説明

空気入りラジアルタイヤ

【課題】カーカスプライの巻き上げ部の内側箇所におけるセパレーションを抑制して、ビード部の耐久性に優れた空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】ゴムフィラー1bが、ビードコア1aを包囲する断面丸型の下部フィラー11と、下部フィラー11よりもゴム硬度が低い上部フィラー12とを有する構造とし、カーカスプライ4の巻き上げ端4Eを、下部フィラー11の上端11T、及び、金属コードを含むチェーファ6の巻き上げ端6Eよりもタイヤ径方向外側に配置する。カーカスプライ4の巻き上げ端4Eを挟み込むようにして、上部フィラー12よりもゴム硬度の高いゴムパッド13を設けるとともに、そのゴムパッド13を、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側に接しつつ、下部フィラー11の上端11Tよりもタイヤ径方向内側に延在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビード部の構造に特徴を有する耐久性の高い空気入りラジアルタイヤに関し、特に重荷重用空気入りラジアルタイヤとして有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、特に産業車両や建設車両などの重量が重い車両に使用される空気入りラジアルタイヤでは、ビードコアの回りで巻き上げたカーカスプライの巻き上げ端を起点として、セパレーションなどの故障を起こす懸念があった。このため、チェーファと呼ばれる補強層をカーカスプライに沿って配置し、ビード部の耐久性向上を図ることが一般的に行われている。下記特許文献1,2には、そのようなチェーファが開示されている。
【0003】
また、本出願人による下記特許文献3では、カーカスプライの巻き上げ端のせん断歪みを抑えてビード部の耐久性を更に向上するべく、図6のように、ビードコア3aのタイヤ径方向外側に配置されるゴムフィラー3bを、硬質ゴムからなる断面丸型の下部フィラー31と、その下部フィラー31よりも軟らかい上部フィラー32とで構成したビード構造が提案されている。ビードコア3aの回りで巻き上げたカーカスプライ34の外側には、ナイロンコードを含んだナイロンチェーファ35が配置されている。
【0004】
カーカスプライ34の巻き上げ端34Eを起点としたセパレーションの発生を抑えるうえでは、ナイロンチェーファ35に代えて、スチールコード(金属コードの一例)を含んだスチールチェーファを採用することが有効である。しかし、ナイロンチェーファに比べると、スチールチェーファでは巻き上げ端に作用する応力が分散しにくく、その巻き上げ端を起点としたセパレーションの発生が危惧されるため、図7のように、スチールチェーファ36を採用する場合には、その巻き上げ高さを低く設定する必要があった。
【0005】
ところが、図7の構造では、カーカスプライ34及びスチールチェーファ36の各々の巻き上げ端での故障は低減できるものの、カーカスプライ34の巻き上げ部の内側箇所IAにおいては、セパレーションが発生しやすくなることが判明した。その発生メカニズムについて本発明者が研究を重ねたところ、図7の如きビード構造では、仮想ラインALを境界として上側部分の剛性が下側部分よりも低くなり、そのタイヤ径方向での剛性段差に起因して、内側箇所IAにセパレーションが生じやすいことを見出した。
【0006】
具体的には、図7の構造では、図6の構造に比べてチェーファの巻上げ高さが低いうえ、高強度のスチールチェーファ36を採用しており、しかも、硬質の下部フィラー31が断面丸型をなして、上部フィラー32との界面が横方向に延びるため、仮想ラインALを境界にしてタイヤ径方向での剛性段差が大きくなる傾向にある。その結果、走行時における内側箇所IA近傍の変形が大きくなり、長期使用に伴うゴム疲労によって内側箇所IAの接着性が低下して、セパレーションが発生する。
【0007】
これに対し、特許文献1の図2や特許文献2の図1に記載されているようなビード構造では、スチールチェーファを同じように配置しても、タイヤ径方向の剛性段差は然程に顕在化しない。これらのビード構造では、ビードフィラーを下側部分と上側部分とに区画し、ビードコアの直上に位置する下側部分を上側部分よりも硬質のゴムで形成してあるものの、その硬質のゴムはタイヤ径方向外側に向けて先細りに尖っており、ビード部の剛性が緩やかに変化するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−156325号公報
【特許文献2】特開2002−331810号公報
