説明

空気調和機及び既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法

【課題】空気調和機の信頼性を損なうことなく、既設冷媒配管を有効に再利用する。
【解決手段】空気調和機1を、圧縮機7、四方弁8及び室外熱交換器9を備えた室外機2と、室内膨張弁13及び室内熱交換器14を備えた室内機3と、これらを接続する液冷媒配管4及びガス冷媒配管5で構成し、室外機2と液冷媒配管4及びガス冷媒配管5とのそれぞれの接続口に、冷媒と共に冷凍サイクルを循環する固形異物を捕捉するストレーナ18、19を設ける。圧縮機7の軸受の最小隙間は1〜20μmであり、ストレーナ18、19は、その最小隙間以上の固形異物を捕捉可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機及び既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への対応などにより、冷媒としてCFC系冷媒又はHCFC系冷媒などを使用し、冷凍機油として鉱油などを使用する従来の空気調和機(以下、旧機という)から、HFC系冷媒と、HFC系冷媒用の冷凍機油を使用する新しい空気調和機(以下、新機という)へ交換する需要が高まっている。この交換の際、旧機の室内機と室外機とを接続していた既設の冷媒配管を再利用することがおこなわれている。
【0003】
ここで、既設冷媒配管内には、旧機に搭載された圧縮機の摺動部の摩耗によって生じた多量の摩耗粉起因の固形異物が残留している。このような固形異物に対して何も対策を施さず既設冷媒配管を再利用すると、固形異物が新機に搭載した圧縮機に侵入して圧縮機の摺動部の摩耗を促進し、空気調和機の信頼性を著しく損なうおそれがある。
【0004】
特許文献1には、空調設備の冷媒配管に、綾畳織により形成された金属体からなる網を有するフィルタを設置することが記載されている。これによれば、空調設備に悪影響を及ぼす微細な異物を確実に捕捉することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−224513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載の技術は、フィルタを空気調和機の冷媒配管に設けることは記載されているが、その具体的な設置態様については記載されていない。例えば、室内機と室外機とを接続する液冷媒配管又はガス冷媒配管にフィルタを設置して、冷媒と共に循環する固形異物を捕捉することで、圧縮機を保護することが考えられる。しかしながら、空気調和機は冷房運転と暖房運転で冷媒循環の向きが逆転するため、いったん捕捉された固形異物は、冷媒が逆流するとフィルタから分離して圧縮機内に侵入するおそれがある。
【0007】
本発明は、空気調和機の信頼性を損なうことなく、既設冷媒配管を有効に再利用することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1態様である空気調和機は、圧縮機、四方弁及び室外熱交換器を備えた室外機と、室内膨張弁及び室内熱交換器を備えた室内機とを、液冷媒配管及びガス冷媒配管で接続して冷凍サイクルを形成し、室外機と液冷媒配管及びガス冷媒配管とのそれぞれの接続口に、冷媒と共に冷凍サイクルを循環する固形異物を捕捉するストレーナが設けられ、圧縮機の軸受の最小隙間は1〜20μmであり、各ストレーナは、最小隙間以上の固形異物を捕捉可能に構成されることを特徴とする。
【0009】
すなわち、液冷媒配管及びガス冷媒配管のそれぞれに、固形異物を捕捉するストレーナを設けているので、液冷媒配管及びガス冷媒配管に残留している固形異物は、冷房運転のときはガス冷媒配管側のストレーナに捕捉され、暖房運転のときは液冷媒配管側のストレーナに捕捉される。したがって、冷媒循環の向きが切り替わったとしても、圧縮機に固形異物が侵入することを抑制することができる。また、各ストレーナは、室外機と各冷媒配管とのそれぞれの接続口に設けられているので、液冷媒配管及びガス冷媒配管に残留している固形異物は確実に各ストレーナに捕捉され、圧縮機に侵入するおそれがない。その結果、空気調和機の信頼性を損なうことなく、既設冷媒配管を有効に再利用することができる。
