説明

空気調和機

【課題】 空気調和機に備えた冷風・除湿の切換機能の操作性の向上を図るための構造に関する。
【解決手段】 枠体1内に圧縮機2とコンデンサ3とエバポレータ4とで構成する冷凍サイクルを備え、冷風ファン5aのファンケース5bには温風ファン3aの空気取入口9に連通するバイパス流路10を取り付け、冷風の吹出方向を冷風吹出口8とバイパス流路10との間で切換える送風経路切換手段を設け、ドレンパン6にはドレン水をドレンタンク7に誘導する下部排水路6aとコンデンサ3に誘導する上部排水路6bとを設け、ドレン水の排水方向を下部排水路6aと上部排水路6bとの間で切換える排水経路切換手段を備える。送風経路切換手段と排水経路切換手段は1個の操作手段14によって駆動可能に設け、バイパス流路10側を選択時は下部排水路6aに切換わり、冷風吹出口8を選択時は下部排水路6aと上部排水路6bとを任意に選択可能となるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷凍サイクルを備えた一体型の空気調和機に、冷風専用機の機能と除湿専用機の機能を持たせた構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
枠体内に圧縮機とコンデンサと減圧器とエバポレータとを備えて冷凍サイクルを構成し、冷風ファンによってエバポレータを通過して冷却された空気を冷風吹出口から吹出し、温風ファンによってコンデンサを通過して加熱された空気を温風吹出口から吹出す構成の冷風機が知られている。
【0003】
冷風機は冷凍サイクルとして存在している除湿機能を利用して、除湿機としても使われているが、除湿機に比べると除湿能力が低いため、従来では本格的な除湿機としての使用には向かないものであった。このため最近では冷風機を本格的な除湿機としても利用したい要望があり、冷風ファンの吐出口と温風ファンの空気取入口とを連通するバイパス流路を備え、冷風の吹出方向を切換えできる構造にして、除湿機として使用するときはエバポレータを通過した冷風をコンデンサに送ることでコンデンサの冷却を補助して冷凍サイクルの効率を向上し、専用の除湿機に匹敵する除湿能力を得ることができた。
【0004】
また、冷風機はコンデンサの冷媒の冷却効率が高いほど冷風能力が向上することから、エバポレータで発生するドレン水をコンデンサに散水して、ドレン水によってコンデンサを冷却することで冷媒の冷却効率を高めており、この機能はコンデンサの熱によってドレン水が蒸発するのでドレン水の少量化が可能であるが、この場合は除湿機能が犠牲となるから室内の除湿を行ないたいときには向かないものである。このため、枠体内のドレンパンにコンデンサとドレンタンクにのぞむ2つの排水路を備え、ドレン水の排水経路をコンデンサ側とドレンタンク側との間で任意に変更できる構造を備え、除湿冷風運転と冷風のみの運転の切換ができるようにしたものがある。
【特許文献1】特願2004−22938号
【特許文献2】特願2004−22939号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
枠体内に上記2つの機能を備えることで冷風機と除湿機の兼用機が実現できるが、この2つの機能を兼用するにあたり、冷風の吹出方向を切換える操作手段と、ドレン水の排水路を切換える操作手段とを各々備えた構成にすると、除湿運転を選択しているときにコンデンサ側の排水路を選択する可能性があり、エバポレータで除湿された水分がコンデンサで蒸発してしまうため、除湿能力が低下して専用の除湿機としての機能が発揮できなくなる問題がある。
【0006】
このため、冷風の吹出方向を切換える操作手段と、ドレン水の排水路を切換える操作手段とを連動させ、除湿運転中はドレン水の排水路の操作手段を強制的にドレンタンク側に位置させ、一方、コンデンサ側の排水路を選択したときは強制的に冷風運転に切換える構成にして、誤使用を防止する必要がある。しかしながら、これらの操作を2個の操作手段で行う構成では、運転の切換え操作が複雑になり、運転状態がわかりにくくなるという欠点があった。
【0007】
