説明

空気入りタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】転がり抵抗とウエットグリップ性といった、相反する特性のバランスに優れた空気入りタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】メタアクリル系重合体ブロック(a)および(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)と、天然ゴム、ジエン系重合体ゴム、及びオレフィン系重合体ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム成分(B)とを含有することを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物により達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系ブロック共重合体を含有する空気入りタイヤ用ゴム組成物、およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車業界においては、自動車の低燃費化の要請があり、転がり抵抗の低いタイヤを提供可能なトレッド用ゴム組成物が求められており、かつ安全面からは湿潤路面でのグリップ性、すなわちウエットグリップ性の高いタイヤを提供可能なトレッド用ゴム組成物が求められている。
【0003】
これらのタイヤの転がり抵抗およびウエットグリップ性は、トレッドゴムのヒステリシスロス(tanδ)に関連しており、10Hzでは、30〜50℃におけるtanδが小さい程、転がり抵抗が低く、−20〜0℃におけるtanδが大きいほどウエットグリップ性が高いという関係にあり、両者を両立させることは困難であった。
【0004】
このような自動車分野における空気入りタイヤに用いられるトレッド用ゴム組成物として、特許文献1では、ポリイソブチレン/p−メチルスチレン共重合体の臭素化物とゴム成分からなるトレッド用ゴム組成物が開示されている。また、特許文献2では芳香族ビニル化合物を単量体とする重合体ブロック−イソブチレンを単量体とする重合体ブロック共重合体とゴム成分からなるトレッド用ゴム組成物が開示されている。しかし、転がり抵抗とウエットグリップ性のバランスに関して、より一層の改良が望まれている。また、特許文献3では共役ジエン系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックとからなるブロック共重合体とジエン系ゴム成分とケイ素系無機充填材からなるゴム組成物が開示されているが、これは、ブロック共重合体によって、ケイ素系無機充填材のゴム成分への分散性を改良することを目的としており、転がり抵抗とウエットグリップ性のバランスを改良するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−80433号公報
【特許文献2】特開2001−316560号公報
【特許文献3】特開2003−89729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、転がり抵抗とウエットグリップ性といった、相反する特性のバランスに優れた空気入りタイヤ用ゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、本発明者は、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、メタアクリル系重合体ブロック(a)および(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)と、天然ゴム、ジエン系重合体ゴム、及びオレフィン系重合体ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム成分(B)とを含有することを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0009】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有することを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、15,000〜300,000であることを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、およびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能なビニル系単量体50〜0重量%からなることを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸−n−ブチル50〜100重量%と、これと共重合可能なビニル系単量体50〜0重量%からなることを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチル50〜100重量%と、これと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%からなることを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、少なくとも1種の官能基(C)を1分子中に少なくとも1個以上有することを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、官能基(C)が、エポキシ基、加水分解性シリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、アルケニル基、活性塩素基およびオキサゾリン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、官能基(C)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)中に含まれることを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、官能基(C)が、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)中に含まれることを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0018】
好ましい実施態様としては、ゴム成分(B)がジエン化合物の単独重合体またはジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体であることを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0019】
好ましい実施態様としては、ゴム成分(B)100重量部に対し、アクリル系ブロック共重合体(A)を1重量部から40重量部配合することを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0020】
また本発明は、上記記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物を含有することを特徴とする空気入りタイヤに関する。
【0021】
また本発明は、上記記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物を含有することを特徴とする空気入りタイヤトレッドに関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のゴム組成物は、従来タイヤに用いられてきたゴム成分にアクリル系ブロック共重合体を配合することにより、転がり抵抗とウエットグリップ性といった、相反する特性のバランスに優れた空気入りタイヤとして使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、メタアクリル系重合体ブロック(a)および(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)と、天然ゴム、ジエン系重合体ゴム、及びオレフィン系重合体ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム成分(B)とを含有することを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物である。
