空気清浄用フィルタユニット及びアイソレーター装置
【課題】フィルタ交換作業が簡単で交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供する。
【解決手段】空気清浄用フィルタユニットは、空気を導入する空気導入口部14を設けてなる第1壁部と、この第1壁部に交差するように形成されて上記導入空気を排出する空気排出口部13を設けてなる第2壁部とを有する矩形状の筒体11を備え、また、この筒体に設けられて上記導入空気を濾過するフィルタ部材12とを備えている。このフィルタ部材は、その排気面12dにおいて、上記空気排出口部の外壁面を構成するように当該空気排出口部に設けられて上記濾過された空気を排出する。
【解決手段】空気清浄用フィルタユニットは、空気を導入する空気導入口部14を設けてなる第1壁部と、この第1壁部に交差するように形成されて上記導入空気を排出する空気排出口部13を設けてなる第2壁部とを有する矩形状の筒体11を備え、また、この筒体に設けられて上記導入空気を濾過するフィルタ部材12とを備えている。このフィルタ部材は、その排気面12dにおいて、上記空気排出口部の外壁面を構成するように当該空気排出口部に設けられて上記濾過された空気を排出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に影響を及ぼす物質を取り扱う作業を行う作業環境から排気される空気を清浄化する空気清浄用フィルタユニットに関するものであり、更に、当該フィルタユニットを備えたアイソレーター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体に影響を及ぼす物質を取り扱う作業には、例えば、医薬品の製造或いは研究開発段階の作業がある。これら医薬品の製造等の作業においては、生理活性物質や抗ガン剤或いはステロイド剤など微量で人体に影響のある多くの化学物質を取り扱う。そこで、これらの作業においては、人体に影響を及ぼす化学物質等の汚染から作業者を保護し、また、これらの人体に影響を及ぼす化学物質等が作業環境から外部環境に漏洩することを防止する必要がある。そのため、かかる作業を行う作業環境を作業室として密閉し、作業者はこの作業室の内部において防護服を着用して作業を行うことになる。
【0003】
一方、上記作業室における作業よりも小規模な作業においては、小型の作業室としてチャンバーなどを使用し、作業者がこのチャンバーの外部からグローブやハーフスーツを介して作業をすることのできるアイソレーター装置やRABS(Restricted Access Barrier System;アクセス制限バリアシステム)などが採用される。
【0004】
上記作業室、アイソレーター装置及びRABSなど(以下、アイソレーター装置など、という)は、その内部の空気を清浄化するためのフィルタを備えており、これらのフィルタを介して空気中の化学物質等を除去し、清浄化された空気を外部環境に排気する。このことにより、アイソレーター装置などの内部で取り扱われる化学物質等が外部環境へ漏洩することを防止している。
【0005】
これらの空気を清浄化するためのフィルタには、HEPAフィルタ或いはULPAフィルタなどの高性能フィルタが使用され、使用後のフィルタには空気中から除去された多くの化学物質等が付着している。従って、これら使用後のフィルタを交換する際には、作業者の安全と外部環境への漏洩を防止すべく慎重な作業が要求される。
【0006】
ここで、従来のフィルタ交換作業について説明する。最も広く採用されている方法は、バッグイン‐バッグアウト方式であって、この方法は、例えば、下記特許文献1に記載の密封交換型フィルタユニットにおいて説明されているように(同文献明細書第2頁左欄41行目〜同右欄27行目)、使用済みのフィルタをハウジング内の取付板から取外し、バッグ取付口兼シール部にOリングで固定されたバッグ中に収納する。そして、このバッグを使用済みのフィルタを収納した部分とバッグ取付口兼シール部に残留した部分とに密封して切断する。この使用済みのフィルタは、バッグに密封梱包して排出する。
【0007】
次に、新規フィルタを収納した新規バッグをバッグ取付口兼シール部に外嵌して新規Oリングで固定し、残留バッグと残留Oリングをバッグ取付口兼シール部から取外して新規バッグ中に収納する。そして、この新規バッグを新規フィルタを収納した部分と残留バッグと残留Oリングとを収納した部分とに密封して切断する。次に、新規バッグ中に収納されている新規フィルタをバッグ取付口兼シール部からハウジング内に収納して取付板に脱着可能に取付ける。
【0008】
しかし、上記バッグイン‐バッグアウト方式においては、ハウジングの構造が複雑となり、フィルタ交換作業が煩雑なものとなる。また、ハウジングの内部はフィルタによって区分されており、空気の流れに沿ってフィルタの上流側の面は化学物質等が付着し、フィルタの下流側の面は汚染されていない。このような状態で、使用済みのフィルタをハウジング内の取付板から取外してバッグに収納するが、バッグに収納されるまでの段階でフィルタの上流側の面に付着した化学物質等がハウジング内のフィルタの下流部を汚染する恐れが生じる。
【0009】
このようにして、ハウジング内のフィルタの下流部が化学物質等で汚染されると、フィルタ交換後にアイソレーター装置などを作動させたときに、ハウジング内のフィルタの下流部を汚染した化学物質等が外部環境へ漏洩することとなる。
【0010】
このような危険性を回避する方法として、下記特許文献2においては、使用済みのフィルタを収納したハウジングをハウジングごと取外し、新規フィルタを収納した新規ハウジングと交換する安全なフィルタハウジング交換方式が提案されている。
【0011】
このフィルタハウジング交換方式においては、ハウジング上面に開口する吸気口からアイソレーター装置などの室内の空気を吸入し、ハウジング内に収納されたフィルタで空気を清浄化し、ハウジング側面に開口する排気口から清浄空気を排出する。ここで、ハウジングの吸気口は、アイソレーター装置などの作業チャンバーの差し込み口に脱着可能に連結されており、一方、ハウジングの排気口は、排気側ダクトに脱着可能に連結されている。
【0012】
このハウジングを交換する際には、まず、アイソレーター装置などの作業チャンバー側の吸気口に蓋をしてハウジング内の汚染された部分であるフィルタ上流部を密封する。次に、作業チャンバー内を洗浄してからハウジングの吸気口を作業チャンバーの差し込み口から取外す。また、ハウジングの排気口も排気側ダクトから取外して蓋をする。
【0013】
このフィルタハウジング交換方式では、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタの交換作業が比較的簡単であり、ハウジングの取外し作業の間に外部環境を汚染する危険性が低減できる。また、取外されたハウジングは、吸排気口ともに密封されているので外部環境を汚染することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特公平7−63576号公報
【特許文献2】WO2007/131376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記特許文献2に提案されているフィルタハウジング交換方式においては、複雑な構造を有する専用のハウジングを必要とし製造コストが高くなる。また、フィルタ交換の際には、使用済みのフィルタだけでなく専用のハウジング自体も使い捨てとなり、廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが高くなるという問題があった。
【0016】
一方、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ等の高性能フィルタは、製造後定格の捕集効率を満足すること及びフィルタに漏洩の無いことを確認するためにリーク検査が行われる。このリーク検査方法には、例えば、米国規格 IEST−RP−CC006.2、ISO CD14644−3(1998)があり、これらの方法においては、交換部品である個々のフィルタの排気面に対するスキャンテストが要求される。
【0017】
このスキャンテストの方法は、試験フィルタの上流側から試験粒子を混合した試験空気を試験フィルタの吸気面全体に供給し、試験フィルタの下流側の排気面を走査する粒子検出器により試験フィルタを透過する粒子を検出する。このスキャンテストにおいて、特定箇所の検出粒子が多い場合には、その箇所にリークが発生していることが確認できる。
【0018】
しかし、上記フィルタハウジング交換方式においては、複雑な構造を有する専用のハウジングの内部にフィルタが完全に収納されており、フィルタの排気面がハウジングの外部に露出していない。従って、スキャンテストの粒子検出器がフィルタの排気面を走査することができない。
【0019】
よって、ハウジングの内部に収納する前の個々のフィルタについてはスキャンテストが可能であるが、ハウジングに組み込まれた状態でのスキャンテストによる完全性検査が実施できない。従って、フィルタハウジング交換方式の交換部品であるフィルタハウジング自体の安全性が確認できないという問題があった。
【0020】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタ交換作業が簡単で当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供することを目的とする。
【0021】
更に、本発明は、上記空気清浄用フィルタユニットを備えることにより、安全性並びに作業性が高く、また、メンテナンスコストの安いアイソレーター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、ハウジング内に配設されるフィルタに代えて、簡単な構造を有する空気清浄用フィルタユニットを採用し、フィルタの交換時には、当該フィルタユニット内のフィルタ上流部を密封した状態で当該フィルタユニットごと交換することにより、本発明の目的を達成できることを見出して本発明の完成に至った。
【0023】
即ち、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットは、請求項1の記載によれば、
空気を導入する空気導入口部(14)を設けてなる第1壁部と、上記第1壁部に交差するように形成されて上記導入空気を排出する空気排出口部(13)を設けてなる第2壁部とを有する矩形状の筒体(11)と、
上記筒体に設けられて上記導入空気を濾過するフィルタ部材(12)とを備える空気清浄用フィルタユニットであって、
上記フィルタ部材は、その排気面(12d)において、上記空気排出口部の外壁面を構成するように当該空気排出口部に設けられて上記濾過された空気を排出する。
【0024】
上記構成によれば、筒体とフィルタ部材とが一体となって空気清浄用フィルタユニットを構成する。このフィルタ部材の排気面は、空気排出口部の外壁面を構成しているので、フィルタ部材の吸気面は筒体の内部に収納されている。このように、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットは、簡単な構造をしており、人体に有害な化学物質等を取り扱う作業室から排気される空気の流路に当該フィルタユニットごと装着することができる。
【0025】
上記フィルタユニットにおいて、作業室から排気される化学物質等を含んだ空気は、空気導入口部から当該フィルタユニットの内部に誘導される。このフィルタユニットの内部に誘導された空気は、フィルタ部材の吸気面から吸気されて濾過され、当該フィルタ部材の排気面から上記フィルタユニットの外部に排気される。このことにより、上記フィルタ部材で濾過された化学物質等は、当該フィルタ部材の吸気面に付着して上記フィルタユニットの内部に捕捉される。
【0026】
次に、上記フィルタユニットを交換する際には、空気導入口部を閉じることで当該フィルタユニットの内部を簡単に密封することができる。このことにより、上記フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを防止することができる。従って、上記フィルタユニットをフィルタユニットごと交換することにより、フィルタ交換作業を簡単に行うことができ、また、当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く抑えられる。
【0027】
また、上述のように、空気清浄用フィルタユニットは、筒体とフィルタ部材とからなり簡単な構造をしている。従って、このフィルタユニットは、製造コストが低く、また、フィルタユニットごと廃棄する際にも廃棄コストが低くなる。よって、これらの製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く抑えられる。
【0028】
更に、上述のように、フィルタ部材の排気面は、空気排出口部の外壁面を構成している。このフィルタ部材の排気面は平面を形成し、通常のHEPAフィルタなどのリーク試験と同様のスキャンテストをすることができる。このことにより、上記フィルタユニット自体のリーク試験において、この排気面に対するスキャンテストによる完全性検査が従来の方法で可能となる。
【0029】
よって、本発明は、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタ交換作業が簡単で当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供することができる。
【0030】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の空気清浄用フィルタユニットであって、
他のフィルタ部材を備えており、
上記筒体は、上記第2壁部に対向するように形成されて上記導入空気を排出する他の空気排出口部を設けてなる第3壁部を有して、
上記他のフィルタ部材は、その排気面において、上記他の空気排出口部の外壁面を構成するように当該他の空気排出口部に設けられて上記濾過された空気を排出することを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、空気清浄用フィルタユニットは、対向する2つの壁部に2つの空気排出口部を有しており、これらの空気排出口部には、それぞれ、フィルタ部材が設けられている。このことにより、フィルタユニットの通風正面積を広く取ることができ、フィルタ効率が向上する。換言すれば、フィルタユニットに必要なフィルタ容積が小さくなり、コンパクトなフィルタユニットを構成することができる。
【0032】
よって、請求項2に記載の発明においても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得るとともに、フィルタ効率がよくコンパクトな空気清浄用フィルタユニットを提供することができる。
【0033】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載の空気清浄用フィルタユニットであって、
上記空気導入口部は、上記第1壁部と上記第2壁部との境界線(11d)に沿って長手状に開口していることを特徴とする。
【0034】
上記構成によれば、空気導入口部が長手状に開口することにより、この空気導入口部が開口する第1壁部の形状を長手矩形状にして、その長辺を長くし、その短辺を短く抑えることができる。この第1壁部の長辺側の境界には第2壁部が交差しており、この第2壁部には、フィルタ部材が設けられている。
【0035】
従って、第1壁部の長辺の長さは、フィルタ部材の排気面の大きさを左右する。一方、第1壁部の短辺は、フィルタ部材の排気面に交差する方向にあり、この短辺の長さは、フィルタユニットの奥行きを左右する。よって、第1壁部の形状を長手矩形状にすることにより、フィルタユニットの排気面の面積を大きく、奥行きを狭くすることができる。
【0036】
このことにより、フィルタユニットの形状がコンパクトになり、一方、排気面の面積を大きくすることができる。従って、作業室から排気される空気の排気経路に装着する際に、場所の制約が少なく装置設計上の自由度が向上する。
【0037】
よって、請求項3に記載の発明においても、請求項1又は2に記載の発明と同様の作用効果を達成し得るとともに、形状がコンパクトで排気経路への装着が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供することができる。
【0038】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットであって、
上記空気導入口部を閉じる脱着可能な蓋体(16)と、