また、運転の切換えを確実に行なうために操作手段を確実に切換え位置で保持する構成となっているため、操作手段を操作するときには大きな操作力が必要となっており、特に一方の操作手段を操作するときに同時に他方の操作手段を駆動するときには、大きな力が必要となるものであり、操作性の面においても課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記の課題を解決するもので、空気調和機の枠体1内には、冷媒を圧縮する圧縮機2と、高温のガス状冷媒が送られるコンデンサ3と、液化した冷媒が減圧器4を介して送られるエバポレータ5とを設け、エバポレータ5で気化した冷媒が圧縮機2に戻される冷凍サイクルを構成し、前記コンデンサ3に送風する温風ファン3aと、前記エバポレータ5に送風する冷風ファン5aとを設けると共に、前記エバポレータ5の下方にドレンパン6を配置し、該ドレンパン6の下方に前記コンデンサ3とドレンタンク7とを配置した空気調和機において、前記枠体1に設けた冷風吹出口8に接続する冷風ファン5aのファンケース5bには、温風ファン3aの空気取入口9に連通するバイパス流路10を取り付け、ファンケース5bとバイパス流路10との接続口11には、冷風の吹出方向を冷風吹出口8とバイパス流路10との間で変更する送風経路切換手段を設けると共に、前記ドレンパン6には、エバポレータ5で発生したドレン水をドレンタンク7に誘導する下部排水路6aと、コンデンサ3に誘導する上部排水路6bと、ドレン水の排水方向を下部排水路6aと上部排水路6bとの間で変更する排水経路切換手段とを設け、送風経路切換手段と排水経路切換手段は前記枠体1の側面に設けた操作手段14に取り付け、この1個の操作手段14によって駆動する送風経路切換手段と排水経路切換手段は、送風経路切換手段が接続口11を開口時は排水経路切換手段が下部排水路6aを選択し、送風経路切換手段が接続口11を閉止時は排水経路切換手段によって下部排水路6aと上部排水路6bとを任意に選択可能となるように配置したことを特徴とするものである。
【0009】
また、接続口11は前記冷風ファン5aのファンケース5bの側面に配置し、前記操作手段14によって駆動して接続口11を開閉する閉止板12と、接続口11の開閉を検出する開閉スイッチ15と、開閉スイッチ15の信号によって前記冷風吹出口8を開閉する開閉手段13とを設け、閉止板12が接続口11を開口時に開閉手段13が冷風吹出口8を閉止し、接続口11を閉止時に開閉手段13が冷風吹出口8を開口すると共に、前記ドレンパン6には下部排水路6aと上部排水路6bとの間を連通する連通孔6cを設け、前記閉止手段12の可動端には連通孔6cを開閉する開閉弁12aを設け、閉止板12が接続口11を開口時に開閉弁12aが連通孔6cを開口して下部排水路6aを選択し、接続口11を閉止時には開閉弁12aが連通孔6cを開口する第1の閉止位置と連通孔6cを閉止する第2の閉止位置との間で駆動して、下部排水路6aと上部排水路6bとを切換え可能となっており、操作手段14によって閉止板12の開閉操作のみを行うことで運転の切換えが可能であり、操作手段14の操作性が向上できるものなった。
【0010】
また、冷風吹出口8には可動自在にルーバー16を取り付け、該ルーバー16は冷風吹出口8を開閉可能に設けて前記開閉手段13を構成し、前記接続口11の開口時はルーバー16によって冷風吹出口8を閉止するものであり、ルーバー16が開閉手段13を兼用することができる。
【0011】
また、接続口11はファンケース5bの側面下部に配置し、前記バイパス流路10は枠体1とファンケース5bとの間の空間に形成すると共に、前記閉止板12は空間内に横方向にスライド可能に取り付けたものであり、枠体1とファンケース5bの側面下部との間のスペースを利用して効率よく部品の配置ができるものである。
【0012】
また、枠体1の底面にはキャスター19を備えており、少なくとも操作手段14を配置した側のキャスター19の回転方向を操作手段14の駆動方向とは異なる向きに配置したから、操作手段14を横方向にスライド操作する構成でも、操作手段14の操作時に製品が簡単に移動することはない。
【発明の効果】
【0013】
この発明の空気調和機は、通常の冷風運転ではエバポレータ5を通過した冷風は冷風吹出口8から吹出しているが、このエバポレータ5を通過した冷風をコンデンサ3に送ることによって本格的な除湿機として使用できると共に、冷風機として使用するときにおいて、通常ドレンタンク7に送るドレン水をコンデンサ3に送ることによって冷凍サイクルの向上とドレン水の少量化を実現した運転を可能にしたものである。
