説明

積層構造体

【課題】電子素子の特性をより向上させる。
【解決手段】第1の電極及び第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に設けられた発光層又は電荷分離層と、該発光層又は電荷分離層と前記第1の電極との間に設けられ、下記式(1)で表される構造単位を有する共役化合物を含有する層とを備える、積層構造体。


式(1)中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい1価のヒドロカルビル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基である。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層構造体及びこの積層構造体を備える電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極にアルミニウム等の仕事関数が大きい金属が使用され、電荷注入材料にカルシウム等の仕事関数が小さい金属が使用され、発光層に極性ヘテロ原子を含む化合物が使用された電界発光素子が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−506916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、仕事関数が小さい金属を用いた電荷注入材料は、空気中で劣化しやすい。
【0005】
そこで本発明は、空気中で劣化しやすい材料を使用せずに、電界発光素子、光電変換素子等の電子素子における電荷注入特性又は電荷輸送特性を向上させることができる積層構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、下記の構成を備える積層構造体及びこの積層構造体を備える電子素子が提供される。
〔1〕第1の電極及び第2の電極と、
該第1の電極と該第2の電極との間に設けられた発光層又は電荷分離層と、
該発光層又は該電荷分離層と前記第1の電極との間に設けられ、下記式(1)で表される構造単位を有する共役化合物を含有する層と
を備える、積層構造体。
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1)中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい1価のヒドロカルビル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基である。2個存在するRのうちの少なくとも1個は、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基である。2個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式(2)中、Rは置換基を有していてもよい2価の非芳香族ヒドロカルビル基である。Rは置換基を有していてもよい1価のヒドロカルビル基又は水素原子である。nは4以上の整数である。複数個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0011】
【化3】

【0012】
(式(3)中、R及びRは前記定義の通りである。Rは置換基を有していてもよい3価の非芳香族ヒドロカルビル基である。mは0以上の整数である。q及びrは1以上の整数である。複数個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。R、Rは複数個存在する場合、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
〔2〕前記第1電極の材料が仕事関数が3.5eV以上の金属であり、かつ前記共役化合物を含有する層が電子注入層又は電子輸送層である、〔1〕に記載の積層構造体。
〔3〕前記第1電極の材料がアルミニウム又は銀である、〔2〕に記載の積層構造体。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の積層構造体を含む、電子素子。
〔5〕前記第1電極の材料が仕事関数が3.5eV以上の金属であり、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた層が発光層であり、かつ前記共役化合物を含有する層が電子注入層である、〔4〕に記載の電子素子。
〔6〕前記第1電極の材料がアルミニウム又は銀である、〔5〕に記載の電子素子。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層構造体によれば、電界発光素子に用いた場合には電荷注入特性をより向上させることができ、また光電変換素子に用いた場合には、電荷輸送特性をより向上させることができる。よって電子素子の特性をより向上させることができる。
また本発明の積層構造体は、優れた電荷注入特性、電荷輸送特性を有する共役化合物を含有する層を備えるため、電極自体の電荷注入特性又は電荷輸送特性がたとえ低くても電子素子の特性を向上させることができる。よって従来、電荷注入特性又は電荷輸送特性を改善するために用いられていた、空気中で劣化しやすい電極材料を用いずとも電子素子の特性をより向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、以下に説明する本発明の要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0015】
<共役化合物>
本発明の積層構造体は、第1の電極及び第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に設けられた発光層又は電荷分離層と、該発光層又は該電荷分離層と前記第1の電極との間に設けられ、共役化合物を含有する層とを備える。
この共役化合物は、下記式(1)で表される構造単位を有している。
【0016】
【化4】

【0017】
式(1)中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい1価のヒドロカルビル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基である。2個存在するRのうちの少なくとも1個は、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基である。2個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
【化5】

【0019】
式(2)中、Rは置換基を有していてもよい2価の非芳香族ヒドロカルビル基である。Rは置換基を有していてもよい1価のヒドロカルビル基又は水素原子である。nは4以上の整数である。複数個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
【化6】

