説明

積層樹脂成形物

【課題】
製品の差別化を目的とした新しい意匠性が求められている中、今までとは異なる意匠性材料の提供。
【解決手段】
熱可塑性樹脂と着色された高分子粒子とからなる層と着色された熱可塑性樹脂層を重ねることにより、見る角度により色が変化し、なおかつコントラストや彩度が大きいことを特徴とした新たな意匠性を有する成形品の提供。更には、熱可塑性樹脂と染料または顔料により着色されている平均粒径が5〜300μmの高分子微粒子からなるA層と、熱可塑性樹脂と染料または顔料を含有する層を1層以上有するB層からなり、A層はB層より表層側に設置されることを特徴とする積層樹脂成形物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新しい意匠性を有する積層樹脂成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の高付加価値化を計るために様々な工夫がなされている。日用品、包装容器、家電、自動車など様々な分野において高意匠化の要求はますます増えている。消費者は品質、性能、価格など様々な情報により製品の購入を検討するが、最近では製品のデザインが購入を決定付ける大きな要因の1つになっている。特に、同じ価格では製品の品質、性能などに大差がないのでその傾向はより大きくなる。また、デザインが良ければ多少性能が劣っていたり、価格が高かったりしても売れる傾向がある。元々は家電製品などの高価で長期間使用する製品などでその傾向が見られたが、最近では安価で製品寿命の短い日用品や包装容器にもその傾向が強く見られるようになった。例えば、ペットボトル飲料などではボトルの形状が多様になったり、キャップがカラフルになったりと様々な工夫が加えられている。
【0003】
ペットボトル飲料ではリサイクルの問題や衛生性の問題などから、意匠性を発現させる方法は限られているが、そういった問題に関与しないボディーソープやシャンプー等のサニタリー用品の容器では特に様々な意匠性を与える工夫がなされている。例えば、シャンプーボトルなどの容器では煌びやかな意匠性を持たせるために、金属被覆ガラスフレーク顔料や金属被覆無機顔料などを練りこんだ層を有する積層ボトルなどが使われている(特許文献1〜4)。また、2つの別の色の層を構成していてどちらか一方もしくは両方の厚みを変化させることでグラデーションを表現させているボトルなども知られている(特許文献5、6)。さらに、樹脂へ扁平の空気層を存在させ屈折率差から真珠光沢を発現させた容器や(特許文献7)、非相溶な2種の樹脂を混合させることで屈折率の差などから真珠光沢を発現させる方法(特許文献8、9)が提唱されている。これらの容器は少ない工程で作成でき、塗装がなくても高い意匠性を持っている例である。
【0004】
日々、新しい意匠性が求められている中でより新しい意匠性が求められている。それは、公知の意匠性の組合せによるものではもちろんなされているが、同時に新しい意匠性材料は常に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭53−41596号公報
【特許文献2】特開平06−239350号公報
【特許文献3】特開2004−91041号公報
【特許文献4】特許第3135952号
【特許文献5】特公昭53−83884号公報
【特許文献6】特開昭56−123235号公報
【特許文献7】特開2007−22554号公報
【特許文献8】特許第2928839号
【特許文献9】特公昭61−39336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は熱可塑性樹脂と着色された高分子粒子とからなる層と着色された熱可塑性樹脂層を重ねることにより、見る角度により色が変化し、なおかつコントラストや彩度が大きいことを特徴とした新たな意匠性を成形品に付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は熱可塑性樹脂と染料または顔料により着色されている平均粒径が10〜300μmの高分子微粒子からなるA層と、熱可塑性樹脂と染料または顔料を含有する層を1層以上有するB層からなり、A層はB層より表層側に設置されることを特徴とする積層樹脂成形物に関する。
【0008】
更に本発明はA層が染料、顔料または光輝性顔料から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする上記積層樹脂成形物に関する。
