説明

空気清浄装置

【課題】簡単な構成で、且つ、効率良く空気中の細菌、ウィルス、カビ等を除去することが可能な空気清浄装置を提供する。
【解決手段】対向する2つの側面にそれぞれ複数の孔部13a穿設されたフィルタ装置13内に、多数の抗菌ペレット26を挿入する。また、ポンプ16を作動させて、貯水槽15内に貯留されている循環水25を、フィルタ装置13の上部に設けられた給水口14に導入し、フィルタ装置13内に循環水25を流下させる。従って、給気口11より導入された外部の空気は、このフィルタ装置13内を通過することにより、細菌、ウィルス、カビ等が除去されて、排気口側へ送り出されることになる。この際、循環水25は抗菌ペレット26と接触するので、効果的に細菌、ウィルス、カビ等を死滅させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流を利用して空気を浄化する空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水流、ミストを利用した空気清浄装置の従来例として、例えば、特開2005−21777号公報(特許文献1)、特開2003−79714号公報(特許文献2)に記載されたものが知られている。特許文献1では、円筒の外側面に沿ってプラスに帯電された水を流し、更に、ファンによって導入された空気中の塵埃をマイナスに帯電させた後、この空気を円筒の外側面に沿って流入させることにより、塵埃を水に吸着させ、空気を浄化する技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2では、脱臭・除菌用の液体をミスト状にして空気中に噴霧し、細菌、ウィルス、臭気等を除去する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−21777号公報
【特許文献2】特開2003−79714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、水をプラスに帯電させ、且つ、空気中の塵埃をマイナスに帯電させる必要があるので、電気回路が必要となり装置全体が大がかりになるという欠点がある。
【0006】
また、特許文献2に記載された技術では、定期的に脱臭・除菌用の液体を供給する必要があるので、メンテナンスに多くの労力が必要となり、また、消耗品に要するコストが高くなるという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で、且つ効率良く空気中の塵埃、細菌、カビ、ウィルス、臭気等を除去することが可能な空気清浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、給気口より流入した空気を洗浄して外部へ排出する空気洗浄装置において、対向する2つの側面にそれぞれ複数の孔が穿設され、上部給水口より供給される循環水が、その自重により下方に向けて流下するフィルタ装置と、前記フィルタ装置内に収納され、前記循環水を浄化する複数の抗菌ペレットと、前記給気口より空気を流入させ、流入した空気を前記複数の孔を介して前記フィルタ装置を通過させた後、外部に排出する送気手段と、前記フィルタ装置の下方に設けられ、流下した前記循環水を回収する貯水槽と、前記貯水槽に蓄積された循環水を前記上部給水口に送り出す送水手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記フィルタ装置は、給気側に設けられる第1フィルタと、排気側に設けられる第3フィルタ、及び第1フィルタと第3フィルタの中間に設けられる第2フィルタを有し、前記第1フィルタと第2フィルタの間、及び前記第2フィルタと第3フィルタの間に、前記抗菌ペレットを収納することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記抗菌ペレットは球形状をなし、前記第1フィルタと第2フィルタの間、及び前記第2フィルタと第3フィルタの間は、前記抗菌ペレットの直径とほぼ同一の間隔を有し、前記第1フィルタと第2フィルタの間に設けられる底板と、前記第2フィルタと第3フィルタの間に設けられる底板は、前記抗菌ペレットの半径とほぼ同一の距離だけ段差を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記フィルタ装