説明

空気電池

【課題】 電解液を適量ずつ補給できるようにし、発電能力を容易に復旧できるようにして長期間使用ができるようにする。
【解決手段】 中空に形成され空気が流通するケース1内に、正極部材20と、負極部材30と、正極部材20及び負極部材30との間に介装され電解液が含浸される含浸部材40とを備え、ケース1を、互いに結合及び離間可能に形成され離間時に含浸部材40を露出可能にする一方ケース1A及び他方ケース1Bを備えて構成し、一方ケース1A及び他方ケース1Bを互いに離間可能に結合する雌ネジ5及び雄ネジ6からなる結合手段5を備え、正極部材20を木炭の粉粒体で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を活物質とする正極部材を有する空気電池に係り、特に、電解液を補充して長期間使用のできる空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気電池としては、例えば、特開2005−85719号公報に掲載された技術が知られている。
これは、中空に形成され空気が流通する容器内に、木炭からなる正極部材と、セパレータを介して木炭に巻回されたコイル状の導電金属製の負極部材とを備え、容器内に電解液を入れて、負極部材の電解液による化学反応と木炭の表面での酸素消費とにより、正極部材に接続された正極端子と負極部材の先端の負極端子とから電気を取り出すようにしている。
【0003】
また、従来の電池としては、例えば、特開2008−34255号公報に掲載された技術も知られている。
これは、中空に形成されたケースと、ケース内に設けられ導電性金属の表面に活性炭が貼設された正極部材と、ケース内に設けられる導電金属製の負極部材と、ケース内に設けられるとともに正極部材と負極部材との間に介装され電解液が含浸される含浸部材と、ケースを貫通してケースに設けられ正極部材に接続される正極端子と、ケースを貫通してケースに設けられ負極部材に接続される負極端子とを備えて構成されている。また、ケースには電解液供給用の供給口が設けられ、電池が消費されたならば、供給口から電解液を供給して再度活性化させ、再利用できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−85719号公報
【特許文献2】特開2008−34255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の前者の電池においては、正極部材である木炭の表面に吸着した酸素が反応しているが、電解液が容器内に入れられているので、木炭内に電解液が浸透して、酸素との反応効率が悪くなるなど悪影響が生じやすく、その場合には、木炭を水で洗い、再度組み立てるなどしなければならないので、正極部材の保守が煩雑になっているという問題があった。
また、上記従来の後者の電池においては、正極部材と負極部材との間に含浸部材を設けてこの含浸部材を介して電解液を作用させるようにはしているが、ケースに設けた供給口から電解液を供給するので、ケース内に電解液が充満してしまうことがあり、その場合には、電極に悪影響を与えてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、電解液を正極部材に悪影響を与えないようにして適量ずつ補給できるようにし、発電能力を容易に復旧できるようにして長期間使用ができるようにした空気電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明の空気電池は、中空に形成され空気が流通するケースと、該ケース内に設けられる正極部材と、上記ケース内に設けられる負極部材と、上記ケース内に設けられるとともに上記正極部材と負極部材との間に介装され電解液が含浸される含浸部材と、上記ケースを貫通して該ケースに設けられ上記正極部材に接続される正極端子と、上記ケースを貫通して該ケースに設けられ上記負極部材に接続される負極端子とを備えた空気電池であって、
上記ケースを、互いに結合及び離間可能に形成され離間時に上記含浸部材に電解液を補充可能にする一方ケース及び他方ケースを備えて構成し、該一方ケース及び他方ケースを互いに離間可能に結合する結合手段を備えて構成している。
【0008】
これにより、正極部材と負極部材との間に電解液が含浸される含浸部材が介装されているので、負極部材の電解液による化学反応と正極部材での酸素消費とにより、正極部材に接続された正極端子と負極部材に接続された負極端子とから電気が取り出される。
そして、電解液が消費されて、発電機能が低下したならば、ケースの結合手段を解除して一方ケース及び他方ケースを互いに離間し、含浸部材に電解液を補給し、再び、結合手段により一方ケース及び他方ケースを結合する。これにより、電解液の補給により発電能力が容易に復旧し、使用が継続される。この場合、一方ケース及び他方ケースを離間させ、含浸部材に電解液を適量ずつ補給でき、そのため、正極部材に電解液が余分に浸透しないので悪影響がなく、発電能力を容易に復旧して、長期間の使用ができるようになる。また、一方ケース及び他方ケースの離間及び結合という簡易な操作で、電解液を補給できるので、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
【0009】
この基本構成において、1つの態様として、必要に応じ、上記一方ケース及び他方ケースを底壁及び側壁からなり互いに結合される開口部を有したカップ状に形成し、上記正極端子を上記一方ケースの底壁に該底壁を貫通して設け、上記負極端子を上記他方ケースの底壁に該底壁を貫通して設け、上記正極部材及び負極部材のいずれか一方を粉粒体で構成し、上記正極部材及び負極部材のいずれか他方を対応する端子のある上記一方ケース及び他方ケースのいずれかに収容される柱状体で構成し、該柱状体に上記含浸部材を付帯し、上記粉粒体を上記含浸部材に接触するように上記柱状体が収納されるケース内であって該含浸部材の周囲に詰込んだ構成としている。
カップ状の一方ケース及び他方ケースを離間させるだけで、極めて簡単な操作で、含浸部材に電解液を補給できることから、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
