説明

空気調和機およびロールフィルタユニット

【課題】巻取りモータを大型、高価にしなくても、ロールフィルタの濾材の撓み、緩みを防止できる空気調和機およびロールフィルタユニットを提供すること。
【解決手段】ロールフィルタユニット20は、ユニット本体25に、ロールフィルタ24と、金網部材26と、押さえ枠部材27と、巻取りモータ31と、歯車32と、リミットスイッチ33とを設けてなる。ロールフィルタ24は、繰出しロール21と、巻取りロール22と、濾材23とからなる。濾材23の平面部23aは金網部材26と、押さえ枠部材27との間を通って送られるため、濾材23の平面部23aは撓んだり、緩んだりすることが殆どない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロールフィルタを有する空気調和機およびロールフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気調和機としては、ケーシング本体と天井パネルと天井グリルとからなるケーシング内に、ファンと、ファンモータと、熱交換器とを配置すると共に、上記ファンの上流側の吸込チャンバーに、ロールフィルタを配置したものがある(実開平04−120526号公報(特許文献1))。このロールフィルタは、巻取りロールと繰出しロールとの間の濾材の平面部を、空気流の下流側から桟状の支持体で支持して、上記濾材の平面部を上流側から空気流が押圧しても、濾材の平面部が下流側に撓んだり、緩んだりしないようにしている。そして、上記巻取りロールを巻取りモータで駆動するようにしている。
【0003】
しかしながら、上記従来の空気調和機では、濾材の平面部を空気流の下流側から桟状の支持体で支持していても、上流側から支持していないため、空気調和機を運転していなくて、濾材を空気流が上流側から押圧していないときに、濾材が上流側に撓んだり、緩んだりするという問題がある。特に、上記空気調和機の運転をしていな状態で、巻取りロールを巻取り用モータで駆動して、繰出しロールから濾材を繰出している最中に、巻取りロールを停止させて、繰出しロールから濾材の繰り出しを停止させようとしても、繰出しロールは、慣性によって回転を続けて、濾材を繰出し続けて、濾材が撓んだり、緩んでしまう場合があるという問題がある。特に、ロールフィルタの使用当初には、濾材の殆どが巻回されている繰出しロール側の質量が大きいため、繰出しロールが自走回転し続ける傾向があって、濾材が緩む場合がある。
【0004】
このような繰出しロール側の自走回転を防止して、濾材の緩みを防止しようとして、繰出しロールにゴムやスプリング等の制動部材で制動をかけるということが提案されている。
【0005】
しかしながら、このように繰出しロールに制動をかけると、巻取りロールを駆動するのに大きなトルクを必要するため、巻取りモータが大型になり、高価になるという問題がある。
【特許文献1】実開平04−120526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、巻取りモータを大型、高価にしなくても、ロールフィルタの濾材の撓み、緩みを防止できる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の空気調和機は、
吸込口と吹出口とを有するケーシングと、
上記ケーシング内に設けられて、上記吸込口から吹出口に向けて空気を送るファンと、
上記ファンを駆動するファンモータと、
上記ケーシング内に設けられて、上記空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
繰出しロールと、巻取りロールと、この繰出しロールと巻取りロールとに連結された濾材とを有すると共に、上記巻取りロールと繰出しロールとの間の上記濾材の平面部が上記ケーシング内の空気吸入通路に配置されたロールフィルタと、
上記巻取りロールを駆動する巻取りモータと、
上記濾材の平面部における空気流れの下流側の面を支持する下流側支持部材と、
上記濾材の平面部における空気流れの上流側の面を支持する上流側支持部材と
を備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成の空気調和機によれば、上記巻取りモータを駆動して、濾材を繰出しロールから巻取りロールに巻き取ると、濾材の平面部は下流側支持部材と上流側支持部材との間を通って送られることになる。このように、上記濾材の平面部は、下流側支持部材と上流側支持部材とで挟まれることになるので、上記濾材の平面部は撓んだり、緩んだりすることが殆どない。
【0009】