【0010】
この場合において、室外機とガス冷媒配管との接続口に設けられたストレーナは、多孔質金属、金属製不織布及びポリエステル製不織布のうちの少なくとも1つの材質で形成されたスクリーンを有してなることが望ましい。
【0011】
これらの材質で形成されたスクリーンは、微細な粒子の捕捉能力が高いため、粒径の小さな固形異物を捕捉することができる。したがって、より一層圧縮機に固形異物が侵入することを抑制することができる。
【0012】
また、各ストレーナ内には、磁石を配置することが望ましく、特に室外機とガス冷媒配管との接続口に設けられたストレーナ内には、ネオジウム磁石を配置することが望ましい。
【0013】
既設配管に残留する固形異物は、主に冷媒圧縮機の摺動部での摩耗粉であることから、磁石に吸着する鉄分の比率が多い。したがって、各ストレーナ内に磁石を配置することにより、固形異物の一部を磁石に吸着し、各ストレーナ内に配置したスクリーンでの固形異物捕捉量を低減することができる。その結果、スクリーンでの目詰まりを抑制し、圧縮機への固形異物の侵入を抑制することができる。また、ガス冷媒配管に取付けたストレーナは冷房運転時には低温となる。そのため、このストレーナ内に配置する磁石として、低温時でも減磁の起き難いネオジウム磁石を使用することが有効となる。
【0014】
また、室外機と液冷媒配管との接続口に設けられたストレーナは、圧縮機用の冷凍機油が初期封入されてなることが望ましい。
【0015】
これは、既設冷媒配管の内部には、固形異物の他に、旧機に封入されていた冷凍機油(鉱油、アルキルベンゼンなど)、冷凍機油の酸化劣化反応物、塩素系化合物などの汚染物質(以下、不純物という)が残留している場合があり、この不純物が新機に使用される冷凍機油を劣化させ、空気調和機の信頼性が損なわれる原因となるからである。
【0016】
すなわち、通常の空気調和機の室外機には予め冷凍機油が封入されているが、それとは別に、さらに室外機と液冷媒配管との接続口に設けられたストレーナに、圧縮機用の冷凍機油を初期封入している。これによれば、初期運転時に冷媒が循環すると、ストレーナに封入された冷凍機油が液冷媒に序々に溶け込みながら冷凍サイクルを循環し、新機に使用される冷凍機油に対する既設冷媒配管内に残留した不純物の割合を許容値以下にできる。したがって、既設冷媒配管を有効に再利用しつつ、新機内の冷凍機油の劣化を防止でき、空気調和機の信頼性を維持することができる。
【0017】
これは、空気調和機の施工時に追加分の冷凍機油を冷凍サイクル内に封入する場合には、コンタミの混入防止のために専用のホースなどが必要であり、かつ冷凍機油封入作業の追加による施工時間が長くなるが、これに比べて、施工時の封入作業を省けるので施工負担の軽減に有効である。また、室外機内などに予め追加分の冷凍機油を封入しておく場合は、追加分の冷凍機油を封入する室外機を、追加封入しない室外機とは別に開発、製造する必要があるので、これに比べて開発、製造負担を軽減できる。
【0018】
また、各ストレーナは、室外機の筐体内に設けられてなることが望ましい。これは、各ストレーナが室外機の筐体外に設けられるならば、ストレーナに結露が発生するのを防止するためにストレーナ自体に断熱材などを施す必要が生じ、部材のコスト、製造コストが増大するためである。つまり、室外機の筐体内であれば、仮に結露が生じて滴下したとしても問題とはならないため、断熱材などは必要なく、部材のコスト、製造コストを抑制することができる。
【0019】
本発明の第2態様は、旧室外機と旧室内機とを接続する既設液冷媒配管及び既設ガス冷媒配管を再利用して、新室外機と新室内機とを接続する空気調和機の施工方法において、新室外機と、既設液冷媒配管及び既設ガス冷媒配管とのそれぞれを、冷媒と共に冷凍サイクルを循環する固形異物を捕捉するストレーナを介して接続し、圧縮機の軸受の最小隙間は1〜20μmであり、各ストレーナは最小隙間以上の固形異物を捕捉可能に構成されることを特徴とする。
【0020】
