説明

空気腔を有する船舶のための船型

大きい底平面面積を与え、空気腔の原理に適しそれを利用できる、船舶のための船型。該船型は船体の水に触れる面積を減らし、海での動きを減らし、より少ない出力及びバンカー燃料消費(Bunker consumption)を必要とする、海上交通に適した船舶を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船型に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の構造において最も大事なパラメータの1つは、速度と出力との関係である。通常の商船では、摩擦抵抗(即ち、水面下の船体と水との摩擦)が船舶全体の抵抗の大半を占める。波抵抗は、速度が速い場合だけ(例えば、高速船舶)重要になる。異なるタイプの表面構造および異なるタイプの空気潤滑を用いて摩擦抵抗に対応しようとする試みが行われた。しかし、従来の商船における効果はこれまではマイナスであった。
【0003】
摩擦抵抗を減らす異なる方法としては、水に触れる表面面積を減らすことである。水に触れる表面は、水面下の船体の一部であり、速度が0の場合は周りの水と接触している。 水に触れる表面は、水面下の船体の平らな底面の一部を腔にすることで減らすことができ、該腔は空気で満たされるため空気腔と呼ぶ。このような設計で、空気は周辺の水と同じ圧力を有するようになる。船舶が前進するにつれ、空気の一部は船から離れてしまい、その流出する空気の代わりになる新しい空気が提供されなければならない。空気腔への空気は空気腔の天井又は空気腔の側面を介して提供され得る。下向けに口が開いている箱に例えることができる空気腔は、水がその下を通る際に泡や渦の形で抵抗が増すことがないようによくデザインされた形状を持たなければならない。現代の船型では、前部船体の水は、船の下の側面から、船の中央に向かって流れる。これは、波高点が空気腔内に形成され、水の流れを阻害することを意味する。また、現代の船型では、空気腔の比較的に短い距離の側面のみが船舶の中央線に平行になることを意味する。この部位の先端部及び尾部、空気腔の側面は中央線に対してかなり大きい角度を有する。結果として、水の流れは他の辺により強い抵抗力で衝突し、離れることになる。
【0004】
船舶が公海で移動するとき、横断方向にローリング動作(即ち、船舶の中央線の長手方向軸を中心とする回転動作の往復)、ピッチング動作(船舶の中央点の水平横軸を中心とする回転動作)、又はこれらの組み合わせで回転することがあり得、空気は空気腔の最も高く位置する辺から流出するようになる。空気の流出を減らすことで、必要な空気提供を減らすため、そして空気腔の辺における渦の発生を避けるためには、それに応じて航海性能が大事である。空気腔内における空気と水との界面は、空気とその下の水との夫々の圧力がバランスされた水平レベルを目的とする。該界面は空気腔の下縁にできるだけ近く位置するべきである。船舶が強いローリング動作又はピッチング動作にさらされると、特定の部位における該界面は空気腔の下縁からより高い位置にまで到達することになる。これは、空気腔の側面に力強い渦が発生し、それによって抵抗が増すことを意味する。したがって、空気腔の形状は、これらの動作が最低限に抑えられるように形成されなければならない。したがって、海における動作の影響を抑えるために、横断方向及び長手方向に空気腔を分割する分割壁を用いる提案があった。それによると複数の空気腔が得られ、各空気腔は個別の空気補給を有する。横断方向の分割壁を用いることで再び渦を発生させ、その結果抵抗を増加させることが明らかである。
【0005】
したがって、平らな底に空気で満たされた腔を用いることで摩擦による抵抗を減少させるという原理が実際に使えるようになるためには、船舶の船型を特別な形状にし、航海性能も改善されなければならない。更なる難関として、流出する空気は、プロペラの水に入ってしまうとプロペラの効率を下げてしまうので、プロペラの水に入ってはいけない。文献には、様々な装置を用いて水/空気の混合物をプロペラ周辺に当たらないようにそらそうとする提案が記載されている。そのような必修の水/空気の流れのガイダンスも追加的な抵抗をもたらす。
【0006】
