説明

空気調和装置

【課題】電力遮断時の様々な対策を講じるために使用する電力を供給する補助電源を簡便な構成で実現し、大型化やコストアップを抑制した空気調和装置を提供する。
【解決手段】空気調和装置1は、室外機2aに圧縮機24aと室外膨張弁27aとこれらを駆動制御する室外機制御部20aと熱電素子25aとを備えている。熱電素子25aは、例えば、圧縮機24aの近傍のような高温となる場所に設置されており、室外機2aへの電力遮断が発生した場合には、熱電素子25aで発電した電圧で室外機制御部20aが駆動する。そして、室外機制御部20aは、電力遮断が発生した時の圧縮機24aの回転数や室外膨張弁27aの開度等といった運転状態の記憶や、室外膨張弁27aの閉止等といった室外機2aの運転停止処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1台の室外機および室内機とからなる空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室外機に室内機が冷媒配管で接続された空気調和装置においては、落雷や電力供給量不足等に起因する瞬時停電や空気調和装置の設置場所のブレーカ作動等によって、空気調和装置への電力供給が遮断された場合を想定して様々な対策が講じられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の空気調和装置は、空気調和装置に備えられた圧縮機の回転数や電動膨張弁の開度、送風/排気ファンの回転数等といった運転状態を記憶する。この空気調和装置で電力供給が遮断された際に、電力供給が遮断された時間が短時間である場合(例えば、瞬時停電が発生した場合)は、電力供給復旧後に、電力供給が遮断される直前に記憶した運転状態を読み込み、読み込んだ運転状態を制御目標値に設定して圧縮機や電動膨張弁、送風/排気ファンを制御している。これにより、電力供給復旧後の空気調和装置の運転再開時に、迅速に電力供給が遮断される前の空調状態に回復できる。
【0004】
また、特許文献2に記載の空気調和装置は、空気調和装置に一次電池や二次電池、UPS(Uninterruptible Power Supply,無停電電源装置)、ファンモータの回生電流を利用する電源装置等といった補助電源を搭載し、電力供給が遮断された際はこの補助電源を使用して電動膨張弁の閉止を行なう。これにより、空気調和装置の停止時に冷媒回路内に滞留している液冷媒が圧縮機に流入することによって発生する冷媒寝込みや、電力供給復旧後に冷媒回路内に滞留している液冷媒が圧縮機に流入することによって発生する液圧縮を防止でき、これらに起因する圧縮機の破損を防ぐことができる。
【0005】
また、特許文献3に記載の空気調和装置は、空気調和装置に補助電源を搭載し、複数台の室内機のうち一の室内機で電力供給が遮断されれば、この補助電源を使用して電力供給が遮断されたことを、空気調和装置全体を管理する室外機に送信する。通常、空気調和装置を構成する機器のうちいずれか(特許文献3では一の室内機)との通信が途絶えると、空気調和装置の管理装置(特許文献3では室外機)は、通信異常が発生したと認識して、全ての機器との通信を停止し空気調和装置の運転を停止する。しかし、いずれかの機器で電力供給が遮断されたことによる通信異常が発生している場合では、その他の機器とは通信が行え、ひいては空調運転も行えるにも関わらず、空気調和装置全体が運転を停止してしまうといった不具合があった。特許文献3の空気調和装置では、電力供給が遮断されたことを室外機に通知できるので、室外機が電力供給が遮断されたことによる通信異常と判断できるため、上述したような不具合の発生を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−255759号公報(第4〜6頁、第2図、第3図)
【特許文献2】特開2005−121333号公報(第5〜8頁、第1図)
【特許文献3】特開2008−57868号公報(第4〜6頁、第2図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の空気調和装置は、特許文献2や3に記載の空気調和装置のように補助電源を搭載しておらず、また、運転状態を記憶するタイミングについても言及されていない。電力供給の遮断はいつ発生するかわからないため、特許文献1に記載の空気調和装置では電力供給が遮断される直前の運転状態を記憶できない虞があり、電力供給の復旧後に迅速に電力供給が遮断される前の空調状態に回復できない虞があった。
