説明

空気調和機の室内ユニット

【課題】形状記憶合金で形成された風向偏向板を変形させることで吹き出し気流を自在に向けたい方向へ向けているため常時電圧印加が必要であるという課題を有していた。
【解決手段】電圧を印加することによって反り変形をする高分子シートで風向偏向板の風上側任意長さを構成しその部分の風向偏向時のみ電圧印加することで曲率半径を変え風向偏向板自身が風路を塞ぎ通風抵抗の増加を招くことを防止でき、また常時電圧印加の不要な空気調和機の室内ユニットを提供することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機に関し、特に室内ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内ユニットでは、送風機によって誘引することで室内空気を空気吸込み口から吸込み、これを熱交換器での熱交換によって温度調節をした後、空調風として空気吹き出し口から室内へ吹き出すようになっている。従来、この種の空気調和機の室内ユニットは、風向偏向時に室内ユニットの吹き出し口に配置されている風向偏向板を大きく回転させ風向偏向方向への風の向きを変えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された従来の空気調和機の室内ユニットの略断面図を示すものである。図7に示すように、室内ユニット1に熱交換器2が架設され、吸込み口3から送風機4により吸い込まれた空気は熱交換器2を通して熱交換され、吹き出し口7から吹き出される。形状記憶合金で形成された風向偏向板8を変形させることで吹き出し気流を自在に向けたい方向へ向けている。このため風向偏向板が必要な時のみ風を曲げる適度な曲げ形状となるため通風抵抗となって著しい風量低下を招くことなく風向偏向が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−72719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、形状記憶合金に常時電圧印加しなければならないという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、空気調和機の室内ユニットにおいて、電圧を印加することによって反り変形をする高分子シートで風向偏向板の風上側任意長さを構成しその部分の風向偏向時のみ電圧印加することで曲率半径を変え風向偏向板自身が風路を塞ぎ通風抵抗の増加を招くことを防止でき、また常時電圧印加の不要な空気調和機の室内ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の空気調和機の室内ユニットは、電圧を印加することによって反り変形をする高分子シートで風向偏向板の風上側任意長さを構成し、風向偏向板の曲率半径を変えることで風向偏向板の風上側のみを風上に向けることで風向偏向板自身が風路を塞ぎ通風抵抗の増加を招くことを防止可能とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空気調和機の室内ユニットは、風向偏向板自身が風路を塞ぎ通風抵抗の増加を招くことを防止できるため、製品の高性能化による省エネ貢献や製品の小型が実現でき、製品設置可能箇所の拡大などを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における室内ユニットの略断面図
【図2】本発明の実施の形態1における高分子シート可動風向偏向板の構成断面図
【図3】本発明の実施の形態1における高分子シート可動風向偏向板の平面図
【図4】同実施形態の高分子シート可動風向偏向板の動作説明図
【図5】同実施形態のイオン伝導性高分子素子を用いて構成された高分子シート材の断面図
【図6】同実施形態のイオン伝導性高分子素子を用いて構成された高分子シート材の動作説明図
【図7】従来の室内ユニット図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明の空気調和機の室内ユニットは、電圧を印加することによって反り変形をする高分子シートで風向偏向板の風上側任意長さを構成し、高分子シートに電圧を印加し、風向偏向板の曲率半径を変えることで風向偏向板の風上側のみを風上に向けることで風向偏向板自身が風路を塞ぎ通風抵抗の増加を招くことを防止可能とする。
【0011】
第2の発明は、高分子シートが電圧を印加することで反り変形をする性状をもつイオン伝導性高分子素子で構成されたことを特徴とするもので、電圧を印加するだけで反り変形を起すことができ、制御が容易である。
【0012】
第3の発明は、高分子シートが薄板状の弾性樹脂材で被包されていることを特徴とするもので、弾性樹脂材によって高分子シート及びその電極が外部へ露出しないようにして、高分子シートおよび電極の損傷の発生が防止されることで耐久性の向上が可能となる。
【0013】
第4の発明は、可動シートを反り変形させる時のみ高分子シートに電圧が印加される構成であることを特徴とするもので、変形後の保持期間は電圧を印加する必要がなく、常時電圧印加を必要とするような場合に比して消費電力が少なくてすみ、省エネ性に優れた運転が可能である。
【0014】
第5の発明は、機器の運転状態や機器周囲の温湿度条件によって、高分子シートに電圧を印加するタイミングを指令する制御手段を備えたことを特徴とするもので、風向が外れないように高分子シートを制御して、無駄な動作を抑制する。
【0015】
第6の発明は、前記風向偏向板は中空の軸を有し前記中空の軸内を前記可動シートへの電源供給用配線を配置することで風向偏向板の状態に関わらず可動シートへの電圧供給を可能としている。
【0016】
