説明

空気圧送式潤滑油供給装置及びその給油配管のリーク検出方法

【課題】 給油配管で生じたリークを確実且つ安価に検出することを目的とする。
【解決手段】 潤滑油を、圧縮空気により給油配管2cを介して潤滑対象物3に供給するようにした空気圧送式の潤滑油供給装置において、前記給油配管2cに、潤滑油の流動方向に間隔をあけて設けられ且つ圧縮空気の供給を止めたときに前記給油配管2c内の圧力を保持可能な2つの圧力保持弁20a,20bと、2つの圧力保持弁20a,20b間の給油配管2cの圧力を検出する圧力検出器21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油給油装置、特に、圧縮空気を利用して潤滑油を潤滑対象物まで送るようにした空気圧送式(オイルエア潤滑式)の潤滑油給油装置及びその給油配管のリーク検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鋼所等で用いられる圧延機には、圧延ローラ等の多数のローラが配置され、各ローラの回転軸が軸受により支持されている。この軸受の潤滑には、微量のオイルを継続的に供給することが効果的であるため、下記特許文献1に記載されているような、オイルエア潤滑式の潤滑油供給装置が用いられている。
【0003】
この潤滑油供給装置は、メインユニットから混合器へ潤滑油及び圧縮空気を供給すると共に、潤滑油と圧縮空気とを混合してオイルエアを生成し、給油配管を介して該オイルエアを潤滑対象である軸受に供給するものである。
【0004】
【特許文献1】特開平8−21598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気圧送式の潤滑油供給装置では、給油配管や継手の破損等により空気のリークが生じると、適切にオイルエアを送ることができず、潤滑不足を生じる恐れがあり、破損した部分からオイルが吹き出してしまう恐れもある。したがって、如何にリークを検出するかが重要な課題となっている。
【0006】
このリークを検出する方法の1つとして、給油配管内の圧力を圧力計によって測定することが考えられる。リークが生じると給油配管内の圧力が低下するからである。
【0007】
しかし、給油配管内の圧力低下が僅かである場合、給油配管におけるリーク以外に、潤滑対象物である軸受のシールの劣化が原因として考えられる。軸受を収納する軸箱には、軸に摺接するシールが設けられており、このシールによって軸箱内に供給された潤滑油をある程度保持できるようにしている。このシールが劣化すると、軸箱から放出される空気量が大きくなるからである。
【0008】
したがって、単に給油配管の圧力を測定するだけのリーク検出方法は、給油配管内の圧力低下が極端に大きい場合には有用であるが、給油配管内の圧力低下が僅かである場合には、原因が給油配管におけるリークなのかシールの劣化なのかを特定することができない。また、僅かな圧力低下を検出するには高性能の圧力計が必要となり、コストが増大するという問題もある。
【0009】
一方、上記特許文献1では、リークを検出するために、潤滑対象である軸受の直前に流体通過検出器を配設し、この流体通過検出器によって圧縮空気及び潤滑油の通過を検出するようにしている。
【0010】
この流体通過検出器は、給油配管に連続してオイルエアの流路を形成するアクリル性のチューブと、該チューブ内に収容されたフロートボールと、フロートボールを潤滑油供給方向の上流側へ向けて付勢するバネとによって構成されている。給油配管に正常にオイルエアが流れていると、その圧力によりフロートボールがバネに抗して下流側に移動し、流体通気検出器よりも上流側で給油配管にリークが生じると、抵抗が少なくなるためフロートボールが上流側に移動する。このフロートボールの動きを目視により又は機械的、光学的に検出するものとなっている。
【0011】
この技術の場合、軸受のシールが劣化すると、給油配管を流れるオイルエアの流速が速くなり、フロートボールはバネに抗して下流側に移動する。したがって、給油配管のリークとは異なった挙動をとるため、両者の判別が可能である。
【0012】
しかし、この流体通過検出器は、軸受に潤滑油が供給されているか否かを判断するものであり、流体通過検出器と軸受との間で給油配管にリークが生じると潤滑油が供給されているか否かを判断できないので、軸受の直前に設けなければならない。軸受は圧延機等の装置内にあるため、軸受の直前に流体通過検出器を設けると目視によってフロートボールを検出するのは実質的に不可能である。フロートボールの動きを機械的、光学的に検出する場合も、流体通過検出器と検出用のモニター等との間に機械的な接続や配線、配管等を施さなければならないため設備が大がかりとなり、コストが増大する。