置の送風方向下流側に、光触媒、及び該光触媒に光を照射する光照射手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記循環水の通路に、該循環水の次亜塩素酸濃度を増加させ、且つ酸化還元電位を上昇させるための電解水生成装置を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記フィルタ装置の下流側に、空気中の水分を除去する脱水フィルタを設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記循環水に、抗菌剤を添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、フィルタ装置内に多数の抗菌ペレットを収納し、このフィルタ装置の上部から循環水を流下させるので、該フィルタ装置内には、循環水の自然流によるカーテン状のフィルタが形成されることになる。そして、送気手段を駆動すると、装置内に外部の空気が導入され、導入された空気は上記カーテン状のフィルタを通過する。従って、空気中に含まれる細菌類はフィルタ装置内を流下する循環水に捕捉され、更に、この循環水は、フィルタ装置内に設けられる複数の抗菌ペレットと接触するので、循環水中に含まれる細菌類を死滅させることができ、空気中に含まれる細菌、ウィルス、カビ等を効率良く除去することができる。
【0016】
請求項2の発明では、フィルタ装置内に第1フィルタ〜第3フィルタの3枚のフィルタを設け、第1フィルタと第2フィルタの間の空間、及び第2フィルタと第3フィルタの間の空間にそれぞれ抗菌ペレットを収納し、この状態で上部から循環水を流下させるので、循環水を効率良く抗菌ペレットに接触させることができ、循環水中に含まれる細菌類をより効果的に死滅させることができる。また、フィルタ装置内に挿入する抗菌ペレットを球形状とするので、各抗菌ペレットどうしの間に適度な隙間を形成することができ、循環水と抗菌ペレットを効率良く接触させることができる。
【0017】
請求項3の発明では、第1フィルタと第2フィルタの間に設けられる底板と、第2フィルタと第3フィルタの間に設けられる底板が段差を持って設けられるので、給気口より導入された空気を効率よく循環水に接触させることができ、循環水にて空気中の細菌類を効率良く捕捉することができる。また、外部空気を導入する際の空気抵抗を低減できるので、送気手段による送風効率を向上させることができる。
【0018】
請求項4の発明では、フィルタ装置の下流側に光触媒、及び殺菌灯等の光照射手段を設けている。従って、光照射手段より照射される光を光触媒に光を当てることにより、フィルタ装置を通過した空気中に含まれる臭気やバクテリアを効率良く除去することができる。
【0019】
請求項5の発明では、循環水を送り出すための通路に電解水生成装置を設けるので、循環水の次亜塩素酸濃度を増加させ、且つ酸化還元電位を上昇させることができ、且つ、循環水に繁殖する細菌類や臭気成分を除去することができる。このため、循環水を頻繁に交換する必要がなく、メンテナンスの労力を軽減することができる。
【0020】
請求項6の発明では、フィルタ装置の排気側に脱水フィルタを設けるので、フィルタ装置を通過した空気中に含まれる水分を効率良く除去して貯水槽に送ることができる。
【0021】
請求項7の発明では、循環水に抗菌剤を添加するので、循環水中に含まれる細菌類を死滅させることができ、より一層細菌、ウィルス、カビ等を効率良く死滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置の構成を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置の、フィルタ装置及び該フィルタ装置内に循環水を供給するための配管系統を示す斜視図である。