【0021】
式(3)中、R及びRは前記式(2)で定義の通りである。Rは置換基を有していてもよい3価の非芳香族ヒドロカルビル基である。mは0以上の整数である。q及びrは1以上の整数である。複数個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。R、Rは複数個存在する場合、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
前記式(1)で表される構造単位を有する共役化合物において、Rで表される1価のヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基等の炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。
【0023】
で表される1価のヒドロカルビル基としては、溶解性が良好になるので、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基がより好ましく、メチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、フェニル基が更に好ましく、メチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基が特に好ましい。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0024】
が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシル基、アルデヒド基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20のヒドロカルビルカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20のヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20のヒドロカルビルカルボニルオキシ基、置換基を有していてもよいスルホ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のヒドロカルビルアゾ基、置換基を有していてもよく炭素原子数1〜20である、1個又は2個のヒドロカルビル基で置換されたアミノ基、置換基を有していてもよく炭素原子数1〜20である、1個又は2個のヒドロカルビル基で置換されたアミド基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20の芳香族ヒドロカルビル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の芳香族複素環基等が挙げられ、好ましくは、炭素原子数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数6〜20の芳香族ヒドロカルビル基、炭素原子数1〜20の芳香族複素環基であり、より好ましくは炭素原子数1〜20のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数6〜20の芳香族ヒドロカルビル基であり、更に好ましくは炭素原子数1〜20のヒドロカルビルオキシ基である。置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。なお、本明細書中、「置換基を有していてもよい」という場合において、同様である。
【0025】
としては、溶解性が良好になるので、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基、上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基が好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、フェニル基、メチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、ヘキシロキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基がより好ましく、メチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、メチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、ヘキシロキシフェニル基、上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基が更に好ましく、メチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘキシロキシフェニル基、上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基が特に好ましく、メチル基、ヘキシル基、オクチル基、ヘキシルフェニル基、上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基がとりわけ好ましい。
【0026】
式(2)中、Rは置換基を有していてもよい2価の非芳香族ヒドロカルビル基である。2価の非芳香族ヒドロカルビル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。2価の非芳香族ヒドロカルビル基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、不飽和結合を2個以上含む2価のヒドロカルビル基が挙げられる。
【0027】
アルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の炭素原子数1〜50のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基の炭素原子数は、通常、1〜50であり、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20であり、更に好ましくは1〜10である。
【0028】
アルケニレン基の例としては、エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等の炭素原子数2〜50のアルケニレン基が挙げられる。アルケニレン基の炭素原子数は、通常、2〜50であり、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜20であり、更に好ましくは2〜10である。
【0029】
アルキニレン基の例としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基等の炭素原子数2〜50のアルキニレン基が挙げられる。アルキニレン基の炭素原子数は、通常、2〜50であり、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜20であり、更に好ましくは2〜10である。
【0030】
不飽和結合を2個以上含む2価のヒドロカルビル基の例としては、アルカジエニレン基、アルカトリエニレン基、アルカジイニレン基、アルカトリイニレン基が挙げられ、1,3−ブタジエニレン基、1,3,5−ヘキサトリエニレン基、1,3−ブタジイニレン基、1,3,5−ヘキサトリイエニレン基が好ましい。アルカジエニレン基及びアルカジイニレン基の炭素原子数は、通常、2〜50であり、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜20であり、更に好ましくは2〜10である。アルカトリエニレン基及びアルカトリイニレン基の炭素原子数は、通常、2〜50であり、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜20であり、更に好ましくは2〜10である。
【0031】
が有していてもよい置換基は、Rで表される1価のヒドロカルビル基が有していてもよい置換基と同様であり、定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0032】
複数個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
としては、溶解性が良好になるので、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20のアルケニレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20のアルキニレン基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,4−シクロヘキシレン基が更に好ましく、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,6−ヘキシレン基が特に好ましく、メチレン基、エチレン基、1,6−ヘキシレン基がとりわけ好ましい。
【0034】
式(2)中、Rは、置換基を有していてもよい1価のヒドロカルビル基又は水素原子である。1価のヒドロカルビル基としては、Rで表される1価のヒドロカルビル基と同様であり、定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0035】
が有していてもよい置換基は、Rで表される1価のヒドロカルビル基が有していてもよい置換基と同様であり、定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0036】
の好ましい例は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、フェニル基、メチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、ヘキシロキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が更により好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基、ヘキシルフェニル基、ヘキシロキシフェニル基が更に好ましく、水素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0037】
式(2)中、nは3以上の整数であり、好ましくは3〜100であり、より好ましくは4〜50であり、更に好ましくは4〜20であり、特に好ましくは6〜20である。
【0038】
式(3)中、R及びRは、前記式(2)と同様であり、定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0039】
式(3)中、Rは、置換基を有していてもよい3価の非芳香族ヒドロカルビル基である。3価の非芳香族ヒドロカルビル基としては、Rで表される2価の非芳香族ヒドロカルビル基から、1個の水素原子を取り除いた残りの原子団(残基)である。
【0040】
で表される3価の非芳香族ヒドロカルビル基の炭素原子数は、通常、1〜50であり、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20であり、更に好ましくは2〜10であり、特に好ましくは2〜4である。
【0041】
で表される3価の非芳香族ヒドロカルビル基の例としては、以下の式c−1〜式c−10、式d−1〜式d−13、式e−1〜式e−6、式f−1〜式f−8、式g−1〜式g−4で表される基が挙げられる。3価の非芳香族ヒドロカルビル基としては、式c−1〜式c−10、式d−1〜式d−13で表される基が好ましく、式c−1〜式c−6、式d−1〜式d−6、式d−11〜式d−13で表される基がより好ましく、式c−1〜式c−6で表される基が更に好ましく、式c−1で表される基が特に好ましい。
【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
式(3)中、mは0以上の整数であり、好ましくは0〜100であり、より好ましくは0〜50であり、更に好ましくは0〜20であり、特に好ましくは0〜10であり、とりわけ好ましくは0〜2である。
【0048】
式(3)中、qは1以上の整数であり、好ましくは1〜100であり、より好ましくは4〜50であり、更に好ましくは4〜20であり、特に好ましくは6〜20であり、とりわけ好ましくは12〜18である。
【0049】
式(3)中、rは1以上の整数であり、好ましくは1〜100であり、より好ましくは1〜50であり、更に好ましくは1〜20であり、特に好ましくは1〜3である。
【0050】
式(3)中、mが1以上の整数である場合には、式(3)で表される基は、m個の−R−O−で表される構造と、q個の−R−O−で表される構造とが、下記式(4)で表されるように交互に結合していてもよい。
また、式(3)中、mが1以上の整数である場合には、式(3)で表される基は、下記式(5)で表されるように、m個の−R−O−で表される構造と、q個の−R−O−で表される構造とが互いにランダムに結合していてもよい。
さらに、式(3)中、mが1以上の整数である場合には、式(3)で表される基は、−R−O−で表される構造が複数個連続的に結合したブロックと、−R−O−で表される構造が複数個連続的に結合したブロックとが下記式(6)で表されるように結合していてもよい。
【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
前記式(1)で表される構造単位は、R以外の位置に置換基を有していてもよい。この置換基は、Rにおける「1価のヒドロカルビル基が有していてもよい置換基」と同様であり、定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0055】
前記式(1)で表される構造単位の例としては、下記式a−1〜式a−4で表される構造単位が挙げられる。
【0056】
【化15】

