説明

空気清浄機

【課題】天井の近傍に設置される空気清浄機において、メンテナンスの頻度を少なくしても充分な性能を発揮できるようにする。
【解決手段】空気清浄機は、天井の近傍に設置されるケーシング(11)と、該ケーシング(11)内の空気通路(20)に配置されて被処理空気を浄化する空気浄化手段(21,30,60)とを備えている。空気浄化手段(21,30,60)は、被処理空気中の塵埃を帯電させる荷電部(31)と、荷電部(31)で帯電させた塵埃を電気的に捕集する集塵部(40)とを有する電気集塵ユニット(30)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理空気を浄化する空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被処理空気を浄化する空気清浄機が知られている。例えば特許文献1には、この種の空気清浄機が開示されている。
【0003】
この空気清浄機は、室内等の床面に設置される床置き式に構成されている。空気清浄機は、前後に扁平なケーシングを備え、このケーシングの内部に被処理空気が流通する空気通路が形成されている。この空気通路には、フィルタや放電装置等が配置されている。フィルタでは、被処理空気中の塵埃が物理的に捕捉される。また、放電装置では、電極の間でストリーマ放電が行われ、この放電に伴って活性種が生成する。被処理空気中の臭気成分と活性種とが接触することで、臭気成分が分解/除去される。
【特許文献1】特開2005−262085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような空気清浄機を天井裏に設置したり、天井に埋め込んだり、天井近傍の壁面に据え付けたりすることが考えられる。即ち、空気清浄機を天井近傍に設置することで、住宅等の室内の有効なスペースを広く確保することができる。
【0005】
一方、このように空気清浄機を天井近傍に設置すると、空気清浄機のメンテナンスが煩雑となってしまう。具体的には、例えば被処理空気中の塵埃をフィルタによって捕捉するものでは、定期的にフィルタの清掃や交換を行う必要が生ずる。しかし、空気清浄機を天井近傍に設置すると、フィルタの取り外しや取り付け作業が困難となるため、ユーザー等によるメンテナンスの頻度が少なくなってしまう。その結果、フィルタに捕捉された塵埃の量が過多となり本来の塵埃の捕集機能が損なわれてしまうことがある。また、フィルタの目詰まりに起因して圧力損失が増大してしまい、送風機の動力が過大となってしまうこともある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、天井の近傍に設置される空気清浄機において、メンテナンスの頻度が少なくても充分に性能を発揮できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、天井の近傍に設置されるケーシング(11)と、該ケーシング(11)内の空気通路(20)に配置されて被処理空気を浄化する空気浄化手段(21,30,60)とを備えた空気清浄機を対象とし、上記空気浄化手段(21,30,60)は、上記被処理空気中の塵埃を帯電させる荷電部(31)と、該荷電部(31)で帯電させた塵埃を電気的に捕集する集塵部(40)とを有する電気集塵ユニット(30)を含んでいることを特徴とする。
【0008】
第1の発明の空気清浄機は、そのケーシング(11)が天井の近傍に設置される。つまり、空気清浄機のケーシング(11)は、例えば天井裏、天井面、天井近傍の壁面等に設置される。本発明では、被処理空気を浄化するための空気浄化手段として、電気集塵ユニット(30)が設けられる。電気集塵ユニット(30)では、まず、荷電部(31)において被処理空気中の塵埃が正又は負の電荷に帯電する。荷電部(31)で帯電した塵埃は、集塵部(40)に誘引されて電気的に捕捉される。これにより、被処理空気中の塵埃が除去される。
【0009】
このような電気集塵ユニット(30)は、例えば塵埃を物理的に捕捉するフィルタと比較すると、長期の運転を行っても性能が低下しにくい。また、電気集塵ユニット(30)は、フィルタのように目詰まりすることもないため、長期の運転を行っても圧力損失が増大しにくい。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記集塵部(40)は、空気流れに沿った多数の通気口(47,57)が形成された格子状の基台部(42,52)と、該基台部(42,52)から通気口(47,57)の軸方向と平行に延びる多数の突起部(43,53)とを有する第1及び第2の電極(41,51)を備え、該第1電極(41)の突起部(43)が第2電極(51)の通気口(57)の内部に延び、第2電極(51)の突起部(53)が第1電極(41)の通気口(57)の内部に延びるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、集塵部(40)に第1電極(41)と第2電極(51)とが設けられる。これらの電極(41,51)は、基台部(42,52)と突起部(43,53)とをそれぞれ有している。第1電極(41)の基台部(42)の通気口(47)には、第2電極(51)の突起部(53)が挿入され、第2電極(51)の基台部(52)の通気口(57)には、第1電極(41)の突起部(43)が挿入される。これにより、第1電極(41)の基台部(42)の通気口(47)の内周壁と第2電極(51)の突起部(53)との間には、電界が形成される。また、第2電極(51)の基台部(52)の通気口(57)の内周壁と第1電極(41)の突起部(43)との間にも、電界が形成される。被処理空気は、第1及び第2電極(41,51)の各基台部(42,52)の通気口(47,57)の内部を流れる。その結果、荷電部(31)で帯電した塵埃が通気口(47,57)の内周壁又は突起部(43,53)の外周に誘引されて付着する。これにより、被処理空気中の塵埃が除去される。
【0012】
以上のような構成の第1及び第2電極(41,51)では、塵埃を捕捉するための集塵面積が比較的大きくなるので、長期の運転を行っても性能が低下しにくい。また、空気流れに沿うように通気口(47,57)を形成しているため、長期の運転を行っても圧力損失が増大しにくい。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記荷電部(31)は、針状電極(33b)と対向電極(32)とを備え、針状電極(33b)が対向電極(32)よりも低電位となって両電極(33b,32)の間に電界を形成するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明の荷電部(31)では、針状電極(33b)と対向電極(32)との間に電界が形成される。針状電極(33b)は対向電極(32)よりも低電位となっている。このため、荷電部(31)では、低電位側となる針状電極(33b)から高電位側となる対向電極(32)に向かって電子が移動する。つまり、荷電部(31)では、電子が対向電極(32)へ衝突する、いわゆるマイナス放電が行われる。ここで、仮に例えば対向電極から針状電極へ放電を行うようにすると、針状電極に電子が衝突することで、比較的短い期間で針状電極が損耗/劣化してしまい、針状電極を交換しなければならなくなる。これに対し、本発明では、電子が針状電極(33b)ではなくて対向電極(32)へ衝突するため、針状電極(33b)の損耗/劣化を防止できる。