【図4】本発明の変形例に係る空気清浄装置の、フィルタ装置の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置の、フィルタ装置内に収納される抗菌ペレットの配置状態を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置の、フィルタ装置内に収納される抗菌ペレットの配置状態を示す正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置の、フィルタ装置内に収納される抗菌ペレット周囲の隙間を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置を用いた実験装置を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置を用いた実験結果を示す説明図であり、(a)は空気清浄装置の作動前、(b)は空気清浄装置の作動後、(c)は抗菌剤を添加して空気清浄装置を作動させた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る空気清浄装置の構成を示す斜視図、図2は同側面図である。本実施形態に係る空気清浄装置10は、多くの人が出入りする建物(病院、図書館、公民館等)や一般家庭等に設置して建物内の空気を浄化するものであり、図1、図2に示すように、全体が直方体形状をなす外枠27を備えている。
【0024】
外枠27の一方の側面には、建物内の空気を導入する給気口11(図2参照)が設けられ、除菌室23、及び排気ダクト21を介して外枠27の上面適所に設けられた排気口28に連通している。
【0025】
また、排気口28には3個の送風ファン22(図1参照)が設けられ、これらの送風ファン22を作動させることにより、給気口11より外部の空気を装置内に導入し、導入した空気を洗浄し、その後排気口28から排出する。
【0026】
給気口11には、空気中の塵埃を除去するエアーフィルタ12が配設され、該エアーフィルタ12の下流側には、フィルタ装置13と、脱水フィルタ24と、殺菌灯19、及び脱臭フィルタ29が設けられている。
【0027】
フィルタ装置13は、内部に複数の抗菌ペレット26が収納され、上方から循環水25を流下させることにより、空気中に含まれる細菌、カビ、ウィルス等を除去する。詳細については後述する。
【0028】
脱水フィルタ24は、フィルタ装置13を通過した空気に含まれる水分を除去する。除去された水は、除菌室23の底面に設けられた排水口30から後述する貯水槽15に導入される。
【0029】
脱臭フィルタ29には、光触媒が設けられており、殺菌灯19より照射される光(紫外線)が当てられると、空気中に含まれる臭気、及びバクテリアを除去し、下流側となる排気ダクト21へ排出する。脱臭フィルタ29の詳細については、後述する。
【0030】
また、除菌室23の下方には、循環水25を貯留する貯水槽15、及びこの貯水槽15に隣接したポンプ室31が設けられている。ポンプ室31には、循環水25を送水するためのポンプ(送水手段)16と、該ポンプ16の出力側に接続された電解水生成装置17が設置され、更に、該電解水生成装置17の出力側は送水パイプ18を介してフィルタ装置13の上部に設けられた給水口14に連結されている。即ち、貯水槽15内に貯留された循環水25は、ポンプ16により送水され、電解水生成装置17を通過した後、フィルタ装置13の上方に設けられた給水口14へ導入されることになる。
【0031】
図3は、フィルタ装置13の詳細な構成を示す斜視図である。同図に示すように、フィルタ装置13の2つの側面には、それぞれ複数の孔部13aが形成されている。また、フィルタ装置13の底面には複数の孔部34aが形成された底板34が設けられ、上面には複数の孔部35aが形成された天板35が設けられている。
【0032】
更に、天板35上側の給水口14内には、複数のノズル33が形成された散水パイプ32が設けられ、該散水パイプ32は、送水パイプ18の先端部に連結されている。従って、送水パイプ18により送水された循環水25は、散水パイプ32に設けられた複数のノズル33から散水され、天板35に形成された複数の孔部35aを介して、自重によりフィルタ装置13内に導入されることになる。
【0033】
また、フィルタ装置13内には、球形状の抗菌ペレット26が複数挿入されている。従って、フィルタ装置13の一方の側面(給気口側の側面)の孔部13aを通して導入された空気は、循環水が自重により流下する水流内を通過した後、他方の側面の孔部13aを通して排出され、除菌室23内に導入されることになる。
【0034】