【0008】
一方、特許文献2や3に記載の空気調和装置は補助電源を搭載しているため、上記のような問題は発生しないが、補助電源に関する次のような問題があった。補助電源として一次電池を搭載する場合、一次電池は使い切りであるため定期的に交換する必要があるため交換作業が発生するという問題があり、また、交換を忘れた場合は、電力供給が遮断された時に補助電源からの電力供給が行えず、意図する機能が発揮できないという問題があった。
【0009】
また、補助電源として二次電池やUPS,ファンモータの回生電流を利用する電源装置等を搭載する場合は、これらのいずれもが装置が大型かつ複雑な構成となるため、空気調和装置の大型化を招くとともに、空気調和装置の大幅なコストアップ要因となるという問題があった。
【0010】
本発明は以上述べた問題点を解決するものであって、電力供給が遮断された時の様々な対策を講じるために使用する電力を供給する補助電源を簡便な構成で実現することで、大型化やコストアップを抑制した空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明の空気調和装置は、室外機に圧縮機と圧縮機を制御する制御手段と熱電素子とを備えている。熱電素子は、圧縮機の近傍に設置されており、圧縮機の発熱により発電する。そして、室外機への電力供給が遮断された場合には、熱電素子で発電した電力で制御手段が駆動し、駆動した制御手段は、室外機の運転停止処理を行う。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明の空気調和装置によれば、室外機への電力供給が遮断された場合に、熱電素子で発電した電力で制御手段を駆動して室外機の運転停止処理を行う。電力供給が遮断された時の補助電源として熱電素子を用いることによって、補助電源のメンテナンスに要する手間が削減でき、かつ、空気調和装置の大型化やコストアップを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例である空気調和装置の構成説明図である。
【図2】本発明の実施例である空気調和装置の室外機と室内機の電気的な接続を説明するブロック図である。
【図3】本発明の実施例である空気調和装置において、室外機で電力供給が遮断された場合の動作説明図である。
【図4】本発明の実施例である空気調和装置の室外機制御手段における処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施例としては、5階建てのビルに設置される空気調和装置であって、各フロアには14台の室内機が設置され、これら14台の室内機が2台の室外機に冷媒配管で接続されているものを例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。また、実施例で記載している「電力供給の遮断」とは、交流電源から室外機への入力が遮断された場合、および、交流電源の電圧が低下しこれに伴って空気調和装置内部の直流電源の出力電圧が定格電圧以下になった場合、を示している。
【実施例】
【0015】
図1に示すように、本実施例の空気調和装置1は、複数の室外機2と、複数の室内機3と、これら複数の室外機2および室内機3と通信線7で通信可能に接続され、室外機2や室内機3の集中管理を行う中央管理装置10とを備えている。尚、中央管理装置10は、ビル全体の管理を行うビル管理システムと通信線で通信可能に接続されている。
【0016】
室内機3はビルの1階から5階の各フロアに分散して配置されており、本実施例では図1に示すように、各フロアには同じ台数(各フロアに14台ずつ)の室内機3が設置されている。また、室外機2は、例えば、ビルの屋上といった屋外に設置されており、フロア毎に2台の室外機2が分流器5を介して冷媒配管6で14台の室内機3に接続されている。以上のように、2台の室外機2と14台の室内機3とが冷媒配管6で接続されることで、フロア毎に冷凍サイクルが形成されている。
