説明

空気調和機

【課題】本発明は、空気調和機が通電されていない場合があっても、空気調和機の運転停止時間を正確に検出し、この運転停止時間に基づいたフィルタの自動運転を可能とする空気調和機を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の空気調和機は、熱交換器の空気吸込側に配置されたフィルタ、フィルタを清掃するフィルタ清掃機構、前回の運転停止時刻を記録する前回運転停止時刻記録手段、及び、運転停止時間を算出する運転停止時間算出手段、を有する空気調和機であって、リモートコントローラから送信された現在の時刻情報及び前回運転停止時刻記録手段に記録された前回の運転停止時刻に基づいて運転停止時間を算出するとともにこの運転停止時間を積算することにより積算の運転停止時間を算出し、算出された積算の運転停止時間が所定時間を超えた場合にフィルタ清掃機構によりフィルタを清掃する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタを清掃するフィルタ清掃機構を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、室内空気を熱交換器に循環させて、加熱,冷却,除湿等により調和された空気を室内に吹き出すことにより、室内を空気調和する。この空気調和機内を循環する空気中の塵埃は、空気調和機の室内空気吸込口に配置されたフィルタにより除去される。しかし、フィルタで除去した塵埃が蓄積すると、通風抵抗が大きくなり、熱交換性能が低下する。
【0003】
これに対して、従来の技術として、適宜な時期にフィルタを自動的に清掃するフィルタ清掃機構を備えた空気調和機がある。例えば、特許文献1では、空気調和機の積算運転時間を検出するための積算運転時間検出手段を備え、積算運転時間検出手段により検出された空気調和機の積算運転時間が所定時間を超えた場合にフィルタを自動的に清掃する空気調和機を開示する。また、空気調和機の積算停止時間を検出するための積算停止時間検出手段を備え、積算停止時間検出手段により検出された空気調和機の積算停止時間が所定時間を超えた場合にフィルタを自動的に清掃する空気調和機を開示する。
【0004】
特許文献1に開示の空気調和機のように、空気調和機の積算停止時間に基づいてフィルタを清掃する場合、室内機制御部に設けられたタイマのカウントにより計測された空気調和機の停止時間の積算時間が所定時間を経過したかどうかを判定し、この判定がYESの場合には、フィルタに塵埃が堆積していると判断する。従って、空気調和機の停止中も、室内機制御部に通電されている必要がある。
【0005】
しかしながら、使用者により空気調和機の使用時期が異なり、例えば夏季の冷房運転でのみ使用する環境では、秋から翌春までの数カ月間、空気調和機が使用されない場合もある。このような場合に、空気調和機のエネルギー消費の低減を目的として、空気調和機の電源が切られると、空気調和機の制御部に設けたタイマでは、空気調和機の停止時間を正確に検出することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/049244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、空気調和機が長期間使用されない場合であっても(空気調和機が通電されていない場合があっても)、空気調和機の運転停止時間を正確に検出し、この運転停止時間に基づいたフィルタの自動運転を可能とする空気調和機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気調和機は、空気吸込口及び空気吹出口を有する筐体、筐体内に配置された熱交換器、熱交換器の空気吸込側に配置されたフィルタ、室内空気を空気吸込口より吸い込みフィルタ及び熱交換器を通してから空気吹出口より吹き出す送風ファン、フィルタを清掃するフィルタ清掃機構、前回の運転停止時刻を記録する前回運転停止時刻記録手段、及び、運転停止時間を算出する運転停止時間算出手段、を有する室内機と、現在の時刻情報を管理する現在時刻情報管理手段を有するとともに、室内機に運転操作信号を送信するリモートコントローラと、を備える空気調和機において、運転停止時間算出手段は、リモートコントローラから送信された現在の時刻情報及び前回運転停止時刻記録手段に記録された前回の運転停止時刻に基づいて運転停止時間を算出するとともに、この運転停止時間を積算することにより積算の運転停止時間を算出し、この積算の運転停止時間が所定時間を超えた場合に、フィルタ清掃機構によりフィルタを清掃する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気調和機が通電されていない場合があっても、空気調和機の運転停止時間を正確に検出し、この運転停止時間に基づいたフィルタの自動運転を可能とする空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】空気調和機の全体構成図。