【0010】
また、必要に応じ、上記粉粒体に接続される端子のケース内側部を、該端子が設けられるケースの底壁内面に設けられる導電金属製の接続体と、上記粉粒体が詰め込まれたケースの内壁面に付設され上記接続体に接触するとともに上記粉粒体と接触する導電金属製の接触板とを備えて構成している。接触板により端子の粉粒体に対する接触面積を実質的に大きくすることができ、ケースの分解型であっても確実に電通を確保することができる。
【0011】
更に、必要に応じ、上記粉粒体の上面に粉粒体を被覆する被覆材を付設し、該被覆材の上面に、上記含浸部材に連続し上記一方ケース及び他方ケースの離間時に電解液が給液されて上記含浸部材に電解液を浸透させる連続体を設けた構成としている。一方ケース及び他方ケースの離間時に電解液を連続体に給液するだけで含浸部材に電解液を浸透させることができるので、給液が極めて容易に行われる。
【0012】
更にまた、上記正極部材を炭素材料からなる粉粒体で構成し、上記負極部材を柱状体で構成している。炭素材料としては、木炭,カーボンブラック,黒鉛化カーボンブラック,カーボンナノチューブ,カーボンナノファイバー,カーボンナノホーン,カーボンフィブリル,フラーレンおよび活性炭から選択されることが望ましい。酸素の捕獲効率がよく、発電機能が向上させられる。
この場合、必要に応じ、上記正極部材を、木炭で構成している。木炭なので、安価であり、また、酸素の捕獲効率がよく、確実に発電能力を発揮させることができる。
【0013】
また、上記の基本構成において、別の態様として、必要に応じ、上記一方ケース及び他方ケースを底壁及び側壁からなり互いに結合される開口部を有したカップ状に形成し、上記正極端子を上記一方ケースの底壁に該底壁を貫通して設け、上記負極端子を上記他方ケースの底壁に該底壁を貫通して設け、上記正極端子のケース内側端部と上記負極端子のケース内側端部との間に上記正極部材,含浸部材及び負極部材を順に介装した構成としている。カップ状の一方ケース及び他方ケースを離間させるだけで、正極部材,含浸部材及び負極部材を取出し、含浸部材を露出させることができるので、極めて簡単な操作で、電解液を補給できることから、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記正極端子のケース内側端部及び上記負極端子のケース内側端部の少なくともいずれか一方を、上記一方ケース及び他方ケースの結合時に対応する正極部材若しくは負極部材に弾接する導電性のコイルスプリングで構成している。カップ状の一方ケース及び他方ケースを結合した際には、コイルスプリングが電極に弾接して、正極部材,含浸部材及び負極部材が押圧されて押えられるので、保持が確実になり、発電を確実に行うことができる。
【0015】
更にまた、必要に応じ、上記負極部材を、導電性金属板で構成し、該負極部材の正極部材側の外周縁部に上記含浸部材を囲繞する非導電性の壁体を付設した構成としている。これにより、含浸部材が壁体により囲繞されるので、電解液が周囲に滲出しにくくなり、そのため、ケース内を汚したりして悪影響を与える事態が防止される。
【0016】
そして、必要に応じ、上記正極部材を、一端が上記含浸部材に接触し他端が上記正極端子に接続される炭素材料を用いたブロックで構成している。炭素材料としては、木炭,カーボンブラック,黒鉛化カーボンブラック,カーボンナノチューブ,カーボンナノファイバー,カーボンナノホーン,カーボンフィブリル,フラーレンおよび活性炭から選択されることが望ましい。酸素の捕獲効率がよく、発電機能が向上させられる。
この場合、必要に応じ、上記正極部材を、一端が上記含浸部材に接触し他端が上記正極端子に接続される木炭のブロックで構成している。木炭なので、安価であり、また、酸素の捕獲効率がよく、確実に発電能力を発揮させることができる。
【0017】
この場合、上記ブロックを、互いに連設される一対のブロック単体で構成し、一方のブロック単体をその一端面及び他端面に板目が表出するように形成し、他方のブロック単体をその一端面及び他端面に木口が表出するように形成し、該一方のブロック単体の他端面と他方のブロック単体の一端面とを接合し、上記一方のブロック単体の一端面を、上記含浸部材及び正極端子のいずれか一方に接触させ、上記他方のブロック単体の他端面を、上記含浸部材及び正極端子のいずれか他方に接触させた構成としたことが有効である。
これにより、木炭のブロックは、板目が表出したブロック単体と、木口が表出したブロック単体とが連設されるので、木炭の繊維方向が、縦と横との組み合わせになり、そのため、イオンの導電性が均一になり、発電が安定する。
【0018】
そしてまた、上記の各態様の構成において、必要に応じ、上記正極部材と含浸部材との間に、イオン導電膜を介装した構成としている。これにより、イオン導電膜は、イオンを通過させるが水分は非通過になるので、電解液がイオン導電膜を通って、正極部材に滲出していく事態が防止され、正極部材に電解液が余分に浸透することが抑制されて悪影響がなく、確実に長期間の使用ができるようになる。
【0019】
また、上記の各態様の構成において、必要に応じ、上記結合手段を、上記一方ケース及び他方ケースのいずれか一方の開口部内側に形成された雌ネジと、上記一方ケース及び他方ケースのいずれか他方の開口部外側に形成され上記雌ネジに螺合する雄ネジとを備えて構成している。ネジ手段により、一方ケース及び他方ケースの離間及び結合ができるので、操作が容易になり、より一層、補給作業が簡単になり、作業性が向上させられる。
【0020】
更に、必要に応じ、上記正極端子を設けた一方ケース及び負極端子を設けた他方ケース内に上記正極部材,含浸部材及び負極部材を収納したケース単位の電池単体を複数直列に接続し、隣接する電池単体の一方ケースと他方ケースとの組を連結用ケースとして構成し、該連結用ケースを構成する一方ケースの正極端子のケース外端部と、該連結用ケースを構成する他方ケースの負極端子のケース外端部とを一体形成した構成としている。