この蓋体の外周縁部と上記空気導入口部の内周縁部との間に気密的に介装してなるパッキン(16a)とを備えていることを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、フィルタユニットの筒体は、空気導入口部を閉じる蓋体とこの蓋体を空気導入口部に密封するパッキンとを備えている。従って、排気経路から使用済みのフィルタユニットを交換する際に、この蓋体を密封的に装着することにより、フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを更に押えることができる。
【0040】
よって、請求項4に記載の発明においては、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0041】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットであって、
上記空気導入口部の外周縁部から内側に延出されて当該空気導入口部を開閉可能に閉じる複数枚の可撓性シート(316a、316b)を有する開閉部材(316)を備えていることを特徴とする。
【0042】
上記構成によれば、請求項4に記載の脱着可能な蓋体に代えて、可撓性シートを有する開閉部材が固定的に備えられている。この開閉部材は、通常は空気導入口部を閉じる状態にあるが、この開閉部材は、複数枚の可撓性シートを有しており、これらの可撓性シートを押し曲げて空気導入口部を開放することができる。
【0043】
従って、フィルタユニットを排気流路に装着して空気を清浄化する際には、この可撓性シートを押し曲げて空気導入口部が開放される。一方、排気経路から使用済みのフィルタユニットを交換する際には、この可撓性シートが復元して空気導入口部を閉じるようになる。このことにより、フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを更に押えることができる。
【0044】
よって、請求項5に記載の発明においては、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0045】
また、本発明に係るアイソレーター装置は、請求項6の記載によれば、
作業室(40)と、
上記作業室の内部に空気を給気する給気手段(50)と、
上記作業室の内部の空気を排気する排気手段(60)とを備えるアイソレーター装置(A)において、
上記排気手段は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを備えており、
上記空気清浄用フィルタユニットは、上記作業室から排気される空気の流路に脱着可能に装着されていることを特徴とする。
【0046】
上記構成によれば、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットは、作業室から排気される空気の流路に脱着可能に備えられて、この流路を流れる空気から作業室で使用された人体に有害な化学物質等をフィルタユニットの内部に捕捉することができる。このことにより、使用済みのフィルタユニットの交換作業を簡単に行うことができ、また、当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く抑えられる。
【0047】
よって、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットによる作用効果を達成し得るとともに、安全性並びに作業性が高く、また、メンテナンスコストの安いアイソレーター装置を提供することができる。
【0048】
また、本発明に係るアイソレーター装置は、請求項7の記載によれば、
作業室(40)と、
上記作業室の内部に上方から下方に向かう一方向流の空気を給気する給気手段(50)と、
上記作業室の下方から上記一方向流の空気を排気する排気手段(60)とを備えるアイソレーター装置(A)において、
上記一方向流の空気に沿って上記作業室の周壁部(41a)に並行に設けられる少なくとも1つの隔壁(43)と、
上記作業室の底壁部(41e)に形成されて上記隔壁の下端部(43b)の幅方向に沿って開口する長手状の排気口(62)とを備え、
上記排気手段は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを備えており、
上記空気清浄用フィルタユニットは、上記排気口から排気される上記一方向流の空気の流路に脱着可能に装着されていることを特徴とする。
【0049】
上記構成によれば、作業室の内部には、給気手段によって上方から下方に向かう一方向流(いわゆる層流)の空気が給気されている。この作業室の内部には、上記一方向流の空気の流れに沿う方向に隔壁が設けられている。この隔壁は、周壁部に並行に形成されて、作業室の内部空間を隔壁から中央の空間(中央空間とする)と、隔壁と周壁部との間の空間(周辺空間とする)とに区分けしている。従って、作業室内を上方から下方に向かう一方向流の空気は、中央空間を上方から下方に向かう一方向流の空気と、周辺空間を上方から下方に向かう一方向流の空気とに分かれて流れることとなる。
【0050】
また、作業室内で取り扱われる化学物質等は、中央空間内で取り扱われ、この中央空間内を流れる一方向流の空気によって排気口に誘導される。一方、周辺空間においては、化学物質等が取り扱われないので、この周辺空間には、常に清浄な一方向流の空気が流れている。従って、仮に何らかの理由で作業室内の空気が外部環境に漏れるようなことがあっても、この周辺空間があることにより、作業室内で取り扱われる化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0051】
また、作業室の底壁部に設けられる排気口は、隔壁の下端部の幅方向に沿って長手状に開口しており、中央空間及び周辺空間を上方から下方に流れるそれぞれの一方向流の空気は、乱れることなくこの排気口から排気される。この作業室から排気される空気の流路には、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットが脱着可能に装着されており、この流路を流れる空気から作業室で使用された人体に有害な化学物質等をフィルタユニットの内部に捕捉することができる。このことにより、使用済みのフィルタユニットの交換作業を簡単に行うことができ、また、当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く抑えられる。
【0052】
このように安全性が高い作業室から排気される空気を清浄化するに際して、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを採用することで、更に高度な安全性を確保することができる。
【0053】
よって、請求項7に記載の発明においても、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットによる作用効果を達成し得るとともに、安全性並びに作業性が高く、また、メンテナンスコストの安いアイソレーター装置を提供することができる。
【0054】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項7に記載の空気清浄用フィルタユニットを備えたアイソレーター装置であって、
上記空気清浄用フィルタユニットは、その空気導入口部(14)を上記排気口に対向するようにして上記作業室の外部に装着されていることを特徴とする。
【0055】
上記構成によれば、空気清浄用フィルタユニットは、作業室に開口する排気口を介して、直接、外部から作業室に装着されている。このことにより、作業室から排出される化学物質等を排出直後に効率よく捕捉することができる。
【0056】
また、この排気口は、作業室の底壁部に長手状に開口しており、特に、フィルタユニットの空気導入口をこの排気口の形状に合わせて構成することにより、フィルタユニットの交換作業などメンテナンスにおける安全性と作業性が向上する。
【0057】
よって、請求項8に記載の発明においても、請求項7に記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0058】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るアイソレーター装置の第1実施形態を前面から見た図であって、図2に示すY−Y線に沿った断面図である。
【図2】図1に示すアイソレーター装置を左側面から見た図であって、図1に示すX−X線に沿った断面図である。
【図3】図1に示すアイソレーター装置を平面から見た図であって、図2に示すZ−Z線に沿った断面図である。
【図4】図1に示すアイソレーター装置に組み込まれる空気清浄用フィルタユニットを示す斜視図である。
【図5】図4に示す空気清浄用フィルタユニットをハウジングに装着した状態を示す側面から見た断面図である。
【図6】図5に示す空気清浄用フィルタユニットに蓋体が装着された状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第2実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第3実施形態において液体シールの部分を示す側面から見た部分断面図である。
【図9】本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第4実施形態を示す斜視図である。
【図10】図9に示す空気清浄用フィルタユニットをハウジングに装着する前の状態を示す側面から見た断面図である。
【図11】図9に示す空気清浄用フィルタユニットをハウジングに装着した状態を示す側面から見た断面図である。
【図12】本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第5実施形態を示す斜視図である。
【図13】図12に示す空気清浄用フィルタユニットをハウジングに装着した状態を示す側面から見た断面図である。
【図14】図13に示す空気清浄用フィルタユニットに蓋体が装着された状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明を各実施形態により説明する。
(第1実施形態)
本発明に係る空気清浄用フィルタユニット及び当該フィルタユニットを備えたアイソレーター装置の第1実施形態を図面に従って説明する。図1〜図3に示すように、アイソレーター装置Aは、床面上に載置される架台Bと、この架台Bの上に乗載されるアイソレーター本体Cとにより構成されている。
【0061】
架台Bは、周囲をステンレス製金属板からなる壁材で覆われ、その内部には、空気清浄用フィルタユニット10(以下、フィルタユニット10という)を装着するための4つのハウジング20と、電装及び機械室30が収納されている。この架台Bの前面及び背面には、各ハウジング20からフィルタユニット10を交換するための開閉扉21が密封的かつ開閉可能に設けられている。
【0062】
4つのハウジング20のうち、図1において、架台Bの前面側に収納された2つのハウジング20は互いに連通し、架台Bの背面側に収納された2つのハウジング20は互いに連通している。
【0063】
アイソレーター本体Cは、チャンバー40と、給気用ユニット50と、排気用ユニット60とを備えている。
【0064】
チャンバー40は、ステンレス製金属板で構成された箱体からなり、作業者が作業を行う外部環境とは気密的に遮蔽されており、このチャンバー40は、内部を洗浄する洗浄液用スプレーノズル及び排水溝(いずれも図示せず)を備えている。
【0065】
チャンバー40の前面及び背面の両壁部41aには、それぞれ内部を視認できる透明なガラス窓42が設けられている。また、チャンバー40の内部には、各ガラス窓42の内側にそれぞれガラス窓42に並行にガラス隔壁43が配設されている。各ガラス隔壁43は、上下左右の各端部43a〜43cをそれぞれ対向する壁面41b〜41eと当接することなく一定の距離を保った状態で4つの支持具44により前面及び背面の両壁部41aから支持されている。このことにより、チャンバー40の内部空間45は、中央空間45aと前面及び背面の2つの周辺空間45bとに区分けされている。
【0066】
各ガラス窓42は、外部とチャンバー40の内部空間45とを連通させるそれぞれ2つずつの作業用開口部46を有する。また、各ガラス隔壁43は、作業用開口部46と対向する位置に中央空間45aと周辺空間45bとを連通させるそれぞれ2つずつの補助開口部47を有する。各作業用開口部46には、それぞれ樹脂製のグローブ48の基端部が取付枠46aにより気密的に取り付けられ、更に、これらのグローブ48は、補助枠47aにより各補助開口部47にも取付けられて、その先端部を中央空間45aに配設されている。
【0067】
チャンバー40の右側面の壁部41bには、チャンバー40内への機器の搬入及び内部をメンテナンスするための開閉扉41が密封的かつ開閉可能に設けられている(図3参照)。また、チャンバー40の左側面の壁部41cの外側には、架台Bに収納された4つのハウジング20と連通するダクト49がチャンバー40の左側面に沿って上方に向けて設けられている(図1参照)。
【0068】
給気用ユニット50は、外気をチャンバー40内に供給するための給気用ブロワー51と、この給気用ブロワー51から供給された空気を濾過するための給気用フィルタ52と、濾過された空気を整流してチャンバー40内に給気するための整流板53とを備えている。
【0069】
給気用ブロワー51は、チャンバー40の上壁部41dに開口する吸気口54(図示せず)を介してチャンバー40の外部側に接続している。この給気用ブロワー51は、外部の空気を吸入し、この給気用ブロワー51から排出された空気は、給気用フィルタ52に供給される。
【0070】
給気用フィルタ52は、チャンバー40の内部空間45の上部に設けられて、給気用ブロワー51から供給された空気を濾過するためのHEPAフィルタから構成されている。この給気用フィルタ52で清浄化された空気は、給気用フィルタ52の下部にあってチャンバー40内の上部全面に亘って設けられた整流板53を介してチャンバー40の内部空間45に給気される。
【0071】
この整流板53は、複数の空気通過孔を有して空気の流れを均一化する。このことにより、給気用フィルタ52から給気される空気は、整流板53を介してチャンバー40の内部空間45を上方から下方に向かう一方向流(いわゆる層流)の空気を形成する。
【0072】
排気用ユニット60は、チャンバー40の内部空間45の空気を清浄化するためのフィルタユニット10と、このフィルタユニット10で清浄化された空気をハウジング20及びダクト49を介してチャンバー40の外部に排気するための排気用ブロワー61とを備えている。
【0073】
フィルタユニット10は、チャンバー40の底壁部41eに開口する排気口62を介してチャンバー40と連通するハウジング20内に装着されている。このフィルタユニット10の構造及びハウジング20内での装着状態については後述する。
【0074】
排気用ブロワー61は、ダクト49の上部開口部に連通してチャンバー40の上壁部41dの外側であって給気用ブロワー51の背面側に設けられている。この排気用ブロワー61は、ハウジング20及びダクト49を介して送られる空気をチャンバー40の外部に排気する。
【0075】
ここで、フィルタユニット10の構造について説明する。図4において、フィルタユニット10は、内部に空洞を有する矩形状の筒体であって、ステンレス製金属板からなる筒体11と2つのHEPAフィルタ12とを備えている。
【0076】
筒体11は、天板11aと底板11bと2枚の横板11cとからなり前面と背面がそれぞれ空気排出口部13として矩形状に開放されている。また、天板11aには、空気排出口部13の面と天板11aとが交差する境界線11dに沿って長手状に開口する空気導入口部14が設けられている。
【0077】
2つのHEPAフィルタ12は、ガラス繊維からなる濾材を波状に折曲して形成されるフィルタ12aとこのフィルタ12aの周縁部を保持する矩形状の枠体12bとから構成されている。2つのHEPAフィルタ12は、それぞれ空気排出口部13を覆うように枠体12bの外縁部でもって筒体11の内縁部に固着されている。
【0078】
このことにより、2つのHEPAフィルタ12は、互いの吸気面12cをフィルタユニット10の内側に向け、互に対向するように並行に配列する。一方、2つのHEPAフィルタ12は、互いの排気面12dをフィルタユニット10の外側に向け、これらの排気面12dでもってフィルタユニット10の前面及び背面の外壁面を構成する。
【0079】
また、フィルタユニット10は、天板11a上に開口する空気導入口部14を取り囲むように環状のシール部材としてのゴム製のパッキン15を備えている。
【0080】
次に、上述のように構成したフィルタユニット10がハウジング20内に装着される状態について説明する。図5は、フィルタユニット10が装着されたハウジング20を側面から見た断面図である。
【0081】
