説明

空気清浄装置

【課題】学校、病院等の公共施設や、ビル、マンション、家屋、商業施設等における建築物、或いは鉄道、バス等の車輌や航空機等の室内等、ある限られた室内の空気を清浄化する空気清浄機において、シックハウスの原因とされるVOC等にも有効で、さらに清浄化能力に優れ、室内全体の空気を短時間で清浄化することができる空気清浄機を提供する。
【解決手段】ホルムアルデヒト等のVOCは水に溶解しやすいことから、汚染空気を消臭手段を担持させた第1空気清浄体から細かい気泡として水中にバブリングさせ、第1空気清浄体と水に汚染物質を吸収分解させ、水から水面上に出た空気を消臭手段を担持させた第2空気清浄体をさらに通過させることで、より短時間に大量な空気を清浄化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば学校、病院等の公共施設や、ビル、マンション、家屋、商業施設等における室内、或いは鉄道、バス等の車輌や航空機等の室内等のようなある限られた室内の空気をより自然に清浄化し、不快な臭いや、ホルムアルデヒド等の空気中の汚染物質を除去し、快適で健康的な屋内空気を得るための空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に室内空気の清浄化をおこなう空気清浄装置は、吸気口から空気を取り込み、室内の悪臭、異臭、有害ガス等を、吸着・分解・脱臭等の処理を介して無臭・清潔な空気に変換し、さらに空気中の塵埃、粉塵、細菌等を捕捉・分解等の処理を介して、清潔で無害な空気にして室内に吹き出して室内空気の清浄化をおこなう方法が多い。中でも植木鉢に見たてた空気清浄装置は自然な癒し空間を作るものとして好評で以下のようなものが開示されている。
【0003】
特許文献1においては、模造観葉植物内にフィルターを配置し、清浄化された空気は植物の幹や枝から排出され室内の広い範囲に清浄化した空気を吹き出し、室内全体にまんべんなく清浄化された空気を分布させることができると記載されている。
【0004】
特許文献2においては、吸気口から取り込まれた汚れた空気を水に接触させることにより、空気に含まれる汚染物質を水に溶解させ空気を清浄化する。この汚染物質を溶解した水は配管によって植物が植えられた土壌に供給され、植物に吸収されて清浄化される。また水によって清浄化された空気は排気口から室内に流れて室内全体を清浄化すると記載されている。
【0005】
特許文献3においては、吸気口から取り込まれた汚れた空気を集塵フィルターや光触媒等をもちいて化学的物理的な空気浄化を実施し、更にこの空気を植物、微生物に接触させる等、自然な空気浄化とを組み合わせた植木鉢が開示されている。
【0006】
これら開示された技術はいずれも、植物という概念からかもし出される自然な潤いと化学的空気清浄化の手段を組み合わせ、自然の空気の流れに合わせ、人体に不快な感じを与えずに、より自然な空気の動き合わせた空調として優れた方法である。
【特許文献1】特開2001−327820
【特許文献2】特開2002−709
【特許文献3】特開2002−27835
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では、空気の清浄化力という意味からはまだその能力は不足しており、さらにシックハウスの原因とされるVOC等にも有効で清浄化能力の優れた空気清浄機が求められている。本発明は緩やかな空気の動きの中で、より自然な状態でVOCも含む室内全体の空気を短時間で清浄化しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、ホルムアルデヒト等のVOCは水に溶解することから、汚染空気を消臭剤や吸着剤等の消臭手段を担持させた第1空気清浄体から細かい気泡として水中に噴出させ、第1空気清浄体及び水に汚染物質を吸収さることと、さらに水から水面上に出た空気をハイドロコーン等の連続多孔質体に消臭剤や吸着剤を担持させた第2空気清浄体をさらに通過させることにより、より短時間に大量な空気を清浄化することができることを見出し本発明に到達した。本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
【0009】
[1] 連続多孔質体からなり空気浄化剤を担持する第1空気清浄体を介して汚染空気を水中に吹き出して空気清浄化を行うことと、前記水中から水面上に出た空気を連続多孔質体からなり空気浄化剤を担持する第2空気清浄体を通過させて清浄化することを特徴とする空気清浄装置
【0010】
[2] 前記第1空気清浄体及び第2空気清浄体に担持する空気浄化剤として消臭剤および/または吸着剤の材料を収容する構成としたことを特徴とする前項1に記載の空気清浄装置。