更に本発明は積層樹脂成形物のA層とB層の間、A層より表層側、またはA層の両面に染料、顔料、光輝性顔料または高分子微粒子から選ばれる少なくとも1種以上を含有する層を1層以上有することを特徴とする上記積層樹脂成形物に関する。
更に本発明は光輝性顔料が金属被覆ガラスフレーク顔料、金属粉顔料及び金属被覆無機顔料から選ばれる少なくとも1種以上の顔料である上記積層樹脂成形物に関する。
更に本発明は高分子粒子が色、粒径、形状、屈折率、または樹脂種から選ばれる少なくとも1種以上が異なる性質をもつ1種以上の粒子から構成されていることを特徴とする上記積層樹脂成形物に関する。
更に本発明は積層樹脂成形物の最表層に透明樹脂層が設置されていることを特徴とする上記積層樹脂成形物に関する。
更に本発明は透明樹脂層がポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、またはアクリル系樹脂のいずれか1種からなる層であることを特徴とする上記積層樹脂成形物に関する。
更に本発明は熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である上記積層樹脂成形物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により新たな意匠性を成形品に付与することが出来た。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における積層成形物は、熱可塑性樹脂と染料または顔料により着色されている平均粒径が5〜300μmの高分子微粒子からなるA層と、熱可塑性樹脂と染料または顔料を含有する層を1層以上有するB層を最小の基本構成とし、その際にA層は表面層となる。
樹脂に高分子微粒子を練りこんだ表層(A層)と着色した樹脂からなる基材層(B層)とからなる成形物を正面から見ると高分子微粒子は粒子が細かく、また着色力も無いので基材層の色がそのまま認識できるが、角度をつけて成形物を見ると入射光が通過するA層の距離が長くなるので高分子微粒子の色を認識する。もちろん単に2種の着色層を重ねた成形物も角度により色が変化して見えるが、正面から見たときに2種の着色層を重ねた場合は透過色に表層の色が入る。それに対し、高分子微粒子の場合は粒子が細かいので正面から見たとき殆ど粒子の色を認識せずに基材層の色だけを認識するので角度をつけて見たときの色の変化が大きく独特な意匠性を発現する。
【0011】
A層は、透明もしくは半透明の熱可塑性樹脂と高分子微粒子からなる。A層は高分子微粒子を1種類含む場合以外に、色、粒径、形状、屈折率、または樹脂種から選ばれる少なくとも1種以上が異なる高分子微粒子を1層に2種以上含んでも良い。高分子微粒子を添加する量としては粒子径や層の厚さ等により異なるので一概には言えないが、樹脂100重量部に対し、0.01〜15重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部である。高分子微粒子の添加量が15%以上になると隠蔽が増し基材層の色をはっきり認識できなくなることで発明の効果が低減してしまう。また、高分子微粒子の添加量が0.01%を下回ると角度をつけて成形品を見ても粒子の色を認識できないため発明の効果が殆ど発揮されない。なお、層を形成する熱可塑性樹脂は透過性を有していることが好ましい。下の基材層が見えないと意匠性の効果が薄くなるため透明グレード以外のABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂のような不透明な樹脂は不向きである。また、高分子微粒子を用いているため、あまり加工温度が高い樹脂も加工時に溶融または分解が起こるため不向きである。ただし、高分子微粒子に用いる樹脂の種類や架橋度によって、その耐熱性は変化するので、用いる高分子微粒子によって層を形成する熱可塑性樹脂を選定する必要がある。
【0012】
A層は、更に染料、顔料、または光輝性顔料から選ばれる少なくとも1種以上を含有させることができる。ただし、熱可塑性樹脂への着色は薄い色であること、もしくは着色しないことが好ましい。あまり濃色の着色をしてしまうと高分子微粒子を認識しにくくなったり、B層の色を認識しにくくなったりするために発明の効果を損ねてしまう。
【0013】
