説明

空気入りタイヤ

【課題】ベルトを有する空気入りタイヤのベルト層のスチールコードとコーティングゴムとのセパレーションから起こる亀裂の発生の防止。
【解決手段】ベルト層を含む特定構造を有する空気入りタイヤにおいて、該ベルト層に隣接してベルト層のゴム被覆コード層の端部を被覆するクッションゴムを設け、該端クッションゴムがジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部、特定範囲の窒素吸着比表面積及びジブチルフタレート吸油量を有するカーボンブラック40〜80質量部、硫黄0.3〜10質量部とスルフェンアミドのN位に炭素数3〜12の分岐アルキル基及び/又は炭素数1〜10の直鎖アルキル基を有し、環上に水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基を有するベンゾチアゾール骨格を有するスルフェンアミド系加硫促進剤0.1〜10質量部とを含有するゴム組成物を端クッションゴムとして使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものであり、特にラジアルコード層よりなるカーカスプライのクラウン部ラジアル方向外側にスチールコードを被覆ゴム中に埋設してなるベルト層を配置した空気入りタイヤのベルト端の亀裂進展を押さえることが出来るゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、タイヤは、スチールコードとスチールコードを被覆するコーティングゴムとからなる層を複数層積層して形成されるベルト層を具備して、タイヤに耐荷重性、耐牽引性等を付与している。しかしながら、このようなヘルト層を備えたタイヤは、ベルト端セパレーションが発生しやすい。このベルト端セパレーションはタイヤの空気圧による層間剪断歪みのほかに、タイヤに加わる荷重、駆動力、制動力および横向きの力などによって加わる動的な層間剪断歪みによる、ベルト端ゴムの疲労によって生じるものである。また、走行による温度上昇のため高温下でゴム−コード間の接着性が低下して剥離を起こし、これが起点となって亀裂が進展することもある。
【0003】
このようなベルト端セパレーションを防止するため、ベルト層について種々の機械的構造、あるいはゴム成分構成を変える等の工夫がなされ、特に、タイヤの耐亀裂性を維持しながら、耐接着性能を高めるような提案がなされている。
【0004】
例えば、ベルト層を5層以上とし、主幹層と保護層に特定のコーティングゴムを用いることにより、タイヤ全体の耐熱剥離性能を改良したラジアルタイヤが提案されている(特許文献1)。また、ベルト層を幅の異なる4層で構成し、構成層のスチールコードをタイヤの赤道面に対して傾斜させ、隣接層のスチールコードの傾斜方向を同方向又は逆方向にし、しかも各層のタイヤ幅方向の長さが適宜異なるベルト層を構成することにより、タイヤの耐摩耗性、耐牽引性、耐カット性能等を維持しながら、耐剥離性能を向上させた重荷重用ラジアルタイヤが提案されている(特許文献2及び特許文献3)。さらに、主交差ベルトを形成するゴム被覆コード層のうち、少なくとも2つの層間の両端部に、左右一対のベルト端クッションゴムが配置され、同一端部側に位置するクッションゴムのうち、少なくとも2個のクッションゴム同士が、互いにタイヤ幅方向に一部オーバーラップして配置され、オーバーラップしたクッションゴムのタイヤ幅方向のずれ幅が特定の大きさの範囲である重荷重用空気入りラジアルタイヤが提案されている(特許文献4)。
スチールコードとコーティングゴムとの接着剥離を低減する方法として、特定の金属塩をスチールコードに塗布したり、コーティグゴムに配合する方法が知られている(特許文献5及び6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−32815号公報
【特許文献2】特開平5−8607号公報
【特許文献3】特開平6−127213号公報
【特許文献4】特開平11−321224号公報
【特許文献5】特開平2−248243号公報
【特許文献6】特開平6−329840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空気入りタイヤにおいて、重荷重によりベルト端部から発生する亀裂はタイヤ形状確保に大きな障害をきたす。ベルト端部の亀裂としては、複数のベルト層のコーティングゴムのゴム−ゴム間のセパレーションと、1つの層内のスチールコードとコーティングゴムとのセパレーションが起こることから発生する場合がある。
スチールコードコーティングゴムは、スチールコードとゴムの接着性が重要であり、被覆ゴムに使用するゴム組成物には、接着のための接着プロモータを添加したり、硫黄を比較的多く配合したりしている。しかし、セパレーション防止には接着性のみならず、高硬度、低発熱性、高破断物性、老化物性が良好、屈曲亀裂性が低い等の性質が必要であり、これらのうち、硬度を高くすることがより有効である。硬度を増加させるために、従来、カーボンブラックなどの充填剤の配合量を増加する、樹脂などを添加する、硫黄などの架橋剤の配合量を増加する、加硫促進剤の配合量を増加する等の手段が取られている。しかしながら、これらの方法では、硬度は増加するが、低発熱性、耐久性、作業性や接着性が低下するなどの問題がある。
【0007】