【0057】
本発明の積層構造体に用いられる共役化合物は、前記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位を有していてもよい。
【0058】
前記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位としては、2価の芳香族基からなる構造単位が挙げられ、好ましくは炭素原子数6〜50のアリーレン基からなる構造単位であり、より好ましくは炭素原子数6〜30のアリーレン基からなる構造単位であり、更に好ましくは炭素原子数6〜15のアリーレン基からなる構造単位であり、特に好ましくは1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、若しくは、ビフェニル−4,4’−ジイル基からなる構造単位、又は、下記式b−1で表される構造単位であり、とりわけ好ましくは、1,4−フェニレン基からなる構造単位、又は、式b−1で表される構造単位である。
【0059】
【化16】

【0060】
前記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位を構成する2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、溶解性が良好になるので、アルキル基、アルキルオキシ基が好ましく、メチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、メチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基がより好ましく、メチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、メチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基が更に好ましく、メチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、メチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基が特に好ましく、ヘキシル基、オクチル基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基がとりわけ好ましい。
【0061】
本発明の積層構造体に用いられる共役化合物の数平均分子量は、通常、3×103〜1×108であり、5×103〜1×107が好ましく、5×103〜1×106がより好ましい。なお、この数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)等により求めることができる。
【0062】
<共役化合物の製造方法>
次に、前記共役化合物の製造方法について説明する。前記共役化合物は、例えば、下記式(7)で表される共役化合物を重合に供することで製造できる。
【0063】
【化17】

【0064】
式(7)中、Rは前記式(1)におけるRと同様であり、定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。Xは重合に関与する基を表す。
【0065】
式(7)中、Xで表される重合に関与する基としては、ハロゲン原子、−B(OH)で表される基、ホウ酸エステル基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アルキルアリールスルホネート基等が挙げられる。
【0066】
ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、ホウ酸エステル基としては、下記式から選ばれる基が挙げられる。
【0067】
【化18】