B層は1層以上の熱可塑性樹脂層を有しており、そのうち少なくとも1層以上が染料または顔料により着色されていなくてはならない。また、B層の中で最も表層側に設置される層はA層中の高分子微粒子と違う色であることが好ましく、使用する高分子微粒子が1色である場合は同系色以外であることが特に好ましい。同じ色で構成されると角度をつけて成形物を見ても角度による色の変化が出ないため好ましくない。高分子微粒子が暖色である場合は、A層直下の基材の色は寒色であると色の変化が大きく感じるので意匠性は顕著なものとなる。なお、B層を構成する熱可塑性樹脂は特に限定されないが、A層と同じ樹脂種であることが好ましい。B層の構成は特に限定されないが、例えば有機顔料により着色された層、二酸化チタンにより着色された隠蔽層などから構成される。
【0014】
本発明における積層樹脂成形物のA層とB層の間、A層より表層側、またはA層の両面に染料、顔料、光輝性顔料または高分子微粒子から選ばれる少なくとも1種以上を含有する層を1層以上有することができる。特に高輝性顔料もしくは高分子微粒子が含まれていることが好ましい。また、A層より表層側に着色層を形成する場合には着色が薄い色であること、もしくは着色されていないことが好ましい。あまり濃色の着色をしてしまうと高分子微粒子を認識しにくくなったり、B層の色を認識しにくくなったりするために発明の効果を損ねてしまう。
【0015】
積層樹脂成形物の最表層に透明樹脂層を有していても良い。透明樹脂の中でもポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、またはアクリル系樹脂などから選ばれる樹脂が特に好ましい。透明樹脂層を積層樹脂成形物の最表層に設けることで成形物に高光沢の意匠性を与えることが出来る。
【0016】
光輝性顔料は、光の干渉によって光輝性を有するものであり、例えば金属被覆無機顔料、金属被覆ガラスフレーク顔料、および金属粉顔料が挙げられる。金属被覆無機顔料の例としては、メルク社から「シラリック」の商品名で市販されている顔料などの、酸化チタンで又は酸化鉄で被覆された鱗片形状アルミナ顔料および、メルク社から「イリオジン」の商品名で市販されている顔料などの、酸化チタンで又は酸化鉄で被覆された雲母顔料などが挙げられる。金属被覆ガラスフレーク顔料の例としては、ガラスフレークに金属または金属酸化物をコーティングした日本板硝子社から「メタシャイン」の商品名で市販されている顔料や、メルク社から「カラーストリーム」、「ミラバル」などの商品名で市販されている顔料等が挙げられる。金属粉顔料の例としては、アルミニウム箔片顔料が挙げられる。
【0017】
本発明において高分子微粒子とは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなるものである。形状は特に限定されるものではなく粒状、球状、板状、中空状、針状、コアシェル状、マイクロカプセルなどの各種形状を取ることが可能である。平均粒子径としては5〜300μm程度のものが好ましく、より好ましくは50〜200μm程度の平均粒子径のものである。粒子径が大きすぎると正面から見たときに粒子をハッキリと認識してしまうため外観が悪化すると共に効果も薄れてしまう。また、全ての粒子が小さすぎると光の拡散が起こりすぎて発色が落ち、コントラストが下がるので好ましくない。なお、高分子微粒子はマトリックス樹脂の加熱溶融状態であっても形状や色を損なわないものがよい。
【0018】
粒度分布が広かったり、粒径の小さい粒子を追加で添加したりすることにより粒径の小さい高分子微粒子を意図的にある程度加えることで光の拡散が起こり独特の意匠性が発現する。また、ベースとなる樹脂と高分子微粒子の屈折率の差が大きければパール調の光沢が加わり意匠性がさらに付加されるので良い。屈折率差の効果を効率よく発現するには高分子微粒子の着色は光をある程度透過するレベルに抑えることが好ましい。これらの付加効果を1種類以上与えることによりさらに新しい意匠性を加えることが出来る。
【0019】
高分子微粒子の製造法は特に限定されるものではないがエマルジョン重合法、分散重合法、懸濁重合法、シード重合法、樹脂を粉砕させる方法、非相溶の分散媒に樹脂を分散させた後に分散媒を除去する方法(特開2001−114901号公報)などがある。
本発明で用いる高分子微粒子は着色をされているが、その着色方法としては高分子微粒子作成前に予め樹脂と染料または顔料を押出機等で着色させておく方法、高分子微粒子の製造時に染料または顔料を添加し着色する方法、製造した高分子微粒子に染料または顔料をメカノケミカルなどにてコーティングもしくは打ち付ける方法、染料または顔料を単純に高分子微粒子の表面にまぶしつける方法、高分子微粒子を染色液に浸漬させて染色する方法などが上げられる。高分子微粒子を樹脂へ練りこむ際に色が移行しないことが好ましいことから、高分子微粒子を作成前に予め樹脂に着色しておくか、合成法の場合は着色高分子微粒子の製造時に着色する方法が最も好ましい。
