に離型紙を備える粘着層を形成することも可能である。
【0033】
図5は、ガラスクロス12の両側にカーボングラファイト11を接合した3層構造の一方のカーボングラファイト11の表面に粘着層17を形成したものである。粘着層17は取付け部位への接合手段として機能するばかりでなく、絶縁層を構成することになる。また上記粘着層17の表面にさらに離型紙18を図5Bに示すように接合した構造とすることにより、粘着層17が他の部位に付着するのが防止される。
【0034】
あるいはまた図6Aに示すように、ガラスクロス12の両面にカーボングラファイト11を接合した構成において、両側のカーボングラファイト11の表面に粘着層17を形成してよい(図6A参照)。
【0035】
さらに図6Bに示すように、カーボングラファイト11をガラスクロス12の両面に接合した接合構造において、カーボングラファイト11の外表面にさらに粘着層17を接合し、粘着層17の外表面にさらに離型紙18を接合した構造としてもよい。
【0036】
図7は、図4に示す構成とは反対に、真中にカーボングラファイト11が配され、その両側にそれぞれガラスクロス12が接合される。図7Aに示されるカーボングラファイト11の一方の側に液晶ポリマーフィルム13を介してガラスクロス12を配し、さらにカーボングラファイト11の他方の面にも液晶ポリマーフィルム13を介してガラスクロス12を配する。そしてこの状態で、上記第1の実施例と同様に、30〜50Kg/cmの加圧下において、約300℃の温度に加熱すると、カーボングラファイト11の両側の液晶ポリマーフィルム13が溶融し、このような溶融したポリマー樹脂が接するカーボングラファイト11とガラスクロス12内に含浸し、これによって図7Bに示すような3層の積層構造が得られる。
【0037】
図8の構成は、中心にカーボングラファイト11が配置され、その両側にガラスクロス12を接合した積層構造において、とくに一方のガラスクロス12の表面に粘着層17を設け、さらに粘着層17の表面に離型紙18を接合した構造となっている。従って使用時に離型紙18を除去し、粘着層17を利用して所定の取付け部位に接合することが可能になる。
【0038】
上記液晶ポリマー13に代えて、液状ポリマーを用いてもよい。例えば日本高度紙工業株式会社製の可溶性ポリイミド系樹脂溶液を用いることができる。この場合には、可溶性ポリイミドの樹脂溶液を、カーボングラファイト11あるいはガラスクロス12の内の一方の表面、あるいは両方の表面に予め塗布して液状ポリマーの塗膜を形成しておく。この状態でカーボングラファイト11とガラスクロス12とを接合する。これによっても、積層構造のシートが得られる。
【0039】
図9の構成は、金属粉末入りのアクリルフィルムを用いてZ軸方向の熱伝導性を改善するようにした積層構造のシートに関する。すなわちカーボングラファイト11とガラスクロス12との間に、ニッケル粉末入りアクリルフィルム22を介在させ、30〜50Kg/cmの加圧下において約200℃に加熱することによって、ニッケル粉末混入アクリルフィルム22を溶融させる。溶融したアクリルフィルム22は両側のカーボングラファイト11とガラスクロス12とにそれぞれ放散して含浸されることによって、カーボングラファイト11とガラスクロス12とを接合する。しかもアクリルフィルム22に混入されているニッケル粉末が、図9Bに示すようにカーボングラファイト11とガラスクロス12内に分散する。面方向の熱伝導性は、カーボングラファイト11それ自身の熱的性質によって発現される。これに対して接合方向あるいは厚さ方向の熱伝導率は、予めアクリルフィルム22に混入されていたニッケル粉末によって達成される。従ってX軸およびY軸のみならず、厚さ方向であるZ軸方向に対しても熱伝導率を改善することが可能になり、放熱材料として優れた構造を発現することになる。
【0040】
図10に示す構成は、ガラスクロス12に対してその両側にそれぞれカーボングラファイト11を接合した構造になっている。ここでガラスクロス12の両側にカーボングラファイト11を接合するための接合手段として、ニッケル粉末混入アクリルフィルムを用いている。従って、上記アクリルフィルムに混入されているニッケル粉末が図10に示すように、中心のガラスクロス12および両側のカーボングラファイト11に分散することになる。従ってこのことから、混入されたニッケル粉末によって優れた熱伝導性が発現されるようになり、X軸方向、Y軸方向、および厚さ方向であるZ軸方向に高い熱伝導性を有する3層の積層構造のシートが提供される。
【0041】
また図10Aに示すような3層構造に加えて、両側のカーボングラファイト11の外表面にさらに粘着および絶縁のための粘着層17を形成するようにしてよい。これによって取付け部位へ簡単に取付けることが可能になるとともに、粘着層17によって絶縁を達成することが可能になる。
【0042】
以上本願発明を図示の実施の形態および実施例によって説明したが、本願発明は上記実施の形態および実施例によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態における金属粉末混入ポリマーとしては、必ずしもアクリル樹脂に限定されることなく、その他の各種の熱可塑性ポリマーを使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明は、放熱シートあるいは面状発熱体として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
11 カーボングラファイト
12 ガラスクロス
13 液晶ポリマーフィルム
17 粘着層
18 離型紙
22 ニッケル粉末混入アクリルフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボングラファイトとガラスクロスとの積層構造のシートであって、前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間にポリマーが介在され、該ポリマーは接合時の熱によって溶融流動化して前記カーボングラファイトおよび/または前記ガラスクロス内に含浸した状態で前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとを接合している積層構造のシート。
【請求項2】
カーボングラファイトとガラスクロスの2層構造である請求項1に記載の積層構造のシート。
【請求項3】
ガラスクロスに対してその両側にカーボングラファイトが接合された3層構造である請求項1に記載の積層構造のシート。
【請求項4】
カーボングラファイトに対してその両側にガラスクロスが接合された3層構造である請求項1に記載の積層構造のシート。
【請求項5】
前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に介在されるポリマーが、熱によって溶解するフィルム状の液晶ポリマーである請求項1に記載の積層構造のシート。
【請求項6】
前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に介在されるポリマーが、熱によって溶融するフィルム状の熱可塑性高分子物質または熱硬化性高分子物質である請求項1に記載の積層構造のシート。
【請求項7】
前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に介在されるポリマーが液状ポリマーであって、該液状ポリマーは接合時の熱によって流動化する請求項1に記載の積層構造のシート。
【請求項8】
前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとの間に介在されるポリマー中に金属の粉末が混入され、前記ポリマーが接合時の熱によって溶融流動化して前記カーボングラファイトおよび/または前記ガラスクロス内に含浸すると前記金属粉末が前記カーボングラファイトおよび/または前記ガラスクロス中に分散される請求項5〜7の何れかに記載の積層構造のシート。
【請求項9】
前記金属粉末がニッケル粉末である請求項8に記載の積層構造のシート。
【請求項10】
表面にさらに粘着層が形成される請求項1に記載の積層構造のシート。
【請求項11】
ガラスクロス側の表面に前記粘着層が形成される請求項10に記載の積層構造のシート。
【請求項12】
前記粘着層の外表面に離型紙が接合される請求項10または11に記載の積層構造のシート。
【請求項13】
カーボングラファイトとガラスクロスとをポリマーを介して重合わせ、厚さ方向に加圧しながら加熱して前記ポリマーを溶融流動化して前記カーボングラファイトおよび/またはガラスクロス内に含浸させて前記カーボングラファイトと前記ガラスクロスとを接合する積層構造のシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−126050(P2012−126050A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280588(P2010−280588)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000206174)大成ラミネーター株式会社 (32)
【出願人】(510331892)新興プラスチック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】