視点を変えると、空気調和機の運転中は、濾材の平面部は、空気流によって下流側支持部材に向けて押し付けられる一方、停止中は、濾材の平面部は、重力等を受けても、上流側支持部材によって支持される。したがって、空気調和機の運転中でも停止中でも、上記濾材の平面部の撓み、緩みを防止できる。
【0010】
また、上記濾材の巻取りロールへの巻き取り時に、濾材の平面部を挟む下流側支持部材と上流側支持部材とで、濾材の平面部に対して過大にならない適切な分布した摩擦抵抗を与えることができて、繰出しロールの箇所の濾材に過大な張力を与えることがない。したがって、巻取りロールの停止時に、繰出しロールは、制動部材がなくても、自走回転することがない。このように、制動部材を設けることなく、繰出しロールの自走回転を防止できて、濾材の撓み、緩みを防止できるから、巻取りモータの巻取りトルクを小さくして、巻取りモータを小型化でき、安価にすることができる。
【0011】
1実施形態の空気調和機では、
上記繰出しロールと巻取りロールとは、紙管であり、
上記濾材は、一般廃棄物となる材料からなる。
【0012】
上記実施形態によれば、上記繰出しロールと巻取りロールとは、紙管であり、上記濾材は、一般廃棄物となる材料からなるから、ロールフィルタは、産業廃棄物としてではなく、一般廃棄物として、容易に廃棄することができる。
【0013】
上記濾材の材料は、例えば、ポリエステル繊維等の合成繊維、紙質材料、天然繊維などの一般廃棄物となる材料から選択される。
【0014】
1実施形態の空気調和機では、
上記巻取りロールは、一端部に切欠きを有し、
上記巻取りモータの軸は、上記切欠きが係脱可能に係合する係合部を有し、
上記巻取りロールの他端部を進退可能に付勢して保持する保持部
を備える。
【0015】
上記実施形態によれば、上記巻取りロールの他端部を保持部側に押し付けて後退させた後、上記巻取りロールの一端部の切欠きを、上記巻取りモータの軸の係合部に係合させることによって、簡単に、巻取りロールを巻取りモータの軸に係合させて取り付けることができる。また、巻取りロールを巻取りモータの軸から取り外すには、上述の動作を逆にすることによって、簡単に、取り外すことができる。
【0016】
1実施形態の空気調和機では、
上記濾材の平面部の上記上流側の面は、上記繰出しロールに巻回された状態の上記濾材の半径方向外側の外面であり、かつ、上記巻取りロールに巻回された状態の上記濾材の半径方向内側の内面である。
【0017】
上記実施形態によれば、上記濾材の平面部の塵や脂を捕捉する上流側の面は、上記巻取りロールに巻回された状態の濾材の半径方向内側の内面になる。したがって、塵や脂を捕捉して汚れた濾材の上流側の面は、濾材が巻取りロールに巻回された状態では、濾材の半径方向内側の内面になって隠れて、外面になることがない。したがって、ロールフィルタの廃棄時に、塵や脂等で、作業者が手を汚すことがなくて、清潔である。
【0018】
また、上記実施形態によれば、上記濾材の平面部の上記上流側の面は、上記繰出しロールに巻回された状態の上記濾材の半径方向外側の外面であるから、濾材の平面部の下流側の面は、繰出しロールに巻回された状態の濾材の半径方向内側の内面になる。このように、清潔であるべき濾材の平面部の下流側の面は、常に、繰出しロールに巻回された状態では半径方向内側の内面となって、保護されているから、汚れることがない。
【0019】
1実施形態の空気調和機では、
上記濾材が部分的に巻回されて、上記濾材の送りに伴って回転する歯車と、
上記歯車の回転を検出する検出部と、
上記歯車の回転に関する上記検出部からの信号に基づいて、上記巻取りモータの駆動を制御する制御装置と
を備える。
【0020】
上記実施形態によれば、上記歯車の歯先は、濾材に食い込むから、濾材の送りに伴って、歯車は確実に回転する。したがって、上記歯車の回転を検出する検出部は、濾材の送り量を確実に検出することができる。したがって、上記濾材の送り量を表す検出部からの信号に基づいて、制御装置は、濾材の送りが正確に所望の値になるように、巻取りモータの駆動を制御することができる。例えば、上記制御装置は、検出部からの信号に基づいて、空気吸引通路に面した濾材の1平面部の長さに相当した定量分ずつ、濾材を送ることができる。
【0021】
1実施形態の空気調和機では、
上記制御装置は、上記巻取りモータの駆動を指令する信号を出力している状態で、上記検出部から歯車の回転を表す信号を受けなかったときに、異常を表す信号を警告部に出力する。
【0022】
上記実施形態によれば、上記制御装置が、巻取りモータの駆動を指令する信号を出力しているにも拘らず、検出部から歯車の回転を表す信号を受けないと、濾材が送られていないとして、異常を表す信号を警告部に出力する。
【0023】