本発明の目的は、タイヤのベルト構造は殆ど従来のものと変えず、ベルト端部のスチールコードとコーティングゴムとのセパレーションから起こる亀裂の発生及び進展を防止することができるゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、左右一対のビード部に設けられたビードコアと、クラウン部から両サイドウォール部を経て両ビード部に延び、該ビードコアに巻回されてビード部に係留されたラジアルコード層よりなるカーカスプライと、該カーカスプライのクラウン部ラジアル方向外側に配置されたベルトとトレッドを備え、該ベルトはスチールコードをコーティングゴム中に埋設してなるゴム被覆コード層が積層されて形成された空気入りタイヤにおいて、ベルト端部のスチールコードとコーティングゴムとのセパレーションの発生を防止しようとするものである。ベルト端セパレーションは、タイヤの空気圧による層間剪断歪みのほかに、タイヤに加わる荷重、駆動力、制動力および横向きの力などによって加わる動的な層間剪断歪みによりベルト層内でスチールコードが動くことでベルト端のゴムからセパレーションが発生し、セパレーションが内部へと発展していく。
【0009】
本発明は、ベルト端のセパレーションを防止するため、ベルト層に隣接してベルト層のゴム被覆コード層の端部を被覆するクッションゴム(以下端クッションという)を設け、このクッションゴムに特定のスルフェンアミド系の加硫促進剤を含むゴム組成物を用いるものである。このゴム組成物による端部の被覆は、ベルト層一層でもよいし、複数層全部でもよい。その被い方は、端部を残してスチールコードを従来のコーティングゴムで被覆し、スチールコードの端部だけを上記ゴム組成物で直接包み込むように被ってもよいし、スチールコード全体を従来のコーティングゴムで被覆し、さらにその上を被ってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、ベルトのゴム被覆スチールコードの端部を上記のゴム組成物からなる端クッションで覆うことによって、スチールコードとコーティングゴムとの接着性を確保し、ベルト端部の亀裂の発生及び進展を防止することができるという優れた効果を奏す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いるタイヤベルトの端部を被覆する端クッション用ゴム組成物は、天然ゴムとポリブタジエンやポリイソプレン等のジエン系合成ゴムのうち少なくとも1種と、これにゴム成分100質量あたり硫黄を0.3〜10質量部(以下phrと表す)、充填剤としてHAF級のカーボンブラックを40〜80phrを含有し、下記一般式(I)表されるスルフェンアミド系加硫促進剤を0.1〜10phrを含有するゴム組成物である。
【0012】
【化1】

〔式中、Rは炭素数3〜12の分岐アルキル基、Rは炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表し、R〜Rは水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。xは1又は2の整数、nは0又は1の整数を表す。〕
【0013】
本発明では、スチールコードを上記のコーティングゴム組成物で被覆してベルト層を形成するが、その端部をさらに被覆の上から端クッションで包み込むように被覆するか、またはスチールコードの端部だけは上記コーティングゴム組成物で被覆せず、端クッションで包み込むように被覆することが特徴である。
本発明で用いる端クッション用ゴム組成物のゴム成分としては、タイヤや工業用ベルト等のゴム製品に用いられるゴムであれば特に限定されず、主鎖に二重結合があるゴム成分であれば硫黄架橋可能であるため、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤が機能するものであり、例えば、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムが用いられる。具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の少なくとも1種を使用することができる。なかでも、天然ゴム及びポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含むことが好ましく、更に、耐熱老化性の点から、ゴム成分が50質量%以上の天然ゴムと残部が上記の少なくとも1種の合成ゴムよりなることが望ましい。50質量%未満では接着特性およびゴム破壊特性の低下を招くことがあるからである。
【0014】
ゴム成分の残部としては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等が使用できる。
【0015】
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤の中で、特に、R〜Rが水素原子で、Rがtert−アルキル基であり、x=1又は2、n=0であり、Rが直鎖であるものが好ましいが、直鎖の中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基であるスルフェンアミド化合物を加硫促進剤として用いることがより好ましい。これらのスルフェンアミド系加硫促進剤は、従来のスルフェンアミド系加硫促進剤の中で、最も加硫反応に遅効性を与える加硫促進剤として知られるN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)以上の加硫遅延効果を有しながら、十分な加硫促進能力を両立して有するものであり、肉厚のゴム製品やコーティング用等のゴム組成物に好適に使用することができる。
【0016】
