説明

空気浮上式コンベヤ

【課題】運搬物を常に安定して搬送することができる空気浮上式コンベヤを提供する。
【解決手段】フレーム4a、4bからコンベヤベルト3a、3bを浮上させる圧縮空気13に低摩擦体を混入する低摩擦体供給装置18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浮上式コンベヤに関し、更に詳しくは、フレームとコンベヤベルト間の摩擦係数を低減することで、運搬物を常に安定して搬送することができる空気浮上式コンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉体や粒状体などの運搬物を搬送する手段の1つとして、樋状(円弧状)又は円筒状のフレームから空気圧により浮上した状態でコンベヤベルトを走行させる、いわゆる空気浮上式コンベヤが知られている。
【0003】
しかし、この空気浮上式コンベヤにおいては、コンベヤベルトの幅方向の剛性が高くフレームの形状になじまないとコンベヤベルトとフレームが接触してしまい、更に塗装や表面粗さによりフレーム表面の摩擦係数が大きいとフレームとコンベヤベルトとの間の摩擦係数が大きくなるため、コンベヤベルトの運転に支障が生じて、運搬物を安定に搬送することができなくなるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1は、コンベヤベルトを構成するゴム組成物の成分を改良することにより、コンベヤベルトの成形性や摩擦性を改善することを提案している。
【0005】
しかしながら、フレームとコンベヤベルトの接触・摩耗は、コンベヤベルトが搬送する運搬物の状態(重量や積載ムラなど)などによっても発生するため、上記の対策は必ずしも有効なものではなかった。
【特許文献1】特開2005−139344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、運搬物を常に安定して搬送することができる空気浮上式コンベヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の空気浮上式コンベヤは、樋状又は円筒状のフレームの内側にコンベヤベルトを挿入し、該コンベヤベルトの下面側から圧縮空気を吹き付けて浮上させつつ、上面側に運搬物を載せて搬送する空気浮上式コンベヤにおいて、前記圧縮空気に低摩擦体を混入する低摩擦体供給装置を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
低摩擦体には粉体及び液体を用いるのがよく、粉体はデンプン又は超高分子量ポリエチレンから、液体は水から、それぞれ形成されることが望ましい。
【0009】
また、低摩擦体として粉体を用いる場合には、粉体の静電気を除去する除電器を設けるのがよい。
【0010】
更に、フレームにコンベヤベルトの下面側の表面温度を測定する温度センサーを取り付けると共に、その温度センサーの測定値に基づいて低摩擦体供給装置における低摩擦体の混入量を制御する制御部を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気浮上式コンベヤによれば、フレームからコンベヤベルトを浮上させる圧縮空気に低摩擦体を混入する低摩擦体供給装置を設けたので、搬送物の状態、コンベヤベルトの材質やフレーム表面の状態などにかかわらず、フレームとコンベヤベルトとの間の摩擦係数を低減することができるため、運搬物を常に安定に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態からなる空気浮上式コンベヤを示す。
【0014】
この空気浮上式コンベヤは、駆動プーリ1と従動プーリ2との間にコンベヤベルト3がエンドレスに掛け渡され、その往路側及び復路側のコンベヤベルト3a、3bが、それぞれ円筒状の金属製のフレーム4の内部をフレーム4の内側に沿って浮上しつつ運搬物を搬送するものである。運搬物は、往路側フレーム4aのシュートカバー5近傍に設けられた投入口6から投入され、駆動プーリ1を収納するエンドカバー7底部の排出口8から排出されるようになっている。
【0015】