上記の問題の全てによって、空気腔の原理は海上交通の通常の船舶に実用的な応用につながらなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、空気腔の原理に適し、その原理を利用できる、大きく、平らな底領域を与える、船舶の新たな船型を提供することである。したがって該船型は上記の不利点を低減又は排除し、海上での動きを減らし、より少ない出力及びバンカー燃料消費(Bunker consumption)を必要とする、海上交通に適した船舶につながる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、添付の請求項1に特定されている。本発明の実施形態は、添付の従属請求項に特定されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本願発明による船型及び船体構成は、添付の図面を参照しながら下記に説明されており、図面の内容は以下のようである。
【図1】図示されたバルブ長を有する船首のプロファイルを示す図である。
【図2】空気腔を持つ前部船体の正面線図の例を示す図である。
【図3】空気腔を持つ後部船体の正面線図の例を示す図である。
【図4】双胴船(catamaran vessel)の後部船体の正面線図の例を示す図である。
【図5】空気腔の末端に波を有する後部船体のプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
現在の商船のほとんどは、その前部船体に何らかの形状のバルブを有する。ある位置にバルブが存在するためには、その位置における横フレームがくびれを持つ必要がある(即ち、くびれの上及び下におけるフレームの幅はくびれの幅より大きい)。前部船体のバルブによって、波による抵抗を低減させることが可能になる。従来の船舶の前方直角(FP)の前方のバルブの断面は、端部ににおいて尖った楕円のような形をする。FPは、設計水線(design waterline,dWL)が船首と交差する点を通る垂直線と定義される。ここでdWLは、船舶の強度及び安定性を考慮して船舶が稼働できる最大の深さを示す喫水線と定義される。
【0011】
しかし、本発明による前部船体の船型は、非常に広く、低く、比較的に薄いバルブで特徴づけられ、先端部のプロファイルは平らに横たわる楕円であると言える。前部船体をより詳しく説明するためには、バルブの特徴的な数値を定義する必要がある。
【0012】
水中の船体の最先端部から計測されたバルブの長さは、以下の2つの値の中の最も小さい値である:
−水中の船体の最先端部から前部船体の横フレームにおいてくびれがなくなる位置までの水平距離、又は
−水中の船体の最先端部から、くびれの船首プロファイルの最も船尾寄りの位置までの水平距離の2倍。
【0013】
バルブ容積は、バルブの長さ内にあるベースラインからdWLまでの船型、スターボード及びポートの容積である。
【0014】
バルブ面積は、バルブの長さ内のくびれの下におけるバルブの水平面、スターボード及びポートに投影された面積である。
【0015】
前部船体の平均厚さは、バルブ容積をバルブ面積で割ることで得られる。バルブの平均幅は、バルブ面積をバルブ長さで割ることで得られる。
【0016】
バルブ係数は、平均幅を平均厚さで割ることで得られる値、又は上記の値を適用することで得られる次の式から求められる。
【0017】
バルブ係数=(バルブ面積)2/(バルブ容積×バルブ長さ)
バルブの寸法及び豊富さによって、周知であり公開された船型のほとんどは0.5〜1のバルブ係数が与えられる。下記の追加的に説明された請求項を含む本発明による船型では、バルブ係数は少なくとも1.5である。最適な値は船舶の種類及び寸法の関係によって異なってくるが、係数の値は3に至ることもよくあり、3を超える場合さえある。
【0018】
上記の式によるバルブの船首端は広く、平たく、比較的に薄くなる。バルブの先端は、水の流れが下流及び上流に分かれるようにその位置がベースラインから上に離れて位置するべきである。下流はバルブの下及び船舶の下に流れるべきであり、上流はバルブの上に流れ、主に船舶の側面に沿って流れる。バルブの上下に適切に分布された流れによって、船型の側面から前部船体への最小限のオーバフローが得られる。前部におけるバルブの底面は、横断方向においては中央線からまっすぐ外側に延びる直線であるか、わずかに曲がっている。後方向においてはバルブの底面は水平に平らになるように連続的に変形し、それと同時にベースラインに近付くにつれその幅が広くなる。底面がベースラインに至ると空気腔が始まり得る。
【0019】
本発明による船型によると次のような利点が得られる。
・広く、平らなバルブは、とても広い空気腔の可能性を作り出す。バルブが広いほど、空気腔の前部が広くなり得る。これによって空気腔の面積が大きくなり(即ち、水に触れる船型表面が小さくなる)、それによって摩擦抵抗が小さくなる。
・空気腔の前部が広いことは、空気腔の最大幅に至る側面が、中央線に平行する垂直平面に対して小さい角度を形成することを意味する。これは、水が空気腔の側面を越えて横に流れる可能性を低くする(即ち、渦発生の危険性が減る)。