【特許文献3】特開2005−313735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、カーカスプライの巻き上げ部の内側箇所におけるセパレーションを抑制して、ビード部の耐久性に優れた空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたゴムフィラーと、前記ビードコアの回りで内側から外側に巻き上げられたカーカスプライと、前記ビードコアの回りで巻き上げられて前記カーカスプライの外側に配置されたチェーファとを備え、前記ゴムフィラーが、前記ビードコアを包囲する断面丸型の下部フィラーと、その下部フィラーのタイヤ径方向外側に配置され、前記下部フィラーよりもゴム硬度が低い上部フィラーとを有する空気入りラジアルタイヤにおいて、前記チェーファが金属コードを含んでなるとともに、前記カーカスプライの巻き上げ端が、前記下部フィラーの上端及び前記チェーファの巻き上げ端よりもタイヤ径方向外側に配置されていて、前記カーカスプライの巻き上げ端を挟み込むようにして、前記上部フィラーよりもゴム硬度の高いゴムパッドが設けられ、そのゴムパッドが、前記カーカスプライの巻き上げ部の内側に接しつつ前記下部フィラーの上端よりもタイヤ径方向内側に延びているものである。
【0011】
本発明の空気入りラジアルタイヤによれば、上部フィラーよりもゴム硬度の高いゴムパッドが、カーカスプライの巻き上げ部の内側に接しつつ下部フィラーの上端よりもタイヤ径方向内側に延びていることにより、ビード部におけるタイヤ径方向での剛性段差を緩和して、カーカスプライの巻き上げ部の内側箇所でのセパレーションの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の空気入りラジアルタイヤでは、前記下部フィラーのゴム硬度が85〜95、前記上部フィラーのゴム硬度が56〜66、前記ゴムパッドのゴム硬度が68〜78であるものが好ましい。このように下部フィラーと上部フィラーとの硬度差が大きい場合であっても、本発明によれば、上記の如きゴムパッドを設けることによって、タイヤ径方向での剛性段差を良好に緩和し、カーカスプライの巻き上げ部の内側箇所でのセパレーションの発生を抑制することができる。本発明において、ゴム硬度は、23℃でのJISK6253の規定による硬度を指すものとする。
【0013】
本発明の空気入りラジアルタイヤでは、リム基準径を基準として、前記カーカスプライの巻き上げ高さに対する前記下部フィラーの上端の高さの比と、前記カーカスプライの巻き上げ高さに対する前記チェーファの巻き上げ高さの比とが、それぞれ0.5〜0.8であるものが好ましい。これらの比が0.5以上であることにより、下部フィラーの上端の高さとチェーファの巻き上げ高さが相応に確保され、カーカスプライの巻き上げ端を起点とした故障の発生が良好に抑えられる。また、これらの比が0.8以下であることにより、下部フィラーの上端やチェーファの巻き上げ端がカーカスプライの巻き上げ端に接近し過ぎることを防ぎ、カーカスプライの巻き上げ端の耐久性の低下を抑えられる。
【0014】
本発明の空気入りラジアルタイヤでは、前記下部フィラーの上端から前記ゴムパッドまでのタイヤ軸方向距離として測定される厚みT1と、前記下部フィラーの上端から前記カーカスプライの巻き上げ部までのタイヤ軸方向距離として測定される厚みT2とが、0.05<(T2−T1)/T2<0.5の関係を満たすものが好ましい。かかる構成によれば、カーカスプライの巻き上げ部の内側に配されるゴムパッドの厚みを確保して、そのカーカスプライの巻き上げ部の内側箇所でのセパレーションを良好に抑制できる。
【0015】
本発明の空気入りラジアルタイヤでは、前記ゴムパッドが、前記カーカスプライの巻き上げ部の内側で、タイヤ径方向内側に向けて厚みを増しつつ前記下部フィラーに接するものが好ましい。かかる構成によれば、カーカスプライの巻き上げ部の内側をゴムパッドで覆いつつ、そのゴムパッドの厚みを確保して、カーカスプライの巻き上げ部の内側箇所でのセパレーションを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の空気入りラジアルタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図
【図2】図1のタイヤのビード部を拡大して示す断面図
【図3】図2のカーカスプライの巻き上げ端の周辺を示す断面図
【図4】本発明の別実施形態におけるビード部を示す断面図
【図5】比較例におけるビード部を示す断面図
【図6】従来タイヤにおけるビード部を示す断面図
【図7】チェーファの巻き上げ高さを低く設定したときのビード部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示すタイヤTは、本発明に係る空気入りラジアルタイヤの一例であり、規定リム装着時におけるタイヤ子午線断面が示されている。規定リム装着時は、タイヤサイズに対応してJATMAで定められた標準となるリムに装着し、同じくタイヤサイズに対応してJATMAで定められる単輪最大負荷能力に対応する最高空気圧をかけた時の状態を指す。図2は、そのタイヤTのビード部1を拡大して示す断面図である。