【0015】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記空気浄化手段(21,30,60)は、被処理空気中の臭気成分を捕捉する脱臭部(62)と、該脱臭部(62)に捕捉された臭気成分を分解する活性種を発生する放電部(61)とを有する脱臭ユニット(60)を含んでいることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、被処理空気を浄化するための浄化手段として、脱臭ユニット(60)が設けられる。脱臭ユニット(60)では、脱臭部(62)において、被処理空気中の臭気成分が捕捉される。また、放電部(61)では、放電に伴って活性種(電子、イオン、オゾン、ラジカル等)が生成する。脱臭部(62)に捕捉された臭気成分は、上記活性種によって分解/除去される。その結果、脱臭部(62)での臭気成分の浄化能力が回復する。
【0017】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つにおいて、上記空気浄化手段(21,30,60)は、上記電気集塵ユニット(30)の上流側に配置されるフィルタ部材(21)を含んでおり、該フィルタ部材(21)に捕捉された塵埃を掻き集める掻き取り部(25)を有するフィルタ掃除機構(22)を更に備えていることを特徴とする。
【0018】
第5の発明では、被処理空気を浄化するための浄化手段として、フィルタ部材(21)が設けられる。フィルタ部材(21)には、被処理空気中の塵埃が捕捉される。フィルタ部材(21)に捕捉された塵埃は、フィルタ掃除機構(22)の掻き取り部(25)によって掻き集められる。これにより、フィルタ部材(21)での集塵性能を回復させることができる。また、フィルタ部材(21)での塵埃の目詰まりも解消できる。
【0019】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、上記空気通路(20)には、被処理空気の温度と湿度の一方又は両方を調節するための空気調和手段(65,75,80)が設けられていることを特徴とする。
【0020】
第6の発明では、空気浄化手段(21,30,60)によって被処理空気が浄化されると共に、空気調和手段(65,75,80)によって被処理空気の温度や湿度が調節される。つまり、本発明の空気清浄機には、空気を調和する機能が付与される。
【0021】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、上記ケーシング(11)には、室外空気を上記空気通路(20)へ導入するための外気吸込口(12)が形成されていることを特徴とする。
【0022】
第7の発明では、外気吸込口(12)から空気通路(20)へ室外空気が導入され、この室外空気が空気浄化手段(21,30,60)で浄化されてから室内へ供給される。つまり、本発明では、室外空気を室内へ供給することで、室内の換気が行われる。ここで、室外空気は、室内空気と比較して塵埃等が多く含まれている。しかしながら、本発明では、上記の電気集塵ユニット(30)で塵埃を除去するようにしているので、塵埃の捕集性能が低下したり圧力損失が増大したりすることも回避できる。
【0023】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記ケーシング(11)には、室外空気を上記空気通路(20)へ導入するための外気吸込口(12)と、室内空気を上記空気通路(20)へ導入するための内気吸込口(17)とが形成されていることを特徴とする。
【0024】
第8の発明では、室外空気が外気吸込口(12)から空気通路(20)へ導入される。また、室内空気が内気吸込口(17)から空気通路(20)へ導入される。つまり、本発明では、室内空気と室外空気との双方が空気浄化手段(21,30,60)で浄化されて室内へ供給される。これにより、室内の換気を行いながら室内の清浄度を向上させることができる。
【0025】
第9の発明は、第7又は第8の発明において、室内空気を室外へ排出する排気手段(70,74)を更に備えていることを特徴とする。
【0026】
第9の発明では、室外空気が空気通路(20)を通じて室内へ供給されると共に、排気手段(70,74)によって室内空気が室外へ排出される。これにより、室内の換気効率が高まると共に、室内が陽圧となってしまうことも回避される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、空気清浄機のケーシング(11)を天井近傍に設置しているので、室内の有効なスペースを充分に確保することができる。また、空気浄化手段として電気集塵ユニット(30)を用いているため、例えばフィルタと比較して、長期の運転に伴う集塵性能の低下を防止でき、更には目詰まり等に起因する圧力損失の増大も防止できる。従って、天井近傍に設置されて比較的メンテナンスが煩雑となってしまう空気清浄機において、空気浄化手段(21,30,60)のメンテナンスの頻度を低減しながら、充分な性能を発揮させることができる。
【0028】
特に第2の発明では、格子状の基台部(42,52)と、基台部(42,52)の通気口(47,57)内に延出する突起部(43,53)とから成る第1と第2の電極(41,51)を組み合わせて集塵部(40)を構成している。このため、塵埃を捕集するための集塵面積を増大させることができるので、長期の運転に伴う集塵性能の低下を防止できる。また、通気口(47,57)は空気流れに沿うように形成されているので、圧力損失も低減できる。その結果、メンテナンスの頻度を更に少なくできる。
【0029】
第3の発明によれば、低電位側の針状電極(33b)から対向電極(32)へ向かってマイナス放電を行うようにしているので、針状電極(33b)の損耗/劣化を回避することができる。その結果、針状電極(33b)のメンテナンス頻度も低減できる。
【0030】
第4の発明によれば、被処理空気中の臭気成分を脱臭部(62)に捕捉させることで、被処理空気の清浄度を向上できる。ここで、脱臭部(62)に捕捉した臭気成分は、放電部(61)で発生した活性種によって分解することができる。これにより、脱臭部(62)での臭気成分の捕捉能力を回復させることができるので、脱臭部(62)の交換等のメンテナンスも不要となる。
【0031】
第5の発明によれば、フィルタ部材(21)によって被処理空気中の塵埃を捕捉することができる。また、フィルタ掃除機構(22)の掻き取り部(25)によってフィルタ部材(21)に捕捉された塵埃を取り除くことができるので、フィルタ部材(21)の交換等のメンテナンスも不要となる。