これによれば、新室外機と、既設液冷媒配管及び既設ガス冷媒配管とのそれぞれを、冷媒と共に冷凍サイクルを循環する固形異物を捕捉するストレーナを介して接続しているので、上記の本発明の第1態様と同様に、冷媒循環の向きが切り替わったとしても、室外機内の圧縮機に固形異物が侵入することを抑制することができる。その結果、空気調和機の信頼性を損なうことなく、既設冷媒配管を有効に再利用することができる。
【0021】
この場合において、室外機とガス冷媒配管との接続口に設けられたストレーナは、多孔質金属、金属製不織布及びポリエステル製不織布のうちの少なくとも1つの材質で形成されたスクリーンを有してなることが望ましく、また、新室外機と既設液冷媒配管とを接続するストレーナは、施工前に予め新室外機の圧縮機用の冷凍機油が封入されてなることが望ましい。
【0022】
これによれば、粒径の小さな固形異物を捕捉できるので、より一層圧縮機に固形異物が侵入することを抑制することができ、また、新機内の冷凍機油に対する既設冷媒配管内に残留した不純物の割合を許容値以下にして、新機内の冷凍機油の劣化を防止することができる。その結果、空気調和機の信頼性を損なうことなく、既設冷媒配管を有効に再利用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、空気調和機の信頼性を損なうことなく、既設冷媒配管を有効に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の空気調和機の全体構成を示す図である。
【図2】ストレーナの構成を示す図である。
【図3】ストレーナの他の構成を示す図である。
【図4】室外機内にストレーナを取付けた場合の外観図である。
【図5】液冷媒配管側に接続するストレーナを説明する図である。
【図6】ストレーナの交換方法について説明する図である。
【図7】本発明の空気調和機の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用してなる空気調和機及び既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法の実施形態について図1〜図7を用いて説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0026】
図1は、本発明の空気調和機の全体構成を示す図である。空気調和機1は、室外機2と、室内機3と、これらを接続する液冷媒配管4及びガス冷媒配管5で構成されている。室外機2は、圧縮機7と、四方弁8と、室外熱交換器9と、室外膨張弁10と、レシーバ11と、液阻止弁16と、ガス阻止弁17などで構成されており、室内機3は、室内膨張弁13と、室内熱交換器14などで構成されている。
【0027】
圧縮機7の吸引口と吐出口は、四方弁8を介して室外熱交換器9又はガス阻止弁17に互いに逆に切替え接続可能に形成されている。また、室外熱交換器9の他端は、室外膨張弁10とレシーバ11を介して液阻止弁16に接続されている。液阻止弁16及びガス阻止弁17は、それぞれストレーナ18、19を介して液冷媒配管4及びガス冷媒配管5の一端に接続されており、液冷媒配管4の他端は室内膨張弁13に、ガス冷媒配管5の他端は室内熱交換器14にそれぞれ接続されている。
【0028】
ストレーナ18、19は、図2に示すように、円筒状の耐圧容器20の内部に、円筒状のスクリーン23が設けられており、スクリーン23の一方は封止キャップ21で封止され、もう一方は中央部が開口した導入キャップ22が接続されている。
【0029】
ここで、文献「“潤滑”、第17巻、第11号(1972)741〜746」には冷媒圧縮機にも採用しているすべり軸受での最小隙間は1〜20μmであり、文献「“トライボロジーと環境”、新樹社、53ページ、図2・2・3・7(b)」には固形異物の粒径と軸受の最小隙間とが等しくなる条件にて、最も摺動部の摩耗が促進されるとの記載がある。このような記載から、スクリーン23は、1μm以上の固形異物を捕捉可能なものを使用するのが好ましく、具体的には、多孔質金属、金属製不織布、ポリエステル製不織布などの少なくとも1つで形成されている。
【0030】