次に、抗菌ペレット26について説明する。抗菌ペレット26として、例えば、ファインボール(商品名;株式会社ジョイエバー製)、或いは、特開2006−182600号公報、特開2004−315769号公報に記載されているペレットを用いることができる。抗菌ペレット26として、ファインボールを使用した場合には、ファインボールに添加されている有機系の防カビ・抗菌剤と無機系の酸化亜鉛の作用によりこれら菌類の細胞壁を破壊して、細胞の持つ機能のタンパク質、SH基等の合成や呼吸を阻害することにより、菌類に対する阻止能力を発揮して死滅させる機能を有する。また、ファインボールは、球形状をなしている。
【0035】
本実施形態では、抗菌ペレット26として上記のファインボールを用い、このファインボールをフィルタ装置13内に多数挿入する。そして、ファインボールが挿入されたフィルタ装置13内に循環水25を流下させることにより、循環水25の自然流によるカーテン状のフィルタを形成し、このカーテン状のフィルタに空気を通過させることにより、該空気を浄化する。
【0036】
次に、脱臭フィルタ29について説明する。脱臭フィルタ29に設けられる光触媒として、例えば銀系の二酸化チタン(TiO2)が用いることができる。この光触媒に、殺菌灯19より照射される光(紫外線)を当てると、空気中の臭気成分、バクテリアが分解除去される。即ち、二酸化チタンに殺菌灯19より照射される光(紫外線)が当たると、その表面から電子が飛び出し、更に、電子が抜けた穴がプラスの電荷を帯びたホール(正孔)として発生する。その結果、OHラジカルが発生し、このOHラジカルは強力な酸化力を持つので、OHラジカル自体が安定になろうとして空気中の有機物から電子を奪う。電子を奪われた有機物は、最終的に二酸化炭素や水となって放出される。こうして、光触媒を用いることにより、空気中の臭気成分、及びバクテリアを分解除去することができる。
【0037】
次に、電解水生成装置17について説明する。電解水生成装置17は、例えば、電解槽内に、互いに平行に配置された複数の平板電極を有する構成とされ、各平板電極を交互にプラス電極、及びマイナス電極に設定して各平板電極に直流電圧を印加する機能を備える。そして、ポンプ16により送り出された循環水を電解槽内に導入して、循環水を各平板電極間を通過させる。その結果、循環水中に含まれる次亜塩素酸の濃度を高めることができ、更には、循環水の酸化還元電位(ORP値)を上昇させることができる。その結果、循環水に含まれる有機物、細菌等を効率良く死滅、除去することができる。
【0038】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る空気清浄装置10の動作について説明する。図1,図2に示した送風ファン22を起動すると、外部の空気が吸引され、エアーフィルタ12を介して給気口11より装置内に導入される。即ち、エアーフィルタ12で空気中の塵埃が除去された空気が、給気口11より導入される。
【0039】
また、ポンプ16を駆動することにより、貯水槽15内に貯留されている循環水25の送水が開始される。送水された循環水25は、電解水生成装置17内に導入され、上述した処理により次亜塩素酸濃度が増加し、且つ酸化還元電位(ORP値)が上昇した循環水とされた後、送水パイプ18を経由し、給水口14内に設けられる散水パイプ32へ送り出される。
【0040】
その後、循環水25は、散水パイプ32に設けられた複数のノズル33(図3参照)より散水されて、給水口14内に導入され、フィルタ装置13の天板35に設けられた孔部35aを介して、フィルタ装置13内に導入される。
【0041】
フィルタ装置13内に導入された循環水25は、その自重により下方に向けて流下することになる。この際、循環水25は複数挿入された球形状の抗菌ペレット26どうしの隙間を通るように、前後、左右に方向を変えながら、自然に下方へと流れることになる。このため、フィルタ装置13内には、循環水25の自然流によるカーテン状のフィルタが形成されることになる。また、フィルタ装置13内を流下した循環水25は、底板34に形成された孔部34a(図3参照)、及び開口部41(図2参照)を通過して貯水槽15内に導入される。
【0042】
他方、給気口11より導入された空気は、フィルタ装置13の一方の側面に形成された孔部13aから導入される。この導入された空気は、フィルタ装置13内部を通過した後、他方の側面に形成された孔部13aから外部に排出される。従って、フィルタ装置13内に導入された空気は、循環水25の自然流によるカーテン状のフィルタを通過することになり、このフィルタを通過することにより、空気中に存在する細菌、ウィルス、バクテリア等が除去される。