【0017】
中央管理装置10は、管理者が図示しない操作部から空気調和装置1に対する指示を入力し、この指示データを図示しない表示部に表示するとともに、通信線7を介して室外機2や室内機3に送信する。
【0018】
中央管理装置10から送信された指示データを受信した室外機2や室内機3は、指示内容に従って運転開始/停止、冷房/暖房等の運転モードの切り換え、設定温度の変更等といった運転条件に関する指示を実行する。尚、指示データ通りに実行された場合は、室外機2や室内機3の最新の運転設定情報は、運転設定データとして中央管理装置10に送信され、中央管理装置10は記憶している図示しない管理データを受信した運転設定データに基づいて更新する。
【0019】
次に、室外機2と室内機3の電気的な構成について図2を用いて説明する。尚、上述したように、各フロアに設置されている冷凍サイクルの構成は全て同じであるため、以下の説明では、1階に設置された14台の室内機3とこれらが冷媒配管6で接続されている2台の室外機2とを例に挙げて説明する。
【0020】
図2に示すように、1階の冷凍サイクルを構成する2台の室外機2は室外機2a、2bである。これら2台の室外機2a、2bは構成が同一であるため、室外機2aについて以下に説明する。
【0021】
室外機2aは、電源部21aと、記憶部22aと、通信部23aと、圧縮機24aと、熱電素子25aと、接続手段26aと、室外膨張弁27aと、整流回路28aと、インバータ29aと、四方弁50aと、室外膨張弁27aやインバータ29aや四方弁50aの制御を行う制御手段である室外機制御部20aとを備えている。
【0022】
電源部21aは、一端が交流電源40に、他端が室外機制御部20aの図示しない電源端子にそれぞれ接続されており、交流電源40から供給される交流電圧を所定の直流電圧に変換して室外機制御部20aに供給する。
【0023】
記憶部22aは、室外機2aの制御プログラムや、室外機2aに備えられた図示しない各種センサでの検出値や、現在の室外機2aの運転状態等を記憶する。ここで、室外機2aの運転状態とは、圧縮機24aの回転数や室外膨張弁27aの開度、四方弁50aの弁位置、図示しない室外ファンの回転数等といった室外機2aの各種設定情報を指す。
通信部23aは、後述する各室内機3a、3b、3cや中央管理装置10との通信を行うためのインターフェイスである。尚、図2では、中央管理装置10と室外機2および室内機3とを接続する通信線7の記載は省略している。
【0024】
圧縮機24aは、後述するインバータ29aによって回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機であり、吸入口に接続された冷媒配管6から吸入した冷媒を圧縮し、吐出口に接続された冷媒配管6へ圧縮した冷媒を吐出する。また、圧縮機24aの密閉容器や圧縮機24aの吐出口付近の冷媒配管6は、圧縮機24aの運転中は高温(80℃〜100℃)となる。
【0025】
熱電素子25aは、例えばペルチェ素子からなり、圧縮機24aの密閉容器や圧縮機24aの吐出口付近の冷媒配管6に片面が接するように配置される。このように熱電素子25aの一方の面を高温、他方の面を低温(外気温度)として熱電素子25aの両面で温度差を設けることによって、熱電素子25aのゼーベック効果による発電が行われる。熱電素子25aは、次に説明する接続手段26aを介して、電源部21aと室外機制御部20aとの接続ラインに接続されている。
【0026】
接続手段26aは、ダイオードやリレー等で構成されており、熱電素子25aで発電した電力を室外機制御部20aに供給する、あるいは、供給を遮断する。接続手段26aがダイオードである場合は、ダイオードのアノード側に熱電素子25aに接続し、カソード側に電源部21aと室外機制御部20aとの接続ラインを接続する。接続手段26aがリレーである場合は、リレーの駆動コイルに電力が供給されている場合は開となり電力供給が遮断された場合に閉となるものを使用する。そして、リレーの一方の端子を熱電素子25aに接続し、他方の端子を電源部21aと室外機制御部20aとの接続ラインに接続する。
【0027】
