説明

空気清浄フィルタ及びそれを用いた空気清浄装置

【課題】ナノファイバーを利用した低圧力損失・高集塵効率の濾材を折り加工する際の集塵効率の低下を防いだ低圧力損失・高集塵効率のプリーツ状空気清浄フィルタの提供。
【解決手段】空気清浄フィルタ1は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維の集合体からなる基材層13と、基材層13の表面上に配置された平均繊維径10〜1000nmの繊維を構成成分として含む細繊維層14と、を有し、基材層13は二種類以上の異なった集塵効率を有する繊維の集合体から構成され、繊維の集合体のうち、最も集塵効率の高い繊維の集合体の部分で折り加工される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中に含まれる粉塵や有害物質を除去するための濾材を折り加工したプリーツ状空気清浄フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリーツ状空気清浄フィルタとしては、ガラス繊維や樹脂繊維からなる濾材を山折と谷折りを交互に繰り返すことでプリーツ形状に加工した空気清浄フィルタが知られていた。さらに空気清浄フィルタの低圧損化や高集塵効率化を目的に、濾材の低圧損化や高集塵効率化の取り組みがなされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、ダスト負荷方向に対し、最上流側に0.05〜1μmの平均繊維径を有する細繊維層を配し、該細繊維層と基材層が積層された構造を有したフィルタ濾材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−274144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術であっても、濾材としては低圧力損失・高集塵効率であるが、プリーツ形状にするための折り加工を行う際に、最上流側に配置された0.05〜1μmの平均繊維径を有する細繊維層の一部または全部が折り加工に耐えられず、切断され集塵効率が大幅に低下するという課題があり、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ナノファイバーを利用した低圧力損失・高集塵効率の濾材を折り加工しプリーツ状空気清浄フィルタとする際に、集塵効率の低下を防ぎ、低圧力損失・高集塵効率のプリーツ状空気清浄フィルタを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、上記本発明の空気清浄フィルタを用いてなる動作音(空気の空気清浄フィルタ通過時の風切り音)が静かで、消費電力が低く、集塵効率の高い空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、表面上に平均繊維径10〜1000nmの繊維を含む細繊維層を設けた基材層を二種類以上の異なった集塵効率を有する繊維の集合体で構成し、最も集塵効率の高い繊維の集合体の部分で折り加工されたプリーツ状空気清浄フィルタが、上記従来技術の有する課題を解決する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、濾材を折り加工したプリーツ状の空気清浄フィルタにおいて、濾材は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維の集合体からなる基材層と、基材層の表面上に配置された平均繊維径10〜1000nmの繊維を構成成分として含む細繊維層と、を有し、基材層は二種類以上の異なった集塵効率を有する繊維の集合体から構成され、繊維の集合体のうち、最も集塵効率の高い繊維の集合体の部分で折り加工されたプリーツ状空気清浄フィルタを提供する。
【0009】
本発明の空気清浄フィルタは、細繊維層の平均繊維径が10〜1000nmと、通常の繊維径(2〜20μm程度)より細いため、低圧力損失・高集塵効率の濾材とすることができ、その濾材をプリーツ状の空気清浄フィルタとするときに、折り目の部分の細繊維層の一部または全部が切断されても、集塵効率の高い基材層で集塵を行うことができるため、集塵効率の低下を防ぎ、低圧力損失・高集塵効率のプリーツ状の空気清浄フィルタを実現できる。
【0010】