往路側及び復路側フレーム4a、4bの下部には、図2に示すように、長手方向に沿って多数の空気孔9が穿設されており、ブロワ10から圧送管11及び空気ダクト12を通じて送風された圧縮空気13を、フレーム4a、4bの下部内面に沿って湾曲したコンベヤベルト3a、3bの下側面に吹き付けることにより、コンベヤベルト3a、3bを浮上させるようになっている。往路側及び復路側フレーム4a、4bにそれぞれ接続する圧送管11a、11bの途中には流量調節弁14a、14bがそれぞれ設けられており、コンベヤベルト3a、3bが積載する運搬物の重量等に応じて圧縮空気13の供給量を調整している。往路側及び復路側フレーム4a、4b内へ供給され、コンベヤベルト3a、3bを浮上させた後の圧縮空気13は、エンドカバー7上部に設けられた排気管15からフィルター16を通じて外部へ排気される。なお、この実施形態ではフレーム4a、4bの断面形状を円筒状としているが、上部が開口した樋状(円弧状)であってもよい。
【0016】
このような空気浮上式コンベヤにおいて、ブロワ10近傍の圧送管11には、低摩擦体を供給する低摩擦体供給装置18が接続されている。
【0017】
低摩擦体供給装置18の構成の一例を図3に示す。この低摩擦体供給装置18は、低摩擦体として粉体17を用いている。低摩擦体供給装置18は、大気圧下にある粉体タンク19を粉体17の供給源とする攪拌槽20を、吸入管21及び供給管22を介して圧送管11と接続した構造を有しており、供給管22の途中には混合量調節弁23が介設されている。ブロワ10から送風された圧縮空気24の一部は吸入管21を通じて攪拌槽20内に導かれて粉体17と攪拌・混合され、供給管22の圧送管11側の出口においてベンチュリー効果により発生した負圧により供給管22を通じて再度圧送管11へ吸引される。その際に、混合量調節弁23の開度を調節することにより、圧縮空気24中への粉体17の混入量を調整することができる。圧縮空気13に混入された粉体17は、空気孔9を通じてフレーム4a、4bとコンベヤベルト3a、3bとの間に供給された後に、搬送物と共に排出口8から排出されたり、あるいは排気管15のフィルター16で捕集される。
【0018】
低摩擦体供給装置18の構成の別の例を図4に示す。この低摩擦体供給装置18は、低摩擦体として液体25を用いている。低摩擦体供給装置18は、液体タンク26内に貯留する液体25をポンプ27で加圧して、供給管22を通じて圧送管11内へ噴射するものであり、供給管22の途中には混合量調節弁23が介設されている。混合量調節弁23の開度を調節することにより、ブロワ10から送風された圧縮空気24中への液体25の混入量を調整することができる。圧縮空気13に混入された液体25は、空気孔9を通じてフレーム4a、4bとコンベヤベルト3a、3bとの間に供給された後に、搬送物と共に排出口8から排出される。
【0019】
このように、空気浮上式コンベヤにおいて、フレーム4a、4bからコンベヤベルト3a、3bを浮上させる圧縮空気13に低摩擦体を混入する低摩擦体供給装置18を設けたので、搬送物の状態、コンベヤベルト3の材質やフレーム4表面の状態などにかかわらず、フレーム4a、4bとコンベヤベルト3a、3bとの間の摩擦係数を低減することができるため、運搬物を常に安定に搬送することができる。
【0020】
粉体の材料としては、デンプン又は超高分子量ポリエチレンを用いることが望ましい。デンプンの粉体としては、例えば不溶性デンプンを用いたニッカ株式会社製のニッカリコ(登録商標)のOD−PHK(製品名)を用いることができる。超高分子量ポリエチレンの粉体としては、例えば三井化学社製のミペロン(登録商標)を用いることができる。
【0021】
また、上記の粉体は平均粒径が約10〜40μmの微粒子であるため、粉塵爆発を防止するために、低摩擦体供給装置18の下流側の圧送管11には除電器28を設置して、粉体17の静電気を除去することが望ましい。
【0022】
液体としては水を用いることが望ましい。このようにすることで、コンベヤベルト3a、3bの下面側の温度を低下させたり、搬送物の自然発火を防ぐこともできる。
【0023】
図5は、本発明の別の実施形態からなる空気浮上式コンベヤを示す。
【0024】
