説明

空気浄化空調装置

【課題】外気の水分含有量に影響されない湿度調整と、外気の浄化とを同時に行える空調装置を提供する。
【解決手段】空調装置は、内部に外気を取り込む外気取り込み口11と外部へ空気を供給する空気供給口12とが形成された筐体1を備える。筐体1の内部に主送風機5と気液接触手段3とデシカントロータ4と再生用ヒータ44および再生用送風機6が配置される。主送風機5は筐体1の内部の空気を空気供給口12から筐体1の外部へ送風する。気液接触手段3は外気取り込み口11から筐体1の内部に取り込んだ外気に洗浄水を接触させる。デシカントロータ4は洗浄水と接触した空気の湿分を除去する。再生用のヒータ44および送風機6はデシカントロータ4を再生する。筐体1の外部の相対湿度計7によって得られる値に基づき、主送風機5と気液接触手段3とデシカントロータ4と再生用のヒータ44および送風機6のうちの少なくとも一つの動作が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅内の湿度調整を行う空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅に使用される空調装置としては、特許文献1に開示されるように、換気運転と調湿運転とを切り替えて住宅内の空気の水分含有状態を調整する装置が提案されている。さらに、特許文献2においては、デシカント材を利用して調湿を可能にするデシカント調湿機を使用した換気システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-145018号公報
【特許文献2】特開2005-291559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2003年7月に施行された改正建築基準法により、居住空間容積に対して0.5回/h以上の換気能力を有する換気設備の設置が義務付けられている。
【0005】
こうした容量の換気を特許文献1や2に開示されるような装置で行うと同時に、住宅内の湿度調整を実施した場合、冬場の外気は乾燥していて水分含有量が少ないため室内の加湿は不充分となり、別途に、加湿機が必要であった。
【0006】
なぜなら、特許文献1や2に開示されるような装置は、換気により屋外から引き込まれる空気と、屋内から排出される空気との間で湿度のやり取りを行い、除湿及び/又は加湿を行う構成となっている。そのため、外気に含まれる水分量で住宅内の湿度調整の限度が決まってしまうからである。
【0007】
また、特許文献1および2に記載の装置では、外気に含まれる花粉、黄砂、汚染物質等がそのまま居住空間に持ち込まれるため、健康に配慮する住宅では別途、空気浄化装置が必要であった。よく知られる濾過フィルターや吸着材などを用いる装置構造では浄化性能を維持するためにその交換や再生などのメンテナンスが大変であった。
【0008】
本発明は、上記背景技術に係る装置の課題を解決できるように、外気の水分含有量に影響されない湿度調整と、外気の浄化とを同時に行える空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の空調装置は、筐体内部に外気を取り込む外気取り込み口と筐体外部へ空気を供給する空気供給口とが形成された筐体を備える。筐体内部には送風手段と気液接触手段と除湿手段と再生手段が配置されており、筐体外部の相対湿度検出手段から得られる値に基づいて、送風手段、気液接触手段、除湿手段および再生手段のうちの少なくとも一つの動作が制御される。なお、送風手段は筐体の内部の空気を空気供給口から筐体の外部へ送風する手段であり、気液接触手段は外気取り込み口から筐体の内部に取り込んだ外気に洗浄水を接触させる手段であり、除湿手段は洗浄水と接触した空気の湿分を除去する手段であり、再生手段は除湿手段を再生する手段である。
【0010】
上記のように構成された空調装置では、気液接触手段により空気が浄化されるとともに、浄化された空気の相対湿度は飽和状態に近くなる。しかし、浄化された空気の湿度は、居住空間内に設置された相対湿度検出手段の値に基づき、送風手段、気液接触手段、除湿手段および再生手段のうちの少なくとも一つの動作を調整することで適切に調整される。その結果、浄化され且つ適切な湿度となった空気が居住空間に供給される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外気の水分含有量に影響されない湿度調整と、外気の浄化とを同時に行うことができる。また、外気の浄化機能においてメンテナンス頻度が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による空調装置の構成を示す模式図。