また、本発明の空気清浄フィルタにおいては、特に、基材層は集塵効率の低い繊維の集合体の一部に集塵効率の高い繊維の集合体が積層されていることが好ましい。さらに、本発明の空気清浄フィルタにおいては、特に、樹脂繊維はポリエステルであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の空気清浄フィルタにおいては、基材層と細繊維層とは接着剤で結合されていることが好ましい。さらに、本発明の空気清浄フィルタにおいては、特に、繊維状のホットメルト接着剤であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の空気清浄フィルタにおいては、基材層または細繊維層のいずれかに抗菌剤がさらに含まれていることが好ましい。さらに、本発明の空気清浄フィルタにおいては、特に、抗菌剤は、カチオンに銀、亜鉛および銅からなる群より選択される少なくとも一種のカチオンを含むゼオライトであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、空気清浄フィルタを用いてなる空気清浄装置を提供する。このように、前述した空気清浄フィルタを用いることにより、動作音が静かで、消費電力が低く、集塵効率の高い空気清浄装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の空気清浄フィルタによれば、ナノファイバーを利用した低圧力損失・高集塵効率の濾材を折り加工した場合であっても、低圧力損失・高集塵効率のプリーツ状空気清浄フィルタを実現できる。
【0015】
また、本発明の空気清浄装置は、低圧力損失・高集塵効率の空気清浄フィルタを用いているので、動作音が静かで、消費電力が低く、集塵効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の空気清浄フィルタの第1実施形態及び第2実施形態の外観を示す斜視図
【図2】図1の空気清浄フィルタの展開模式図
【図3】本発明の空気清浄フィルタの第1実施形態における図2のRの部分の拡大断面模式図
【図4】本発明の空気清浄フィルタの第2実施形態における図2のRの部分の拡大断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の空気清浄フィルタおよび空気清浄装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(第1実施形態)
<空気清浄フィルタの第1実施形態>
以下、図1、図2及び図3を用いて本発明の空気清浄フィルタの第1実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の空気清浄フィルタの第1実施形態の外観を示す斜視図である。また、図2は、図1の空気清浄フィルタの展開模式図で、図3は、図2のRの部分の拡大断面模式図である。
【0020】
図1と図2に示すように、第1実施形態の空気清浄フィルタ1は、濾材6の折り加工部7で山折りあるいは谷折りされてプリーツ状に加工されている。また図3に示すように、図2の濾材6は、主として、繊維の集合体A11と繊維の集合体B12とから構成された基材層13と、この基材層13の表面上に配置された細繊維層14とから構成されており、図2の折り加工部7は、繊維の集合体B12が設けられた箇所である。なお、必要に応じて、基材層13と細繊維層14とを接着剤(図示せず)により接着、結合する。これにより、濾材6を折り加工する際、基材層13と細繊維層14との剥離を起こりにくくするために有用である。
【0021】
なお、空気清浄フィルタ1に面風速1cm/s以上の通気を行う場合、空気清浄フィルタ1を固定するための枠(図示せず)に入れ、空気清浄フィルタ1の周囲と枠とを接合することが好ましい。
【0022】
以下、第1実施形態の空気清浄フィルタ1を構成する濾材6の基材層13と細繊維層14について説明する。
【0023】
まず、基材層13について説明する。
【0024】
図3に示す基材層13は、後述する細繊維層14を支持する支持体となる部材である。この基材層13は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維の集合体を二種類以上組み合わせたものから構成される。なお、繊維の集合体は、公知の短繊維あるいは長繊維を織布あるいは不織布に加工して用いることが好ましい。不織布の場合、短繊維あるいは長繊維はお互いが絡み合った状態になっており、必要に応じて接着剤を用いて、絡み合いの強度を向上させても良い。
【0025】
基材層13は、図3に示すように、繊維の集合体A11と繊維の集合体B12とで構成されている。基材層13は、異なった集塵効率を有する繊維の集合体A11と繊維の集合体B12とを接合させて用いても良いし、場所ごとに異なった集塵効率を有する織布あるいは不織布を用いても良い。なお、ここで示す集塵効率とは、平均粒径が0.3〜0.5μmの塵を含む空気を、濾材6の面に対して面風速5.3cm/sで空気清浄フィルタ1に通気させたときの除去率を示す。すなわち、面風速5.3cm/sは空気清浄フィルタ1の投影面に対する面風速ではなく、空気清浄フィルタを展開した濾材6の面に対する面風速である。
【0026】
また、繊維の集合体B12は、プリーツ状に加工するために折り加工を行う位置、すなわち図2の折り加工部7に配置されている。
【0027】
繊維の集合体A11を構成する繊維の平均径は、1〜30μm程度が好ましい。平均繊維径が1μm以下であると強度が弱く、30μm以上であると繊維同士の空間が大きくなり、後述する細繊維層14を形成する平均繊維径10〜1000nmの繊維が繊維の集合体A11の深くまで入り込み、圧力損失を増大させるためである。なお、異なった平均繊維径の繊維を2種類以上混合して用いても良い。
