説明

空気熱交換器及び冷凍サイクル装置

【課題】
空気熱交換器を備えた冷凍サイクル装置において除霜運転を行った場合、撥水性の表面処理を施した空気熱交換器のフィン表面では霜が完全に融解せず、滴状の氷塊となって空気熱交換器の空気上流側に脱落し、積層することによって氷塊の障壁が形成される。
この氷塊の障壁によって空気熱交換器への流入空気量が減少し、冷凍サイクル装置の性能低下や、熱源ユニットの室外機の故障を引き起こす。
【解決手段】
空気流入方向に複数列配置された空気熱交換器において、空気上流側の空気熱交換器のフィン表面を親水性とし、空気下流側の空気熱交換器のフィン表面を親水性とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気熱交換器と冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば空気調和機やヒートポンプ給湯機などの、冷凍サイクル装置には、室内を暖房、又は貯湯するための熱交換器と、室外の空気と熱交換するための空気熱交換器が備えられている。
空気調和機における暖房運転、又はヒートポンプ給湯機における貯湯運転の際、外気温が低いと室外の空気熱交換器のフィン表面に霜が発生し、空気熱交換器の隣接するフィン間の空気流路を狭くする。これにより、空気熱交換器の熱交換効率が低下する。
【0003】
これに対し、特許文献1のように、空気熱交換器の空気流通方向の風上側のフィン表面に撥水性の表面処理を施して着霜を抑制し、空気熱交換器の凍結を遅延させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−3182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、低温下で長時間の暖房運転を行うと、撥水性表面処理を施した空気熱交換器のフィン表面においても霜が成長し、滴状の氷塊が発生するため、従来の冷凍サイクル装置では適宜除霜運転を行い霜(氷塊)を融解させる必要がある。
【0006】
そこで、上述した特許文献1の空気熱交換器を備えた冷凍サイクル装置において除霜運転を行った場合、撥水性の表面処理を施した空気熱交換器のフィンでは、霜が完全に融解せず、滴状の氷塊となって空気熱交換器の風上側に脱落する。この脱落した氷塊が積層することによって氷塊の障壁が形成される。
この氷塊の障壁によって空気熱交換器への流入空気量が減少し、冷凍サイクル装置の性能低下や故障を引き起こす不具合が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明の実施形態によれば、複数枚のプレートフィンから成るフィン列と前記フィン列に貫通して設けられた伝熱管からなるクロスフィンチューブ型の空気熱交換器において、前記フィン列は空気流通方向に複数列配置されており、空気流通方向の風上側のフィン列のフィン表面を親水性とし、風下側のフィン列のフィン表面を撥水性とすることを特徴とする空気熱交換器、又は、複数枚のプレートフィンから成るフィン列と前記フィン列に貫通して設けられた伝熱管からなる、クロスフィンチューブ型の空気熱交換器において、前記フィン列は空気流通方向に少なくとも3列以上配置されており、空気流通方向の最も風上側及び最も風下側のフィン列のフィン表面を親水性とし、前記両者の間に位置するフィン列のフィン表面を撥水性とすることを特徴とする空気熱交換器を、冷凍サイクル装置に設ける。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略図。
【図2】第1の実施形態に係る空気熱交換器の斜視図。
【図3】親水性の表面処理が施された空気熱交換器の着霜状態を示す図。
【図4】撥水性の表面処理が施された空気熱交換器の着霜状態を示す図。
【図5】第1の実施形態に係る空気熱交換器を空気上流方向に傾斜させた図。
【図6】第2の実施形態に係る空気熱交換器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1実施形態に係る冷凍サイクル装置1の構成を、図1を用いて説明する。
冷凍サイクル装置1は、例えば空気調和機やヒートポンプ給湯機に用いられ、その構成は圧縮機2、四方弁3、室外側熱交換器である空気熱交換器4、膨張弁5、室内側熱交換器6を冷媒配管20で順次接続してなる。
また、空気熱交換器4の近傍には、外気と熱交換させるための送風機25が備えられている。
【0011】
空気調和機の暖房運転又はヒートポンプ給湯機の貯湯運転は次のように行われる。
