空調システム
【課題】エネルギー効率がよく、メンテナンスコストが安価な手術室用の空調システムを提供する。
【解決手段】本発明は、手術台205が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、前記手術台205の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出すHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210と、前記HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出すHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220と、を有し、鉛直方向の投影を行ったとき、前記HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210が形成するHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210投影面が、前記手術台205が形成する手術台205投影面を含むことを特徴とする。
【解決手段】本発明は、手術台205が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、前記手術台205の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出すHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210と、前記HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出すHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220と、を有し、鉛直方向の投影を行ったとき、前記HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210が形成するHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210投影面が、前記手術台205が形成する手術台205投影面を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い清浄度が要求される手術室(バイオクリーンルーム)に好適な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科手術などの一部の特殊な手術において利用される手術室の中には、クリーンルームの清浄度クラス100を達成することが求められるものがある。従来はこのような清浄度を保つために採用されていた空調システムでは、手術室の天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設けて、HEPAフィルタで浄化された空気をこの吹き出し口全面から吹き出させるようにしていた。特許文献1(特開平11−218353号公報)には、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を有するクリーンルームが開示されている。
【特許文献1】特開平11−218353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の手術室に採用されていた空調システムにおいては、上記のように天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設け、この吹き出し口全面を利用して空気を送り出す必要があったために、空気の搬送動力が非常に大きくなり、エネルギー効率が悪い、という問題があった。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタを用いる必要があるため、これを維持するためのメンテナンスコストが非常に高価である、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、手術台が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、前記手術台の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、前記第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口と、を有し、鉛直方向の投影を行ったとき、前記第1吹き出し口が形成する第1吹き出し口投影面が、前記手術台が形成する手術台投影面を含むことを特徴とする。
【0005】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空調システムにおいて、前記第1吹き出し口から吹き出される空気は、鉛直下方に向けられた一方向流であることを特徴とする。
【0006】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の空調システムにおいて、前記第2吹き出し口から吹き出される空気は、前記手術台がない方向に向けられた一方向流であることを特徴とする。
【0007】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第2吹き出し口に設けられるフィンは、鉛直下方の方向に対して所定の角度をなすように配されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第2吹き出し口に設けられるフィンは、前記第1吹き出し口から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されることを
特徴とする。
【0009】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第2吹き出し口が複数の吹き出し区画を有しており、前記第1吹き出し口から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項7に係る発明は、手術台が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、前記手術台の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、前記第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第2吹き出し口と、前記第2吹き出し口の周囲に設置され、前記第2の風速より遅い第3の風速で空気を吹き出す第3吹き出し口と、を有し、鉛直方向の投影を行ったとき、前記第1吹き出し口が形成する第1吹き出し口投影面が、前記手術台が形成する手術台投影面を含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項8に係る発明は、請求項7に記載の空調システムにおいて、前記第1吹き出し口及び前記第2吹き出し口から吹き出される空気は、鉛直下方に向けられた一方向流であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項9に係る発明は、請求項7又は請求項8に記載の空調システムにおいて、前記第3吹き出し口から吹き出される空気は、前記手術台がない方向に向けられた一方向流であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項10に係る発明は、請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第3吹き出し口に設けられるフィンは、鉛直下方の方向に対して所定の角度をなすように配されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項11に係る発明は、請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第3吹き出し口に設けられるフィンは、前記第1吹き出し口から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項12に係る発明は、請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第3吹き出し口が複数の吹き出し区画を有しており、前記第1吹き出し口から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項13に係る発明は、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記手術台の天面より下方に配される下部排気口と、前記手術台の天面より上方に配される上部排気口と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空調システムは、手術台の面積を含む程度の広さであり、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、この第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口と、を有しており、このような本発明の空調システムによれば、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設ける必要がなく、エネルギー効率が向上する。