【0014】
そして、冷風の吹出方向を変更する送風経路切換手段とドレン水の排水方向を変更する排水経路切換手段を1個の操作手段14に取り付け、送風経路切換手段が接続口11を閉止しているときのみ排水経路切換手段によって下部排水路6aと上部排水路6bの選択が可能となっており、送風経路切換手段が接続口11を開口するときは必ず排水経路切換手段が下部排水路6aを選択する構成としたから、使用者による誤操作を防ぐことができると共に、運転の切換を1個の操作手段14で行うことができるので、運転の切換操作が簡単となって使い勝手が向上できた。
【0015】
また、接続口11を開閉する閉止板12と、冷風吹出口8を開閉する開閉手段13とを設け、接続口11の開閉を検出する開閉スイッチ15の信号によって作動する開閉手段13は、接続口11の開口時に冷風吹出口8を閉止し、接続口11の閉止時に冷風吹出口8を開口することで冷風の吹出方向を切換えると共に、接続口11を開口時は閉止板12の可動端に設けた閉止弁12aが連通孔6cを開口して下部排水路6aを選択し、接続口11を閉止時は開閉弁12aが第1の閉止位置で連通孔6cを開口し第2の閉止位置で連通孔6cを閉止して下部排水路6aと上部排水路6bとを選択可能になっており、閉止手段12に形成した操作手段14の位置の切換え操作によって空気調和機の運転を切換えることができるようになったから、運転の切換操作が簡単になると共に、操作手段14の切換位置で容易に運転の確認ができるものとなり、使い勝手が向上できた。
【0016】
また、冷風吹出口8を開閉可能に取り付けたルーバー16によって冷風出口5cを開閉する開閉手段13を構成としたときは、操作手段14の切換位置とルーバー16の開閉によって冷風・除湿の運転状態が確認しやすくなると共に、ルーバー16が開閉手段13を兼用することで部品点数の増加やコストの上昇を抑えることができる。
【0017】
また、枠体1内の冷風ファン5aのファンケース5bの側面下部には空間が形成されており、従来この空間は無駄なスペースとなっていたが、この発明ではこの空間を利用してバイパス流路10と送風経路切換手段の閉止板12を配置したから、枠体1内に効率良く部品を配置することができ、枠体1の形状を大きくすることなく実現できた。
【0018】
また、操作手段14を横方向にスライド操作するときは、枠体1の底面に取り付けたキャスター19の回転方向を操作手段14のスライド方向と異なる方向に向けることで、操作手段14の操作時にキャスターの回転を防ぐことができるから、操作手段14を横方向に操作する構成でも製品が移動することなく操作が行いやすいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、1は空気調和機の枠体、2は枠体1内に収納された冷媒圧縮用の圧縮機、3は圧縮機2で圧縮された冷媒が高温高圧となって送られるコンデンサ、4はコンデンサ3で放熱して液化した冷媒が減圧される減圧器、5は減圧器4で減圧された冷媒が送られるエバポレータであり、冷媒はエバポレータ5に送られて気化し、冷媒の気化熱によって周囲を冷却する。その後エバポレータ5で気化した冷媒ガスは圧縮機2に戻され、再び圧縮機2で加圧された冷媒がコンデンサ3に送られて循環している。
【0020】
3aは室内空気を吸引して前記コンデンサ3を通過させる温風ファン、5aは室内空気を吸引してエバポレータ5を通過させる冷風ファン、17は温風ファン3aと冷風ファン5aを駆動するファンモータであり、該ファンモータ17が回転すると温風ファン3aと冷風ファン5aが一緒に回転する。
【0021】
18は枠体1の上面に設けた温風吹出口、3cは温風吹出口18に連続する温風ファン3aの温風出口であり、温風ファン3aによって送風される空気はコンデンサ3を通過し、この時圧縮機2から送られる高温高圧のガス状冷媒が冷却されて液化する。3bは温風ファン3aの外周を覆うファンケースであり、コンデンサ3を通過して高温となった空気はファンケース3bによって温風出口3cに誘導され、温風吹出口18から排出される。
【0022】