【0012】
圧縮機2が駆動し冷媒を高温高圧に圧縮して吐出すると、冷媒は図1中実線矢印で示すように、四方弁3から室内側熱交換器6に導かれて凝縮し、凝縮熱を放出する。この凝縮熱が室内を暖房、又は湯を沸す熱源となる。
【0013】
そして冷媒は、膨張弁5において減圧膨張し、空気熱交換器4内に送られる。このとき送風機25の駆動により送風された外気から吸熱し、空気熱交換器4内の冷媒が蒸発する。
【0014】
さらに、冷媒は空気熱交換器4から四方弁3を介して圧縮機1に吸込まれ、圧縮されて再び上述の径路を循環する。
【0015】
外気温が低い状態で上述の暖房運転又は貯湯運転を長時間行うと、空気熱交換器4の表面に霜(氷塊)が付着し空気熱交換器4が凍結することがある。このような場合には、霜を取除くための除霜運転が行われる。
【0016】
この除霜運転は、四方弁2を切換え、冷媒が図1の破線矢印で示す経路を循環することで行われる。
【0017】
詳しくは、圧縮機2が駆動し、冷媒を高温高圧に圧縮して吐出すると、冷媒は図1中破線矢印で示すように、四方弁3から空気熱交換器4に導かれて凝縮し、凝縮熱を放出する。この凝縮熱が霜を融解させる熱源となる。
【0018】
その後、冷媒は膨張弁5において減圧膨張し、室内側熱交換器6で蒸発する。
続いて冷媒は室内熱交換器6から四方弁3を介して圧縮機1に吸込まれ、圧縮されて再び上述の径路を循環する。
【0019】
空気熱交換器4の構成について、図2を用いて説明する。
空気熱交換器4はクロスフィンチューブ型の熱交換器であり、熱交換面を形成する多数のプレートフィン10と、内部を冷媒が流通する伝熱管11を有している。
プレートフィン10は長手方向が上下方向となるよう配置され、矢印で示す空気流通方向に直交する方向に、互いに間隔をあけ多数枚並設されており、フィン列12を形成している。
このフィン列12のプレートフィン10に対して伝熱管11が貫通して設けられている。
【0020】
伝熱管11はプレートフィン10の長手方向に沿って等間隔に複数配置されている。
【0021】
また、フィン列12は空気流通方向に2列設けられており、風上側の伝熱管11を含むフィン列12を風上側空気熱交換要素4aとし、風下側の伝熱管を含むフィン列12を風下側空気熱交換要素4bとする。
【0022】
ここで、風上側空気熱交換要素4aのプレートフィン10表面には親水性の表面処理がなされており、風下側空気熱交換要素4bのプレートフィン10表面には撥水性の表面処理がなされている。
【0023】
空気熱交換器4の下方には空気熱交換器4から流下する水滴や氷塊を受けるドレンパン26が設けられている。
【0024】
以上説明した第1の実施形態によれば、着霜後に行われる除霜運転の際に霜(氷塊)を取除くことができる。
【0025】
空気熱交換器4に着霜した場合、風上側空気熱交換要素4aはそのプレートフィン10表面に親水性の表面処理が施されているため、図3に示すようにプレートフィン10全体に膜状の霜(氷塊)15aが形成される。一方、風下側空気熱交換要素4bはそのプレートフィン10に撥水性の表面処理が施されているため図4に示すようにプレートフィン10表面に滴状の霜(氷塊)15bが形成される。
【0026】
この状態で、冷凍サイクル装置1の除霜運転を行うと、風上側空気熱交換要素4aの、プレートフィン10の表面が親水性であるため、プレートフィン10と接している霜の境界部分が融解しても氷塊が脱落せずプレートフィン10の表面にとどまり、完全に融解してドレン水となり、空気熱交換器4の下部に設けられたドレンパン26に流下する。
【0027】
これに対して、風下側空気熱交換要素4bのプレートフィン10の表面は撥水性であるため、除霜運転時にプレートフィン10と接している霜の境界部分が融解し、氷塊が完全に融解する前に空気熱交換器4下部のドレンパン26へ落下する。
【0028】
このとき、氷塊は伝熱管11に衝突しつつフィン列11の風上側及び風下側に落下する。この風上側へ落下しようとする氷塊は風上側空気熱交換要素4aの親水性のプレートフィン10表面に付着され、風上側空気熱交換要素4aより風上側へ落下することなく、全て融解しドレン水となってドレンパン26へ流下し室外機外部へ排出される。
さらに、除霜運転中に送風機25を駆動させることで、風下側空気熱交換要素4bより風下側へ落下した氷塊は、凝縮熱を奪った空気流の熱により融解する。
【0029】