【0032】
第6の発明によれば、室内の清浄化と、室内の空調(温度調節や湿度調節)とを同時に行う空気清浄機を提供できる。また、第7や第8の発明によれば、室内の清浄化と、室内の換気とを同時に行う空気清浄機を提供できる。特に、第9の発明によれば、室外空気を室内へ供給しながら室内空気を室外へ排出することで、換気効率を向上させることができる。また、室内が陽圧となってしまい壁面等に結露が発生する、というような不具合も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0034】
《発明の実施形態1》
本実施形態の空気清浄機(10)は、被処理空気を浄化するものである。図1に示すように、実施形態1の空気清浄機(10)は、天井(C)の近傍に設置されるケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)は、上下に扁平な中空の直方体状に形成されている。このケーシング(11)は、天井(C)の裏面(上面)に設置されている。つまり、実施形態1の空気清浄機(10)は、いわゆる天井裏置き式に構成されている。
【0035】
実施形態1のケーシング(11)の一方の側面には、外気吸込口(12)が形成されている。外気吸込口(12)には、外気ダクト(13)の一端が接続している。外気ダクト(13)の他端部は、建物の壁体(W)を貫通して室外に延出している。この外気ダクト(13)の他端は、内径が拡大されて室外に臨んでいる。ケーシング(11)の他方の側面には、給気口(14)が形成されている。給気口(14)には、給気ダクト(15)の一端が接続している。給気ダクト(15)の他端側は、下方に折れ曲がって天井(C)を貫通して室内に延出している。給気ダクト(15)の他端は、内径が拡大されて室内に臨んでいる。
【0036】
ケーシング(11)の内部には、外気吸込口(12)側から給気口(14)側に向かって、被処理空気が流れる空気通路(20)が形成されている。空気通路(20)には、被処理空気を浄化するための空気浄化手段として、プレフィルタ(21)、電気集塵ユニット(30)、及び脱臭ユニット(60)が、上流側から下流側に向かって順に配列されている。また、これらの空気浄化手段の下流側には、室内へ空気を供給するための給気ファン(16)が設置されている。
【0037】
プレフィルタ(21)は、フィルタ部材を構成しており、被処理空気中の比較的大きな塵埃を物理的に捕捉する。プレフィルタ(21)は、長尺の帯状ないしシート状に形成されている。そして、プレフィルタ(21)は、閉ループ形となるように長手方向の両端が接合されている。
【0038】
空気清浄機(10)は、プレフィルタ(21)を掃除するためのフィルタ掃除機構(22)を備えている。フィルタ掃除機構(22)は、2つのローラ部(23,24)とブラシ機構(25)とによって構成されている。
【0039】
2つのローラ部(23,24)は、空気通路(20)の上側及び下側に並設されている。そして、2つのローラ部(23,24)の外側に、プレフィルタ(21)が巻回している。ローラ部(23,24)は、図示しないモータによって回転駆動される。ブラシ機構(25)は、プレフィルタ(21)に捕捉された塵埃を掻き取るための掻き取り部を構成しており、下側のローラ部(24)の下方に配置されている。プレフィルタ(21)は、ブラシ機構(25)のブラシ先端とローラ部(24)との間に挟まっている。ローラ部(23,24)が回転駆動されると、プレフィルタ(21)は、被処理空気に臨む面が変位するようにローラ部(23,24)の外側を旋回する。プレフィルタ(21)の旋回時には、ブラシ機構(25)のブラシ先端がプレフィルタ(21)の捕集面と摺接する。これにより、プレフィルタ(21)に捕集されていた塵埃がブラシ機構(25)によって掻き取られる。掻き取られた塵埃は、図示しないダストボックス等に捕集される。捕集された塵埃は、例えば室内から掃除機のノズル等によって回収されるか、あるいは空気搬送等により室外へ排出される。
【0040】
電気集塵ユニット(30)は、被処理空気中の比較的小さな塵埃を電気的に捕集する。電気集塵ユニット(30)は、イオン化部(31)と集塵部(40)とによって構成されている。
【0041】
イオン化部(31)は、被処理空気中の塵埃を帯電させる荷電部を構成している。図2(A)及び(B)に示すように、イオン化部(31)は、棒状電極(32)と鋸歯状電極(33)と電源(34)とを有している。電源(34)は、直流の高圧電源である。棒状電極(32)は電源(34)のプラス側と接続し、鋸歯状電極(33)は電源(34)のマイナス側と接続している。また、電源(34)のプラス側は接地されている。これにより、棒状電極(32)がゼロ電位となり、鋸歯状電極(33)がマイナス電位となっている。つまり、イオン化部(31)では、鋸歯状電極(33)の電位が棒状電極(32)の電位がよりも低くなっている。
【0042】
空気通路(20)には、複数の上記棒状電極(32)が互いに平行に配列されている。棒状電極(32)は、空気流れと直交するように水平に延びている。本実施形態の棒状電極(32)の横断面は略円形状をしているが、これに限らず例えば略矩形状であっても良い。また、棒状電極(32)は、少なくとも1本あれば良いが、2本以上であることが好ましい。また、鉛直方向に延びる棒状電極(32)を左右方向(水平方向)に配列しても良い。
【0043】
鋸歯状電極(33)は、基板部(33a)と針状電極(33b)とで構成されている。基板部(33a)は、複数の棒状電極(32)の間の中間位置に配置され、棒状電極(32)と平行となるように延びている。つまり、基板部(33a)は、空気流れと直交するように水平に延びている。また、本実施形態の基板部(33a)は、平板状に形成されて、その厚さ方向が空気流れの方向と略一致する姿勢となっている。基板部(33a)の幅方向の両端には、複数の上記針状電極(33b)がそれぞれ形成されている。本実施形態の針状電極(33b)は、先鋭な針状ないし突起状に形成されて、各棒状電極(32)に向かって突出している。これにより、上記棒状電極(32)は、針状電極(33b)に対向する対向電極を構成している。
【0044】
集塵部(40)は、イオン化部(31)で帯電した塵埃を電気的に誘引して捕捉するものである。図3〜5に示すように、集塵部(40)は、集塵用電極(41)と電界形成用電極(51)とを備えている。集塵用電極(41)と電界形成用電極(51)とでは、いずれか一方が第1電極を構成し、他方が第2電極を構成している。集塵用電極(41)は直流高圧電源(図示省略)のプラス側に接続され、電界形成用電極(51)が直流高圧電源のマイナス側に接続されている。また、直流高圧電源のプラス側は接地されており、集塵用電極(41)がゼロ電位となり、電界形成用電極(51)がマイナス電位となっている。
【0045】
集塵用電極(41)と電界形成用電極(51)とは、一体的に成形された導電性樹脂で構成されている。集塵用電極(41)と電界形成用電極(51)とは何れも微導電性の樹脂であることが好ましく、更には、樹脂の体積抵抗率が10Ωcm以上で1013Ωcm未満であることが好ましい。