8は枠体1の前面上部に設けた冷風吹出口、5cは冷風吹出口8に連続する冷風ファン5aの冷風出口であり、減圧器4で減圧された液体の冷媒はエバポレータ5に送られて気化し、冷風ファン5aによってエバポレータ5に送られる空気は気化熱によって冷却される。5bは冷風ファン5aの外周を覆うファンケースであり、エバポレータ5を通過して低温となった空気はファンケース5bによって冷風出口5cに誘導され、冷風吹出口8から吹出す。
【0023】
6はエバポレータ5の下方に設けたドレンパン、7は枠体1内の下部に設けたドレンタンク、1aはドレンタンク7の側方に位置するタンク取出口であり、エバポレータ5で冷却される空気に含まれる水分はエバポレータ5の表面に結露してドレン水となってドレンパン6に滴下する。ドレンパン6に滴下したドレン水はドレンタンク7に溜まり、このドレンタンク7はタンク取出口1aを開いて枠体1内から取出して捨て水する。
【0024】
19は枠体1の底板に取付けたキャスターであり、冷風機や除湿機といった一体型の空気調和機は任意の場所に移動して使用するものであるから、空気調和機を移動するときには空気調和機を持ち上げなくてもキャスター19によって気軽に移動することができ、取り扱いの便利性を向上させている。
【0025】
図1に示す実施例において、9はコンデンサ3に空気を通過させる温風ファン3aの空気取入口、10は冷風ファン5aのファンケース5bと空気取入口9とを連通するバイパス流路、11はファンケース5bとバイパス流路10との接続口、10aは空気取入口9からコンデンサ3に至る流路に開口したバイパス流路10の流出口であり、枠体1内にはエバポレータ5を通過した冷風の吹出方向を冷風吹出口8側とバイパス流路10側との間で切換える送風経路切換手段を備えている。
【0026】
この構成では、送風経路切換手段によって冷風ファン5aの冷風出口5cを開口して接続口11を閉止しているときは、送風ファン5aによってエバポレータ5を通過した冷風は冷風出口5cに誘導され、冷風吹出口8から室内に吹出しており、冷風機として使用できる。
【0027】
一方、送風経路切換手段によって冷風ファン5aの冷風出口5cを閉止して接続口11を開口しているときは、送風ファン5aによってエバポレータ5を通過した冷風はバイパス流路10に誘導され、バイパス流路10の流出口10aから空気取入口9とコンデンサ3との間に流入し、送風ファン3aによって空気取入口9から取込まれた室内空気と混合してコンデンサ3に送られるものであり、コンデンサ3にエバポレータ5で冷却された低温度の空気を通過させることで、冷風吹出口8から冷風が吹出すことがなくなると共に、コンデンサ3に送られる冷媒を効率よく冷却できるから、除湿能力の高い専用の除湿機として使用できる。
【0028】
また、ドレンパン6の下方にコンデンサ3を配置し、コンデンサ3よりも下方にドレンタンク7を配置しており、6aはドレンパン6のドレン水をドレンタンク7に誘導する下部排水路、6bはドレンパン6のドレン水をコンデンサ3の上方に誘導する上部排水路であり、ドレンパン6にはドレン水の排水方向を下部排水路6aと上部排水路6bとの間で切換える排水経路切換手段を備えている。
【0029】
この構成では、排水経路切換手段によって下部排水路6aを開口して上部排水路6bを閉止しているときは、エバポレータ5で発生してドレンパン6に滴下したドレン水が下部排水路6aからドレンタンク7に誘導されるので、エバポレータ5で発生するドレン水は全てドレンタンク7に溜まり、室内空気の除湿を行うことができる。
【0030】
一方、排水経路切換手段によって上部排水路6bを開口して下部排水路6aを開口しているときは、ドレンパン6に落下したドレン水が上部排水路6bからコンデンサ3に誘導されるので、コンデンサ3がドレン水によって冷却されてコンデンサ3に送られる冷媒を効率良く冷却することができ、また、ドレン水がコンデンサ3の熱によって蒸発するので、冷風能力の向上とドレン水の少量化が可能となる。この運転モードはエバポレータ5で除湿された空気中の水分がコンデンサ3で蒸発するので室内の除湿は行われないが、冷風能力を向上した冷風運転が可能となる。
【0031】