・本発明による船型は空気腔の下において、船舶の中央線と平行する略まっすぐな水の流れを提供し、これは空気腔の穏やかな作動状況をもたらす。
・バルブの広い形状は排水量に大きく貢献する。保持された前部船体の排水量は、特に細長い船舶にとってはdWLの幅を減らすことができることを意味する。これは、ピッチング動作の方向における動作性質を改善させる(下記を参照)。これは前述した内容によると空気腔の原理を利用するために重要である。
【0020】
前部船体が垂直方向に動くと、広いバルブは大量の水を一緒に引くようになる。これによって、いわゆる共振動水質量を増加させ、前後の極慣性モーメント(polar mass−moment of inertia)を増加させる。それと同時に、広いバルブは、前部船体の水線幅をdWLのすぐ上及び下において減らすことができることを意味する。このように、垂直の動きの後に船舶を中立の位置に戻そうとするモーメントが減少される。極慣性モーメントの増加及び同時に発生する回復させるモーメントの減少は、固有振動数が減少することを意味する。これによって、通常の波スペクトルの向かい波の共振に巻き込まれる危険性を減らすため、有利である。
【0021】
加えて、前部船体の広いバルブは、前部船体の垂直の動きの際に減衰係数を増加させる。増加された減衰係数は、振動数が共振に近い場合でも、ピッチング方向における動作を減らす。
【0022】
単胴船の横方向の動きは、船舶の主な寸法に大きく依存する。空気腔は横方向における安定性を減らすため、空気腔を長さ方向に延びる室に分ける必要があり得る。これらの腔には夫々個別の空気補給管が提供される。
【0023】
空気腔の原理が最適に機能するためには、船型の対応する条件が船尾においても当てはまる。本発明の前部船体のバルブのように、水平のバルブは後部船体の船尾下部に構成され得る。本発明の後部船体の船型は、底平面積を大きくする横方向に延びたとても大きい延長部を持つ、低くて比較的に薄いバルブを特徴とする。下に提起された、船尾バルブの長さ内の横フレームは従ってくびれを持たなければならない。後部船体をより具体的に説明するために、船尾バルブの対応する特徴的数値を定義する。
【0024】
船尾バルブの長さ(くびれの下におけるバルブの後点から前方向に測定)は船体の垂直長さの10%と定義される。垂直長さは前方垂直と後方垂直との間の長さである。後方垂直はかじシャフトを通る垂直線であり、船舶が従来のかじがない場合は、dWLが横材と交差する点を通る垂直線である。
【0025】
バルブ容積は、ベースラインからdWLまでの船尾バルブ長さ内の船体、スターボード及びポートの容積である。
【0026】
バルブ面積は、船尾バルブ長さ内のくびれ下におけるバルブの水平面、スターボード及びポートに投影された面積である。、
後部船体の船尾バルブ係数は、前部船体同様に次のように定義される。
【0027】
バルブ係数=(バルブ面積)2/(バルブ容積×バルブ長さ)
本発明による後部船体の船型は少なくとも0.4の船尾バルブ係数を有するが、その値は場合によって大幅に大きくなり得る。これは、後部船体に推進装置があるか、そしてそれがどのように構成されているか等によって変化する。
【0028】
本発明による船型の後部船体は、上記前部船体に関して前述したような次の利点を与える。
・広く、平らなバルブは、広い末端の空気腔を可能とする。バルブが広いほど、空気腔の末端が広くなる。これは空気腔の面積を大きくし(即ち、水に触れる表面を小さくする)、摩擦抵抗の減少につながる。
・後部船体における空気腔の広い末端は、最大幅の船体中央部から始まる空気腔側面が、水面下の船体の中央線に平行する垂直平面に対して小さい角度を形成することを意味する。これは空気腔の側面を越えて横方向に水が流れる可能性を減少させる(即ち、渦の発生を減らす)。
・大きな水平バルブは共振動する水質量を増加させ、より大きい極慣性モーメント(polar mass−moment of inertia)を与える。同時に、船尾のバルブは運動方程式の減衰係数を大きく増加させる。全ての数値が正しい方向に変更される(即ち、ピッチング動作を減少させる)。
【0029】
バルブの末端は、推進装置及び起こり得る空気放出を考慮して実施されなければならない。末端の例は次のようなものがある。
【0030】
単独プロペラ船舶は、プロペラ平面から所定の距離前のベースラインでバルブを適切に終わらせ得る。これによって、もし空気放出が発生すると空気はプロペラの下又は外側を通ることが可能となる。
【0031】