【0018】
このタイヤTは、一対のビード部1と、ビード部1からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向外側端に連なって踏面を構成するトレッド部3とを備える。ビード部1には、ゴム被覆したビードワイヤを積層巻回した収束体よりなる環状のビードコア1aと、そのビードコア1aのタイヤ径方向外側に位置するゴムフィラー1bとが配設されている。
【0019】
カーカスプライ4は、一対のビード部1に配設されたビードコア1a間で延在し、そのビードコア1aの回りに内側から外側に巻き上げられている。ビードコア1a又はゴムフィラー1bのタイヤ幅方向外側には、カーカスプライ4の巻き上げ部が配置され、その先端が巻き上げ端4Eとなる。カーカスプライ4は、タイヤ周方向に対して略直交する方向に配列したプライコードを、トッピングゴムで被覆して形成されている。プライコードとしては、スチールコードや有機繊維コードが好適に使用される。
【0020】
カーカスプライ4の内側には、タイヤTの内周面を構成するインナーライナーゴム5が設けられている。インナーライナーゴム5は、タイヤ内に充填された気体の透過を阻止する機能を有する。また、サイドウォール部2では、カーカスプライ4の外側に、タイヤTの外壁面を構成するサイドウォールゴム9が設けられている。
【0021】
チェーファ6は、ビードコア1aの回りで巻き上げられてカーカスプライ4の外側に配置されている。6Eは、チェーファ6の巻き上げ端である。本実施形態のチェーファ6は、カーカスプライ4を包むように内側から外側に巻き上げられているが、これに限らず、ビードコア1aのタイヤ径方向内側の位置から巻き上げても構わない。チェーファ6は、スチールコード(金属コードの一例)を含んでなるスチールチェーファで構成されている。スチールコードは、タイヤ周方向に対して斜め(例えば、傾斜角度が20〜50°)に配列され、トッピングゴムにより被覆されている。
【0022】
ゴムフィラー1bは、ビードコア1aを包囲する断面丸型の下部フィラー11と、その下部フィラー11のタイヤ径方向外側に配置され、下部フィラーよりもゴム硬度が低い上部フィラー12とを有する。下部フィラー11の上面は、タイヤ径方向外側に凸となる湾曲面で形成されていて、その上端11Tはカーカスプライ4から離れている。上部フィラー12は、タイヤ径方向外側に向けて先細りとなる形状を有し、その先端は巻き上げ端4Eよりもタイヤ径方向外側に配置されている。
【0023】
巻き上げ端4Eは、ゴムフィラー1bの中腹部の高さに位置し、下部フィラー11の上端11T及びチェーファ6の巻き上げ端6Eよりもタイヤ径方向外側に配置されている。また、その巻き上げ端4Eを挟み込むようにして、上部フィラー12よりもゴム硬度の高いゴムパッド13が設けられている。図2,3に拡大して示すように、ゴムパッド13は、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側に接しつつ、上端11Tよりもタイヤ径方向内側に延びている。これにより、ビード部1におけるタイヤ径方向での剛性段差を緩和して、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側箇所でのセパレーションの発生を抑制できる。
【0024】
本実施形態では、巻き上げ端4E,6Eの各々にエッジテープをU字状に取り付けており、それらを起点としたセパレーションの発生及び進展の抑制を図っている。エッジテープは、例えば0.4〜1.0mmの厚みを有し、ゴムパッド13と同配合のゴム材料により形成されるが、これを異なる配合のゴム材料で形成してもよく、ナイロン等の有機繊維で形成しても構わない。尚、本発明は、このようなエッジテープを取り付けるものに限られない。
【0025】
また、本実施形態では、ゴムフィラー1bのタイヤ幅方向外側に、ゴム硬度56〜80のパッド7が配置されている。パッド7は、上部フィラー12と共にゴムパッド13を挟み込んでいる。カーカスプライ4の巻き上げ端4Eに作用する歪みを低減する観点から、パッド7には上部フィラー12と同配合のゴム材料、若しくはそれ以上の硬度を有するゴム材料を用いることが好ましい。
【0026】
下部フィラー11のゴム硬度は85〜95が好ましく、90〜95がより好ましい。かかる硬質ゴムで下部フィラー11を形成することで、カーカスプライ4の倒れ込みを低減して巻き上げ端4Eのせん断歪みを低減できる。上部フィラー12のゴム硬度は56〜66が好ましく、60〜66がより好ましい。これにより、ビード部1全体の剛性を確保しながら、巻き上げ端4Eへの応力集中を抑えられる。ゴムパッド13のゴム硬度は68〜78が好ましく、これによりビード部1におけるタイヤ径方向の剛性段差を緩和できる。
【0027】