【0013】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、給油配管で生じたリークを確実且つ安価に検出することができる、空気圧送式潤滑油供給装置及びそのリーク検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、潤滑油を、圧縮空気により給油配管を介して潤滑対象物に供給するようにした空気圧送式の潤滑油供給装置において、前記給油配管に、潤滑油の供給方向に間隔をあけて設けられ且つ圧縮空気の供給を止めたときに前記給油配管内の圧力を保持可能な2つの圧力保持弁と、2つの圧力保持弁間の給油配管の圧力を検出する圧力検出器と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記圧力保持弁が、潤滑対象物への圧縮空気及び潤滑油の流れを許容するとともに逆方向の流れを阻止する逆止弁により構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の空気圧送式潤滑油供給装置における給油配管のリーク検出方法であって、圧縮空気の供給を一時的に中断するとともに、中断中の給油配管の圧力を圧力検出器により検出し、その圧力の経時的変動によってリークの有無を判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明により給油配管のリークの検出を行うには、圧縮空気の供給を止め、2つの圧力保持弁によりその間の給油配管内の圧力を保持し、その圧力を圧力検出器で検出する。給油配管にリークが生じていない場合、時間の経過に伴う圧力の変動は小さく、徐々に圧力は低下する。これに対し、給油配管にリークが生じていると、給油配管内の圧力は急速に低下する。したがって、この圧力変動の相違からリークの有無を正確に判断することができる。
【0018】
(2)給油配管のリークを検出するために、2つの圧力保持弁と圧力検出器を備えればよいので、装置を簡単且つ安価に構成することができる。
【0019】
(3)圧力検出器は、2つの圧力保持弁の間であればどの位置に設けてもよいので、上流側の圧力保持弁を混合器に近づけて配置した場合には、潤滑対象物からより離れた位置に圧力検出器を設けることができ、圧力検出器のモニタリングが容易となる。
【0020】
(4)圧力保持弁として逆止弁を用いると、装置をより安価に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の実施形態にかかる潤滑油供給装置のシステム全体の構成図である。図1においては、1は混合器であり、メインユニット15から供給される圧縮空気と潤滑油とを混合してオイルエアを生成する。混合器1には、潤滑油の供給口1aと圧縮空気の供給口1bが設けられると共に、オイルエアの出口が複数設けられている。図例では3つの出口1c,1d,1eが設けられている。
【0022】
各出口1c,1d,1eにはそれぞれ給油配管2c,2d,2eが接続されており、各給油配管2c,2d,2eは、それぞれ潤滑対象物3に直接的に又は分配器4を介して間接的に接続されている。本実施形態の潤滑対象物3は、圧延機における圧延ロール等を回転自在に支持する軸受である。
【0023】
給油配管の1つ2dには、オイルエアを複数に分配する分配器4が設けられている。図例の分配器4は、供給口4aから流入したオイルエアを4等分して分配出口4b,4c,4d,4eから排出するものであり、各分配出口4b,4c,4d,4eには分配給油配管5b,5c,5d,5eが接続され、各分配給油配管5b,5c,5d,5eはそれぞれ潤滑対象物に接続されている。
【0024】
潤滑対象物である軸受3は、図2に示すように、軸箱6内に形成された空間に収納されている。軸箱6には、回転軸7に摺接するシール装置8が設けられており、該シール装置8によって、軸受3の配置空間がほぼ密閉され、該配置空間に供給されたオイルをある程度保持できるようになっている。
【0025】
図1に示すように、軸箱6には潤滑油の供給口6aと排出口6bとが設けられ、供給口6aには前記給油配管2c,2e,5b〜5eが接続され、排出口6bには、ドレン配管9が接続されており、軸受3に供給された潤滑油はドレン配管9を介してオイルタンク10に戻るようになっている。ただし、コストの関係からドレン配管9を施工しない場合もあり、この場合、オイルエアの空気は前記シール装置8(図2)のシール圧に打ち勝って大気に放出され、排出口6bは閉塞されるか最初から備えない構成となる。