【図2】図1のデシカントロータの概念的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の空調装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本実施形態の空調装置の構成を示す模式図である。
【0015】
この図に示される形態の空調装置は筐体1の内部に以下に述べる設備を収容する。筐体1は金属製が好ましいが、適切な強度が確保できれば樹脂等の他の材料を用いることができる。筐体1の内部の設備の取り付けやメンテナンスのため、筐体1は複数の部分に分解可能な構造となっている。
【0016】
筐体1の底部には循環タンク2が設置され、その上方に、空気を浄化する気液接触手段3と、デシカントロータ4(除湿手段)と、主送風機5とが、この順で設置されている。筐体1の下部側面には外気取り込み口11が、上部側面には空気供給口12が設けられ、外気取り込み口11から外気が主送風機5の吸い込み力によって筐体1内部に取り込まれ、筐体1内部を下から上へ、空気供給口12に向かって流れる。
【0017】
気液接触手段3は、外気取り込み口11から筐体1内部に取り込まれた外気を洗浄水と接触させることで浄化する。このため、気液接触手段3は、気液接触室31と、気液接触室31の上方に設けられた洗浄水を散布する散布水ノズル32とを有している。
【0018】
気液接触室31にはラシヒリングが充填されている。充填材としては他にも、レッシングリング、ポールリング、サドル、スルザーパッキン等を用いることができる。この室では、散布水ノズル32から散布された洗浄水がラシヒリングの表面に付着し、ラシヒリングの表面で、下方から上昇してくる空気との気液接触が行われる。
【0019】
循環タンク2は気液接触室31の下側に設けられており、筐体1の側面に設けられた配管33を介して循環ポンプ21に接続されている。循環タンク2の底面には水抜き用の排水口24が設けられている。外部水源34からは弁35の制御により、配管36を介して、洗浄水の補充及び交換が可能となっている。なお、循環タンク2の内部にヒータ(不図示)を設けて循環タンク内の水温を制御することにより、冬季の洗浄水の凍結防止を行ってもよい。また、外気取り込み口11から筐体内に入った外気を、循環タンク内の水温調整によって、夏場は冷やし、冬場は加湿してもよい。
【0020】
循環ポンプ21の吐出側は配管37を介して散布水ノズル32に接続されている。散布水ノズル32は例えば、多数の孔の開けられた配管であり、孔から洗浄水が吐出される。この配管の形状は特に限定されず、気液接触室31へ洗浄水が均一に散布されれば、直線状または略同心円状の複数の管、らせん状の管など、任意の形状の管を選択できる。
【0021】
気液接触手段3の上方に位置するデシカントロータ4は、気液接触手段3を経て大量の水分を含んだ空気の湿分を調整する。
【0022】
図2はデシカントロータ4の概念的斜視図を示す。デシカントロータ4の回転するロータ41の内部には乾燥剤(図示せず)が保持されているか、もしくはロータ41そのものが乾燥剤になっている場合もある。ロータ41の回転中心C−Cに関し一定の角度範囲αが吸湿ゾーン42となっている。気液接触手段3を通過した水分を大量に含む空気は、吸湿ゾーン42に、上方(方向D1)に向けて引かれ、ロータ41の厚み方向にロータ41を通過しながら、ロータ41の内部に保持された乾燥剤によって湿分が吸収される。一方、残りの角度範囲βは再生ゾーン43となっており、吸湿した乾燥剤に再生用ヒータ44からの高温空気が下向き(方向D2)に送風され、乾燥剤に含まれる湿分が除去される。つまり、ロータ41の一部が再生される。ロータ41は一定の回転速度で回転しているため、ロータ41の各角度位置は吸湿ゾーン42と再生ゾーン43との間を一定時間ごとに切り替えられる。再生用ヒータ44は、外気の通路となる筐体1内部とは空間的に分離された再生ヒータ室45に設置されているため、吸湿中の乾燥剤に再生用の高温空気が接触することはない。