これにより、ケース単位の電池単体を、直列に接続して容量を増加させる際、その接続が容易になる。即ち、例えば、ケース単位の電池単体を、2つ直列に接続する場合には、連結用ケースを1つ用い、内部に正極部材,含浸部材及び負極部材を収納して一つの一方ケースと連結用ケースの他方ケースとを結合し、内部に正極部材,含浸部材及び負極部材を収納して一つの他方ケースと連結用ケースの一方ケースとを連結する。
また、ケース単位の電池単体を、3つ以上直列に接続する場合には、連結用ケースを2つ以上用い、中間においては、内部に正極部材,含浸部材及び負極部材を収納して連結用ケース同士を結合し、この結合した複数の連結用ケースの両端に対して、上記と同様に、内部に正極部材,含浸部材及び負極部材を収納して、一方ケース及び他方ケースを接続する。
【0021】
この場合、連結用ケースにおいては正極端子のケース外端部と負極端子のケース外端部とが一体になっているので、連結用ケースの結合を行うだけで、電池単体を直列に接続することができ、接続作業を容易に行うことができる。
このことは、連結用ケースの離間も容易になるので、正極部材,含浸部材及び負極部材を容易に取出して含浸部材を露出させることができ、そのため、直列にしたものにおいても、極めて簡単な操作で、電解液を補給できることから、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の空気電池によれば、電解液が消費されて、発電機能が低下したならば、ケースの結合手段を解除して一方ケース及び他方ケースを互いに離間し、含浸部材に電解液を補給し、再び、結合手段により一方ケース及び他方ケースを結合することができるので、電解液の補給により発電能力を容易に復旧させ、使用を継続することができる。この場合、一方ケース及び他方ケースを離間させて電解液を補給するので、電解液を適量ずつ補給でき、そのため、正極部材に電解液が余分に浸透しないので悪影響がなく、発電能力を容易に復旧して、長期間の使用を行うことができる。また、一方ケース及び他方ケースの離間及び結合という簡易な操作で、電解液を補給できるので、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る空気電池を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係る空気電池を示す断面図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係る空気電池の別の態様を示す断面図である。
【図4】本発明の第一の実施の形態に係る空気電池のまた別の態様を示す図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態に係る空気電池を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の第二の実施の形態に係る空気電池を示す断面図である。
【図7】本発明の第二の実施の形態に係る空気電池の別の態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る空気電池について詳細に説明する。
図1及び図2には、本発明の第一の実施の形態に係る空気電池Bを示している。この空気電池Bは、中空に形成され空気が流通するケース1と、ケース1内に設けられる粉粒体状の正極部材20と、ケース1内に設けられる柱状の負極部材30と、ケース1内に設けられるとともに正極部材20と負極部材30との間に介装され電解液が含浸される含浸部材40と、正極部材20と含浸部材40との間に介装されるイオン導電膜50とを備えて構成されている。
【0025】
詳しくは、ケース1は、絶縁性の樹脂で形成されており、互いに結合及び離間可能に形成される一方ケース1A及び他方ケース1Bを備えて構成されている。詳しくは、一方ケース1A及び他方ケース1Bは、底壁2及び側壁3からなり互いに結合される開口部4を有したカップ状に形成されている。一方ケース1Aは蓋状に形成され、他方ケース1Bは正極部材20,含浸部材40及び負極部材30を収納しうる大きさに形成されている。実施の形態では、空気は一方ケース1A及び他方ケース1Bの継ぎ目や端子の継ぎ目の隙間を通して流通させられる。別途孔を設けるようにしても良い。
【0026】
そして、一方ケース1A及び他方ケース1Bを互いに離間可能に結合する結合手段5が設けられている。この結合手段5は、一方ケース1A及び他方ケース1Bのいずれか一方(実施の形態では一方ケース1A)の開口部4内側に形成された雌ネジ6と、一方ケース1A及び他方ケース1Bのいずれか他方(実施の形態では他方ケース1B)の開口部4外側に形成され一方ケース1Aの雌ネジ6に螺合する雄ネジ7とを備えて構成されている。
【0027】
また、本空気電池Bには、ケース1を貫通してケース1に設けられ正極部材20に接続される正極端子10と、ケース1を貫通してケース1に設けられ負極部材30に接続される負極端子11とが備えられている。正極端子10は、一方ケース1Aの底壁2にこの底壁2を貫通して設けられ、負極端子11は他方ケース1Bの底壁2にこの底壁2を貫通して設けられている。正極端子10及び負極端子11は、底壁2を貫通する導電金属製のボルト12を備えて構成され、導電金属製のナット13により対応するケース1に固定されている。正極端子10のケース内側端部10aは、正極端子10が設けられる一方ケース1Aの底壁内面に設けられる円盤状の接続体16と、後述の正極部材20としての粉粒体が詰め込まれた他方ケース1Bの内壁面に付設され接続体16にその端縁が接触するとともに粉粒体と接触する導電金属製の円筒状の接触板17とを備えて構成されている。
【0028】