【図2】室内機の側断面図。
【図3】室内機の内部上面図。
【図4】フィルタ清掃機構の斜視図。
【図5】空気調和機の室内機とリモコンの制御装置を示す概略ブロック線図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の空気調和機の実施例を図1−図5を用いて説明する。まず、空気調和機の全体構成について図1及び図2を用いて説明する。
【0012】
図1は空気調和機の全体構成図である。空気調和機21は、室内機22,室外機23、及び室内機22に運転開始等の操作信号を送信するリモートコントローラ(以下「リモコン」という。)1を備える。室内機22及び室外機23は接続配管24で接続される。室内機22は、筐体25内に、後述する熱交換器26等の内部構造体を備える。空気調和機21は、室内空気を空気吸込口27から吸い込み、熱交換器26で加熱,冷却,除湿等された室内空気を、空気吹出口29から室内に吹き出すことにより、室内を空気調和する。
【0013】
図2は室内機の側断面図である。室内機22は、室内空気を吸い込む空気吸込口27を室内機22上部に備える。空気吸込口27の下流側には、室内空気中の塵埃を除去するフィルタ28が空気吸込口27を覆うように配置される。フィルタ28の下流であって、筐体25の中央部には、略逆V字状に形成され熱交換器26が配置される。熱交換器26の下流には、熱交換器26の幅と略等しい長さの貫流ファン方式の送風ファン30が配置される。熱交換器の下端部には露受皿50が配置される。露受皿50は、冷房運転時や除湿運転時に熱交換器26に発生する凝縮水を受ける。露受皿50に集められた凝縮水はドレン配管37を通して室外に排出される。熱交換器26の下流であって、室内機22の下部には、熱交換器26で加熱,冷却,除湿等された室内空気を室内に吹き出す空気吹出口29を備える。空気吹出口29には、吹き出される空気を左右方向に偏向する左右風向板31、及び、上下方向に偏向する上下風向板32を備える。
【0014】
空気調和機21において、まず、送風ファン30を運転することで、室内空気を空気吸込口27から室内機22内に吸い込む。その際、フィルタ28により空気中の塵埃が除去される。その後、室内機22内に吸い込まれた室内空気は、熱交換器26で加熱,冷却,除湿等されて、送風ファン30を介して、空気吹出口29から室内に吹き出される。空気吹出口29から室内に吹き出される調和された空気は、左右風向板31及び上下風向板32により、左右方向及び上下方向が偏向される。このようにして、室内空気を空気吸込口27から吸い込み、熱交換器26で加熱,冷却,除湿等された室内空気を空気吹出口29から室内に吹き出すことにより、室内を空気調和する。
【0015】
次に、フィルタ清掃機構33の概略について図3及び図4を用いて説明する。図3は室内機の内部上面図である。図4はフィルタ清掃機構の斜視図である。
【0016】
フィルタ清掃機構33は、フィルタ28と移動機構35との間に位置する掃除用刷毛34と、フィルタ28に捕集された塵埃を掃き取るように図3及び図4の左右方向(室内機22の長手方向)に掃除用刷毛34を移動させる移動機構35と、掃除用刷毛34により掃き取られた塵埃を収集する集塵機構36とを備える。
【0017】
室内機22の長手方向に、移動機構35が掃除用刷毛34を移動させることにより、掃除用刷毛34がフィルタ28に捕集された塵埃を掃き取る。さらに、掃除用刷毛34を集塵機構36上まで移動させることにより、集塵機構36上端に位置する櫛歯37により、掃除用刷毛34に付着した塵埃を集塵機構36で回収する。具体的には、フィルタ28から掃き取った塵埃を保持する掃除用刷毛34が集塵機構36上を往復することにより、掃除用刷毛34が櫛歯37により梳かれて、掃除用刷毛34により付着した塵埃が集塵機構36に落下することにより、塵埃が集塵機構36に回収される。
【0018】
ここで、空気調和機21内を循環する空気中の塵埃は、上述したように、空気調和機21の室内空気吸込口27に配置されたフィルタ28により除去される。しかし、フィルタ28で除去した塵埃が蓄積すると、通風抵抗が大きくなり、熱交換性能が低下する。