本発明に用いる上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRは、炭素数3〜12の分岐アルキル基を表す。このRが炭素数3〜12の分岐アルキル基であれば、一般式(I)で表される化合物の加硫促進性能が良好である。
上記一般式(I)で表される化合物のRの具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基(イソペンチル基)、ネオペンチル基、tert−アミル基(tert−ペンチル基)、イソヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、tert−デシル基、イソウンデシル基、tert−ウンデシル基、イソドデシル基、tert−ドデシル基などが挙げられる。
【0017】
これらの中でも、加硫速度、接着性、人体蓄積性等の点から、Rはα位に分岐を有することが好ましく、更に好ましくは、好適なスコーチタイムが得られるなどの効果の点から、炭素数3〜12のtert−アルキル基が好ましく、特に、tert−ブチル基、tert−アミル基(tert−ペンチル基)、tert−ドデシル基、中でもtert−ブチル基が合成面、原料入手の観点から経済的に優れており、しかも、DCBS(DZ)と同等の加硫速度が得られ、かつ、更なる接着性の点から特に望ましい。
【0018】
また、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRは、炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表す。このRが炭素数1〜10の直鎖アルキル基であれば、一般式(I)で表される化合物の加硫促進性能が良好である。
上記一般式(I)で表される化合物のRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基(n−ペンチル基)、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。これらの中でも、合成のし易さや原材料コストなどの効果の点から、炭素数1〜8の直鎖アルキル基、更に炭素数1〜6の直鎖アルキル基であることが好ましく、特に好ましくは、好適なムーニースコーチタイムが得られかつ高いスチールコード接着が得られる点で、炭素数1〜6の直鎖アルキル基が望ましい。これは炭素数が増えると加硫が更に遅れるため生産性が低下したり、接着性が低下するためである。これらの中でも、炭素数4以下の直鎖アルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が最も望ましい。
【0019】
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のR〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐のアルキル基又はアルコキシ基であり、これらは同一であっても異なっていてもよく、なかでも、RとRが、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐のアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましい。また、R〜Rが、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の場合、炭素数1であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。好ましいいずれの場合も、化合物の合成のし易さ及び加硫速度が遅くならないためである。
上記一般式(I)で表される化合物中のR〜Rの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のR、Rがどちらも分岐アルキル基の場合は、合成の困難性が増すこととなり、しかも、安定したものが合成できにくい。特に、R、Rが共にtert−ブチル基の場合は合成がうまくできない。また、R、Rがどちらも分岐アルキル基の場合は、耐熱接着性が悪くなり、好ましくないものとなる。本発明では、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRは、炭素数3〜12の分岐アルキル基であり、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキル基であり、この組み合わせにおいて、従来にない本発明の特有の効果を発揮するものとなる。
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のR、Rの特に好ましい組み合わせとしては、Rがtert−ブチル基であり、Rが炭素数1〜10の直鎖アルキル基、R〜Rは、水素原子の組み合わせである。この組み合わせの中でも、ベストモードとなる組み合わせとしては、Rがtert−ブチル基であり、Rが炭素数4以下となるメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基となる場合であり、更に好ましくは、Rが炭素数3以下、特に好ましくは炭素数2以下であるこの組み合わせの場合に、加硫速度がDCBS(DZ)と同等、更なる接着性能確保、人体蓄積性の見地から最も性能バランスが良いものとなる。
【0021】
上記ベストモードとなる組み合わせは、薬品の凝縮性を評価する簡易メジャーの一つであるオクタノール/水分配係数(logP OW)の数値から確認することができる。本発明では、このlogPの値は小さいほど、上記加硫速度、接着性能確保、人体蓄積性のバランスがより良好となる。
