説明

空気浄化装置

【課題】高い空気浄化効率を達成するのに適した空気浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明の空気浄化装置X1は、空気が内部を通過することのできる浄化室R2と、浄化室R2内に設けられた紫外線光源12と、浄化室R2内に空気を通過させることによって浄化室R2内に気流を発生させるための気流発生手段11と、光触媒機能を有し且つ浄化室R2に収容されて気流により変位可能な光触媒粒体13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば室内や車内の空気を清浄化するための、空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内や車内、並びに、クローゼット、下駄箱、冷蔵庫、および食器棚の中の空気を清浄化および消臭などするために、空気浄化装置が使用される場合がある。空気浄化装置については、例えば、下記の特許文献1,2,3などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−151443号公報
【特許文献2】特開2001−253235号公報
【特許文献3】特開2002−253662号公報
【0004】
空気浄化装置としては、光触媒物質を利用するものが知られている。そのような空気浄化装置については、例えば特開平11−151443号公報および特開2002−253662号公報に開示されている。
【0005】
図7は、光触媒物質を利用する従来の空気浄化装置X2を模式的に表す。空気浄化装置X2は、ハウジング71と、除塵用のフィルタ72と、光触媒フィルタ73,74と、紫外線ランプ75と、ファン76と、フィルタ77とを備える。
【0006】
ハウジング71は、吸気口71aおよび排気口71bを有する。フィルタ72は、吸気口71aを閉塞するように設けられており、フィルタ77は、排気口71bを閉塞するように設けられている。光触媒フィルタ73,74は、粉末状の酸化チタン(TiO2)が
接着された不織布よりなり、紫外線ランプ75により照射されることによって機能する。ファン76は排気口71bの側に設けられ、ファン76が作動することにより空気浄化装置X2を空気が通過する。具体的には、ファン76が作動することにより、空気は、吸気口71aを介して空気浄化装置X2に流入し、フィルタ72、光触媒フィルタ73,74、およびフィルタ77を順次通過した後、排気口71bを介して空気浄化装置X2から排気される。
【0007】
酸化チタンなどの一部の半導体物質は、光触媒機能を有する物質として知られている。光触媒機能を有する半導体物質では、一般に、価電子帯と伝導帯のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を吸収することによって、価電子帯の電子が伝導帯に遷移し、この電子遷移により、価電子帯には正孔が生ずる。伝導帯の電子は、当該光触媒性半導体の表面に吸着している物質に移動する性質を有し、これにより当該吸着物質は還元され得る。価電子帯の正孔は、当該光触媒性半導体の表面に吸着している物質から電子を奪い取る性質を有し、これにより当該吸着物質は酸化され得る。
【0008】
光触媒機能を有する酸化チタン(TiO2)においては、伝導帯に遷移した電子は、空
気中の酸素を還元してスーパーオキシドアニオン(・O2-)を生成させる。これとともに、価電子帯に生じた正孔は、酸化チタン表面の吸着水を酸化してヒドロキシラジカル(・OH)を生成させる。ヒドロキシラジカルは、非常に強い酸化力を有している。そのため、光触媒性酸化チタンに対して例えば有機物が吸着すると、ヒドロキシラジカルが作用することによって、当該有機物は、水と二酸化炭素にまで分解される場合がある。
【0009】
空気浄化装置X2の作動時においては、空気中の汚染物質や細菌などは、光触媒フィルタ73,74に捕捉される。光触媒フィルタ73,74には、上述のような光触媒としての酸化チタンが付着しているので、これら汚染物質や細菌などは、紫外線ランプ75により照射される光触媒フィルタ73,74において、分解作用を受ける。
【0010】
このような従来の空気浄化装置X2において、空気浄化効率を高めるには、光触媒フィルタ73,74に対して空気を効率よく接触させる必要がある。当該接触効率は、光触媒フィルタ73,74の面積および/または厚みを大きくすることにより、向上することが
できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、光触媒フィルタ73,74の面積を増大すると、空気浄化装置X2のサイズが過大となる傾向にある。また、光触媒フィルタ73,74の厚みの増大は、光触媒フィルタ73,74を空気が通過する際の圧力損失を考慮すると、好ましくない。光触媒フィルタ73,74の厚みを増大すると、それに応じてファン76に要求される送風能力は高くなり、ファン76の送風能力を高くすると、空気浄化装置X2の静寂性を維持するのが困難となるからである。
【0012】
また、空気浄化装置X2では、光触媒フィルタ73,74における紫外線照射量には、偏りがある。すなわち、紫外線ランプ75からの距離、および、紫外線照射角度は、光触媒フィルタ73,74上の位置に応じて異なる。そのため、光触媒フィルタ73,74において紫外線照射量の少ない部位では充分な分解作用が発揮されず、その結果、従来の空気浄化装置X2においては、光触媒フィルタ73,74が潜在的に有する光触媒機能を充分に享受することができない。
【0013】
紫外線ランプ75の配設個数を増加すると、紫外線照射量の偏りが比較的均されるので、光触媒フィルタ73,74の光触媒機能、ひいては空気浄化装置X2の空気浄化効率を、向上することは可能である。しかしながら、そのような構成によると、紫外線ランプ75の個数に応じて、これを駆動制御するためのインバータ(図示略)などの個数も増加してしまい、空気浄化装置X2の大型化を招来してしまう。
【0014】
このように、従来の空気浄化装置X2は、装置サイズを維持しつつ高い空気浄化効率を達成するのに困難性を有する。
【0015】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、高い空気浄化効率を達成するのに適した空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明により提供される空気浄化装置は、空気が内部を通過することのできる浄化室と、浄化室内に設けられた紫外線光源と、浄化室内に空気を通過させることによって浄化室内に気流を発生させるための気流発生手段と、光触媒機能を有し、且つ、浄化室に収容されて気流により変位可能な光触媒粒体とを備える。本発明における光触媒機能とは、有機物質や有機組織などの化学構造を変化させる反応(例えば酸化分解反応)を、紫外線照射条件下で触媒する機能をいう。このような機能を有する光触媒粒体は、例えば、発泡樹脂のような軽い素材で作製した粉体と、当該軽量粉体に対して固定された光触媒物質とからなる。また、本発明における光触媒粒体の変位とは、並進運動成分および/または回転運動成分を有する光触媒粒体の運動をいう。光触媒粒体の変位とは、例えば、光触媒粒体が乱舞することをいう。
【0017】
このような構成の空気浄化装置の稼動時においては、紫外線ランプなどの紫外線光源、および、ファンなどの気流発生手段が作動する。気流発生手段の作動により浄化室内に空気を通過させると、当該浄化室内には気流が発生する。浄化室内の光触媒粒体は、この気流により攪拌されて、例えば乱舞する。このとき、光触媒粒体が紫外線照射されつつ、浄化室を通過する空気が光触媒粒体と接触するので、空気中の汚染物質や細菌などは、光触媒粒体の触媒作用を受ける。光触媒粒体が適当に運動ないし乱舞する場合、光触媒粒体の全表面に対して紫外線が満遍なく照射されることとなる。
【0018】
本発明の空気浄化装置においては、光触媒粒体の全表面に対して紫外線が満遍なく照射されるので、光触媒粒体の表面に存在する光触媒物質の光触媒機能は充分に発揮される。
本発明の空気浄化装置においては、粒体が空気浄化機能を担うので、フィルタが空気浄化機能の担う従来の空気浄化装置よりも、単位体積あたりにおける光触媒物質と空気との接触効率は高い。そのため、本発明の空気浄化装置は、単位体積あたりの空気浄化機能を高く設定するのに適している。単位体積あたりの空気浄化機能ないし光触媒機能は、光触媒粒体の粒径ないし表面積、および、浄化室における光触媒粒体の充填率を適宜調節することによって調整することができる。また、光触媒粒体の運動ないし乱舞の態様は、浄化室における光触媒粒体の充填率、並びに、光触媒粒体の質量および形状を調節することによって、適切に調整することができる。
【0019】
このように、本発明によると、空気浄化装置において高い空気浄化効率を達成するのに適しているのである。
【0020】
好ましくは、光触媒粒体は、担体粒子と、当該担体粒子に固定された光触媒物質とを含む。光触媒物質は、好ましくは、光触媒アパタイトおよび酸化チタンからなる群より選択される。