以下、本発明の各実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における空気調和機の室内ユニットの略断面図を示したものである。図1において、室内ユニット1内に配置された熱交換器2と送風機4によって、室内に冷媒のエネルギーを供給する。吹き出し口7の中に電圧を印加することによって風上側任意長さのみが下方へ変形する高分子シート可動風向偏向板8‘を配置した構成となっている。
【0018】
ここで、高分子シート可動風向偏向板8‘について詳細に説明する。図2は高分子シート可動風向偏向板8‘の構成断面図、図3は高分子シート可動風向偏向板8‘の平面図、図4は高分子シート可動風向偏向板8‘の動作説明図、図5は可動シートの断面模式図、図6はイオン伝導性高分子素子による高分子シートの動作を説明する断面図である。図5において、高分子シート可動風向偏向板8‘は、電圧の印加によって反り変形を発生する
高分子シート11を複数枚積層し、且つ、これを弾性樹脂材18で被包することによって形成される。この高分子シート11は図6(b)に示すように、水分を含むイオン伝導性高分子素子12の両面にそれぞれ電極13(a),(b)を配置して構成された板状部材であって、電極13(a)と電極13(b)とを、極性切り替えスイッチ14を介して直流電源15に接続し、極性切り替えスイッチ14の切り替え操作によって、電極13(a),(b)の極性を適宣変更することで図6(a),(c)に示すように反対方向に反り変形を生じるものである。
【0019】
具体的には、図6(a)に示す様に、電極13(a)を「陽極」に、電極13(b)を「陰極」に設定すると、イオン伝導性高分子素子12内の「陽イオン16」が水を伴って「陰極」側へ移動し、含水量が「陰極」側に偏在し、「陰極」側と「陽極」側との間に膨潤差が生じて高分子シート11が「陰極」側、即ち、電極13(b)側へ凸状に反り変形するものである。逆に図6(c)に示すように電極13(a)を「陰極」に、電極13(b)を「陽極」に設定すると、「陰極」である電極13(a)側へ凸状に反り変形するものである。この様に電圧印加の極性を変更することで高分子シート11を反り変形させることができるものである。
【0020】
尚、イオン伝導性高分子素子12には、電圧印加によって反り変形させた後、電圧印加をなくしても、電圧印加停止前の反り変形状態をそのまま維持するという性状をもっている。したがって、このイオン伝導性高分子素子12はこれを反り変形させる時にのみ電圧印加を行えば良いものである。元通りに戻すには両電極13(a),(b)を短絡すれば良い。
【0021】
上記の構成とすることで、機器の運転状態や室内の空気状態に応じて、高分子シート可動風向偏向板8‘の高分子シート11に電圧を印加し、反り変形を発生させることで、高分子シート可動風向偏向板8‘の風上側のみを風上に向けることで風向偏向板自身が風路を塞ぎ通風抵抗の増加を招くことを防止できるため、風量増加による高性能化を実現させることができる。また、小型化による製品のダウンサイジングが実現でき、製品設置可能箇所の拡大などを図ることができる。また常時電圧印加が不要であるため省エネに貢献出来る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように、本発明にかかる空気調和機の室内ユニットは、風向偏向板の風上側のみを風上に向けることにより風向偏向板が通風抵抗とならず大風量化が実現出来、高性能化できるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 室内ユニット
2 熱交換器
4 送風機
5 ドレンパン
7 吹き出し口
8 風向偏向板
8‘ 高分子シート可動風向偏向板
10 制御手段
11 高分子シート
13a、b 電極
18 弾性樹脂材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の室内ユニット本体と、このユニット本体内に収容される熱交換器及び送風ファンと、前記熱交換器で発生する凝縮水を貯留するドレンパンを備えた空気調和機において、前記室内ユニットの吹き出しに配置され両端の軸により回転移動しその風上の任意長さ部分が電圧を印加することによって反り変形をする高分子シートで構成しそれ以外の部分を風上から風下に向けて略直線で形成し風向偏向時に前記風向偏向板の風上部の曲率半径を小さく出来る構成とした風向偏向板を有することを特徴とする空気調和機の室内ユニット。
【請求項2】
前記高分子シートは、電圧を印加することで反り変形をする性状をもつイオン伝導性高分子素子で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項3】
前記高分子シートは、薄板状の弾性樹脂材で被包されていることを特徴とする請求項1から2のうちいずれか一項に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項4】
前記可動シートを反り変形させる時のみ前記高分子シートに電圧が印加される構成であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項5】
機器の運転状態や機器周囲の温湿度条件によって、前記高分子シートに電圧を印加するタイミングを指令する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項6】
前記風向偏向板は中空の軸を有し前記中空の軸内を前記可動シートへの電源供給用配線を配置したことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の空気調和機の室内ユニット。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−19624(P2013−19624A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154540(P2011−154540)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】