本発明(後述する実施例等を含む)において、上記オクタノール/水分配係数(logP)の測定は、JIS Z 7260−117(2006)に準拠して、高速液体クロマトグラフィー法により実施することができ、下記式により定義される。
logP=log(「Co」/「Cw」)
C0:1−オクタノール層中の被験物質濃度
Cw:水層中の被験物質濃度
【0022】
更に、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のnは0又は1の整数を表し、合成のし易さや原材料コストなどの効果の点から、nが0であるものが望ましい。また、一般式(I)中のxは1又は2の整数を表す。xが3以上になると反応性が高くなり過ぎるため、化合物の安定性が低下し作業性が悪化するため好ましくない。
以上のように、本発明に用いる上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物の中で好ましい化合物から更に好ましい化合物を順番にまとめてみると、具体的には、ムーニースコーチタイムが早くなりすぎず、加工時にゴム焦げを起こさず、作業性の低下を起こさないなどの点等から、R〜Rが水素原子で、1)上記一般式(I)のRは、tert−アルキル基であり、n=0、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキル基であるもの、2)上記一般式(I)中のRは、tert−アルキル基であり、nは0又は1の整数、Rは、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であるもの、3)上記一般式(I)中のRは、tert−アルキル基であり、n=0であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であるもの、4)上記一般式(I)中のRは、tert−アルキル基であり、n=0、Rは炭素数4以下の直鎖アルキル基(好ましくは炭素数3以下の直鎖アルキル基)であるもの、5)上記一般式(I)中のRは、tert−アルキル基であり、n=0、Rは炭素数2以下の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基)であるものが好ましいものとなる(降順する程、好適なスルフェンアミド化合物となる)。
【0023】
なお、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRが炭素数3〜12の分岐アルキル基以外の官能基(例えば、n−オクタデシル基等)や炭素数が12を超える分岐アルキル基である場合、また、Rが炭素数1〜10の直鎖アルキル基以外の各官能基(例えば、n−オクタデシル基等)や炭素数10を超える直鎖アルキル基である場合、更にR〜Rが上記範囲外の各官能基、各炭素数の範囲外である場合、更にまた、nが2以上の場合には、本発明の目的の効果を発揮することが少なく、好適なムーニースコーチタイムが遅くなり加硫時間が長くなることによる生産性低下、若しくは、接着性が低下したり、または、促進剤としての加硫性能やゴム性能が低下したりすることがある。更に、xが3以上では、安定性の点で好ましくない。また、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRが分岐アルキル基である場合に、α位以外に分岐を有するもの、例えば、2−エチルヘキシル、2−エチルブチルなどの場合には、加硫速度、接着性能確保、人体蓄積性のバランスが悪化する傾向となるので、α位に分岐があることが望ましい。
【0024】
本発明において、上記一般式(I)で表される化合物の代表例としては、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−メチル−N−イソアミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−イソアミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−イソアミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−イソアミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−メチル−N−tert−アミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−tert−アミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−tert−アミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−tert−アミルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−メチル−N−tert−ヘプチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−tert−ヘプチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−tert−ヘプチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−tert−ヘプチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
【0025】