【0068】
アルキルスルホネート基の例としては、メチルスルホネート基又はトリフルオロメチルスルホネート基が挙げられる。アリールスルホネート基の例としては、フェニルスルホネート基が挙げられる。アルキルアリールスルホネート基の例としては、p-トルエンスルホネート基が挙げられる。
【0069】
前記共役化合物が、重合において主鎖に二重結合を生成する場合には、例えばビニル基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とのHeck反応が利用できる。前記共役化合物が重合によって主鎖に三重結合を生成する場合には、例えば、Heck反応、Sonogashira反応が利用できる。また重合によって主鎖に二重結合、三重結合を生成しない場合の重合方法の例としては、該当するモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、ゼロ価ニッケル錯体により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法等が挙げられる。
【0070】
重合によって二重結合、三重結合を生成しない場合には、前記共役化合物は、例えば、前記式(7)において、2個のXがハロゲン原子である共役化合物(ジハロゲン化物)を脱ハロゲン化して重合することにより得ることができるが、反応性が高くなるので、脱ハロゲン化重合を、パラジウム又はニッケル化合物、好ましくはニッケル化合物の存在下で行うことが好ましい。ニッケル化合物の中では、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル:Ni(cod)等のゼロ価ニッケル錯体が好ましい。これらの重合反応は、例えば、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と言う。)等の有機溶媒を用いて、0〜120℃で行うことができる。
【0071】
ここで、前記共役化合物を製造する際に供される原料化合物とは、前記共役化合物が有する構造単位に対応する原料化合物を意味する。
【0072】
<積層構造体>
次に、本発明にかかる積層構造体について説明する。
【0073】
本発明の積層構造体は、第1の電極及び第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に設けられた発光層又は電荷分離層と、該発光層又は該電荷分離層と前記第1の電極との間に設けられ、前記式(1)で表される構造単位を有する共役化合物を含有する層とを備える。
【0074】
本発明の積層構造体は、電界発光素子(即ち、有機エレクトロルミネッセンス素子)、光電変換素子等の電子素子に好適に用いることができる。本発明の積層構造体を電界発光素子に用いる場合には、積層構造体は発光層を有している。また本発明の積層構造体を光電変換素子に用いる場合には、積層構造体は電荷分離層を有している。
【0075】
前記共役化合物は電荷注入特性又は電荷輸送特性に優れるため、「共役化合物を有する層」は、電極から発光層への電荷注入特性を向上させ、又は電荷分離層から電極への電荷輸送特性を向上させる機能を有している。
よって、「共役化合物を含む層」を電界発光素子に用いた場合には、高輝度で発光する素子が得られる。また、該共役化合物を含む層を光電変換素子に用いた場合には、光電変換効率が高い素子が得られる。なお、「共役化合物を有する層」は、電界発光素子で用いられる場合には、非発光性であることが好ましい。
【0076】
本発明における第1の電極とは、陽極及び陰極のうちの一方であり、第1の電極が陰極である場合には第2の電極は陽極となり、第1の電極が陽極である場合には第2の電極は陰極となる。
【0077】
本発明において、第1の電極は陽極であっても陰極であってもよいが、陰極であることが好ましい。
【0078】
前記共役化合物は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー層、電子輸送層、電子注入層のいずれにも使用できるが、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層に使用することが好ましく、正孔注入層、電子注入層に使用することがより好ましく、電子注入層に使用することが特に好ましい。
【0079】
<電子素子>
(1)電界発光素子
本発明の電子素子は、本発明の積層構造体を含むものである。電子素子の例として、まず電界発光素子について説明する。
【0080】
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子は、第1の電極及び第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられた発光層と、発光層と第1の電極との間に設けられ、前記式(1)で表される構造単位を有する共役化合物を含有する層とを備える本発明の積層構造体を含む構造を有している。
【0081】
本発明の電界発光素子は、本発明の積層構造体に加え、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層、インターレイヤー層等を更に有していてもよい。本発明の電界発光素子は、基板上に本発明の積層構造体を含む構造を備えた構成とするのが好ましい。
【0082】
基板としては、光透過性を示す絶縁性基板(例えば、ガラス基板)を用いることができるほか、石英基板、プラスチック基板等を用いてもよい。基板には、リジット基板又はフレキシブル基板を用いることができる。基板として、フレキシブル基板を用いることで、全体としてフレキシブルな装置を実現することもできる。
【0083】
電界発光素子の構造の例としては、下記a)の構造が挙げられる。
a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
記号「/」は記号「/」を挟む2つの層が互いに接して配置されていることを意味している。
【0084】
また、発光層と陽極との間に、発光層に隣接してインターレイヤー層を設けてもよい。このような電界発光素子の構造の例としては、下記a’)の構造が挙げられる。
a’)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0085】
ここで、これらの各層はその他の層の機能を併せ持つ材料を使用して、2以上の層の機能を1層に集約することもできる。また、電界発光素子を保護するための保護層を更に有していてもよい。
【0086】
本発明の電界発光素子に用いられる積層構造体が備える「共役化合物を有する層」は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた有機層である。
【0087】
「共役化合物を有する層」は、電界発光素子における陰極と発光層との間の層又は陽極と発光層との間の層等として用いることができ、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、インターレイヤー層等として用いられる。
【0088】
本発明の電界発光素子の陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等に正孔を供給する機能を有し、陽極の材料は4.5eV以上の仕事関数を有することが好ましい。陽極の材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物及びこれらの混合物等を用いることができる。陽極の材料の例としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、前記導電性金属酸化物と前記金属との混合物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン類、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)等のポリチオフェン類、ポリピロール等の有機導電性材料及びこれら有機導電性材料とITOとを併用した材料が挙げられる。
【0089】
本発明の電界発光素子の陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給する機能を有する。
【0090】
本発明の電界発光素子の陰極の材料としては、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を用いることができる。
陰極の材料の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムであるアルカリ金属並びにそのフッ化物及び酸化物、マグネシウム、カルシウム、バリウムであるアルカリ土類金属並びにそのフッ化物及び酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、これらの合金、ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等の混合金属類、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属等が挙げられる。
【0091】
これらの中でも、前記陰極の材料としては、大気雰囲気中で劣化しにくい材料が好ましく、マグネシウム(3.66eV)、金(5.65eV)、銀(4.26eV)、鉛(4.25eV)、アルミニウム(4.28eV)等の仕事関数が3.5eV以上の金属がより好ましく、アルミニウム又は銀が更に好ましく、アルミニウムが特に好ましい(括弧内の数値は仕事関数の値である。)。
【0092】
本発明の電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、又は陰極から注入された電子を障壁する機能を有する。
本発明の電界発光素子において、「共役化合物を有する層」が正孔注入層又は正孔輸送層ではない場合には、これら正孔注入層及び正孔輸送層の材料としては、公知の材料を選択して使用できる。この場合の正孔注入層及び正孔輸送層の材料の例としては、カノレバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第3級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデイン系化合物、ポノレフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、前述の構成を有する金属配位化合物等、及びこれらを含む重合体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。正孔注入層及び正孔輸送層は、これらの材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0093】
本発明の電界発光素子の電子注入層及び電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、又は陽極から注入された正孔を障壁する機能を有する。
【0094】
本発明の電界発光素子において、「共役化合物を有する層」が電子注入層又は電子輸送層ではない場合には、これら電子注入層及び電子輸送層の材料としては、公知の材料を選択して使用できる。この場合の電子注入層及び電子輸送層の材料の例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属配位化合物、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールを配位子とする金属配位化合物に代表される各種金属配位化合物、有機シラン誘導体、前述の構成を有する金属配位化合物が挙げられる。電子注入層及び電子輸送層は、これらの材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0095】
電子注入層、電子輸送層の材料として、還元性ドーパント、絶縁体又は半導体の無機化合物を使用することもできる。電子注入層、電子輸送層が、絶縁体又は半導体で構成されていれば、電流のリークを効果的に防止して、電子注入性を向上させることができる。この還元性ドーパントの例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属が挙げられ、絶縁体の例としては、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属配位化合物、アルカリ土類金属配位化合物、希士類金属配位化合物が挙げられる。
【0096】
インターレイヤー層は、陽極と発光層との間に設けられる層である。インターレイヤー層は、陽極又は正孔注入層若しくは正孔輸送層と、発光層を構成する共役化合物との中間のイオン化ポテンシャルを有する材料で構成されることが好ましい。
【0097】
本発明の電界発光素子において、「共役化合物を有する層」がインターレイヤー層ではない場合には、インターレイヤー層に用いる材料の例としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の芳香族アミンを含む共役化合物が挙げられる。
【0098】
インターレイヤー層を発光層に隣接させて設ける場合であって、特にこれら両方の層を塗布法により塗布成膜して形成する場合には、両方の層の材料が混合して素子特性に好ましくない影響を与えることがある。インターレイヤー層を塗布法で形成した後、インターレイヤー層上に発光層を塗布法でさらに形成する場合に、これら2層の材料の混合を少なくする方法としては、インターレイヤー層を塗布法で形成し、該インターレイヤー層を加熱して発光層の形成に用いる有機溶媒に対して不溶化した後、発光層を形成する方法が挙げられる。前記加熱の温度は、通常、150℃〜300℃である。前記加熱の時間は、通常、1分間〜1時間である。
【0099】
本発明の電界発光素子の発光層は、電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔が注入され、かつ陰極又は電子注入層より電子が注入されることができる機能、注入された電荷を電界の力で移動させる機能、電子と正孔との再結合の場を提供し、この再結合により発光する機能を有する。発光材料としては、公知の低分子量の化合物、三重項発光錯体、高分子量の化合物が使用できる。本発明の電界発光素子の発光層は、有機層とするのが好ましく、金属材料等の有機化合物以外の機能性材料を含有しないことが好ましい。
【0100】
前記低分子量の化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体が挙げられる。
【0101】
前記高分子量の化合物としては、フルオレンジイル基を繰り返し単位とする重合体及び共重合体(以下、「(共)重合体」という。)、アリーレン基を繰り返し単位とする(共)重合体、アリーレンビニレン基を繰り返し単位とする(共)重合体、2価の芳香族アミン基を繰り返し単位とする(共)重合体等が挙げられる。
【0102】
前記三重項発光錯体の例としては、下記式で表される、イリジウム(Ir)を中心金属とするIr(ppy)及びBtpIr(acac)、アメリカンダイソース社(American Dye Source, Inc)から市販されているADS066GE(商品名)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)phenが挙げられる。
【0103】
【化19】