【0026】
上記構成の潤滑油供給装置には、給油配管2c〜2e,5b〜5eのリークを検出する検出手段が設けられている。該検出手段は、給油配管2c〜2e,5b〜5e内の圧力を保持する圧力保持機構20と、給油配管2c〜2e,5b〜5e内の圧力を検出する圧力検出器21と、リークが検出された場合にそのことを報知する報知手段(図示略)とを備えている。
【0027】
本実施形態の圧力保持機構20には、逆止弁(圧力保持弁)20a、20bが用いられている。この逆止弁20a,20bは、給油配管2c〜2e,5b〜5eの上流側と下流側との2カ所に設けられている。上流側の逆止弁20aは、混合器1の出口1c〜1e付近に設けられており、軸受3側へのオイルエアの流動を許容し、その逆を阻止するものである。下流側の逆止弁20bは、軸受3の上流側近傍又は軸箱6に直接的に設けられており、軸受3側へのオイルエアの流動は許容するが、その逆は阻止するものである。
【0028】
圧力検出器21は、圧力計、圧力スイッチ、圧力センサー等により構成され、上流側の逆止弁20aと下流側の逆止弁20bとの間に設けられている。報知手段は、警報、ランプ等によって構成されている。
【0029】
〔本実施形態の作用〕
以下、本実施形態の潤滑油供給装置の作用を説明する。
本実施形態の潤滑供給装置は、潤滑のための通常運転と、リーク検出のための検査運転とを行うようになっている。通常運転は、潤滑油と圧縮空気とを混合器1に供給すると共に混合器1からオイルエアとして排出する。オイルエアは、給油配管2c〜2e,5b〜5e及び分配器4を経て潤滑対象物である軸受3の軸箱6へ供給される。軸受3を潤滑した後のオイルはドレン配管9からオイルタンク10に戻される。
【0030】
通常運転は、潤滑が必要な期間継続的に行うが、検査運転は、通常運転を一時的に停止して行う。具体的にはメインユニット15にて圧縮空気の供給を停止する。
【0031】
オイルエアは、オイルの液滴を圧縮空気の流れによって給油配管2c〜2e,5b〜5eの内壁面に沿って移動させるものであるため、例えば、管継手やパイプの破損に伴う空気のリークや、配管途中に挿入するマルチクランプ等からの空気のリークがあると、これが即潤滑油の供給停止又は低下につながり、潤滑不足に陥る可能性がある。特に、圧延機や連続鋳造設備といった重機械の軸受は、数百個にも及ぶため、人間が目視によってリーク箇所をチェックすることは不可能である。
【0032】
給油配管2c〜2e,5b〜5eが破損すれば、大量の圧縮空気が放出し、配管内圧力が急降下するため、通常運転中であっても圧力検出器21によってリークの検出は可能である。しかし、それ以外の僅かな漏れによる圧力降下現象が発生しても、それが空気漏れによるものなのか、シール装置の劣化によるものなのか判断できない。これは、後述する実験1によっても明らかである。
【0033】
したがって、本発明の潤滑油供給装置では、以下の検査運転を行うことにより僅かなリークであっても検出し、潤滑対象物3への給油不足を防止している。
【0034】
具体的な検出方法は次の通りである。
(1)まず、通常運転を行っている途中に、圧縮空気の供給を一定時間(数分程度)停止する。
(2)圧縮空気の供給を停止している間、圧力検出器21によって2つの逆止弁20a,20b間の給油配管2c〜2e,5b〜5e内の圧力を測定する。
(3)給油配管2c〜2e,5b〜5e内の圧力は、リークの有無に関わらず時間の経過と共に低下する。しかし、リークがあると、僅かな漏れであっても正常状態よりも急速に圧力が低下する。このことは、後述する実験2から明らかである。圧力低下が急速であり、所定時間以内(例えば、30秒〜1分以内)に圧力が0になった場合には、給油配管にリークが有ると判断する。
(4)給油配管にリークが有ると判断すると、報知手段により警報を発する。
【0035】
〔本実施形態の効果〕
したがって、本実施形態によれば次の効果を奏する。
(1)通常運転を行っている途中で圧縮空気の供給を止め、2つの圧力保持弁20a,20bにより給油配管2c〜2e,5b〜5e内の圧力を保持し、その圧力を圧力検出器21で検出するとともに、該圧力の経時的変動によりリークの有無を判別しているので、リーク量が僅かであっても確実に給油配管2c〜2e,5b〜5eのリークを検出することができ、シール装置8の劣化と区別することができる。
【0036】
(2)リークを検出するために、各給油配管2c〜2e,5b〜5eに2つの逆止弁20a,20bと圧力検出器21を備えればよいので、装置を簡単且つ安価に構成することができる。
【0037】