また、実施の形態においては、正極端子10を設けた一方ケース1A及び負極端子11を設けた他方ケース1B内に、正極部材20,含浸部材40及び負極部材30を収納したケース単位の電池単体Baが、複数(実施の形態では2つ)直列に接続されている。そして、隣接する電池単体Baの一方ケース1Aと他方ケース1Bとの組が連結用ケース1Cとして構成されており、この連結用ケース1Cを構成する一方ケース1Aの正極端子10のケース外端部10bと、連結用ケース1Cを構成する他方ケース1Bの負極端子11のケース外端部11bとは一体形成されている。詳しくは、連結用ケース1Cを構成する一方ケース1Aの底壁2及び連結用ケース1Cを構成する他方ケース1Bの底壁2には、一本の導電金属製のボルト12(a)が貫通して設けられており、このボルト12(a)は、底壁2間に介装されたナット13(a)及び一方ケース1Aの内側端部10aを構成する金属板、及び、他方ケース1Bの後述の正極部材20により固定されている。即ち、一本のボルト12(a)にすることにより、正極端子10のケース外端部10bと負極端子11のケース外端部11bとを一体形成している。
【0029】
また、本実施の形態に係る空気電池Bにおいて、正極部材20は、炭素材料からなる粉粒体で構成されている。具体的には、正極部材20は、木炭で構成されている。木炭としては、種々の樹種のものが用いられる。例えば、ウバメガシを原材料とする備長炭をはじめ、クヌギ,コナラ,ミズナラ,カシ,カエデ,トネリコ,リョウブ,ヤチダモ,マテバシイ,ツバキ,サザンカ,竹等種々の樹種のものが用いられる。望ましくは、ナラ種(例えば岩手県産切炭)が優れ、水分の吸収率の低い、例えば、水分吸収率が10%以下のものが良い。また、木炭としては、おがくず、樹皮(バーク)、もみがら等を原料として作ったものでもよい。
そして、木炭の粉粒体は、対応する正極端子10のケース内側端部10a及び後述の含浸部材40に接触するように他方ケース1B内であって接触板17の内側に詰込まれている。
【0030】
負極部材30は、対応する負極端子11の内端部11aに螺合して設けられ他方ケース1Bに収容される柱状体で構成されている。この負極部材30は、導電性金属で構成されている。金属の種類としては、例えば、マグネシウム,亜鉛,アルミニウムあるいはこれらの合金等適宜のものが用いられる。
【0031】
含浸部材40は、例えば、有機若しくは無機の部材からなり、柱状体の負極部材30に巻回されて付帯されている。この含浸部材40は、例えば、パルプ材、化学繊維,天然繊維の不織布または織布からなる。また、含浸部材40として、薩摩芋を蒸したもの、炭の粉と薄力粉とを水を加えて混合して焼成したもの等も用いることができる。
含浸部材40に含浸させる電解液としては、例えば、塩化ナトリウム溶液,塩化カリウム溶液,水酸化カリウム溶液,塩化アンモニウム溶液,希硫酸,木酢液等適宜のものが用いられる。
正極部材20を構成する粉粒体の上面には、セロハン等の被覆材41が付設されており、この被覆材41の上面には含浸部材40に連続し、含浸部材40と同材質の連続体42が設けられている。一方ケース1A及び他方ケース1Bの離間時に、連続体42に電解液を給液することで、含浸部材40に電解液が浸透するようにし、含浸部材40に電解液を容易に補給できるようにしている。
【0032】
また、正極部材20と含浸部材40との間には、イオン導電膜50が介装されている。このイオン導電膜50としては、セロハン等の半透膜を用い、あるいは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の微多孔膜が用いられる。このイオン導電膜50は含浸部材40に巻回されている。
【0033】
従って、この実施の形態に係る空気電池Bによれば、図1及び図2に示すように、ケース単位の電池単体Baを、2つ直列に接続する。この場合には、連結用ケース1Cを1つ用い、内部に接触板17,正極部材20,含浸部材40,被覆材41,連続体42,イオン導電膜50及び負極部材30を収納して一つの一方ケース1Aと連結用ケース1Cの他方ケース1Bとを結合し、内部に接触板17,正極部材20,含浸部材40,被覆材41,連続体42,イオン導電膜50及び負極部材30を収納して一つの他方ケース1Bと連結用ケース1Cの一方ケース1Aとを連結する。この場合、連結用ケース1Cにおいては正極端子10のケース外端部10bと負極端子11のケース外端部11bとが一体になっているので、連結用ケース1Cの結合を行うだけで、電池単体Baを直列に接続することができ、接続作業を容易に行うことができる。一方ケース1A及び他方ケース1Bは、結合手段5としての雌ネジ6及び雄ネジ7によるネジ手段により結合ができるので、操作が容易になり、作業性が向上させられる。
【0034】
この状態においては、正極部材20と負極部材30との間に電解液が含浸される含浸部材40が介装されているので、負極部材30の電解液による化学反応と正極部材20での酸素消費とにより、正極部材20に接続された正極端子10と負極部材30に接続された負極端子11とから電気が取り出される。具体的には、例えば、負極部材30が亜鉛の場合で、電解液が、水酸化カリウム液の場合、正極部材20及び負極部材30では下記の化学反応がおこなわれる。
正極部材: O2 + 2H2 O+ 4e− → 4OH−
負極部材: Zn + 4OH− → Zn(OH)4 → ZnO + H2O + 2OH− +4e−
【0035】
この場合、正極部材20は、木炭なので、安価であり、また、酸素の捕獲効率がよく、確実に発電能力を発揮させることができる。特に、正極部材20は、木炭の粉粒体なので、酸素の捕獲効率が極めて良くなる。更に、接触板17により正極端子10の粉粒体に対する接触面積が実質的に大きくなっているので、確実に電通を確保することができる。更にまた、正極部材20と含浸部材40との間に、イオン導電膜50が介装されているので、イオンが通過し液体は非通過になることから、電解液がイオン導電膜50を通って、正極部材20に滲出していく事態が防止され、そのため、正極部材20に電解液が余分に浸透することが抑制されて悪影響がなく、確実に長期間の使用ができるようになる。
【0036】
そして、電解液が消費されて、発電機能が低下したならば、ケース1の結合手段5を解除して一方ケース1A及び他方ケース1Bを互いに離間させる。この状態では、正極部材20を構成する粉粒体の上面の含浸部材40の連続体42が露出し、連続体42に電解液を給液する。これにより、含浸部材40に電解液が浸透し、含浸部材40に電解液が容易に補給できる。この場合、電解液を連続体42に給液するだけで含浸部材40に電解液を浸透させることができるので、給液が極めて容易に行われる。
【0037】