図5において、ハウジング20は、ステンレス製金属板で構成された箱体からなり、上述のように架台Bに収納されている。ハウジング20の上壁部20aは、チャンバー40の底壁部41eと共通する壁部であり、ハウジング20の前面の壁部20bには、上述のように、ハウジング20からフィルタユニット10を交換するための開閉扉21が密封的かつ開閉可能に設けられている。
【0082】
ハウジング20は、上述のように、隣り合うハウジング20と連通するとともに、ダクト49と連通して、チャンバー40の底壁部41e(ハウジング20の上壁部20aに対応)に開口する排気口62から排気用ブロワー61に向かう排気流路を構成している(図1参照)。
【0083】
ハウジング20の上壁部20aに開口する排気口62の周縁部には、周縁部の全周に亘ってチャンバー40側(上方側)に延出する環状の上方延出部62aと、周縁部の全周に亘ってハウジング20側(下方側)に延出する環状の下方延出部62bとが形成されている。
【0084】
ハウジング20の底壁部20cには、排気口62の下方部に配設されてフィルタユニット10を排気口62に押圧するための2つのユニット押具22が設けられている(図1及び図5参照)。このユニット押具22は、フィルタユニット10の下端部を受承する受承部材22aとこの受承部材22aをネジ式に上下動させる可動部材22bとから構成されている。
【0085】
このように構成されたハウジング20内において、フィルタユニット10は、空気導入口部14を排気口62に対向するようにして、パッキン15を下方延出部62bの外周部に沿ってハウジング20の上壁部20aに当接するように装着される。このとき、フィルタユニット10の下端部は、受承部材22aに受承されて可動部材22bにより上方へ押圧されており、フィルタユニット10は、その空気導入口部14を介してパッキン15により排気口62に密封的に装着されている。
【0086】
ここで、上述のように構成した本第1実施形態に係るアイソレーター装置Aにおいて、作動中における空気の流れを説明する。
【0087】
図2において、給気用ブロワー51及び排気用ブロワー61が作動すると、上述のように、給気用ブロワー51から排出された空気は、給気用フィルタ52に供給される。この給気用フィルタ52で清浄化された空気は、整流板53を介してチャンバー40の内部空間45を上方から下方に向かう一方向流の空気を形成する。
【0088】
換言すれば、整流板53を介して下方に供給される清浄化された空気のうち大部分の空気は、チャンバー40の内部空間45のうち中央空間45aを通り、上方から下方に向かう一方向流の空気を形成する。このことにより、中央空間45a内での作業で使用される化学薬品等は、中央空間45aを通り上方から下方に向かう一方向流に沿って排気口62から排出される。
【0089】
一方、整流板53を介して下方に供給される清浄化された空気のうち他の空気は、チャンバー40の内部空間45のうち周辺空間45bを通り、上方から下方に向かう一方向流の空気を形成する。この周辺空間45bは、ガラス隔壁43により中央空間45aと区分けされており、化学薬品等を使用する作業が直接行われることがない。よって、周辺空間45b内には、清浄化された空気が流れている。このことにより、グローブ48の取付枠46aなどにおいて漏れが生じた場合にも、中央空間45a内の化学薬品等がチャンバー40の外部に漏えいすることがない。
【0090】
このようにして、内部空間45a及び周辺空間45bを流れてきた各一方向流の空気は、チャンバー40内に設けられた4つの排気口62(図3参照)から排気用ブロワー61の吸引によりチャンバー40外に排気される。
【0091】
排気口62からチャンバー40外に排気された空気は、中央空間45a内の作業で使用された化学薬品等を含んでいる。図2及び図5に示すように、排気口62から排気された空気は、排気口62に密封的に装着されたフィルタユニット10の空気導入口部14からフィルタユニット10の内部の空間に導入される。このフィルタユニット10の内部に導入された空気は、2つのHEPAフィルタ12の吸気面12cから吸引され、これらのHEPAフィルタ12で清浄化された後、2つのHEPAフィルタ12の排気面12dからハウジング20内に排気される。
【0092】
フィルタユニット10の排気面12dから排気される清浄化された空気は、ハウジング20の内部からダクト49を通り、排気用ブロワー61の吸引によりチャンバー40の外部に排気される(図1参照)。
【0093】
以上のようにして使用されたフィルタユニット10は、その内部の空間及びHEPAフィルタ12の吸気面12cに多くの化学薬品等を付着させている。そこで、この使用済みのフィルタユニット10をハウジング20から取外す作業について説明する。
【0094】
まず、給気用ブロワー51及び排気用ブロワー61を停止して、洗浄液用スプレーノズル(図示せず)を使用してチャンバー40の内部を洗浄する。また、排出口62の周辺を洗浄し、フィルタユニット10の内部にあるHEPAフィルタ12の吸気面12cを湿潤させるウェットダウンを実施する。このウェットダウンにより、HEPAフィルタ12の吸気面12cに多く付着した化学物質等の飛散を防止することができる。
【0095】
次に、チャンバー40の内部からフィルタユニット10の空気導入口部14に蓋体16を取付ける(図6参照)。この蓋体16は、その外周縁を全周に亘って取り囲むゴム製のパッキン16aを具備している。この蓋体16は、パッキン16aによって空気導入口部14に設けられた取付け溝14aに密封的に装着される。このことにより、化学物質等で汚染されたフィルタユニット10の内部が密封され、内部の化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0096】
このようにフィルタユニット10の内部を密封した状態で、ハウジング20の開閉扉21を解放し、フィルタユニット10を上方に押圧している可動部材22bのネジを緩め、受承部材22aを下方に下げてフィルタユニット10を排気口62から取外す。
【0097】
上述のように構成された本第1実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、筒体と2つのHEPAフィルタとが一体となってフィルタユニットを構成する。この2つのHEPAフィルタの排気面は、いずれも空気排出口部の外壁面を構成する。一方、2つのHEPAフィルタの吸気面は、いずれも筒体の内部に収納されている。このように、本第1実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、簡単な構造をしており、人体に有害な化学物質等を取り扱うアイソレーター装置のチャンバーの排気口に連通して設けられたハウジングに当該フィルタユニットごと装着されている。
【0098】
上記フィルタユニットにおいて、チャンバーの排気口から排気される化学物質等を含んだ空気は、空気導入口部から当該フィルタユニットの内部に誘導される。このフィルタユニットの内部に誘導された空気は、2つのHEPAフィルタの吸気面から吸気されて濾過され、これら2つのHEPAフィルタの排気面からフィルタユニットの外部に排気される。このことにより、2つのHEPAフィルタで濾過された空気に含まれていた化学物質等は、これら2つのHEPAフィルタの吸気面に付着してフィルタユニットの内部に捕捉される。
【0099】
次に、上記フィルタユニットを交換する際には、空気導入口部を蓋体で閉じることによりフィルタユニットの内部を簡単に密封することができる。このことにより、フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを防止することができる。従って、フィルタユニットをフィルタユニットごと交換することにより、フィルタ交換作業を簡単に行うことができ、また、当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く抑えられる。
【0100】
また、本第1実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、上述のように、筒体と2つのHEPAフィルタとからなる簡単な構造をしている。従って、このフィルタユニットは、製造コストが低く、また、フィルタユニットごと廃棄する際にも廃棄コストが低くなる。よって、これらの製造コスト及び廃棄コストを含めたアイソレーター装置のメンテナンスコストが安く抑えられる。
【0101】
また、本第1実施形態によれば、空気導入口部が長手状に開口することにより、この空気導入口部が開口する天板の形状を長手矩形状にして、その長辺を長くし、その短辺を短く抑えることができる。この天板の長辺側の2つの境界には、それぞれHEPAフィルタの排気面が交差している。従って、天板の長辺の長さは、HEPAフィルタの排気面の大きさを左右する。一方、天板の短辺は、2つのHEPAフィルタの排気面に交差する方向にあり、この短辺の長さは、フィルタユニットの奥行きを左右する。よって、天板の形状を長手矩形状にして長辺を長く、短辺を短くすることにより、フィルタユニットの排気面の面積を大きく、奥行きを狭くすることができる。
【0102】
このことにより、フィルタユニットの形状がコンパクトになり、このコンパクトな形状に対して、排気面の面積を大きくすることができる。従って、チャンバーから排気される空気の排気経路に装着する際に、場所の制約が少なくなり装置設計上の自由度が向上する。このことにより、本第1実施形態においては、チャンバーの下部にハウジングを設け、このハウジングをアイソレーター装置の架台に4つ収納することができる。
【0103】
更に、本第1実施形態によれば、フィルタユニットは、2つのHEPAフィルタを備えている。このように、HEPAフィルタが2つ使用されていることで、上述のように、フィルタユニットの通風正面積を広く取ることができ、フィルタ効率が向上する。よって、フィルタユニットに必要なフィルタ容積が小さくなり、コンパクトなフィルタユニットを提供することができる。
【0104】
また、上述のように、2つのHEPAフィルタの排気面は、空気排出口部の外壁面を構成している。このHEPAフィルタの排気面は平面を形成し、通常のHEPAフィルタなどのリーク試験と同様のスキャンテストを実施することができる。このことにより、上記フィルタユニット自体のリーク試験において、2つの排気面に対してスキャンテストを直接行うことができ、フィルタユニットに対する完全性検査が従来の方法で可能となる。
【0105】
一方、上述の空気清浄用フィルタユニットを備えた本第1実施形態に係るアイソレーター装置においては、給気ユニットによってチャンバーの内部を上方から下方に向かう一方向流の空気が給気されている。また、このチャンバーの内部には、上記一方向流の空気の流れに沿う方向に隔壁が設けられている。この隔壁は、周壁部に並行に形成されて、チャンバーの内部空間を中央空間と周辺空間とに区分けしている。従って、チャンバー内を上方から下方に向かう一方向流の空気は、中央空間を上方から下方に向かう一方向流の空気と、周辺空間を上方から下方に向かう一方向流の空気とに分かれて流れることとなる。
【0106】
また、チャンバー内で取り扱われる化学物質等は、中央空間内で取り扱われ、この中央空間内を流れる一方向流の空気によって排気口に誘導される。一方、周辺空間においては、化学物質等が取り扱われないので、この周辺空間には、常に清浄な一方向流の空気が流れている。従って、仮に何らかの理由でチャンバー内の空気が外部環境に漏れるようなことがあっても、この周辺空間があることにより、チャンバー内で取り扱われる化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0107】
また、チャンバーの底壁部に設けられる排気口は、隔壁の下端部の幅方向に沿って長手状に開口している。従って、中央空間及び周辺空間を上方から下方に流れるそれぞれの一方向流の空気は、乱れることなくこの排気口から排気される。このように構成された安全性の高いチャンバーから排気される空気を清浄化するに際して、上述の空気清浄用フィルタユニットを採用することで、更に高度な安全性を確保することができる。
【0108】
また、従来のアイソレーター装置では、フィルタ交換の際のリスク低減のため排気経路には複数のフィルタが採用されている。しかし、上述の空気清浄用フィルタユニットの交換作業においては、濾過した化学物質等の漏洩が高度に防止されている。従って、本第1実施形態に係るアイソレーター装置においては、1つのフィルタユニットを採用することでフィルタ交換の際のリスク低減を図ることができる。このことは、交換するフィルタユニットが1つでよいこととなり、装置設計及びメンテナンスコストの点で有利である。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第2実施形態について説明する。図7に示すように、フィルタユニット110は、内部に空洞を有する矩形状の筒体であって、ステンレス製金属板からなる筒体111と1つのHEPAフィルタ12とを備えている。
【0109】
筒体111は、天板111aと底板111bと2枚の横板111cと背板111dとからなり前面が空気排出口部13として矩形状に開放されている。また、天板111aには、空気排出口部13の面と天板111aとが交差する境界線111eに沿って長手状に開口する空気導入口部14が設けられている。
【0110】
HEPAフィルタ12は、上記第1実施形態と同一の構成をしている。このHEPAフィルタ12は、空気排出口部13を覆うように枠体12bの外縁部でもって筒体111の内縁部に固着されている。
【0111】
このことにより、HEPAフィルタ12は、吸気面12cをフィルタユニット110の内部に向け、背板111dと対向するように並行に配列する。一方、HEPAフィルタ12は、排気面12dをフィルタユニット110の外側に向け、この排気面12dでもってフィルタユニット110の前面の外壁面を構成する。
【0112】
また、フィルタユニット110は、天板111a上に開口する空気導入口部14を取り囲むように環状のシール部材としてのゴム製のパッキン15を備えている。
【0113】
上述のように構成したフィルタユニット110がハウジング20内に装着された状態については、上記第1実施形態と同様である。
【0114】
上述のように構成された本第2実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、HEPAフィルタを1つだけ備えている点で、HEPAフィルタを2つ備えた上記第1実施形態に係るフィルタユニットと異なっている。このことは、フィルタユニットの排気面積が小さくなることを意味し、処理される空気の容量が少なくなる。但し、このことを除いて、上記第1実施形態に係るフィルタユニット変わるところはない。
【0115】
従って、本第2実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、処理する空気の容量が少ない場合、装置設計上の都合、或いは、よりコンパクトでより安価なフィルタユニットを必要とする場合に有効である。また、HEPAフィルタの排気面が1面であることにより、リーク試験におけるスキャンテストがより容易になる。
(第3実施形態)
次に、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第3実施形態について説明する。フィルタユニット210は、上記第1実施形態に係るフィルタユニット10と同様の構成をしている。但し、パッキン15に代えて、液体シール215を備えている(図8参照)。この液体シール215は、シール凸部215aとシール凹部215bとこれらの間に充填されるシール剤215cとから構成されている。
【0116】
図8は、フィルタユニット210が、その空気導入口部14をハウジング20の上壁部20aに開口する排気口62に対向する位置に合わせて装着された状態を示している。排気口62の周縁部には、周縁部の全周に亘ってチャンバー40側(上方側)に延出する上方延出部62aが形成されている。一方、上記第1実施形態において設けられた下方延出部62bがなく、その代わりに排気口62の周縁部より外側に離れた位置に排気口62を取り囲むようにハウジング20側(下方側)に延出する環状のシール凸部215aが形成されている。
【0117】
また、フィルタユニット210は、天板211a上に開口する空気導入口部14を取り囲むように断面凹状で環状のシール凹部215bを備えている。このシール凹部215bの溝の中には液体シリコーンなどのシール剤215cが充填されている。
【0118】
このように構成されたフィルタユニット210は、図8に示すように、ハウジング20内において空気導入口部14を排気口62に対向するようにして、シール凹部215bの環状の溝の中にシール凸部215aが挿入されるようにユニット押具22(図示せず)によって持ち上げられている。
【0119】
このとき、シール凸部215aは、全周に亘りシール凹部215bの溝の中に充填されたシール剤215cに浸かっているので、排気口62と空気導入口部214とは、密封的に連通している。このことにより、排気口62からフィルタユニット210に導入される空気は、フィルタユニット210の内部に誘導され、HEPAフィルタ12によって化学物質等が除去される。