【0104】
本発明の電界発光素子では、各層の成膜法として公知の方法を使用できる。成膜法の例としては、粉末からの抵抗加熱蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、又は溶液若しくは溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。溶液又は溶融状態からの成膜による方法では、高分子バインダーを併用してもよい。
【0105】
前記高分子バインダーとしては、電荷輸送をなるべく阻害せず、かつ可視光の吸収が低いものが好ましい。高分子バインダーの例としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが挙げられる。
【0106】
ポリビニルカルバゾール及びその誘導体は、例えば、ビニルモノマーを材料として用い、カチオン重合又はラジカル重合させることにより得られる。
【0107】
ポリシラン及びその誘導体の例としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載されている化合物が挙げられる。合成方法は、これらの文献に記載されている方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0108】
ポリシロキサン及びその誘導体は、シロキサン骨格構造に正孔輸送性がほとんどないことから、側鎖又は主鎖に前記低分子量の正孔輸送材料の構造を有するものが好ましく、正孔輸送性を有する芳香族アミンを側鎖又は主鎖に有するものがより好ましい。
【0109】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、各材料及び/又は高分子バインダーを溶解又は均一に分散できるものが好ましい。溶媒の例としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と言う。)、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0110】
溶液又は溶融状態からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、キャピラリーコート法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
【0111】
本発明の電界発光素子において、各層の好ましい厚さは、材料の種類や層構成によって異なるが、通常、1〜1000nmである。
【0112】
本発明の電界発光素子は、照明用光源、サイン用光源、バックライト用光源、ディスプレイ装置、プリンターヘッド等に用いることができる。ディスプレイ装置としては、公知の駆動回路等の駆動技術を用い、セグメント型、ドットマトリクス型等の構成を選択することができる。
【0113】
(2)光電変換素子
次に電子素子の例として、光電変換素子について説明する。なお、第1の電極及び第2の電極、共役化合物を有する層、基板等の既に説明した電界発光素子と同様の構成については、詳細な説明を省略する場合がある。
【0114】
本発明の光電変換素子は、第1の電極及び第2の電極と、該第1の電極と該第2の電極との間に設けられた電荷分離層と、該電荷分離層と前記第1の電極との間に設けられ、前記式(1)で表される構造単位を有する共役化合物を含有する層とを備える、本発明の積層構造体を含む構造を有している。
【0115】
第1の電極及び第2の電極のうち、光が入射する側の電極、即ち、少なくとも一方の電極は、発電に必要な波長の入射光(例えば、太陽光)を透過させことができる透明又は半透明の電極とされる。
【0116】
光電変換素子は、通常、基板上に形成される。即ち、第1の電極、共役化合物を含有する層、電荷分離層、第2の電極を含む積層構造体は、基板の主面上に設けられている。
【0117】
電荷分離層は、第1の電極と第2の電極との間に設けられている。電荷分離層は、複数の層により構成されていてもよい。電荷分離層は、電子受容性化合物(n型半導体)と電子供与性化合物(p型半導体)とが混合されて含有される、例えば、バルクヘテロ型の有機層であるか、又は電子受容性化合物を含有する電子受容性層(n型半導体層)と電子供与性化合物を含有する電子供与性層(p型半導体層)とが接合されて構成されるヘテロジャンクション型の有機層である。電荷分離層は、入射光のエネルギーを利用して電荷を生成することができる、光電変換機能にとって本質的な機能を有する層である。
【0118】
電子供与性化合物の例としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0119】
電子受容性化合物の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60フラーレン等のフラーレン類及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体、酸化チタン等の金属酸化物、カーボンナノチューブが挙げられる。電子受容性化合物は、好ましくは、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン、フラーレン誘導体である。
【0120】
電荷分離層の厚さは、通常、1nm〜100μmが好ましく、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましくは20nm〜200nmである。
【0121】
ここで光電変換素子のとり得る層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/正孔輸送層/電荷分離層/陰極
b)陽極/電荷分離層/電子輸送層/陰極
c)陽極/正孔輸送層/電荷分離層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/電子供給性層/電子受容性層/陰極
e)陽極/電子供給性層/電子受容性層/電子輸送層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/電子供給性層/電子受容性層/電子輸送層/陰極
記号「/」は記号「/」を挟む2つの層が互いに接して配置されていることを意味している。
【0122】
上記層構成は、陽極が基板により近い側に設けられる形態、及び陰極が基板により近い側に設けられる形態のいずれであってもよい。
上記各層は、単層で構成されるのみならず、2層以上で構成されていてもよい。
【0123】
「共役化合物を含む層」は、光電変換素子における陰極と電荷分離層との間の層又は陽極と電荷分離層との間の層等として用いることができ、正孔輸送層、電子輸送層、その他の層として用いることができる。「共役化合物を含む層」は、電子輸送層として用いるのが好ましい。正孔輸送層、電子輸送層、その他の層が「共役化合物を含む層」ではない場合には、これらの層は従来公知の材料により形成することができる。
【0124】
本発明の光電変換素子では、各層の成膜法として公知の方法を使用できる。成膜法の例としては、前記電界発光素子と同様に、粉末からの抵抗加熱蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、溶液若しくは溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。
【実施例】
【0125】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、H−NMRの測定は、5〜20mgの測定試料を約0.5mLの重クロロホルムに溶解させて、バリアン(Varian,Inc.)製、商品名:MERCURY 300を用いて行った(300MHz)。
【0126】
<合成例1>(共役化合物1の合成)
2口フラスコ中に、4.86gの2,7-ジブロモフルオレン(15.0mmol)を加え、加熱しながら、該フラスコ内を真空乾燥させた。窒素雰囲気で200mLの脱水THF、3.45gの カリウムtert−ブトキシド(30.7mmol)を加え、攪拌した。0℃で8.4mLのエチレンオキシド(170mmol)を添加し、重合反応を開始させた。1時間後、徐々に室温まで昇温し72時間攪拌した。反応液に、等量のメトキシメチル塩化物を添加し、重合反応を停止させたところ、塩が生じた。この塩をろ過し、溶媒を留去したところ、赤色のオイル状物質が得られた。この赤色のオイル状物質を3回ヘキサンで洗浄後、クロロホルムに溶解させ、飽和食塩水で3回分液した。得られたクロロホルム溶液を50℃で、酸吸着剤及び塩基吸着剤を用いて、不純物を除去し、その後、硫酸マグネシウムを用いて溶液から溶媒を留去した。次いで、加熱しながら真空乾燥させることで、薄赤色オイル状の化合物Aを得た。収量は12.0gであり、収率は96%であった。
【0127】
得られた化合物Aは、H−NMRによって同定した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(溶離液:THF、ポリエチレンオキシド(PEO)基準)によって算出した数平均分子量は780であった。得られた化合物Aは、下記式で表される構造を有している。
【0128】
【化20】