また、封止キャップ21とスクリーン23との接続、及び導入キャップ22とスクリーン23との接続は、円周方向全てをかしめることにより実現されている。これにより、封止キャップ21及び導入キャップ22とスクリーン23との接続部からの固形異物の流入出を防止している。さらに、耐圧容器20の内面と導入キャップ22の接続についても、円周方向をかしめる、あるいは円周方向を全て溶接することで実現されており、固形異物の流入出を防止している。耐圧容器20の一端には、配管26及びフレアナット27が設けられており、他端には、配管28及びフレアユニオン29が設けられている。
【0031】
なお、冷媒及び冷凍機油からの流体力に耐えるべく、スクリーン23の内周及び外周をパンチングメタルなどの強度の高い部材で補強しても良い。
【0032】
次に、空気調和機1の動作及びストレーナ18、19での固形異物の捕捉について説明する。空気調和機1を冷房運転すると、冷媒は図1の実線の矢印方向に循環する。この冷媒の循環に伴い液冷媒配管4、ガス冷媒配管5内に残留している固形異物は循環する。この時、ガス冷媒配管5側に設けられたストレーナ19のスクリーン23には、図2の実線の矢印で示す方向に固形異物が流れ、スクリーン23の開孔部よりも粒径が大きい固形異物は、スクリーン23の内面に捕捉される。また、冷媒及び冷媒に溶け込んだ冷凍機油はスクリーン23の開孔部を通り、配管26側から流出する。
【0033】
暖房運転時には、四方弁8の接続が点線で示す方向に切り替わり、冷媒、冷凍機油及び固形異物は、図1の点線の矢印で示す方向に循環する。この時、ストレーナ19のスクリーン23には、図2の点線の矢印で示す方向に冷媒及び冷凍機油が流れるので、スクリーン23内面にいったん捕捉された固形異物は、冷媒及び冷凍機油の流体力により配管28側からストレーナ19の外に流出する可能性がある。しかし、液冷媒配管4側に設けられたストレーナ18においては、図2で示した配管28側のフレアユニオン29と液冷媒配管4とが接続され、配管26側のフレアナット27と液阻止弁16とが接続されており、固形異物はストレーナ18のスクリーン23によって捕捉される。
【0034】
このように、液冷媒配管4及びガス冷媒配管5のそれぞれに、固形異物を捕捉するストレーナ18、19を設けているので、液冷媒配管4及びガス冷媒配管5に残留している固形異物は、冷房運転のときはガス冷媒配管5側のストレーナ19に捕捉され、暖房運転のときは液冷媒配管4側のストレーナ18に捕捉される。したがって、空気調和機1が冷房運転と暖房運転を切替えて、冷媒の循環方法が切り替わったとしても、圧縮機7に固形異物が侵入することを抑制することができる。また、各ストレーナ18、19は、室外機2と各冷媒配管4、5とのそれぞれの接続口に設けられているので、液冷媒配管4及びガス冷媒配管5に残留している固形異物は確実に各ストレーナ18、19に捕捉され、圧縮機に侵入するおそれがない。
【0035】
なお、スクリーン23に捕捉されない程の微細な固形異物は圧縮機7に侵入してしまうが、文献「“トライボロジーと環境”、新樹社、53ページ、図2・2・3・7(c)」の記載によれば、軸受摺動部に供給する異物量が増加するほど、軸受部の摩耗量は増加する。このことから圧縮機7の仕様として固形異物の侵入量の許容値が設定されており、固形異物侵入量が許容値以下であれば、液冷媒配管4、ガス冷媒配管5内に残留する固形異物の一部はスクリーン23を通過し、圧縮機7に流入しても問題ない。つまり、ストレーナ18、19に採用するスクリーン23の捕捉率は100%でなくてもよい。
【0036】
ここで、ストレーナ18、19は、図3に示すように、スクリーン23の一端を封止する封止キャップ21のスクリーン23側の略中央部に磁石30を配置して構成してもよい。
【0037】
すなわち、既設配管に残留する固形異物は、主に冷媒圧縮機の摺動部での摩耗粉であることから、磁石に吸着する鉄分の比率が多い。そのため、ストレーナ18、19内に磁石30を配置し、固形異物の一部を磁石に吸着することで、ストレーナ18、19内に配置したスクリーン23での固形異物捕捉量を低減することができ、スクリーン23での目詰まりを抑制することができる。
【0038】
