説明

積雪防止具

【課題】きわめて簡易な構造によって屋根の雪を排除することを可能とし、これによって雪下ろし作業の労力を緩和し、積雪防止対策として有効に利用することができる積雪防止具を提供する。
【解決手段】 撥水性のシート体20と、シート体20の一面側に揺動可能に取り付けられたガイド体42と、を具備し、シート体20の一面側により屋根30表面を覆うとともに、固定具50により建造物に固定される積雪防止具10であって、ガイド体42はそれぞれの取り付け中心線の延長線どうしが平面的に交差する配列でシート体20に取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積雪防止具に関する。
【0002】
積雪地方、とくに多雪地域における冬期の雪下ろし作業は、きわめて労力がかかるとともに危険をともなうものである。このため、雪下ろし作業をすることなく家屋を安全に護るいろいろな方法がとられている。これらの方法のうち、もっとも確実な方法は、屋根の雪を融かして屋根に雪が積もらないようにする方法である。屋根の融雪装置としては、屋根材にヒータを埋設する方法や、放熱パネルを使用するといった方法(特許文献1参照)等がある。
【0003】
しかしながら、ヒータ等を使用して熱的に融雪する場合は、エネルギー源として電力や灯油を使用するから、何日も雪が降る季節では長時間にわたって屋根を加温しなければならず、維持コストが膨大にかかるという問題がある。
このため、より簡易なコストをかけずに積雪を防止する構造が考えられており、たとえば、可撓性シートとエアバッグとを組み合わせた構造(特許文献2参照)、建築物の上端面にネット体を被せる構造(特許文献3参照)、屋根材に撥水性を付与して屋根への着雪を防止する構造(特許文献4参照)、基材の外面に滑氷雪性を有する被覆層を形成する構造(特許文献5参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−147062号公報
【特許文献2】特開平10−140879号公報
【特許文献3】特開2005−146506号公報
【特許文献4】特開平10−159264号公報
【特許文献5】特開2002−88347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋根の積雪防止方法として、屋根の雪を滑落させるようにして除去する方法は、雪を融かして排除する方法と比較するとはるかにエネルギーコスト的には有利である。しかしながら、従来方法では必ずしも的確に雪を排除することができないという問題があった。
本発明は、きわめて簡易な構造によって屋根の雪を排除することを可能とし、これによって雪下ろし作業の労力を緩和し、積雪防止対策として有効に利用することができる積雪防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、撥水性のシート体と、該シート体の一面側に揺動可能に取り付けられたガイド体と、を具備し、前記シート体の一面側により屋根表面を覆うとともに、固定具により建造物に固定される積雪防止具であって、前記ガイド体はそれぞれの取り付け中心線の延長線どうしが平面的に交差する配列で前記シート体に取り付けられていることを特徴とする積雪防止具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる積雪防止具によれば、きわめて簡易な構造で屋根の雪を排除することを可能とし、これによって雪下ろし作業の労力を不要にすることができる。また、積雪防止具が軽量であるから、屋根のへの取り付けおよび取り外しも簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態における積雪防止具の平面図である。
【図2】図1中のA−A線における断面図である。
【図3】本実施形態における積雪防止具を住宅の屋根に取り付けした状態の概略正面図である。
【図4】積雪防止具を屋根に取り付けした直後における状態を示す断面図である。
【図5】積雪防止具に雪が積もった状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明にかかる積雪防止具の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態における積雪防止具の平面図である。図2は、図1中のA−A線における断面図である。図3は、本実施形態における積雪防止具を住宅の屋根に取り付けした状態の概略側断面図である。
本実施形態における積雪防止具10は、撥水性を有するシート体20と、シート体20に取り付けられ、屋根30の表面でシート体20を支持する支持部材40と、シート体20を支持し、シート体20に積もった雪の滑落経路をガイドするガイド体42と、シート体20を屋根30等の建造物80の一部に固定する固定具50とを具備している。
【0010】
シート体20は、きわめて高い撥水性を有する布帛が用いられている。本実施形態においてはシート体20の布帛として、傘地等にも使用される高密度織物(帝人株式会社の製品名「ツインバリア(登録商標)」)を用いているが、シート体20はこの布帛に限定されるものではないのはもちろんである。
図1に示すように、シート体20は平面視長方形に形成されている。ここでは縦寸法を1500mm、横寸法を1300mmとしているが、シート体20の寸法は適宜変更することができる。シート体20は、シート体20の縦方向を屋根30の傾斜面に沿わせた配置で屋根30に配設される。でシート体20の外周縁位置には、外周縁に沿って所要間隔をあけた配列で連結具としてのハト目22が配設されている。