【0120】
上述のように構成された本第3実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、その空気導入口部とチャンバーの排気口とを密封的に連通させるために、シール部材として液体シールを使用する点で、パッキンを使用する上記第1及び第2実施形態に係るフィルタユニットと異なっている。但し、このことを除いて、上記第1及び第2実施形態に係るフィルタユニット変わるところはない。
(第4実施形態)
次に、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第4実施形態について説明する。フィルタユニット310は、上記第1実施形態に係るフィルタユニット10と同様の構成をしている。但し、フィルタユニット10の空気導入口部14に取付ける蓋体16に代えて、可撓性のゴムシート316が空気導入口部14を閉じるように設けられている(図9参照)。
【0121】
ゴムシート316は、図9に示すように、2片の略台形のゴムシート316aと2片の略三角形のゴムシート316bとからなり、フィルタユニット310の天板311aとゴム製のパッキン15に挟持された状態で固定され一体化している。この固定された状態で、ゴムシート316の中央部には、空気導入口部14の長手方向に沿った1本のスリット316cとこのスリットの両端部から周縁部に向かう4本のスリット316dが形成されている。
【0122】
ここで、可撓性のゴムシート316に用いられるゴムとしては、可撓性を有するものであればどのようなものを使用してもよい。なお、本第4実施形態においては、ゴムシート316には、厚み3mmのシリコーンゴムのシートを使用した。
【0123】
次に、上述のように構成したフィルタユニット310がハウジング20内に装着される状態について説明する。図10は、フィルタユニット310が装着される前のハウジング20を側面から見た断面図である。
【0124】
ハウジング20は、図10に示すように、ハウジング20の上壁部20aに開口する排気口62の開口幅が上記第1実施形態に比べ狭く、また、排気口62の周縁部に設けられる下方延出部62bの延出長さが上記第1実施形態に比べ長くなっている。
【0125】
このことにより、フィルタユニット310を排気口62に装着したときに、下方延出部62bがゴムシート316を押し曲げてフィルタユニット310の空気導入口部14の内部に挿入される。以下、この状態について説明する。
【0126】
図10において、フィルタユニット310は、その下端部をユニット押具22の受承部材22aにより受承されて排気口62の下方に配置されている。このとき、受承部材22aは、可動部材22bによって下方に下げられた状態にあり、フィルタユニット310の空気導入口部14は、排気口62に装着されていない。
【0127】
次に、図11に示すように、ユニット押具22の可動部材22のネジを回転して受承部材22aを上方に押し上げると、排気口62の下方延出部62bは、ゴムシート316を下方に押し曲げてフィルタユニット310の空気導入口部14の内部に挿入される。このとき、ゴムシート316は、空気導入口部14の内周部と下方延出部62bの外周部との間に介挿されて密封材の働きをする。
【0128】
この状態において、フィルタユニット310は、空気導入口部14を排気口62に対向するようにして、パッキン15をハウジング20の上面の壁部20aに当接するように装着される。このとき、フィルタユニット310の下端部は、受承部材22aに受承されて可動部材22bにより上方へ押圧されており、フィルタユニット310は、その空気導入口部14を介してパッキン15により排気口62に密封的に装着されている。
【0129】
以上のような状態で使用されたフィルタユニット310は、その内部の空間及びHEPAフィルタ12の吸気面12cに多くの化学薬品等を付着させている。そこで、この使用済みのフィルタユニット310をハウジング20から取外す際には、上記実施例1と同様にしてウェットダウンを実施する。
【0130】
なお、フィルタユニット310においては、上記第1実施形態と異なり空気導入口部14に蓋体16を取付けることなく、ハウジング20の開閉扉21を解放し、フィルタユニット310を上方に押圧している可動部材22bのネジを緩め、受承部材22aを下方に下げてフィルタユニット310を排気口62から取外す。
【0131】
このとき、下方延出部62bによって下方に押し曲げられていたゴムシート316が空気導入口部14を閉じる位置に復元する。このことにより、化学物質等で汚染されたフィルタユニット310の内部が密封され、内部の化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0132】
上述のように構成された上記第4実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、空気導入口部に可撓性のゴムシートを固定的に備えている点で、脱着可能な蓋体を備えることによりフィルタユニットの内部を密封する上記第1〜第3実施形態に係るフィルタユニットと異なっている。この可撓性のゴムシートは、4枚のゴムシートからなり、通常は空気導入口部を閉じる状態にあるが、これらのゴムシートを押し曲げることにより、空気導入口部を開放することができる。
【0133】
従って、フィルタユニットをハウジングに装着して空気を清浄化する際には、この可撓性のゴムシートを押し曲げて空気導入口部が開放される。一方、ハウジングから使用済みのフィルタユニットを交換する際には、この可撓性のゴムシートが復元して空気導入口部を閉じるようになる。このことにより、フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを押えることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第5実施形態について説明する。フィルタユニット410は、上記第1実施形態に係るフィルタユニット10と同様の構成をしている。但し、フィルタユニット410の天板411aに開口する空気導入口部14の周縁部には、周縁部の全周に亘って上方に延出するステンレス製金属板からなる環状の取付口部17が設けられている(図12参照)。
【0134】
次に、上述のように構成したフィルタユニット410がハウジング20内に装着される状態について説明する。図13は、フィルタユニット410が装着されたハウジング20を側面から見た断面図である。
【0135】
上記第1実施形態と同様の構成をしたハウジング20において、フィルタユニット410は、空気導入口部14を排気口62に対向するようにして、取付口部17を下方延出部62bの内周部に沿って排気口62に挿入すると共に、パッキン15を下方延出部62bの外周部に沿ってハウジング20の上壁部20aに当接する。このとき、フィルタユニット410の下端部は、受承部材22aに受承されて可動部材22bにより上方へ押圧されており、フィルタユニット410は、その空気導入口部14を介してパッキン15により排気口62に密封的に装着されている。
【0136】
また、フィルタユニット410を交換する際には、上記第1実施形態と同様の蓋体16をパッキン16aによって取付口部17に設けられた取付け溝17aに密封的に装着する。このことにより、化学物質等で汚染されたフィルタユニット410の内部が密封され、内部の化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0137】
上述のように構成された上記第5実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、空気導入口部にステンレス製金属板からなる環状の取付口部が設けられている点で、この取付口部が設けられていない上記第1〜第4実施形態に係るフィルタユニットと異なっている。
【0138】
従って、フィルタユニットをハウジングに装着する際には、この取付口部を下方延出部の内周部に沿って排気口に挿入することができ、ハウジングに対するフィルタユニットの装着が安定する。また、蓋体を装着する取付口部の延出端部が下方延出部まで延出されているので、蓋体の装着が容易となる。このことにより、フィルタユニットの交換作業がより簡単なものとなる。
【0139】
これまで述べてきたように、上記各実施形態においては、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタ交換作業が簡単で当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供することができる。
【0140】
また、上記各実施形態の空気清浄用フィルタユニットを採用することにより、上述の空気清浄用フィルタユニットによる作用効果を達成し得るとともに、安全性並びに作業性が高く、また、メンテナンスコストの安いアイソレーター装置を提供することができる。
【0141】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
1.上記第1実施形態においては、フィルタユニットの交換作業にバッグイン・バッグアウト法は使用していない。しかし、これに限定するものではなく、簡略化したバッグイン・バッグアウト法を利用することは有効である。例えば、フィルタユニットを装着する際に受承部材の下方に予めバッグを装着しておくと、ウェットダウンの際に排気面からの洗浄水の染み出しを捕捉することができる。また、フィルタユニットを取外す際に当該バッグの中に収納することで更に安全性が向上する。
2.上記第1実施形態においては、ハウジングをチャンバーの下方に配設することにより、フィルタユニットをチャンバーの排気口に直接装着するものである。しかし、これに限定するものではなく、例えば、排気口からダクトを経由してチャンバーの上部に配設されたハウジングにフィルタユニットを装着するようにしてもよい。
3.上記第1実施形態においては、給気用ブロワーと排気用ブロワーを停止した状態でフィルタユニットを交換するものである。しかし、これに限定するものではなく、例えば、排気用ブロワーを稼働した状態で交換作業をするようにしてもよい。この場合には、交換作業中に何らかの理由で化学物質等が飛散した場合にも、排気用ブロワーによる吸気によりハウジング内から化学物質等が外部環境に漏洩することを防止できる。この場合には、ハウジングの下流側に他のフィルタを装着しておくことが有効である。
4.上記第1実施形態においては、チャンバーの前面及び背面に2つのガラス隔壁が設けられているが、チャンバーに設けるガラス隔壁の数は、これに限るものではなく、全く設けない場合、1面のみ設ける場合、或いは、4面全てに設けるようにしてもよい。
5.上記第1実施形態においては、ガラス隔壁43は、上下左右の各端部をそれぞれ対向する壁面と当接することなく一定の距離を保った状態で4つの支持具により前面及び背面の両壁部から支持されている。しかし、これに限定するものではなく、例えば、ガラス隔壁の左右端部をそれぞれ対向する側壁面に当接するようにして当該側壁面により支持するようにしてもよい。この場合には、チャンバーの内部空間を中央空間と周辺空間により明確に区分けすることができる。
6.上記第1実施形態においては、チャンバーには4つのグローブが装着されているが、チャンバーに装着するグローブの数は、これらに限るものではない。また、グローブに代えて、ハーフスーツ等を装着するようにしてもよい。
7.上記第1実施形態においては、チャンバーの内部空間を上方から下方に向かう一方向流の空気を形成するために複数の空気通過孔を有する整流板を採用するが、これに限定するものではなく、細かなメッシュを有するスクリーン紗を貼付した整流板を採用するようにしてもよい。
8.上記各実施形態においては、給気用フィルタ及びフィルタユニットには、HEPAフィルタを使用するものであるが、HEPAフィルタに限るものではなく、ULPAフィルタその他の高性能フィルタをチャンバー内で使用する化学物質等の有害な物質に合わせて、適宜選定すればよい。
9.本発明に係る空気清浄用フィルタユニットは、アイソレーター装置に使用することに限定するものではなく、化学物質等を取り扱う更に大きな作業室或いはRABSなどに使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタ交換作業が簡単で当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニット及び当該フィルタユニットを備えたアイソレーター装置を提供するものである。
【0143】
このことは、医薬品の製造或いは研究開発段階で人体に有害な化学物質を取り扱う作業の他、医学や生物学の実験において毒性の強い微生物を取り扱う作業、或いは、放射性物質を取り扱う作業など、外部環境に漏洩してはならない危険な物質を取り扱う多くの作業に対して、本発明は有効に利用できるものである。
【符号の説明】
【0144】
A…アイソレーター装置、B…架台、C…アイソレーター本体、10…フィルタユニット、11…筒体、12…HEPAフィルタ、12a…フィルタ、12b…枠体、12c…吸気面、12d…排気面、13…空気排出口部、14…空気導入口部、15…パッキン、16…蓋体、17…取付口部、20…ハウジング、21…開閉扉、22…ユニット押具、22a…受承部材、22b…可動部材、30…電装及び機械室、40…チャンバー、42…ガラス窓、43…ガラス隔壁、45…内部空間、45a…中央空間、45b…周辺空間、46…作業用開口部、47…補助開口部、48…グローブ、49…ダクト、50…給気用ユニット、51…給気用ブロワー、52…給気用フィルタ、53…整流板、54…吸気口、60…排気用ユニット、61…排気用ブロワー、62…排気口、215…液体シール、316…ゴムシート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に影響を及ぼす物質を取り扱う作業を行う作業環境から排気される空気を清浄化する空気清浄用フィルタユニットに関するものであり、更に、当該フィルタユニットを備えたアイソレーター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体に影響を及ぼす物質を取り扱う作業には、例えば、医薬品の製造或いは研究開発段階の作業がある。これら医薬品の製造等の作業においては、生理活性物質や抗ガン剤或いはステロイド剤など微量で人体に影響のある多くの化学物質を取り扱う。そこで、これらの作業においては、人体に影響を及ぼす化学物質等の汚染から作業者を保護し、また、これらの人体に影響を及ぼす化学物質等が作業環境から外部環境に漏洩することを防止する必要がある。そのため、かかる作業を行う作業環境を作業室として密閉し、作業者はこの作業室の内部において防護服を着用して作業を行うことになる。
【0003】
一方、上記作業室における作業よりも小規模な作業においては、小型の作業室としてチャンバーなどを使用し、作業者がこのチャンバーの外部からグローブやハーフスーツを介して作業をすることのできるアイソレーター装置やRABS(Restricted Access Barrier System;アクセス制限バリアシステム)などが採用される。
【0004】
上記作業室、アイソレーター装置及びRABSなど(以下、アイソレーター装置など、という)は、その内部の空気を清浄化するためのフィルタを備えており、これらのフィルタを介して空気中の化学物質等を除去し、清浄化された空気を外部環境に排気する。このことにより、アイソレーター装置などの内部で取り扱われる化学物質等が外部環境へ漏洩することを防止している。
【0005】
これらの空気を清浄化するためのフィルタには、HEPAフィルタ或いはULPAフィルタなどの高性能フィルタが使用され、使用後のフィルタには空気中から除去された多くの化学物質等が付着している。従って、これら使用後のフィルタを交換する際には、作業者の安全と外部環境への漏洩を防止すべく慎重な作業が要求される。
【0006】
ここで、従来のフィルタ交換作業について説明する。最も広く採用されている方法は、バッグイン‐バッグアウト方式であって、この方法は、例えば、下記特許文献1に記載の密封交換型フィルタユニットにおいて説明されているように(同文献明細書第2頁左欄41行目〜同右欄27行目)、使用済みのフィルタをハウジング内の取付板から取外し、バッグ取付口兼シール部にOリングで固定されたバッグ中に収納する。そして、このバッグを使用済みのフィルタを収納した部分とバッグ取付口兼シール部に残留した部分とに密封して切断する。この使用済みのフィルタは、バッグに密封梱包して排出する。
【0007】
次に、新規フィルタを収納した新規バッグをバッグ取付口兼シール部に外嵌して新規Oリングで固定し、残留バッグと残留Oリングをバッグ取付口兼シール部から取外して新規バッグ中に収納する。そして、この新規バッグを新規フィルタを収納した部分と残留バッグと残留Oリングとを収納した部分とに密封して切断する。次に、新規バッグ中に収納されている新規フィルタをバッグ取付口兼シール部からハウジング内に収納して取付板に脱着可能に取付ける。