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタが必要でなく、HEPAフィルタ面積を縮小できるため、メンテナンスコストが安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る空調システムを適用した手術室の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る空調システムにおける手術台・HEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口の配置関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る空調システムよって吹き出される空気を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口のフィン配置を説明する図である。
【図5】CFD解析結果を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口のフィン配置を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口の構成を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口の構成を説明する図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る空調システムにおける手術台・HEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口の配置関係を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る空調システムが適用された手術室の概略を示す図である。
【図11】実施例に係る空調システムが適用された手術室の平面図・断面図を示す図である。
【図12】術野上部の断面風速分布を示す図である。
【図13】清浄度の測定結果を示す図である。
【図14】下部排気口230aと上部排気口230bの寸法と排気風量を示す図である。
【図15】上部排気口230bが設けられていない場合の比較例に係る測定結果を示す図である。
【図16】上部排気口230bが設けられた実施例に係るに係る測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態に係る空調システム100を適用した手術室の概要を示す図である。図1において、100は空調システム、110は空調機、120はフィルタ、131は第1送風ファン、132は第2送風ファン、133は第3送風ファン、134は第4送風ファン、141は第1ダンパー、142は第2ダンパー、143は第3ダンパー、150は吸気口、151はフィルタ、160は排気口、205は手術台、210はHEPAフィルタ内蔵吹き出し口、211はHEPAフィルタ、220はHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口、221はHEPAフィルタ、230は換気口をそれぞれ示している。
【0020】
本実施形態に係る空調システム100は、比較的高い清浄度が要求される手術室(バイオクリーンルーム)に適用されるものであり、かつ、エネルギー効率を向上させ、メンテナンスコストを安価とするために、清浄度クラス100を達成する空間を手術台上の術野に限定する、という発想に基づいて構成されてなるものである。本発明に係る空調システ
ム100においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210を従来の1/3程度として、小風量でも効率よく術野の清浄度を保つことにより、手術室全体のエネルギー消費量を削減するようにしている。
【0021】
本発明に係る空調システム100では、風量を削減しても術野における清浄度クラス100を達成するために(1)周囲からの汚染質が術野に侵入することを防ぐ、弱いエアーカーテンを形成可能なHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220を、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の周囲に設けること、及び、(2)術野近傍で発生した汚染質を周囲へ押しやるために、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より速くするように調整すること、の2点が重要であることを、CFD(Computational Fluid Dynamics)による流体解析を行うことにより実証した。
【0022】
以下、図1を参照して本発明に係る空調システム100の構成例を説明する。図1において、各構成間を結ぶ、矢印が付された黒線はダクトを示しており、矢印の方向はダクト中を流通する空気の方向を示している。空調システム100における空調機110は、取り入れられた空気を、内蔵している冷却器、加熱器、加湿器、フィルタ(いずれも図示略)により温湿度調整と粉塵除去などを、ダクトに送り出すものである。
【0023】
この空調機110から送り出された空気は、フィルタ120を通過した後、手術台205の天井部に設置されたHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210に向かうダクト、及びHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の周囲に設けられたHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に向かうダクトを流通するようになっている。HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210には、不図示のフィルタホルダが設けられており、このフィルタホルダにHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ211が装着されることにより、塵埃や浮游細菌などが除かれた浄化された空気を、手術台205に向けて吹き出すことができるようになっている。本実施形態においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210は、手術台205の上部に配置する。
【0024】
なお、特許請求の範囲における「第1吹き出し口」はHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210のことを、また、「第2吹き出し口」はHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220のことをそれぞれ上位概念的に示したものである。
【0025】
HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210に向かうダクト中には第1送風ファン131が、また、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に向かうダクト中には第2送風ファン132が設けられており、これらの送風ファンが制御されることによって、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気が第1の風速となるように、また、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気が第1の風速より遅い第2の風速となるように調整している。また、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220には、不図示のフィルタホルダが設けられており、このフィルタホルダにHEPAフィルタ221が装着されることにより、塵埃や浮游細菌などが除かれた浄化された空気をエアーカーテンとして吹き出すことが可能に構成されている。
【0026】
図2は本発明の実施形態に係る空調システムにおける手術台205、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の配置関係を示す図である。図2に示すように、鉛直方向の投影を行ったとき、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210が形成するHEPAフィルタ内蔵吹き出し口投影面は、手術台205が形成する手術台投影面を含むようにされている。本発明に係る空調システム100においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の吹き出し面積としては、手術台の面
積を含む程度であればよく、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口を天井面ほぼ全面に相当する面積とする必要はない。したがって、本発明に係る空調システム100によれば、エネルギー効率が向上し、メンテナンスコストが安価となるのである。
【0027】
図3は本発明の実施形態に係る空調システムよって吹き出される空気を模式的に示す図である。本発明に係る空調システム100においては、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気のそれより遅くするようにしているが、これによれば、図3に示すように、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の鉛直下方のエリアで発生した塵埃は、当該エリアを囲む弱いエアーカーテンのエリアに排出されやすい傾向があるものと推察される。これに対して、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気のそれより速く設定すると、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の鉛直下方のエリアで発生した塵埃は、エアーカーテンのエリアに排出されにくい傾向があるものと推察される。
【0028】
再び図1に戻り、第3送風ファン133の吸引力によって、手術室内の空気は、換気口230によって引き込まれ、一部は空調機110に戻され再び循環され、残りは排気口160から排出される。手術室内の空気の吸い込み口として、床部に近い高さに設けられている換気口230は、床部からの気流の巻き上がりや乱流を防止する機能を有している。
【0029】
換気口230によって手術室内から引き込まれた空気をどの程度の割合で空調機110に戻し、どの程度の割合で排気口160から排気するかを決めるのは第1ダンパー141及び第2ダンパー142である。これらのダンパーは不図示の制御部によって適宜制御される。一方、屋外からの空気は、フィルタ151が設けられた吸気口150から、第4送風ファン134の吸引力によって、空調機110に引き込まれる。吸気口150と空調機110とを結ぶダクトの間には第3ダンパー143が設けられ、屋外からの空気の取り込み量などが制御される。
【0030】
ここで、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210内、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220内におけるフィンのレイアウトについて説明する。このようなフィンは、各吹き出し口から吹き出される空気の流れを決めるものである。図4は本発明の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、及び、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220のフィン配置を説明する図である。なお、フィンの枚数は図示されるものに限定されるものではない。
【0031】
図4に示すように、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210内には、パンチングメタルやメッシュなどの複数の細孔を有する制風部材215が設けられており、この制風部材215によって、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出される空気は、図3に示すように鉛直下方に向けられた均一な一方向流となる。
【0032】
また、図4に示すように、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に設けられるフィン225は、鉛直下方の方向に対して所定の角度θ0をなすように配されて
いる。これにより、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出される空気は、図3に示すように、手術台205がない方向に向けられた一方向流となる。
【0033】
次に、以上のように構成される本発明に係る空調システム100のCFD解析結果について説明する。今回、本発明に係る空調システム100による効果を確認するために、(従来例)、(比較例)、(本発明)の3つの場合でCFD解析を行った。CFD解析を行った対象となる各空調システムの特徴点について説明する。
【0034】
(従来例)は手術室天井面ほぼ全面に、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口を設けたケースである。HEPAフィルタ内蔵吹き出し口は33.5m2とした。
【0035】
(比較例)は手術台205が設置された位置の天井部に、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210を設け、その周囲にHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220を配置し、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速が、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より速くなるように設定したケースである。(比較例)においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の面積は8.64m2とし、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の面
積は2.56m2とした。また、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空
気の風速は0.35m/sとし、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速は0.77m/sとした。
【0036】
(本発明)は手術台205が設置された位置の天井部に、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210を設け、その周囲にHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220を配置し、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速が、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より遅くなるように設定したケースである。(本発明)においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の面積は8.64m2とし、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の面