これらのなかでも、更なる接着性能の点から、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドが好ましく、特に、最も長いスコーチタイムと優れた接着性能を有する点で、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドを用いることが望ましい。
これらの化合物は、1種でも組み合わせて使用してもよい。また、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)などの汎用の加硫促進剤と組み合わせて使用することも可能である。
【0026】
本発明の上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物の好ましい製造方法としては、下記方法を挙げることができる。
すなわち、対応するアミンと次亜塩素酸ソーダの反応によりあらかじめ調製したN−クロロアミンとビス(ベンゾチアゾール−2−イル)ジスルフィドを、アミンおよび塩基存在下、適切な溶媒中で反応させる。塩基としてアミンを用いた場合は、中和を行い、遊離のアミンに戻した後、得られた反応混合物の性状に従って、ろ過、水洗、濃縮、再結晶など適切な後処理をおこなうと、目的とするスルフェンアミドが得られる。
【0027】
本製造方法に用いる塩基としては、過剰量用いた原料アミン、トリエチルアミンなどの3級アミン、水酸化アルカリ,炭酸アルカリ、重炭酸アルカリ、ナトリウムアルコキシドなどが挙げられる。特に、過剰の原料アミンを塩基として用いたり、3級アミンであるトリエチルアミンを用いて反応を行い、水酸化ナトリウムで生成した塩酸塩を中和し、目的物を取り出した後、ろ液からアミンを再利用する方法が望ましい。
本製造方法に用いる溶媒としては、アルコール、特にメタノールが望ましい。
【0028】
製造方法は、例えば、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドでは、N−t−ブチルエチルアミンに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を0℃以下で滴下し、2時間攪拌後油層を分取する。次いでビス(ベンゾチアゾール−2−イル)ジスルフィド、N−t−ブチルエチルアミンおよび前述の油層を、メタノ−ルに懸濁させ、還流下2時間攪拌する。冷却後、水酸化ナトリウムで中和し、ろ過、水洗、減圧濃縮した後、再結晶することで目的とするN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(白色固体)を得ることができる。
【0029】
これらのスルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜5.0質量部、更に好ましくは、0.8〜2.5質量部とすることが望ましい。
この加硫促進剤の含有量が0.1質量部未満であると、十分に加硫しなくなり、一方、10質量部を越えると、ブルームが問題となり、好ましくない。
【0030】
本発明の端クッションに用いるゴム組成物中の硫黄は、加硫剤であり、その含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.3〜10質量部、好ましくは、1.0〜7.0質量部、更に好ましくは、3.0〜7.0質量部とすることが望ましい。
この硫黄の含有量が0.3質量部未満であると、十分に加硫しなくなり、一方、10質量部を越えると、ゴムの耐老化性能が低下し、好ましくない。
【0031】
本発明で使用する端クッション用ゴム組成物には、充填剤としてカーボンブラックを用いるが、カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(N2SA)70〜110m/g、ジブチルフタレート吸油量(DBP)70〜130ml/100gのものを用いることが好ましい。このようなカーボンブラックとしては、HAF等が挙げられる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対し40〜80質量部である。
【0032】
更に、本発明のゴム組成物には、初期接着性能の向上の点から、コバルト(単体)及び/又はコバルトを含有する化合物を含有せしめることが好ましい。
用いることができるコバルトを含有する化合物としては、有機酸のコバルト塩、無機酸のコバルト塩である塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、リン酸コバルト、クロム酸コバルトの少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、更なる初期接着性能の向上の点から、有機酸のコバルト塩の使用が望ましい。
【0033】
用いることができる有機酸のコバルト塩としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト等の少なくとも1種を挙げることができ、また、有機酸コバルトは有機酸の一部をホウ酸で置き換えた複合塩でもよく、具体的には、市販のOMG社製の商品名「マノボンド」等も用いることができる。
これらのコバルト及び/又はコバルトを含有する化合物の(合計)含有量は、コバルト量として、ゴム成分100質量部に対し、0.03〜3質量部、好ましくは、0.03〜1質量部、更に好ましくは、0.05〜0.7質量部とすることが望ましい。
これらのコバルト量の含有量が0.03質量部未満では、更なる接着性を発揮することができず、一方、3質量部を越えると、耐老化物性が大きく低下し、好ましくない。
【0034】