【0021】
光触媒物質として光触媒アパタイトを採用する場合、当該光触媒アパタイトは、好ましくは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有するチタン修飾カルシウムハイドロキシアパタイト(Ti−CaHAP)である。
【0022】
このような光触媒アパタイトは、例えば特開2000−327315号公報に開示されている。当該公報には、光触媒機能を有する例えば酸化チタンと、特に有機物を吸着する能力に優れている例えばカルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)とが原子レベルで複合化された光触媒アパタイトが開示されている。当該光触媒アパタイトは、具体的には、CaHAP(Ca10(PO4)6(OH)2)を構成するCaの一部がTiに置換された
結晶構造を有し、当該Ti導入部位には、光触媒性酸化チタンの化学構造に近似する酸化チタン様部分構造が形成されている。有機物吸着性に優れたCaHAPの結晶構造中に、光触媒機能を発揮し得る酸化チタン様部分構造が内在しているため、有機物などの分解対象物と酸化チタン様部分構造との接触効率は効果的に向上している。その結果、当該酸化チタン様部分構造は、光触媒機能に基づいて、空気中の汚染物質や細菌細胞膜などを効率良く酸化分解することが可能となっている。
【0023】
光触媒物質として酸化チタンを採用する場合、当該酸化チタンは、好ましくは、アナターゼ型酸化チタンである。アナターゼ型酸化チタンは、光触媒物質として知られている。
【0024】
好ましくは、担体粒子は樹脂よりなる。また、好ましくは、担体粒子の表面には光反射膜が設けられており、光触媒物質は当該光反射膜上に固定されている。
【0025】
浄化室における光触媒粒体の充填率は、好ましくは50〜80%であり、より好ましくは60〜70%である。
【0026】
好ましくは、浄化室は主延び方向を有する柱形状を有し、紫外線光源は、柱形状における主延び方向の軸心上を延びる。より好ましくは、浄化室は円柱形状を有する。
【0027】
本発明に係る空気浄化装置は、好ましくは、更に、浄化室内に流入する前に空気が通過する除塵フィルタを備える。
【0028】
本発明に係る空気浄化装置は、好ましくは、更に、浄化室内に乱気流発生手段を備える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る空気浄化装置の一部切欠斜視図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った断面図である。
【図3】稼動時における空気浄化装置を表す。
【図4】図1の線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】図1に示す空気浄化装置の変形例を表す。
【図6】実施例における測定結果を表す。
【図7】光触媒物質を利用した従来の空気浄化装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1から図4は、本発明に係る空気浄化装置X1を表す。空気浄化装置X1は、円筒状のハウジング10と、ファン11と、紫外線ランプ12と、光触媒粒体13とを備える。
【0031】
ハウジング10は、樹脂製または金属製であり、吸気口10aおよび排気口10bを有する。吸気口10aは、除塵用のフィルタ14により閉塞されている。排気口10bは、光触媒粒体13が通過できないフィルタ15により閉塞されている。ハウジング10の内部は、メッシュ材16によって、ファン収容室R1および空気浄化室R2に区分されている。メッシュ材16は、光触媒粒体13が通過できない開口サイズを有する。ファン収容室R1は、ファン11を収容する。空気浄化室R2は、紫外線ランプ12および光触媒粒体13を収容する。ハウジング10の内壁面の全て又は一部には、紫外線ランプ12からの紫外線を反射して有効利用するための光反射膜が設けられていてもよい。
【0032】
ファン11は、装置外の空気を装置内に取り込むためのものであり、所定の駆動機構(図示略)により駆動される。当該駆動機構は、ファン11とともに、例えばファン収容室R1に収容されている。
【0033】
紫外線ランプ12は、400nm以下(例えば340〜380nm)の波長領域の紫外線を放射するためのものであり、円筒状のハウジング10の軸心Y上に配設されている。紫外線ランプ12は、インバータを含む所定の制御機構(図示略)により制御される。当該制御機構は、ファン11およびファン駆動機構とともに、例えばファン収容室R1に収容されている。