【0028】
繊維の材質、形状、長さについては特に限定されず、基材層13の形状を保持でき、細繊維層14を支持できるものであれば良い。
【0029】
繊維の集合体A11の目付量については特に限定されないが、目付量が多すぎると圧力損失が大きくなってしまうため、面風速5.3cm/s時の圧力損失が20Pa以下を実現できる程度で、かつ細繊維層14を支持できる程度の目付量があれば良い。また、厚みについても特に限定されないが、後述する繊維の集合体B12と同程度が好ましい。集塵効率についても、特に限定されないが、上述した繊維の集合体A11を選択する場合、結果的に1〜20%程度になると推察される。
【0030】
繊維の集合体B12を構成する繊維の平均径は、1〜30μm程度が好ましい。平均繊維径が1μm以下であると強度が弱く、30μm以上であると繊維同士の空間が大きくなり、後述する細繊維層14を形成する平均繊維径10〜1000nmの繊維が繊維の集合体B12の深くまで入り込み、圧力損失を増大させるためである。なお、異なった平均繊維径の繊維を2種類以上混合して用いても良い。
【0031】
繊維の材質、形状、長さについては特に限定されず、基材層13の形状を保持でき、細繊維層14を支持できるものであれば良い。
【0032】
繊維の集合体B12の目付量については特に限定されないが、面風速5.3cm/s時の圧力損失が100Pa以下で、上述した集塵効率が80%以上を実現できる程度の目付量であれば良い。また、厚みについても特に限定されないが、折り加工の行い易さを考慮すると、0.1〜0.7mm程度が好ましい。特に、折り目同士の間隔を3〜5mm程度で、折り高さを20〜60mmとする場合、厚みは0.1〜0.4mm程度が好ましい。
【0033】
また、折り目同士の間隔を3〜5mm程度で、折り高さを20〜60mmの場合、繊維の集合体12Bの幅は1〜5mm程度が好ましい。繊維の集合体12Bの幅が1mm未満であると、折り加工を行う際、折り目が繊維の集合体B12から外れてしまう恐れがあり、5mmより大きいと、圧力損失が高い繊維の集合体B12の占める面積が大きくなり、空気清浄フィルタ1の圧力損失も高くなってしまう恐れがあるからである。
【0034】
次に、細繊維層14について説明する。
【0035】
図3に示す細繊維層14は、空気中の粉塵を捕集し、清浄空気を作り出す部材である。
【0036】
細繊維層14は、公知の高分子ポリマーを後述する電界紡糸法や溶融紡糸法などの加工技術により加工した平均繊維径10〜1000nmの繊維からなる。平均繊維径10〜1000nmの繊維は一般的にナノファイバーと称され、繊維径が細いため、繊維同士の隙間が小さくなり、集塵効率が向上する。さらには、繊維同士の隙間が小さいにも関わらず、スリップフロー効果と称される効果により、圧力損失の増加を防ぐことが出来る。すなわち、同じ集塵効率のナノファイバーからなる濾材と1000nmを超える繊維からなる濾材の圧力損失を比較すると、ナノファイバーからなる濾材の方が、圧力損失が小さい。
【0037】
公知の電界紡糸法や溶融紡糸法などの加工技術では、平均繊維径が10nm未満の紡糸が困難であり、平均繊維径が1000nmを超えた繊維は、繊維同士の隙間が大きくなるため、集塵効率の向上を向上させるためには目付量を増やしたり、厚みを増やしたりせねばならず、それにより圧力損失を増大してしまい、本発明には不向きである。また、細繊維層14を形成する繊維の形状は特に限定されないが、電界紡糸法などの公知の加工方法を利用すると、断面は概ね円形あるいは楕円形となる。
【0038】
公知の電界紡糸法により細繊維層14を作製する場合、高分子ポリマーを溶媒に溶解させた高分子ポリマー溶液を用いる必要がある。公知の高分子ポリマーとして、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリイミドベンザゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリウレタン、セルロース化合物、ポリペプチド、ポリヌクレオシド、ポリヌクレオチド、タンパク質、酵素や、それらの混合物を用いることができる。
【0039】
ここで、高分子ポリマーとしては、入手の容易性や取り扱い易さという観点から、ポリアクリロニトリルが好ましい。例えば、ポリアクリロニトリルは、シグマアルドリッチジャパン社製のポリアクリロニトリル「商品番号:181315」が好ましく挙げられる。
【0040】