【0046】
集塵用電極(41)と電界形成用電極(51)とは、1つの基台部(42,52)と、該基台部(42,52)から突出する多数の突起部(43,53)とをそれぞれ備えている。基台部(42,52)は、枠体(44,54)と、枠体(44,54)の内部に設けられた複数の縦仕切部材(45,55)及び横仕切部材(46,56)とが一体的に形成されている。
【0047】
枠体(44,54)は、矩形状に形成されている。集塵用電極(41)の枠体(44)と電界形成用電極(51)の枠体(54)とは、各々の基台部(42,52)が対向する姿勢となるように、枠体(44,54)の四隅の角部が互いに固定される。また、各基台部(42,52)は、空気通路(20)において空気流れと直交する姿勢となっており、集塵用電極(41)の基台部(42)が上流側寄りに、電界形成用電極(51)の基台部(52)が下流側寄りに位置している。
【0048】
集塵用電極(41)及び電界形成用電極(51)では、縦仕切部材(45,55)が鉛直に延び、横仕切部材(46,56)が水平に延び、縦仕切部材(45,55)及び横仕切部材(46,56)とが縦横に交差するように配列されている。そして、基台部(42,52)には、枠体(44,54)と縦仕切部材(45,55)と横仕切部材(46,56)とによって囲まれる多数の通気口(47,57)が形成されている。つまり、基台部(42,52)は、空気流れに沿った多数の通気口(47,57)が形成された四角格子構造となっている。
【0049】
集塵用電極(41)と電界形成用電極(51)の縦仕切部材(45,55)は、両者の電極(41,51)を固定した組立て状態において、互いに離間しながら同一平面上に位置するように構成されている。これに対し、集塵用電極(41)と電界形成用電極(51)の横仕切部材(46,56)は、両者の電極(41,51)の組立て状態において、上下方向に千鳥配列となるように構成されている(図4及び図5を参照)。
【0050】
集塵用電極(41)及び電界形成用電極(51)では、上記突起部(43,53)が横仕切部材(46,56)から軸方向に突出している。突起部(43,53)は、横仕切部材(46,56)と厚さが等しい平板状の突出片で構成され、相対する電極(41,51)の通気口(47,57)の内部へ延びている。そして、隣り合う突起部(43,53)の横方向の隙間には、相対する電極(41,51)の横仕切部材(46,56)が位置している。また、突起部(43,53)は、相対する基台部(42,52)の内部中央に位置している。これにより、通気口(47,57)では、突起部(43,53)の上方と下方とを空気が流れる。集塵用電極(41)の突起部(43)と電界形成用電極(51)の突起部(53)とは、相互の間隔が1.0mm〜2.0mmであることが好ましく、更には1.6mmであることが好ましい。
【0051】
集塵用電極(41)の突起部(43)は、電界形成用電極(51)の縦仕切部材(55)と横仕切部材(56)とによって囲まれている。集塵用電極(41)の突起部(43)と、各仕切部材(55,56)との間の距離は概ね等しくなっている。集塵用電極(41)の突起部(43)と各仕切部材(55,56)との間には、通気口(57)の横断面において、放射状の電界が形成される。同様に、電界形成用電極(51)の突起部(53)は、集塵用電極(41)の縦仕切部材(45)と横仕切部材(46)とによって囲まれている。電界形成用電極(51)の突起部(53)と、各仕切部材(45,46)との間の距離は概ね等しくなっている。電界形成用電極(51)の突起部(53)と各仕切部材(45,46)との間には、通気口(47)の横断面において、放射状の電界が形成される。
【0052】
図1に示すように、脱臭ユニット(60)は、被処理空気中の臭気成分(無臭の有害成分を含む)を除去する。脱臭ユニット(60)は、放電部(61)と、該放電部(61)の下流側に配置される触媒フィルタ(62)とを有している。放電部(61)は、高圧の直流電圧が印加される一対の電極を有している。例えば放電部(61)では、線状ないし棒状の放電電極が、平板状の対向電極と実質的に平行となるように配置されている。放電部(61)では、放電電極の先端から対向電極に向かってストリーマ放電が進展し、低温プラズマが生成される。これにより、放電部(61)では、臭気成分と反応性の高い活性種(電子、イオン、オゾン、ラジカルなど)が生成される。
【0053】
触媒フィルタ(62)は、複数の通気孔が形成されたメッシュ状、ハニカム状、格子状等の基材の表面に、触媒や吸着剤等の機能材料が担持されて構成されている。触媒としては、マンガン系触媒や貴金属系触媒等が用いられ、吸着剤としてはゼオライトや活性炭等が用いられる。触媒フィルタ(62)は、臭気成分を捕捉する脱臭部を構成している。つまり、触媒フィルタ(62)では、被処理空気中の臭気成分が吸着/分解されて除去される。触媒フィルタ(62)に吸着された臭気成分は、放電部(61)で発生した活性種によって徐々に分解されていく。
【0054】
−運転動作−
次に、空気清浄機(10)の運転動作について説明する。図1に示すように、給気ファン(16)が駆動されると、室外空気が外気ダクト(13)内に吸い込まれる。外気ダクト(13)を流出した室外空気は、外気吸込口(12)からケーシング(11)内の空気通路(20)へ導入される。
【0055】
空気通路(20)を流れる被処理空気は、まず、プレフィルタ(21)を通過する。プレフィルタ(21)では、被処理空気中に含まれる比較的大きな塵埃が捕集される。プレフィルタ(21)を通過した被処理空気は、電気集塵ユニット(30)の近傍を流通する。
【0056】
まず、被処理空気はイオン化部(31)を流れる。ここで、イオン化部(31)では、棒状電極(32)と鋸歯状電極(33)との間に直流電圧が印加されている。これにより、イオン化部(31)では、針状電極(33b)が棒状電極(32)よりも低電位となりながら、これらの電極(33b,32)の間に電界が形成される。その結果、針状電極(33b)の先端から棒状電極(32)へ向かって電子やマイナスイオン等が移動し、これらの電子等が棒状電極(32)へ衝突する。被処理空気が、これらの電極(33b,32)の間を流れると、被処理空気中の塵埃がマイナスに帯電される。
【0057】
マイナスに帯電した塵埃を含む被処理空気は、集塵部(40)を流れる。集塵部(40)では、集塵用電極(41)と電界形成用電極(51)との間に直流電圧が印加されている。被処理空気が、集塵用電極(41)の基台部(42)の通気口(47)を流れると、マイナスに帯電した塵埃は通気口(47)の内周壁に誘引され、この内周壁に付着する。その後、被処理空気が電界形成用電極(51)の基台部(52)の通気口(57)を流れると、マイナスに帯電した塵埃は突起部(43)の外周面に付着する。以上のように、集塵部(40)では、集塵用電極(41)の表面に塵埃が付着して捕捉される。
【0058】