【0034】
光触媒粒体13は、担体粒子と、これに固定された光触媒物質とからなる。担体粒子は、例えば発泡スチロールやポリエチレンテレフタレート(PET)よりなり、例えば0.5〜10mmの平均粒径を有する。担体粒子は、複数の微小な突起を有する形状を有していてもよい。このような形状は、担体粒子において広い表面積を達成するうえで好適である。光触媒物質は、本実施形態においては、光触媒アパタイトであるチタン修飾カルシウムハイドロキシアパタイト(Ti−CaHAP)、および/または、アナターゼ型酸化チタンである。光触媒物質は、粉末状であってもよいし薄膜状であってもよい。担体粒子の表面には、光反射膜を設けてもよい。この場合、光触媒物質は、当該光反射膜上に固定される。軽い担体粒子と光触媒物質とからなるこのような光触媒粒体13は、ファン11の作動により発生する気流により乱舞することができ、且つ、紫外線ランプ12からの紫外線照射により光触媒機能を発揮することができる。
【0035】
本発明において光触媒物質として用いることのできるTi−CaHAPの基本骨格は、CaHAPの構造に相当する。CaHAPは、カチオンともアニオンともイオン交換し易いため吸着性に富んでおり、有機物を吸着する能力に優れている。加えて、CaHAPは、カビや細菌などを強力に吸着することによって、それらの増殖を阻止ないし抑制し得ることが知られている。Ti−CaHAPにおいては、CaHAPのCaの一部に代えてTiがアパタイト結晶構造中に取り込まれることによって、アパタイト結晶構造内において光触媒機能を発揮し得る光触媒性部分構造が形成されている。光触媒性部分構造とは、光触媒機能を有する金属酸化物の構造に相当するものであると考えられる。本発明で用いられるTi−CaHAPのアパタイト結晶構造に含まれる全金属原子(CaおよびTi)に対するTiの存在比率は、Ti−CaHAPにおいて優れた吸着性および光触媒機能の双方を享受するという観点より、3〜11mol%の範囲が好ましい。すなわち、Ti/(Ti+Ca)の値は、0.03〜0.11(モル比)であるのが好ましい。
【0036】
このような化学構造を有するTi−CaHAPは、紫外線照射条件下においては、高い吸着力および光触媒機能の相乗効果により、吸着力に乏しい光触媒性金属酸化物よりも効
率のよい分解作用ひいては効率のよい空気清浄作用や消臭作用などを示す。
【0037】
空気浄化室R2における光触媒粒体13の充填率は、好ましくは50〜80%であり、より好ましくは60〜70%である。当該充填率が50%未満であると、光触媒粒体13が少ないことに起因して、光触媒粒体13と空気との高い接触効率を達成することが困難となる傾向にある。当該充填率が80%を超えると、光触媒粒体13が乱舞しにくくなることに起因して、光触媒粒体13と空気との高い接触効率を達成することが困難となる傾向にある。
【0038】
光触媒粒体13を作製するためには、まず、例えば担体粒子に対して所定のスプレーのりを噴霧することによって、担体粒子の表面に接着膜を形成する。次に、表面に接着膜が形成された担体粒子と粉末状の光触媒物質とを接触させることによって、担体粒子表面に光触媒物質粉末を付着させる。次に、接着膜を乾燥することによって、担体粒子表面に光触媒物質粉末を固定させる。
【0039】
光触媒粒体13の他の作製方法においては、まず、担体粒子を所定の溶剤に浸漬することによって、当該担体粒子の表面を膨潤ないし軟質化させる。溶剤の種類は、担体粒子の材質に応じて選択する。例えば、発泡スチロール製の担体粒子を採用する場合には、溶剤として、キシレンなどの芳香族系有機溶媒などを使用することができる。また、浸漬時間は担体粒子および溶剤の種類に応じて適宜決定する。次に、表面が膨潤している担体粒子と粉末状の光触媒物質とを接触させることによって、担体粒子表面に光触媒物質粉末を付着させる。次に、担体粒子表面を乾燥することによって、担体粒子表面に光触媒物質粉末を固定させる。
【0040】
光触媒粒体13の作製においては、上述の2つの手法に代えて、スパッタリングにより所定のフィルム上に成膜された光触媒物質を、担体粒子表面に貼り合わせてもよい。
【0041】
フィルタ14は、例えば不織布よりなり、空気中の塵などを捕捉するための所定の開口サイズを有する。
【0042】
フィルタ15は、例えば不織布よりなり、光触媒粒体13を通さないための所定の開口サイズを有する。
【0043】