【0043】
つまり、空気中に含まれる細菌類はフィルタ装置13内を流下する循環水25に捕捉され、更に、この循環水25は、フィルタ装置13内に設けられる複数の抗菌ペレット26と接触するので、循環水25中に含まれる細菌類を死滅させることができ、ひいては空気中に含まれる細菌、ウィルス、カビ等を効率良く除去することが可能となる。
【0044】
次いで、フィルタ装置13を通過した空気は、脱水フィルタ24により水分が除去されて、除菌室23内に導入される。また、脱水フィルタ24で除去された水分は、除菌室23の底面に設けられた排水口30より、貯水槽15内に導入される。
【0045】
その後、殺菌灯19が点灯して光が照射されると、上述したように、脱臭フィルタ29は、光触媒の作用により、空気中に含まれる臭気成分、バクテリアが分解除去される。そして、脱臭フィルタ29を通過した空気は、排気ダクト21を経由して排気口28より外部へ排出される。排出される空気は、細菌、ウィルス、カビ、バクテリア、及び臭気成分が除去された極めてクリーンな空気となる。
【0046】
このようにして、本実施形態に係る空気清浄装置10では、フィルタ装置13内に多数の抗菌ペレット26を挿入し、更に、このフィルタ装置13内に循環水25を流下させてカーテン状のフィルタを形成し、このカーテン状のフィルタに、給気口11より導入した外部の空気を通過させるので、空気中に含まれる細菌、ウィルス、カビ等を効率良く除去することができる。
【0047】
更に、脱臭フィルタ29を設け、除菌灯(光照射手段)19より照射される光を脱臭フィルタ29の光触媒に当てることにより、空気中のバクテリア及び臭気成分を効率良く除去することができ、より一層クリーンな空気を得ることができる。
【0048】
また、ポンプ16の後段側に電解水生成装置17を設け、該電解水生成装置の電極間に循環水25を通過させるので、循環水25に含まれる細菌類を効果的に死滅させることができる。また、循環水25の次亜塩素酸濃度を増加させ、更に酸化還元電位(ORP値)を上昇させるので、循環水を浄化できる。このため、循環水25を頻繁に交換する必要がなく、メンテナンスの労力を軽減することができる。
【0049】
更に、フィルタ装置13の後段側に脱水フィルタ24を設けているので、フィルタ装置13を通過した空気中に含まれる水分を効率良く回収することができる。
【0050】
また、フィルタ装置13内に挿入する抗菌ペレット26の形状を球形とすることにより各抗菌ペレット26どうしの間に適度な隙間を形成することができ、循環水25が流下する方向を、左右、前後に適度に変化させて、循環水25と抗菌ペレット26を効率良く接触させることができる。その結果、より高効率に空気中の細菌、ウィルス、カビ等を除去することができる。
【0051】
以下、上述した実施形態に係るフィルタ装置13の具体的な構成、及びカビ成分を除去する効率の実験結果について説明する。
【0052】
図5は、フィルタ装置13内に収納される抗菌ペレット26の配置状態を示す側面図、図6は、同正面図である。図5に示すように、フィルタ装置13の前面側には22列、16段の、合計352個の抗菌ペレット26が配置され、背面側には21列、15段の、合計315個の抗菌ペレット26が配置されている。従って、フィルタ装置13内には、全体で667個の抗菌ペレット26が収納されている。
【0053】
また、図5に示すように、前面側の抗菌ペレット26の中心と、背面側の抗菌ペレット26の中心との間の距離は17[mm]とされており、抗菌ペレット26の直径は15[mm]であるから、前面側の抗菌ペレット26と背面側の抗菌ペレット26との間には2[mm]の隙間が生じる。
【0054】
更に、図6に示すように互いに隣接する抗菌ペレット26の中心間の距離は17[mm]とされているので、互いに隣接する抗菌ペレット26どうしの間には2[mm]の隙間が生じる。従って、図7に示すように4個の抗菌ペレット26で囲まれる領域には、それぞれ78[mm]の隙間が生じることになり、この隙間を経由して空気が通過することになる。
【0055】
そして、発明者らは上記の構成を備える空気清浄装置10を用いて下記の実験により生菌数の測定を行った。
【0056】
