説明

積荷圧縮装置

【課題】押出方式を採用した長大な積載空間を備えた貨物自動車や貨物コンテナにおける積載物の圧縮機構を提供すること。
【解決手段】荷室2の上部四隅にそれぞれ油圧モータを配置し、各油圧モータが前後方向に対向するよう左右2本の回動軸によって各々連結したうえで、これら各回動軸8に対して左右2枚に分割され荷室2上面を覆う上面板10の基部をそれぞれ固着し、これら上面板を回動軸8によって駆動することで、積載物を上方から押圧しながら荷室2内に圧縮収納するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車の荷室や、貨物コンテナにおける積荷の圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の解体時に生ずるシュレッダーダストは、内装材やシート材として使用されているウレタン等の、軽量ではあるが嵩高く、異形をしたチップ状物が大半である。こうしたチップ状物の運搬には、傾斜可能な荷台を備えたダンプ方式の貨物自動車のほか、荷室の床面を前後に往復移動させつつ、荷室の積載空間内を前方から後方へと移動する押圧板により積荷を押し出しながら排出する押出方式の貨物自動車が提案されている(特許文献1)。後者の押出方式では、床面の往復動機構や押圧板の移動機構といった特殊構造が製造コスト高となるものの、荷降ろし時における荷室(荷台)の傾斜を一切要しないために、40フィートの海上コンテナを流用するなど長大な荷室に適用して貨物自動車一台当たりの運搬量を大とすることができるので、かえって輸送コストの軽減を図ることができるとされている。
【0003】
ところで、シュレッダーダストは軽量なため、貨物自動車の荷室一杯に積載しても制限重量に届かないことが多い。積載したシュレッダーダストを荷室内において圧縮することができれば、さらに多くの量を一度に運搬することができ、より一層の輸送コストの軽減を図ることができることになる。
【0004】
従来、シュレッダーダストを対象としたものではないが、積載物を圧縮することにより積載物の体積の軽減や積載密度の向上を図ることを目的とした積載装置が提案されている。特許文献2は除雪した雪を圧縮運搬するものであり、ダンプカーの荷台において上面及び後面を開口した箱形のケーシングを設け、該ケーシングの上面板を油圧シリンダにより開閉することで、開放状態にあっては後方傾斜した上面板をホッパーシュートとしてケーシング内への雪の投入を容易にする一方、上面板を閉じるとケーシング内の雪をある程度押し固め、さらにケーシング後方から前方へと移動する圧縮板により雪の圧縮を行い、ケーシング内を密度の高い雪で満たして輸送することができるとされている。
【0005】
また、特許文献3はハーベスタにより収穫されたフォーレージワゴンに関するものであり、細断収穫されて荷箱内に吹き込み積載されるフォーレージを荷箱前方から後方に向けて適時圧縮して積載密度を上げるべく、油圧シリンダによる前後の往復動機構が連繋された圧縮可動壁を設けている。
【0006】
【特許文献1】特許第3062568号公報(第1−3頁、図1−9)
【特許文献2】実全昭64−41864号公報(第4−5頁、図3)
【特許文献3】特開平11−192877号公報(第3頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上従来の圧縮装置は、いずれも油圧シリンダを用いて上面板や可動壁を閉塞又は移動させるものであったが、前記シュレッダーダストの運搬に用いられる長大な荷室を備えた貨物自動車に適用するには無理がある。すなわち、押出方式の貨物自動車では荷積み作業の便宜のために荷室の上面が大きく開放できる必要があるところ、荷室自体が極めて長大なゆえに大面積となる上面板の開閉を油圧シリンダにより安定的に動作させるためには同時に操作される複数本の油圧シリンダを設けなければならず、製造コスト高を招来するほか、油圧シリンダの設置・駆動空間確保のために積載スペースの削減を余儀なくされてしまう。また、そもそも押出方式の貨物自動車においては積載物の押し出し排出に使用される可動壁たる押圧板を有しているが、荷室前後の距離が長大なために、押圧板を移動して積載物を荷室後方に圧縮し、圧縮によって荷室前方に生じた空間に新たに積載してから新旧積載物を荷室後方に再圧縮するという繰り返し作業は煩雑かつ長時間を要するので非効率であった。
【0008】
本発明は叙上の事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、押出方式を採用した長大な積載空間を備えた貨物自動車や貨物コンテナにおける積載物の圧縮機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記所期の課題解決を図るため、本発明に係る積荷圧縮装置は、積載空間内を前後に往復移動する押圧板を備えた押出方式の貨物自動車の荷室において、荷室の上部四隅にそれぞれ油圧モータを配置し、各油圧モータが前後方向に対向するよう左右2本の回動軸によって各々連結したうえで、これら左右側壁上縁に沿って延びる各回動軸に対して左右2枚に分割された上面板の基部をそれぞれ固着した。荷室上面を覆う2枚の上面板を回動軸によって駆動することにより、観音開きした全開放状態から荷室上面を閉塞し、さらには荷室側へ内向するように回転移動可能としたのである。
【0010】