【0020】
本発明に用いられる積層成形物の各層および高分子微粒子を構成する熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂2種以上を共重合させたものであっても良い。
【0021】
また、本発明に用いられる積層成形物の各層および高分子微粒子を構成する熱可塑性樹脂として、生分解樹脂、バイオマス樹脂も用いることができる。生分解樹脂は単にプラスチックがバラバラになることではなく、微生物の働きにより、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質を持った樹脂であり、その原料は有機資源由来の物質ある必要性が無い樹脂を示す。一方、バイオマス樹脂とは有機資源由来の物質からなる樹脂で生分解性を有さなくても良い樹脂を示す。生分解樹脂、バイオマス樹脂の両方に属する樹脂も多い。具体的にはポリ乳酸、ポリカプロラクトン、または脂肪族ジカルボン酸と多価アルコールとを原料として得られる脂肪族ポリエステル系樹脂の他、微生物または植物より合成されたポリエステル樹脂等が挙げられる。特にポリ乳酸が好ましい。
【0022】
本発明に用いられる高分子微粒子を構成する熱可塑性樹脂としてはさらに架橋熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、架橋ポリスチレン樹脂、架橋ポリジビニルベンゼン樹脂、架橋ポリビニルトルエン樹脂、架橋スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、架橋ポリメタクリル酸メチル樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、架橋ポリプロピレン樹脂などである。
【0023】
本発明に用いられる高分子微粒子を構成する熱硬化性樹脂としては、従来既知の熱硬化性樹脂がいずれも使用でき、例えば、エポキシ樹脂,フェノール樹脂,尿素樹脂,メラニン樹脂,アルキド樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ジアリルフタレート樹脂,ポリウレタン,シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明の積層成形物の各層および高分子微粒子には、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて適当な添加剤、例えば、耐酸化安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、分散剤、カップリング剤等が含有されていてもよい。
本発明の積層体の成形法は特に限定されるものではないが、例えばインサート射出成形法、インモールド成形法、オーバーモールド成形法、二色射出成形法、コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法などの射出成形方法、Tダイラミネート成形法、多層インフレーション成形法、共押出成形法、押出被覆法などの押出成形法、そして多層ブロー成形法、多層カレンダー成形法、多層プレス成形法、スラッシュ成形法、溶融注型法などの成形法を採用することができ、さらにシート、フィルム、チューブ、型成形体などの各種積層体に成形することができる。
【0025】
前記した成形法のうち、インサート射出成形法(またはインモールド成形、オーバーモールド成形)とは、予め所定の形状および寸法に形成しておいた樹脂成形物(フィルムを含む)を金型内にセットしておいて、そこへ別の樹脂を射出成形して積層体を製造する方法である。また、上記した二色射出成形法によって積層体を製造する場合は、二台以上の射出装置を用いて、金型内に一方の樹脂を射出成形した後に、金型の回転や移動などによって金型キャビティーを交換し、最初の射出成形によって形成した成形品と第2の金型壁との間に形成された空隙部にもう一方の樹脂を射出成形して積層体を製造する方法が一般に採用される。上記したコアバック射出成形法による場合は、1台の射出成形機と1個の金型を用いて、金型内に一方の樹脂を最初に射出成形して成形品を形成した後、その金型のキャビティーを拡大させ、そこにもう一方の樹脂を射出成形して積層体を製造する方法が一般に採用される。
【0026】