したがって、この実施形態によると、繰出しロール上に濾材が無い状態や、濾材が詰まった状態等の異常を確実に検出することができる。また、このように、異常を確実に検出することができるから、巻取りモータを過負荷から保護をすることも可能である。
【0024】
なお、上記警告部は、発光ダイオード等の表示やブザー音、音声等を用いて、警告を行うことができる。
【0025】
1実施形態の空気調和機では、
上記巻取りモータの駆動を指令する駆動指令部を備え、
上記制御装置は、上記駆動指令部から、巻取りモータの駆動を指令する信号を、上記濾材の長さに相当する予め定めた一定回数以上受けたときには、上記巻取りモータの駆動を行わず、かつ、上記濾材の使用可能状態が終了したことを表す信号を表示部に出力する。
【0026】
上記実施形態によれば、上記制御装置は、上記駆動指令部から、巻取りモータの駆動を指令する信号を、上記濾材の長さに相当する予め定めた一定回数以上受けたときには、上記巻取りモータの駆動を行わないから、巻取りモータの過負荷、ロールフィルタの切断を防止でき、また、無駄な電力の消費を防止できる。
【0027】
また、上記制御装置は、上記駆動指令部から、巻取りモータの駆動を指令する信号を受けた回数に基づいて、上記濾材を全て使用したか否か判断するので、簡単に、濾材の使用可能状態の終了を検知できる。
【0028】
また、上記制御装置は、上記濾材の使用可能状態が終了したことを表す信号を表示部に出力するので、使用者は、簡単に、濾材の使用可能状態の終了を知ることができる。
【0029】
1実施形態の空気調和機では、
上記警告部は、表示部であり、この表示部は、警告を表示する他に、上記巻取りモータの駆動を表す表示を行い、
さらに、上記表示部は、上記巻取りモータの駆動を指令する駆動指令部でもある。
【0030】
上記実施形態によれば、上記警告部は、巻取りモータの駆動を表す表示部としての役割と、巻取りモータの駆動指令部としての役割とを兼ねる。したがって、上記実施形態によれば、警告部の機能、表示部の機能、駆動指令部の機能を、1つの表示部が兼ねるので、警告部、表示部、駆動指令部を別々に設けた場合に比べて、それらの機能を有する表示部の占有スペースが小さくなって、コンパクトになる。
【0031】
1実施形態の空気調和機では、
ユニット本体に、上記巻取りモータ、上記下流側支持部材、上記上流側支持部材および上記ロールフィルタを設けて構成したロールフィルタユニットを、上記ケーシングに着脱可能に設けている。
【0032】
上記実施形態によれば、上記ユニット本体に、巻取りモータ、下流側支持部材、上流側支持部材およびロールフィルタを設けて、ロールフィルタユニットを構成し、このロールフィルタユニットをケーシングに着脱可能に設けている。したがって、上記ロールフィルタユニットをケーシングに着脱することによって、ロールフィルタの取り付け、取り外しのフィルタの交換作業を簡素化することができ、メンテナンス費用を低減することができる。
【0033】
1実施形態の空気調和機は、
上記ケーシングは、ケーシング本体と天井パネルとを少なくとも含み、
上記ファンの下流側に上記熱交換機が配置されており、
上記ケーシング内に上記ファンの上流側に位置するように形成した吸込チャンバーに、上記ロールフィルタを配置した天井埋込型空気調和機である。
【0034】
上記実施形態によれば、メンテナンス時に高所作業を必要とする天井埋込型空気調和機に上述の構成のロールフィルタあるいはロールフィルタユニットを用いるので、フィルタの撓み、緩みがなくて、メンテナンス回数を低減でき、また、フィルタの交換作業を容易に行うことができる。
【0035】
また、天井埋込型空気調和機は、天井裏に据え付けられるため、スペースに制約があって小型化が要請されるが、上記実施形態では、巻取りモータを小型化できるから、この要請に応えることができる。
【0036】
この発明のロールフィルタユニットは、
ユニット本体と、
上記ユニット本体に取り付けられた繰出しロールおよび巻取りロールと、上記繰出しロールと巻取りロールとに連結された濾材とを有するロールフィルタと、
上記巻取りロールを駆動する巻取りモータと、
上記ユニット本体に取り付けられると共に、上記繰出しロールと巻取りロールとの間の上記濾材の平面部における空気流れの下流側の面を支持する下流側支持部材と、
上記ユニット本体に取り付けられると共に、上記濾材の平面部における空気流れの上流側の面を支持する上流側支持部材と
を備えることを特徴としている。
【0037】
この発明のロールフィルタユニットによれば、上記濾材の平面部は、下流側支持部材と上流側支持部材とで挟まれることになるので、濾材の平面部は撓んだり、緩んだりすることが殆どない。
【0038】
また、上記下流側支持部材と上流側支持部材とで、濾材の平面部を挟むことによって、繰出しロールに対して大きな制動力を与える制動部材を設けることなく、濾材の撓み、緩みを防止できるから、巻取りモータの巻取りトルクを小さくして、巻取りモータを小型、安価にすることができる。