この場合、スクリーン23の材質を、磁石30に吸着しないSUS製不織布あるいはポリエステル製不織布とすることで、スクリーン23への鉄分の吸着を抑制することができるので、より多くの鉄分を磁石30に吸着することができ、スクリーン23での目詰まりを抑制することができる。
【0039】
また、ガス冷媒配管5側に取付けたストレーナ19は冷房運転時には低温となる。そのため、ストレーナ19内に配置する磁石30として、低温時でも減磁の起き難いネオジウム磁石を使用することが有効である。
【0040】
次に、既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法について説明する。CFC系冷媒やHCFC系冷媒を使った従来の空気調和装置が老朽化した場合、まず、旧室外機と旧室内機を液冷媒配管4、ガス冷媒配管5から取り外すために、CFC系冷媒又はHCFC系冷媒を冷媒回収装置にて回収する。冷媒を回収し、旧室外機と旧室内機を取り外した後、図4に示すように、室外機2の筐体31の内部で、液阻止弁16と液冷媒配管4とをストレーナ18を介して接続し、ガス阻止弁17とガス冷媒配管5とをストレーナ19を介して接続する。この時、各ストレーナ18、19と各阻止弁16、17は直接フレア接続され、各ストレーナ18、19と各冷媒配管4、5も直接フレア接続される。
【0041】
このように、各ストレーナ16、17は室外機の筐体31内に配置されているため、各ストレーナが室外機の筐体外に設けられる場合に比べて、ストレーナに結露が発生するのを防止するための断熱材などを施す必要がなく、部材のコスト、製造コストを抑制することができる。
【0042】
また、液冷媒配管4側に接続するストレーナ18には、図5に示すように配管28に開閉弁33が取り付けられ、配管26はキャップ34にて封止され、かつ室外機2に搭載した圧縮機7用の冷凍機油35を予め封入したものを使用する。施工時はフレアユニオン29を液冷媒配管4に接続した後、開閉弁33を開放し耐圧容器20内の冷凍機油35を液冷媒配管4内に導入する。
【0043】
ストレーナ18に予め封入する冷凍機油35の量は、液冷媒配管4及びガス冷媒配管5内に残留した不純物による劣化を抑制できる程度、つまり、室外機2内に予め封入された図示しない冷凍機油とストレーナ18に予め封入された冷凍機油35との全体に対する不純物の割合(不純物濃度)が許容値以下になる程度であればよい。
【0044】
ストレーナ18内に予め封入された冷凍機油35は、初期運転開始時に、新たな冷媒として封入されたHFC冷媒などの液冷媒に序々に溶解し速やかにストレーナ18外に排出される。これにより、冷凍サイクル全体の冷凍機油に対する不純物の割合は許容値以下となるので、冷凍機油の劣化を抑制することができ、その結果、空気調和機の信頼性を維持することができる。
【0045】
また、空気調和機の施工時に追加分の冷凍機油を冷凍サイクル内に封入する場合に比べて、冷凍機油封入に用いるコンタミの混入防止の専用ホースなどが不要であり、かつ冷凍機油封入作業の追加による施工時間が短くなるので、施工負担の軽減に有効である。また、室外機内などに予め追加分の冷凍機油を封入しておく場合は、追加分の冷凍機油を封入する室外機を、追加封入しない室外機とは別に開発、製造する必要があるので、これに比べて開発、製造負担を軽減できる。
【0046】
なお、ストレーナ18内への冷凍機油の封入は、施工現場に搬入する以前に実施し、望ましくはストレーナ18の工場出荷前に実施すると良い。冷凍機油35を耐圧容器20内に封入する際は、まず配管26をキャップ34にて封止した後、開閉弁33を開け耐圧容器20内を真空引きする。その後フレアユニオン29側から冷凍機油35を封入する。最後に耐圧容器20内に不活性ガス(例えば窒素ガス)を封入し、耐圧容器20内の圧力を大気圧以上に設定した後、開閉弁33を閉止すればよい。キャップ34の代わりに開閉弁33を取付けてもよい。
【0047】
このように、開閉弁33を用いることで、施工時に耐圧容器20内の冷凍機油35が液冷媒配管4の外部に流出することを防止できるので、施工性を向上することができる。
【0048】