上記した押出成形によって一方の樹脂の層ともう一方の樹脂の層を有する積層体を製造する場合は、内側と外側、上側と下側、左側と右側とに2層以上に分割された金型(押出ダイ部など)を通して、2層以上に同時に溶融押出して接合させる方法などが採用できる。さらに、例えばカレンダー成形を行う場合は、溶融可塑化状態にあるかまたは固形状態にある一方の樹脂の上に、もう一方の樹脂を溶融下にカレンダー加工して被覆積層させることにより目的とする積層体を製造することができる。また、例えばプレス成形による場合は、一方の樹脂(もしくはその成形体)の配置下にもう一方の樹脂を用いて溶融プレスを行うことによって積層体を製造することができる。
【0027】
本発明の積層体の各層は成形機に熱可塑性樹脂と、染料、顔料、高分子微粒子、その他添加剤などから選ばれる少なくとも1種以上とを直接投入してもよいし、予めそれらを分散させておいた樹脂組成物を用いても良い。また、前記樹脂組成物は、染料、顔料、高分子微粒子、その他添加剤などから選ばれる少なくとも1種以上を熱可塑性樹脂中に比較的高濃度に含有し、成形時に被成形樹脂(ベース樹脂)で希釈されるマスターバッチであっても良いし、染料、顔料、高分子微粒子、その他添加剤などから選ばれる少なくとも1種以上の濃度が比較的低く、被成形樹脂で希釈せずにそのままの組成で成形に供されるコンパウンドであっても良い。
【0028】
本発明における熱可塑性樹脂と、染料、顔料、高分子微粒子、その他添加剤などから選ばれる1種以上とを分散させた前記樹脂組成物の製造は特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂と、染料、顔料、高分子微粒子、その他添加剤などから選ばれる1種以上とを加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合しニーダー,ロールミル,スーパーミキサー,ヘンシェルミキサー,シュギミキサー,バーティカルグラニュレーター,ハイスピードミキサー,ファーマトリックス,ボールミル,スチールミル,サンドミル,振動ミル,アトライター,バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等で混合や溶融混練分散し、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状等の形状の樹脂組成物を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳しく説明する。
[実施例1]
<樹脂微粒子の作成法>
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロンS3000(ポリカーボネート)にマクロレックスレッドEGを2%配合し二軸混練押出機にて温度250℃で溶融混練押し出し成形を行い、ペレット状の着色樹脂組成物(着色ペレット)を得た。得られた着色樹脂組成物をトライアル(株)にて特開2001−114901号報に記載の方法に従い、三洋化成工業(株)製のポリエチレングリコールと良く混合した後、二軸混練押出機にて、着色樹脂組成物が微粒子状になるまで分散させた。得られた混合物を冷却した後、分散媒である水と混合して着色樹脂微粒子の懸濁液とした。遠心分離法及び濾過法により目的とする複合粉体を分離した後、加熱乾燥して、平均粒子径が50μmの、染料で着色された樹脂微粒子(a)を得た。
【0030】
<熱可塑性樹脂と樹脂微粒子を含有する層の作成方法>
プライムポリプロJ226ED((株)プライムポリマー製、ランダムポリプロピレン)に上記樹脂微粒子(a)を1%配合し、単軸混練押出機にて温度220℃で溶融混練押し出し成形を行い、ペレット状の着色樹脂組成物(着色ペレット)を得た。得られた樹脂組成物を220℃に加温したプレス成形機にて成形し、厚み0.5mmの樹脂微粒子を含有する層(b)を作成した。
【0031】
<熱可塑性樹脂と染料または顔料を含有する層>
プライムポリプロJ226ED((株)プライムポリマー製、ランダムポリプロピレン)にリオノールブルーFG−7330(東洋インキ製造株式会社製、フタロシアニンブルー顔料)とサンワックス131P(三洋化成(株)製、ポリエチレンワックス)とを50対50の比で混ぜたものを3本ロールにて予備分散させた分散体を0.1%配合し、単軸混練押出機にて温度220℃で溶融混練押し出し成形を行い、ペレット状の着色樹脂組成物(着色ペレット)を得た。得られた樹脂組成物を220℃に加温したプレス成形機にて成形し、厚み0.5mmの着色された樹脂層(c)を作成した。
【0032】
<積層成形物>
上記樹脂微粒子を含有する層(b)と上記着色された樹脂層(c)をプレス成形機にてラミすることで積層成形物を作成した。
[実施例2]