そして、再び、結合手段5により一方ケース1A及び他方ケース1Bを結合する。この場合、一方ケース1A及び他方ケース1Bは、結合手段5としての雌ネジ6及び雄ネジ7によるネジ手段により結合を解除し、その後、結合できるので、操作が容易になり、作業性が向上させられる。即ち、カップ状の一方ケース1A及び他方ケース1Bを離間させるだけの極めて簡単な操作で、電解液を補給できることから、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
また、連結用ケース1Cにおいては正極端子10のケース外端部10bと負極端子11のケース外端部11bとが一体になっているので、連結用ケース1Cの結合の解除を行うだけで連結用ケース1Cの離間を容易に行うことができ、そのため、直列にしたものにおいても、極めて簡単な操作で、電解液を補給できることから、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
【0038】
これにより、電解液の補給により発電能力が容易に復旧し、使用が継続される。この場合、一方ケース1A及び他方ケース1Bを離間させ、電解液を補給するので、電解液を適量ずつ補給でき、そのため、正極部材20に電解液が余分に浸透しないので悪影響がなく、発電能力を容易に復旧して、長期間の使用ができるようになる。また、一方ケース1A及び他方ケース1Bの離間及び結合という簡易な操作で、電解液を補給できるので、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
【0039】
図3には、本発明の実施の形態において、ケース単位の電池単体Baを1つ用いて構成した場合を示す。これは、内部に接触板17,正極部材20,含浸部材40,被覆材41,連続体42,イオン導電膜50及び負極部材30を収納して一つの一方ケース1Aと一つの他方ケース1Bとを連結する。
図4には、本発明の実施の形態において、ケース単位の電池単体Baを、3つ以上直列に接続した場合を示す。この場合、連結用ケース1Cを2つ以上用い、中間においては、内部に接触板17,正極部材20,含浸部材40,被覆材41,連続体42,イオン導電膜50及び負極部材30を収納して連結用ケース1C同士を結合し、この結合した複数の連結用ケース1Cの両端に対して、上記と同様に、内部に接触板17,正極部材20,含浸部材40,被覆材41,連続体42,イオン導電膜50及び負極部材30を収納して、一方ケース1A及び他方ケース1Bを接続する。
【0040】
次に、本発明の第二の実施の形態に係る空気電池について詳細に説明する。
図5及び図6に示すように、本発明の第二の実施の形態に係る空気電池Bは、中空に形成され空気が流通するケース1と、ケース1内に設けられる正極部材20と、ケース1内に設けられる負極部材30と、ケース1内に設けられるとともに正極部材20と負極部材30との間に介装され電解液が含浸される含浸部材40と、正極部材20と含浸部材40との間に介装されるイオン導電膜50とを備えて構成されている。
【0041】
ケース1は、絶縁性の樹脂で形成されており、互いに結合及び離間可能に形成され離間時に含浸部材40を露出可能にする一方ケース1A及び他方ケース1Bを備えて構成されている。詳しくは、一方ケース1A及び他方ケース1Bは、底壁2及び側壁3からなり互いに結合される開口部4を有したカップ状に形成されている。一方ケース1Aは蓋状に形成され、他方ケース1Bは正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30を収納しうる大きさに形成されている。実施の形態では、空気は一方ケース1A及び他方ケース1Bの継ぎ目や端子の継ぎ目の隙間を通して流通させられる。別途孔を設けるようにしても良い。
【0042】
そして、一方ケース1A及び他方ケース1Bを互いに離間可能に結合する結合手段5が設けられている。この結合手段5は、一方ケース1A及び他方ケース1Bのいずれか一方(実施の形態では一方ケース1A)の開口部4内側に形成された雌ネジ6と、一方ケース1A及び他方ケース1Bのいずれか他方(実施の形態では他方ケース1B)の開口部4外側に形成され一方ケース1Aの雌ネジ6に螺合する雄ネジ7とを備えて構成されている。
【0043】
また、本空気電池Bには、ケース1を貫通してケース1に設けられ正極部材20に接続される正極端子10と、ケース1を貫通してケース1に設けられ負極部材30に接続される負極端子11とが備えられている。正極端子10は、一方ケース1Aの底壁2にこの底壁2を貫通して設けられ、負極端子11は他方ケース1Bの底壁2にこの底壁2を貫通して設けられている。正極端子10及び負極端子11は、底壁2を貫通する導電金属製のボルト12を備えて構成され、導電金属製のナット13により対応するケース1に固定されている。正極端子10のケース内側端部10a及び負極端子11のケース内側端部11aの少なくともいずれか一方(実施の形態では両方)は、一方ケース1A及び他方ケース1Bの結合時に対応する正極部材20若しくは負極部材30に弾接する導電性のコイルスプリング14,15で構成されている。コイルスプリング14,15は、その基端がボルト12に巻回されて取り付けられている。
これにより、正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30は、正極端子10のケース内側端部10aであるコイルスプリング14と、負極端子11のケース内側端部11aであるコイルスプリング15との間に、順に接触して介装されるようになる。
【0044】