電気集塵ユニット(30)を通過した空気は、脱臭ユニット(60)の近傍を流れる。脱臭ユニット(60)の放電部(61)では、放電電極と対向電極との間でストリーマ放電が行われており、空気中で活性種が生成されている。この活性種が被処理空気中の臭気成分と接触することで、臭気成分が酸化分解されて除去される。また、被処理空気が触媒フィルタ(62)を通過すると、被処理空気中の臭気成分が触媒フィルタ(62)に吸着されて除去される。触媒フィルタ(62)に吸着された臭気成分は、放電部(61)で生成された活性種によって徐々に分解されていく。これにより、触媒フィルタ(62)における臭気成分の捕捉能力(吸着能力)が回復することになる。
【0059】
脱臭ユニット(60)で臭気成分が除去された空気は、空気通路(20)から給気口(14)を通じて給気ダクト(15)へ流入し、その後に室内へ供給される。その結果、室内の清浄化が図られると共に、室外空気が室内へ供給されて換気が行われる。
【0060】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1によれば、空気清浄機(10)を天井裏に設置している。このため、例えば空気清浄機(10)の室内の床面に設置する場合と比較して、室内の居住スペースを充分確保することができる。一方、このように空気清浄機(10)を天井裏に設置してしまうと、この空気清浄機(10)の各種の機能部品のメンテナンス作業が非常に煩雑となってしまう。従って、空気清浄機(10)では、メンテナンスの頻度を必要最低限とすることが好ましい。そこで、上記実施形態1では、以下のようにしてメンテナンスの頻度を低減するようにしている。
【0061】
まず、被処理空気中の塵埃を捕集する手段として、電気集塵ユニット(30)を用いるようにしている。電気集塵ユニット(30)は、被処理空気中の塵埃を物理的に捕集するフィルタと比較すると、長期間に亘って運転を行っても集塵性能が低下しにくい。また、電気集塵ユニット(30)では、フィルタのように塵埃が目詰まりしてしまうこともない。このため、電気集塵ユニット(30)では、長期間に亘ってメンテナンスを行わないでも充分に塵埃を除去することができる。
【0062】
また、集塵部(40)では、格子構造の基台部(42,52)と突起部(43,53)とを組み合わせることにより、塵埃を捕集するための集塵面積を比較的広く取ることができる。従って、集塵用電極(41)の集塵性能を長期に亘って保証でき、メンテナンスの頻度を低減できる。また、基台部(42,52)の通気口(57)は、空気流れに沿うように形成されているので、圧力損失の低減を図ることができる。従って、給気ファン(16)の動力の低減を図ることができる。
【0063】
更に、イオン化部(31)では、針状電極(33b)から棒状電極(32)へ向かって電子等が移動するように針状電極(33b)の電位を棒状電極(32)の電位よりも低くしている。これにより、針状電極(33b)のメンテナンスの頻度を低減できる。即ち、仮に棒状電極(32)から針状電極(33b)へ向かって電子等が移動するようにすると、電子等が衝突された針状電極(33b)の先端が損耗/劣化し易くなり、針状電極(33b)の交換頻度が多くなる。これに対し、本実施形態では、棒状電極(32)側へ電子が衝突するので、針状電極(33b)の耐久性を保証してメンテナンスの頻度を低減できる。
【0064】
また、上記実施形態では、プレフィルタ(21)に捕集された塵埃を掻き集めるためのフィルタ掃除機構(22)を用いているので、プレフィルタ(21)での塵埃の目詰まりも回避でき、プレフィルタ(21)の交換等のメンテナンスの頻度も低減できる。
【0065】
また、上記実施形態では、触媒フィルタ(62)に臭気成分を吸着させた後、この臭気成分をストリーマ放電により発生させた活性種によって分解・除去するようにしている。このため、触媒フィルタ(62)の吸着性能の低下を防止でき、触媒フィルタ(62)の交換等のメンテナンスの頻度も低減できる。
【0066】
更に、上記実施形態では、室外空気を取り込んで室内へ供給するようにしているので、室内の清浄化と共に室内の換気を行うことができる。
【0067】
〈実施形態1の変形例1〉
図6に示す変形例1の空気清浄機(10)は、上記実施形態1のケーシング(11)において、更に内気吸込口(17)が形成されている。内気吸込口(17)には、内気ダクト(18)の一端が接続している。内気ダクト(18)の他端側は、下方に折れ曲がって天井(C)を貫通して室内に延出している。内気ダクト(18)の他端は、内径が拡大して室内に臨んでいる。
【0068】
以上のように変形例1の空気清浄機(10)のケーシング(11)には、室外空気を空気通路(20)へ導入するための外気吸込口(12)と、室内空気を空気通路(20)へ導入するための内気吸込口(17)とが並列な関係で形成されている。従って、給気ファン(16)が駆動されると、室内空気と室外空気との双方が空気通路(20)へ導入されて混合される。この空気は、上記実施形態1と同様、各種の空気浄化手段によって浄化されて室内へ供給される。
【0069】
変形例1の空気清浄機(10)では、室外空気のみを吸い込んで室内へ供給する場合と比較して、室内を比較的早く清浄化できる。また、室外空気のみを吸い込んで室内へ供給する場合と比較して、室内の熱を有効に利用でき、室内の空調負荷の低減を図ることができる。更に、室外空気を取り込むことで、室内の換気も行うことができる。
【0070】
〈実施形態1の変形例2〉
図7に示す変形例2の空気清浄機(10)は、室内空気を内気ダクト(18)及び内気吸込口(17)を通じて空気通路(20)へ導入し、この空気を浄化してから室内へ供給するものである。つまり、変形例2の空気清浄機(10)は、変形例1の構成において、外気吸込口(12)及び外気ダクト(13)を削除したものである。変形例2の空気清浄機(10)では、室内の空気を循環させることで、室内を速やかに清浄化することができ、且つ室内の空調負荷も効果的に低減できる。
【0071】
〈実施形態1の変形例3〉
図8に示す変形例3の空気清浄機(10)は、変形例2の空気清浄機(10)において、ケーシング(11)内の空気通路(20)に熱交換器(65)が設けられたものである。熱交換器(65)は、例えば蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる冷媒回路(図示省略)に接続されており、蒸発器や凝縮器として機能する。熱交換器(65)では、冷媒回路を流れる冷媒と、被処理空気とが熱交換する。つまり、熱交換器(65)は、被処理空気の温度を調節するための空気調和手段を構成している。この例では、熱交換器(65)が、触媒フィルタ(62)の下流側に配置されている。従って、空気通路(20)を流れる空気は、各種の空気浄化手段で浄化された後、熱交換器(65)によって加熱又は冷却されて室内へ供給される。以上のように、変形例3の空気清浄機(10)では、室内の清浄化と同時に室内の冷房や暖房を行うことができる。
【0072】
〈実施形態1の変形例4〉