図8(a)に示すように、4m×4m×2.5m=40mの閉鎖空間71の中央部に空気清浄装置10を設置し、更に、図8(b)に示すように、壁より0.5mの位置に高さ1.5mのポール72を設置し、各ポール72にオープンシャーレを置き、生菌測定を行った。この際、空気清浄装置10では、循環水の流量を20[リットル/min]とし、送風量を250[m/h]とした。
【0057】
そして、空気清浄装置10の使用前の生菌数、空気清浄装置10を1時間運転した後の生菌数、及び空気清浄装置10の循環水に抗菌剤「プロミネーW(商品名;ジョイエバー製)」を添加して1時間運転した後の生菌数をそれぞれ測定したところ、図9に示す如くの結果が得られた。
【0058】
図9に示すように、カビ菌の1種である「アスペルギルス・ニガー」については空気清浄装置10の使用前においては、3.0×10個、空気清浄装置10の使用後においては2.7×10個、抗菌剤の添加後においては、100個未満となった。
【0059】
また、カビ菌の1種である「ムコール・ラセマサス」については、空気清浄装置10の使用前においては、2.3×10個、空気清浄装置10の使用後においては1.8×10個、抗菌剤の添加後においては、100個未満となった。
【0060】
上記のことから、本実施形態に係る空気清浄装置10を用いることにより、閉鎖空間71内に存在するカビ菌類を効果的に死滅させることができ、更に、循環水中に抗菌剤を添加することにより、カビ菌類をほぼ死滅させることができることが判明した。
【0061】
次に、上述した実施形態で使用したフィルタ装置13及びその内部構造の変形例について説明する。図4は、変形例に係るフィルタ装置61を示す断面図であり、このフィルタ装置61が、図1〜図3に示したフィルタ装置13の代わりに配置される。
【0062】
図4に示すフィルタ装置61は、給気側から排気側に向けて3枚のフィルタが設けられる。即ち、ニッケルを含むナイロン繊維で構成される第1フィルタ52と、ニッケルを含む第2フィルタ53、及びニッケルを含むナイロン繊維で構成される第3フィルタ54が所定の間隔(抗菌ペレット26の直径の長さ)だけ隔てて設けられている。
【0063】
第1フィルタ52の側面は側部支持部材51aにて支持され、第3フィルタ54の側面は側部支持部材51bで支持され、更に、第1フィルタ52及び第3フィルタ54の底面は底部支持部材51cで支持されている。また、底部支持部材51cには、図3に示した底板34と同様に、多数の孔部(図示省略)が設けられており、上方から流下した循環水25がこの孔部を通して貯水槽15に流入するようになっている。
【0064】
また、フィルタ装置61の内部には、2枚の底板55a、55bが段違いに設けられ、この高さの差異は、ほぼ抗菌ペレット26の半径となるように設定されている。また、第2フィルタ53の底面は底板55aにより支持されている。そして、第1フィルタ52と第2フィルタ53の間、及び第2フィルタ53と第3フィルタ54との間には、多数の抗菌ペレット26が配設される。
【0065】
この際、第1フィルタ52と第2フィルタ53の間に設けられる抗菌ペレット26と、第2フィルタ53と第3フィルタ54の間に設けられる抗菌ペレット26は、抗菌ペレット26の半径の長さだけ上下方向にずれて配置されることになる。なお、図4では説明を簡素化するため、抗菌ペレット26の個数を実際よりも少なく記載している。
【0066】
そして、フィルタ装置61の上方から循環水25を散水することにより、第1フィルタ52と第2フィルタ53との間、及び第2フィルタ53と第3フィルタ54との間を循環水25が流下し、更にこの循環水25は抗菌ペレット26と接触しながら、貯水槽15(図2参照)へと導入される。従って、第1フィルタ52、第2フィルタ53、及び第3フィルタ54の間に水流によるカーテン状のフィルタが形成され、このカーテン状のフィルタに、給気口11(図2参照)より導入した空気を通過させるので、空気中に含まれる細菌、ウィルス、カビ等を効率良く除去することができる。
【0067】
また、第1フィルタ52と第2フィルタ53との間に設けられる抗菌ペレット26と、第2フィルタ53と第3フィルタ54との間に設けられる抗菌ペレット26は、半径と同一長さ分だけ上下方向にずれて配置されるので、導入した空気を効率良く循環水25に接触させることができ、循環水25で細菌類を捕捉する効率をより一層向上させることができる。
【0068】
また、第1フィルタ52〜第3フィルタ54は、殺菌作用を有するニッケルを含むので、より効果的に細菌類を除去することができる。
