説明

空気洗浄機

【課題】換気量を抑え、かつ厨房等の蒸気発生源のある室内の環境の改善を図るために、調理汚染物等を含む空気を効率的に洗浄し得る空気洗浄機を提供する。
【解決手段】蒸気発生源の上方部に配設され、発生する蒸気および/または汚染物を含む空気を洗浄するためのフード型空気洗浄機であって、該空気を吸引口から取り入れて洗浄し、洗浄された清浄空気を吹出口から導出する空気洗浄塔;ならびに空気洗浄塔の吹出口から導出された清浄空気を吸引する吸引口および吹き出すための吹出口を有する送風機、をフード内に備えており、該空気洗浄塔は水を噴霧する噴霧ノズルと空気を通過させるフィルターを備え、かつ該フード表面には該送風機から吹き出される洗浄空気を導出するための空気孔を有することを特徴とする空気洗浄機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器、食器洗浄器等の蒸気発生源の使用に伴なって発生する蒸気および/または汚染物を室内の空気から除去し、室内等に循環させうる空気洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば厨房内で加熱調理を行うと、水蒸気、油滴および匂い成分微粒子等の混合気体である調理排ガスが被加熱調理物から発生する。このような調理排ガスを厨房内に放置、浮遊させると、周囲環境に悪影響を及ぼすので、通常、加熱調理器の上方部には換気扇を備えたフードが取付けられている。換気扇を作動し、上昇する調理排ガスをフード内に収集して、屋外に放出する。
【0003】
そのため、家屋の建築時に、調理室の加熱調理器配置場所の壁面上部に、屋外に連通する開口部が設けられ、ここに換気扇が取付けられ、さらに換気扇はフードで覆われる。しかし、開口部が屋外に対向していない場合も多く、この場合には上記開口部にメーンの排気ダクトから分岐されるダクト端部を接続し、さらに換気扇を備えたフードで覆う。排気ダクトは複数の厨房と連通され、調理排ガスはその開口端から屋外に放出される。
【0004】
しかしながら、厨房の多くは、熱気、煙の充満、油煙による汚れやドラフトの問題等を抱えている。厨房環境の向上のためには、必要な換気量が確保されることが必要であるが、集合ダクトで十分な排気が困難等の構造上の問題、排気・空調設備のイニシャルおよびランニングコストの問題、さらにはエコロジーの点からも換気量の抑制が求められること等から、適切な換気量がとれないまま放置されていることが多い。
【0005】
ガス厨房の場合、建築基準法により必要換気量が定められており、フードの形状により異なるが、燃焼排ガスを排気するために必要な設定換気量として理論燃焼量の40倍で計算されることが多い。しかしながら、実際には油煙や水蒸気、調理の臭いのような調理汚染物も処理しなければならない。無風に近い状態であれば、40倍の設定で充分であろうが、厨房内は無風ではないので、40倍では必ずしも充分とはいえない。さらに、電気厨房の場合には必要換気量は定められておらず、20倍程度で設定されることが多いが、無風でない限り調理汚染物の処理は難しい。
【0006】
電気式食器洗浄機や電磁調理器等のように、厨房内には燃焼排ガスは発生せず、蒸気、調理汚染物だけが発生する機器も多い。このような機器の上方部にはフードを取り付け、排気ファンを設置するのが通常であり、調理汚染物の発生の有無にかかわらず常時稼動している場合が多く、無駄に排気量を増やしているともいえる。換気量を抑えるという視点からは、非常に効率の悪い方法といえるが、水蒸気、油煙、調理臭を放置すれば、厨房環境の悪化を招くため、フードと排気ファンの設置は当然のこととされている。
【0007】
しかしながら、燃焼排ガスが発生しないのであれば、あえて調理汚染物を排気して換気量を増やすよりも、厨房内で調理汚染物を取り除くことが望ましい。
【0008】
従来、厨房内で使用される空気洗浄機として電気集塵、集塵フィルター、オゾン等を用いた種々の空気洗浄機が提案され、用いられているが、一般的な室内とは異なり、高温で油煙の発生が多い厨房という環境を考えるとき、水を使った湿式の空気洗浄機が最適であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決して、換気量を抑え、かつ厨房等の蒸気発生源のある室内の環境の改善を図るために、調理汚染物等を含む空気を効率的に洗浄し得る空気洗浄機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するために以下の発明を提供する。