【0024】
以下、本発明の各成分につき、詳細に説明する。
【0025】
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、特に制限はなく、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、適宜選択すれば良いが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。また、線状ブロック共重合体はいずれの構造(配列)のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性、または組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を持つアクリル系ブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取扱い容易性や、組成物の物性の点からa−bで表わされるジブロック共重合体、a−b−aで表わされるトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
【0026】
アクリル系ブロック共重合体(A)の分子量はとくに制限されず、メタアクリル系重合体ブロック(a)と(メタ)アクリル系重合体系ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよいが、アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した分子量は数平均分子量で15,000〜300,000が好ましく、より好ましくは35,000〜150,000、さらに好ましくは50,000〜130,000である。数平均分子量が15,000よりも低い場合には組成物の物性が十分に発現されず、一方、300,000を超える場合には加工性の面で不利である。
【0027】
アクリル系ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、メタアクリル系重合体ブロック(a)が5〜90重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が95〜10重量%に設定するのが好ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)が5〜70重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が95〜30重量%に設定するのがより好ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)が15〜50重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が85〜50重量%に設定するのが更に好ましい。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%より少ない場合は、硬度が低くなり、組成物作成時の取り扱いが困難になり、組成物の硬度低下をもたらし、タイヤの磨耗性、形状保持性を悪化させる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の割合が10重量%より少ない場合には、ウエットグリップ性の発現効果が小さくなる。
【0028】
アクリル系ブロック共重合体を構成するメタクリル系重合体ブロック(a)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、メタクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTga、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のそれをTgbとして、下式の関係を満たすことを特徴とする。特に、TgaとTgbの差が50℃以上であることがウエットグリップ性と転がり抵抗のバランスの観点から好ましい。
Tga>Tgb
前記重合体のガラス転移温度(Tg)の設定は、下記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2 /Tg2)+…+(Wm/Tgm)
W1+W2+…+Wm=1
式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表わし、Tg1,Tg2,…,Tgmは各重合単量体のガラス転移温度を表わす。また、W1,W2,…,Wmは各重合単量体の重量比率を表わす。
【0029】
前記Fox式における各重合単量体のガラス転移温度は、たとえば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience,1989)記載の値を用いればよい。
【0030】
なお、前記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
【0031】
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。メタアクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、メタアクリル酸エステルの特徴である、耐候性や透明性などが損なわれる場合がある。
【0032】
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。すなわち、メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチル50〜100重量%と、これと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%からなることが好ましい。
【0033】
メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0034】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。
【0035】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0036】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0037】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0038】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0039】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0040】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0041】
これらの化合物は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(a)に要求されるガラス転移温度の調整、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)との相溶性などの観点から好ましいものを選択する。
【0042】
メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、アクリル系ブロック共重合体の熱変形性(耐熱性や保持力)の観点および成形性の観点から、25〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃である。ガラス転移温度が200℃より高くなると、成形性が低下する傾向にあり、50℃より低くなると、熱変形性が悪化する傾向にある。