図9に示す変形例4の空気清浄機(10)では、ケーシング(11)に排気通路(70)が形成されている。排気通路(70)の一端は、室内導入口(71)を介して室内と連通している。また、排気通路(70)の他端は、排気口(72)及び排気ダクト(73)を介して室外と連通している。更に、排気通路(70)には、排気ファン(74)が設置されている。以上のように、変形例4では、排気通路(70)及び排気ファン(74)が、室内空気を室外へ排出するための排気手段を構成している。
【0073】
変形例4では、空気通路(20)と排気通路(70)とに跨るように全熱交換器(75)が設けられている。具体的には、全熱交換器(75)には、室外から空気通路(20)へ取り込んだ被処理空気(室外空気)が流通可能な通気孔と、室内から排気通路(70)へと取り込んだ室内空気が流通可能な通気孔とが区画されている。そして、全熱交換器(75)では、被処理空気と室内空気との顕熱及び潜熱の双方が熱交換する。つまり、全熱交換器(75)は、被処理空気の温度と湿度との双方を調節するための空気調和手段を構成している。
【0074】
空気清浄機(10)が運転されると、給気ファン(16)及び排気ファン(74)が駆動される。これにより、室外空気が被処理空気として空気通路(20)へ取り込まれ、室内空気が排気通路(70)へ取り込まれる。被処理空気は、各種の空気浄化手段で浄化された後、全熱交換器(75)を通過する。例えば夏季においては、全熱交換器(75)を流れる被処理空気が、排気通路(70)側の室内空気によって冷却される。また、被処理空気中の水分が排気通路(70)側の室内空気へ付与される。その結果、比較的低温且つ低湿の被処理空気を室内へ供給することができる。また、例えば冬季においては、全熱交換器(75)を流れる被処理空気が、排気通路(70)側の室内空気によって加熱される。また、排気通路(70)側の室内空気中の水分が被処理空気へ付与される。その結果、比較的高温且つ高湿の被処理空気を室内へ供給することができる。
【0075】
以上のように、変形例4では、室内の清浄化と同時に室内の温度や湿度を調節することができる。また、変形例4では、室外空気を室内へ供給すると同時に室内空気を室外へ排出するようにしている。このため、室内の換気効率が高くなり、室内環境を良好に保つことができる。また、このようにすると、室内が陽圧となってしまうことを回避できるので、例えば室内の壁面等で結露が生じてしまうといった不具合も回避できる。しかも、全熱交換器(75)を用いることで、室内の潜熱負荷や顕熱負荷を軽減できる。
【0076】
なお、図9に示す例では、空気通路(20)において、全熱交換器(75)を各種の空気浄化手段の下流側に配置している。しかしながら、この全熱交換器(75)は、例えば図10に示すように、各種の空気浄化手段(ここでは、プレフィルタ(21))の上流側に配置するようにしても良い。図10に示す構成では、例えば夏季において、高湿の空気を全熱交換器(75)によって除湿することができる。その結果、被処理空気中の水分が各種の空気浄化手段に付着してしまうことを回避でき、これにより、空気浄化手段による空気浄化の機能が損なわれてしまうことを防止できる。
【0077】
〈実施形態1の変形例5〉
図11に示す変形例5の空気清浄機(10)は、変形例4の全熱交換器(75)に換わって、デシカントロータ(80)を用いたものである。具体的には、変形例5のケーシング(11)では、変形例4と同様にして、排気ファン(74)が設置される排気通路(70)が形成されている。
【0078】
変形例5のデシカントロータ(80)は、円板状の基板の表面に吸着剤が担持されており、被処理空気の湿度を調節する空気調和手段を構成している。デシカントロータ(80)は、空気通路(20)と排気通路(70)とに跨りながら回転自在に支持されている。これにより、デシカントロータ(80)では、空気通路(20)に面する吸着領域(81)と排気通路(70)に面する再生領域(82)とが形成されている。更に、排気通路(70)には、デシカントロータ(80)の再生領域(82)の上流側にヒータ(83)が設置されている。ヒータ(83)は、排気通路(70)に導入された室内空気を加熱するための加熱手段を構成している。
【0079】
変形例5の空気清浄機(10)の空気通路(20)では、プレフィルタ(21)を通過した後の被処理空気が、デシカントロータ(80)の吸着領域(81)を流通する。その結果、被処理空気中の水分が吸着領域(81)に吸着され、被処理空気の除湿が行われる。除湿された空気は、電気集塵ユニット(30)及び脱臭ユニット(60)を通過し、上述のようにして浄化される。
【0080】
一方、排気通路(70)へ導入された室内空気は、ヒータ(83)によって加熱された後、デシカントロータ(80)の再生領域(82)を通過する。再生領域(82)では、水分が吸着された吸着剤が空気によって加熱され、吸着剤から水分が脱離(脱着)する。その結果、吸着剤が再生される。再生された吸着剤は、吸着領域(81)側へ変位し、被処理空気の除湿に利用される。
【0081】
以上のように、変形例5では、室内の清浄化と同時に室内の湿度を調節することができる。また、変形例5においても、変形例4と同様、室外空気を室内へ供給すると同時に室内空気を室外へ排出して換気効率を高めることができる。更に、デシカントロータ(80)で被処理空気を除湿することで、電気集塵ユニット(30)や脱臭ユニット(60)に水分が付着してしまって性能が低下するのを回避できる。
【0082】
《発明の実施形態2》
図12に示すように、実施形態2に係る空気清浄機(10)は、天井(C)の近傍に設置されるケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)は、天井(C)の開口部に嵌め込まれ、その下面側が室内に臨むように配設されている。つまり、実施形態2の空気清浄機(10)は、いわゆる天井埋込式に構成されている。
【0083】
実施形態2のケーシング(11)の下面には、内気吸込口(17)と給気口(14)とが形成されている。内気吸込口(17)は、ケーシング(11)の下面の中央部に形成されている。給気口(14)は、ケーシング(11)の下面における内気吸込口(17)の外周側に形成されている。ケーシング(11)の内部には、内気吸込口(17)から給気口(14)に亘って、被処理空気が流れる空気通路(20)が形成されている。
【0084】
空気通路(20)には、上記実施形態1と同様の電気集塵ユニット(30)が設けられている。また、電気集塵ユニット(30)の下流側には、室内へ空気を供給するための給気ファン(16)が設けられている。実施形態2の給気ファン(16)は、遠心ファン(ターボファン)で構成されている。
【0085】
給気ファン(16)が駆動されると、室内空気が内気吸込口(17)より空気通路(20)へ導入される。イオン化部(31)では、被処理空気中の塵埃が帯電される。帯電後の塵埃は、集塵部(40)の集塵用電極(41)に捕集される。以上のようにして塵埃が除去された被処理空気は、空気通路(20)の外周側へ送られ、給気口(14)から室内へ供給される。