積は2.56m2とした。また、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空
気の風速は0.45m/sとし、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速は0.3m/sとした。
【0037】
以上の特徴点を除いて、以下に示すものは、(従来例)、(比較例)、(本発明)の各CFD解析で共通な諸条件である。
手術室面積:72m2
(1)手術室内設置物による発熱条件
LED無影灯(大) 70W
LED無影灯(小) 60W
監視モニター(17インチ) 400W
電子カルテ用モニター(42インチ) 330W
モニター(42インチ) 330W
(2)手術室内人員による発熱条件
7人×78W/人 546W
(3)発塵量
3人(400,000個/min・人)
図5は以上のような条件でCFD解析を行った結果を示す図であり、図5(A)は(従来例)の条件に基づく結果であり、図5(B)は(比較例)の条件に基づく結果であり、図5(C)は(本発明)の条件に基づく結果である。
【0038】
図5(A)の(従来例)の結果を参照すると、床面の一部に塵埃の密度が高いエリアが存在するのみであり、手術室内全体にわたって良好な清浄度が保たれていることがわかる。ただ、比較的大面積のHEPAフィルタ内蔵吹き出し口からの送風を維持するために、エネルギー効率が悪く、メンテナンスコストもかかることとなる。
【0039】
図5(B)の(比較例)の結果を参照すると、無影灯の下部から手術台にわたる重要な領域において、清浄度が損なわれていることがわかる。(比較例)のようにHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より遅くするように設定すると、術野において良好な清浄度が保てないことがわかる。
【0040】
図5(C)の(本発明)の結果を参照すると、床面の一部に塵埃の密度が高いエリアが存在し、さらに手術台と離れたところで比較的塵埃の密度が高いエリアが存在するが、無影灯の下部から手術台にわたる重要なエリアにおける清浄度は高いことがわかる。(本発明)のようにHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より速くするように設定すると、術野において良好な清浄度が保てることがわかる。
【0041】
以上のように、本発明の空調システム100は、手術台205の面積を含む程度の広さで、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出すHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210と、このHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出すHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220と、を有しており、このような本発明の空調システム100によれば、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設ける必要がなく、エネルギー効率が向上する。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタが必要でないため、メンテナンスコストが安価となる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態は、先の実施形態とHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220内におけるフィンの配置が相違するのみであるので、以下、このような相違点について説明する。図6は本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、及び、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220のフィン配置を説明する図である。
【0043】
図6に示すように、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210内には、パンチングメタルやメッシュなどの複数の細孔を有する制風部材215が設けられており、この制風部材215によって、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出される空気は、図3に示すように鉛直下方に向けられた均一な一方向流となる。このHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の吹き出し口については先の実施形態と同様のものである。
【0044】
これに対して、また、図6に示すように、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に設けられるフィン225は、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されている。より具体的にはフィン225が鉛直線となす角度を図示のように定義すると、θ1
<θ2<θ3<θ4・・・となるようにフィン225の配置が決められている。このような
フィン225の配置によっても、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出される空気は、図3に示すように、手術台205がない方向に向けられた一方向流となり、さらに、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の鉛直下方のエリアで発生した塵埃は、当該エリアを囲む弱いエアーカーテンのエリアに排出されやすい傾向となり、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。なお、フィンの枚数は図示されるものに限定されるものではない。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態は、先の実施形態とHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の構成が異なるので、以下、この点について説明する。図7は本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、及びHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の構成を説明する図である。
【0046】
本実施形態においては、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220は、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210に近い内周側の第1の区画と、その外周の第2の区画とに分かれており、第1の区画から吹き出される空気の風速をV2、第1の区画から吹
き出される空気の風速をV3としている。なお、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210
の構成は、これまでの実施形態と同様であり、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出される空気の風速はV1であり、V1>V2、V1>V3の関係が維持されている。
【0047】
本実施形態では、さらにHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に形成された区画における風速の関係として、V2>V3の関係が成立するように風速が設定されている。すなわち、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220が複数の吹き出し区画を有しており、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定される。なお、図7に示す実施形態では、区画数は2であるが、これより多く設定しても良い。また、本実施形態においても、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220は、手術台205がない方向に向けられた一方向流を形成するように不図示のフィンが配置されている。