【0043】
この点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸メチルを主成分とするのが望ましく、メタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度を調整する目的で、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を重合することが好ましい。このうち、メタアクリル酸メチルとの相溶性の点でアクリル酸エチルが特に好ましい。
【0044】
メタアクリル系重合体ブロック(a)のTgaの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
【0045】
<(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)>
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステル及び/またはメタアクリル系重合体ブロック(a)の主成分であるメタアクリル酸エステルを除くメタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、(メタ)アクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。アクリル酸エステルの割合が50重量%未満であると、アクリル酸エステルを用いた場合の特徴である組成物の物性、とくに柔軟性が損なわれる場合がある。
【0046】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示したアクリル酸エステルと同様の単量体をあげることができる。メタアクリル酸エステルも同様に、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示した単量体をあげることができる。
【0047】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、柔軟性、ゴム弾性、低温特性およびコストのバランスの点で、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルが好ましく、これらを組み合わせて用いてもよい。すなわち、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、およびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能なビニル系単量体50〜0重量%からなることが好ましい。また(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸−n−ブチル50〜100重量%と、これと共重合可能なビニル系単量体50〜0重量%からなることが好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができ、これらの具体例としては、メタアクリル系重合体ブロック(a)に用いられる前記のものと同様のものをあげることができる。
【0049】
これらのビニル系単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度およびメタアクリル系重合体ブロック(a)との相溶性などのバランスを勘案して、適宜好ましいものを選択する。
【0050】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、アクリル系ブロック共重合体の柔軟性やゴム弾性の観点から、25℃以下であるのが好ましく、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度が環境の温度より高いとウエットグリップ性が発現されにくい。
【0051】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のTgbの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
【0052】
<官能基(C)>
本発明においては、必要に応じて、アクリル系ブロック共重合体(A)が、少なくとも1種の官能基(C)を1分子中に少なくとも1個以上有していてもよい。さらに官能基(C)が、エポキシ基、加水分解性シリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、アルケニル基、活性塩素基およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。官能基を導入することにより、ゴム成分(B)との分散性、接着性付与や得られるゴム組成物とタイヤを構成するゴム部品との接着性などを付与することができる。さらには、官能基を利用して架橋点として利用することができる。
【0053】
本発明において官能基は、耐熱性やゴム成分(B)との分散性、接着性付与やアクリル系ブロック共重合体(A)への導入の容易さ、コストなどの点から、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0054】
官能基(C)は、メタクリル系重合体ブロック(a)中、および(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)中のいずれに存在してもよく、空気入りタイヤ用ゴム組成物に求められる特性に応じて選択することができる。走行時の変形を抑制する場合は、官能基(C)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)中に含まれることが好ましく、タイヤ部材間の接着性が求められる場合は、官能基(C)が、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)中に含まれることが好ましい。
【0055】
これらの官能基(C)の含有量は、空気入りタイヤ用ゴム組成物として必要とされる、分散性、粘度、動的粘弾性、反応性から適宜選択することができるが、含有量が多くなると(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)中に存在すると、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度が高くなる恐れがあるため、柔軟性やゴム弾性の観点から、5重量%以下であることが好ましく、2重量%以下が更に好ましい。
【0056】
官能基(C)のアクリル系ブロック共重合体への導入方法としては特に限定されず、官能基(C)を有する単量体を共重合させる方法、官能基(C)の前駆体となる官能基を有する単量体を共重合させた後、公知の化学反応にて官能基(C)を生成させる方法などがある。
【0057】
カルボキシル基を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸化合物、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸化合物およびそのモノエステル化合物などが挙げられる。また、カルボキシル基は、その前駆体となる官能基から変換することができる。カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどが挙げられる。これらの単量体を重合させた後、加水分解や酸分解、熱分解などによりカルボキシル基を生成させることができる。
【0058】
酸無水物基を有する単量体としては、たとえば、無水マレイン酸などが挙げられる。また、酸無水物基の前駆体となる官能基としては、カルボキシル基が挙げられ、カルボキシル基を導入する方法としては前記の方法を挙げることができる。
【0059】