メッシュ材16は、例えば金網よりなり、光触媒粒体13を通さないための所定の開口サイズを有する。
【0044】
空気浄化装置X1の稼動時においては、ファン11が作動することにより、空気は、図3に示すように吸気口10aを介して空気浄化装置X1に流入し、フィルタ14、ファン11、メッシュ材16を通過して、空気浄化室R2に至る。
【0045】
空気浄化室R2にて、空気は、その流れによって攪拌される光触媒粒体13と接触する。このとき、紫外線ランプ12が作動することにより光触媒粒体13は紫外線照射されているので、空気中の汚染物質や細菌などは、光触媒粒体13と接触して分解作用を受ける。光触媒粒体13としてTi−CaHAPを採用する場合には、その優れた吸着性に起因して、高い分解作用を享受することができる。
【0046】
空気浄化室R2にて浄化作用を受けた空気は、排気口10bを介して空気浄化装置X1から排気される。
【0047】
空気浄化装置X1においては、その作動時にて、光触媒粒体13が気流により乱舞する
ため、光触媒粒体13の全表面に対して紫外線が満遍なく照射される。そのため、光触媒粒体13に固定される光触媒物質の光触媒機能は充分に発揮される。ハウジング10の内壁面に光反射膜が設けられている場合、紫外線が当該内壁面にて反射されるので、紫外線を有効に利用することが可能となる。同様に、光触媒粒体13に光反射膜が設けられている場合、紫外線が各光触媒粒体13にて乱反射されるので、紫外線を有効に利用することが可能となる。
【0048】
空気浄化装置X1においては、粒体(光触媒粒体13)が空気浄化機能を担うので、単位体積あたりにおける光触媒物質と空気との接触効率は高い。そのため、空気浄化装置X1は、単位体積あたりの空気浄化機能を高く設定するのに適している。単位体積あたりの空気浄化機能ないし光触媒機能は、光触媒粒体の粒径ないし表面積、および、容器における光触媒粒体の充填率を適宜調節することによって調整することができる。また、光触媒粒体の運動ないし乱舞の態様は、容器における光触媒粒体の充填率、並びに、光触媒粒体の質量および形状を調節することによって、適切に調整することができる。
【0049】
空気浄化装置X1においては、空気浄化室R2は主延び方向を有する円柱形状を有し、紫外線ランプ12は、当該円柱形状の軸心Y上を延びている。そのため、紫外線ランプ12の作動時には、紫外線ランプ12は、図4に示すように、空気浄化室R2の軸心Yから放射状に紫外線を放射する。空気浄化室R2におけるこのような均等な紫外線放射は、気流により乱舞する個々の光触媒粒体13に紫外線を満遍なく照射するうえでは、好適である。
【0050】
本発明においては、空気浄化室R2の内部に、図5に示すような邪魔板17を設けてもよい。邪魔板17は、ハウジング10の内壁面に対して垂直に設けられた例えば略矩形板であり、直線的な空気流れを阻害することによって、空気浄化室R2にて乱気流を発生させるためのものである。邪魔板17の形状については、図5に示す形状とは異なる形状を採用してもよい。このような邪魔板17が設けられている場合、装置作動時において光触媒粒体13の攪拌ないし乱舞が促進される。その結果、光触媒粒体13と空気との接触効率が向上する傾向にある。
【実施例】
【0051】
<光触媒粒体の作製>
光触媒アパタイトとしてのTi−CaHAP粉末(平均2次粒子径5.7μm、Ti比率10mol%)0.1gを、発泡スチロール製ビーズ(平均粒径5mm)1gの表面に対
して均一に付着および固定させた。
【0052】
具体的には、まず、光触媒アパタイト20%含有水分散体((株)明成商会製)500gと、アクリル樹脂系バインダ(商品名:TASRESIN UND-A、バイエル(株)製)200gとを混合した。次に、この混合液を、最終体積が1リットルとなるように水で希釈することによって、光触媒アパタイトコート液を調製した。次に、このコート液に対して発泡スチロール製ビーズを浸漬させた。次に、当該発泡スチロール製ビーズを、コート液から引き上げた後、乾燥器(100℃)に入れて1分間放置することによって乾燥した。このようにして、光触媒粒体を作製した。
【0053】
<空気浄化機能の測定>
上述のようにして得た光触媒粒体を使用して図1に示すような構成を有する空気浄化装置を作製し、当該空気浄化装置の空気浄化機能について調べた。
【0054】
本実施例の装置の空気浄化室は、直径100mmおよび高さ200mmの内寸法を有する円筒壁により規定されている。紫外線ランプとしては、ブラックライト(商品名:FL10