【0048】
図7に示すような風速の設定によっても、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の鉛直下方のエリアで発生した塵埃は、当該エリアを囲む弱いエアーカーテンのエリアに排出されやすい傾向となり、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0049】
以上、本発明の空調システム100は、手術台205の面積を含む程度の広さであり、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口(HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210)と、この第1吹き出し口(HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210)の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口(HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220)と、を有しており、このような本発明の空調システム100によれば、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設ける必要がなく、エネルギー効率が向上する。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタが必要でないため、メンテナンスコストが安価となる。
【0050】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。以下において説明する実施形態は、特許請求の範囲の請求項7乃至請求項12に対応するものである。
【0051】
本実施形態は、これまで説明した実施形態とHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の構成が異なるので、以下、この点について説明する。図8は本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、及びHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の構成を説明する図である。
【0052】
本実施形態においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210は内周側の第1の区画と、その外周の第2の区画とに分かれており、第1の区画から吹き出される空気の風速をV1、第2の区画から吹き出される空気の風速をV2としている。なお、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の構成は、これまでの実施形態と同様である。本実施形態においては、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出される空気の風速をV3としている。
【0053】
また、特許請求の範囲の請求項7乃至請求項12においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1の区画に対応する吹き出し口を「第1吹き出し口」、HEPAフィ
ルタ内蔵吹き出し口210の第2の区画に対応する吹き出し口を「第2吹き出し口」、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220を「第3吹き出し口」として表現している。
【0054】
本実施形態では、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1の区画から吹き出される空気の風速V1と、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第2の区画から吹き出さ
れる空気の風速V2と、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き
出される空気の風速V3との間にV1>V2>V3の関係が成立するように風速が設定されている。
【0055】
本実施形態においては上記のような風速の関係の他に、
図9は本発明の他の実施形態に係る空調システムにおける手術台205、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の配置関係を示す図である。図9に示すように、鉛直方向の投影を行ったとき、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1区画が形成するHEPAフィルタ内蔵吹き出し口投影面は、手術台205が形成する手術台投影面を含むようにされている。本発明に係る空調システム100においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1区画の吹き出し面積としては、手術台の面積を含む程度であればよく、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口を天井面ほぼ全面に相当する面積とする必要はない。したがって、本発明に係る空調システム100によれば、エネルギー効率が向上し、メンテナンスコストが安価となるのである。
【0056】
上記のようなHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210に第1区画と第2区画とを設けるようにした実施形態に対し、これまで説明してきた各実施形態を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図10は本発明の他の実施形態に係る空調システムが適用された手術室の概略を示す図である。図10に示す手術室は、図9に示した実施形態の空調システムが適用された例である。さらに、本実施形態においては、手術台205の天面より下方に複数の下部排気口230aが配されると共に、手術台205の天面より上方に複数の上部排気口230bが配されることを特徴としている。上部排気口230bの総開口面積は、下部排気口230aの総開口面積の1/4程度が好ましい。このような手術台205の天面より上方に上部排気口230bが設けられることで、手術室における手術台205設置箇所以外の上方空間に停滞しがちな塵埃を効果的に排気することができる。なお、本実施形態においては、上部排気口230bを手術室の側壁に設けるようにしたが、本発明では、上部排気口230bは手術台205の天面より上方であれば、どこに設置してもよく、例えばこれを天井面に設けるようにしてもよい。
【0058】
(実施例)
図10に示す実施形態に係る空調システムが適用された手術室のモックアップを実際に作製し、測定を行った。なお、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220については、図4に示す構造のものを採用した。
【0059】
図11に実施例に係る空調システムが適用された手術室の平面図・断面図を示す図である。また、本実施例で設定した緒元を表1に示す。
【0060】
【表1】
室内寸法はW5.9m×D7.3m×H3mであり、容積は129m3である。天井部
にHEPAフィルタ内蔵吹き出し口(210)、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口(220)が、また、壁面下部に下部排気口230aが設けられている。吹出口はユニットであり、「術野上部(中央部)」(手術台205の上部)と「術野外側(周辺部)」とで別系統になっており、別々の風量(吹出風速)を設定することができるようになっている。「術野上部」吹出口は術野の清浄化を目的としており、吹出口には整流及び外観上のためパンチングパネルが設置されている。一方、「術野外側」吹出口は、エアーカーテンを形成することによって外部から内部清浄エリアへの気流の侵入、すなわち、微粒子の侵入を防止することを目的としており、その効果を高めるためのルーバーが設置されている。
【0061】
(測定方法)
●内部発塵負荷時の清浄度