【0011】
[3] 前記第1空気清浄体及び第2空気清浄体に空気浄化剤として担持させる消臭剤として金属酸化物、金属フタロシアニン錯体から選択される消臭剤、吸着剤としてヒドラジン、ゼオライト、シリカから選択される吸着剤を担持させたことを特徴とする前項1または2に記載の空気清浄装置。
【発明の効果】
【0012】
[1]の発明の空気清浄装置は、連続多孔質体からなり空気浄化剤を担持する第1空気清浄体を介して汚染空気を水中に吹き出して空気清浄化を行うことと、前記水中から水面上に出た空気を、連続多孔質体からなり空気浄化剤を担持する第2空気清浄体を通過させて清浄化するので、従来の空気清浄装置では得られないほど極めて短時間で多くの種類の悪臭や、ホルムアルデヒド等のVOCの清浄化をおこなうことができる。
【0013】
[2] の発明の空気清浄装置は、第1空気清浄体及び第2空気清浄体に消臭剤および/または吸着剤から選択される1種または複数の空気浄化剤を担持しているので、多くの種類の悪臭にも有効である。
【0014】
[3] の発明の空気清浄装置は、第1空気清浄体及び第2空気清浄体に消臭剤として金属酸化物、金属フタロシアニン錯体から選択される消臭剤、吸着剤としてヒドラジン、ゼオライト、シリカから選択される吸着剤を担持させているので、優れた吸着消臭機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態の空気清浄装置では、室内の汚れた空気は空気取り入れ口7からポンプ9によって吸引され、第1空気清浄体2を介して水中に細かい気泡として吹き出される。第1空気清浄体2は連続多孔質体からなり、水槽の底面に配置され、第1空気清浄体2によって清浄化された空気は底面から水中に細かい気泡として吹き出され、前記清浄化された空気に残るホルムアルデヒド等のVOCを水に溶解する。(図1参照)
この吹き出された空気は、水面上に出、第2空気清浄体3を通過し空気排出口8からきれいな空気となり放出される。また、汚れた空気の通過した水は空気清浄装置の上に置かれた植物の土壌に供給され、植物や土壌中の微生物によって清浄化される構造となっている。(図示せず)
【0016】
第1空気清浄体はセラミックス、プラスチックス等の連続多孔質のもので、特に限定しないが50〜100μmの孔径のものを使うのが好ましい。室内の汚れた空気は、まず第1空気清浄体を通過し、第1空気清浄体に担持された消臭剤、吸着剤によってアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等の臭気が浄化される。汚染空気は連続多孔質体を通過しある程度清浄化されてから、細かい気泡となって水中を通過する際にホルムアルデヒド等のVOCが取り除かれて水面に出る。
【0017】
水中に連続多孔質体を介さずに、パイプから直接汚染空気を水中に吹き出してもホルムアルデヒト等のVOCはある程度水に溶解し、取り除かれて水面に出るが、他の悪臭成分等は清浄化されない。また気泡が大きくなるので、水と接することなく水面上に抜ける汚染空気が多くなり効率的に空気清浄化することはできない。連続多孔質体の穴径は特に限定しないが50〜100μmの気孔径のものを使うのが細かい気泡となるので好ましい。水面上に出た空気は第2空気清浄体を通過しさらに清浄化される。
【0018】
第1空気清浄体に担時する方法は、金属酸化物、金属フタロシアニン錯体から選択される消臭剤を含有した処理液にバインダーを介して担持させてやればよい。金属酸化物としては酸化マグネシウム、ニ酸化マンガン、金属フタロシアニンとしては、鉄フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、銅フタロシアニンを例示することができる。中でもコバルトフタロシアニンが消臭性能の面からも好ましい。これらの消臭剤によりアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等の臭気が清浄化される。
【0019】
第1空気清浄体に担時する吸着剤としては、ヒドラジン、ゼオライト、シリカから選択される吸着剤をから選択される1種または複数の吸着剤をあげられる。
【0020】
ヒドラジンはセバシン酸ジヒドラジド、ドテカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドを例示することができる。中でもセバシン酸ジヒドラジドが消臭性能の面から好ましい。
【0021】
ゼオライトとしては、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライトを例示することができる。中でもY型ゼオライトが消臭性能の面から好ましい。
【0022】