【0019】
これに対して本実施例の空気調和機は、フィルタ28を自動的に清掃する上述したフィルタ清掃機構33を備え、適宜な時期にフィルタ28を自動的に清掃する。特に、本実施例の空気調和機21は、運転停止時間を算出する運転停止時間算出手段を備え、リモコン1から送信された現在の時刻情報に基づいて運転停止時間を算出し、この運転停止時間が所定時間を超えた場合にフィルタ清掃機構33によりフィルタ28を清掃する。このような空気調和機によれば、空気調和機21が長期間使用されない場合であっても(空気調和機21が通電されていない場合があっても)、空気調和機21の運転停止時間を正確に検出し、運転停止時間に基づいたフィルタ28の自動運転が可能となる。現在の時刻情報を、電池等で通電され続けるリモコン1から入手するようにしたので、長期間の不使用により室内機の主電源が切られることがあっても、運転停止時間を、主電源が切られてもカウントし続けるタイマ等を室内機に備える必要がなく、簡易な構造で正確に算出することができる。以下詳細に、本実施例の空気調和機21のフィルタ清掃機構について説明する。
【0020】
図5は、本実施例の空気調和機21の室内機22とリモコン1の制御装置を示す概略ブロック線図である。リモコン1は、CPU2,送信部3,電源部4,キー5,表示部6を備える。室内機22の室内機制御部8は、CPU9,受光部10,EEPROM11,タイマ部12を備える。
【0021】
リモコン1のCPU2は、使用者が操作していない間は低消費電力待機モードで駆動する。使用者からのキー5の操作により運転開始要求等の運転操作信号が入力されると、リモコン1のCPU2はキー入力割込みにより通常動作モードに切り替わり、この運転操作信号が室内機22に発信される。リモコン1から室内機22への運転操作信号の送信は、リモコン1の発光部7より、赤外線等の信号としてワイヤレス通信により、CPU9を備えた室内機制御部8の受光部10に送信することにより行われる。
【0022】
リモコン1は、電池(乾電池や太陽電池)等が用いられた電源部4により、常に通電された状態とされる。また、リモコン1は、現在の時刻情報(例えば、年月日時分秒)を入手,記録等する現在時刻情報管理手段を備え、運転操作信号に現在の時刻情報を付加して室内機22に送信する。
【0023】
室内機22の室内機制御部8は、不揮発性メモリであるEEPROM11を備え、運転毎の内容(運転毎にリモコン1から送信された運転開始時刻や、室内機制御部8内のタイマ部12により検出された運転時間等の運転情報)を記録する。
【0024】
このような、リモコン1と室内機22とを備えた空気調和機21は、室内機22がカレンダー機能を備えていなくても、また室内機22が通電されていない場合があっても、リモコン1の現在時刻情報管理手段や室内機制御部8のEEPROM11に記録された運転情報から、空気調和機の停止時間を正確に算出することができる。具体的には、室内機制御部8はリモコン1から送信された現在の時刻情報及びEEPROM11に記録された前回の運転停止時刻に基づいて運転停止時間を算出するとともにこの運転停止時間を積算して積算の運転停止時間を算出し、算出された積算の運転停止時間が所定時間を超えた場合にフィルタ清掃機構33によりフィルタ28を清掃する。
【0025】
表1に、室内機制御部8のEEPROM11に記録される空気調和機の運転情報を示す。項目1は前回の空気調和機運転開始時刻T1(年月日時分)であり、リモコン1の現在時刻情報管理手段から入手される。項目2は前回の空気調和機の運転時間T2(時間)である。項目3は前回のフィルタ清掃の実施時刻T3(年月日時分)である。項目4はフィルタ清掃後の空気調和機の運転積算時間T4(時間)である。
【0026】
【表1】

【0027】
前回運転開始時刻T1と前回運転時間T2により前回運転停止時刻T5(T1+T2)が算出される。この前回運転停止時刻T5とリモコン1から発信された運転操作信号に含まれる今回運転開始時刻T6の差分を算出すれば、今回運転前の停止時間T7(T6−T5)を算出することができる。今回運転前の停止時間T7を空気調和機21の運転毎に積算して空気調和機21の積算の運転停止時間T12を算出する。以下、本実施例においては、前回運転開始時刻T1以前の空気調和機21の運転停止時間が0時間(T7=T12)として説明する。
【0028】