手術台205近傍で発塵が生じた場合の清浄度を評価した。発塵負荷としては、術者3人分を想定した。発塵量は、一人当たり40万個/min(0.5μm以上)とした。術者3人分の発塵負荷は、外気を室内へ導入して与えた。発塵点は、術者の立つ位置を想定し、高さは1.5mとした。発塵点では、穴が空けられたアルミ缶から外気が放出される。術野における清浄度の判定は、所定の鉛直面における術野上部の測定点、すなわち、床からの高さ1.0m〜2.0m、手術台中心から長手方向0.5m幅の範囲内の計9点の測定値を対象にして行なった。なお、各測定点の粒子濃度は、測定値を正規化したものとした。
●立ち上がり清浄度
手術室の清浄度回復性能を、「回復性能特性値」と「1/100回復時間」の双方で評価した。「回復性能特性値」は、所定清浄度の10倍程度の濃度から、所定清浄度に至る濃度変化を測定し、所定清浄度における濃度変化の傾き(粒子濃度変化率)を利用して評価するものである。一方、「1/100回復時間」は、所定の清浄度からの100倍以上の濃度を初期レベルとして、100倍の値から所定清浄度まで下がるのに要する時間である。
本実験では、室内粒子濃度が約10万個/cf(0.5μm以上)の初期状態から空調システムの運転を開始し、濃度減衰の経時変化を測定した。術野(床から高さ1m)と室内排出口(室内の平均粒子濃度に相当)の2点を測定した。試験前に室内粒子濃度を高めることは、室内へ外気を導入し、室内に設置した扇風機2台で室内空気を攪拌することによって行なった。
【0062】
(測定結果)
●内部発塵負荷時の清浄度
図12に、術野上部の断面風速分布を示す。2つの無影灯間を抜ける風速は0.7m/sになっており、高速化されているのが確認できる。術野(手術台上部近傍)の風速は0.2〜0.52m/sになっており、清浄気流が到達している。
図13に清浄度の測定結果を示す。個数濃度は0〜72個/cfとなっており、クラス100が達成されている。
【0063】
なお、図13においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1の区画から吹き出される空気の風速V1=0.7m/sであり、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口21
0の第2の区画から吹き出される空気の風速V2=0.4m/sであり、HEPAフィル
タ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出される空気の風速V3と=0.3m/
sである。
●立ち上がり清浄度
図14に下部排気口230aと上部排気口230bの寸法と排気風量を示す。初期のモックアップ手術室では、下部排気口230aにおおよそ245mm×225mmの開口を複数個設けるようしていた。しかしながら、下部排気口230aのみでは、壁近傍上部に汚染空気(粒子濃度の高い空気)が滞留することがわかった。そこで、壁近傍上部に滞留する汚染空気を効率良く室外へ排出するため、上部排気口230bに開口を設けた実施例に係る空調システムが適用された手術室を作製した。なお、本例では開口を壁上部四隅に開けたが、設ける開口は壁上部のうち必ずしも四隅とする必要はなく、開口を天井部に開けるようにしてもよい。
【0064】
図15は上部排気口230bが設けられていない場合の比較例に係る測定結果を示す図である。図15は空調システムをオンとした後における特定の下部排気口230aでの0.5μm以上の粒子濃度を示している。「回復性能特性値」を比較すると、粒子濃度変化率が大きい順に、「術野」>「理論値」>「排気口」となっており、術野の回復性能は
理論値よりも高く、排気口の回復性能は理論値よりも低い。術野の回復性能が高い理由としては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から術野へ到達した清浄気流が、術野に元々あった汚染空気を下流へ押出したためと考えられる。一方、排気口230aの回復性能が低い理由としては、完全混合を仮定した理論値よりも低いことから、高濃度域と低濃度域が偏在し、高濃度域から低濃度域への微粒子の侵入が定常的に起こっていたと推測される。例えば、排気口230aにおける粒子濃度は、減衰速度(傾き)が理論値より遅く、1時間以上経っても10個/cfであり、ゼロにならない。室内壁際上部に滞留していると推測される高濃度空気(気流可視化から推測される)が影響していると考えられる。「1/100回復時間」(10000個/cfから100個/cfになるまでに要する時間)を比較すると、「術野」では約2分、「理論値」では約3分、「排気口」では約6分である。
【0065】
図16は上部排気口230bが設けられた実施例に係るに係る測定結果を示す図である。図16は空調システムをオンとした後における特定の下部排気口230aでの0.5μm以上の粒子濃度を示している。「回復性能特性値」を比較すると、粒子濃度変化率が大きい順に、「術野」>「理論値」=「排気口」となっており、排気口粒子濃度の減衰速度(傾き)がほぼ理論値と等しくなっている。「1/100回復時間」(10000個/cfから100個/cfになるまでに要する時間)を比較すると、「術野」では約1.5分、「理論値」と「排気口」では約3分となっており、図15に比べて短くなっている。経過時間10分以降では、術野ではほとんどカウントされず、排気口230aでは粒子の個数・頻度ともに少ない。上部排気口230bを設けたことによって、周辺部の高濃度空気の排出が促進され、室全体の清浄度が改善されたと考えられる。
【0066】
以上、本発明の空調システムは、手術台の面積を含む程度の広さであり、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、この第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口と、を有しており、このような本発明の空調システムによれば、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設ける必要がなく、エネルギー効率が向上する。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタが必要でなく、HEPAフィルタ面積を縮小できるため、メンテナンスコストが安価となる。
【符号の説明】
【0067】
100・・・空調システム、110・・・空調機、120・・・フィルタ、131・・・第1送風ファン、132・・・第2送風ファン、133・・・第3送風ファン、134・・・第4送風ファン、141・・・第1ダンパー、142・・・第2ダンパー、143・・・第3ダンパー、150・・・吸気口、151・・・フィルタ、160・・・排気口、205・・・手術台、210・・・HEPAフィルタ内蔵吹き出し口、211・・・HEPAフィルタ、215・・・制風部材、225・・・フィン、220・・・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口、221・・・HEPAフィルタ、230・・・換気口、230a・・・下部排気口、230b・・・上部排気口
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い清浄度が要求される手術室(バイオクリーンルーム)に好適な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科手術などの一部の特殊な手術において利用される手術室の中には、クリーンルームの清浄度クラス100を達成することが求められるものがある。従来はこのような清浄度を保つために採用されていた空調システムでは、手術室の天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設けて、HEPAフィルタで浄化された空気をこの吹き出し口全面から吹き出させるようにしていた。特許文献1(特開平11−218353号公報)には、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を有するクリーンルームが開示されている。