バインダー樹脂としては、特に限定されることなく、例えばアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、グリオキザール樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−シリコーン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、エチレン−スチレン−アクリレート−メタアクリレート共重合体樹脂、自己架橋型アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これら樹脂を2種類以上混合してバインダー樹脂としてもよい。
【0023】
第1空気清浄体を通過した空気は、水槽内に細かい気泡となって吹き出され、水に溶解しやすいホルムアルデヒド等のVOCが取り除かれる。VOCが溶解した水を、空気清浄装置の上に置かれた植物の土壌に供給し、植物や土壌中の微生物によってVOCを含んだ水を清浄化させることもできる。
【0024】
また、消臭剤および/または吸着剤の担持量は担持体に対して0.1〜10重量%の範囲とするのが好ましい。0.1重量%未満では消臭効果が十分に得られなくなり、特に速効性の点での低下が著しく、好ましくない。10重量%を越えるとコストを増大し好ましくない。
【0025】
水を通過した空気は、水槽上に配置された第2空気清浄体3を通過して空気排出口8からきれいな空気となり放出される。第2空気清浄体はセラミックス、プラスチックス等の連続多孔質体で、前記水の上に層状に設置したもので、第1空気清浄体と水を通過して清浄化された空気をさらに確実に清浄化するものある。第2空気清浄体3は、第1空気清浄体と水で捕らえきれなかったガスを分解するもので、第2空気清浄体3を通過した空気は空気排出口8から室内に排出される。
【0026】
第2空気清浄体に担時する消臭剤としては、第1空気清浄体と同様に金属酸化物、金属フタロシアニン、ヒドラジン、ゼオライト、シリカから選択される1種または複数の消臭剤および/または吸着剤をバインダーを介して担時させてやればよいが、第1空気清浄体と水で捕らえきれなかったガスを分解するので、第1空気清浄体とは異なる消臭剤および/または吸着剤を担持するのが好ましい。
【0027】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
<実施例1>
図1のように室内の汚れた空気は空気取り入れ口7からポンプ9によって吸引され、第1空気清浄体2を介して水中に細かい気泡として吹き出される。第1空気清浄体2は連続多孔質のセラミックからなり、大きさは5cm×5cm×20cmの直方体とし、アクリル樹脂をバインダーとして、消臭剤としコバルトフタロシアニン5g/cm、吸着剤としてゼオライトを5g/cm担持させた。第1空気清浄体2の中央部にパイプを通して汚れた空気を吹き込み、第1空気清浄体の表面全体から水中に細かい気泡を吹き出すようにした。次に、水面上に配置したネット5上に、連続多孔質のセラミックからなる第2空気清浄体3に消臭剤としてコバルトフタロシアニンを5g/cm、吸着剤としてセバシン酸ジヒドラジドを5g/cm担持させ、水面上に出た空気をさらに清浄化させて、空気排出口から室内に排出した。酸化マグネシウム
【0028】
次ぎに、この空気清浄装置を四畳半のユニット住宅の中央に置き、ユニット住宅内に各種ガスを注入し空気清浄化の状況を観察した。なお、ユニット住宅の窓、ドアは目張りをし、測定ガスの抽入抽出口を1ヶ所設け、空気清浄装置の電源を入れ、人が空気流を感じないくらいの緩やかな対流とした。24時間経過後の室内のガスの残存濃度を測定し、この測定値より吸着除去されたガスの除去率(%)を算出し表1にまとめた。24時間経過後の除去率が60%以上を合格とした。
【0029】
<実施例2>
実施例1において、第1空気清浄体の消臭剤としてコバルトフタロシアニンに代えて銅フタロシアニンを2g/cm担持させた以外は実施例1と同様にしてユニット住宅での空気清浄化の状況を確認した。
【0030】
<実施例3>
実施例1において、第2空気清浄体に消臭剤として酸化マグネシウムを2g/cm担持させた以外は実施例1と同様にしてユニット住宅での空気清浄化の状況を確認した。
【0031】
<比較例1>
実施例1において、第2空気清浄体になにも担持しなかった以外は実施例1と同様にしてユニット住宅での空気清浄化の状況を確認した。
【0032】
<比較例2>
実施例1において、水を無くした以外は実施例1と同様にしてユニット住宅での空気清浄化の状況を確認した。
【0033】
<比較例3>
実施例1に代わり、植物の植えられた鉢のみをユニット住宅に設置し空気清浄化の状況を確認した。