【0086】
実施形態2の空気清浄機(10)においても、天井埋込式であるために空気浄化手段等の機能部品のメンテナンスが煩雑となってしまう。しかしながら、実施形態2においても、空気浄化手段として電気集塵ユニット(30)を用いているため、メンテナンスの頻度を低減することができる。
【0087】
〈実施形態2の変形例1〉
図13に示す変形例1の空気清浄機(10)は、上記実施形態2の構成にプレフィルタ(21)とフィルタ掃除機構(22)と脱臭ユニット(60)を付加したものである。つまり、この変形例1の空気清浄機(10)では、上記実施形態1と同様、空気通路(20)の上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(21)、電気集塵ユニット(30)、及び脱臭ユニと(60)が順に配置されている。
【0088】
この例においても、プレフィルタ(21)で捕集された塵埃をフィルタ掃除機構(22)で自動的に清掃することができる。また、触媒フィルタ(62)に吸着された臭気成分を、放電部(61)で生成された活性種によって除去することができる。従って、プレフィルタ(21)や触媒フィルタ(62)のメンテナンスの頻度を低減できる。
【0089】
〈実施形態2の変形例2〉
図14に示す変形例2の空気清浄機(10)は、図13に示す変形例1の構成において、脱臭ユニット(60)に換わって熱交換器(65)を用いている。熱交換器(65)は、上述した図8の例と同様、被処理空気の温度を調節するための空気調和手段を構成している。この例では、室内の清浄化と室内の冷房や暖房を同時に行うことができる。
【0090】
《発明の実施形態3》
図15に示すように、実施形態3に係る空気清浄機(10)は、天井(C)の近傍に設置されるケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)は、天井(C)の下側近傍であって、室内の壁面(W)に取り付けられている。つまり、実施形態3の空気清浄機(10)は、いわゆる壁掛け式に構成されている。
【0091】
ケーシング(11)には、その前面側から上側に亘って、内気吸込口(17)が形成されている。また、ケーシング(11)には、その下側に給気口(14)が形成されている。ケーシング(11)内には、内気吸込口(17)から給気口(14)に亘って、被処理空気が流れる空気通路(20)が形成されている。空気通路(20)には、プレフィルタ(21)、電気集塵ユニット(30)、及び熱交換器(65)が、上流側から下流側に向かって順に配列されている。また、空気通路(20)には、プレフィルタ(21)に捕集された塵埃を掃除するためのフィルタ掃除機構(22)が設けられている。更に、空気通路(20)には、熱交換器(65)の下流側に給気ファン(16)が設けられている。
【0092】
給気ファン(16)が運転されると、室内空気が内気吸込口(17)より空気通路(20)へ導入される。被処理空気がプレフィルタ(21)を通過すると、被処理空気中の塵埃がプレフィルタ(21)に捕集される。次いで、電気集塵ユニット(30)で被処理空気中の比較的小さな塵埃が捕集される。塵埃が除去された被処理空気は、熱交換器(65)で冷媒と熱交換して温度が調節される。以上のようにして浄化され、且つ温度が調節された被処理空気は、給気口(14)を通じて室内へ供給される。
【0093】
実施形態3の空気清浄機(10)においても、天井近傍の壁面に取り付けられているために空気浄化手段等の機能部品のメンテナンスが煩雑となってしまう。しかしながら、実施形態3においても、空気浄化手段として電気集塵ユニット(30)を用いているため、メンテナンスの頻度を低減することができる。
【0094】
〈実施形態3の変形例〉
図16に示す変形例の空気清浄機(10)は、上記実施形態3の構成において、熱交換器(65)に換わって脱臭ユニット(60)を設けたものである。また、実施形態3では、ケーシング(11)の上部に内気吸込口(17)が形成され、下部に給気口(14)が形成されている。ケーシング(11)の内部には、内気吸込口(17)から給気口(14)に亘って、上下方向に空気通路(20)が形成されている。この例においても、電気集塵ユニット(30)やプレフィルタ(21)等のメンテナンスの頻度を低減することができる。
【0095】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0096】
上述した各実施形態において、集塵部(40)では、導電性樹脂から成る2つの電極(41,51)を用いているが、いずれか一方又は両方を金属製としても良い。
【0097】
また、イオン化部(31)を図17(A)〜(C)に示すような構成としても良い。図17(A)〜(C)では、空気流れに沿うように鋸歯状電極(33)が配置されている。つまり、図17に示す鋸歯状電極(33)では、一方の側端面に形成された針状電極(33b)が、空気流れの下流側に向かって突出し、他方の側端面に形成された針状電極(33b)が空気流れの上流側に向かって突出している。
【0098】
図17(A)の例では、針状電極(33b)の両側に配置される一対の棒状電極(32,32)が2組設けられている。これらの一対の棒状電極(32,32)は、対応する針状電極(33b)の先端部と、空気流れと直交する方向に略一致するように配置されている。これにより、針状電極(33b)から棒状電極(32)へ向かって移動する電子等が、棒状電極(32)へ到達(衝突)し易くなり、いわゆる衝突荷電を促すことができる。
【0099】
また、図17(B)の例では、鋸歯状電極(33)の基板部(33a)の両側に一対の棒状電極(32,32)が1組設けられている。これにより、一対の棒状電極(32,32)は、針状電極(33b)の先端部と、空気流れと直交する方向において互いにずれている。これにより、針状電極(33b)の先端部と棒状電極(32)との距離が、図17(A)の例よりも大きくなる。このため、針状電極(33b)から棒状電極(32)へ向かって移動する電子等が、棒状電極(32)へ到達しにくくなり、いわゆる拡散荷電を促すことができる。
【0100】
更に、図17(C)の例では、空気流れの下流側において、針状電極(33b)と一対の棒状電極(32,32)とを空気流れと直交する方向に一致させ、上流側において、針状電極(33b)と一対の棒状電極(32,32)とを空気流れと直交する方向にずらしている。これにより、上流側の棒状電極(32,32)では、電子が到達し易くなって衝突荷電が促進される。また、下流側の棒状電極(32,32)では、電子が到達しにくくなって拡散荷電が促進される。
【0101】
また、上述した各実施形態における空気の導入方法や、被処理空気の浄化方法を互いに組み合わせた構成としても良いのは勿論のことである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本発明は、被処理空気を浄化する空気清浄機について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、実施形態1に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】図2は、イオン化部の概略構成図である。