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分、硫黄、加硫促進剤、カーボンブラック、コバルト化合物の他に、タイヤやコンベアベルト等のゴム製品で通常使用される配合剤を本発明の効果を阻害しない範囲で用いることができ、例えば、老化防止剤、酸化亜鉛などを適宜配合することができる。
【0035】
本発明で用いるゴム組成物は、上記各成分を、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー等により混練りすることにより製造することができる。
【0036】
このように構成される本発明のゴム組成物は、スルフェンアミド系加硫促進剤の中で、最も加硫反応に遅効性を与える加硫促進剤として知られるN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドと同等以上の加硫遅延効果を有する特定のスルフェンアミド系の加硫促進剤を含有するので、加硫ゴムの物性低下、ブルーミングなどの問題を生じる可能性のある加硫遅延剤を使用することなく、加硫物性を低下させず、作業性に優れると共に、ゴムやけの発生が格段に少ないゴム組成物が得られ、また、コバルト(単体)及び/又はコバルトを含有する化合物を更に含有するゴム組成物では、スチールコードとの接着耐久性に優れるゴム組成物となる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明で用いる加硫促進剤の製造例、ゴム組成物並びにタイヤを実施例及び比較例に基づいて更に詳述するが、本発明はこれらの製造例、実施例に何ら限定されるものではない。
また、得られた加硫促進剤のオクタノール/水分配係数(logP)を、JIS Z 7260−117(2006)に準拠して、高速液体クロマトグラフィー法により測定した。高速液体クロマトグラフィーは、島津製作所社製のものを使用した。
【0038】
製造例1:N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドの合成
N−t−ブチルエチルアミン16.4g(0.162mol)に12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液148gを0℃以下で滴下し、2時間攪拌後油層を分取した。ビス(ベンゾチアゾール−2−イル)ジスルフィド39.8g(0.120mol)、N−t−ブチルエチルアミン24.3g(0.240mol)および前述の油層を、メタノール120mlに懸濁させ、還流下2時間攪拌した。冷却後、水酸化ナトリウム6.6g(0.166mol)で中和し、ろ過、水洗、減圧濃縮した後、再結晶することで目的とするN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを41.9g(収率66%)の白色固体(融点60〜61℃)として得た。
得られたN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドのスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=1.29(t,3H,J=7.1Hz,CH(エチル))、1.34(s,9H,CH(t−ブチル))、2.9−3.4(br−d,CH)、7.23(1H,m)、7.37(1H,m)、7.75(1H,m)、7.78(1H,m):
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ=15.12、28.06、47.08、60.41、120.70、121.26、123.23、125.64、134.75、154.93、182.63:
質量分析(EI、70eV):m/z;251(M−CH)、167(M−C14N)、100(M−CNS):
IR(KBr,cm−1):3061,2975,2932,2868,1461,1429,1393,1366,1352,1309,1273,1238,1198,1103,1022,1011,936,895,756,727。
また、このN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、4.9であった。
【0039】
製造例2:N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドの合成
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−t−ブチルメチルアミン14.1g(0.162mol)と20.9g(0.240mol)用いて製造例1と同様に行い、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを46.8g(収率82%)の白色固体(融点56〜58℃)として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=1.32(9H,s,CH(t−ブチル))、3.02(3H,s,CH(メチル))、7.24(1H,m)、7.38(1H,m)、7.77(1H,m)、7.79(1H,m):
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ=27.3、41.9、59.2、120.9、121.4、123.3、125.7、135.0、155.5、180.8:
質量分析(EI,70eV)m/z;252(M)、237(M−CH)、223(M−C)、195(M−C)、167(M−C12N)、86(M−CNS)。
また、このN−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、4.5であった。