また、高分子ポリマーを溶解させる溶媒としては、高分子ポリマーと相溶性があり、溶解させることが出来れば特に限定されない。これらの溶媒としては、水、アルコール類、有機溶剤等が挙げられ、具体的なアルコール類や有機溶剤としては、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸などの揮発性の高い溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジオキソラン、エチルメチルカーボネート、メチルホルマート、3−メチルオキサゾリジン−2−オン、メチルプロピオネート、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホランなどの揮発性が相対的に低い溶媒が挙げられる。または、上記溶剤を2種以上混合させて用いることも可能である。
【0041】
なお、高分子ポリマーとしてポリアクリロニトリルを選択した場合、溶媒としては、DMFが好ましく挙げられる。また、高分子ポリマーとして、ポリビニルアルコールやポリエチレンオキサイドを選択した場合、溶媒としては水が好ましく挙げられる。
【0042】
細繊維層14の目付量と厚みについては特に限定されないが、目付量が多く、厚みが厚くなると、圧力損失が増大するため、目付量は0.1〜3.0g/m2が好ましい。このときの細繊維層14の平均の厚みは、充填状態にもよるが、1〜10μm程度と本発明者らは推察している。
【0043】
ここで、本発明の効果をより確実に得るという観点から、基材層13と細繊維層14とが接着剤(図示せず)により結合されていることが好ましい。これにより、図2の濾材6を折り加工する際、基材層13と細繊維層14との剥離を起こりにくくするために有用である。接着剤は、公知の接着剤を用いることができ、基材層13と細繊維層14とを結合し、細繊維層14の繊維同士の空間を埋めないものであれば特に限定されない。好ましくは、繊維状のホットメルト接着剤を基材層13に塗布しておき、細繊維層14を配置後、ホットメルト接着剤の融点以上の温度に保持する。これにより、細繊維層14の繊維同士の空間を埋めることなく、基材層13と細繊維層14とを結合させることができる。
【0044】
また、基材層13または細繊維層14には抗菌剤(図示せず)を添加してもよい。これにより、空気清浄フィルタ1は低圧力損失・高集塵効率に加えて、優れた抗菌特性を有することができる。なお、抗菌剤は、抗菌効果の持続性という観点から基材層13に添加する方が、より好ましい。これは、基材層13の方が、添加する抗菌剤の量を多くすることが可能であるため、長期間、抗菌効果が持続するためである。
【0045】
このような抗菌剤としては、基材層13または細繊維層14に分散でき、抗菌効果を得ることができるものであれば特に限定されず、公知の抗菌剤を添加してよい。このような抗菌剤としては、例えば、ワサビなどの有機系の抗菌剤や、銀・亜鉛・銅などの無機系の抗菌剤などがあり、いずれを用いても良いが、耐熱性や耐酸化性などの耐久性という観点から、無機系の抗菌剤を使用することが好ましい。特に、入手の容易性、基材層13または細繊維層14への分散性などの観点から、カチオンに銀、亜鉛および銅からなる群より選択される少なくとも一種のカチオンを含むゼオライトを用いることが好ましい。
【0046】
例えば、無機系の抗菌剤としては、東亞合成社製の銀系無機抗菌剤「商品名:ノバロン」、カチオンに銀、亜鉛および銅からなる群より選択される少なくとも一種のカチオンを含むゼオライトとしては、シナネンゼオミック社製の無機抗菌剤「商品名:ゼオミック」などが好ましく挙げられる。これらの抗菌剤には防カビ効果も期待できるので、より好ましい。
【0047】
ここで、基材層13または細繊維層14に対する抗菌剤の添加量は、基材層13または細繊維層14と抗菌剤との合計質量の0.1〜3質量%とすることが好ましい。基材層13または細繊維層14に対する抗菌剤の添加量が0.1質量%以下であると抗菌性が発揮されにくく、基材層13または細繊維層14に対する抗菌剤の添加量が3質量%以上であると、圧力損失を増加させる可能性があるためである。
【0048】
本実施形態の空気清浄フィルタ1は、以上説明したように、濾材を折り加工したプリーツ状空気清浄フィルタにおいて、濾材は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維の集合体からなる基材層と、基材層の表面上に配置された平均繊維径10〜1000nmの繊維を構成成分として含む細繊維層と、を有し、基材層は二種類以上の異なった集塵効率を有する繊維の集合体から構成され、繊維の集合体のうち、最も集塵効率の高い繊維の集合体の部分で折り加工されたプリーツ状空気清浄フィルタであるため、細繊維層の平均繊維径が10〜1000nmと、通常の繊維径(2〜20μm程度)より細いため、低圧力損失・高集塵効率の濾材とすることができ、その濾材をプリーツ状空気清浄フィルタとするときに、折り目の部分の細繊維層の一部または全部が切断されても、集塵効率の高い基材層で集塵を行うことができるため、集塵効率の低下を防ぎ、低圧力損失・高集塵効率のプリーツ状空気清浄フィルタを実現できる。
【0049】
次に、本実施形態の空気清浄フィルタ1の製造方法の一例について説明する。
【0050】
空気清浄フィルタ1の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を用いて製造することができる。