【0008】
しかし、上記バッグイン‐バッグアウト方式においては、ハウジングの構造が複雑となり、フィルタ交換作業が煩雑なものとなる。また、ハウジングの内部はフィルタによって区分されており、空気の流れに沿ってフィルタの上流側の面は化学物質等が付着し、フィルタの下流側の面は汚染されていない。このような状態で、使用済みのフィルタをハウジング内の取付板から取外してバッグに収納するが、バッグに収納されるまでの段階でフィルタの上流側の面に付着した化学物質等がハウジング内のフィルタの下流部を汚染する恐れが生じる。
【0009】
このようにして、ハウジング内のフィルタの下流部が化学物質等で汚染されると、フィルタ交換後にアイソレーター装置などを作動させたときに、ハウジング内のフィルタの下流部を汚染した化学物質等が外部環境へ漏洩することとなる。
【0010】
このような危険性を回避する方法として、下記特許文献2においては、使用済みのフィルタを収納したハウジングをハウジングごと取外し、新規フィルタを収納した新規ハウジングと交換する安全なフィルタハウジング交換方式が提案されている。
【0011】
このフィルタハウジング交換方式においては、ハウジング上面に開口する吸気口からアイソレーター装置などの室内の空気を吸入し、ハウジング内に収納されたフィルタで空気を清浄化し、ハウジング側面に開口する排気口から清浄空気を排出する。ここで、ハウジングの吸気口は、アイソレーター装置などの作業チャンバーの差し込み口に脱着可能に連結されており、一方、ハウジングの排気口は、排気側ダクトに脱着可能に連結されている。
【0012】
このハウジングを交換する際には、まず、アイソレーター装置などの作業チャンバー側の吸気口に蓋をしてハウジング内の汚染された部分であるフィルタ上流部を密封する。次に、作業チャンバー内を洗浄してからハウジングの吸気口を作業チャンバーの差し込み口から取外す。また、ハウジングの排気口も排気側ダクトから取外して蓋をする。
【0013】
このフィルタハウジング交換方式では、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタの交換作業が比較的簡単であり、ハウジングの取外し作業の間に外部環境を汚染する危険性が低減できる。また、取外されたハウジングは、吸排気口ともに密封されているので外部環境を汚染することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特公平7−63576号公報
【特許文献2】WO2007/131376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記特許文献2に提案されているフィルタハウジング交換方式においては、複雑な構造を有する専用のハウジングを必要とし製造コストが高くなる。また、フィルタ交換の際には、使用済みのフィルタだけでなく専用のハウジング自体も使い捨てとなり、廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが高くなるという問題があった。
【0016】
一方、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ等の高性能フィルタは、製造後定格の捕集効率を満足すること及びフィルタに漏洩の無いことを確認するためにリーク検査が行われる。このリーク検査方法には、例えば、米国規格 IEST−RP−CC006.2、ISO CD14644−3(1998)があり、これらの方法においては、交換部品である個々のフィルタの排気面に対するスキャンテストが要求される。
【0017】
このスキャンテストの方法は、試験フィルタの上流側から試験粒子を混合した試験空気を試験フィルタの吸気面全体に供給し、試験フィルタの下流側の排気面を走査する粒子検出器により試験フィルタを透過する粒子を検出する。このスキャンテストにおいて、特定箇所の検出粒子が多い場合には、その箇所にリークが発生していることが確認できる。
【0018】
しかし、上記フィルタハウジング交換方式においては、複雑な構造を有する専用のハウジングの内部にフィルタが完全に収納されており、フィルタの排気面がハウジングの外部に露出していない。従って、スキャンテストの粒子検出器がフィルタの排気面を走査することができない。
【0019】
よって、ハウジングの内部に収納する前の個々のフィルタについてはスキャンテストが可能であるが、ハウジングに組み込まれた状態でのスキャンテストによる完全性検査が実施できない。従って、フィルタハウジング交換方式の交換部品であるフィルタハウジング自体の安全性が確認できないという問題があった。
【0020】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタ交換作業が簡単で当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供することを目的とする。
【0021】
更に、本発明は、上記空気清浄用フィルタユニットを備えることにより、安全性並びに作業性が高く、また、メンテナンスコストの安いアイソレーター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、ハウジング内に配設されるフィルタに代えて、簡単な構造を有する空気清浄用フィルタユニットを採用し、フィルタの交換時には、当該フィルタユニット内のフィルタ上流部を密封した状態で当該フィルタユニットごと交換することにより、本発明の目的を達成できることを見出して本発明の完成に至った。
【0023】
即ち、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットは、請求項1の記載によれば、
空気を導入する空気導入口部(14)を設けてなる第1壁部と、上記第1壁部に交差するように形成されて上記導入空気を排出する空気排出口部(13)を設けてなる第2壁部とを有する矩形状の筒体(11)と、
上記筒体に設けられて上記導入空気を濾過するフィルタ部材(12)とを備える空気清浄用フィルタユニットであって、
上記フィルタ部材は、その排気面(12d)において、上記空気排出口部の外壁面を構成するように当該空気排出口部に設けられて上記濾過された空気を排出する。
【0024】
上記構成によれば、筒体とフィルタ部材とが一体となって空気清浄用フィルタユニットを構成する。このフィルタ部材の排気面は、空気排出口部の外壁面を構成しているので、フィルタ部材の吸気面は筒体の内部に収納されている。このように、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットは、簡単な構造をしており、人体に有害な化学物質等を取り扱う作業室から排気される空気の流路に当該フィルタユニットごと装着することができる。
【0025】
上記フィルタユニットにおいて、作業室から排気される化学物質等を含んだ空気は、空気導入口部から当該フィルタユニットの内部に誘導される。このフィルタユニットの内部に誘導された空気は、フィルタ部材の吸気面から吸気されて濾過され、当該フィルタ部材の排気面から上記フィルタユニットの外部に排気される。このことにより、上記フィルタ部材で濾過された化学物質等は、当該フィルタ部材の吸気面に付着して上記フィルタユニットの内部に捕捉される。
【0026】
次に、上記フィルタユニットを交換する際には、空気導入口部を閉じることで当該フィルタユニットの内部を簡単に密封することができる。このことにより、上記フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを防止することができる。従って、上記フィルタユニットをフィルタユニットごと交換することにより、フィルタ交換作業を簡単に行うことができ、また、当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く抑えられる。
【0027】
また、上述のように、空気清浄用フィルタユニットは、筒体とフィルタ部材とからなり簡単な構造をしている。従って、このフィルタユニットは、製造コストが低く、また、フィルタユニットごと廃棄する際にも廃棄コストが低くなる。よって、これらの製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く抑えられる。
【0028】
更に、上述のように、フィルタ部材の排気面は、空気排出口部の外壁面を構成している。このフィルタ部材の排気面は平面を形成し、通常のHEPAフィルタなどのリーク試験と同様のスキャンテストをすることができる。このことにより、上記フィルタユニット自体のリーク試験において、この排気面に対するスキャンテストによる完全性検査が従来の方法で可能となる。
【0029】
よって、本発明は、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタ交換作業が簡単で当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供することができる。
【0030】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の空気清浄用フィルタユニットであって、
他のフィルタ部材を備えており、
上記筒体は、上記第2壁部に対向するように形成されて上記導入空気を排出する他の空気排出口部を設けてなる第3壁部を有して、
上記他のフィルタ部材は、その排気面において、上記他の空気排出口部の外壁面を構成するように当該他の空気排出口部に設けられて上記濾過された空気を排出することを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、空気清浄用フィルタユニットは、対向する2つの壁部に2つの空気排出口部を有しており、これらの空気排出口部には、それぞれ、フィルタ部材が設けられている。このことにより、フィルタユニットの通風正面積を広く取ることができ、フィルタ効率が向上する。換言すれば、フィルタユニットに必要なフィルタ容積が小さくなり、コンパクトなフィルタユニットを構成することができる。
【0032】
よって、請求項2に記載の発明においても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得るとともに、フィルタ効率がよくコンパクトな空気清浄用フィルタユニットを提供することができる。
【0033】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1又は2に記載の空気清浄用フィルタユニットであって、
上記空気導入口部は、上記第1壁部と上記第2壁部との境界線(11d)に沿って長手状に開口していることを特徴とする。
【0034】
上記構成によれば、空気導入口部が長手状に開口することにより、この空気導入口部が開口する第1壁部の形状を長手矩形状にして、その長辺を長くし、その短辺を短く抑えることができる。この第1壁部の長辺側の境界には第2壁部が交差しており、この第2壁部には、フィルタ部材が設けられている。
【0035】
従って、第1壁部の長辺の長さは、フィルタ部材の排気面の大きさを左右する。一方、第1壁部の短辺は、フィルタ部材の排気面に交差する方向にあり、この短辺の長さは、フィルタユニットの奥行きを左右する。よって、第1壁部の形状を長手矩形状にすることにより、フィルタユニットの排気面の面積を大きく、奥行きを狭くすることができる。
【0036】
このことにより、フィルタユニットの形状がコンパクトになり、一方、排気面の面積を大きくすることができる。従って、作業室から排気される空気の排気経路に装着する際に、場所の制約が少なく装置設計上の自由度が向上する。
【0037】
よって、請求項3に記載の発明においても、請求項1又は2に記載の発明と同様の作用効果を達成し得るとともに、形状がコンパクトで排気経路への装着が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供することができる。
【0038】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットであって、
上記空気導入口部を閉じる脱着可能な蓋体(16)と、
この蓋体の外周縁部と上記空気導入口部の内周縁部との間に気密的に介装してなるパッキン(16a)とを備えていることを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、フィルタユニットの筒体は、空気導入口部を閉じる蓋体とこの蓋体を空気導入口部に密封するパッキンとを備えている。従って、排気経路から使用済みのフィルタユニットを交換する際に、この蓋体を密封的に装着することにより、フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを更に押えることができる。
【0040】
よって、請求項4に記載の発明においては、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0041】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットであって、
上記空気導入口部の外周縁部から内側に延出されて当該空気導入口部を開閉可能に閉じる複数枚の可撓性シート(316a、316b)を有する開閉部材(316)を備えていることを特徴とする。
【0042】
上記構成によれば、請求項4に記載の脱着可能な蓋体に代えて、可撓性シートを有する開閉部材が固定的に備えられている。この開閉部材は、通常は空気導入口部を閉じる状態にあるが、この開閉部材は、複数枚の可撓性シートを有しており、これらの可撓性シートを押し曲げて空気導入口部を開放することができる。
【0043】
従って、フィルタユニットを排気流路に装着して空気を清浄化する際には、この可撓性シートを押し曲げて空気導入口部が開放される。一方、排気経路から使用済みのフィルタユニットを交換する際には、この可撓性シートが復元して空気導入口部を閉じるようになる。このことにより、フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを更に押えることができる。
【0044】
よって、請求項5に記載の発明においては、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0045】
また、本発明に係るアイソレーター装置は、請求項6の記載によれば、
作業室(40)と、
上記作業室の内部に空気を給気する給気手段(50)と、
上記作業室の内部の空気を排気する排気手段(60)とを備えるアイソレーター装置(A)において、
上記排気手段は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを備えており、
上記空気清浄用フィルタユニットは、上記作業室から排気される空気の流路に脱着可能に装着されていることを特徴とする。
【0046】
上記構成によれば、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットは、作業室から排気される空気の流路に脱着可能に備えられて、この流路を流れる空気から作業室で使用された人体に有害な化学物質等をフィルタユニットの内部に捕捉することができる。このことにより、使用済みのフィルタユニットの交換作業を簡単に行うことができ、また、当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く抑えられる。
【0047】
よって、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットによる作用効果を達成し得るとともに、安全性並びに作業性が高く、また、メンテナンスコストの安いアイソレーター装置を提供することができる。
【0048】
また、本発明に係るアイソレーター装置は、請求項7の記載によれば、
作業室(40)と、
上記作業室の内部に上方から下方に向かう一方向流の空気を給気する給気手段(50)と、
上記作業室の下方から上記一方向流の空気を排気する排気手段(60)とを備えるアイソレーター装置(A)において、
上記一方向流の空気に沿って上記作業室の周壁部(41a)に並行に設けられる少なくとも1つの隔壁(43)と、
上記作業室の底壁部(41e)に形成されて上記隔壁の下端部(43b)の幅方向に沿って開口する長手状の排気口(62)とを備え、
上記排気手段は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを備えており、
上記空気清浄用フィルタユニットは、上記排気口から排気される上記一方向流の空気の流路に脱着可能に装着されていることを特徴とする。
【0049】