【0040】
製造例3:N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドの合成
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−n−プロピル−t−ブチルアミン18.7g(0.162mol)と27.7g(0.240mol)を用いて製造例1と同様に行い、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを白色固体(融点50〜52℃)として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.92(t,J=7.3Hz,3H),1.34(s,9H),1.75(br,2H),3.03(brd,2H),7.24(t,J=7.0Hz,1H),7.38(t,J=7.0Hz,1H),7.77(d,J=7.5Hz,1H),7.79(d,J=7.5Hz,1H):
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ:11.7,23.0,28.1,55.3,60.4,120.7,121.3,123.3,125.7,134.7,154.8,181.3。
また、このN−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、5.3であった。
【0041】
製造例4:N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドの合成
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−t−ブチル−n−ブチルアミン20.9g(0.162mol)と31.0g(0.240mol)を用いて製造例1と同様に行い、N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドを42.4g(収率60%)の白色固体(融点55〜56℃)として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=0.89(3H,t,J=7.32Hz,CH(n−Bu))、1.2−1.4(s+m,11H,CH(t−ブチル)+CH(n−ブチル))、1.70(br.s,2H,CH)、2.9−3.2(br.d,2H,N−CH)、7.23(1H,m)、7.37(1H,m)、7.75(1H,m)、7.78(1H,m):
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ:14.0、20.4、27.9、31.8、53.0、60.3、120.6、121.1、123.1、125.5、134.6、154.8、181.2:
質量分析(EI,70eV)、m/z294(M)、279(M−CH)、237(M−C)、167(M−C18N)、128(M−CNS):IR(neat):1707cm−1,3302cm−1
また、このN−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、5.8であった。
【0042】
実施例1〜3及び比較例1〜3
2200mlのバンバリーミキサーを使用して、ゴム成分、硫黄、上記製造例で得た加硫促進剤、有機酸コバルト塩、その他の配合剤を下記表1に示す配合処方で混練り混合して未加硫のゴム組成物を調製した。さらに、これを端クッション用ゴムとして使用してタイヤを製造し、加硫を行った。
以下の方法で、ゴム組成物の伸張時の引張応力(M50、M100、M200、M300)、接着性能及びタイヤの接着耐久性と亀裂耐久性を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0043】
〔引張り特性の評価方法〕
上記ゴム組成物を145℃で60分間加硫して得た加硫ゴムに対し、JIS K 6301−1995(3号形試験片)に準拠して25℃にて測定試験を行い、伸張時の引張応力を測定し、比較例1のゴム組成物の引張特性を100として指数表示した。値が大きい程、引張り特性が良好であることを示す。
【0044】
〔接着性能の評価方法〕
黄銅めっき(Cu:63wt%、Zn:37wt%)したスチールコード(外径0.5mm×長さ300mm)3本を10mm間隔で平行に並べ、このスチールコードを上下両側から各ゴム組成物でコーティングして、これを160℃、20分間の条件で加硫し、サンプルを作製した。
得られた各サンプルの接着性について、ASTM−D−2229に準拠して、各サンプルに対してスチールコードを引き抜き、ゴムの被覆状態を目視で観察し、0〜100%で表示し、接着性の指標とした。耐熱接着性は、各サンプルを100℃のギヤオーブンに15日、30日間放置した後に、上記試験を行い、耐熱接着性の指標とした。数値が大きい程、耐熱接着性に優れていることを示す。
【0045】
〔タイヤの性能の評価方法〕
成形、加硫した供試タイヤを正規内圧、正規荷重で、40℃の雰囲気下、速度60km/hrk条件でドラムテストを行った。
(1)接着耐久性
上記条件でドラムテストを5日間行い、終了後ベルト層を取り出し、交錯層中のスチールコードを引き抜き、そのゴム被覆状態を目視で観測し被覆率を測定した。比較例1のゴム組成物の被覆率を100として指数表示した。値が大きい程、接着耐久性が良好であることを示す。
【0046】
(2)亀裂耐久性