【0051】
まず、基材層13を用意する。簡便には、基材層13はパルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維の集合体を二種類以上組み合わせた市販の織布あるいは不織布を利用する。
【0052】
また、基材層13、公知の抄紙機および抄紙方法を用いて製造することができる。以下に、基材層13の製造方法の一例を示す。
【0053】
まず、市販の適切なパルプ繊維を選択し、適量の水を加えた後、攪拌を行い、パルプスラリーを得る(原料調整工程)。この原料調整工程は特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。
【0054】
次に、原料調整工程で得られたパルプスラリーの攪拌した後、叩解を行い、目の細かい網の上に流し込む(添加・叩解工程)。この添加・叩解工程も特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。なお、抗菌剤の添加を行う場合、添加・叩解工程で添加しておくことが好ましい。
【0055】
次に、網の上に流し込んだパルプスラリーを、例えばローラーで圧して脱水し、乾燥装置を用いて乾燥を行い、抄紙を得る(抄紙工程)。なお、抄紙工程は、公知の抄紙機を用いて連続的に行うことができる。また、抄紙工程では、混抄紙の厚さを0.1〜0.7mm程度で調整することが好ましい。
【0056】
このようにして目付量の異なった二種類の抄紙を製造し、これらを接合させた後、形状を整えるなどして、基材層13とすることができる。
【0057】
さらに、市販の織布または不織布、または上述した方法で作製した基材層13の表面に、細繊維層14の製造を行う。細繊維層14についても、電界紡糸法などの公知の加工方法を利用して製造することができ、例えば、特開2008−246381等の公報に記載の公知の製造方法を利用して製造することができる。
【0058】
具体的には、市販のポリアクリロニトリルを市販のDMFに5〜10質量%で溶解させた溶液を電界紡糸法により、基材層13上に平均繊維径が10〜1000nm程度のいわゆるナノファイバーと称される繊維を吹き付けることで細繊維層14を形成させる(紡糸工程)。このとき、予め基材層13の表面に繊維状のホットメルト接着剤を塗布しておき、細繊維層14を配置後、ホットメルト接着剤の融点以上の温度に保持することで基材層13と細繊維層14との密着性を向上させることができる。
【0059】
また、紡糸工程で、ポリアクリロニトリルのナノファイバーを基材層13に吹き付けると同時に、ホットメルト接着剤を適切な溶媒に溶解させた溶液を同様の方法でホットメルト接着剤をナノファイバー化して吹き付けておき、ホットメルト接着剤の融点以上の温度に保持することで基材層13と細繊維層14との密着性を向上させることができる。
【0060】
<空気清浄フィルタの第2実施形態>
次に、図1、図2及び図4を用いて本発明の空気清浄フィルタの第2実施形態について説明する。
【0061】
図1は、本発明の空気清浄フィルタの第1実施形態の外観を示す斜視図である。また、図2は、図1の空気清浄フィルタの展開模式図で、図4は、図2のRの部分の拡大断面模式図である。上述の図1、図2及び図4に示した空気清浄フィルタの第1実施形態で説明した要素と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0062】
図4に示すように、濾材6は、主として、繊維の集合体A11の表面の一部に繊維の集合体B12を積層した基材層13と、この基材層13の表面上に配置された細繊維層14とから構成されており、図2の折り加工部7は、繊維の集合体A11の表面に繊維の集合体B12を積層した箇所である。
【0063】
以下、第2実施形態の空気清浄フィルタ1を構成する濾材6の基材層13について説明する。なお、空気清浄フィルタの第1実施形態と重複する箇所についての説明は省略する。また、細繊維層14については、空気清浄フィルタの第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0064】
図4に示す基材層13は、細繊維層14を支持する支持体となる部材である。この基材層13は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維の集合体を二種類以上組み合わせたものから構成される。
【0065】
基材層13は、図4に示すように、繊維の集合体A11の表面の一部に繊維の集合体B12が積層されている。なお、繊維の集合体A11および繊維の集合体B12は、複数層の繊維の集合体を積層したものであっても良い。また、繊維の集合体B12は、プリーツ状に加工するために折り加工を行う位置、すなわち折り加工部7に配置されている。
【0066】