ヒドロキシル基を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ブレンマーPEシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAEシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーP(日本油脂(株))、ブレンマーPPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPEPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAEPシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPETシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAETシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーPPTシリーズ(日本油脂(株))、ブレンマーAPTシリーズ(日本油脂(株))などが挙げられる。
【0060】
エポキシ基を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸グリシジル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸とエポキシ環を含有する有機基含有アルコールとのエステル、4−ビニル−1−シクロヘキセン1,2エポキシドなどのエポキシ基含有不飽和化合物などを挙げることができる。
【0061】
<アクリル系ブロック共重合体の製法>
アクリル系ブロック共重合体を製造する方法としては、制御重合法を用いることが好ましい。制御重合法としては、リビングアニオン重合法(特開平11−335432)、有機希土類遷移金属錯体を重合開始剤として用いる重合法(特開平6−93060)、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法(特開平2−45511)、制御ラジカル重合法などが挙げられる。本発明においては、特に官能基を有するモノマーの重合容易性の点から、制御ラジカル重合が好ましい。
【0062】
制御ラジカル重合法としては、たとえば、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる重合法、コバルトポルフィルン錯体を用いる重合法、ニトロキシドを用いる重合法(WO2004/014926)、有機テルル化合物などの高周期ヘテロ元素化合物を用いる重合法(特許第3839829号)、可逆的付加脱離連鎖移動重合法(RAFT)(特許第3639859号)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(特許第3040172号)などが挙げられる。
【0063】
本発明においては、安価な原料と穏和な反応条件で制御されたアクリル系ブロック共重合体が得られる点で、原子移動ラジカル重合法が好ましい。原子移動ラジカル重合に用いる触媒の中心金属としては、重合制御およびコストの点から銅であることが好ましい。原子移動ラジカル重合法を用いてアクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、たとえば、WO2004/013192に挙げられた方法などを用いることができる。
【0064】
<ゴム成分(B)>
ゴム成分(B)としては、天然ゴム、ジエン系重合体ゴム、及びオレフィン系重合体ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種が使用できる。
【0065】
ジエン系重合体ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムが例示される。オレフィン系ゴムとしては、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムが例示される。この中でジエン化合物の単独重合体またはジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体であることが特に好ましい。
【0066】
本発明のゴム組成物は、上記の他に、通常、ゴム業界で用いられている、充填剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等の配合剤をその目的、用途に合わせ、適宜配合することができる。充填剤としては、カーボン・ブラック、シリカ、フィラー、炭酸カルシウム、マイカ、フレークグラファイト等が例示される。可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどの石油系プロセスオイル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジブチルなどの二塩基酸ジアルキル、液状ポリブテン、液状ポリイソプレンなどの低分子量液状ポリマーが例示され、なかでも、ゴム成分との相溶性から、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン、芳香族系プロセスオイルが好ましい。加硫剤としては、硫黄、フェノール樹脂、金属酸化物、過酸化物等が例示される。これらは、通常、ゴム成分100重量部に対し、約0.5〜10部使用される。加硫促進剤としては、2,2−ジチオビスベンゾチアゾール、1,3−ジフェニルグアニジン、テトラメチルチウラムジスルフィド、亜鉛ジメチルチオカルバメート、メルカプトベンゾチアジルジスルフィドが例示される。これらは、通常、ゴム成分100重量部に対し、約0.2〜5部使用される。
【0067】
ウエットグリップ性は、タイヤの表面近傍の変形に依存していると考えられている。この表面近傍の変形は、非常に高い周波数の振動であることがわかっており、温度周波数換算を用いると、 ウエットグリップ性は、10Hzにおいて、−20℃〜0℃のtanδで表される。一方、転がり抵抗は50℃付近で10〜100Hz前後の振動であるので、10Hzにおいて、30℃〜50℃のtanδで表される。したがって、−20℃〜0℃のtanδを大きくし、30℃〜50℃のtanδを小さくする、すなわち、tanδの温度依存性を大きくしてやれば、ウエット制動力と転がり抵抗を両立できる。
【0068】
本発明に使用されるアクリル系ブロック共重合体(A)は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)として、例えば、アクリル酸−n−ブチルを主成分とする重合体ブロックを選ぶと、10Hzにおいて−20℃〜0℃に大きなtanδピークがあり、また、メタアクリル系重合体ブロック(a)として、メタアクリル酸メチルを主成分とする重合体ブロックを選ぶと、凝集相を形成しているため、30℃〜50℃においては、ゴム状平坦領域と呼ばれるtanδの低い領域であるため、ウエットグリップ性および転がり抵抗に効果がある。ここで、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)としてアクリル酸−n−ブチルを主成分とする重合体ブロック、メタアクリル系重合体ブロック(a)として、メタアクリル酸メチルを主成分とする重合体ブロック例示したが、10Hzにおいて−20℃〜0℃に大きなtanδピークがあり、30℃〜50℃においては、ゴム状平坦領域と呼ばれるtanδの低い領域を有するようなアクリル系ブロック共重合体(A)選べば、ウエットグリップ性および転がり抵抗に効果があるので、アクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、前記例示に特に、制限されるものではない。
【0069】
本発明に使用されるアクリル系ブロック共重合体(A)の配合量は、特に限定されず、空気入りタイヤ用ゴム組成物としての目的に応じて適宜選択することができるが、例えばトレッド用ゴム組成物に用いる場合、ゴム成分に100重量部に対し、1〜40重量部配合することが好ましい。1重量部よりも少ない場合、ウエットグリップ性と転がり抵抗の改善効果が得にくくなり、40重量部を越えると転がり抵抗が悪化し、タイヤとしてのバランスが損なわれる傾向にあるため好ましくない。
【0070】