また、実施の形態においては、正極端子10を設けた一方ケース1A及び負極端子11を設けた他方ケース1B内に、正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30を収納したケース単位の電池単体Baが、複数(実施の形態では2つ)直列に接続されている。そして、隣接する電池単体Baの一方ケース1Aと他方ケース1Bとの組が連結用ケース1Cとして構成されており、この連結用ケース1Cを構成する一方ケース1Aの正極端子10のケース外端部10bと、連結用ケース1Cを構成する他方ケース1Bの負極端子11のケース外端部11bとは一体形成されている。詳しくは、連結用ケース1Cを構成する一方ケース1Aの底壁2及び連結用ケース1Cを構成する他方ケース1Bの底壁2には、一本の導電金属製のボルト12(a)が貫通して設けられており、このボルト12(a)は、底壁2間に介装されたナット13(a)及び一方ケース1A及び他方ケース1Bのいずれか一方(実施の形態では一方ケース1A)内側のナット13(b)により固定されている。即ち、一本のボルト12(a)にすることにより、正極端子10のケース外端部10bと負極端子11のケース外端部11bとを一体形成している。
【0045】
また、本実施の形態に係る空気電池Bにおいて、正極部材20は、一端が含浸部材40に接触し他端が正極端子10のコイルスプリング14に接触して接続される木炭のブロックで構成されている。
木炭としては、種々の樹種のものが用いられる。例えば、ウバメガシを原材料とする備長炭をはじめ、クヌギ,コナラ,ミズナラ,カシ,カエデ,トネリコ,リョウブ,ヤチダモ,マテバシイ,ツバキ,サザンカ,竹等種々の樹種のものが用いられる。望ましくは、ナラ種(例えば岩手県産切炭)が優れ、水分の吸収率の低い、例えば、水分吸収率が10%以下のものが良い。
また、木炭としては、おがくず、樹皮(バーク)、もみがら等を原料として作ったものでもよい。
【0046】
また、木炭のブロックは、互いに連設される一対のブロック単体21,22で構成されており、一方のブロック単体21をその一端面21a及び他端面21bに板目が表出するように形成し、他方のブロック単体22をその一端面22a及び他端面22bに木口が表出するように形成し、一方のブロック単体21の他端面21bと他方のブロック単体22の一端面22aとを接合し、一方のブロック単体21の一端面21aを、含浸部材40及び正極端子10のいずれか一方(実施の形態では正極端子10)に接触させ、他方のブロック単体22の他端面22bを、含浸部材40及び正極端子10のいずれか他方(実施の形態では含浸部材40)に接触させている。
【0047】
負極部材30は、導電性金属板で構成されている。金属の種類としては、例えば、マグネシウム,亜鉛,アルミニウムあるいはこれらの合金等適宜のものが用いられる。
この負極部材30の金属板の正極部材20側の外周縁部には、含浸部材40を囲繞する非導電性の壁体31が付設されている。この壁体31は、絶縁性の例えばゴム板をリング状にしたもので形成されており、接着剤により負極部材30に接着されている。
【0048】
含浸部材40は、例えば、有機若しくは無機の部材からなる、例えば、パルプ材、化学繊維,天然繊維の不織布または織布からなる。この含浸部材40には、米糠が付帯されている。また、含浸部材40として、薩摩芋を蒸したもの、炭の粉と薄力粉とを水を加えて混合して焼成したもの等も用いることができる。
含浸部材40に含浸させる電解液としては、例えば、塩化ナトリウム溶液,塩化カリウム溶液,水酸化カリウム溶液,塩化アンモニウム溶液,希硫酸,木酢液等適宜のものが用いられる。
また、正極部材20と含浸部材40との間には、イオン導電膜50が介装されているが、このイオン導電膜50としては、セロハン等の半透膜を用い、あるいは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の微多孔膜が用いられる。
【0049】
従って、この実施の形態に係る空気電池Bによれば、図5及び図6に示すように、ケース単位の電池単体Baを、2つ直列に接続する。この場合には、連結用ケース1Cを1つ用い、内部に正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30を収納して一つの一方ケース1Aと連結用ケース1Cの他方ケース1Bとを結合し、内部に正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30を収納して一つの他方ケース1Bと連結用ケース1Cの一方ケース1Aとを連結する。この場合、連結用ケース1Cにおいては正極端子10のケース外端部10bと負極端子11のケース外端部11bとが一体になっているので、連結用ケース1Cの結合を行うだけで、電池単体Baを直列に接続することができ、接続作業を容易に行うことができる。一方ケース1A及び他方ケース1Bは、結合手段5としての雌ネジ6及び雄ネジ7によるネジ手段により結合ができるので、操作が容易になり、作業性が向上させられる。
【0050】
この状態においては、正極部材20と負極部材30との間に電解液が含浸される含浸部材40が介装されているので、負極部材30の電解液による化学反応と正極部材20での酸素消費とにより、正極部材20に接続された正極端子10と負極部材30に接続された負極端子11とから電気が取り出される。具体的には、例えば、負極部材30が亜鉛の場合で、電解液が、水酸化カリウム液の場合、正極部材20及び負極部材30では下記の化学反応がおこなわれる。
正極部材: O2 + 2H2 O+ 4e− → 4OH−
負極部材: Zn + 4OH− → Zn(OH)4 → ZnO + H2O + 2OH− +4e−
【0051】
この場合、ケース1内においては、コイルスプリング14,15が正極部材20及び負極部材30に弾接して、正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30を押圧して押えているので、保持が確実になり、発電が確実に行われる。また、この場合、負極部材30の正極部材20側の外周縁部に含浸部材40を囲繞する非導電性の壁体31が付設されているので、含浸部材40が壁体31により囲繞されることから、電解液が周囲に滲出しにくくなり、そのため、ケース1内を汚したりして悪影響を与える事態が防止される。また、含浸部材40には米糠が付帯させられているので、それだけ、電解液の保持が確実になり、この点でも電解液が周囲に滲出しにくくなる。
【0052】