【特許文献1】特開平11−218353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の手術室に採用されていた空調システムにおいては、上記のように天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設け、この吹き出し口全面を利用して空気を送り出す必要があったために、空気の搬送動力が非常に大きくなり、エネルギー効率が悪い、という問題があった。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタを用いる必要があるため、これを維持するためのメンテナンスコストが非常に高価である、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、手術台が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、前記手術台の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、前記第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口と、を有し、鉛直方向の投影を行ったとき、前記第1吹き出し口が形成する第1吹き出し口投影面が、前記手術台が形成する手術台投影面を含むことを特徴とする。
【0005】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空調システムにおいて、前記第1吹き出し口から吹き出される空気は、鉛直下方に向けられた一方向流であることを特徴とする。
【0006】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の空調システムにおいて、前記第2吹き出し口から吹き出される空気は、前記手術台がない方向に向けられた一方向流であることを特徴とする。
【0007】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第2吹き出し口に設けられるフィンは、鉛直下方の方向に対して所定の角度をなすように配されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第2吹き出し口に設けられるフィンは、前記第1吹き出し口から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されることを
特徴とする。
【0009】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第2吹き出し口が複数の吹き出し区画を有しており、前記第1吹き出し口から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項7に係る発明は、手術台が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、前記手術台の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、前記第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第2吹き出し口と、前記第2吹き出し口の周囲に設置され、前記第2の風速より遅い第3の風速で空気を吹き出す第3吹き出し口と、を有し、鉛直方向の投影を行ったとき、前記第1吹き出し口が形成する第1吹き出し口投影面が、前記手術台が形成する手術台投影面を含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項8に係る発明は、請求項7に記載の空調システムにおいて、前記第1吹き出し口及び前記第2吹き出し口から吹き出される空気は、鉛直下方に向けられた一方向流であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項9に係る発明は、請求項7又は請求項8に記載の空調システムにおいて、前記第3吹き出し口から吹き出される空気は、前記手術台がない方向に向けられた一方向流であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項10に係る発明は、請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第3吹き出し口に設けられるフィンは、鉛直下方の方向に対して所定の角度をなすように配されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項11に係る発明は、請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第3吹き出し口に設けられるフィンは、前記第1吹き出し口から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項12に係る発明は、請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記第3吹き出し口が複数の吹き出し区画を有しており、前記第1吹き出し口から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項13に係る発明は、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記手術台の天面より下方に配される下部排気口と、前記手術台の天面より上方に配される上部排気口と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の空調システムは、手術台の面積を含む程度の広さであり、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、この第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口と、を有しており、このような本発明の空調システムによれば、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設ける必要がなく、エネルギー効率が向上する。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタが必要でなく、HEPAフィルタ面積を縮小できるため、メンテナンスコストが安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る空調システムを適用した手術室の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る空調システムにおける手術台・HEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口の配置関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る空調システムよって吹き出される空気を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口のフィン配置を説明する図である。
【図5】CFD解析結果を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口のフィン配置を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口の構成を説明する図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口の構成を説明する図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る空調システムにおける手術台・HEPAフィルタ内蔵吹き出し口・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口の配置関係を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る空調システムが適用された手術室の概略を示す図である。
【図11】実施例に係る空調システムが適用された手術室の平面図・断面図を示す図である。
【図12】術野上部の断面風速分布を示す図である。
【図13】清浄度の測定結果を示す図である。
【図14】下部排気口230aと上部排気口230bの寸法と排気風量を示す図である。
【図15】上部排気口230bが設けられていない場合の比較例に係る測定結果を示す図である。