そして、枠体1内に冷風の吹出方向とドレン水の排水方向の両方の切換機能を備えて、冷風・除湿の両方の性能を満足する空気調和機が実現できれば、年間を通して利用できる付加価値の高い空気調和機が提供できるが、この2つの選択機能を各々操作する方法では、除湿機として使用するときのドレン水の処理が問題となる。このため、各々操作される冷風の吹出方向とドレン水の排水方向の選択機能を連動させる必要があるが、2つの選択機能を操作する方法では切換操作が複雑になると共に、運転状態がわかりにくい欠点があった。
【0032】
この発明では、この2つの選択機能を同時に操作できるようにして操作性の簡素化と運転状態の確認が行いやすい構造を実現するためのものであり、図1に示す実施例において、バイパス流路10の接続口11は送風ファン5aのファンケース5bの側面に配置しており、12は接続口11にスライド可能に取り付けた閉止板、14は閉止板12に取り付けた操作つまみで構成する操作手段であり、操作手段14の操作によって直接閉止板12を駆動して接続口11を開閉することができるようになっている。
【0033】
13は冷風吹出口8に可動自在に設けた開閉手段、15は閉止板12による接続口11の開閉を検出する開閉スイッチ、12bは閉止板12に設けたスイッチ作動部であり、開閉手段13は図示しないモータやソレノイドなどの駆動手段によって駆動して冷風吹出口8を開閉する。閉止板12が接続口11を閉止しているときは開閉手段13が冷風吹出口8を開口しており、閉止板12が接続口11を開口したときには閉止板12のスイッチ作動部12bが開閉スイッチ15を切換え、開閉手段13が駆動して冷風吹出口8を閉止する。
【0034】
12aは閉止板12の可動端に取り付けた閉止弁、6dはドレンパン6の下部排水路6aと上部排水路6bとを区画する仕切板、6cは仕切板6dによって区画された下部排水路6aと上部排水路6bとを連通する連通孔であり、上部排水路6bの排水口を下部排水路6aの排水口よりも高い位置に配置しており、閉止弁12aが連通孔6cを開口しているときはエバポレータ5から滴下したドレン水が連通孔6cを通って下部排水路6aに流れ込み、閉止弁13aが連通孔6cを閉止しているときはドレンパン6の水位が上昇して上部排水路6b側に流れ込む。
【0035】
図1は操作手段14を除湿冷風運転位置にセットした状態であり、この操作手段14の位置では閉止板12が第1の閉止位置に駆動して接続口11を閉止し、この閉止板12の位置では閉止弁12aが連通孔6cを開口し、開閉手段13は冷風出口5cを開口しているので、エバポレータ5を通過した冷風が冷風吹出口8から吹出し、エバポレータ5からドレンパン6に滴下したドレン水は下部排水路6aからドレンタンク7に送られ、室内の冷風と除湿を行なうことができる。
【0036】
また、図2は操作手段14を除湿運転位置にセットした状態であり、この位置では閉止板12と閉止弁12aがドレンパン6とは反対方向に駆動して接続口11と連通孔6cが開口し、閉止板12のスイッチ作動部12bによって開閉スイッチ15が切換わって開閉手段13が冷風出口5cを閉止するので、エバポレータ5を通過した冷風は接続口11からバイパス路10に送られ、空気取入口9から取込まれる室内空気と混合してコンデンサ3に送られ、エバポレータ5からドレンパン6に滴下したドレン水は下部排水路6aからドレンタンク7に送られ、室内の除湿を行なうことができる。
【0037】
また、図3は操作手段14を冷風運転位置にセットした状態であり、この位置では閉止板12と閉止弁12aがドレンパン6方向に駆動して第2の閉止位置に駆動し、接続口11を閉止したまま連通孔6cが閉止し、開閉弁13は冷風出口5cを開口するので、エバポレータ5を通過した冷風は冷風吹出口8から吹出し、エバポレータ5からドレンパン6に落下したドレン水は上部排水路6bからコンデンサ3に送られ、冷風能力の向上と省ドレンによる冷風運転を行うことができる。
【0038】
このように、閉止弁12aによるドレン水の排水路の選択は閉止板12によって接続口11を閉止しているときのみ可能となっており、除湿運転を選択して閉止板12が接続口11を開口したときは閉止弁12aが必ず連通孔6cを開口する構造になっているから、除湿運転を選択時の誤使用を確実に防ぐことができる。
【0039】