【0129】
7.8gの化合物A(10mmol)を、トルエンと共沸させることで水分を完全に除去し、窒素雰囲気中で30mLの脱水DMFに溶解させて溶液を調製した(これを「溶液A」とする。)。
フラスコ内の気体を窒素で置換した3つ口フラスコで、6.6gのビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(24mmol)を100mLの脱水DMFに溶解させた。そこに、3.7gの2,2’−ビピリジル(24mmol)、及び、1,5−シクロオクタジエンを5滴添加して攪拌した後、先に調製した溶液Aを添加し、80℃にて24時間反応させた。反応液に等量の塩酸を滴下することで、反応を停止させ、DMFを除去した。クロロホルムを加えて可溶部を吸引ろ過により分別し、クロロホルム溶液をエチレンジアミン四酢酸水溶液(以下、「EDTA水溶液」と言う。)で3回分液した後、アンモニア水を加えて攪拌した。次いで、得られた溶液を再びEDTA水溶液で2回分液した後、飽和食塩水で2回分液した。得られたクロロホルム溶液を濃縮後、ヘキサンを貧溶媒として再沈殿を行い、クリーム色の流動性固体である共役化合物1を得た。収量は5.6gであり、収率は66%であった。得られた共役化合物1は、H−NMRによって同定した。GPC(溶離液:THF、PEO基準)によって算出した数平均分子量は15000であった。得られた共役化合物1は、下記式で表される構造単位を有している。
【0130】
【化21】

