説明

空気入りタイヤ

【課題】良好な耐クラック性を有しつつ、従来品に比べてカラー層の耐汚染性に優れた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ側部(サイドウォール部2)のタイヤ幅方向外側に、バリア層20を介してカラー層30が形成された空気入りタイヤ1であって、前記バリア層20が、酸化処理した気相成長炭素繊維21を配合したゴム組成物からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ側部の幅方向外側に、バリア層を介してカラー層が形成された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
サイドウォール部などのタイヤ側部に、装飾用としてカラー層を形成したタイヤは、近年高付加価値タイヤとして一般的に知られている。
ただし、このカラー層については、前記サイドゴム部分から、オイル分や老化防止剤等が移行することによって、茶色に変色するという問題がある。そのため、この変色を防止する目的で、種々の技術が開発されている。
【0003】
上記カラー層の変色を抑制する方法としては、カラー層にブチルゴム(IIR)を用いることが一般的である。ただし、ブチルゴムは、分子中に二重結合を殆ど持たず、カラー層と隣接するサイドゴムとの共架橋性に乏しいことから、ブチルゴムにエチレンプロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)や、天然ゴム等をブレンドしたブレンドゴムを用いることで、耐久性を高めている。
【0004】
また、上記カラー層の変色を抑制する他の方法として、タイヤ側部のゴムとカラー層との間に所定のバリア層を設けることで、オイル分や老化防止剤の拡散を抑制し、カラー層の変色を抑制する技術が挙げられる。
【0005】
例えば、特許文献1では、カラー層及びバリア層の組成について適正化を図ることで、比較的小さな厚みで、耐久性、及び、カラー層の変色抑制効果(耐汚染性)を有するカラー層を備えた空気入りタイヤが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記記載の技術では、いずれも、走行時にバリア層およびカラー層の温度が上昇することで汚染物質の拡散が促進されるため、耐汚染性が十分ではなかった。そのため、良好な耐クラック性を有しつつ、上記カラー層の変色を有効に抑制できる空気入りタイヤの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−168616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、タイヤ側部のゴムとカラー層との間に形成されたバリア層の適正化を図ることによって、良好な耐クラック性を有しつつ、カラー層の耐汚染性に優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討をした結果、前記バリア層を、熱伝導率が高く、かつゴムとの親和性が高い放熱材料である酸化処理した気相成長炭素繊維を配合したゴム組成物から構成することによって、良好な耐クラック性を有しつつ、従来品に比べてカラー層の耐汚染性を大きく向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)タイヤ側部の幅方向外側に、バリア層を介してカラー層が形成された空気入りタイヤであって、前記バリア層は、酸化処理した気相成長炭素繊維を配合したゴム組成物からなることを特徴とする空気入りタイヤ。
(2)前記気相成長炭素繊維は、前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して、0.1〜20.0質量部配合されることを特徴とする上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(3)前記気相成長炭素繊維が、長さ0.5〜30μm、直径0.04〜0.4μmの範囲であることを特徴とする上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(4)前記酸化処理は、硝酸、硫酸、過塩素酸又はこれらの混合物による処理であることを特徴とする上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(5)前記酸化処理は、酸化性気体による処理することを特徴とする上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(6)前記酸化性気体が、オゾン、硝酸ガス、亜硝酸ガス、硫酸ガス及び亜硫酸ガスのうちから選択される少なくとも1種である事を特徴とする上記(5)に記載の空気入りタイヤ。
(7)前記酸化処理が、物理的酸化処理である事を特徴とする上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(8)前記物理的酸化処理が、コロナ放電処理及びプラズマ処理のうちから選ばれる少なくとも1種である事を特徴とする上記(7)に記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な耐クラック性を有しつつ、従来のカラー層が形成された空気入りタイヤに比べて、カラー層の耐汚染性に優れた空気入りタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態について、その一部を模式的に示した幅方向断面図である。