従来のように送風経路切換手段と排水経路切換手段に各々操作手段を設けていたときには、互いの操作手段の位置関係を見て運転状態を確認する必要があり、使用者には運転状態が一見してわかりにくく操作も複雑になっていたが、この発明では、使用者は1個の操作手段14の切換え操作によって運転を選択することができると共に、操作手段14の位置によって簡単に運転状態の確認ができるものとなったから、使用者は操作手段14を希望する運転位置にセットするだけでよく、運転の切換操作と運転状態の確認が非常に簡単にできるようになり、使い勝手が向上できた。
【0040】
また、送風経路切換手段と排水経路切換手段に各々操作手段を設けていたときには、誤使用を防止するために互いの操作手段の位置を規制する構造が必要であり、2つの操作手段を同時に操作するときには強い操作力が必要となり、キャスター19を取付けている製品では本体が移動して操作が行ないにくいものであったが、この発明では、1個の操作手段14を操作するだけでよく、この操作手段14は閉止板12を駆動させるだけであるから非常に軽い操作力での操作が可能となり、キャスター19を取り付けた製品でも本体が移動することなく、操作性が向上できた。
【0041】
また、16は冷風吹出口8に可動自在に取り付けたルーバーであり、この発明の実施例では冷風運転時は冷風の吹出方向をルーバー16によって任意に変更できるようになっており、一方、操作手段14を除湿運転位置にセットしたときは、閉止板12のスイッチ作動部12bによって開閉スイッチ15が作動し、ルーバー16が駆動して冷風吹出口8を閉止してルーバー16によって冷風出口5cを塞ぐことができるようになっている。このため、ルーバー16によって開閉手段13を兼用させることができ、部品点数の増加を抑えることができると共に、使用者は除湿運転を選択したときにルーバー16の駆動によって運転の切換が確認でき、ルーバー16が閉じているときは除湿運転を行っていることが容易に確認できるものであり、運転状態の確認が行ないやすくなる。
【0042】
ところで、キャスター19を備えた空気調和機では、操作手段14を縦方向にスライド可能に取り付けた方が、操作手段14の操作時に製品の移動を防止するためには有効であるが、ファンケース5bと枠体1との間に閉止板12やバイパス流路10を配置する為のスペースが必要となるため、枠体1の形状が大きくなってしまう。一方、送風ファン5aのファンケース5bは側面下部が湾曲しているため、枠体1内のファンケース5bの側面下部には空間ができており、従来この空間には特に何も配置されておらずデッドスペースとなっていた。
【0043】
この発明では、ファンケース5bの側面下部に接続口11を配置し、枠体1とファンケース5bとの間の空間を利用してバイパス流路10を形成すると共に、閉止板12をこの空間内を横方向にスライド可能に取り付けている。このようにデッドスペースとなっていた枠体1内の空間にバイパス流路10と閉止板12を配置することで、枠体1内の部品の配置効率が良くなったから、枠体1の大きさを変更することなく実現できるものとなった。
【0044】
また、上記のように操作手段14を横方向にスライド操作する構成にすると、操作手段14の操作時に本体が移動してしまう心配があったが、この発明では、操作手段14を配置した枠体1の側面が前後方向に移動するようにキャスター19を取付けたから、キャスター19の回転方向が操作手段14のスライド方向と異なっており、操作手段14は軽い力で操作が可能となっているから、操作手段14の操作時に製品に横方向の力がかかっても、キャスター19が回転することはなく、操作手段14を横方向にスライドする構成でも、操作手段14の操作時に製品を移動させることなく操作できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の実施例を示す空気調和機の側断面図である。
【図2】図1の空気調和機の他の運転状態を示す要部の断面図である。
【図3】図1の空気調和機の他の運転状態を示す要部の断面図である。
【図4】この発明の実施例を示す空気調和機を正面から見た断面図である。
【図5】この発明の送風経路の構造を示す要部断面図である。
【図6】この発明の実施例を示す空気調和機の要部の側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 枠体
2 圧縮機
3 コンデンサ
3a 温風ファン