【図3】図3は、電気集塵ユニットの全体構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、電気集塵ユニットの要部を拡大した斜視図である。
【図5】図5は、電気集塵ユニットの要部を拡大した縦断面図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例1に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図7】図7は、実施形態1の変形例2に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図8】図8は、実施形態1の変形例3に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図9】図9は、実施形態1の変形例4に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図10】図10は、実施形態1の変形例4についての他の例に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図11】図11は、実施形態1の変形例5に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図12】図12は、実施形態2に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図13】図13は、実施形態2の変形例1に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図14】図14は、実施形態2の変形例2に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図15】図15は、実施形態3に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図16】図16は、実施形態3の変形例に係る空気清浄機の全体構成を示す概略構成図である。
【図17】図17は、その他の実施形態に係るイオン化部の概略構成図である。
【符号の説明】
【0104】
11 ケーシング
12 外気吸込口
17 内気吸込口
20 空気通路
21 プレフィルタ(フィルタ部材、空気浄化手段)
22 フィルタ掃除機構
25 ブラシ機構(掻き取り部)
30 電気集塵ユニット(空気浄化手段)
31 イオン化部(荷電部)
32 棒状電極(対向電極)
33b 針状電極
40 集塵部
41 集塵用電極(第1電極,第2電極)
42 基台部
43 突起部
52 基台部
53 突起部
51 電界形成用電極(第2電極,第1電極)
60 脱臭ユニット
61 放電部
62 触媒フィルタ(脱臭部)
65 熱交換器(空気調和手段)
70 排気通路(排気手段)
74 排気ファン(排気手段)
75 全熱交換器(空気調和手段)
80 デシカントロータ(空気調和手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井の近傍に設置されるケーシング(11)と、該ケーシング(11)内の空気通路(20)に配置されて被処理空気を浄化する空気浄化手段(21,30,60)とを備えた空気清浄機であって、
上記空気浄化手段(21,30,60)は、上記被処理空気中の塵埃を帯電させる荷電部(31)と、該荷電部(31)で帯電させた塵埃を電気的に捕集する集塵部(40)とを有する電気集塵ユニット(30)を含んでいることを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
請求項1において、
上記集塵部(40)は、空気流れに沿った多数の通気口(47,57)が形成された格子状の基台部(42,52)と、該基台部(42,52)から通気口(47,57)の軸方向と平行に延びる多数の突起部(43,53)とを有する第1及び第2の電極(41,51)を備え、該第1電極(41)の突起部(43)が第2電極(51)の通気口(57)の内部に延び、第2電極(51)の突起部(53)が第1電極(41)の通気口(47)の内部に延びるように構成されていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記荷電部(31)は、針状電極(33b)と対向電極(32)とを備え、針状電極(33b)が対向電極(32)よりも低電位となって両電極(33b,32)の間に電界を形成するように構成されていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
上記空気浄化手段(21,30,60)は、被処理空気中の臭気成分を捕捉する脱臭部(62)と、該脱臭部(62)に捕捉された臭気成分を分解する活性種を発生する放電部(61)とを有する脱臭ユニット(60)を含んでいることを特徴とする空気清浄機。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
上記空気浄化手段(21,30,60)は、上記電気集塵ユニット(30)の上流側に配置されるフィルタ部材(21)を含んでおり、
上記フィルタ部材(21)に捕捉された塵埃を掻き集める掻き取り部(25)を有するフィルタ掃除機構(22)を更に備えていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つにおいて、
上記空気通路(20)には、被処理空気の温度と湿度の一方又は両方を調節するための空気調和手段(65,75,80)が設けられていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つにおいて、
上記ケーシング(11)には、室外空気を上記空気通路(20)へ導入するための外気吸込口(12)が形成されていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
上記ケーシング(11)には、室外空気を上記空気通路(20)へ導入するための外気吸込口(12)と、室内空気を上記空気通路(20)へ導入するための内気吸込口(17)とが形成されていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項9】
請求項7又は8において、
室内空気を室外へ排出する排気手段(70,74)を更に備えていることを特徴とする空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−63947(P2010−63947A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229664(P2008−229664)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】