室外膨張弁27aは、パルス信号を入力してその開度が調整される電動膨張弁であり、室外機2aに備えられた図示しない室外熱交換器の室内機3側(圧縮機24aが接続されている室外熱交換器の一端と反対側)に備えられている。室外膨張弁27aはその開度を調整することによって、冷凍サイクルを流れる冷媒の流量調整や、冷媒の圧力を下げる役割を果たしている。
【0028】
整流回路28aは、一端が交流電源40に、他端がインバータ29aにそれぞれ接続されている。整流回路28aは、交流電源40から供給される交流電圧を整流して脈流電圧を得る回路であり、ブリッジダイオード等で構成されている。
【0029】
インバータ29aは、図示しない平滑コンデンサで平滑された直流電圧を入力して圧縮機24aの図示しないモータ(例えば、3相ブラシレスモータ)をインバータ制御にて駆動する回路であり、複数のパワートランジスタ等のスイッチング素子や、スイッチング素子を保護するための複数のフリーホイールダイオード等で構成されている。
【0030】
四方弁50aは、冷凍サイクルでの冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、圧縮機24aの吐出側と室外熱交換器との間に設けられている。四方弁50aは、室内機3での使用者からの運転モード指示(暖房運転/冷房運転)を室内機3経由で受信した室外機2aの室外機制御部20aによって弁位置が切り換えられることによって、冷媒の流れ方向を切り換える。
【0031】
室外機制御部20aは、室外機2aに備えられた図示しない各種センサでの検出値が入力されるとともに、室内機3から送信される運転モードや設定温度等の運転条件を含んだ制御データが通信部23aを介して入力される。室外機制御部20aは、これら入力された各種情報に基づいて、上述した四方弁50aの切り換えの他、インバータ29aの制御や図示しない室外ファンの回転制御を行うとともに、室外膨張弁27aにパルス信号を出力することでその開度の調整を行う。また、室外機制御部20aは、電源部21aを介して交流電源40から供給される電圧を常にモニタしており、例えば、モニタした電圧が通常の電圧(100V)の90%未満(90V未満)となれば、電力供給が遮断されたであろうと認識する。
【0032】
次に、室内機3について説明する。1階の冷凍サイクルを構成する室内機3は14台であるが、これらは全て構成が同じであり、図2にはこのうち3台の室内機3a、3b、3cが記載されている。以下の説明では、代表として室内機3aについて説明する。
【0033】
室内機3aは、室外機2との通信を行うためのインターフェイスである通信部31aと、通信部31aを介して室外機2と通信を行う室内機制御部30aが備えられている。また、室内機3aには、室内機3aの操作を行うためのリモコン4aが備えられており、赤外線や電波等の無線方式、あるいは、通信線による有線通信によって、使用者の運転指示に対応した通信データを室内機制御部30aに送信する。
【0034】
リモコン4aは、室内機3aの運転開始/停止、冷房/暖房運転といった運転モードの決定、設定温度や風量、風向板動作の設定等を行う図示しない操作ボタンが備えられており、対応する室内機3aに対して、これら操作ボタンを操作することにより空調制御のための様々な指示内容に対応した運転指示データを送信する。
【0035】
室内機制御部30aは、室内機3aに備えられた図示しない各種センサでの検出値やリモコン4aから送信された運転指示データが入力されるとともに、室外機2から送信される制御内容を含んだ通信データが入力される。室内機制御部30aは、これら入力された各種情報に基づいて、図示しない室内ファンの回転や風向板の動作を制御する。
【0036】
以上説明した構成を有する空気調和装置1において、使用者がリモコン4を操作することによって室内機3の運転開始を指示すると、室内機3の室内機制御部(室内機制御部30a、30b、30c・・・)は、運転開始信号を室外機2aに送信する。通信部23aを介して運転開始信号を受信した室外機制御部20aは、室内機3で要求される運転負荷の大きさに応じて、インバータ29aを制御して圧縮機24aを所定の回転数で運転するとともに、指示された運転モードに応じて四方弁50aを操作し、また、室外膨張弁27aを所定の開度として室外機2aの運転を開始する。これにより、冷凍サイクルに冷媒が循環し、室外機2の室外熱交換器や室内機3の室内熱交換器において、冷媒と空気との熱交換が行われることによって、部屋の冷房や暖房が行われる。