いわゆるツイン・スケグタイプの二重プロペラ船舶は夫々のプロペラに対して、単独プロペラ船舶同様の末端を持ち得る。夫々のプロペラの内側にあるバルブの幅及び末端は、プロペラに充分の水が流れるように適用させる必要がある。
【0032】
本願の興味深い応用はいわゆる双胴船という二重船体船舶において生じる。このような船舶には推進装置が船舶の中央線上におかれる。船体構成は、局部体(local body)が船舶の中央線内に設けられている(即ち、2つの二重船体の間で船体をつなぐ強化デックの下)。局部体は船首及び船尾の両方に存在し、dWLまで下方向に延長されている。よどみにおいては、局部体の下縁はdWLまたはそのすぐ上に位置する。推進装置は、夫々の局部体の船首及び船尾に夫々配置される。これによって二重船体船舶の後部船体は、推進装置を考慮する必要なく、大きくて広いバルブを持つように形成され得る。底平面及び空気腔の末端は、完全に最適な形に形成され得る。
【0033】
水に触れる表面を不必要に増やさないために、上記の二重船体船舶によるバルブの後部は、ベースラインより少し上の後方垂直の近辺で、おおよそ丸まった先端として終わり得、そして終わるべきである。後部のバルブの底面は横方向において水平の直線又はわずかに曲がった形状であり、前方向においては、ベースラインに近付くとともにその幅が広がり、平面の水平底面に継続的に変形する。底面がベースラインにたどりつくと、その幅はかなりのものであり、したがって空気腔の良い末端に接続することができる。
【0034】
全ての用途において、所定量の空気が水によって運ばれ、後部船体における船体の下に通ることがあり得る。空気腔の後部を水が通る際の追加的な抵抗の可能性を減らすために、空気腔の天井から空気/水の接点まで伸びる傾き表面が提供される。傾き表面の小さい角度によって、水及び場合によって少量の空気が空気腔から出る時に、渦の危険性が減る。
【0035】
空気/水の接点を、空気腔全長にわたって船体の下縁にできるだけ近く保つためには、船体の下縁を水平に保つことが不可欠である(即ち、トリムなしで、船舶のバランスをとる)。水力学的効果によって、船舶はその速度が変わるとトリムを変える。したがって、前部船体及び後部船体に水をポンプする水バラストを用いてトリムを使わずに船舶を安定させることを目的とする、手動又は自動システムが設置されるべきである。
【0036】
船体の下縁における水圧は長さ方向において波の谷及び波の頂点によって異なる。したがって、事前に設定された空気圧はない。代わりに、自動制御システムは、空気腔に空気を供給し、したがって圧力を提供するファンがレベルメータによって制御される場所に取り付けられなければならない。最も低い水/空気の界面を示すレベルメータを、望ましい海面レベルに比較し、ファンへの制御信号を構成する必要がある。
【0037】
空気腔の高さ(即ち、船体の下縁から空気腔の天井までの距離)は、当該船舶の内部構成及び最高波高に従って、船舶の抵抗を効率的に低減できるようにその高さを調整する必要がある。
【0038】
空気腔内に存在する大きな自由液体面積のため、従来の船舶に比べ長手方向における安定が悪くなる。これは、船舶が港で積み降ろし中にトリムを失いやすいことを意味する。対応する空気腔を持たない船舶に比べ、長手方向における重さの移動はより大きくトリムに影響を及ぼす。このような過剰なトリムの増加を減らすためには、空気腔は船舶が港に止まっている状態において、空気腔を前後に複数の区域に分けることが必要になり得る。これは、空気腔内において下ろされる横断壁によって実行され得る。すると、空気腔の各区域は夫々個別の空気補給が備えられる。船舶が高速で移動するときは横断壁を引き上げる必要がある。
【0039】
船舶の寸法及び速度/長さの関係によって、船体に沿って異なる種類の波が発生する。所定の速度において、そのような波高点は船尾の傾き表面下の位置で発生し得る。この波は船舶に対して止まっており、利用することが可能である。そのような波高点を利用することが望まれるのであれば、空気腔の船尾の制限表面及び隣接する空気腔の後方のバルブの側面は該波高点に接しなければならない。空気腔の後辺の底部は波高点によって閉鎖され、その後方には船体部が存在しない。すると、傾き表面の後辺は、この波の高点に接するようになるだろう。これは、傾き表面の下部が波の高さにつながるように、傾き表面が回転又は上下調整できるように構成されなければいけないことを意味する。このように、空気はできるだけ多い量が収容される。傾き表面の後方又はその下には船体部分は存在しないべきであり、これは追加的な抵抗を発生させるからである。波の高さが高いほど、傾き表面の端部が高くなる。このように、抵抗が減り、船舶は増加した前方へのパワー/速度を得られるようになる。港における喫水が危機的であれば、傾き表面を下げ、その下縁が船体の下縁と同一平面上になることが可能である。これによって、空気腔は最大限に利用され、船舶の喫水は低減される。