4 減圧器
5 エバポレータ
5a 冷風ファン
5b ファンケース
5c 冷風出口
6 ドレンパン
6a 下部排水路
6b 上部排水路
6c 連通孔
7 ドレンタンク
8 冷風吹出口
9 空気取入口
10 バイパス流路
11 接続口
12 閉止板
12a 閉止弁
13 開閉手段
14 操作手段
15 開閉スイッチ
16 ルーバー
19 キャスター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の枠体内には、冷媒を圧縮する圧縮機と、高温のガス状冷媒が送られるコンデンサと、液化した冷媒が減圧器を介して送られるエバポレータとを設け、
エバポレータで気化した冷媒が圧縮機に戻される冷凍サイクルを構成し、
前記コンデンサに送風する温風ファンと、前記エバポレータに送風する冷風ファンとを設けると共に、
前記エバポレータの下方にドレンパンを配置し、該ドレンパンの下方に前記コンデンサとドレンタンクとを配置した空気調和機において、
前記枠体に設けた冷風吹出口に接続する冷風ファンのファンケースには、温風ファンの空気取入口に連通するバイパス流路を取り付け、
ファンケースとバイパス流路との接続口には、冷風の吹出方向を冷風吹出口とバイパス流路との間で変更する送風経路切換手段を設けると共に、
前記ドレンパンには、エバポレータで発生したドレン水をドレンタンクに誘導する下部排水路と、コンデンサに誘導する上部排水路と、ドレン水の排水方向を下部排水路と上部排水路との間で変更する排水経路切換手段とを設け、
送風経路切換手段と排水経路切換手段は前記枠体の側面に設けた操作手段に取り付け、この1個の操作手段によって駆動する送風経路切換手段と排水経路切換手段は、
送風経路切換手段が接続口を開口時は排水経路切換手段が下部排水路を選択し、送風経路切換手段が接続口を閉止時は排水経路切換手段によって下部排水路と上部排水路とを任意に選択可能となるように配置したことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記接続口は前記冷風ファンのファンケースの側面に配置し、前記送風経路切換手段は前記操作手段によって駆動して接続口を開閉する閉止板と、接続口の開閉を検出する開閉スイッチと、開閉スイッチの信号によって前記冷風吹出口に連続する冷風ファンの冷風出口を開閉する開閉手段とによって構成し、閉止板が接続口を開口時に開閉手段が冷風吹出口を閉止し、接続口を閉止時に開閉手段が冷風吹出口を開口すると共に、
前記排水経路切換手段は前記ドレンパンに設けた下部排水路と上部排水路との間を連通する連通孔と、前記閉止板の可動端に設けた連通孔を開閉する開閉弁とによって構成し、
前記閉止板が接続口を開口時に開閉弁が連通孔を開口して下部排水路を選択し、接続口を閉止時には開閉弁が連通孔を開口する第1の閉止位置と連通孔を閉止する第2の閉止位置との間で駆動して、下部排水路と上部排水路とを切換え可能となっていることを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【請求項3】
前記冷風吹出口には可動自在にルーバーを取り付け、該ルーバーは冷風吹出口を開閉可能に設けて前記開閉手段を構成し、前記接続口の開口時はルーバーによって冷風吹出口を閉止することを特徴とする請求項2記載の空気調和機。
【請求項4】
前記接続口はファンケースの側面下部に配置し、前記バイパス流路は枠体とファンケースとの間の空間に形成すると共に、前記閉止板は空間内に横方向にスライド可能に取り付けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記枠体の底面にはキャスターを備えており、少なくとも操作手段を配置した側のキャスターの回転方向を操作手段の駆動方向とは異なる向きに配置したことを特徴とする請求項4記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−271219(P2007−271219A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99696(P2006−99696)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】