繊維の集合体A11と繊維の集合体B12とは、接着剤により接着されていることが好ましい。接着剤は、繊維同士を貼り合わせることが可能な公知の接着剤を用いることができる。また、接着剤を用いない場合は、繊維の集合体A11と繊維の集合体B12の繊維同士の絡み合いにより結合されていることが好ましい。
【0067】
厚みについても特に限定されないが、折り加工の行い易さを考慮すると、繊維の集合体A11と繊維の集合体B12との合算の厚みは、0.2〜0.7mm程度が好ましい。繊維の集合体A11単体としての厚みは、0.1〜0.4mm程度、繊維の集合体B12単体としての厚みは、0.1〜0.6mm程度が好ましい。
【0068】
<空気清浄装置の第1実施形態>
次に、本発明の空気清浄装置の第1実施形態(本発明の空気清浄フィルタの第1実施形態または第2実施形態を用いて構成した空気清浄装置)について説明する。
【0069】
本発明の空気清浄装置の第1実施形態(図示せず)は、従来公知の空気清浄装置を構成する空気清浄フィルタを図1に示した空気清浄フィルタ1を用いて構成するものである。
【0070】
空気清浄装置として上記空気清浄フィルタ1を用いて構成されていればよく、特に限定されない。空気清浄フィルタ1を用いて構成された空気清浄装置は、本発明の低圧力損失・高集塵効率の空気清浄フィルタ1を用いて構成されているので、動作音が静かで、消費電力が低く、集塵効率が高い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明の空気清浄フィルタは、低圧力損失・高集塵効率であるため、家庭用または業務用の空気清浄装置において、ホコリや花粉などのアレルゲンを除去する空気清浄フィルタとして利用することができる。
【0072】
また、本発明の空気清浄フィルタは、空気清浄装置以外にも、低圧力損失・高集塵効率の空気清浄フィルタが必要な部材に利用することができ、例えば、掃除機やエアコン等の気流を伴う家庭用電化製品に搭載する除塵用フィルタに利用することができる。
【0073】
さらに、本発明の空気清浄フィルタは、家庭、オフィス、店舗、工場等の吸気口へ設置するホコリや花粉などのアレルゲンを除去する空気清浄フィルタとして利用することができる。
【0074】
また、本発明の空気清浄フィルタは、クリーンルーム用のHEPAフィルタやULPAフィルタとしても利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 空気清浄フィルタ
6 濾材
7 折り加工部
11 繊維の集合体A
12 繊維の集合体B
13 基材層
14 細繊維層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材を折り加工したプリーツ状空気清浄フィルタにおいて、
前記濾材は、パルプ繊維、樹脂繊維、炭素繊維および無機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維の集合体からなる基材層と、
前記基材層の表面上に配置された平均繊維径10〜1000nmの繊維を構成成分として含む細繊維層と、を有し、
前記基材層は二種類以上の異なった集塵効率を有する繊維の集合体から構成され、
前記繊維の集合体のうち、最も集塵効率の高い繊維の集合体の部分で折り加工されたプリーツ状の空気清浄フィルタ。
【請求項2】
前記基材層は集塵効率の低い繊維の集合体の一部に集塵効率の高い繊維の集合体が積層されてなる請求項1に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項3】
前記樹脂繊維はポリエステルである請求項1または2に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項4】
前記基材層と前記細繊維層とは接着剤で結合されている請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項5】
前記接着剤は、繊維状のホットメルト接着剤である請求項4に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項6】
前記基材層または細繊維層のいずれかに抗菌剤がさらに含まれている請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項7】
前記抗菌剤は、カチオンに銀、亜鉛および銅からなる群より選択される少なくとも一種のカチオンを含むゼオライトである請求項6に記載の空気清浄フィルタ。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の空気清浄フィルタを用いてなる空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196647(P2012−196647A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63833(P2011−63833)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】