【0069】
なお、変形例に係るフィルタ装置61は、空気の排出側に第3フィルタ54を備えており、該第3フィルタ54が脱水フィルタとしての機能を備える場合には、図1,図2に示した脱水フィルタ24を設けなくても良い。
【0070】
以上、本発明の空気清浄装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、多数の人が出入りする室内の空気を効果的に洗浄する際に極めて有用である。
【符号の説明】
【0072】
10 空気洗浄装置
11 給気口
12 エアーフィルタ
13 フィルタ装置
13a 孔部
14 給水口
15 貯水槽
16 ポンプ
17 電解水生成装置
18 送水パイプ
19 殺菌灯
21 排気ダクト
22 送風ファン
23 除菌室
24 脱水フィルタ
25 循環水
26 抗菌ペレット
27 外枠
28 排気口
29 脱臭フィルタ
30 排水口
31 ポンプ室
32 散水パイプ
33 ノズル
34 底板
34a 孔部
35 天板 35a 孔部
41 開口部
51a、51b 側部支持部材
51c 底部支持部材
52 第1フィルタ
53 第2フィルタ
54 第3フィルタ
55a、55b 底板
61 フィルタ装置
71 閉鎖空間
72 ポール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気口より流入した空気を洗浄して外部へ排出する空気洗浄装置において、
対向する2つの側面にそれぞれ複数の孔が穿設され、上部給水口より供給される循環水が、その自重により下方に向けて流下するフィルタ装置と、
前記フィルタ装置内に収納され、前記循環水を浄化する複数の抗菌ペレットと、
前記給気口より空気を流入させ、流入した空気を前記複数の孔を介して前記フィルタ装置を通過させた後、外部に排出する送気手段と、
前記フィルタ装置の下方に設けられ、流下した前記循環水を回収する貯水槽と、
前記貯水槽に蓄積された循環水を前記上部給水口に送り出す送水手段と、
を備えたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記フィルタ装置は、給気側に設けられる第1フィルタと、排気側に設けられる第3フィルタ、及び第1フィルタと第3フィルタの中間に設けられる第2フィルタを有し、前記第1フィルタと第2フィルタの間、及び前記第2フィルタと第3フィルタの間に、前記抗菌ペレットを収納することを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記抗菌ペレットは球形状をなし、前記第1フィルタと第2フィルタの間、及び前記第2フィルタと第3フィルタの間は、前記抗菌ペレットの直径とほぼ同一の間隔を有し、
前記第1フィルタと第2フィルタの間に設けられる底板と、前記第2フィルタと第3フィルタの間に設けられる底板は、前記抗菌ペレットの半径とほぼ同一の距離だけ段差を有することを特徴とする請求項2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記フィルタ装置の送風方向下流側に、光触媒、及び該光触媒に光を照射する光照射手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記循環水の通路に、該循環水の次亜塩素酸濃度を増加させ、且つ酸化還元電位を上昇させるための電解水生成装置を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【請求項6】
前記フィルタ装置の下流側に、空気中の水分を除去する脱水フィルタを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記循環水に、抗菌剤を添加することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−11056(P2011−11056A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128662(P2010−128662)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(502279618)
【出願人】(505342391)
【出願人】(502279629)
【Fターム(参考)】