【0023】
デシカントロータ再生用の高温空気の生成は、デシカントロータ4を出た乾燥した空気の一部を再生用送風機6によって再生ヒータ室45に取り入れ、再生ヒータ室45に取り入れられた空気を再生用ヒータ44で加熱することによって行われる。高温空気に吸収されたデシカントロータ4の湿分は一部が気液接触室31に送られ、洗浄水として再利用される。残りは再生ヒータ室45に還流し、その一部は大気に放出される。
【0024】
主送風機5は、気液接触手段3及びデシカントロータ4の上方であって、空気供給口12の手前に設置され、浄化された空気を空気供給口12から筐体1の外へ供給する。
【0025】
なお、デシカントロータ4と気液接触手段3との間、及び/又はデシカントロータ4と主送風機5との間の場所に熱交換器を任意に設けることにより、浄化された空気の温度調整を行うこともできる。
【0026】
上述したような形態の空調装置の外気取り込み口11は住宅の外の空気を取り込むために住宅外部と連通されており、空気供給口12は空調装置内で浄化及び調湿された空気を住宅の内部へ供給するために住宅内部と連通されている。
【0027】
本実施形態の空調装置で住宅内の換気を実施すれば、気液接触手段2により外気を浄化して住宅内に供給することができる。気液接触方式によって空気の浄化を行うため、外気に含まれる花粉、黄砂、汚染物質等が容易に除去される。濾過フィルターや吸着材を使用しないため、浄化性能を維持するためのメンテナンス頻度を軽減することができる。
【0028】
気液接触手段3を通過して浄化された空気は相対湿度が飽和状態に近くなるが、デシカントロータ4で湿度調整されて居住空間に供給される。
【0029】
浄化空気の湿度調整は、居住空間内に設置された湿度センサー(相対湿度計7)による値に基づいて各制御機器(再生用ヒータ44、再生用送風機6、循環ポンプ21、主送風機5、およびデシカントロータ4のロータ41)のうちの一つ以上の出力を制御することで行われる。湿度センサーは本実施形態の空調装置から浄化空気が供給される居住空間内に設置されていることが望ましいが、主送風機5の後段(送風方向)に位置する空気供給口12に設置されていてもよい。
【0030】
調湿制御の具体例を以下に幾つか示す。
【0031】
「制御例1」
相対湿度計7が居住空間内に設置される。
【0032】
住宅内の湿度を50%程度に調整する場合、再生用ヒータ44、再生用送風機6、循環ポンプ21、主送風機5、およびデシカントロータ4のロータ41のうちの1つ以上の出力をON/OFFで調整する。ここでいう「ON/OFF調整」は、各制御機器が停止した状態と規定の出力で動作している状態とに調整する方法だけでなく、動作している状態の各制御機器を第1の出力とこれよりも大きい第2の出力とに調整する方法も含む。
【0033】
本例では、住宅内の相対湿度計7で検出される値と比較する下限値と上限値を設定し、住宅内の相対湿度が下限値と上限値の間の値となるように各制御機器のON/OFF運転(強/弱運転)を行う。
【0034】
すなわち、下記の表1のように、相対湿度計7の検出値が40%以下である場合、主送風機5の出力を弱めると同時に循環ポンプ21の洗浄水供給力を強めることにより、気液接触手段3を通過した空気に含まれる水分量を増やす。その上、再生用ヒータ44と再生用送風機6の出力を弱めると同時にデシカントロータ4のロータ41の回転速度を上げることにより、デシカントロータ4の湿分を増やす。
【0035】
また、相対湿度計7の検出値が60%以上である場合、主送風機5の出力を強めると同時に循環ポンプ21の洗浄水供給力を弱めることにより、気液接触手段3を通過した空気に含まれる水分量を減らす。その上、再生用ヒータ44と再生用送風機6の出力を強めると同時にデシカントロータ4のロータ41の回転速度を下げることにより、デシカントロータ4の湿分を減らす。
【0036】
なお、上記の制御に加えて、相対湿度計7の検出値に基づいて循環タンク2内の洗浄水の温度を調整するヒータ等の水温調整手段(不図示)を設け、これを制御することによっても、湿度調整が可能となる。すなわち、循環タンク2内の水温を上げれば住宅内の湿度を高めることができる。
【0037】
【表1】

【0038】
「制御例2」
相対湿度計7が居住空間内に設置される。
【0039】