【0039】
さらに、このロールフィルタユニットは、既設の空気調和機に、現地組み込みやオプション化することができる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、濾材の平面部を、下流側支持部材と上流側支持部材とで挟んでいるので、巻取りモータを大型、高価にしなくても、ロールフィルタの濾材の撓み、緩みを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0042】
図1に示すように、空気調和機の一例としての天井埋め込み型空気調和機は、ケーシング本体1と天井パネル2と化粧パネル3とからなるケーシング5に、下方に向けて、吸込口6と吹出口7とを設けている。上記吹出口7には、風向羽根8を設けている。
【0043】
上記ケーシング本体1内には、平面視略ロ字形状の熱交換器11を配置し、この熱交換器11の下方にドレンパン12を配置している。また、上記略ロ字形状の熱交換器11に囲まれた空間には、ファン15,15と、このファン15,15を駆動するファンモータ16,16を配置している。
【0044】
また、上記ファン15,15の下方の空気吸入通路の一例としての吸込チャンバー17には、ロールフィルタ24を有するロールフィルタユニット20を設けている。上記ロールフィルタ24は、繰出しロール21、巻取りロール22、および、それらに両端が貼り付け等で連結された濾材23からなる。
【0045】
上記ファンモータ16、16によるファン15,15の駆動により、吸込口6から吸入された空気は、ロールフィルタ24の濾材23の平面部23aを通り、ファン15の存在する箇所を通り、さらに、熱交換器11で冷温水等の冷媒と熱交換されて、吹出口7から外部に吹き出される。
【0046】
上記ロールフィルタユニット20は、図2に示すように、ユニット本体25に、ロールフィルタ24と、下流側支持部材の一例としての金網部材26と、上流側支持部材の一例としての桟状の押さえ枠部材27と、例えばステップモータからなる巻取りモータ31と、歯車32と、検出部の一例としてのリミットスイッチ35とを設けてなる。このロールフィルタユニット20は、ケーシング本体1にボルトあるいは係止フック(図示せず)等で着脱可能に取り付けている。
【0047】
したがって、このロールフィルタユニット20は、ケーシング本体1に容易に着脱できるから、オプション化することができ、また、既設の空気調和機に現地組み込みをすることができる。
【0048】
なお、このロールフィルタユニット20は、図示しない通常の板状のフィルタと併用してもよく、この通常の板状のフィルタと置き換えて使用してもよい。
【0049】
上記金網部材26は、繰出しロール21と巻取りロール22との間の濾材23の平面部23aを空気流の下流側から支持する一方、押さえ枠部材27は、濾材23の平面部23aを空気流の上流側から支持するようになっている。したがって、上記濾材23の平面部23aは、金網部材26と押さえ枠部材27とによって、挟まれて、撓み、緩みが生じ難くなっている。
【0050】
上記繰出しロール21は、図4に示すように、ユニット本体25の端部に設けたフック状の受け板41の溝に嵌め込んで取り付けている。
【0051】
また、図3に示すように、上記濾材23は繰出しロール21に何重にも巻回された後、歯厚が薄い歯車32の一部に巻回され、さらに、平面部23aとなって、金網部材26と押さえ枠部材27との間に延びている。上記歯車32の歯先は、歯厚が薄くて濾材23に食い込むから、濾材23の送りに伴って、歯車32は確実に回転するようになっている。上記歯車32の軸には、例えばボルトの頭からなる半球または半円筒状の凸部33を設け、歯車32の一回転毎に、この凸部33が検出部の一例としてのリミットスイッチ35を作動させるようにしている。したがって、上記濾材23の送り量は、その濾材23に歯が食い込む歯車32を介して、リミットスイッチ35で正確かつ確実に検出できるから、濾材23の送り量を正確かつ確実に制御することが可能になる。
【0052】
なお、検出部は、上記リミットスイッチ35に代えて、エンコーダと、光学式、磁気式などのセンサとで構成してもよい。
【0053】
一方、図5に示すように、巻取りモータ31の軸42に、巻取りロール22を取り付けている。濾材23の幅方向の両端部をガイド49でガイドしている。
【0054】