実施例1の樹脂微粒子(a)を架橋アクリル・タフチックAR650MZ(赤)(東洋紡績(株)製、アクリルビーズ)に変更し、同様に積層成形物を作成した。
【0033】
[比較例1]
プライムポリプロJ226EDをプレス成形機で成形することで得られた厚さ0.5mmの透明な樹脂層と実施例1と同様に作成された着色された樹脂層(c)をプレス成形機にてラミすることで積層成形物を作成した。
[比較例2]
プライムポリプロJ226ED((株)プライムポリマー製、ランダムポリプロピレン)にFastogen Super Magenta R(DIC(株)製、キナクリドン系顔料)とサンワックス131P(三洋化成(株)製、ポリエチレンワックス)とを50対50の比で混ぜたものを3本ロールにて予備分散させた分散体を0.05%配合し、単軸混練押出機にて温度220℃で溶融混練押し出し成形を行い、ペレット状の着色樹脂組成物(着色ペレット)を得た。得られた樹脂組成物を220℃に加温したプレス成形機にて成形し、厚み0.5mmの着色された樹脂層(d)を作成した。着色層(d)と実施例1と同様に作成された着色された樹脂層(c)をプレス成形機にてラミすることで積層成形物を作成した。
【0034】
[評価方法]
1.下層認識度の評価
積層成形物を目視した際(透過)の下層(樹脂層(c))の認識レベルを評価した。
◎:下層の色をそのままの色で完全に認識できる。
○:下層の色を概ねもとの色のまま認識できる。
△:上層と下層の混色として認識される。
×:上層の色しか認識できない。
2.色の変化率の評価
積層成形物を正面から見た時と斜めから見た時の色の変化度合いを目視にて評価した。
◎:正面から見た時と斜めから見た時で完全に違う色に変化している。
○:正面から見た時と斜めから見た時でかなり違う色に変化している。
△:正面から見た時と斜めから見た時であまり色が変化しない。
×:全く色の変化が見られない。
以上の評価の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

表1に示すように樹脂微粒子を用いた場合には色の変化率が大きく意匠性を付与することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0036】
見る角度により色が変化し、なおかつコントラストや彩度が大きいことから様々な容器に意匠性を持たすことが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と染料または顔料により着色されている平均粒径が5〜300μmの高分子微粒子からなるA層と、熱可塑性樹脂と染料または顔料を含有する層を1層以上有するB層からなり、A層はB層より表層側に設置されることを特徴とする積層樹脂成形物。
【請求項2】
A層がさらに染料、顔料または光輝性顔料から選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の積層樹脂成形物。
【請求項3】
積層樹脂成形物のA層とB層の間、A層より表層側、またはA層の両面に染料、顔料、光輝性顔料または高分子微粒子から選ばれる少なくとも1種以上を含有する層を1層以上有することを特徴とする請求項1または2記載の積層樹脂成形物。
【請求項4】
光輝性顔料が金属被覆ガラスフレーク顔料、金属粉顔料及び金属被覆無機顔料から選ばれる少なくとも1種以上の顔料である請求項2または3記載の積層樹脂成形物。
【請求項5】
高分子粒子が色、粒径、形状、屈折率、または樹脂種から選ばれる少なくとも1種以上が異なる性質をもつ1種以上の粒子から構成されていることを特徴とする請求項1ないし4記載の積層樹脂成形物。
【請求項6】
積層樹脂成形物の最表層に透明樹脂層が設置されていることを特徴とする請求項1ないし5記載の積層樹脂成形物。
【請求項7】
透明樹脂層がポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、またはアクリル系樹脂のいずれか1種からなる層であることを特徴とする請求項6記載の積層樹脂成形物。
【請求項8】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂である請求項1ないし7記載の積層樹脂成形物。

【公開番号】特開2010−195009(P2010−195009A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45666(P2009−45666)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】