上記構成によれば、作業室の内部には、給気手段によって上方から下方に向かう一方向流(いわゆる層流)の空気が給気されている。この作業室の内部には、上記一方向流の空気の流れに沿う方向に隔壁が設けられている。この隔壁は、周壁部に並行に形成されて、作業室の内部空間を隔壁から中央の空間(中央空間とする)と、隔壁と周壁部との間の空間(周辺空間とする)とに区分けしている。従って、作業室内を上方から下方に向かう一方向流の空気は、中央空間を上方から下方に向かう一方向流の空気と、周辺空間を上方から下方に向かう一方向流の空気とに分かれて流れることとなる。
【0050】
また、作業室内で取り扱われる化学物質等は、中央空間内で取り扱われ、この中央空間内を流れる一方向流の空気によって排気口に誘導される。一方、周辺空間においては、化学物質等が取り扱われないので、この周辺空間には、常に清浄な一方向流の空気が流れている。従って、仮に何らかの理由で作業室内の空気が外部環境に漏れるようなことがあっても、この周辺空間があることにより、作業室内で取り扱われる化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0051】
また、作業室の底壁部に設けられる排気口は、隔壁の下端部の幅方向に沿って長手状に開口しており、中央空間及び周辺空間を上方から下方に流れるそれぞれの一方向流の空気は、乱れることなくこの排気口から排気される。この作業室から排気される空気の流路には、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットが脱着可能に装着されており、この流路を流れる空気から作業室で使用された人体に有害な化学物質等をフィルタユニットの内部に捕捉することができる。このことにより、使用済みのフィルタユニットの交換作業を簡単に行うことができ、また、当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く抑えられる。
【0052】
このように安全性が高い作業室から排気される空気を清浄化するに際して、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを採用することで、更に高度な安全性を確保することができる。
【0053】
よって、請求項7に記載の発明においても、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットによる作用効果を達成し得るとともに、安全性並びに作業性が高く、また、メンテナンスコストの安いアイソレーター装置を提供することができる。
【0054】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項7に記載の空気清浄用フィルタユニットを備えたアイソレーター装置であって、
上記空気清浄用フィルタユニットは、その空気導入口部(14)を上記排気口に対向するようにして上記作業室の外部に装着されていることを特徴とする。
【0055】
上記構成によれば、空気清浄用フィルタユニットは、作業室に開口する排気口を介して、直接、外部から作業室に装着されている。このことにより、作業室から排出される化学物質等を排出直後に効率よく捕捉することができる。
【0056】
また、この排気口は、作業室の底壁部に長手状に開口しており、特に、フィルタユニットの空気導入口をこの排気口の形状に合わせて構成することにより、フィルタユニットの交換作業などメンテナンスにおける安全性と作業性が向上する。
【0057】
よって、請求項8に記載の発明においても、請求項7に記載の発明と同様の作用効果をより一層達成することができる。
【0058】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るアイソレーター装置の第1実施形態を前面から見た図であって、図2に示すY−Y線に沿った断面図である。
【図2】図1に示すアイソレーター装置を左側面から見た図であって、図1に示すX−X線に沿った断面図である。
【図3】図1に示すアイソレーター装置を平面から見た図であって、図2に示すZ−Z線に沿った断面図である。
【図4】図1に示すアイソレーター装置に組み込まれる空気清浄用フィルタユニットを示す斜視図である。
【図5】図4に示す空気清浄用フィルタユニットをハウジングに装着した状態を示す側面から見た断面図である。
【図6】図5に示す空気清浄用フィルタユニットに蓋体が装着された状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第2実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第3実施形態において液体シールの部分を示す側面から見た部分断面図である。
【図9】本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第4実施形態を示す斜視図である。
【図10】図9に示す空気清浄用フィルタユニットをハウジングに装着する前の状態を示す側面から見た断面図である。
【図11】図9に示す空気清浄用フィルタユニットをハウジングに装着した状態を示す側面から見た断面図である。
【図12】本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第5実施形態を示す斜視図である。
【図13】図12に示す空気清浄用フィルタユニットをハウジングに装着した状態を示す側面から見た断面図である。
【図14】図13に示す空気清浄用フィルタユニットに蓋体が装着された状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明を各実施形態により説明する。
(第1実施形態)
本発明に係る空気清浄用フィルタユニット及び当該フィルタユニットを備えたアイソレーター装置の第1実施形態を図面に従って説明する。図1〜図3に示すように、アイソレーター装置Aは、床面上に載置される架台Bと、この架台Bの上に乗載されるアイソレーター本体Cとにより構成されている。
【0061】
架台Bは、周囲をステンレス製金属板からなる壁材で覆われ、その内部には、空気清浄用フィルタユニット10(以下、フィルタユニット10という)を装着するための4つのハウジング20と、電装及び機械室30が収納されている。この架台Bの前面及び背面には、各ハウジング20からフィルタユニット10を交換するための開閉扉21が密封的かつ開閉可能に設けられている。
【0062】
4つのハウジング20のうち、図1において、架台Bの前面側に収納された2つのハウジング20は互いに連通し、架台Bの背面側に収納された2つのハウジング20は互いに連通している。
【0063】
アイソレーター本体Cは、チャンバー40と、給気用ユニット50と、排気用ユニット60とを備えている。
【0064】
チャンバー40は、ステンレス製金属板で構成された箱体からなり、作業者が作業を行う外部環境とは気密的に遮蔽されており、このチャンバー40は、内部を洗浄する洗浄液用スプレーノズル及び排水溝(いずれも図示せず)を備えている。
【0065】
チャンバー40の前面及び背面の両壁部41aには、それぞれ内部を視認できる透明なガラス窓42が設けられている。また、チャンバー40の内部には、各ガラス窓42の内側にそれぞれガラス窓42に並行にガラス隔壁43が配設されている。各ガラス隔壁43は、上下左右の各端部43a〜43cをそれぞれ対向する壁面41b〜41eと当接することなく一定の距離を保った状態で4つの支持具44により前面及び背面の両壁部41aから支持されている。このことにより、チャンバー40の内部空間45は、中央空間45aと前面及び背面の2つの周辺空間45bとに区分けされている。
【0066】
各ガラス窓42は、外部とチャンバー40の内部空間45とを連通させるそれぞれ2つずつの作業用開口部46を有する。また、各ガラス隔壁43は、作業用開口部46と対向する位置に中央空間45aと周辺空間45bとを連通させるそれぞれ2つずつの補助開口部47を有する。各作業用開口部46には、それぞれ樹脂製のグローブ48の基端部が取付枠46aにより気密的に取り付けられ、更に、これらのグローブ48は、補助枠47aにより各補助開口部47にも取付けられて、その先端部を中央空間45aに配設されている。
【0067】
チャンバー40の右側面の壁部41bには、チャンバー40内への機器の搬入及び内部をメンテナンスするための開閉扉41が密封的かつ開閉可能に設けられている(図3参照)。また、チャンバー40の左側面の壁部41cの外側には、架台Bに収納された4つのハウジング20と連通するダクト49がチャンバー40の左側面に沿って上方に向けて設けられている(図1参照)。
【0068】
給気用ユニット50は、外気をチャンバー40内に供給するための給気用ブロワー51と、この給気用ブロワー51から供給された空気を濾過するための給気用フィルタ52と、濾過された空気を整流してチャンバー40内に給気するための整流板53とを備えている。
【0069】
給気用ブロワー51は、チャンバー40の上壁部41dに開口する吸気口54(図示せず)を介してチャンバー40の外部側に接続している。この給気用ブロワー51は、外部の空気を吸入し、この給気用ブロワー51から排出された空気は、給気用フィルタ52に供給される。
【0070】
給気用フィルタ52は、チャンバー40の内部空間45の上部に設けられて、給気用ブロワー51から供給された空気を濾過するためのHEPAフィルタから構成されている。この給気用フィルタ52で清浄化された空気は、給気用フィルタ52の下部にあってチャンバー40内の上部全面に亘って設けられた整流板53を介してチャンバー40の内部空間45に給気される。
【0071】
この整流板53は、複数の空気通過孔を有して空気の流れを均一化する。このことにより、給気用フィルタ52から給気される空気は、整流板53を介してチャンバー40の内部空間45を上方から下方に向かう一方向流(いわゆる層流)の空気を形成する。
【0072】
排気用ユニット60は、チャンバー40の内部空間45の空気を清浄化するためのフィルタユニット10と、このフィルタユニット10で清浄化された空気をハウジング20及びダクト49を介してチャンバー40の外部に排気するための排気用ブロワー61とを備えている。
【0073】
フィルタユニット10は、チャンバー40の底壁部41eに開口する排気口62を介してチャンバー40と連通するハウジング20内に装着されている。このフィルタユニット10の構造及びハウジング20内での装着状態については後述する。
【0074】
排気用ブロワー61は、ダクト49の上部開口部に連通してチャンバー40の上壁部41dの外側であって給気用ブロワー51の背面側に設けられている。この排気用ブロワー61は、ハウジング20及びダクト49を介して送られる空気をチャンバー40の外部に排気する。
【0075】
ここで、フィルタユニット10の構造について説明する。図4において、フィルタユニット10は、内部に空洞を有する矩形状の筒体であって、ステンレス製金属板からなる筒体11と2つのHEPAフィルタ12とを備えている。
【0076】
筒体11は、天板11aと底板11bと2枚の横板11cとからなり前面と背面がそれぞれ空気排出口部13として矩形状に開放されている。また、天板11aには、空気排出口部13の面と天板11aとが交差する境界線11dに沿って長手状に開口する空気導入口部14が設けられている。
【0077】
2つのHEPAフィルタ12は、ガラス繊維からなる濾材を波状に折曲して形成されるフィルタ12aとこのフィルタ12aの周縁部を保持する矩形状の枠体12bとから構成されている。2つのHEPAフィルタ12は、それぞれ空気排出口部13を覆うように枠体12bの外縁部でもって筒体11の内縁部に固着されている。
【0078】
このことにより、2つのHEPAフィルタ12は、互いの吸気面12cをフィルタユニット10の内側に向け、互に対向するように並行に配列する。一方、2つのHEPAフィルタ12は、互いの排気面12dをフィルタユニット10の外側に向け、これらの排気面12dでもってフィルタユニット10の前面及び背面の外壁面を構成する。
【0079】
また、フィルタユニット10は、天板11a上に開口する空気導入口部14を取り囲むように環状のシール部材としてのゴム製のパッキン15を備えている。
【0080】
次に、上述のように構成したフィルタユニット10がハウジング20内に装着される状態について説明する。図5は、フィルタユニット10が装着されたハウジング20を側面から見た断面図である。
【0081】
図5において、ハウジング20は、ステンレス製金属板で構成された箱体からなり、上述のように架台Bに収納されている。ハウジング20の上壁部20aは、チャンバー40の底壁部41eと共通する壁部であり、ハウジング20の前面の壁部20bには、上述のように、ハウジング20からフィルタユニット10を交換するための開閉扉21が密封的かつ開閉可能に設けられている。
【0082】
ハウジング20は、上述のように、隣り合うハウジング20と連通するとともに、ダクト49と連通して、チャンバー40の底壁部41e(ハウジング20の上壁部20aに対応)に開口する排気口62から排気用ブロワー61に向かう排気流路を構成している(図1参照)。
【0083】
ハウジング20の上壁部20aに開口する排気口62の周縁部には、周縁部の全周に亘ってチャンバー40側(上方側)に延出する環状の上方延出部62aと、周縁部の全周に亘ってハウジング20側(下方側)に延出する環状の下方延出部62bとが形成されている。
【0084】
ハウジング20の底壁部20cには、排気口62の下方部に配設されてフィルタユニット10を排気口62に押圧するための2つのユニット押具22が設けられている(図1及び図5参照)。このユニット押具22は、フィルタユニット10の下端部を受承する受承部材22aとこの受承部材22aをネジ式に上下動させる可動部材22bとから構成されている。
【0085】
このように構成されたハウジング20内において、フィルタユニット10は、空気導入口部14を排気口62に対向するようにして、パッキン15を下方延出部62bの外周部に沿ってハウジング20の上壁部20aに当接するように装着される。このとき、フィルタユニット10の下端部は、受承部材22aに受承されて可動部材22bにより上方へ押圧されており、フィルタユニット10は、その空気導入口部14を介してパッキン15により排気口62に密封的に装着されている。
【0086】
ここで、上述のように構成した本第1実施形態に係るアイソレーター装置Aにおいて、作動中における空気の流れを説明する。
【0087】
図2において、給気用ブロワー51及び排気用ブロワー61が作動すると、上述のように、給気用ブロワー51から排出された空気は、給気用フィルタ52に供給される。この給気用フィルタ52で清浄化された空気は、整流板53を介してチャンバー40の内部空間45を上方から下方に向かう一方向流の空気を形成する。
【0088】
換言すれば、整流板53を介して下方に供給される清浄化された空気のうち大部分の空気は、チャンバー40の内部空間45のうち中央空間45aを通り、上方から下方に向かう一方向流の空気を形成する。このことにより、中央空間45a内での作業で使用される化学薬品等は、中央空間45aを通り上方から下方に向かう一方向流に沿って排気口62から排出される。
【0089】
一方、整流板53を介して下方に供給される清浄化された空気のうち他の空気は、チャンバー40の内部空間45のうち周辺空間45bを通り、上方から下方に向かう一方向流の空気を形成する。この周辺空間45bは、ガラス隔壁43により中央空間45aと区分けされており、化学薬品等を使用する作業が直接行われることがない。よって、周辺空間45b内には、清浄化された空気が流れている。このことにより、グローブ48の取付枠46aなどにおいて漏れが生じた場合にも、中央空間45a内の化学薬品等がチャンバー40の外部に漏えいすることがない。
【0090】
このようにして、内部空間45a及び周辺空間45bを流れてきた各一方向流の空気は、チャンバー40内に設けられた4つの排気口62(図3参照)から排気用ブロワー61の吸引によりチャンバー40外に排気される。
【0091】
排気口62からチャンバー40外に排気された空気は、中央空間45a内の作業で使用された化学薬品等を含んでいる。図2及び図5に示すように、排気口62から排気された空気は、排気口62に密封的に装着されたフィルタユニット10の空気導入口部14からフィルタユニット10の内部の空間に導入される。このフィルタユニット10の内部に導入された空気は、2つのHEPAフィルタ12の吸気面12cから吸引され、これらのHEPAフィルタ12で清浄化された後、2つのHEPAフィルタ12の排気面12dからハウジング20内に排気される。
【0092】
フィルタユニット10の排気面12dから排気される清浄化された空気は、ハウジング20の内部からダクト49を通り、排気用ブロワー61の吸引によりチャンバー40の外部に排気される(図1参照)。
【0093】