リム基準径NDを基準として、カーカスプライ4の巻き上げ高さ4Hに対する下部フィラー11の上端11Tの高さ11Hの比11H/4Hは、0.5以上が好ましい。それにより高さ11Hを相応に確保し、巻き上げ端4Eを起点とした故障を良好に抑制することができる。また、比11H/4Hは、0.8以下が好ましい。それにより高さ11Hが過度に大きくなることを防いで、巻き上げ端4Eを起点とした故障を良好に抑えられる。
【0028】
リム基準径NDを基準として、カーカスプライ4の巻き上げ高さ4Hに対するチェーファ6の巻き上げ高さ6Hの比6H/4Hは、0.5以上が好ましい。それによりチェーファ6の巻き上げ高さ6Hを相応に確保し、巻き上げ端4Eを起点とした故障を良好に抑制することができる。また、比6H/4Hは、0.8以下が好ましい。それにより巻き上げ高さ6Hが過度に大きくなることを防ぎ、巻き上げ端4Eを起点とした故障の発生を良好に抑えられる。
【0029】
リム基準径NDは、タイヤTに応じて決められたリム径の呼びに対するJATMAに記載の径寸法であり、この径によってリム20のビード座の径が決定され、この径に応じたタイヤ設計がなされる。
【0030】
図3に拡大して示すように、本実施形態のゴムパッド13は断面略三角形状をなしており、巻き上げ端4Eからゴムパッド13の先端までの距離13Dは、例えば10〜35mmに設定される。ゴムパッド13は、カーカスプライ4の巻き上げ部の外側に接しつつ、チェーファ6の巻き上げ端6Eにまで到達している。
【0031】
ここで、カーカスプライ4の延在方向に直交しつつ、カーカスプライ4の巻き上げ端4Eを通る基準線BLを想定する。この基準線BL上において、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側におけるゴムパッド13の厚みTUと、カーカスプライ4の巻き上げ部の外側におけるゴムパッド13の厚みTOとが、1.5≦TO/TU≦3.0の関係を満たすことが好ましい。基準線BL上におけるゴムパッド13の厚み13T(厚みTU+厚みTO+巻き上げ端4Eの厚み)は、例えば4〜8mmに設定される。
【0032】
下部フィラー11の上端11Tの高さ11Hを基準にして、カーカスプライ4の巻き上げ部と下部フィラー11との接点Pまでの径方向距離をL1とし、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側におけるゴムパッド13の終端位置までの径方向距離をL2とするとき、これらが0.3≦L2/L1<1.0の関係を満たすことが好ましい。この比L2/L1を0.3以上にすることで、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側箇所にゴムパッド13を十分に入り込ませて、セパレーションを的確に抑制することができる。
【0033】
また、下部フィラー11の上端11Tからゴムパッド13までのタイヤ軸方向距離として測定される厚みT1と、その上端11Tからカーカスプライ4の巻き上げ部までのタイヤ軸方向距離として測定される厚みT2とが、0.05<(T2−T1)/T2<0.5の関係を満たすことが好ましく、0.3≦(T2−T1)/T2<0.5の関係を満たすことがより好ましい。
【0034】
上記の比(T2−T1)/T2が0.05を上回ることにより、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側箇所におけるゴムパッド13の厚みを確保して、その内側箇所でのセパレーションを適切に抑制することができる。また、この比(T2−T1)/T2が0.5を下回ることにより、ゴムパッド13が厚くなり過ぎることを避け、上部フィラー12を軟質のゴムで形成したことによる効果を確保して、巻き上げ端4Eへの応力集中を防ぐことができる。
【0035】
図4は、本発明の別実施形態におけるビード部1を示す断面図である。この例では、ゴムパッド13が、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側で、タイヤ径方向内側に向けて厚みを増しつつ下部フィラー11に接している。かかる構成によれば、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側をゴムパッド13で覆いつつ、そのゴムパッド13の厚みを確保して、カーカスプライ4の巻き上げ部の内側箇所でのセパレーションを効果的に抑制できる。
【0036】
本発明の空気入りラジアルタイヤは、ビード部1を上記の如く構成すること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造、製法などが何れも本発明に採用することができる。例えば、カーカスプライ4は少なくとも1枚が配設されてあればよく、複数枚を重ねて配設することも可能である。
【0037】