【0011】
(1)蒸気発生源の上方部に配設され、発生する蒸気および/または汚染物を含む空気を洗浄するためのフード型空気洗浄機であって、該空気を吸引口から取り入れて洗浄し、洗浄された清浄空気を吹出口から導出する空気洗浄塔;ならびに空気洗浄塔の吹出口から導出された清浄空気を吸引する吸引口および吹き出すための吹出口を有する送風機、をフード内に備えており、該空気洗浄塔は水を噴霧する噴霧ノズルと空気を通過させるフィルターを備え、かつ該フード表面には該送風機から吹き出される洗浄空気を導出するための空気孔を有することを特徴とする空気洗浄機;
(2)蒸気発生源が加熱調理器または食器洗浄器である上記(1)に記載の空気洗浄機;
(3)送風機が空気洗浄塔に接して配置される上記(1)もしくは(2)に記載の空気洗浄機;
(4)送風機が、該清浄空気を該空気洗浄塔の吹出口から該送風機の吸引口に導入するための通気ダクトを介して空気洗浄塔に配置される上記(1)もしくは(2)に記載の空気洗浄機;
(5)通気ダクト内に吸着材を配置してなる上記(4)に記載の空気洗浄機;
(6)噴霧ノズルがフィルターの近傍に取り付けられ、フィルターを通過する空気が噴霧ノズルからの噴霧水により洗浄され、空気中の蒸気および/または汚染物が噴霧水に取り込まれる上記(1)〜(5)のいずれかに記載の空気洗浄機;
(7)噴霧ノズルは給水管に接続され、送風機の稼動により給水が行われるように構成される上記(1)〜(6)のいずれかに記載の空気洗浄機;
(8)さらにフィルターが空気洗浄塔内の上部に設けられる上記(1)〜(7)のいずれかに記載の空気洗浄機;
(9)フィルターがバッフルフィルター、パンチングフィルター、発泡金属フィルター、メッシュフィルター、スリットフィルターまたはバッフルスリットフィルターである上記(1)〜(8)のいずれかに記載の空気洗浄機;
(10)空気中の蒸気および/または汚染物が取り込まれた水を排水するための排水口を空気洗浄塔の下部に設けてなる上記(1)〜(9)のいずれかに記載の空気洗浄機;
(11)空気孔から導出された洗浄空気が室内に循環される上記(1)〜(10)のいずれかに記載の空気洗浄機;ならびに
(12)噴霧ノズルは水が大略水平方向に噴射されるように配置される上記(1)〜(11)のいずれかに記載の空気洗浄機、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸気および/または汚染物を含む空気がフード内の洗浄塔を通過する際に、蒸気および/または汚染物の除去と高温空気の温度低下を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の空気洗浄機は、蒸気発生源の上方部に配設され、発生する蒸気および/または汚染物を含む空気を洗浄するためのフード型空気洗浄機である。蒸気発生源としては加熱調理器、食器洗浄器等の厨房内設備が上げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の空気洗浄機は、該空気を吸引口から取り入れて洗浄し、洗浄された清浄空気を吹出口から導出する空気洗浄塔;ならびに空気洗浄塔の吹出口から導出された清浄空気を吸引する吸引口および吹き出すための吹出口を有する送風機、をフード内に備えてなる。
【0015】
そして、空気洗浄塔は水を噴霧する噴霧ノズルと空気を通過させるフィルターを備え、かつフード表面には送風機から吹き出される洗浄空気を導出するための空気孔を有する。
【0016】
送風機は、空気洗浄塔に接してコンパクトに配置されてもよいし、または清浄空気を空気洗浄塔の吹出口から該送風機の吸引口に導入するための通気ダクトを介して空気洗浄塔に配置されてもよい。通気ダクトを設ける場合には、通気ダクト内に活性炭等の吸着材を配置して、空気中に微量残存する臭い成分等を吸着することができる。
【0017】