【0131】
<合成例2>(共役化合物2の合成)
3つ口フラスコに4.86gの2,7−ジブロモフルオレン(15mmol)を加えた後、該フラスコ内を真空乾燥させた。窒素雰囲気で150mLの脱水THFを導入して溶解させ、系内を0℃とした。そこに、3.45gのカリウムtert−ブトキシド(3.07mmol)を加えて1時間攪拌した後、4.21mLの6−ブロモ−1−ヘキサノール(3.07mmol)を加えて、徐々に室温まで昇温して48時間攪拌した。反応液に、塩酸を等量加えて溶液を中性にした後、THFを減圧除去したところ、固体が得られた。クロロホルムに得られた固体を溶解させ、水と分液することで塩を取り除き、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥後、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、溶離液:クロロホルム/メタノール=97/3(体積比))で精製し、真空乾燥させることで化合物Bを白色固体として得た。収量は3.51gであり、収率は33%であった。得られた化合物Bは、H−NMRによって同定した。得られた化合物Bは、下記式で表される構造を有している。
【0132】
【化22】

【0133】
2.62gの化合物B(5.0mmol)を真空乾燥させた後、窒素雰囲気で、15mLの脱水DMFに溶解させて溶液を調製した(これを「溶液B」とする。)。
3つ口フラスコに、2.06gのビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(7.5mmol)、及び、100mLの脱水DMFを加えて攪拌し、1.17gの2,2’−ビピリジル(7.5mmol)、及び、1,5−シクロオクタジエンを5滴加えた後、攪拌した。得られた溶液に溶液Bを添加し、60℃で24時間反応させた。反応液をメタノールと塩酸との混合溶液(メタノール:塩酸=9:1(体積比))に入れたところ、沈殿が析出したので、沈殿物をろ過した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、可溶部を分別した。得られたクロロホルム溶液を塩酸で3回、EDTA水溶液で3回、飽和食塩水で1回の順番で分液した。さらに、アンモニア水、EDTA水溶液、飽和食塩水でそれぞれ1回ずつ分液した。得られた溶液を濃縮し、メタノールに対して再沈殿した後、ろ過によって得られた黄色固体を加熱しながら、真空乾燥させることで、化合物Cを得た。収量(クロロホルム可溶部)は0.60gであり、収率は33%であった。得られた化合物Cは、H−NMRによって同定した。GPC(溶離液:THF、PEO基準)によって算出した数平均分子量は7100であった。得られた化合物Cは、下記式で表される構造単位を有している。
【0134】
【化23】

【0135】
0.182gの化合物C(0.5単位−mmol)を真空乾燥させた後、窒素雰囲気で40mLの脱水THFに溶解させ、系内を0℃にした。0.150gの乾燥カリウムtert−ブトキシド(1.3mmol)を加え、1時間攪拌した。そこに、8.36mLのエチルグリシジルエーテルを添加して重合反応を開始し、80℃に昇温して48時間攪拌した。反応液に塩酸を等量加えることによって、反応を停止させた。得られた反応液から、ろ過によって塩を取り除き、THFを減圧除去した。残留物をクロロホルムに溶解させた後、飽和食塩水で3回分液した。得られた溶液を濃縮した後、ヘキサンに滴下することで洗浄した。不溶部を加熱しながら真空乾燥させることで、黄色流動性固体である共役化合物2を得た。収量は3.1gであり、収率は39%であった。得られた共役化合物2は、H−NMRによって同定した。GPC(溶離液THF、PEO基準)によって算出した数平均分子量は83000であった。得られた共役化合物2は、下記式で表される構造単位を有している。
【0136】
【化24】