【0037】
尚、空気調和装置1では、室内機3側での運転負荷の増減に応じて、室外機2の運転台数を決定する。例えば、2台の室外機2a、2bのうち、室外機2aを親機、室外機2bを子機と定め、室内機3側での運転負荷が低く1台の室外機2のみの運転で要求される運転負荷に対応できる場合は室外機2aのみ運転する。また、室内機3側での運転負荷が高く2台の室外機2を運転させないと要求される運転負荷に対応できない場合は、室外機2aの室外機制御部20aは通信部23aを介して室外機2bに運転を開始するよう指示する運転指示信号を送信する。通信部23bを介して運転指示信号を受信した室外機制御部20bは、室内機3で要求される運転負荷の大きさに応じて、インバータ29bを制御して圧縮機24bを所定の回転数で運転するとともに、指示された運転モードに応じて四方弁50bを操作し、また、室外膨張弁27bを所定の開度とし、室外機2bの運転を開始する。
【0038】
次に、図1乃至図3を用いて、本実施例の空気調和装置1において、室外機2で電力供給が遮断された場合の、運転停止処理を行う原理や具体的な動作について説明する。例えば、2台の室外機2a、2bが設置されている場所に対応するブレーカが作動することによって、あるいは、他の電気機器の起動により供給電圧が瞬間的に低下することによって、室外機2a、2bで電力供給が遮断された場合としては、室外機2a、2bともに電力供給が遮断された場合と、室外機2a、2bのうち、どちらか一方が電力供給が遮断された場合とが考えられる。以下ではこれらの場合別に発生する問題点について説明する。
【0039】
〔室外機2a、2bともに電力供給が遮断された場合〕
室外機2a、2bともに電力供給が遮断された場合は、両室外機の室外膨張弁27a、27bがともに所定の開度で開いた状態のままとなる。この時、空気調和装置1では冷房運転/暖房運転のいずれの場合でも、冷媒配管6には液冷媒が滞留する。冷媒配管6に滞留した液冷媒は、空気調和装置1の運転停止時は低圧側に移動しようとするが、通常の停止処理が行える場合(電力供給の遮断ではなく、例えばリモコン操作による運転停止等)は、室外機制御部20a、20bは運転停止後も動作しており、運転停止後に室外膨張弁27a、27bを全閉とするため、移動しようとする液冷媒は室外膨張弁27a、27bで堰き止められることとなる。
【0040】
しかし、電力供給が遮断された場合、室外機制御部20a、20bへの電力供給も遮断されて室外機制御部20a、20bが停止するため、室外膨張弁27a、27bの全閉が行えない。この状態では、冷媒配管6中の液冷媒が低圧側に流れることを止めることができないため、運転停止後は液冷媒が圧縮機24a、24bに流入する。圧縮機24a、24bに液冷媒が流入すると、冷凍機油に液冷媒が溶け込んだ状態、所謂冷媒寝込みが生じ、電力が復旧して圧縮機24a、24bが再起動した際に、冷凍機油の粘度低下に起因する圧縮機24a、24bの破損が発生する虞がある。また、圧縮機24a、24bが再起動した際に、冷媒配管6に滞留する液冷媒が圧縮機24a、24bに吸入されて圧縮される、所謂液圧縮が生じる虞があり、これによっても圧縮機24a、24bの破損が発生する虞がある。
【0041】
〔室外機2a、2bのうち、どちらか一方の電力供給が遮断された場合〕
例えば、室外機2bで電力供給が遮断されると、室外機2bの室外機制御部20bが停止することによって、親機である室外機2aとの通信や中央管理装置10との通信ができなくなる。このように、空気調和装置1の一部で発生した電力供給の遮断に起因する通信異常であれば、空気調和装置1全体の通信を停止する必要はないが、通常、空気調和装置1の通信網の一部で通信ができなくなった場合は、例えば中央管理装置10が、冷媒系統において通信障害が発生したと判断し、全ての通信を停止するよう室外機2に指示する。これにより、空気調和装置1の運転が全て停止するという問題がある。
【0042】