図6(A)に示すように、上記巻取りロール22の一端には、切欠き22aを設けている。一方、上記巻取りモータ31の軸42には、係合部としての係合ピン42aを固定して、図6(A)、(B)に示すように、この係合ピン42に切欠き22aを係合して、巻取りロール22が巻取りモータ31の軸42と共に回転するようにしている。また、上記巻取りロール22の他端は、保持部45によって、進退可能に保持している。この保持部45は、巻取りロール22の他端部が外嵌する軸部46と、この軸部46に外嵌されてバネ座48を介して巻取りロール22を軸方向に進退可能に付勢するバネ47とからなる。
【0055】
上記巻取りロール22を巻取りモータ31の軸42に装着するには、巻取りロール22の他端を、図6(A)、(B)において矢印で示すように、バネ座48を介してバネ47を圧縮しながら、軸部46に外嵌した後、切欠き22aを巻取りモータ31の軸42の係合ピン42aに軸方向から嵌め込むことによって、巻取りロール22を、軸42と保持部45とに極めた簡単に装着することができる。
【0056】
この巻取りロール22を軸42に嵌め込んだ状態では、バネ47が軸方向に押圧しているから、係合ピン42aと切欠き22aとの係合は外れ難い。
【0057】
上記巻取りロール22を巻取りモータ31の軸42から取り外すには、上述の装着時の動作と逆の動作をすれば、極めて簡単に取り外すことができる。
【0058】
上記巻取りロール22および繰出しロール21は、紙管からなる。また、上記濾材23は、例えば、厚さが約0.2mmのポリエステル繊維(商品名:サーマルボンド(東洋紡製TCKR60))からなる。上記濾材23は、産業廃棄物ではなくて、一般廃棄物となるものである。
【0059】
上記濾材23は、厚さが約0.2mmと、極めて薄いから、ロールフィルタ24全体が小型、コンパクトになる。したがって、このロールフィルタ24は、天井埋込型空気調和機に好適に用いることができるのみならず、壁掛け型空気調和機および床置き型空気調和機にも好適に用いることができる。
【0060】
また、上記ロールフィルタ24は、巻取りロール22および繰出しロール21が紙管からなり、濾材23がポリエステル繊維であるため、全体を一般廃棄物として、廃棄が容易に行うことができる。
【0061】
なお、上記濾材23は、ポリエステル繊維に限らず、一般廃棄物として廃棄できるものならば、合成繊維、天然繊維、紙質材料等どのような物であっても良い。また、不織布であっても、織布であってもよい。
【0062】
また、上記濾材23は、図7および8に模式的に示すように、平面部23aの上流側の面23auは、繰出しロール21に巻回された状態の濾材23の半径方向外側の外面であり、かつ、巻取りロール22に巻回された状態の濾材23の半径方向内側の内面である。つまり、上記繰出しロール21に巻回された状態の濾材23の半径方向内側の内面は、平面部23aの下流側の面23adとなり、この平面部23aの下流側の面23adは、巻取りロール22に巻回された状態の濾材23の半径方向外側の外面となる。なお、図7において、空気の流れる方向を、矢印で示している。
【0063】
このロールフィルタ24を廃棄するときには、濾材23を全て巻取りロール22に巻き取って廃棄するが、濾材23が全て巻取りロール22に巻回された状態では、空気の流れから塵や脂を捕捉して汚れた濾材23の上流側の面23auは、巻取りロール22に巻回された状態の濾材23の半径方向内側の内面になって隠れて、外面になることがない。したがって、ロールフィルタ24の廃棄時に、塵や脂等で、作業者が手を汚すことがなくて、清潔である。
【0064】
また、上記濾材23の平面部23aの下流側の面23adは、繰出しロール21に巻回された状態の濾材23の半径方向内側の内面である。したがって、清潔であるべき濾材23の平面部23aの下流側の面23adは、常に、繰出しロール21に巻回された状態では半径方向内側の内面となって、保護されているから、汚れることがない。
【0065】
また、図1のA矢視図である図10に示すように、天井パネル2に表示部55を設けている。この表示部55は、駆動指令部の一例としての作動スイッチと、例えば発光ダイオード等の素子を用いた光による警告部とを一体化してなるものである。つまり、上記表示部55は、駆動指令部、警告部、運転状態を示す運転表示部の全ての機能を有する。
【0066】
また、図9に示すように、制御装置50は、検知部の一例としてのリミットスイッチ35と、作動スイッチを兼ねる表示部55から信号を受けて、巻取りモータ31の駆動を制御し、さらに、表示部55の表示を制御する。この制御装置50は、図1には示されていないが、ケーシング1に取り付けられている。
【0067】
上記制御装置50は、マイクロコンピュータからなり、定量送り部51、警告判別部52、表示制御部53および回数制御部54を備える。この定量送り部51、警告判別部52、表示制御部53および回数制御部54は、ソフトウェアから構成されている。
【0068】