表1の例では、前回のフィルタ自動清掃を行ってからの運転積算時間T4は2時間である。一方、今回運転前の停止時間T7(T12)は1年であり、運転積算時間T4は2時間であるが、空気調和機21の上面に配置されたフィルタ28には塵埃等が蓄積していると想定される。この今回運転前の停止時間T7(T12)を予め設定した停止中におけるフィルタ自動清掃判定基準時間T8と比較し、フィルタ清掃の要否を判断する。
【0029】
尚、フィルタ28から室内空気中への塵埃の飛散等を考慮すると、フィルタ清掃機構33によるフィルタ28の清掃は、空気調和機21の運転停止後に開始することが好ましい。しかしながら、表1のような長期間空気調和機21を使用しなかった場合には、フィルタ28への塵埃付着による熱交換性能の低下が著しいので、空気調和機21の運転中であっても設定温度と室内温度とが近づいた状態でフィルタ清掃機構33を作動させるようにしてもよい。
【0030】
また、空気調和機の積算の運転停止時間のみに基づいてフィルタ清掃機構33の自動運転の要否を判断するのではなく、空気調和機の積算の運転時間も考慮して、フィルタ清掃機構33の自動運転の要否を判断するようにしてもよい。具体的には、積算の運転停止時間T12及び積算の運転時間T4に基づく時間が所定時間を超えた場合に、フィルタ清掃機構33によりフィルタ28を清掃する。ここで、積算の運転停止時間には係数A(0<A<1)を掛ける。この係数Aは、空気調和機の運転時及び停止時におけるフィルタ28への塵埃の付着量を考慮して決定することができる。一般的に、空気調和機の停止時におけるフィルタ28への塵埃の付着量は空気調和機の運転時におけるフィルタ28への塵埃の付着量よりも少ないので、係数Aは0<A<1とする。つまり、空気調和機停止中の塵埃等による影響時間T9として、T9=運転停止時間T12×A(式1)とする。
【0031】
このT9(運転停止時間T12×A)と運転積算時間T4とを加算して総合的な塵埃付着経過時間T0として、予め設定した所定の塵埃付着判定時間T11と比較することで、空気調和機の運転中及び停止中の塵埃の付着量を考慮し、フィルタ28の自動清掃を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0032】
1 リモコン
2,9 CPU
3 送信部
4 電源部
5 キー
6 表示部
7 発光部
8 室内機制御部
10 受光部
11 EEPROM
12 タイマ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸込口及び空気吹出口を有する筐体、前記筐体内に配置された熱交換器、前記熱交換器の空気吸込側に配置されたフィルタ、室内空気を前記空気吸込口より吸い込み前記フィルタ及び熱交換器を通してから前記空気吹出口より吹き出す送風ファン、前記フィルタを清掃するフィルタ清掃機構、前回の運転停止時刻を記録する前回運転停止時刻記録手段、及び、運転停止時間を算出する運転停止時間算出手段、を有する室内機と、
現在の時刻情報を管理する現在時刻情報管理手段を有するとともに、前記室内機に運転操作信号を送信するリモートコントローラと、
を備える空気調和機において、
前記運転停止時間算出手段は、前記リモートコントローラから送信された現在の時刻情報及び前記前回運転停止時刻記録手段に記録された前回の運転停止時刻に基づいて運転停止時間を算出するとともに、前記運転停止時間を積算して積算の運転停止時間を算出し、
前記運転停止時間算出手段により算出された積算の運転停止時間が所定時間を超えた場合に、前記フィルタ清掃機構により前記フィルタを清掃する空気調和機。
【請求項2】
請求項1において、前記室内機は積算の運転時間を記録する積算運転時間記録手段を有し、
前記運転停止時間算出手段により算出された積算の運転停止時間、及び、前記積算運転時間記録手段に記録された積算の運転時間に基づく時間が、所定時間を超えた場合に、前記フィルタ清掃機構により前記フィルタを清掃する空気調和機。
【請求項3】
請求項2において、前記運転停止時間算出手段により算出された積算の運転停止時間に係数A(0<A<1)を掛けた時間に、前記積算運転時間記録手段に記録された積算の運転時間を加えた時間が、所定時間を超えた場合に、前記フィルタ清掃機構により前記フィルタを清掃する空気調和機。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、前記リモートコントローラは電池により通電され続ける空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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