以上のようにして使用されたフィルタユニット10は、その内部の空間及びHEPAフィルタ12の吸気面12cに多くの化学薬品等を付着させている。そこで、この使用済みのフィルタユニット10をハウジング20から取外す作業について説明する。
【0094】
まず、給気用ブロワー51及び排気用ブロワー61を停止して、洗浄液用スプレーノズル(図示せず)を使用してチャンバー40の内部を洗浄する。また、排出口62の周辺を洗浄し、フィルタユニット10の内部にあるHEPAフィルタ12の吸気面12cを湿潤させるウェットダウンを実施する。このウェットダウンにより、HEPAフィルタ12の吸気面12cに多く付着した化学物質等の飛散を防止することができる。
【0095】
次に、チャンバー40の内部からフィルタユニット10の空気導入口部14に蓋体16を取付ける(図6参照)。この蓋体16は、その外周縁を全周に亘って取り囲むゴム製のパッキン16aを具備している。この蓋体16は、パッキン16aによって空気導入口部14に設けられた取付け溝14aに密封的に装着される。このことにより、化学物質等で汚染されたフィルタユニット10の内部が密封され、内部の化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0096】
このようにフィルタユニット10の内部を密封した状態で、ハウジング20の開閉扉21を解放し、フィルタユニット10を上方に押圧している可動部材22bのネジを緩め、受承部材22aを下方に下げてフィルタユニット10を排気口62から取外す。
【0097】
上述のように構成された本第1実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、筒体と2つのHEPAフィルタとが一体となってフィルタユニットを構成する。この2つのHEPAフィルタの排気面は、いずれも空気排出口部の外壁面を構成する。一方、2つのHEPAフィルタの吸気面は、いずれも筒体の内部に収納されている。このように、本第1実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、簡単な構造をしており、人体に有害な化学物質等を取り扱うアイソレーター装置のチャンバーの排気口に連通して設けられたハウジングに当該フィルタユニットごと装着されている。
【0098】
上記フィルタユニットにおいて、チャンバーの排気口から排気される化学物質等を含んだ空気は、空気導入口部から当該フィルタユニットの内部に誘導される。このフィルタユニットの内部に誘導された空気は、2つのHEPAフィルタの吸気面から吸気されて濾過され、これら2つのHEPAフィルタの排気面からフィルタユニットの外部に排気される。このことにより、2つのHEPAフィルタで濾過された空気に含まれていた化学物質等は、これら2つのHEPAフィルタの吸気面に付着してフィルタユニットの内部に捕捉される。
【0099】
次に、上記フィルタユニットを交換する際には、空気導入口部を蓋体で閉じることによりフィルタユニットの内部を簡単に密封することができる。このことにより、フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを防止することができる。従って、フィルタユニットをフィルタユニットごと交換することにより、フィルタ交換作業を簡単に行うことができ、また、当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く抑えられる。
【0100】
また、本第1実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、上述のように、筒体と2つのHEPAフィルタとからなる簡単な構造をしている。従って、このフィルタユニットは、製造コストが低く、また、フィルタユニットごと廃棄する際にも廃棄コストが低くなる。よって、これらの製造コスト及び廃棄コストを含めたアイソレーター装置のメンテナンスコストが安く抑えられる。
【0101】
また、本第1実施形態によれば、空気導入口部が長手状に開口することにより、この空気導入口部が開口する天板の形状を長手矩形状にして、その長辺を長くし、その短辺を短く抑えることができる。この天板の長辺側の2つの境界には、それぞれHEPAフィルタの排気面が交差している。従って、天板の長辺の長さは、HEPAフィルタの排気面の大きさを左右する。一方、天板の短辺は、2つのHEPAフィルタの排気面に交差する方向にあり、この短辺の長さは、フィルタユニットの奥行きを左右する。よって、天板の形状を長手矩形状にして長辺を長く、短辺を短くすることにより、フィルタユニットの排気面の面積を大きく、奥行きを狭くすることができる。
【0102】
このことにより、フィルタユニットの形状がコンパクトになり、このコンパクトな形状に対して、排気面の面積を大きくすることができる。従って、チャンバーから排気される空気の排気経路に装着する際に、場所の制約が少なくなり装置設計上の自由度が向上する。このことにより、本第1実施形態においては、チャンバーの下部にハウジングを設け、このハウジングをアイソレーター装置の架台に4つ収納することができる。
【0103】
更に、本第1実施形態によれば、フィルタユニットは、2つのHEPAフィルタを備えている。このように、HEPAフィルタが2つ使用されていることで、上述のように、フィルタユニットの通風正面積を広く取ることができ、フィルタ効率が向上する。よって、フィルタユニットに必要なフィルタ容積が小さくなり、コンパクトなフィルタユニットを提供することができる。
【0104】
また、上述のように、2つのHEPAフィルタの排気面は、空気排出口部の外壁面を構成している。このHEPAフィルタの排気面は平面を形成し、通常のHEPAフィルタなどのリーク試験と同様のスキャンテストを実施することができる。このことにより、上記フィルタユニット自体のリーク試験において、2つの排気面に対してスキャンテストを直接行うことができ、フィルタユニットに対する完全性検査が従来の方法で可能となる。
【0105】
一方、上述の空気清浄用フィルタユニットを備えた本第1実施形態に係るアイソレーター装置においては、給気ユニットによってチャンバーの内部を上方から下方に向かう一方向流の空気が給気されている。また、このチャンバーの内部には、上記一方向流の空気の流れに沿う方向に隔壁が設けられている。この隔壁は、周壁部に並行に形成されて、チャンバーの内部空間を中央空間と周辺空間とに区分けしている。従って、チャンバー内を上方から下方に向かう一方向流の空気は、中央空間を上方から下方に向かう一方向流の空気と、周辺空間を上方から下方に向かう一方向流の空気とに分かれて流れることとなる。
【0106】
また、チャンバー内で取り扱われる化学物質等は、中央空間内で取り扱われ、この中央空間内を流れる一方向流の空気によって排気口に誘導される。一方、周辺空間においては、化学物質等が取り扱われないので、この周辺空間には、常に清浄な一方向流の空気が流れている。従って、仮に何らかの理由でチャンバー内の空気が外部環境に漏れるようなことがあっても、この周辺空間があることにより、チャンバー内で取り扱われる化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0107】
また、チャンバーの底壁部に設けられる排気口は、隔壁の下端部の幅方向に沿って長手状に開口している。従って、中央空間及び周辺空間を上方から下方に流れるそれぞれの一方向流の空気は、乱れることなくこの排気口から排気される。このように構成された安全性の高いチャンバーから排気される空気を清浄化するに際して、上述の空気清浄用フィルタユニットを採用することで、更に高度な安全性を確保することができる。
【0108】
また、従来のアイソレーター装置では、フィルタ交換の際のリスク低減のため排気経路には複数のフィルタが採用されている。しかし、上述の空気清浄用フィルタユニットの交換作業においては、濾過した化学物質等の漏洩が高度に防止されている。従って、本第1実施形態に係るアイソレーター装置においては、1つのフィルタユニットを採用することでフィルタ交換の際のリスク低減を図ることができる。このことは、交換するフィルタユニットが1つでよいこととなり、装置設計及びメンテナンスコストの点で有利である。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第2実施形態について説明する。図7に示すように、フィルタユニット110は、内部に空洞を有する矩形状の筒体であって、ステンレス製金属板からなる筒体111と1つのHEPAフィルタ12とを備えている。
【0109】
筒体111は、天板111aと底板111bと2枚の横板111cと背板111dとからなり前面が空気排出口部13として矩形状に開放されている。また、天板111aには、空気排出口部13の面と天板111aとが交差する境界線111eに沿って長手状に開口する空気導入口部14が設けられている。
【0110】
HEPAフィルタ12は、上記第1実施形態と同一の構成をしている。このHEPAフィルタ12は、空気排出口部13を覆うように枠体12bの外縁部でもって筒体111の内縁部に固着されている。
【0111】
このことにより、HEPAフィルタ12は、吸気面12cをフィルタユニット110の内部に向け、背板111dと対向するように並行に配列する。一方、HEPAフィルタ12は、排気面12dをフィルタユニット110の外側に向け、この排気面12dでもってフィルタユニット110の前面の外壁面を構成する。
【0112】
また、フィルタユニット110は、天板111a上に開口する空気導入口部14を取り囲むように環状のシール部材としてのゴム製のパッキン15を備えている。
【0113】
上述のように構成したフィルタユニット110がハウジング20内に装着された状態については、上記第1実施形態と同様である。
【0114】
上述のように構成された本第2実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、HEPAフィルタを1つだけ備えている点で、HEPAフィルタを2つ備えた上記第1実施形態に係るフィルタユニットと異なっている。このことは、フィルタユニットの排気面積が小さくなることを意味し、処理される空気の容量が少なくなる。但し、このことを除いて、上記第1実施形態に係るフィルタユニット変わるところはない。
【0115】
従って、本第2実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、処理する空気の容量が少ない場合、装置設計上の都合、或いは、よりコンパクトでより安価なフィルタユニットを必要とする場合に有効である。また、HEPAフィルタの排気面が1面であることにより、リーク試験におけるスキャンテストがより容易になる。
(第3実施形態)
次に、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第3実施形態について説明する。フィルタユニット210は、上記第1実施形態に係るフィルタユニット10と同様の構成をしている。但し、パッキン15に代えて、液体シール215を備えている(図8参照)。この液体シール215は、シール凸部215aとシール凹部215bとこれらの間に充填されるシール剤215cとから構成されている。
【0116】
図8は、フィルタユニット210が、その空気導入口部14をハウジング20の上壁部20aに開口する排気口62に対向する位置に合わせて装着された状態を示している。排気口62の周縁部には、周縁部の全周に亘ってチャンバー40側(上方側)に延出する上方延出部62aが形成されている。一方、上記第1実施形態において設けられた下方延出部62bがなく、その代わりに排気口62の周縁部より外側に離れた位置に排気口62を取り囲むようにハウジング20側(下方側)に延出する環状のシール凸部215aが形成されている。
【0117】
また、フィルタユニット210は、天板211a上に開口する空気導入口部14を取り囲むように断面凹状で環状のシール凹部215bを備えている。このシール凹部215bの溝の中には液体シリコーンなどのシール剤215cが充填されている。
【0118】
このように構成されたフィルタユニット210は、図8に示すように、ハウジング20内において空気導入口部14を排気口62に対向するようにして、シール凹部215bの環状の溝の中にシール凸部215aが挿入されるようにユニット押具22(図示せず)によって持ち上げられている。
【0119】
このとき、シール凸部215aは、全周に亘りシール凹部215bの溝の中に充填されたシール剤215cに浸かっているので、排気口62と空気導入口部214とは、密封的に連通している。このことにより、排気口62からフィルタユニット210に導入される空気は、フィルタユニット210の内部に誘導され、HEPAフィルタ12によって化学物質等が除去される。
【0120】
上述のように構成された本第3実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、その空気導入口部とチャンバーの排気口とを密封的に連通させるために、シール部材として液体シールを使用する点で、パッキンを使用する上記第1及び第2実施形態に係るフィルタユニットと異なっている。但し、このことを除いて、上記第1及び第2実施形態に係るフィルタユニット変わるところはない。
(第4実施形態)
次に、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第4実施形態について説明する。フィルタユニット310は、上記第1実施形態に係るフィルタユニット10と同様の構成をしている。但し、フィルタユニット10の空気導入口部14に取付ける蓋体16に代えて、可撓性のゴムシート316が空気導入口部14を閉じるように設けられている(図9参照)。
【0121】
ゴムシート316は、図9に示すように、2片の略台形のゴムシート316aと2片の略三角形のゴムシート316bとからなり、フィルタユニット310の天板311aとゴム製のパッキン15に挟持された状態で固定され一体化している。この固定された状態で、ゴムシート316の中央部には、空気導入口部14の長手方向に沿った1本のスリット316cとこのスリットの両端部から周縁部に向かう4本のスリット316dが形成されている。
【0122】
ここで、可撓性のゴムシート316に用いられるゴムとしては、可撓性を有するものであればどのようなものを使用してもよい。なお、本第4実施形態においては、ゴムシート316には、厚み3mmのシリコーンゴムのシートを使用した。
【0123】
次に、上述のように構成したフィルタユニット310がハウジング20内に装着される状態について説明する。図10は、フィルタユニット310が装着される前のハウジング20を側面から見た断面図である。
【0124】
ハウジング20は、図10に示すように、ハウジング20の上壁部20aに開口する排気口62の開口幅が上記第1実施形態に比べ狭く、また、排気口62の周縁部に設けられる下方延出部62bの延出長さが上記第1実施形態に比べ長くなっている。
【0125】
このことにより、フィルタユニット310を排気口62に装着したときに、下方延出部62bがゴムシート316を押し曲げてフィルタユニット310の空気導入口部14の内部に挿入される。以下、この状態について説明する。
【0126】
図10において、フィルタユニット310は、その下端部をユニット押具22の受承部材22aにより受承されて排気口62の下方に配置されている。このとき、受承部材22aは、可動部材22bによって下方に下げられた状態にあり、フィルタユニット310の空気導入口部14は、排気口62に装着されていない。
【0127】
次に、図11に示すように、ユニット押具22の可動部材22のネジを回転して受承部材22aを上方に押し上げると、排気口62の下方延出部62bは、ゴムシート316を下方に押し曲げてフィルタユニット310の空気導入口部14の内部に挿入される。このとき、ゴムシート316は、空気導入口部14の内周部と下方延出部62bの外周部との間に介挿されて密封材の働きをする。
【0128】
この状態において、フィルタユニット310は、空気導入口部14を排気口62に対向するようにして、パッキン15をハウジング20の上面の壁部20aに当接するように装着される。このとき、フィルタユニット310の下端部は、受承部材22aに受承されて可動部材22bにより上方へ押圧されており、フィルタユニット310は、その空気導入口部14を介してパッキン15により排気口62に密封的に装着されている。
【0129】
以上のような状態で使用されたフィルタユニット310は、その内部の空間及びHEPAフィルタ12の吸気面12cに多くの化学薬品等を付着させている。そこで、この使用済みのフィルタユニット310をハウジング20から取外す際には、上記実施例1と同様にしてウェットダウンを実施する。
【0130】
なお、フィルタユニット310においては、上記第1実施形態と異なり空気導入口部14に蓋体16を取付けることなく、ハウジング20の開閉扉21を解放し、フィルタユニット310を上方に押圧している可動部材22bのネジを緩め、受承部材22aを下方に下げてフィルタユニット310を排気口62から取外す。