本発明のゴム組成物の調製方法は従来ゴム業界で行われている方法を採用すればよく、例えば、先ず、アクリル系ブロック共重合体(A)、ゴム成分(B)および必要に応じ、加硫剤、加硫促進剤以外の各種配合剤を、タンブラー、ヘンシェルミキサー、リボブレンダー等で混合した後、押出機、バンパリー、ロール等で混練する。このとき、混練温度は、アクリル系ブロック共重合体(A)とゴム成分(B)の配合比によって、室温〜200℃で適宜変更することが望ましい。これは、アクリル系ブロック共重合体(A)のメタアクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度が通常100℃以上であるため、配合物中のアクリル系ブロック共重合体(A)の割合が高い場合、各成分が十分に混ざり合わないからである。したがって、(A)の配合量が高い場合ほど、高い温度で混練することが好ましい。加硫ゴムを得ようとする場合、混練後、加硫剤及び加硫促進剤を加えてさらに上記の装置を用いて混練する。このとき、混練温度は、加硫剤の反応を抑制する目的で80℃〜120℃で行うことが望ましい。さらに、必要に応じ、プレス機や射出成型機等を用いて該ゴム組成物を成型および架橋することができる。
【0071】
本発明のゴム組成物を用いてなるタイヤの構造、サイズは特に限定されず、必要に応じて選択することができる。本発明の目的である転がり抵抗とウエットグリップ性のバランスが最も要求されるのは、乗用車用のタイヤであり、これに用いることが望ましい。また、タイヤトレッドが多層構造を有する場合、少なくとも、その最外層に本発明のゴム組成物を用いることが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更実施可能である。なお、実施例におけるBA、AA、MMAはそれぞれ、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸、メタアクリル酸メチルを表す。また、実施例中に記載した分子量や重合反応の転化率、各物性評価は、以下の方法に従って行った。
【0073】
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
【0074】
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムSupelcowax−10、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度60℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約10倍に希釈し、酢酸ブチルまたはアセトニトリルを内部標準物質とした。
【0075】
(製造例1)
MMA−BA−MMA(BA/MMA=80/20重量%)型アクリル系ブロック共重合体(以下BA8と略称する)の合成
窒素置換したのち真空脱気した500L反応器に、反応器内を減圧にした状態で、BA 94360gを仕込んだ。次に、臭化第一銅 574gを仕込み、30℃で15分間攪拌した。その後、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル 576gをアセトニトリル 8278gに溶解させた溶液を仕込み、75℃に昇温しつつ更に60分間攪拌を行った。ペンタメチルジエチレントリアミン 69.3gを加えて、第一ブロックとなるBAの重合を開始した。BA転化率が97%に達したところで、トルエン 64933g、塩化第一銅 396g、MMA 23394gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン 69.3gを加えて、第二ブロックとなるMMAの重合を開始した。
【0076】
45分ごとにペンタメチルジエチレントリアミン 69.3gを加えてゆき、MMA転化率が90%に到達したところで、トルエン 268055gを加えて反応溶液を希釈するとともに反応器を冷却した。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが108800であった。
【0077】
得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を25wt%になるよう調整し、及びp−トルエンスルホン酸を1598g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングして中和処理を行い、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って固形分を除去した。このブロック共重合体溶液に対し、キョーワード500SH(協和化学工業(株)製)3450gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。
【0078】
上記重合体溶液をベント口付き横形蒸発機(株式会社栗本鉄工所製、横型蒸発機SCP−100)に供給し溶媒及び未反応モノマーの蒸発を行なうことで重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケット及びスクリューは熱媒で180℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。このようにして標記ブロック共重合体を作製した。
【0079】
(製造例2)
MMA−(BA/AA)−MMA((BA/AA)/MMA)=70/30重量%)型アクリル系ブロック共重合体(以下BA7-COOHと略称する)の合成
重合体中へのカルボキシル基の導入はWO2003/068836を参考に行なった。
【0080】
窒素置換した500L反応器に、アクリル酸n−ブチル(nBA) 87.1kg、アクリル酸t−ブチル(tBA) 2.23kgを仕込み、続いて臭化第一銅 625gを仕込んで撹拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル 628gをアセトニトリル 7.84kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットを加温して内温75℃で30分間保持した。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン 76gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、少量の重合溶液を抜き取り、ガスクロマトグラム分析によりアクリル酸ブチルの転化率を決定した。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0081】
アクリル酸ブチル(nBA)の転化率が95%に到達したところで、トルエン 106.5kg、塩化第一銅 431g、ペンタメチルジエチレントリアミン 76g及びメタアクリル酸メチル(MMA) 38.4kgを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。メタアクリル酸メチル(MMA)の転化率が90%に到達したところで、トルエン 220kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。
【0082】
得られたアクリル系ブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)が108,900であった。
【0083】
得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を22重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸一水和物を1.49kg加え、30℃で3時間撹拌した。これにより、アクリル酸t−ブチル(tBA)単位をアクリル酸(AA)単位に変換した。ブロック共重合体全体当たりのアクリル酸単位の含有量は1.0重量%であった。
【0084】
反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、濾過助剤である昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.47kg添加した。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過し、固体分を分離した。