前記発明における貨物自動車の荷室とは、車体に固定された荷室のほか、車台上に載置運搬される海上コンテナのような、離脱可能な荷室も含む。また、上面板は、少なくとも左右2枚に分割されていればよく、長大な荷室にあっては、これら左右上面板のそれぞれが前後方向複数に分割された計4枚の上面板を採用してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る積荷圧縮装置によれば、左右に各1組ずつ、荷室前後にあって回動軸によって連結された油圧モータを駆動させることにより、左右2枚に分割された荷室上面板を観音開きに全開放して荷室内にシュレッダーダスト等の積載物を投入し、荷室より高く盛り上がるほどに積載物を積み込んだ後、油圧モータを逆回転させて左右各上面板で荷室上面を閉塞しつつ、積載物を上方から押圧しながら荷室内に圧縮収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面にもとづいて本発明につき詳細に説明する。図1は、本発明に係る積荷圧縮装置の一例を示した平面図、図2は同平面図におけるA−A断面図、図3は前記平面図におけるB−B断面図である。これらに図示された例では、貨物自動車の車台1上に載置固定される荷室2にあって、後部排出口3には左右2本の油圧シリンダ31により上方向に開放されるリアゲート4を備えるとともに、荷室2内において前後に往復移動する傾斜した押圧板5を備えている。押圧板5は、チェイン駆動等により荷室2内を前後方向に移動可能であり、積載物を押圧しながら、開放されたリアゲート4から積載物を押し出し排出する。なお、荷室2の床面は、押し出し排出時の摩擦軽減のために油圧シリンダ等による往復動機構を設けてもよい。これら押圧板5の移動機構や床面の往復動機構については従来技術であるため省略する。
【0013】
本発明では、荷室内に収容されたシュレッダーダスト等の積載物を上方から圧縮して減容するために、荷室2の上面開口部を閉塞するための上面板6の回転動力として、電動モータよりトルクの強い油圧モータ7を使用する。油圧モータ7は、図1に示されるように、荷室2の上部四隅に各1個ずつ配置され、風雨に曝されないようにカバーで覆われている。荷室2の前方側には、押圧板5の移動機構や床面の往復動機構に供給される油圧系が配設されているし、荷室2の後方側にはリアゲート4開閉用の油圧シリンダ31に供給される油圧系が配設されているので、各油圧モータ7への油圧供給は極めて容易である。
【0014】
図1及び図2に示されるように、荷室2前方に配設された油圧モータ7と、荷室2後方に配設された油圧モータ7は、各々が、荷室2における左右各側壁の上縁部分に沿って配された回動軸8によって連結されている。本例の荷室2は前後に長大なため、左右それぞれの回動軸8は、2本のやや短い丸棒をジョイント81によって繋いで1本の長尺なものとするとともに、左右各側壁上縁に対して適宜間隔で設けた軸受け82によって夫々軸支させている。
【0015】
左右2本の回動軸8には、適宜間隔にて支持フレーム9の基部が固着されており、これら複数本の支持フレーム9によって上面板10が保持されている。すなわち、左右2枚に分割された上面板10は、各々が支持フレーム9によって左右の回動軸8に固着されており、荷室2の中央線にて観音開きに開閉し、閉塞時においてはさらに内向することによって、荷室2内に収容された積載物を上方から押圧しながら減容する。したがって、上面板10による押圧力を高めるために、複数本の支持フレーム9を用いたのである。
【0016】
図3は上面板10の開閉状況を示しており、回動軸8を中心に支持フレーム9によって保持された上面板10が回転し、開閉する様子が示されている。上面板10の全開放状態では、上面板10は左右側壁の外側に密着する垂直位置まで移動するので、荷室2の上面は一切の障害物なく大きく開放されるため、シュレッダーダスト等の積載物の投入が極めて容易である。積載物が最大量投入されると、油圧モータ7を逆回転させることにより上面板10は荷室2の上面開口部全体を閉塞し、さらには荷室2内に内向して、積載物を上方から押圧しながら荷室内に圧縮収納するのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る積荷圧縮装置の一例を示した平面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】図1におけるB−B断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 貨物自動車の車台
2 荷室
3 後部排出口
4 リアゲート
5 押圧板
6 上面板
7 油圧モータ
8 回動軸
9 支持フレーム
10 上面板
31 油圧シリンダ
81 ジョイント
82 軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載空間内を前後に往復移動する押圧板を備えた押出方式の貨物自動車の荷室において、荷室の上部四隅にそれぞれ油圧モータを配置し、各油圧モータが前後方向に対向するよう左右2本の回動軸によって各々連結したうえで、これら左右側壁上縁に沿って延びる各回動軸に対して左右2枚に分割された上面板の基部をそれぞれ固着してなる積荷圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−83277(P2010−83277A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253321(P2008−253321)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(508293678)
【出願人】(508293003)朝倉運輸株式会社 (4)