【0034】
上記のようにしてつくられたユニット住宅内に各種ガスを注入し24時間経過後の室内のガスの残存濃度を測定し、この測定値より吸着除去されたガスの除去率(%)を算出し表1にまとめた。24時間経過後の除去率が60%以上を合格とした。なお各種ガスの除去性能試験方法は以下のようにした。
【0035】
<ホルムアルデヒド除去性能試験>
室内のホルムアルデヒドガスの濃度が30ppmになるようにホルムアルデヒドガスを測定ガスの抽入抽出口から抽入し、24時間経過後の室内のホルムアルデヒドガスの残存濃度を測定し、この測定値より除去されたホルムアルデヒドガスの総量を算出し、これによりホルムアルデヒドガスの除去率(%)を算出した。
【0036】
<アンモニア除去性能試験>
ホルムアルデヒドガスに代えてアンモニアガスを用い、室内のアンモニアガスの濃度が200ppmになるように抽入した以外は上記試験と同様にして、アンモニアガスを除去した除去率(%)を算出した。
【0037】
<酢酸除去性能試験>
ホルムアルデヒドガスに代えて酢酸ガスを用い、室内の酢酸ガスの濃度が5ppmになるように抽入した以外は上記試験と同様にして、酢酸ガスを除去した除去率(%)を算出した。
【0038】
<メチルメルカプタン除去性能試験>
ホルムアルデヒドガスに代えてメチルメルカプタンガスを用い、室内のメチルメルカプタンガスの濃度が40ppmになるように抽入した以外は上記試験と同様にして、メチルメルカプタンガスを除去した除去率(%)を算出した。
【0039】
<硫化水素除去性能試験>、
ホルムアルデヒドガスに代えて硫化水素ガスを用い、室内の硫化水素ガスの濃度が20ppmになるように抽入した以外は上記試験と同様にして、硫化水素ガスを除去した除去率(%)を算出した。
【0040】
<アセトアルデヒド除去性能試験>、
ホルムアルデヒドガスに代えてアセトアルデヒドガスを用い、室内のアセトアルデヒドガスの濃度が30ppmになるように抽入した以外は上記試験と同様にして、アセトアルデヒドガスを除去した除去率(%)を算出した。
【0041】
【表1】

【0042】
上記表1から明らかなように、実施例1〜3の空気清浄化システムにおいては、ホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸、メチルメルカプタン、硫化水素、アセトアルデヒドガスのガスに優れた消臭性能が発揮され自然対流に近いの環境の中で十分な消臭効果があることを確認できた。
【0043】
比較例1の空気清浄化システムにおいては、第2空気清浄体になにも担持しなかったため、悪臭の浄化に満足のいかないものであった。また、比較例2の空気清浄化システムでは、ホルムアルデヒドガスに消臭性能が発揮されず、比較例3においては、その消臭効果は微々たるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の一実施形態に係る空気清浄装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1・・空気清浄装置
2・・第1空気清浄体
3・・第2空気清浄体
4・・水
5・・ネット
6・・植物
7・・空気取り入れ口
8・・空気排出口
9・・ポンプ
10・・パイプ
11・・土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続多孔質体からなり空気浄化剤を担持する第1空気清浄体を介して汚染空気を水中に吹き出して空気清浄化を行うことと、前記水中から水面上に出た空気を連続多孔質体からなり空気浄化剤を担持する第2空気清浄体を通過させて清浄化することを特徴とする空気清浄装置
【請求項2】
前記第1空気清浄体及び第2空気清浄体に担持する空気浄化剤として消臭剤および/または吸着剤を収容する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記第1空気清浄体及び第2空気清浄体に空気浄化剤として担持させる消臭剤として金属酸化物、金属フタロシアニン錯体から選択される消臭剤、吸着剤としてヒドラジン、ゼオライト、シリカから選択される吸着剤を担持させたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気清浄装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−158551(P2006−158551A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352218(P2004−352218)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】