上記制御装置50は、作動スイッチを兼ねる表示部55から駆動指令を受けると、巻取りモータ31の駆動を行う。そして、上記定量送り部51は、歯車32の回転数を表すリミットスイッチ35から受ける信号の回数をカウントする。そして、空気吸引通路に面した濾材23の1平面部23aの長さに相当した回数だけ歯車32が回転して、その回数分の信号を定量送り部51がリミットスイッチ35から受けると、巻取りモータ31の駆動を停止する信号を出力する。このようにして、定量送り部51は、空気吸引通路に面した濾材23の1平面部23aの長さずつ定量送りを行う。
【0069】
この定量送りは、歯先が濾材23に食い込んで、濾材23の送りに伴って確実に回転する歯車32の回転数に基づいて行うから、確実かつ正確に行うことができる。
【0070】
この定量送りを行っている最中には、表示制御部53は、定量送りを行っていることを表すために、表示部55に連続的に点灯をさせる。
【0071】
また、上記警告判別部52は、巻取りモータ31に駆動を指令する信号を出力している状態で、リミットスイッチ35から、一定時間、歯車32の回転を表す信号を受けなかったときに、異常を表す信号を表示制御部53に出力する。そうすると、上記表示制御部53は、警告部としての機能を有する表示部55に、例えば、1秒間隔の点滅をさせて、警告を行わせる。
【0072】
このように、巻取りモータ31の駆動を指令する信号を出力しているにも拘らず、リミットスイッチ35から歯車32の回転を表す信号を受けないと、濾材23が送られていないとして、表示部55が1秒間隔の点滅をするので、繰出しロール21上に濾材23が無い状態や、濾材23が詰まった状態等の異常を確実に検出して、作業者に知らせることができる。また、巻取りモータ31を過負荷から保護をすることもできる。
【0073】
また、上記回数制御部54は、作動スイッチを兼ねる表示部55が巻取りモータ31の駆動を指令するために押圧された回数をカウントし、その回数が濾材23の長さに相当する予め定めた一定回数、例えば13回になると、巻取りモータ31の駆動を行わせず、かつ、濾材23が全て使用されて使用可能状態が終了したことを表す信号を表示制御部53に出力する。そうすると、上記表示制御部53は、警告部としての機能を有する表示部55に、例えば、1秒点灯、2秒消灯の点滅をさせて、警告を行わせる。
【0074】
このように、上記回数制御部54は、作動スイッチを兼ねる表示部55から、巻取りモータ31の駆動を指令する信号を、濾材23の長さに相当する予め定めた13回以上受けたときには、巻取りモータ31の駆動を行わせないから、巻取りモータ31の過負荷、濾材23の切断を防止でき、また、無駄な電力の消費を防止できる。
【0075】
さらに、上記回数制御部54は、作動スイッチを兼ねる表示部55から、巻取りモータ31の駆動を指令する信号を受けた回数に基づいて、濾材23を全て使用したか否か判断するので、簡単に、濾材23の使用可能状態の終了を検知できる。
【0076】
さらにまた、上記回数制御部54は、表示制御部53を介して、濾材23の使用可能状態が終了したことを、表示部55に1秒点灯、2秒消灯の点滅をさせて、警告するので、作業者は、容易に、濾材23の使用可能状態の終了を知ることができる。
【0077】
上記表示部55は、それ1つで、警告部の機能、巻取りモータ31の駆動中を表す表示部の機能、駆動指令部の機能を兼ねるので、警告部、表示部、駆動指令部を別々に設けた場合に比べて、それらの機能を有する表示部の占有スペースが小さくなって、コンパクトになる。
【0078】
尤も、図示しないが、警告部、表示部、駆動指令部を別々に設けてもよい。
【0079】
なお、上記表示部55に代えて、警告部としてブザー、音声発生装置等を用いて、音で警告を行うようにしてもよい。
【0080】
上記構成の空気調和機によれば、作動スイッチを兼ねる表示部55を、作業者が図示しない押棒で押圧すると、制御装置50は、巻取りモータ31を駆動して、濾材23を繰出しロール21から巻取りロール22に平面部23aに相当した定量分だけ巻き取る。そうすると、濾材23の平面部23aは下流側支持部材としての金網部材26と、上流側支持部材としての桟状の押さえ枠部材27との間を通って送られることになる。
【0081】
このように、上記濾材23の平面部23aは、金網部材26と桟状の押さえ枠部材27とで挟まれることになるので、濾材23の平面部23aは撓んだり、緩んだりすることが殆どない。
【0082】
より詳しく説明すると、空気調和機の運転中は、濾材23の平面部23aは、空気流によって下流側支持部材である金網部材26に向けて押し付けられる一方、停止中は、濾材23の平面部23aは、重力等を受けても、上流側支持部材である押さえ枠部材27によって支持される。したがって、空気調和機の運転中でも停止中でも、濾材23の平面部23aの撓み、緩みを防止できる。