【0011】
シート体20の一面側(屋根30に対向する面側)には、シート体20と屋根30の表面との間に配設され、シート体20と屋根30とが密着しないようにシート体20を支持する支持部材40およびガイド体42が取り付けられている。本実施形態においては支持部材40およびガイド体42は、ポリウレタン樹脂等の高弾性合成樹脂により円柱状に形成され、シート体20と同じ素材の布帛により形成されたひだ部62付きの袋体60に収容されている。支持部材40およびガイド体42を収容した袋体60は、ひだ部62をシート体20に縫製することにより取り付けられているので、支持体40およびガイド体42は、シート体20に対して揺動可能な状態で取り付けられている。
図2に示すように、袋体60の内部寸法は、支持体40およびガイド体42の体積よりも十分に大きい空間を形成する寸法を有しており、袋体60の内部で支持体40およびガイド体42に外力が作用した際に移動可能に収容されている形態が好ましい。シート体20には複数の支持体40およびガイド体42が取り付けられている。
【0012】
また、図1に示すように、シート体20の両脇部分および中央部分における支持体40は、シート体20の外周縁と平行になる配置でシート体20に取り付けられている。これに対してガイド体42は、それぞれのガイド体42の取り付け中心線の延長どうしが平面的に交差する配列でシート体20に取り付けられている。このように本実施形態においては、支持体40はシート体20の長手方向における外周縁に平行に取り付けられているものを指し、ガイド体42は、シート体20の長手方向における外周縁に対して平面的に傾斜した状態で取り付けられたものを指している。
シート体20に支持部材40を取り付けることにより、シート体20どうしを連結した場合に連結部分から屋根30の表面への雪の侵入を防止することができる。また、シート体20にガイド体42を取り付けることにより、シート体20に積もった雪を小分けにした状態でシート体20から所定の位置に雪を落下させることができる。
【0013】
先にも説明したように、支持体40およびガイド体42がシート体20に対して揺動可能に配設されているので、積雪時における雪Yの自重や、風の作用により支持体40およびガイド体42が袋体60内で揺動し、シート体20に振動が与えられることになる。このような支持体40およびガイド体42の揺動動作によるシート体20の振動により、シート体20の上に大量の雪Yが積もる前にこまめに雪Yを落下させることができる点においても安全上においてきわめて好都合である。たとえ風の作用により支持体40およびガイド体42が揺動しなかったとしても、シート体20自体が風になびくので、いずれにしてもシート体20の表面の雪Yは、シート体20が振動することによりこまめに落ちることになる。
【0014】
以上のようにして形成された屋根30の積雪防止具10は、図3に示すように、積雪前に屋根30に配設しておくことが好ましい。積雪防止具10は、布帛や高弾性合成樹脂により形成されている部材により構成されているのできわめて軽量であり、構造物に与える重量の影響はほとんどない。また、このように軽量であるため屋根30への配設も容易に行うことができ、積雪防止具10どうしの連結も連結部であるハト目22に紐24等の連結手段により縛りつけるだけでよい。また、風が強い場所にあっては、ハト目22の連結部分に錘としての砂袋70を紐24に共縛りする等して配設すれば、積雪防止具10のばたつきや、屋根30からの脱落を好適に抑えることもできる。
【0015】
積雪防止具10は上記のようにユニット化されているので、屋根30の大きさに応じて複数の積雪防止具10を連結すれば、いかなる屋根30の形状にも適切に配設することができる。屋根30に複数の積雪防止具10を取り付けることで、支持部材40およびガイド体42により落雪させるべき屋根30の平面領域を小区分化することができる。
図4は、屋根30に積雪防止具10を取り付けた直後における状態を示す断面図である。断面位置は、図1内のA−A線位置に相当する位置である。支持部材40とガイド体42を収容する袋体60は、先にも説明したとおり布帛により形成されているので、扁平した形状に変形する。積雪防止具10は固定具50により建造物80の屋根30の近傍部分に固定されているので、シート体20には引っ張り力が作用し、シート体20は、屋根30の表面に略平行で平坦な状態でセットされることになる。
【0016】
図5に示すように、シート体20の上に雪が積もると、支持部材40およびガイド体42間のシート体20が雪Yの自重により下方に向けてわずかにたわみ、シート体20が樋形状に変形し、雪Yを屋根30から落下させる際のガイド凹部44が形成される。このとき、支持部材40とガイド体42は、袋体60の内部空間で図5の矢印方向に揺動してガイド凹部44の形状を安定させる。
このようにして形成されたガイド凹部44によって、所定の落下位置に安全に屋根30の雪Yを滑落させることができる。また、ガイド体42は屋根30における落水線に対して平面内で交差(傾斜)する配列になっているから、ガイド凹部44に沿って滑落する雪Yは、ガイド凹部44の側壁である支持部材40およびガイド体42に衝突しながら滑落することになる。これにより、雪Yの滑落速度を若干ではあるが低下させることができる点においても好都合である。
【0017】