上記条件で、サイドフォース15kN加え、ドラムテストを2日間行い、終了後ベルト層を取り出し、ベルト層端からの亀裂進展長さを測定した。比較例1のゴム組成物の亀裂長さを100として測定値の逆数の指数化を行った。値が大きい程、亀裂耐久性が良好であることを示す。
【0047】
【表1】


*1:天然ゴムRSS#3
*2:カーボンブラックN330
*3:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
(大内新興化学工業製、商品名:ノクラック6C)
*4:ナフテン酸コバルト
*5:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
(大内新興化学工業製、商品名:ノクセラーDZ)
*6:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
(大内新興化学工業製、商品名:ノクセラーCZ)
*7:N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド
(大内新興化学工業製、商品名:ノクセラーNS)
*8:N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド
*9:N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド
*10:N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド
【0048】
表1より、本発明のゴム組成物は、引っ張り強度、耐熱接着性に優れ、これを端クッションとして使用したタイヤは耐熱接着性及び耐亀裂性が優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコア、カーカス層、カーカス層のラジアル方向外側に配置されたベルト層とトレッドを備え、該ベルト層がスチールコードをコーティングゴム中に埋設してなるゴム被覆コード層が積層されて形成されたタイヤにおいて、ベルト層に隣接してベルト層のゴム被覆コード層の端部を被覆するクッションゴム(以下端クッションという)を設け、該端クッションゴムがジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部、充填剤として窒素吸着比表面積が70〜110m/g、ジブチルフタレート吸油量が70〜130ml/100gのカーボンブラック40〜80質量部、硫黄0.3〜10質量部と下記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤0.1〜10質量部とを含有するゴム組成物を端クッションゴムとして使用することを特徴とする空気入りタイヤ。
【化1】

〔式中、Rは炭素数3〜12の分岐アルキル基、Rは炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表し、R〜Rは水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐アルキル基又はアルコキシ基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。xは1又は2の整数、nは0又は1の整数を表す。〕
【請求項2】
一般式(I)中のRが、tert−アルキル基であり、n=0、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基、x=1、R〜Rは水素原子であるスルフェンアミド系加硫促進剤を含有するゴム組成物を端クッションゴムとして使用することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
一般式(I)中のRが、tert−アルキル基であり、n=0、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、x=1、R〜Rは水素原子であるスルフェンアミド系加硫促進剤を含有するゴム組成物を端クッションゴムとして使用することを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
ゴム組成物が、さらにコバルト化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
コバルト化合物の含有量が、コバルト量として、ゴム成分100質量部に対し、0.03〜3質量部である請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
コバルト化合物が、有機酸のコバルト塩である請求項4又5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
ゴム成分が、天然ゴム及びポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含むゴム組成物を端クッションゴムとして使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
ゴム成分が50質量%以上の天然ゴム及び残部がジエン系合成ゴムよりなるゴム組成物を端クッションゴムとして使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2010−275520(P2010−275520A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160936(P2009−160936)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】