本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、ビード部の耐久性に優れるため、トラックやバス、産業車両、建設車両などの車両重量が重い車両に使用される重荷重用空気入りラジアルタイヤとして有用である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示すため、ビード部の耐久性試験を行ったので、以下に説明する。試験に供したタイヤのサイズは11R22.5 16PRであり、サイズ7.5×22.5のリムに装着した。
【0039】
耐久性試験では、内圧800kPa及び荷重29.4kNの条件下で20万kmを走行させた後にタイヤを解体し、カーカスプライの巻上げ部の内側におけるカバレッジ(プライコードを被覆するゴムの面積率)を測定した。比較例の結果を100としたときの指数で評価を行い、数値が大きいほどカバレッジが大きく、セパレーションの発生及び進展が抑制されていることを示す。
【0040】
図5に示すように、ゴムパッド13がカーカスプライ4の巻き上げ部の内側において下部フィラー11の上端11Tよりもタイヤ径方向内側に延びていないこと以外は、実施例1と構造が同じものを比較例とした。図5では、前述の実施形態で説明した部材に相当する部材には、同一の符号を付している。また、図2に示すビード構造を備えるものを実施例1とし、図4に示すビード構造を備えるものを実施例2とした。評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1のように、実施例1,2では、比較例よりもカバレッジが改善されており、カーカスプライの巻き上げ部の内側箇所でのセパレーションを抑制して、ビード部の耐久性を向上できている。しかも、実施例2では、実施例1よりも良好な結果が得られており、図4の如き形状のゴムパッドによって改善効果が高められている。
【符号の説明】
【0043】
1 ビード部
1a ビードコア
1b ゴムフィラー
4 カーカスプライ
4E カーカスプライの巻き上げ端
4H カーカスプライの巻き上げ高さ
6 チェーファ
6E チェーファの巻き上げ端
6H チェーファの巻き上げ高さ
11 下部フィラー
11T 下部フィラーの上端
12 上部フィラー
13 ゴムパッド
20 リム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード部に埋設されたビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に配置されたゴムフィラーと、前記ビードコアの回りで内側から外側に巻き上げられたカーカスプライと、前記ビードコアの回りで巻き上げられて前記カーカスプライの外側に配置されたチェーファとを備え、
前記ゴムフィラーが、前記ビードコアを包囲する断面丸型の下部フィラーと、その下部フィラーのタイヤ径方向外側に配置され、前記下部フィラーよりもゴム硬度が低い上部フィラーとを有する空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記チェーファが金属コードを含んでなるとともに、前記カーカスプライの巻き上げ端が、前記下部フィラーの上端及び前記チェーファの巻き上げ端よりもタイヤ径方向外側に配置されていて、
前記カーカスプライの巻き上げ端を挟み込むようにして、前記上部フィラーよりもゴム硬度の高いゴムパッドが設けられ、そのゴムパッドが、前記カーカスプライの巻き上げ部の内側に接しつつ前記下部フィラーの上端よりもタイヤ径方向内側に延びていることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記下部フィラーのゴム硬度が85〜95、前記上部フィラーのゴム硬度が56〜66、前記ゴムパッドのゴム硬度が68〜78である請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
リム基準径を基準として、前記カーカスプライの巻き上げ高さに対する前記下部フィラーの上端の高さの比と、前記カーカスプライの巻き上げ高さに対する前記チェーファの巻き上げ高さの比とが、それぞれ0.5〜0.8である請求項1又は2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記下部フィラーの上端から前記ゴムパッドまでのタイヤ軸方向距離として測定される厚みT1と、前記下部フィラーの上端から前記カーカスプライの巻き上げ部までのタイヤ軸方向距離として測定される厚みT2とが、0.05<(T2−T1)/T2<0.5の関係を満たす請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
前記ゴムパッドが、前記カーカスプライの巻き上げ部の内側で、タイヤ径方向内側に向けて厚みを増しつつ前記下部フィラーに接する請求項1〜4いずれか1項に記載の空気入りラジアルタイヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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