(3)圧力検出器21は、2つの逆止弁20a,20bの間であればどの位置に設けてもよいので、上流側の逆止弁20aを混合器1の直後に設けた場合には、潤滑対象物からより離れた位置に圧力検出器21を設けることができ、圧力検出器21のモニタリングが容易となる。
【0038】
(4)圧力保持弁として逆止弁20a,20bを用いると、潤滑油供給装置をより安価に構成することができる。
【0039】
(5)検査運転中、給油配管2c〜2e,5b〜5eに急速な圧力低下が検出されたときに警報を発するようにしているので、オペレータは速やかに異常状態を認識することができ、即座に修復作業に移行することができる。
【0040】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、下記のように適宜設計変更可能である。
(1)圧力保持弁は、逆止弁に限らず開閉弁(電磁弁)を用いてもよい。この場合、検査運転を開始するときに、圧縮空気の供給停止と同時に電磁弁を閉じ、上流側と下流側の電磁弁の間で給油配管の圧力を保持すればよい。
【0041】
(2)給油配管に分配器4を設けた場合、下流側の逆止弁20bを分配器4の上流側近傍に配置することもできる。この場合、分配器4よりも上流側のリークを検出することができる。
【0042】
(3)潤滑対象物とは、軸受に限定されず、各種装置やその部品等の潤滑することができる部位をいう。
【0043】
〔実験1〕
本願出願人は、図3に示す実験装置を用い、通常運転中、給油配管に人為的にリークを生じさせ、給油配管内の圧力変動を調べた。
【0044】
図3において、混合器1への圧縮空気の供給配管31には、減圧弁32と、供給圧力セット用の圧力計33と、供給空気量をセットする流量計34と、圧縮空気の供給をオンオフするソレノイドバルブ35が設けられている。減圧弁32は、0.3MPaに設定されている。供給する圧縮空気量は、25NL/minである。給油配管2cは外径φ6mm、厚さ0.8mm、長さ10mである。逆止弁20aのクラッキング圧は0.005MPa、逆止弁20bのクラッキング圧は0.1MPaである。
【0045】
給油配管2cには分岐配管36が接続されており、分岐配管36には開閉弁37と、流量計38とが設けられている。開閉弁37は、人為的に給油配管2cにリークを発生させるものであり、流量計38は、そのリーク量をセットするものである。また、2つの逆止弁20a,20bの間には、分岐配管36の上流側と下流側とにそれぞれ圧力検出器P1,P2が設けられている。また、下流側の逆止弁20bと軸箱6の間にも圧力検出器P3が設けられている。圧力検出器P3は、実質的に軸箱6内の圧力を検出するものである。
【0046】
図4は、通常運転中における、正常時(リーク無し)とリーク発生時との各圧力計P1,P2,P3の測定値を示す表である。
本実験1では、次の3つのパターンについて、リーク量の変化に応じた各圧力計P1,P2,P3の圧力値を測定した。
〈パターンA〉…圧力検出器P3の圧力(軸箱6内の圧力)が高い場合(リーク量0のとき0.04MPa)
〈パターンB〉…同圧力が中間の場合(同0.03MPa)
〈パターンC〉…同圧力が低い場合(同0.02MPa)
【0047】
軸箱6内の圧力(P3測定値)は、シール装置8の性能が高いほど高圧となる。したがって、パターンAのシール性が最も高く、パターンCのシール性が最も低いといえる。この実験におけるシール性の違いは、シール装置8の寸法公差により生ずるものであるが、実際の使用状態では、シール装置の劣化によってシール性に変化を生ずる。したがって、この実験を実際の使用状態に置き換えた場合、パターンA〜Cの順でシール装置が劣化していると考えることができる。
【0048】
図4には、ソレノイドバルブ35を開き、リーク用開閉弁37を閉じた場合、すなわち、通常運転中でリーク量が0の場合の各圧力計P1,P2,P3の測定値が、各パターンA,B,Cの1行目に示されており、リーク用開閉弁37を開いて、リーク量を5NL/min、8NL/min、10NL/minと段階的に増やした場合の各圧力計P1,P2,P3の測定値が、それぞれ2〜4行目に示されている。
【0049】
図4を分析すると、例えば、リークは生じていないがシール性能が低い場合(パターンCのa欄)の圧力計P1の測定値は0.143MPaであるのに対し、シール性能は高いがリーク量が10NL/minである場合(パターンAのb欄)の圧力計P1の測定値は0.154となっている。すなわち、パターンAではリークが生じているにも関わらず、パターンCよりも測定値が高くなっている。圧力計P2,P3の測定値についても同様の傾向がある。
【0050】