なお、ストレーナ18のスクリーン23の材質として、ポリエステル製不織布を採用することによって、必要な量の冷凍機油が不織布繊維間に保持される場合は、冷凍機油の流出防止用の開閉弁33、キャップ34などを用いなくてもよい。
【0049】
次に、図6を用いてストレーナ18、19の交換方法について説明する。ストレーナ18、19のスクリーン23は各冷媒配管4、5内に残留する固形異物量を配管長などから想定して、その量に見合った適当なものを使用するが、例えばストレーナ18、19を取付ける際に各冷媒配管4、5内に異物が誤って混入する可能性がある。また、残留する固形異物量が想定より多量であることも起こり得る。このとき各冷媒配管4、5内の固形異物量は当初想定していた量よりも多くなるので、スクリーン23は閉塞する、あるいは著しくスクリーン23での圧力損失が増大する。すると、圧縮機7の吸入圧力が著しく低下し、能力不足及び圧縮機7の温度上昇を引き起こすなど、空気調和機の性能及び信頼性が著しく低下する可能性がある。
【0050】
そこで、室外機2と各冷媒配管4、5との間に、ストレーナ18、19と開閉弁40、41とを内蔵した異物捕捉キット42、43を取付け、さらにストレーナ18、19をフレア接続とすることで、異物捕捉キット42、43からストレーナ18、19を取り外し可能な構成とする。
【0051】
ストレーナ18、19を交換する際は、まず各阻止弁16、17及び開閉弁40、41を閉止し、チェックジョイント44、45から冷媒回収装置にて各阻止弁16、17と開閉弁40、41との間の冷媒を回収した後、ストレーナ18、19を取り外す。そして、新品のストレーナ又は取り外したストレーナから異物を取り除いたものを異物捕捉キット42、43内に取付け、チェックジョイント44、45から真空引きを実施した後、各阻止弁16、17及び開閉弁40、41を開けばよい。
【0052】
これにより、仮に各ストレーナ18、19のスクリーン23に多量の固形異物が捕捉されて、閉塞、あるいは圧力損失がしたとしても、容易にストレーナを交換することができる。
【0053】
本発明の空気調和機は、各冷媒配管4、5に残留している固形異物が主に圧縮機7に侵入するのを抑制することを目的としているため、各ストレーナ18、19の設置態様は図1で示したようになるが、これには限られず以下のような設置態様としてもよい。図7に示すように、ストレーナ18、19の他にストレーナ48、49を室内機3の接続口近傍に設けている。言い換えれば、液冷媒配管4と、室内機3の室内膨張弁13側の接続口とをストレーナ48を介して接続し、ガス冷媒配管5と、室内機3の室内熱交換器14側の接続口とをストレーナ49を介して接続している。
【0054】
これにより、各冷媒配管4、5内に残留した固形異物が室内機3内に侵入することを抑制することができる。その結果、室内機3の構成部品である室内熱交換器14の冷媒分配用キャピラリや室内膨張弁13の流路内径が固形異物の粒径に対して十分大きくない場合であっても、室内機3内で詰まりが生じることを防止することができる。
【0055】
以上、本発明の空気調和機及び既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法の実施形態について説明してきたが、上述の説明では主にHCFC冷媒を使用した旧機からHFC冷媒を使用した新機へのリニューアルについて記載している。しかし、本発明は、HCFC冷媒を使用した旧機からHCFC冷媒を使用した新機、あるいはHFC冷媒を使用した旧機からHFC冷媒を使用した新機へのリニューアルなど、使用する冷媒の種類には限定されず適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 空気調和機
2 室外機
3 室内機
4 液冷媒配管
5 ガス冷媒配管
7 圧縮機
8 四方弁
9 室外熱交換器
13 室内膨張弁
14 室内熱交換器
18、19 ストレーナ
23 スクリーン
30 磁石
31 室外機の筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方弁及び室外熱交換器を備えた室外機と、室内膨張弁及び室内熱交換器を備えた室内機とを、液冷媒配管及びガス冷媒配管で接続して冷凍サイクルを形成してなる空気調和機において、