空気洗浄塔において、噴霧ノズルはフィルターの近傍に取り付けられ、フィルターを通過する空気が噴霧ノズルからの噴霧水により洗浄され、空気中の蒸気および/または汚染物(油分および塵埃等)が噴霧水に取り込まれる。噴霧ノズルは水が大略水平方向に噴射され、フィルターに対し水平方向に流量が均一になるようにするのが好適である。さらに、噴霧ノズルは給水管に接続され、電磁弁等を用いて送風機の稼動により給水が行われるように構成するのが好適である。
【0018】
フィルターとしては、バッフルフィルター、パンチングフィルター、発泡金属フィルター、メッシュフィルター、スリットフィルター、バッフルスリットフィルター等が挙げられるが、通過点が小さなフィルターにより、収縮膨張運動を起こし、勢いが増した空気と、引力により落下しようとする水との衝突により油分等を水に取り込む効率の点から、パンチングフィルター、メッシュフィルターが好適である。
【0019】
空気中の蒸気および/または汚染物が取り込まれた水は空気洗浄塔の下部に落下するので、これを除去するための排水口を空気洗浄塔の下部に設けるのが、好適である。
【0020】
一方、さらに本発明の空気洗浄塔内の上部、たとえば吹出口近傍に第2のフィルターを設けることにより、上記フィルターを通過した清浄空気中に残存する水分を衝突により除去しうる。第2のフィルターとしてはバッフルフィルター、バッフルスリットフィルターが好適である。
【0021】
本発明の空気洗浄機において、フード表面には送風機の吹出口から吹き出される洗浄空気は、フード表面に設けられた空気孔から導出され、室内に循環されるが、この循環を繰り返すことにより、洗浄力は増大することになる。
【0022】
以下、本発明の空気洗浄機の実施の形態を図面に基づいてさらに詳細に説明する。図1は、本発明の空気洗浄機の厨房における一実施形態を空気の流れに沿って概略的に示す図である。図2は、図1の空気洗浄塔(3)の構造を示す斜視図である。空気洗浄機はフード型で加熱調理器の上方部に取り付けられており、フード(1)の内部に送風機(2)および空気洗浄塔(3)ならびにそれらを接続する通気ダクト(4)を配した構造からなる。このように、フード型で調理汚染物の発生器具の上方部に取り付けることにより、上昇気流により調理汚染物を自然に捕捉しうる。フード(1)の上部面および側面には、洗浄後の空気を室内もしくは天井内に放散するための空気孔(6)が開口され、送風機の吸引口(7)と洗浄塔の吹出口(8)を通気ダクト(4)で接続し、通気ダクト(4)の一部には活性炭からなる吸着材(5)を配置されている。空気洗浄塔(3)の底面は開口し、排水口(9)を設けたトレイ(10)を取り付け、底面の開口とトレイ(10)との空間を吸引口(11)として空気流(16)の空気を取り入れる。空気洗浄塔(3)の内部には、下部に噴霧ノズル(12)およびフィルター(13)が設けられており、噴霧ノズル(12)からの噴霧水中を高温空気が通過する際に熱が奪われる。さらに、空気がフィルター(13)を通過する際には、落下する噴霧水が衝突して混合され、油分や塵埃が水に取り込まれ、排水口(9)から排水される。吸引される空気から水分を除去するために、空気洗浄塔(3)の上部にもフィルター(13’)を設けるが好適である。空気洗浄塔(3)の上面の開口を吹出口(8)として洗浄後の空気が通気ダクト(4)に吹き出される。
【0023】
図3は、本発明の空気洗浄機の給排水についての実施形態例を示す斜視図である。トレイ(10)に設けられた排水口(9)は配水管(14)に接続され、厨房排水から油分を取り除いて下水に流すためのグリーストラップへ排水するように配管される。給水は噴霧ノズル(12)と給水管(15)を接続し、さらに給水管(15)の途中に電磁弁を配し、送風機(2)と接続して、送風機(2)の稼動により給水が行われるように構成される。通気ダクト(4)には、主として臭い成分を吸着除去するために吸着材(5)を内蔵させるのが好適である。空気洗浄塔(3)を通過して、油分が除去された状態で吸着材を通過するので、吸着材の目詰まりを防ぎ、性能を長時間持続させることができる。しかし、吸着材(5)の交換のために通気ダクト(4)を取り外し可能な構造とし、さらにフード(1)本体に点検口を設けるのが好適である。