この実施形態は、フレーム4a、4bにコンベヤベルト3a、3bの下側面の温度を測定する温度センサー29を、図6に示すように取り付けると共に、その温度センサー29の測定値に基づいて混合量調節弁23の開度を調整する制御部30を設けたものである。温度センサー29は、往路側及び復路側フレーム4a、4bのいずれか又は両方に取り付けてもよく、更にフレーム4a、4bへの取り付け位置や個数は図6の例に限定されるものではない。また、温度センサー29としては、非接触式である放射温度計を用いることが望ましい。制御部30は中央演算装置(CPU)を備えた一般的なパーソナル型コンピュータにより実現することができる。この制御部30は、温度センサー29及び混合量調節弁23と、それぞれ信号線31又は無線を介して接続され、温度センサー29から送信される測定値が所定の温度を超えたときに混合量調節弁23の開度を大きくするように制御を行うことを基本とするが、測定値の上昇に伴って混合量調節弁23の開度を徐々に大きくするように制御してもよい。
【0025】
このようにコンベヤベルト3a、3bの下側面の温度に基づいて、低摩擦体の圧縮空気13への混入量を制御する制御部30を設けたので、コンベヤベルト3の過熱を防止して、運搬物を更に安定に搬送することができる。例えば、コンベヤベルト3a、3bの下側面の温度が50℃を超えたときに混合量調節弁23の開度を大きくするように制御することで、コンベヤベルト3のゴム組成物に添加されている老化防止剤やワックス等がフレーム4a、4bに付着することで起こり得る、フレーム4a、4bとコンベヤベルト3a、3bの下面側との間の摩擦係数の増加を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態からなる空気浮上式コンベヤの全体図である。
【図2】往路側及び復路側フレームの断面図である。
【図3】低摩擦体供給装置の一例である。
【図4】低摩擦体供給装置の別の例である。
【図5】本発明の別の実施形態からなる空気浮上式コンベヤの全体図である。
【図6】図5において温度センサーを取り付けたフレーム部分の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 駆動プーリ
2 従動プーリ
3 コンベヤベルト
3a 往路側コンベヤベルト
3b 復路側コンベヤベルト
4 フレーム
4a 往路側フレーム
4b 復路側フレーム
5 シュートカバー
6 投入口
7 エンドカバー
8 排出口
9 空気孔
10 ブロワ
11 圧送管
11a 往路側への圧送管
11b 復路側への圧送管
12 空気ダクト
13 圧縮空気
14 流量調節弁
14a 往路側の流量調節弁
14b 復路側の流量調節弁
15 排気管
16 フィルター
17 粉体
18 低摩擦体供給装置
19 粉体タンク
20 攪拌槽
21 吸入管
22 供給管
23 混合量調節弁
24 ブロワからの圧縮空気
25 液体
26 液体タンク
27 ポンプ
28 除電器
29 温度センサー
30 制御部
31 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樋状又は円筒状のフレームの内側にコンベヤベルトを挿入し、該コンベヤベルトの下面側から圧縮空気を吹き付けて浮上させつつ、上面側に運搬物を載せて搬送する空気浮上式コンベヤにおいて、
前記圧縮空気に低摩擦体を混入する低摩擦体供給装置を備えた空気浮上式コンベヤ。
【請求項2】
前記低摩擦体が粉体又は液体である請求項1に記載の空気浮上式コンベヤ。
【請求項3】
前記粉体がデンプン又は超高分子量ポリエチレンからなる請求項2に記載の空気浮上式コンベヤ。
【請求項4】
前記液体が水である請求項2に記載の空気浮上式コンベヤ。
【請求項5】
前記粉体の静電気を除去する除電器を設けた請求項2又は3に記載の空気浮上式コンベヤ。
【請求項6】
前記フレームに前記コンベヤベルトの下面側の表面温度を測定する温度センサーを取り付けると共に、該温度センサーの測定値に基づいて前記低摩擦体供給装置における低摩擦体の混入量を制御する制御部を設けた請求項1〜5のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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