前記室外機と前記液冷媒配管及び前記ガス冷媒配管とのそれぞれの接続口に、冷媒と共に前記冷凍サイクルを循環する固形異物を捕捉するストレーナが設けられ、
前記圧縮機の軸受の最小隙間は1〜20μmであり、前記各ストレーナは、該最小隙間以上の固形異物を捕捉可能に構成されることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記室外機と前記ガス冷媒配管との接続口に設けられたストレーナは、多孔質金属、金属製不織布及びポリエステル製不織布のうちの少なくとも1つの材質で形成されたスクリーンを有することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記各ストレーナ内に磁石が配置されてなることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記室外機と前記ガス冷媒配管との接続口に設けられた前記ストレーナ内に配置される磁石は、ネオジウム磁石であることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記室外機と前記液冷媒配管との接続口に設けられた前記ストレーナは、前記圧縮機用の冷凍機油が初期封入されてなることを特徴とする請求項1乃至4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記各ストレーナは、前記室外機の筐体内に設けられてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項7】
旧室外機と旧室内機とを接続する既設液冷媒配管及び既設ガス冷媒配管を再利用して、新室外機と新室内機とを接続する空気調和機の施工方法において、
前記新室外機と、前記既設液冷媒配管及び既設ガス冷媒配管とのそれぞれを、冷媒と共に冷凍サイクルを循環する固形異物を捕捉するストレーナを介して接続し、
前記圧縮機の軸受の最小隙間は1〜20μmであり、前記各ストレーナは該最小隙間以上の固形異物を捕捉可能に構成されることを特徴とする既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法。
【請求項8】
前記室外機と前記ガス冷媒配管との接続口に設けられたストレーナは、多孔質金属、金属製不織布及びポリエステル製不織布のうちの少なくとも1つの材質で形成されたスクリーンを有することを特徴とする請求項7に記載の既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法。
【請求項9】
前記各ストレーナ内に磁石が配置されてなることを特徴とする請求項8に記載の既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法。
【請求項10】
前記室外機と前記ガス冷媒配管との接続口に設けられた前記ストレーナ内に配置される磁石は、ネオジウム磁石であることを特徴とする請求項9に記載の既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法。
【請求項11】
前記新室外機と前記既設液冷媒配管とを接続する前記ストレーナは、施工前に予め前記新室外機の圧縮機用の冷凍機油が封入されてなることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の既設冷媒配管を再利用した空気調和機の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17974(P2012−17974A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186162(P2011−186162)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【分割の表示】特願2006−203088(P2006−203088)の分割
【原出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】