【0024】
図4は、図1で示される実施形態例が送風機(2)および空気洗浄塔(3)ならびにそれらを接続する通気ダクト(4)を配した構造であるのに対して、送風機(2)および空気洗浄塔(3)が直接に接続された構造である実施形態例を概略的に示す図である。すなわち、この実施形態例においては通気ダクト(4)を用いず、清浄空気は空気洗浄塔(3)の吹出口(8)から送風機の吸引口(7)に導入され得るので、コンパクトな空気洗浄機を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、換気量を抑え、かつ厨房等の室内環境の改善を図るために、調理汚染物等を含む空気を効率的に洗浄し得る空気洗浄機を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の空気洗浄機の一実施形態を空気の流れに沿って概略的に示す図。
【図2】図1の空気洗浄塔(3)の構造を示す斜視図。
【図3】本発明の空気洗浄機の給排水についての実施形態例を示す斜視図。
【図4】本発明の空気洗浄機の一実施形態を空気の流れに沿って概略的に示す図。
【符号の説明】
【0027】
1 フード
2 送風機
3 空気洗浄塔
4 通気ダクト
5 吸着材
12 噴霧ノズル
13、13’ フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生源の上方部に配設され、発生する蒸気および/または汚染物を含む空気を洗浄するためのフード型空気洗浄機であって、
該空気を吸引口から取り入れて洗浄し、洗浄された清浄空気を吹出口から導出する空気洗浄塔;ならびに空気洗浄塔の吹出口から導出された清浄空気を吸引する吸引口および吹き出すための吹出口を有する送風機、をフード内に備えており、該空気洗浄塔は水を噴霧する噴霧ノズルと空気を通過させるフィルターを備え、かつ該フード表面には該送風機から吹き出される洗浄空気を導出するための空気孔を有することを特徴とする空気洗浄機。
【請求項2】
蒸気発生源が加熱調理器または食器洗浄器である請求項1に記載の空気洗浄機。
【請求項3】
送風機が空気洗浄塔に接して配置される請求項1もしくは2に記載の空気洗浄機。
【請求項4】
送風機が、該清浄空気を該空気洗浄塔の吹出口から該送風機の吸引口に導入するための通気ダクトを介して空気洗浄塔に配置される請求項1もしくは2に記載の空気洗浄機。
【請求項5】
通気ダクト内に吸着材を配置してなる請求項4に記載の空気洗浄機。
【請求項6】
噴霧ノズルがフィルターの近傍に取り付けられ、フィルターを通過する空気が噴霧ノズルからの噴霧水により洗浄され、空気中の蒸気および/または汚染物が噴霧水に取り込まれる請求項1〜5のいずれかに記載の空気洗浄機。
【請求項7】
噴霧ノズルは給水管に接続され、送風機の稼動により給水が行われるように構成される請求項1〜6のいずれかに記載の空気洗浄機。
【請求項8】
さらにフィルターが空気洗浄塔内の上部に設けられる請求項1〜7のいずれかに記載の空気洗浄機。
【請求項9】
フィルターがバッフルフィルター、パンチングフィルター、発泡金属フィルター、メッシュフィルター、スリットフィルターまたはバッフルスリットフィルターである請求項1〜8のいずれかに記載の空気洗浄機。
【請求項10】
空気中の蒸気および/または汚染物が取り込まれた水を排水するための排水口を空気洗浄塔の下部に設けてなる請求項1〜9のいずれかに記載の空気洗浄機。
【請求項11】
空気孔から導出された洗浄空気が室内に循環される請求項1〜10のいずれかに記載の空気洗浄機。
【請求項12】
噴霧ノズルは水が大略水平方向に噴射されるように配置される請求項1〜11のいずれかに記載の空気洗浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208004(P2009−208004A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53822(P2008−53822)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(599054307)
【Fターム(参考)】