【0040】
図1は挿入された定義を有する、船首のプロファイルを示す図である。ベースライン(BL)はdWLと平行する、船舶の最も低い場所を通過する線である。船首のくびれ(W)は、バルブの船首縁上の位置において最も後に位置する。図にはバルブの長さも定義されている。この定義は、全ての横フレームがこの長さ内にくびれを有するとの想定に基づいて適用される。もしそうでない場合は、長さはバルブの船首縁から横フレーム(前部船体においてくびれを持つ最後のフレーム)までになるように調整される。
【0041】
図2はdWLまでの前部船体の船首部の正面線図の例を示している。図示されたフレームは垂直長さの85,90,95,100及び101.25%の位置に相当する。50%は船体中央部に相当し、100%はFPのフレームに相当する。この例における垂直長さの101.25%はFPとバルブの船首縁との真中のフレームに相当する。この図では、バルブの底面1が、BLに近付くとともに平底面2に変形していく様子を見ることができる。図示された例では、バルブの底面は、90%のフレーム位置の直前で平底面に至り、そこで平底面は点線5で示された空気腔の始まりによって置き換えられる。フレームの85%では、空気腔の幅が点線6で示されているように追加的に増加している。フレームの101.25%では、比較のため楕円4が描かれている。ここでバルブが水平に大きく伸ばされていること、そしてそれが横たわった楕円に似ていること(楕円の上縁がステムとの連結に接するためにクレストを持たされたとしても)が明確であろう。
【0042】
図3は単一プロペラ後部船体の発明による正面線図の例を示す図である。示されたフレームは垂直長さの0,5,10,15及び20%の位置に相当する。船舶の長さの0%はAPに相当する。この場合は、バルブの底面がベースラインを通る平面とどのように一致するか、そして空気腔の幅がかなり大きくなっていることが明確である。空気腔はフレームの20%でその最大高さ7を有する。空気腔の高さは、傾いた表面に接する船尾にて徐々に減り、フレームの15%の直後にBLに至る。これは、この例における空気腔の終わりが、船体中央部における空気腔の最大幅の約55%の幅8を有することを意味する。フレームの2.5%の下部が図示されており、これはプロペラ平面Pの直前に終わるバルブの末端を示すために図示されている。これは、空気腔の下で流れる水によって運ばれる空気の大部分が、代わりにプロペラ領域の下又は外側を通ることを意味する。
【0043】
図4は、夫々のフレームが推進装置を有さない二重船体船舶の後部船体の発明による正面線図の例を示している。したがって、この後部船体は抵抗値と空気腔の原理の最大活用とを考慮して形成しなければならない。図示されたフレームは垂直長さの0,5,10,15,20%の位置に相当する。この例では、丸まった先端8を有するバルブはAPの直後そして抵抗からみて適切な高さで終わる。ここで、バルブの底面9は横方向において直線で書かれている。前方向で幅は早く広がり、約フレームの10%のところでベースラインに近づく。ここに、空気腔の末端10が構成され得る。この例では、空気腔の末端における幅は、空気腔の最大幅の80%に近くなる。この例では傾き平面はフレームの10%のところから15%のところまで伸びており、ここでは空気腔の高さはほぼ最大高さである(11)。
【0044】
図5は、図4の正面線図を有する後部船体のプロファイルを示している。ここでは、フレームの約10%の位置で船舶によって生成された定常波からの圧力を利用するように選択されている。この圧力は空気室の圧力より高いため、空気室はより高いレベルで終わることができる。これは点線12で示されている。傾き表面は線13で示されており、傾き表面の下及び直線水平の後方には船体が存在できない。概略的には、波14が引きこまれ、傾き表面の終わりからベースラインまでの領域を満たす。すると、空気室における圧力は、その前にある船舶に追加的な推進力を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶のための船型であって、
前部船体は、前記船舶の下を通る下流と、前記船舶の側面に沿って主に流れる上流とに水流を分ける広い水平バルブを有し、
バルブ係数=(バルブ面積)2/(バルブ容積×バルブ長さ)
で定義されるバルブ係数は1.5の最低値を有し、
水面下の船体の最先端部から計算された前記バルブの長さは、
前記水面下の前記最先端部から、前記前部船体の横フレームのくびれが消える前記横フレームにおける位置までの水平距離と