【図2】本発明の空気入りタイヤのバリア層について、その一部を拡大して模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成と限定理由を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施形態について、トレッドの一部について幅方向断面で見た状態を模式的に示した図である。図2は、本発明の空気入りタイヤのバリア層の断面を拡大して示した図である。
【0014】
本発明による空気入りタイヤは、図1に示すように、タイヤ側部(ここでは、サイドウォール部2のサイドゴム10)のタイヤ幅方向外側に、バリア層20を介してカラー層30が形成された空気入りタイヤ1である。ここで、前記タイヤ側部とは、タイヤの幅方向断面で見たときに側方に位置する部分(トレッド端からビード部までの部分)のことをいう。
【0015】
そして本発明は、図2に示すように、前記バリア層20が、酸化処理した気相成長炭素繊維21を含むことを特徴とする。
熱伝導率が高い放熱材料である気相成長炭素繊維21を含むことによって、前記バリア層20の発熱を抑制できるとともに、透過係数を低減できるため、老化防止剤等の汚染成分40のカラー層30への浸入を抑制し、耐汚染性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。また、前記気相成長炭素繊維21に酸化処理を施しているため、ゴムとの親和性が向上し、従来の空気入りタイヤと同様に良好な耐クラック性についても確保できる。
【0016】
(カラー層)
本発明の空気入りタイヤに形成されるカラー層は、図1に示すように、タイヤ側部のサイドゴム10に形成されるゴム層30のことであり、タイヤの意匠性を向上するための層である。
【0017】
前記カラー層を構成するゴム組成物としては、特に限定はされないが、耐汚染性を確保する点から、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)及びウレタンゴム(U)のうちの少なくとも1種を含むゴム成分を配合することが好ましい。また、前記カラー層を構成する成分としては、一般的に塗料として用いられているエポキシ系やエステル系、アクリル系の水性または油性の成分が好ましい。
【0018】
また、前記ゴム成分については、その他の一般的なタイヤ用ゴム成分を適宜含むことができる。例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等の少なくとも1種を含むことができる。
【0019】
なお、前記カラー層として、例えば白ゴム層を形成する場合には、白色充填剤を配合する。その配合量については、ゴム成分100質量部に対して40〜120質量部の範囲内とされることが好ましい。特に60質量部以上とされることが好ましく、100質量部以下とされることが好ましい。
【0020】
前記白色充填剤としては、例えば酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク等が挙げられる。例えば酸化チタンを用いた場合は、白色充填剤としての寄与の他、ゴム組成物の紫外線による劣化を防止し、耐変色性および耐久性を向上させる効果を有する。
【0021】
その他の色のカラー層を形成する場合には、上記の白色充填剤に代えるか、又は上記の白色充填剤とともに、青色、赤色、黄色、緑色等の着色顔料を、例えばゴム成分100質量部に対して、0.5〜30質量部程度配合することができる。
【0022】
また、前記カラー層を構成するゴム組成物は、架橋剤、加硫促進剤などをさらに配合することができる。架橋剤としては、有機過酸化物、硫黄系加硫剤が好ましく用いられ、ゴム成分100質量部に対してたとえば0.3〜3.0質量部の範囲内で配合され得る。
【0023】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を使用することができる。また、硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド等を使用することができる。
【0024】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、若しくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。
【0025】
また、加工性を向上させるため、軟化剤を前記ゴム組成物に配合することもできる。ここで軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類の他、トール油、サブ、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸等が挙げられる。
【0026】
さらに、可塑剤、例えばDMP(フタル酸ジメチル)、DEP(フタル酸ジエチル)、DBP(フタル酸ジブチル)、DHP(フタル酸ジヘプチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)、DINP(フタル酸ジイソノニル)、DIDP(フタル酸ジイソデシル)、BBP(フタル酸ブチルベンジル)、DLP(フタル酸ジラウリル)、DCHP(フタル酸ジシクロヘキシル)等を使用しても良い。
【0027】
また、前記ゴム組成物に、スコーチを防止または遅延させるためスコーチ防止剤、例えば無水フタル酸、サリチル酸、安息香酸などの有機酸、N−ニトロソジフェニルアミンなどのニトロソ化合物、N−シクロヘキシルチオフタルイミドなどを配合することができる。
【0028】
なお、老化防止剤については、前記カラー層を構成するゴム組成物中に含まないことが好ましい。カラー層の変色の原因となるためである。
【0029】