また、図5に示すように、空気熱交換器4のフィン列12は、プレートフィンの長手方向の上端部が下端部よりも空気流入方向の風上側に位置するように傾斜して設けられて配置されても良い。このように配置することで、氷塊が風下側空気熱交換要素4bの下流方向へ落下又は飛散せず、上流方向へ落下し風上側空気熱交換要素4aのプレートフィン10表面に付着する。付着した氷塊は完全に融解し、ドレン水となってドレンパン26へ流下し室外機外部へ排出される。
【0030】
空気熱交換器4を上述の構成とすることで、空気熱交換器4の空気の流通を妨げる氷塊を残らず取除くことができ、熱交換効率の低下を抑えることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
以下に第2実施形態について説明する。尚、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、説明を省略する。冷凍サイクル装置1の構成は図1に示すものと同じである。
第1実施形態と異なる構成として、図6に示すように、本第2の実施形態の空気熱交換器14は空気流通方向へ3列のフィン列12が並設されており、最も風上側のフィン列12である風上側空気熱交換要素14aと、最も風下側のフィン列12である風下側空気熱交換要素14cと、前記両者の間に位置するフィン列12である中間空気熱交換要素14bで構成されている。
【0032】
この風上側空気熱交換要素14aと風下側空気熱交換要素14cのプレートフィン10表面には親水性の表面処理が施されており、中間空気熱交換要素14bのプレートフィン10表面には撥水性の表面処理が施されている。
【0033】
上述の構成とすることで、着霜後に行われる除霜運転の際、第1の実施形態同様に風上側空気熱交換要素14aの風上側に氷塊が落下することがない。
【0034】
さらに、中間側空気熱交換要素14bの風下側へ落下又は飛散する氷塊は、風下側空気熱交換要素14cの親水性表面処理を施したプレートフィン10の表面に接触し付着する。これにより、空気熱交換器14の風下側への氷塊の落下や飛散を抑えることができ、凝縮器である空気熱交換器14の熱で全て融解しドレンパン26へ流下して室外機外部へ排出される。
【0035】
ここで、フィン列12は3列以上並設されても良く、中間空気熱交換要素14bは複数列設けられても良い。
【0036】
以上説明した実施形態によれば、外気温が低い状態での冷凍サイクル装置の運転において、空気熱交換器の熱交換効率を低下させることなく、冷凍サイクル装置の故障を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、3…四方弁、4…空気熱交換器、4a…上流側熱交換要素、4b…下流側熱交換要素、5…膨張弁、6…室内側熱交換器、10…プレートフィン、11…伝熱管、12…フィン列、14…空気熱交換器、14a…上流側熱交換要素、14b…中間熱交換要素、14c…風下側熱交換要素、15…霜(氷塊)、15a…霜(氷塊)、15b…霜(氷塊)、20…冷媒配管、25…送風機、26…ドレンパン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のプレートフィンから成るフィン列と前記フィン列に貫通して設けられた伝熱管からなるクロスフィンチューブ型の空気熱交換器において、前記フィン列は空気流通方向に複数列配置されており、空気流通方向の風上側のフィン列のフィン表面を親水性とし、風下側のフィン列のフィン表面を撥水性とすることを特徴とする空気熱交換器。
【請求項2】
複数枚のプレートフィンから成るフィン列と前記フィン列に貫通して設けられた伝熱管からなる、クロスフィンチューブ型の空気熱交換器において、前記フィン列は空気流通方向に少なくとも3列以上配置されており、空気流通方向の最も風上側及び最も風下側のフィン列のフィン表面を親水性とし、前記両者の間に位置する少なくとも1列のフィン列のフィン表面を撥水性とすることを特徴とする空気熱交換器。
【請求項3】
前記各フィン列はプレートフィンの長手方向の上端部が下端部よりも空気流通方向の風上側に位置するように傾斜して設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気熱交換器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の空気熱交換器を備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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