前記水面下の前記最先端部から、前記くびれにおける船首プロファイルの最後部まで測定された水平距離の2倍と、の2つの値のより小さい方であり、
前記バルブ容積は、前記バルブの長さ内のベースラインから設計水線までにおける前記船体、スターボード及びポートの容積であり、
前記バルブ面積は前記バルブの長さ内の前記くびれの下における前記バルブの水平面、前記スターボード及び前記ポートに投影された面積であり、
前記バルブの長さの前部における前記バルブの底面は、横断方向においては中央線からまっすぐ外側に延びる直線であるか、又はわずかに曲がっており、後方向においてはバルブの底面は水平に平らになるように連続的に変形し、前記バルブの底面がベースライン又はそのすぐ後ろの位置に至ると水平底面面積のより大きい部分は空気腔で置き換えられ、前記空気腔は下向きに開いており、前記空気腔の上面又は1つ以上の側面に配置された流入配管によって、周囲の水の圧力に対応する圧力を有する空気で満たされること、
を特徴とする船型。
【請求項2】
前記バルブ係数は2.0の最低値を有することを特徴とする、請求項1に記載の船型。
【請求項3】
前記バルブ係数は2.5の最低値を有することを特徴とする、請求項1に記載の船型。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の船型であって、
下記のように定義された船尾バルブの長さの少なくとも1つ内の後部船体の下後部における横フレームはくびれを持ち、
その同じ部位が広く水平なバルブを持っており、該バルブは底面の平らな水平部を増やし、
下記のように定義された船尾バルブ係数は0.4の最低値を有し、
バルブ係数=(バルブ面積)2/(バルブ容積×バルブ長さ)
前記船尾バルブの長さは前記船体の垂直長さの10%として定義されており、前記垂直長さは前記くびれの下の前記バルブの後の位置から前方向に測定されたものであり、前記バルブ容積は、前記船尾バルブ長さ内のベースラインから設計水線までにおける前記船体、スターボード及びポートの容積であり、
前記バルブ面積は前記船尾バルブの長さ内の前記くびれの下における前記バルブの水平面、前記スターボード及び前記ポートに投影された面積であり、
後縁における前記船尾バルブは、前記ベースライン又はその上で終わり、側面から見ると丸まった先端を持っており、その幅が徐々に大きくなり、前記バルブの長さの後部における前記船尾バルブの底面は、横断方向においては中央線からまっすぐ外側に延びる直線であるか、又はわずかに曲がっており、前方向においてはバルブの底面は水平に平らになるように連続的に変形し、前記底面がベースライン又はそのすぐ前の位置に至ると、水平底面面積は空気腔で置き換えられること、
を特徴とする船型。
【請求項5】
前記空気腔の後部の終わりの下縁は前記ベースラインの上に位置し、この位置から前記ベースラインまでは前記空気腔は前記船舶によって生成された定常波で閉ざされることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の船型。
【請求項6】
前記空気腔の前記後部の終わりの前記下縁は、異なる速度での定常波の異なる高さに対応できるように上下に動くことができることを特徴とする請求項5に記載の船型。
【請求項7】
前記船舶が港にある場合又は低速である場合、前記空気腔の前記後部の末端の前記下縁が、前記空気腔の下縁まで下げられることを特徴とする、請求項5又は6に記載の船型。
【請求項8】
前記船舶が港にある場合、1つ以上の一時的な横断分割壁が下され、前記空気腔を前後に複数の空気室に分割し、これらの前記分割壁は前記船舶が速度を上げ、前記空気腔による力を減らす原理を利用するときに上げられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の船型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−502850(P2012−502850A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527764(P2011−527764)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051050
【国際公開番号】WO2010/033058
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(511037621)ステナ リディリ アーベー (1)
【氏名又は名称原語表記】STENA REDERI AB
【住所又は居所原語表記】SE−405 19 Goteborg, Sweden