したがって、各圧力計P1,P2,P3の測定値が低いからといって、リークが生じていると断定することはできず、その逆も断定できない。すなわち、通常運転中の各圧力計P1,P2,P3の測定値によって、給油配管のリークとシールの劣化とを判別することは困難であることが理解できる。
【0051】
〔実験2〕
次に、本出願人は、図3に示す実験装置を用い、ソレノイドバルブ35を閉鎖して圧縮空気の供給を一時的に停止した場合の圧力計P1の測定値を、パターンA〜Cについて調べた。さらに、ソレノイドバルブ35を閉鎖し、リーク用開閉弁37を開いてリークを発生させた場合の圧力計P1の測定値を、パターンA〜Cについて調べた。そして、これら2つの条件と、リークの無い通常運転時との、圧力計P1の測定値の経時的変動を対比して、図5のグラフにまとめた。
【0052】
図5中、横軸は圧縮空気の供給を停止してからの経過時間、縦軸は圧力計P1の測定値である。図5において、リークの無い通常運転時は、どのパターンでも圧力計P1の測定値が時間の経過に関わらず一定値をとっている。リークの無い状態で圧縮空気を停止した場合(検査運転を行った場合)、どのパターンでも、緩やかではあるが時間の経過とともに圧力計P1の測定値は低下している。しかし、30分経過後も0.03MPa以上の圧力は保持されている。そして、リークが有る状態(リーク量:5NL/min)で検査運転を行った場合には、どのパターンでも急速に圧力が低下し、30秒経過するまでに圧力値は0になっている。これは、リーク量の多少や給油配管2cの長さに関わらず略同様の傾向となる。
【0053】
すなわち、圧縮空気を停止すると、リークが有るか無いかによって圧力変動の様子が明確に異なるものとなり、リークの有無の判断に、圧縮空気の供給を停止し、且つ、給油配管2cの圧力を逆止弁20a,20bによって保持することが有効であることが理解できる。
【0054】
図5において、リークがあり且つ圧縮空気を停止した場合には、30秒以内に圧力値が0になっている。また、配管長さやリーク量等の条件が変わったとしてもほぼ1分以内には圧力値が0になる。したがって、本発明によるリーク検出方法では、リークを検出するために圧縮空気を停止する時間(通常運転を停止する時間)は、1〜2分程度で十分である。
【0055】
一方、混合器1への潤滑油送出は間欠的で、3〜5分間に1回程度であり、潤滑油供給量はφ200mm程度の軸受に対して約1.5cc/hrである。したがって、1〜2分程度の圧縮空気を停止したとしても、軸受3への潤滑不足を招くことはない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明な、圧延機、連続鋳造装置等の多数のローラを具備した装置の潤滑に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る潤滑油供給装置のシステム全体の構成図である。
【図2】潤滑対象である軸箱の側面断面図である。
【図3】実験装置を示す構成図である。
【図4】実験結果を示す表である。
【図5】実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 混合器
3 軸受
2c〜2e 給油配管
5b〜5e 分配給油配管
21 圧力検出器
20a 上流側の逆止弁(圧力保持弁)
20b 下流側の逆止弁(圧力保持弁)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を、圧縮空気により、給油配管を介して潤滑対象物に供給するようにした、空気圧送式潤滑油供給装置において、
前記給油配管に、潤滑油の供給方向に間隔をあけて設けられ且つ圧縮空気の供給を止めたときに前記給油配管内の圧力を保持可能な2つの圧力保持弁と、2つの圧力保持弁間の給油配管の圧力を検出する圧力検出器と、を備えていることを特徴とする空気圧送式潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記圧力保持弁が、潤滑対象物への圧縮空気及び潤滑油の流れを許容するとともに逆方向の流れを阻止する逆止弁により構成されている、請求項1記載の空気圧送式潤滑油供給装置。
【請求項3】
請求項1記載の空気圧送式潤滑油供給装置における給油配管のリーク検出方法であって、圧縮空気の供給を一時的に中断するともに、中断中の給油配管の圧力を圧力検出器により検出し、その圧力の経時的変動によってリークの有無を判別することを特徴とする、リーク検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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