【0137】
<合成例3>(正孔輸送材料の合成)
還流冷却器及びオーバーヘッドスターラを装備した容量1Lの3つ口丸底フラスコに、2,7−ビス(1,3,2−ジオキシボロール)−9,9−ジ(1−オクチル)フルオレン(3.863g、7.283mmol)、N,N−ジ(p−ブロモフェニル)−N−(4−(ブタン−2−イル)フェニル)アミン(3.177g、6.919mmol)及びジ(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブタンアミン(156.3mg、0.364mmol)を入れた。
次いで、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名:Aliquat(登録商標)336)(2.29g)を添加し、さらに50mLのトルエンを添加した。PdCl(PPh(4.9mg)を添加した後、得られた混合物を、105℃の油浴中で15分間撹拌した。炭酸ナトリウム水溶液(2.0M、14mL)をさらに添加し、反応液を105℃の油浴中で、16.5時間撹拌した。次いで、そこに、フェニルボロン酸(0.5g)を添加し、反応液を7時間撹拌した。
次いで、反応液から水層を除去し、有機層を50mLの水で洗浄した。有機層を反応フラスコに戻して、0.75gのジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム及び50mLの水を添加した。得られた溶液を85℃の油浴中で、16時間撹拌した。
反応液から水層を除去し、有機層を100mLの水で3回洗浄した後、シリカゲル及び塩基性アルミナのカラムに通した。次いで、目的とする正孔輸送材料を含むトルエン溶液をメタノールに沈殿させる操作を2回繰り返し、得られた沈殿物を60℃で真空乾燥することにより、正孔輸送材料である高分子化合物を4.2g得た。正孔輸送材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は124000であった。
【0138】
<実施例1>(電界発光素子k−1の作製)
陽極としてITOの薄膜が成膜されたガラス基板のITO上に、正孔注入材料溶液として、0.5mlのポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck製、PEDOT:PSS溶液、商品名:CLEVIOS(登録商標) P VP Al 4083)を塗布し、スピンコート法によって、厚さが70nmになるように膜を形成し、該膜が形成されたガラス基板を空気中、200℃で10分間加熱した後、基板を室温まで自然に冷却させ、正孔注入層が形成されたガラス基板Aを得た。
【0139】
また、合成例3で得られた正孔輸送材料5.2mgとキシレン1mLとを混合し、正孔輸送材料を0.6重量%含む正孔輸送層用組成物を調製した。
【0140】
次に、正孔輸送層用組成物をスピンコート法により、正孔注入層が形成されたガラス基板A上に塗布し、厚さ25nmの膜を形成した。この膜を形成したガラス基板Aを窒素雰囲気下、200℃で20分間加熱した後、室温まで自然に冷却させることにより、正孔輸送層が形成されたガラス基板Bを得た。
【0141】
次に、発光材料であるBP361(サメイション(株)製、11.3mg)と1mLのキシレンとを混合し、発光材料を1.3重量%含む発光層用組成物を調製した。
この発光層用組成物をスピンコート法により、正孔輸送層が形成されたガラス基板B上に塗布し、厚さ80nmの膜を形成した。この膜を形成したガラス基板Bを窒素雰囲気下、130℃で15分間加熱して、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然に冷却させることにより、発光層が形成されたガラス基板Cを得た。
【0142】
次に、メタノールとTHFとをメタノール:THF=3:1の体積比で混合した溶媒を1mLと共役化合物1(2mg)とを混合し、共役化合物1を0.2重量%含む組成物を調製した。
【0143】
この組成物をスピンコート法により、発光層が形成されたガラス基板C上に塗布し、厚さ10nmの膜を形成した。この膜を形成したガラス基板Cを窒素雰囲気下、130℃で15分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然に冷却させることにより、共役化合物1からなる層が形成されたガラス基板Dを得た。
【0144】
共役化合物1からなる層が形成されたガラス基板Dを小型真空蒸着装置(商品名:VPC−260F、アルバック機工(株)社製)内に挿入し、真空蒸着法によってアルミニウム層を100nmの厚さで成膜することにより、アルミニウム層である陰極が形成された積層構造体を得た。この陰極が形成された積層構造体を前記装置から取り出し、窒素雰囲気下で、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂(Robnor resins社製、商品名:PX681C/NC)にて封止することにより、電界発光素子k−1を作製した。
【0145】
電界発光素子k−1に12Vの順方向電圧を印加して、輝度と発光効率とを測定した。得られた結果を表1に示す。
【0146】
<実施例2>(電界発光素子k−2の作製)
実施例1において、共役化合物1の代わりに共役化合物2を用いた以外は、実施例1と同様にして、電界発光素子k−2を作製した。電界発光素子k−2に12Vの順方向電圧を印加して、輝度と発光効率とを測定した。得られた結果を表1に示す。
【0147】
<比較例1>(電界発光素子k−3の作製)
実施例1において、共役化合物1からなる層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、電界発光素子k−3を作製した。電界発光素子k−3に、12Vの順方向電圧を印加して、輝度と発光効率とを測定した。得られた結果を表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
<評価>
表1から分かるように、本発明の積層構造体を用いてなる電界発光素子k−1及び電界発光素子k−2は、本発明の積層構造体を用いない電界発光素子k−3に比べて、輝度及び発光効率が格段に優れていた。このことから、本発明の積層構造体は、電界発光素子に用いた場合には電荷注入特性をより向上させることができるものであると認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極と、
該第1の電極と該第2の電極との間に設けられた発光層又は電荷分離層と、
該発光層又は電荷分離層と前記第1の電極との間に設けられ、下記式(1)で表される構造単位を有する共役化合物を含有する層と
を備える、積層構造体。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい1価のヒドロカルビル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基である。2個存在するRのうちの少なくとも1個は、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基である。2個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。)
【化2】

(式(2)中、Rは置換基を有していてもよい2価の非芳香族ヒドロカルビル基である。Rは、置換基を有していてもよい1価のヒドロカルビル基又は水素原子である。nは4以上の整数である。複数個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。)
【化3】

(式(3)中、R及びRは前記定義の通りである。Rは置換基を有していてもよい3価の非芳香族ヒドロカルビル基である。mは0以上の整数である。q及びrは1以上の整数である。複数個存在するRは同一であっても異なっていてもよい。R、Rは複数個存在する場合、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記第1電極の材料が仕事関数が3.5eV以上の金属であり、かつ前記共役化合物を含有する層が電子注入層又は電子輸送層である、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記第1電極の材料がアルミニウム又は銀である、請求項2に記載の積層構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層構造体を含む、電子素子。
【請求項5】
前記第1電極の材料が仕事関数が3.5eV以上の金属であり、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた層が発光層であり、かつ前記共役化合物を含有する層が電子注入層である、請求項4に記載の電子素子。
【請求項6】
前記第1電極の材料がアルミニウム又は銀である、請求項5に記載の電子素子。

【公開番号】特開2012−204629(P2012−204629A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68140(P2011−68140)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】