また、室外機2は通常、運転を停止し、その後再起動する際には、予め定められた初期設定値(記憶部22a、22bに予め記憶されている、四方弁50a,50bの弁位置や室外膨張弁27a,27bの開度等)を制御目標値として運転を開始する。しかし、室外機2bで電力供給が遮断され、その後電力供給が復旧した際に室外機2bが再起動して初期設定値を制御目標値として運転を開始すると、室外機2aの冷凍サイクルと異なる冷凍サイクルで運転する虞がある。
【0043】
例えば、運転開始時には室外機2a,2bはともに暖房運転時の初期設定値となるように制御を行うよう規定されており、室外機2a,2bを含む冷凍サイクルが使用者の指示によって冷房運転を行っている際に、室外機2bで電力供給が遮断されたとする。この場合、電力が復旧して室外機2bが再起動した際に室外機2bが初期設定値となるよう制御されれば、同じ冷媒配管6で接続されている室外機2aと室外機2bとで異なる冷凍サイクル、つまり、電力供給が遮断されていない室外機2bは冷房運転時の設定のままで、電力供給が遮断された室外機2bは暖房運転時の設定となるよう制御されることとなり(運転モードの不一致)、圧縮機24a、24bが破損する虞がある。
【0044】
以上のような問題を防ぐため、本実施例の空気調和装置1では、室外機2a、2bに熱電素子25a、25bを備え、室外機2a、2bへの電力供給が遮断された際には、熱電素子25a、25bで発電した電力を使用して、室外機制御部20a,20bが室外膨張弁27a,27bを全閉とする、電力供給が遮断された時の圧縮機24a、24bの回転数や四方弁50a、50bの弁位置、室外膨張弁27a,27bの開度等といった室外機2a,2bの運転状態を記憶部22a,22bに記憶する、中央管理装置10に対し電力供給が遮断されたことを通知するための電力供給遮断信号を送信する、といった運転停止処理を行う。
【0045】
上記の電力供給が遮断された時における運転停止処理について、図3を用いて説明する。尚、以下の説明では、室外機2aで電力供給が遮断されたとして説明する。室外機2aで電力供給が遮断されると、接続手段26aの働きによって熱電素子25aで発電した電力が室外機制御部20aに供給される。ここで、接続手段26aがダイオードである場合は、電力供給が遮断されたことによってカソード側の電圧がアノード側の電圧に比べて低くなるために作動するものである。また、接続手段26aがリレーである場合は、リレーの駆動コイルへの電圧の印加が電力供給が遮断されたことによって途絶えることにより、リレーが閉となって作動するものである。
【0046】
上述したように、熱電素子25aは、圧縮機24aの密閉容器や吐出口付近の冷媒配管6といった高温となる箇所に設置されているので、外気との温度差によって、図3(c)に示すように常に電圧Vgとなる電力が発電されている。尚、室外機2aで電力供給が遮断された状態が長時間継続する場合は、圧縮機24a近傍の温度も徐々に低下するため、熱電素子25aでの発電(電圧Vg)も図3(c)に破線で示すように徐々に低下する。
【0047】
一方、室外機制御部20aは、電源部21bを介してモニタしている交流電源40(例えば、100V)に対応する電圧が90V未満となれば、電力供給が遮断されたであろうと認識する。尚、図3(a)において、実線は電力供給が遮断された後に比較的短時間で電力供給が復旧する場合を示しており、室外機制御部20aは、電源部21bを介してモニタしている電圧が90V以上となれば、電力供給が復旧したと認識する。また、図3(a)において、破線は電力供給が遮断された状態が長時間継続する場合を示しており、室外機制御部20aが電源部21bを介してモニタしている電圧は一定時間後には0Vとなる。
【0048】
交流電源40からの電力供給が遮断されて電圧が90V未満となれば、図3(b)に示すように、電源部21aから供給される室外機制御部20aの駆動電圧Vccは低下し、交流電源40からから供給される電圧が0Vとなれば駆動電圧Vccも0Vとなるが、この場合は接続手段26aが作動して熱電素子25aから室外機制御部20aに駆動電圧Vccが供給されるようになる。尚、上述した電力供給が比較的短時間で復旧する場合は、接続手段26aが作動して、図3(b)に示すように電源部21aから室外機制御部20aへの駆動電圧Vccの供給も復旧する。また、図示は省略するが、電力供給が遮断された状態が長時間継続する場合は、圧縮機24a近傍の温度の低下に伴って、熱電素子25aで発電する電圧も減少し、やがて0Vとなる。そして、熱電素子25aで発電する電圧が0Vとなれば、室外機制御部20aも停止する。