【0083】
また、上記濾材23aの巻取りロール31への巻き取り時に、濾材23の平面部23aを挟む金網部材26と桟状の押さえ枠部材27とで、濾材23の平面部23aに対して過大にならない適切な分布した摩擦抵抗を与えることができる。したがって、図3に示すように、繰出しロール21の近傍の濾材23の部分23bに過大な張力を与えることがない。そのため、巻取りロール22の停止時に、繰出しロール21は、制動部材がなくても、自走回転することがない。このように、制動部材を設けることなく、繰出しロール21の自走回転を防止できて、濾材23の撓み、緩みを防止できるから、巻取りモータ31の巻取りトルクを小さくして、巻取りモータ31を小型化でき、安価にすることができる。
【0084】
上記実施形態では、下流側支持部材として金網部材26を用い、上流側支持部材として桟状の押さえ枠部材27を用いたが、下流側支持部材として桟状の押さえ枠部材を用い、上流側支持部材として金網部材を用いてもよい。また、金網部材に代えて、樹脂製の網状部材、あるいは、樹脂製の桟状の部材を用いてもよい。下流側支持部材および上流側支持部材は、濾材を下流側と上流側とから支持できるものならば、形状、材質はどのようなものであってもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、空気調和機として天井埋込型の空気調和機を説明したが、この発明は、壁掛け型の空気調和機、床置き型の空気調和機にも適用できることは勿論である。
【0086】
また、ケーシングは、ケーシング本体と、吸込グリルと、前面パネルとで、構成してもよい。また、化粧パネルに代えて、吸込グリルを用いてもよい。
【0087】
また、熱交換器は、ファンの上流側に配置してもよく、また、U字形状、J字形状、V字形状等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、この発明の1実施形態の空気調和機の断面である。
【図2】図2は、ロールフィルタユニットの正面図である。
【図3】図3は、繰出しロールの存在する箇所の拡大図である。
【図4】図4は、受け板の拡大図である。
【図5】図5は、巻取りロールの存在する箇所の拡大図である。
【図6】図6は、巻取りロールの装着の仕方を説明する図である。
【図7】図7は、ロールフィルタの模式図である。
【図8】図8は、ロールフィルタを巻き取る状態を説明する図である。
【図9】図9は、制御装置のブロック図である。
【図10】図1の空気調和機の下面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 ケーシング本体
2 天井パネル
5 ケーシング
20 ロールフィルタユニット
21 繰出しロール
22 巻取りロール
23 濾材
24 ロールフィルタ
26 金網部材
27 桟状の押さえ枠部材
31 巻取りモータ
32 歯車
35 リミットスイッチ
42 軸
42a 係合ピン
45 保持部
50 制御装置
55 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口とを有するケーシング(5)と、
上記ケーシング(5)内に設けられて、上記吸込口から吹出口に向けて空気を送るファン(15)と、
上記ファン(15)を駆動するファンモータ(16)と、
上記ケーシング(5)内に設けられて、上記空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器(11)と、
繰出しロール(21)と、巻取りロール(22)と、この繰出しロール(21)と巻取りロール(22)とに連結された濾材(23)とを有すると共に、上記巻取りロール(22)と繰出しロール(21)との間の上記濾材(23)の平面部(23a)が上記ケーシング(23)内の空気吸入通路に配置されたロールフィルタ(24)と、
上記巻取りロール(22)を駆動する巻取りモータ(31)と、
上記濾材(23)の平面部(23a)における空気流れの下流側の面を支持する下流側支持部材(26)と、
上記濾材(23)の平面部(23a)における空気流れの上流側の面を支持する上流側支持部材(27)と
を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
上記繰出しロール(21)と巻取りロール(22)とは、紙管であり、
上記濾材(23)は、一般廃棄物となる材料からなることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気調和機において、
上記巻取りロール(22)は、一端部に切欠き(22a)を有し、