また、正極部材20は、木炭なので、安価であり、また、酸素の捕獲効率がよく、確実に発電能力を発揮させることができる。この木炭のブロックにおいては、板目が表出したブロック単体21と、木口が表出したブロック単体22とが連設されているので、木炭の繊維方向が、縦と横との組み合わせになり、そのため、イオンの導電性が均一になり、それだけ、発電が安定化させられる。更にまた、正極部材20と含浸部材40との間に、イオン導電膜50が介装されているので、イオンが通過し液体は非通過になることから、電解液がイオン導電膜50を通って、正極部材20に滲出していく事態が防止され、そのため、正極部材20に電解液が余分に浸透することが抑制されて悪影響がなく、確実に長期間の使用ができるようになる。
【0053】
そして、電解液が消費されて、発電機能が低下したならば、ケース1の結合手段5を解除して一方ケース1A及び他方ケース1Bを互いに離間し、含浸部材40を露出させる。この状態で、露出した含浸部材40に電解液を補給し、再び、結合手段5により一方ケース1A及び他方ケース1Bを結合する。この場合、一方ケース1A及び他方ケース1Bは、結合手段5としての雌ネジ6及び雄ネジ7によるネジ手段により結合を解除し、その後、結合できるので、操作が容易になり、作業性が向上させられる。即ち、カップ状の一方ケース1A及び他方ケース1Bを離間させるだけで、正極部材20,含浸部材40及び負極部材30を取出し、含浸部材40を露出させることができるので、極めて簡単な操作で、電解液を補給できることから、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
また、連結用ケース1Cにおいては正極端子10のケース外端部10bと負極端子11のケース外端部11bとが一体になっているので、連結用ケース1Cの結合の解除を行うだけで連結用ケース1Cの離間を容易に行うことができ、正極部材20,含浸部材40及び負極部材30を容易に取出して含浸部材40を露出させることができ、そのため、直列にしたものにおいても、極めて簡単な操作で、電解液を補給できることから、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
【0054】
これにより、電解液の補給により発電能力が容易に復旧し、使用が継続される。この場合、一方ケース1A及び他方ケース1Bを離間させ、含浸部材40を露出させて電解液を補給するので、電解液を適量ずつ補給でき、そのため、正極部材20に電解液が余分に浸透しないので悪影響がなく、発電能力を容易に復旧して、長期間の使用ができるようになる。また、一方ケース1A及び他方ケース1Bの離間及び結合という簡易な操作で、電解液を補給できるので、それだけ、補給作業が簡単であり、作業性が向上させられる。
【0055】
図7には、本発明の第二の実施の形態において、ケース単位の電池単体Baを1つ用いて構成した場合を示す。これは、内部に正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30を収納して一つの一方ケース1Aと一つの他方ケース1Bとを連結する。
尚、本発明の第二実施の形態においても、図4に示すように、ケース単位の電池単体Baを、3つ以上直列に接続することができる。この場合、連結用ケース1Cを2つ以上用い、中間においては、内部に正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30を収納して連結用ケース1C同士を結合し、この結合した複数の連結用ケース1Cの両端に対して、上記と同様に、内部に正極部材20,イオン導電膜50,含浸部材40及び負極部材30を収納して、一方ケース1A及び他方ケース1Bを接続する。
【0056】
尚、上記実施の形態において、正極部材20として、木炭の一対のブロック単体21,22を用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ブロック一個にしても良く適宜変更して差支えない。また、正極部材20として、木炭を用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、木炭以外の炭素材料を採用してよい。例えば、炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリル、フラーレンおよび活性炭の1種若しくは2種以上を選択できる。例えば、活性炭を用いる場合、撥水剤を添加してブロック化することが望ましい。撥水剤としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレンなどを用いることができる。撥水剤の採用により、正極部材20の酸素の捕獲効率を向上させることができる。
また、上記実施の形態においては、正極部材20として、金属を用いても良いことは勿論である。
【0057】
更にまた、実施の形態において、結合手段5は、ネジ手段で構成したが必ずしもこれに限定されるものではなく、一方ケース1Aと他方ケース1Bとを互いにフックで引っ掛けて連結する手段、バンドを用いて束ねて結合する手段など、どのような手段で構成しても良く、適宜変更して差支えない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明においては、電解液を正極部材に悪影響を与えないようにして適量ずつ補給できるようにし、発電能力を容易に復旧できるようにして長期間使用ができるようにしたので、例えば、電池単体Baを直列にして立設可能な筒状の容器に収容し、この容器の上部に点滅型の発光ダイオードを防水して付設してこれの電源として用いた点滅器に応用できる。この点滅器は、長時間発光ダイオードを点滅させることができるので、例えば、ゴミ収集所などに設置して動物を忌避する装置として用いることができるなど、種々の機器に利用することができる。また、例えば、電池単体Baを収納した台に蝋燭本体を立設し、蝋燭本体の炎の部分に電池単体Baに接続された発光ダイオードを設け、これを和紙で覆って蝋燭様にした疑似蝋燭に用いることもできる。
【符号の説明】
【0059】
B 空気電池
Ba 電池単体
1 ケース
1A 一方ケース
1B 他方ケース
1C 連結用ケース
2 底壁
3 側壁
4 開口部
5 結合手段
6 雌ネジ
7 雄ネジ
10 正極端子
10a ケース内側端部