【0049】
交流電源40からの電力供給が遮断されたことを認識した室外機制御部20aは、図3(d)に示すように、中央管理装置10に室外機2aへの電力供給が遮断されたことを通知する電力供給遮断信号を送信する。これにより、中央管理装置10は、電力供給が遮断された状態が長時間となり室外機2aとの通信が行えなくなっても、その原因が通信異常ではなく電力供給が遮断されたことによるものであると認識するので、他の室外機2との通信を停止することがなく、空気調和装置1全体の制御が滞りなく行われる。
【0050】
室外機制御部20aは、中央管理装置10へ電力供給遮断信号を送信した後、図3(e)に示すように、電力供給が遮断された時の圧縮機24aの回転数や室外膨張弁27aの開度、四方弁50aの弁位置等の運転状態を記憶部22aに記憶する。これにより、短時間で電力供給の遮断が復旧した時に室外機制御部20aは、記憶部22aに記憶している電力供給が遮断された時の運転状態を読み込んで、圧縮機24aの回転数や室外膨張弁27aの開度、四方弁50aの弁位置等を電力供給が遮断される前の状態に戻すことができるので、電力供給の遮断が復旧した時に、室外機2aと室外機2bとが異なる冷凍サイクルで運転を行うことを防ぐことができる。
【0051】
また、室外機制御部20aは、図3(f)に示すように、運転状態の記憶と並行して室外膨張弁27aに所定のパルス信号を送信して室外膨張弁27aを全閉する。これにより、室外機2aで電力供給が遮断されたことにより停止している時に発生する冷媒寝込みや、電力供給が復旧して圧縮機24aが再起動した際に液圧縮が起こることを防ぐことができる。
尚、図3(d)〜(f)に示す中央管理装置10への電力供給遮断信号の送信、運転状態の記憶、室外膨張弁27aの全閉、は、図3(c)に示すように、熱電素子25aで発電した電圧Vgが駆動電圧Vcc以下に低下するまでに全て行われる。
【0052】
以上説明したように、本実施例の空気調和装置1では、室外機2で電力供給が遮断されても、室外機2に備えられた熱電素子によって室外機制御部に駆動電圧が供給されるので、室外機制御部が運転停止処理を行うことができる。これにより、空気調和装置1全体の運転を停止させることがなく、また、室外機2の圧縮機の破損を防止することができる。
【0053】
次に、図4に示すフローチャートを用いて、本発明の空気調和装置1における室外機2での処理の流れについて説明する。図4のフローチャートは、電力供給が遮断された室外機2の室外機制御部での運転停止処理に関する処理の流れを説明するものであり、以下の説明では、室外機2aで電力供給が遮断されたとして説明する。
【0054】
尚、図4において、STはステップを表し、これに続く数字はステップの番号を表している。また、図4のフローチャート以外の処理、例えば、使用者がリモコン4aで指示した運転情報に基づく制御や、室外機2aにおける圧縮機24aや四方弁50aの切り換え制御等といった、その他の一般的な空気調和装置1での処理については説明を省略している。
【0055】
室外機制御部20aは、電源部21aを介して交流電源40から供給される電圧が低下したか否かを判断する(ST1)。電圧が低下していれば(ST1−Yes),室外機制御部20aは、室外機2aで電力供給が遮断されたであろうと判断し、中央管理装置10に電力供給遮断信号を送信する(ST2)。尚、電力供給が遮断された際は接続手段26aが閉となり、室外機制御部20aに熱電素子25aから駆動電圧が供給される。
【0056】
次に、室外機制御部20aは、電力供給が遮断された時の運転状態を記憶部22aに記憶する(ST3)。次に、室外機制御部20aは、室外膨張弁27aを全閉とする(ST4)。
【0057】
次に、室外機制御部20aは、交流電源40から供給される電圧が復旧したか(電圧が90V以上となったか)否かを判断する(ST5)。電圧が復旧していなければ(ST5−No)、室外機制御部20aは処理をST5に戻す。電圧が復旧していれば(ST5−Yes)、室外機制御部20aは、電力供給の遮断が復旧したと判断する。そして、記憶部22aに記憶している電力供給が遮断された時の運転状態を読み込み(ST6)、室外機2aの運転を再開し(ST7)、読み込んだ運転状態を制御目標値として制御を行う。そして、室外機制御部20aはST1に処理を戻す。