【0085】
濾過後のブロック共重合体溶液を500L反応器に仕込み、150℃で4時間加熱した。冷却後、残存する有機酸を除去する目的で塩基性吸着剤である協和化学製キョーワード500SHを6.18kg加えて1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過して固体分を分離し、重合体溶液を得た。
【0086】
上記重合体溶液をベント口付き横形蒸発機(株式会社栗本鉄工所製、横型蒸発機SCP−100)に供給し溶媒及び未反応モノマーの蒸発を行なうことで重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケット及びスクリューは熱媒で180℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。このようにして標記ブロック共重合体を作製した。
【0087】
(実施例1〜6)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(JSR0120、JSR社製、以下SBR と略す。)、ブタジエンゴム(JSR BR31、JSR社製、以下BRと略す。)、製造例1,2で製造したBA8とBA7-COOHおよびその他の配合剤を、表1および表2に示した配合比で、150℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)で15分間混練してゴム組成物を得た。該ゴム組成物を150℃で圧縮成形し、シートを作製した。成形性は極めて良好であった。該シートから縦6mm×横5mm×厚さ2mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置DVA−200(アイティー計測制御社製)を用い、0℃、40℃での損失正接tanδを測定した。測定周波数は10Hzとした。
【0088】
(比較例1)
比較例としてアクリル系ブロック共重合体を一切加えず、SBRを150℃で圧縮成形し、シートを作製した。実施例1〜3と同様にして、0℃および40℃での損失正接tanδを測定した。
【0089】
(比較例2)
比較例としてアクリル系ブロック共重合体を一切加えず、SBRとBRの混合物を150℃で圧縮成形し、シートを作製した。実施例1〜3と同様にして、0℃および40℃での損失正接tanδを測定した。
【0090】
(比較例3)
比較例としてアクリル系ブロック共重合体の代わりに代表的なブロック共重合体であるSEBSをSBRに加えて、150℃に設定したラボプラストミル(東洋精機社製)で15分間混練した。該ゴム組成物を150℃で圧縮成形し、シートを作製した。実施例1〜3と同様にして、0℃および40℃での損失正接tanδを測定した。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
実施例1〜3、5、6では、アクリル系ブロック共重合体の添加により、SBR単独(比較例1)よりも0℃でのtanδが高く、すなわちウエットグリップ性が改善されている。また、40℃でのtanδは、SBR単独と比較し、ほぼ同じか、若干、高くなる程度で、すなわち、SBR単体と同等の転がり抵抗を有している。また、実施例4ではアクリル系ブロック共重合体の添加により、SBRとBRの混合物のみ(比較例2)よりも0℃でのtanδが高く、すなわちウエットグリップ性が改善されている。また、40℃でのtanδは、SBR単独と比較し、ほぼ同じか、若干、高くなる程度で、すなわち、SBRとBRの混合物と同等の転がり抵抗を有している。アクリル系ブロック共重合体の代わりにSEBS(G1650、シェル社製)を用いた場合(比較例3)、SBR単独(比較例1)と比較して、0℃でのtanδが低下し、ウエットグリップ性が低下している。また、40℃でのtanδが上昇し、すなわち転がり抵抗が悪化している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタアクリル系重合体ブロック(a)および(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)と、天然ゴム、ジエン系重合体ゴム、及びオレフィン系重合体ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム成分(B)とを含有することを特徴とする空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有することを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が、15,000〜300,000であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、およびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体50〜100重量%と、これらと共重合可能なビニル系単量体50〜0重量%からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)が、アクリル酸−n−ブチル50〜100重量%と、これと共重合可能なビニル系単量体50〜0重量%からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチル50〜100重量%と、これと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、少なくとも1種の官能基(C)を1分子中に少なくとも1個以上有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
官能基(C)が、エポキシ基、加水分解性シリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、アルケニル基、活性塩素基およびオキサゾリン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
官能基(C)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)中に含まれることを特徴とする請求項7または8に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
官能基(C)が、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)中に含まれることを特徴とする請求項7または8に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
ゴム成分(B)がジエン化合物の単独重合体またはジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項12】
ゴム成分(B)100重量部に対し、アクリル系ブロック共重合体(A)を1重量部から40重量部配合することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1から13記載のいずれかに記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物を含有することを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項14】
請求項1から13記載のいずれかに記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物を含有することを特徴とする空気入りタイヤトレッド。

【公開番号】特開2010−254908(P2010−254908A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109476(P2009−109476)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】