さらに、前記カラー層を構成するゴム組成物には、シランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤は、シリカ等の白色系補強剤とゴム成分との結合を強固にし、ゴム組成物中における該白色系補強剤の分散性を向上させる効果を有する。シランカップリング剤としては、たとえばチオール系、アミン系、ハロゲン系の官能基を有するもの等を単独または2種以上の組合せで好ましく使用することができる。
【0030】
また、前記カラー層のタイヤ幅方向の厚さについては、特に限定はされないが、0.5〜3.0mmの範囲であることが好ましい。0.5mm未満の場合、意匠性を十分に確保できないおそれがあり、一方、3.0mmを超えると製造コストが大きくなるためである。
【0031】
(バリア層)
本発明の空気入りタイヤに形成されるバリア層は、図1に示すように、タイヤ側部のサイドゴム10とカラー層30との間に形成され、前記サイドゴム10とカラー層30との密着性を確保し、前記カラー層30へ老化防止剤等が浸入することを抑制するための層20である。
そして、前記バリア層20は、熱伝導率が高く、かつゴムとの親和性が高い放熱材料である、酸化処理した気相成長炭素繊維21を配合したゴム組成物からなる。図2に示すように、伝導率が高い放熱材料21を含有することで、前記バリア層20の発熱を抑制するとともに、透過係数の低減が図れる結果、カラー層10への前記汚染成分の浸入を有効に抑制できる。
【0032】
ここで、前記気相成長炭素繊維とは、相法により合成された高結晶性のカーボンナノファイバーのことである。また、前記気相成長炭素繊維の熱伝導率は、より高い放熱性を確保し、耐汚染性の向上を図る点から、1000〜1500W/(m・K)の範囲であることが好適である。
【0033】
また、前記放熱材料は、前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して、0.1〜20質量部含まれることが好ましい。前記放熱材料の含有量が0.1質量部未満の場合には、含有量が少ないため、前記バリア層の発熱を十分に抑制できず、前記カラー層の耐汚染性が低下するおそれがあり、一方、含有量が20質量部を超えると、含有量が多すぎるため、耐クラック性が低下するおそれがある。
【0034】
前記バリア層を構成するゴム組成物のゴム成分については、特に限定はされないが、耐汚染性を確保する点から、非ジエン系ゴムを含むことが好ましい。ここで、「非ジエン系ゴム」とは、ゴム成分の主鎖に二重結合をほとんど含まない(具体的には、2.5mol%以下)ものをいう。例えば、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、クロロスルフォン化ゴム(CSM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等が挙げられる。
ゴム成分として非ジエン系ゴムを含むことで、老化防止剤等に対するバリア性を確保できる結果、前記カラー層の優れた耐汚染性を実現できる。
【0035】
その中でも、前記ゴム成分を構成する非ジエン系ゴムが、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、及びウレタンゴム(U)、クロロスルフォン化ゴム(CSM)のうちの少なくとも1種であることが好ましい。老化防止剤等に対するバリア性を確保し、前記カラー層の耐汚染性を向上させることができるからであり、他の非ジエン系ゴムからなる場合、十分な前記カラー層の耐汚染性を確保できないおそれがある。
【0036】
なお、前記バリア層については、着色の有無については特に限定されない。例えば、白いバリア層を形成する場合には、白色充填剤を配合し、その他の色のバリア層については、必要に応じた色の着色顔料を配合する。また、前記タイヤ側部のゴムと同様に、カーボンブラックを配合してもかまわない。充填材の配合量についても、特に限定はされない。
【0037】
また、前記バリア層を構成するゴム組成物は、架橋剤、加硫促進剤などをさらに配合することができる。架橋剤としては、前記カラー層と同様に、有機過酸化物、硫黄系加硫剤が好ましく用いられ、ゴム成分100質量部に対してたとえば0.3〜3.0質量部の範囲内で配合され得る。
【0038】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、若しくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能であり、その中でも、前記タイヤ側部のゴムとの高い接着性を得る点から、チアゾール系の加硫促進剤を用いることが好ましい。
【0039】
また、加工性を向上させるため、軟化剤を前記ゴム組成物に配合することもできる。ここで軟化剤については、上記のカラー層を構成するゴム組成物と同じものを用いることができる。さらに、可塑剤や、スコーチ防止剤、シランカップリング剤についても、上記のカラー層を構成するゴム組成物と同様である。
【0040】
なお、老化防止剤については、前記バリア層を構成するゴム組成物中には含まないことが好ましい。カラー層の変色の原因となるためである。
【0041】
また、前記バリア層のタイヤ幅方向の厚さについては、特に限定はされないが、0.5〜3.0mmの範囲であることが好ましい。0.5mm未満の場合、耐汚染性を確保できないおそれがあり、一方、3.0mmを超えると製造コストが大きくなるためである。
【0042】
(タイヤ側部のゴム)