上記巻取りモータ(31)の軸(42)は、上記切欠き(22a)が係脱可能に係合する係合部(42a)を有し、
上記巻取りロール(22)の他端部を進退可能に付勢して保持する保持部(45)
を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の空気調和機において、
上記濾材(23)の平面部(23a)の上記上流側の面(23au)は、上記繰出しロール(21)に巻回された状態の上記濾材(23)の半径方向外側の外面であり、かつ、上記巻取りロール(22)に巻回された状態の上記濾材(23)の半径方向内側の内面であることを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の空気調和機において、
上記濾材(23)が部分的に巻回されて、上記濾材(23)の送りに伴って回転する歯車(32)と、
上記歯車(23)の回転を検出する検出部(35)と、
上記歯車(32)の回転に関する上記検出部(35)からの信号に基づいて、上記巻取りモータ(31)の駆動を制御する制御装置(50)と
を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項6】
請求項5に記載の空気調和機において、
上記制御装置(50)は、上記巻取りモータ(31)の駆動を指令する信号を出力している状態で、上記検出部(31)から歯車(32)の回転を表す信号を受けなかったときに、異常を表す信号を警告部(55)に出力することを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
請求項5または6に記載の空気調和機において、
上記巻取りモータ(31)の駆動を指令する駆動指令部(55)を備え、
上記制御装置(50)は、上記駆動指令部(55)から、巻取りモータ(31)の駆動を指令する信号を、上記濾材(23)の長さに相当する予め定めた一定回数以上受けたときには、上記巻取りモータ(31)の駆動を行わず、かつ、上記濾材(23)の使用可能状態が終了したことを表す信号を表示部(55)に出力することを特徴とする空気調和機。
【請求項8】
請求項6または7に記載の空気調和機において、
上記警告部(55)は、表示部(55)であり、この表示部(55)は、警告を表示する他に、上記巻取りモータ(31)の駆動を表す表示を行い、
さらに、上記表示部(55)は、上記巻取りモータ(31)の駆動を指令する駆動指令部(55)でもあることを特徴とする空気調和機。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の空気調和機において、
ユニット本体(25)に、上記巻取りモータ(31)、上記下流側支持部材(26)、上記上流側支持部材(27)および上記ロールフィルタ(24)を設けて構成したロールフィルタユニット(20)を、上記ケーシング(5)に着脱可能に設けたことを特徴とする空気調和機。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つに記載の空気調和機において、
上記ケーシング(5)は、ケーシング本体(1)と天井パネル(2)とを少なくとも含み、
上記ファン(15)の下流側に上記熱交換機(11)が配置されており、
上記ケーシング(5)内に上記ファン(15)の上流側に位置するように形成した吸込チャンバー(17)に、上記ロールフィルタ(24)を配置した天井埋込型空気調和機であることを特徴とする空気調和機。
【請求項11】
ユニット本体(25)と、
上記ユニット本体(25)に取り付けられた繰出しロール(21)および巻取りロール(22)と、上記繰出しロール(21)と巻取りロール(22)とに連結された濾材(23)とを有するロールフィルタ(24)と、
上記巻取りロール(22)を駆動する巻取りモータ(31)と、
上記ユニット本体(25)に取り付けられると共に、上記繰出しロール(21)と巻取りロール(22)との間の上記濾材(23)の平面部(23a)における空気流れの下流側の面を支持する下流側支持部材(26)と、
上記ユニット本体(25)に取り付けられると共に、上記濾材(23)の平面部(23a)における空気流れの上流側の面を支持する上流側支持部材(27)と
を備えることを特徴とするロールフィルタユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−298206(P2007−298206A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125361(P2006−125361)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】