説明

空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤

【課題】
空胞化毒素産生菌の増殖を抑制する新たな物質を提供すること。
【解決手段】
焼成した貝殻からの抽出物を含有してなる空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤とする。また、抽出物は、溶媒に対し10%以上含有してなる空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤とし、貝殻は、ホタテ貝の貝殻であることを特徴とする空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空胞化毒素産生菌(Helicobacterpylori)の増殖抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
空胞化毒素産生菌は、人体の胃の粘膜に生息し胃の粘膜の炎症を引き起こし、慢性胃炎や胃潰瘍の発生に関係するものと考えられている。慢性胃炎や胃潰瘍に罹患した場合であって空胞化毒素産生菌の感染が判明した場合、一般には抗生物質による根本治療が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗生物質は非常に有効な除菌方法であるが、他の細菌を除菌する場合もあり唯一無二とまでは言いえず、空胞化毒素産生菌の他の除菌方法について検討を行うことは有用であると考えられる。
【0004】
ところで一方、貝殻を焼成し、その貝殻を溶媒に溶かし、その上澄みから得られる抽出液を用いて大腸菌等を除菌する報告がある(吉田朋央ら、“ホタテ貝殻セラミックスの抗菌機能について”、八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要第1巻、p117−120、平成15年3月)。しかし、その報告においても、空胞化毒素産生菌についての報告はない。
【0005】
そこで本発明は、空胞化毒素産生菌の増殖を抑制する新たな物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、空胞化毒素産生菌の増殖を抑制する新たな物質について種々の検討を行っていたところ、貝殻焼成後の粉末からの抽出物を空胞化毒素産生菌に対し投与することで当該菌の増殖を抑制することができることを発見した。
【0007】
即ち、本発明に係る空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤は、焼成した貝殻からの抽出物を含んでなることを特徴とする。なお抽出物は、溶媒に対し10%(体積%を意味する。以下同じ)以上含有してなることがより望ましく、溶媒としては特段制限は無いが、例えばバッファや水などを用いることができる。更に、貝殻としては例えばホタテ貝の貝殻を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
以上により、空胞化毒素産生菌の増殖を抑制する新たな物質として提供できる。本物質では、ピロリ菌が混入した試料から、ピロリ菌の除去を加熱処理なしでできるという利点も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、ホタテ貝を焼成した粉末1g、水100ccを試験管に加え、その上澄み液を抽出物として得た。そしてこの抽出物に対し様々な濃度(1%、10%、50%、100%)でPBSバッファにより希釈した溶液を得た。
【0010】
次に、この溶液を、空胞化毒素産生菌を撒いたプレートに200μl塗布し、培養を行うことで。なお空胞化毒素産生菌の培養は、ヘリコバクター寒天培地(日水製薬社製)にATCC49503株を撒き、微好気性の条件下、37℃で3日間培養することによって行った。なお効果の比較のため、上記抽出物を含まないPBSバッファのみの溶液も塗布することにより行った。この結果を図1に示す。図1(A)は抽出物0%(PBSバッファのみ)、(B)は抽出物1%、(C)は抽出物10%、(D)は抽出物50%、(E)は抽出物100%の結果を示す。
【0011】
図1に示す結果によると、抽出物を0%又は1%含有する抽出物の場合においては空胞化毒素産生菌の増殖を抑えることができていなかったが、抽出物を10%以上含有する溶液においては有意に空胞化毒素産生菌の増殖を抑えることができることを確認した。なお特に本溶液はPBSバッファを用いているため、中性であっても空胞化毒素産生菌の増殖を抑制することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0012】
以上本発明によると、空胞化毒素産生菌の増殖を抑制する新たな物質を提供することができ、この物質は空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤として市販可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】抽出液を含有する溶液をヘリコバクター寒天培地に塗布して培養した結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成した貝殻からの抽出物を含有してなる空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤。
【請求項2】
前記抽出物は、溶媒に対し10%以上含有してなる請求項1記載の空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤。
【請求項3】
前記貝殻は、ホタテ貝の貝殻であることを特徴とする請求項1記載の空胞化毒素産生菌の増殖抑制剤。


【図1】
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【公開番号】特開2006−342082(P2006−342082A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168197(P2005−168197)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】