10b ケース外端部
11 負極端子
11a ケース内側端部
11b ケース外端部
12 ボルト
13 ナット
14,15 コイルスプリング
16 接続体
17 接触板
20 正極部材
21,22 ブロック単体
30 負極部材
31 壁体
40 含浸部材
41 被覆材
42 連続体
50 イオン導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空に形成され空気が流通するケースと、該ケース内に設けられる正極部材と、上記ケース内に設けられる負極部材と、上記ケース内に設けられるとともに上記正極部材と負極部材との間に介装され電解液が含浸される含浸部材と、上記ケースを貫通して該ケースに設けられ上記正極部材に接続される正極端子と、上記ケースを貫通して該ケースに設けられ上記負極部材に接続される負極端子とを備えた空気電池であって、
上記ケースを、互いに結合及び離間可能に形成され離間時に上記含浸部材に電解液を補充可能にする一方ケース及び他方ケースを備えて構成し、該一方ケース及び他方ケースを互いに離間可能に結合する結合手段を備えたことを特徴とする空気電池。
【請求項2】
上記一方ケース及び他方ケースを底壁及び側壁からなり互いに結合される開口部を有したカップ状に形成し、上記正極端子を上記一方ケースの底壁に該底壁を貫通して設け、上記負極端子を上記他方ケースの底壁に該底壁を貫通して設け、上記正極部材及び負極部材のいずれか一方を粉粒体で構成し、上記正極部材及び負極部材のいずれか他方を対応する端子のある上記一方ケース及び他方ケースのいずれかに収容される柱状体で構成し、該柱状体に上記含浸部材を付帯し、上記粉粒体を上記含浸部材に接触するように上記柱状体が収納されるケース内であって該含浸部材の周囲に詰込んだことを特徴とする請求項1記載の空気電池。
【請求項3】
上記粉粒体に接続される端子のケース内側端部を、該端子が設けられるケースの底壁内面に設けられる導電金属製の接続体と、上記粉粒体が詰め込まれたケースの内壁面に付設され上記接続体に接触するとともに上記粉粒体と接触する導電金属製の接触板とを備えて構成したことを特徴とする請求項2記載の空気電池。
【請求項4】
上記粉粒体の上面に粉粒体を被覆する被覆材を付設し、該被覆材の上面に、上記含浸部材に連続し上記一方ケース及び他方ケースの離間時に電解液が給液されて上記含浸部材に電解液を浸透させる連続体を設けたことを特徴とする請求項2または3記載の空気電池。
【請求項5】
上記正極部材を炭素材料からなる粉粒体で構成し、上記負極部材を柱状体で構成したことを特徴とする請求項2乃至4何れかに記載の空気電池。
【請求項6】
上記正極部材を、木炭で構成したことを特徴とする請求項5記載の空気電池。
【請求項7】
上記一方ケース及び他方ケースを底壁及び側壁からなり互いに結合される開口部を有したカップ状に形成し、上記正極端子を上記一方ケースの底壁に該底壁を貫通して設け、上記負極端子を上記他方ケースの底壁に該底壁を貫通して設け、上記正極端子のケース内側端部と上記負極端子のケース内側端部との間に上記正極部材,含浸部材及び負極部材を順に介装したことを特徴とする請求項1記載の空気電池。
【請求項8】
上記正極端子のケース内側端部及び上記負極端子のケース内側端部の少なくともいずれか一方を、上記一方ケース及び他方ケースの結合時に対応する正極部材若しくは負極部材に弾接する導電性のコイルスプリングで構成したことを特徴とする請求項7記載の空気電池。
【請求項9】
上記負極部材を、導電性金属板で構成し、該負極部材の正極部材側の外周縁部に上記含浸部材を囲繞する非導電性の壁体を付設したことを特徴とする請求項7または8記載の空気電池。
【請求項10】
上記正極部材を、一端が上記含浸部材に接触し他端が上記正極端子に接続される炭素材料を用いたブロックで構成したことを特徴とする請求項7乃至9何れかに記載の空気電池。
【請求項11】
上記正極部材を、一端が上記含浸部材に接触し他端が上記正極端子に接続される木炭のブロックで構成したことを特徴とする請求項10記載の空気電池。
【請求項12】
上記ブロックを、互いに連設される一対のブロック単体で構成し、一方のブロック単体をその一端面及び他端面に板目が表出するように形成し、他方のブロック単体をその一端面及び他端面に木口が表出するように形成し、該一方のブロック単体の他端面と他方のブロック単体の一端面とを接合し、上記一方のブロック単体の一端面を、上記含浸部材及び正極端子のいずれか一方に接触させ、上記他方のブロック単体の他端面を、上記含浸部材及び正極端子のいずれか他方に接触させたことを特徴とする請求項11記載の空気電池。
【請求項13】
上記正極部材と含浸部材との間に、イオン導電膜を介装したことを特徴とする請求項2乃至12何れかに記載の空気電池。
【請求項14】
上記結合手段を、上記一方ケース及び他方ケースのいずれか一方の開口部内側に形成された雌ネジと、上記一方ケース及び他方ケースのいずれか他方の開口部外側に形成され上記雌ネジに螺合する雄ネジとを備えて構成したことを特徴とする請求項2乃至13何れかに記載の空気電池。
【請求項15】
上記正極端子を設けた一方ケース及び負極端子を設けた他方ケース内に上記正極部材,含浸部材及び負極部材を収納したケース単位の電池単体を複数直列に接続し、隣接する電池単体の一方ケースと他方ケースとの組を連結用ケースとして構成し、該連結用ケースを構成する一方ケースの正極端子のケース外端部と、該連結用ケースを構成する他方ケースの負極端子のケース外端部とを一体形成したことを特徴とする請求項2乃至14何れかに記載の空気電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−186727(P2010−186727A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79108(P2009−79108)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(302031579)東北通信工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】