また、支持部材40およびガイド体42は、わずかに作用した外力であってもシート体20に対して揺動可能に取り付けられているので、支持部材40およびガイド体42により小区分化した屋根30の平面領域上の積雪状態を不安定な状態にすることができる。積雪時には風が吹くことが多く、積雪時の風により直接シート体20が振動して雪Yの滑落が促進されることになる。そもそもシート体20はきわめて高い撥水性を有しているので、シート体20の上に雪Yがわずかに積もるだけで、自重により雪Yがシート体20上のガイド凹部44に沿って屋根30から滑落する。このように屋根30に積もった雪Yは、きわめて少量ずつ屋根30から落下するので、近隣住民等が落雪に巻き込まれて怪我をする心配がなく、落雪による大きな衝撃音の発生を防止することができる点についても好都合である。
【0018】
以上に本願発明を実施形態に基づいて詳細に説明したが、本願発明の技術的範囲は以上に示した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、シート体20の一面側に支持部材40およびガイド体42を取り付けしているが、シート体20への支持部材40の取り付けは省略することもできる。このとき、支持部材40が取り付けらている部位にガイド体42を取り付けすることもできる。
また、錘としての砂袋70は、シート体20の一面側(屋根30の表面側)に砂袋収納ポケットを配し、砂袋収納ポケットに砂袋70を収容する形態を採用しても良い。この砂袋収納ポケットは支持部材40を収容する袋体60と同様に、シート体20と同じ布帛で形成しても良い。
さらに、袋体60および砂袋収納ポケットは、シート体20とは異なる材料の布帛により形成してもよいのはもちろんである。
さらにまた、シート体20に揺動可能な袋体60の一例として、ひだ部62付きの袋体60について説明しているが、シート体20に袋体60を柔軟な材料からなる長尺体等により連結し、シート体20に対して揺動可能な取り付け形態を採用すれば、ひだ部62を有しない袋体60とすることもできる。
【0019】
また、本実施形態においては、支持部材40およびガイド体42としてウレタンフォーム等の高弾性合成樹脂からなる柱状体について説明しているが、支持部材40およびガイド体42は硬質の合成樹脂により形成することもできる。支持部材40とガイド体42はそれぞれ別材料により形成してもよいのはもちろんである。そして支持部材40およびガイド体42の形状は、実施形態で説明した柱状に限定されるものではなく、筒状体等の揺動可能な形状であれば特に限定されるものではない。
また、積雪防止具10どうしを連結するための構造としては、ハト目22に代えて、シート体20の外周縁に沿って所要間隔をあけて(または連続させて)面ファスナを配設することによっても実現することができる。
【符号の説明】
【0020】
10 積雪防止具
20 シート体
22 ハト目
24 紐
30 屋根
40 支持部材
42 ガイド体
44 ガイド凹部
50 固定具
60 袋体
62 ひだ部
70 砂袋
80 建造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性のシート体と、該シート体の一面側に揺動可能に取り付けられたガイド体と、を具備し、
前記シート体の一面側により屋根表面を覆うとともに、固定具により建造物に固定される積雪防止具であって、
前記ガイド体はそれぞれの取り付け中心線の延長線どうしが平面的に交差する配列で前記シート体に取り付けられていることを特徴とする積雪防止具。
【請求項2】
前記ガイド体は、前記屋根の落水線に対して平面的に傾斜する配置で前記シート体に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の積雪防止具。
【請求項3】
前記ガイド体は、前記シート体に揺動可能に取り付けられた袋体に収容されていることを特徴とする請求項1または2記載の積雪防止具。
【請求項4】
前記シート体の一面側には、支持部材がさらに取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の積雪防止具。
【請求項5】
前記支持部材は、前記シート体に揺動可能に取り付けられた袋体に収容されていることを特徴とする請求項4記載の積雪防止具。
【請求項6】
前記シート体には、前記シート体どうしを連結する連結具が前記シート体の外周縁に沿って所要間隔をあけて配設されていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の積雪防止具。
【請求項7】
前記シート体は、前記シート体に着脱自在な砂袋をさらに具備していることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の積雪防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−270485(P2010−270485A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122636(P2009−122636)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【特許番号】特許第4435269号(P4435269)
【特許公報発行日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(301062857)株式会社ニシキ (4)
【Fターム(参考)】