【0058】
尚、ST1において、電圧低下が発生していなければ(ST1−No),室外機制御部20aは、リモコン4aから運転開始信号を入力したか否かを判断する(ST8)。運転開始信号を入力していなければ(ST8−No)、室外機制御部20aはST10に処理を進める。
【0059】
運転開始信号を入力していれば(ST8−Yes)、室外機制御部20aは、リモコン4aからの入力信号に基づいて室外機2aの運転を開始する(ST9)。
【0060】
次に、室外機制御部20aは、リモコン4aから運転停止信号を入力したか否かを判断する(ST10)。運転停止信号を入力していなければ(ST10−No)、室外機制御部20aは、室外機2aの現在の状態を継続、つまり、運転中であれば運転状態を継続し、停止中であれば停止状態を継続する(ST12)。そして、室外機制御部20aは、ST1に処理を戻す。運転停止信号を入力していれば(ST10−Yes)、室外機制御部20aは、圧縮機24aを停止する、室外膨張弁27aを全閉する、等を行って室外機2aの運転を停止する(ST11)。そして、室外機制御部20aはST1に処理を戻す。
【0061】
以上説明したように、本発明の空気調和装置によれば、室外機への電力供給が遮断された場合に、熱電素子で発電した電力で制御手段を駆動して室外機の運転停止処理を行う。電力供給が遮断された時の補助電源として熱電素子を用いることによって、補助電源のメンテナンスに要する手間が削減でき、かつ、空気調和装置の大型化やコストアップを防ぐことができる。
【0062】
尚、本実施例では、室外機で電力供給が遮断された場合に、室外機制御部が中央管理装置に電力供給遮断信号を送信して電力供給が遮断されたことを通知しているが、これに限るものではなく、同じ冷凍サイクルに属する他の室外機へ電力供給が遮断されたことを通知することで、電力供給の瞬間的な遮断が発生した場合における複数の室外機の運転モードの不一致による不具合を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 空気調和装置
2、2a、2b 室外機
3、3a、3b、3c 室内機
4、4a、4b、4c リモコン
5 分流器
6 冷媒配管
7 通信線
10 中央管理装置
20a、20b 室外機制御部
21a、21b 電源部
22a、22b 記憶部
23a、23b 通信部
24a、24b 圧縮機
25a、25b 熱電素子
26a、26b 接続手段
27a、27b 室外膨張弁
28a、28b 整流回路
29a、29b インバータ
30a、30b、30c 室内機制御部
31a、31b、31c 通信部
40 交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と同圧縮機を制御する制御手段とを備えた少なくとも1台の室外機と、少なくとも1台の室内機とが冷媒配管で接続されてなる空気調和装置であって、
前記室外機の前記圧縮機近傍に熱電素子が備えられ、同熱電素子は前記圧縮機の発熱により発電し、
前記室外機への電力供給が遮断された時、前記熱電素子で発電した電力が前記制御手段に供給され、同制御手段は当該室外機における運転停止処理を行うことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記室外機には、一端が前記熱電素子に接続され他端が前記制御手段に接続される接続手段が備えられ、
前記室外機への電力供給が遮断された時、前記接続手段が前記熱電素子と前記制御手段とを接続するよう動作することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233600(P2012−233600A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100415(P2011−100415)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】