住宅内の相対湿度計7で検出される値に基づいて、再生用ヒータ44、再生用送風機6、循環ポンプ21、主送風機5、およびデシカントロータ4のロータ41のうちの1つ以上の出力をON/OFF(強/弱)で調整する。
【0040】
本例では、住宅内の湿度の目標値を50%とし、上記各制御機器についてON/OFF(強/弱)の頻度をPID制御によって決定する運転を行うことにより、住宅内の相対湿度計7で検出される値が目標値近傍となるように制御する。
【0041】
「制御例3」
相対湿度計7が居住空間内に設置される。
【0042】
本例では、住宅内の相対湿度計7で検出される値に基づいて、再生用ヒータ44、再生用送風機6、循環ポンプ21、主送風機5、およびデシカントロータ4のロータ41のうちの1つ以上の出力を、2段階ではなく無段階(可変)で調整する。
【0043】
住宅内の湿度の目標値を50%とし、上記各制御機器について電流値等の出力をPID制御によって決定する運転を行うことにより、住宅内の相対湿度計7で検出される値が目標値近傍となるように制御する。
【符号の説明】
【0044】
1 筐体
11 外気取り込み口
12 空気供給口
2 循環タンク
21 循環ポンプ
24 排水口
3 気液接触手段
31 気液接触室
32 散布水ノズル
33,36,37 配管
34 外部水源
35 弁
4 デシカントロータ
41 ロータ
42 吸湿ゾーン
43 再生ゾーン
44 再生用ヒータ
45 再生ヒータ室
5 主送風機
6 再生用送風機
7 相対湿度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部に外気を取り込む外気取り込み口と筐体外部へ空気を供給する空気供給口とが形成された筐体と、
前記筐体の内部の空気を前記空気供給口から前記筐体の外部へ送風する送風手段と、
前記外気取り込み口から前記筐体の内部に取り込んだ外気に洗浄水を接触させる気液接触手段と、
前記洗浄水と接触した空気の湿分を除去する除湿手段と、
前記除湿手段を再生する再生手段と、
雰囲気の相対湿度を検出する検出手段と、を備え、
前記検出手段から得られる値に基づいて、前記送風手段、前記気液接触手段、前記除湿手段および前記再生手段のうちの少なくとも一つの動作が制御されることを特徴とする空気浄化空調装置。
【請求項2】
前記検出手段が住宅の居住空間に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化空調装置。
【請求項3】
前記除湿手段がデシカントロータであることを特徴とする請求項1または2に記載の空気浄化空調装置。
【請求項4】
前記デシカントロータは、前記検出手段から得られる値に基づいて回転速度が調整されることを特徴とする請求項3に記載の空気浄化空調装置。
【請求項5】
前記再生手段が、前記除湿手段に対して温風を供給する温風供給手段で構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の空気浄化空調装置。
【請求項6】
前記温風供給手段は、前記検出手段から得られる値に基づいて温風の温度及び/又は風量を調整することを特徴とする請求項5に記載の空気浄化空調装置。
【請求項7】
前記気液接触手段は、前記検出手段から得られる値に基づいて、前記筐体の内部に取り込んだ外気に接触させる洗浄水の量を調整することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の空気浄化空調装置。
【請求項8】
前記送風手段は、前記検出手段から得られる値に基づいて、風量が調整されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の空気浄化空調装置。
【請求項9】
前記洗浄水の水温を調整する水温調整手段をさらに有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の空気浄化空調装置。
【請求項10】
前記水温調整手段は、前記検出手段から得られる値に基づいて水温を調整することを特徴とする請求項9の空気浄化空調装置。

【図1】
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【図2】
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