BLB(10w)、東芝製)を使用した。ファンとしては、冷却ファン(商品名:DCファンモータ「SAN ACE 120L」、山洋電気(株)製)を使用した。空気浄化室における光触媒粒体の充填率は50%とした。
【0055】
空気浄化機能の測定においては、上述のようにして用意した装置を、試験チャンバ(容積1m3)に設置し、装置のファンを作動させることによって、容器内に4m3/minの速度で空気を送りこんだ。試験チャンバには、50ppmの濃度でアセトアルデヒドを予め充満させておいた。装置を3時間稼働させ、アセトアルデヒドの濃度を30分間隔で測定した。その結果、アセトアルデヒドの濃度は次第に減少することが確認された。また、アセトアルデヒドの分解反応により生ずる二酸化炭素(気体)の濃度は、アセトアルデヒド濃度の減少に呼応して次第に増大することも確認された。図6は、この測定結果を表す。図6においては、縦軸は、アセトアルデヒドの初期濃度に対する測定濃度の比率、および、測定された二酸化炭素濃度を表し、横軸は経過時間を表す。図6のグラフAは、アセトアルデヒド濃度の経時変化を表し、グラフBは二酸化炭素濃度の経時変化を表す。図6を参照すると、本実施例の空気浄化装置によりアセトアルデヒドが適切に分解されていることが理解できよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が内部を通過することのできる浄化室と、
前記浄化室内に設けられた紫外線光源と、
前記浄化室内に空気を通過させることによって前記浄化室内に気流を発生させるための気流発生手段と、
光触媒機能を有し、且つ、前記浄化室に収容されて前記気流により変位可能な光触媒粒体と、を備える、空気浄化装置。
【請求項2】
前記光触媒粒体は、担体粒子と、当該担体粒子に固定された光触媒物質と、を含む、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記光触媒物質は、光触媒アパタイトおよび酸化チタンからなる群より選択される、請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記光触媒アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項3に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
前記酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタンである、請求項3に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記担体粒子は樹脂よりなる、請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項7】
前記担体粒子の表面には光反射膜が設けられており、前記光触媒物質は当該光反射膜上に固定されている、請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項8】
前記浄化室における前記光触媒粒体の充填率は、60〜70%である、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項9】
前記浄化室は主延び方向を有する柱形状を有し、前記紫外線光源は、前記柱形状における主延び方向の軸心上を延びる、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項10】
前記浄化室は円柱形状を有する、請求項9に記載の空気浄化装置。
【請求項11】
更に、前記浄化室内に流入する前に空気が通過する除塵フィルタを備える、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項12】
更に、前記浄化室内に乱気流発生手段を備える、請求項1に記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−115499(P2010−115499A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297170(P2009−297170)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2004−553099(P2004−553099)の分割
【原出願日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】