【0131】
このとき、下方延出部62bによって下方に押し曲げられていたゴムシート316が空気導入口部14を閉じる位置に復元する。このことにより、化学物質等で汚染されたフィルタユニット310の内部が密封され、内部の化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0132】
上述のように構成された上記第4実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、空気導入口部に可撓性のゴムシートを固定的に備えている点で、脱着可能な蓋体を備えることによりフィルタユニットの内部を密封する上記第1〜第3実施形態に係るフィルタユニットと異なっている。この可撓性のゴムシートは、4枚のゴムシートからなり、通常は空気導入口部を閉じる状態にあるが、これらのゴムシートを押し曲げることにより、空気導入口部を開放することができる。
【0133】
従って、フィルタユニットをハウジングに装着して空気を清浄化する際には、この可撓性のゴムシートを押し曲げて空気導入口部が開放される。一方、ハウジングから使用済みのフィルタユニットを交換する際には、この可撓性のゴムシートが復元して空気導入口部を閉じるようになる。このことにより、フィルタユニットの内部に捕捉された化学物質等が外部環境に漏洩することを押えることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明に係る空気清浄用フィルタユニットの第5実施形態について説明する。フィルタユニット410は、上記第1実施形態に係るフィルタユニット10と同様の構成をしている。但し、フィルタユニット410の天板411aに開口する空気導入口部14の周縁部には、周縁部の全周に亘って上方に延出するステンレス製金属板からなる環状の取付口部17が設けられている(図12参照)。
【0134】
次に、上述のように構成したフィルタユニット410がハウジング20内に装着される状態について説明する。図13は、フィルタユニット410が装着されたハウジング20を側面から見た断面図である。
【0135】
上記第1実施形態と同様の構成をしたハウジング20において、フィルタユニット410は、空気導入口部14を排気口62に対向するようにして、取付口部17を下方延出部62bの内周部に沿って排気口62に挿入すると共に、パッキン15を下方延出部62bの外周部に沿ってハウジング20の上壁部20aに当接する。このとき、フィルタユニット410の下端部は、受承部材22aに受承されて可動部材22bにより上方へ押圧されており、フィルタユニット410は、その空気導入口部14を介してパッキン15により排気口62に密封的に装着されている。
【0136】
また、フィルタユニット410を交換する際には、上記第1実施形態と同様の蓋体16をパッキン16aによって取付口部17に設けられた取付け溝17aに密封的に装着する。このことにより、化学物質等で汚染されたフィルタユニット410の内部が密封され、内部の化学物質等が外部環境に漏洩することがない。
【0137】
上述のように構成された上記第5実施形態に係る空気清浄用フィルタユニットは、空気導入口部にステンレス製金属板からなる環状の取付口部が設けられている点で、この取付口部が設けられていない上記第1〜第4実施形態に係るフィルタユニットと異なっている。
【0138】
従って、フィルタユニットをハウジングに装着する際には、この取付口部を下方延出部の内周部に沿って排気口に挿入することができ、ハウジングに対するフィルタユニットの装着が安定する。また、蓋体を装着する取付口部の延出端部が下方延出部まで延出されているので、蓋体の装着が容易となる。このことにより、フィルタユニットの交換作業がより簡単なものとなる。
【0139】
これまで述べてきたように、上記各実施形態においては、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタ交換作業が簡単で当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニットを提供することができる。
【0140】
また、上記各実施形態の空気清浄用フィルタユニットを採用することにより、上述の空気清浄用フィルタユニットによる作用効果を達成し得るとともに、安全性並びに作業性が高く、また、メンテナンスコストの安いアイソレーター装置を提供することができる。
【0141】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
1.上記第1実施形態においては、フィルタユニットの交換作業にバッグイン・バッグアウト法は使用していない。しかし、これに限定するものではなく、簡略化したバッグイン・バッグアウト法を利用することは有効である。例えば、フィルタユニットを装着する際に受承部材の下方に予めバッグを装着しておくと、ウェットダウンの際に排気面からの洗浄水の染み出しを捕捉することができる。また、フィルタユニットを取外す際に当該バッグの中に収納することで更に安全性が向上する。
2.上記第1実施形態においては、ハウジングをチャンバーの下方に配設することにより、フィルタユニットをチャンバーの排気口に直接装着するものである。しかし、これに限定するものではなく、例えば、排気口からダクトを経由してチャンバーの上部に配設されたハウジングにフィルタユニットを装着するようにしてもよい。
3.上記第1実施形態においては、給気用ブロワーと排気用ブロワーを停止した状態でフィルタユニットを交換するものである。しかし、これに限定するものではなく、例えば、排気用ブロワーを稼働した状態で交換作業をするようにしてもよい。この場合には、交換作業中に何らかの理由で化学物質等が飛散した場合にも、排気用ブロワーによる吸気によりハウジング内から化学物質等が外部環境に漏洩することを防止できる。この場合には、ハウジングの下流側に他のフィルタを装着しておくことが有効である。
4.上記第1実施形態においては、チャンバーの前面及び背面に2つのガラス隔壁が設けられているが、チャンバーに設けるガラス隔壁の数は、これに限るものではなく、全く設けない場合、1面のみ設ける場合、或いは、4面全てに設けるようにしてもよい。
5.上記第1実施形態においては、ガラス隔壁43は、上下左右の各端部をそれぞれ対向する壁面と当接することなく一定の距離を保った状態で4つの支持具により前面及び背面の両壁部から支持されている。しかし、これに限定するものではなく、例えば、ガラス隔壁の左右端部をそれぞれ対向する側壁面に当接するようにして当該側壁面により支持するようにしてもよい。この場合には、チャンバーの内部空間を中央空間と周辺空間により明確に区分けすることができる。
6.上記第1実施形態においては、チャンバーには4つのグローブが装着されているが、チャンバーに装着するグローブの数は、これらに限るものではない。また、グローブに代えて、ハーフスーツ等を装着するようにしてもよい。
7.上記第1実施形態においては、チャンバーの内部空間を上方から下方に向かう一方向流の空気を形成するために複数の空気通過孔を有する整流板を採用するが、これに限定するものではなく、細かなメッシュを有するスクリーン紗を貼付した整流板を採用するようにしてもよい。
8.上記各実施形態においては、給気用フィルタ及びフィルタユニットには、HEPAフィルタを使用するものであるが、HEPAフィルタに限るものではなく、ULPAフィルタその他の高性能フィルタをチャンバー内で使用する化学物質等の有害な物質に合わせて、適宜選定すればよい。
9.本発明に係る空気清浄用フィルタユニットは、アイソレーター装置に使用することに限定するものではなく、化学物質等を取り扱う更に大きな作業室或いはRABSなどに使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、従来のバッグイン‐バッグアウト方式に比べ、フィルタ交換作業が簡単で当該交換作業によって外部環境を汚染する危険性が低く、また、簡単な構造を有して製造コスト及び廃棄コストを含めた装置のメンテナンスコストが安く、更に、スキャンテストによる完全性検査が実施できることで安全性の確認が容易な空気清浄用フィルタユニット及び当該フィルタユニットを備えたアイソレーター装置を提供するものである。
【0143】
このことは、医薬品の製造或いは研究開発段階で人体に有害な化学物質を取り扱う作業の他、医学や生物学の実験において毒性の強い微生物を取り扱う作業、或いは、放射性物質を取り扱う作業など、外部環境に漏洩してはならない危険な物質を取り扱う多くの作業に対して、本発明は有効に利用できるものである。
【符号の説明】
【0144】
A…アイソレーター装置、B…架台、C…アイソレーター本体、10…フィルタユニット、11…筒体、12…HEPAフィルタ、12a…フィルタ、12b…枠体、12c…吸気面、12d…排気面、13…空気排出口部、14…空気導入口部、15…パッキン、16…蓋体、17…取付口部、20…ハウジング、21…開閉扉、22…ユニット押具、22a…受承部材、22b…可動部材、30…電装及び機械室、40…チャンバー、42…ガラス窓、43…ガラス隔壁、45…内部空間、45a…中央空間、45b…周辺空間、46…作業用開口部、47…補助開口部、48…グローブ、49…ダクト、50…給気用ユニット、51…給気用ブロワー、52…給気用フィルタ、53…整流板、54…吸気口、60…排気用ユニット、61…排気用ブロワー、62…排気口、215…液体シール、316…ゴムシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を導入する空気導入口部を設けてなる第1壁部と、前記第1壁部に交差するように形成されて前記導入空気を排出する空気排出口部を設けてなる第2壁部とを有する矩形状の筒体と、
前記筒体に設けられて前記導入空気を濾過するフィルタ部材とを備える空気清浄用フィルタユニットであって、
前記フィルタ部材は、その排気面において、前記空気排出口部の外壁面を構成するように当該空気排出口部に設けられて前記濾過された空気を排出するようにした空気清浄用フィルタユニット。
【請求項2】
他のフィルタ部材を備えており、
前記筒体は、前記第2壁部に対向するように形成されて前記導入空気を排出する他の空気排出口部を設けてなる第3壁部を有して、
前記他のフィルタ部材は、その排気面において、前記他の空気排出口部の外壁面を構成するように当該他の空気排出口部に設けられて前記濾過された空気を排出することを特徴とする請求項1に記載の空気清浄用フィルタユニット。
【請求項3】
前記空気導入口部は、前記第1壁部と前記第2壁部との境界線に沿って長手状に開口していることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄用フィルタユニット。
【請求項4】
前記空気導入口部を閉じる脱着可能な蓋体と、
この蓋体の外周縁部と前記空気導入口部の内周縁部との間に気密的に介装してなるパッキンとを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニット。
【請求項5】
前記空気導入口部の外周縁部から内側に延出されて当該空気導入口部を開閉可能に閉じる複数枚の可撓性シートを有する開閉部材を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニット。
【請求項6】
作業室と、
前記作業室の内部に空気を給気する給気手段と、
前記作業室の内部の空気を排気する排気手段とを備えるアイソレーター装置において、
前記排気手段は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを備えており、
前記空気清浄用フィルタユニットは、前記作業室から排気される空気の流路に脱着可能に装着されていることを特徴とするアイソレーター装置。
【請求項7】
作業室と、
前記作業室の内部に上方から下方に向かう一方向流の空気を給気する給気手段と、
前記作業室の下方から前記一方向流の空気を排気する排気手段とを備えるアイソレーター装置において、
前記一方向流の空気に沿って前記作業室の周壁部に並行に設けられる少なくとも1つの隔壁と、
前記作業室の底壁部に形成されて前記隔壁の下端部の幅方向に沿って開口する長手状の排気口とを備えており、
前記排気手段は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを備えており、
前記空気清浄用フィルタユニットは、前記排気口から排気される前記一方向流の空気の流路に脱着可能に装着されていることを特徴とするアイソレーター装置。
【請求項8】
前記空気清浄用フィルタユニットは、その空気導入口部を前記排気口に対向するようにして前記作業室の外部に装着されていることを特徴とする請求項7に記載のアイソレーター装置。
【請求項1】
空気を導入する空気導入口部を設けてなる第1壁部と、前記第1壁部に交差するように形成されて前記導入空気を排出する空気排出口部を設けてなる第2壁部とを有する矩形状の筒体と、
前記筒体に設けられて前記導入空気を濾過するフィルタ部材とを備える空気清浄用フィルタユニットであって、
前記フィルタ部材は、その排気面において、前記空気排出口部の外壁面を構成するように当該空気排出口部に設けられて前記濾過された空気を排出するようにした空気清浄用フィルタユニット。
【請求項2】
他のフィルタ部材を備えており、
前記筒体は、前記第2壁部に対向するように形成されて前記導入空気を排出する他の空気排出口部を設けてなる第3壁部を有して、
前記他のフィルタ部材は、その排気面において、前記他の空気排出口部の外壁面を構成するように当該他の空気排出口部に設けられて前記濾過された空気を排出することを特徴とする請求項1に記載の空気清浄用フィルタユニット。
【請求項3】
前記空気導入口部は、前記第1壁部と前記第2壁部との境界線に沿って長手状に開口していることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄用フィルタユニット。
【請求項4】
前記空気導入口部を閉じる脱着可能な蓋体と、
この蓋体の外周縁部と前記空気導入口部の内周縁部との間に気密的に介装してなるパッキンとを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニット。
【請求項5】
前記空気導入口部の外周縁部から内側に延出されて当該空気導入口部を開閉可能に閉じる複数枚の可撓性シートを有する開閉部材を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニット。
【請求項6】
作業室と、
前記作業室の内部に空気を給気する給気手段と、
前記作業室の内部の空気を排気する排気手段とを備えるアイソレーター装置において、
前記排気手段は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを備えており、
前記空気清浄用フィルタユニットは、前記作業室から排気される空気の流路に脱着可能に装着されていることを特徴とするアイソレーター装置。
【請求項7】
作業室と、
前記作業室の内部に上方から下方に向かう一方向流の空気を給気する給気手段と、
前記作業室の下方から前記一方向流の空気を排気する排気手段とを備えるアイソレーター装置において、
前記一方向流の空気に沿って前記作業室の周壁部に並行に設けられる少なくとも1つの隔壁と、
前記作業室の底壁部に形成されて前記隔壁の下端部の幅方向に沿って開口する長手状の排気口とを備えており、
前記排気手段は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気清浄用フィルタユニットを備えており、
前記空気清浄用フィルタユニットは、前記排気口から排気される前記一方向流の空気の流路に脱着可能に装着されていることを特徴とするアイソレーター装置。
【請求項8】
前記空気清浄用フィルタユニットは、その空気導入口部を前記排気口に対向するようにして前記作業室の外部に装着されていることを特徴とする請求項7に記載のアイソレーター装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−576(P2012−576A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138841(P2010−138841)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(599053643)株式会社エアレックス (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(599053643)株式会社エアレックス (29)
【Fターム(参考)】
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