前記タイヤ側部に位置するゴムは、図1に示すように、空気入りタイヤ1のサイドウォール部2などのタイヤ側部を構成するためのゴム部材10である。本発明の空気入りタイヤ1では、そのタイヤ幅方向外側に、前記バリア層20を介して前記カラー層30が形成されている。前記タイヤ側部のゴム(図1ではサイドゴム10)を構成するゴム組成物については、特に限定はされず、通常の空気入りタイヤに用いられるゴム組成物を用いればよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1〜5及び比較例1〜2)
混練機を用い、表1に示す配合成分のうち硫黄、加硫促進剤を除いた成分を約130℃で3.0分間混練した。その後、硫黄、加硫促進剤を加え、2軸オープンロールでさらに約100℃で2.0分間練り込んだ後、所定の厚みのバリア層及びゴム層からなるシートとして取り出した。該シートから各実施例及び比較例の試料片を作製した。なお、表1に示す気相成長炭素繊維については、熱伝導率が約1200W/(m・K)である。
なお、各試料片中に含有する気相成長炭素繊維については、表1に示す方法によって酸化処理が施されたものである。
【0045】
(評価)
(1)耐汚染性
汚染成分を一定量含んだ汚染ゴムと、白ゴムとの間に、各実施例及び比較例で作製した試料片を設けた積層体を加硫し、100℃恒温槽に48時間入れた前後での白ゴム表面の色差を分光測色計(コニカミノルタ(株)製)を用いて測定することで、耐汚染性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、耐汚染性の評価については、比較例1の耐汚染性を100としたときの相対値として示し、数値が大きいほど耐汚染性が高く、良好な結果となる。
【0046】
(2)耐クラック性
表1に示すバリアゴムとサイドゴムとを重ねあわせた後に加硫を行い、トータル厚さが4mmのサンプルを作製した。その後、規定の大きさ(50mm×10mm)に切り取り、実際の走行時温度を模して約60℃に保った雰囲気下において、0〜30%の一軸方向への動的疲労を与えてゴム破断するまでの回数で評価を行った。評価結果を表1に示す。また、クラックの発生があった場合には、クラックの発生部位についても表1に示す。
なお、各実施例及び比較例の評価については、比較例1の耐汚染性を100としたときの相対値として示し、数値が大きいほど耐クラック性が高く、良好な結果となる。
【0047】
【表1】




【0048】
*1 JSR製 ブロモブチル2255
*2 旭カーボン製 #55−NP
*3 大内新興化学工業製 ノクセラーDM−P
*4 ミヨシ油脂製 MXST
【0049】
表1の結果から、実施例1〜5については、いずれも良好な耐クラック性を有しつつ、カラー層の耐汚染性が高いことがわかった。一方、比較例1については、耐クラック性については各実施例と同程度であるものの、気相成長炭素繊維を含まないため、耐汚染性に劣ることがわかった。比較例2については、耐汚染性については実施例と同等であるものの、気相成長炭素繊維の酸化処理がなされていないため耐クラック性に劣ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、良好な対クラック性を有しつつ、従来のカラー層が形成された空気入りタイヤに比べて耐汚染性に優れた空気入りタイヤを提供できる。その結果、より長期間において空気入りタイヤを使用することが可能となり、産業上有用な効果を奏する。
【符号の説明】
【0051】
1 空気入りタイヤ
2 サイドウォール部
10 サイドゴム
20 バリア層
21 気相成長炭素繊維
30 カラー層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ側部の幅方向外側に、バリア層を介してカラー層が形成された空気入りタイヤであって、
前記バリア層は、酸化処理した気相成長炭素繊維を配合したゴム組成物からなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記気相成長炭素繊維は、前記ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して、0.1〜20.0質量部配合されることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記気相成長炭素繊維が、長さ0.5〜30μm、直径0.04〜0.4μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記酸化処理は、硝酸、硫酸、過塩素酸又はこれらの混合物による処理であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記酸化処理は、酸化性気体による処理することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記酸化性気体が、オゾン、硝酸ガス、亜硝酸ガス、硫酸ガス及び亜硫酸ガスのうちから選択される少なくとも1種である事を特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記酸化処理が、物理的酸化処理である事を特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記物理的酸化処理が、コロナ放電処理及びプラズマ処理のうちから選ばれる少なくとも1種である事を特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−95385(P2013−95385A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242707(P2011−242707)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】