【図16】上部排気口230bが設けられた実施例に係るに係る測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態に係る空調システム100を適用した手術室の概要を示す図である。図1において、100は空調システム、110は空調機、120はフィルタ、131は第1送風ファン、132は第2送風ファン、133は第3送風ファン、134は第4送風ファン、141は第1ダンパー、142は第2ダンパー、143は第3ダンパー、150は吸気口、151はフィルタ、160は排気口、205は手術台、210はHEPAフィルタ内蔵吹き出し口、211はHEPAフィルタ、220はHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口、221はHEPAフィルタ、230は換気口をそれぞれ示している。
【0020】
本実施形態に係る空調システム100は、比較的高い清浄度が要求される手術室(バイオクリーンルーム)に適用されるものであり、かつ、エネルギー効率を向上させ、メンテナンスコストを安価とするために、清浄度クラス100を達成する空間を手術台上の術野に限定する、という発想に基づいて構成されてなるものである。本発明に係る空調システ
ム100においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210を従来の1/3程度として、小風量でも効率よく術野の清浄度を保つことにより、手術室全体のエネルギー消費量を削減するようにしている。
【0021】
本発明に係る空調システム100では、風量を削減しても術野における清浄度クラス100を達成するために(1)周囲からの汚染質が術野に侵入することを防ぐ、弱いエアーカーテンを形成可能なHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220を、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の周囲に設けること、及び、(2)術野近傍で発生した汚染質を周囲へ押しやるために、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より速くするように調整すること、の2点が重要であることを、CFD(Computational Fluid Dynamics)による流体解析を行うことにより実証した。
【0022】
以下、図1を参照して本発明に係る空調システム100の構成例を説明する。図1において、各構成間を結ぶ、矢印が付された黒線はダクトを示しており、矢印の方向はダクト中を流通する空気の方向を示している。空調システム100における空調機110は、取り入れられた空気を、内蔵している冷却器、加熱器、加湿器、フィルタ(いずれも図示略)により温湿度調整と粉塵除去などを、ダクトに送り出すものである。
【0023】
この空調機110から送り出された空気は、フィルタ120を通過した後、手術台205の天井部に設置されたHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210に向かうダクト、及びHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の周囲に設けられたHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に向かうダクトを流通するようになっている。HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210には、不図示のフィルタホルダが設けられており、このフィルタホルダにHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ211が装着されることにより、塵埃や浮游細菌などが除かれた浄化された空気を、手術台205に向けて吹き出すことができるようになっている。本実施形態においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210は、手術台205の上部に配置する。
【0024】
なお、特許請求の範囲における「第1吹き出し口」はHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210のことを、また、「第2吹き出し口」はHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220のことをそれぞれ上位概念的に示したものである。
【0025】
HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210に向かうダクト中には第1送風ファン131が、また、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に向かうダクト中には第2送風ファン132が設けられており、これらの送風ファンが制御されることによって、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気が第1の風速となるように、また、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気が第1の風速より遅い第2の風速となるように調整している。また、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220には、不図示のフィルタホルダが設けられており、このフィルタホルダにHEPAフィルタ221が装着されることにより、塵埃や浮游細菌などが除かれた浄化された空気をエアーカーテンとして吹き出すことが可能に構成されている。
【0026】
図2は本発明の実施形態に係る空調システムにおける手術台205、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の配置関係を示す図である。図2に示すように、鉛直方向の投影を行ったとき、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210が形成するHEPAフィルタ内蔵吹き出し口投影面は、手術台205が形成する手術台投影面を含むようにされている。本発明に係る空調システム100においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の吹き出し面積としては、手術台の面
積を含む程度であればよく、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口を天井面ほぼ全面に相当する面積とする必要はない。したがって、本発明に係る空調システム100によれば、エネルギー効率が向上し、メンテナンスコストが安価となるのである。
【0027】
図3は本発明の実施形態に係る空調システムよって吹き出される空気を模式的に示す図である。本発明に係る空調システム100においては、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気のそれより遅くするようにしているが、これによれば、図3に示すように、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の鉛直下方のエリアで発生した塵埃は、当該エリアを囲む弱いエアーカーテンのエリアに排出されやすい傾向があるものと推察される。これに対して、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気のそれより速く設定すると、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の鉛直下方のエリアで発生した塵埃は、エアーカーテンのエリアに排出されにくい傾向があるものと推察される。
【0028】
再び図1に戻り、第3送風ファン133の吸引力によって、手術室内の空気は、換気口230によって引き込まれ、一部は空調機110に戻され再び循環され、残りは排気口160から排出される。手術室内の空気の吸い込み口として、床部に近い高さに設けられている換気口230は、床部からの気流の巻き上がりや乱流を防止する機能を有している。
【0029】
換気口230によって手術室内から引き込まれた空気をどの程度の割合で空調機110に戻し、どの程度の割合で排気口160から排気するかを決めるのは第1ダンパー141及び第2ダンパー142である。これらのダンパーは不図示の制御部によって適宜制御される。一方、屋外からの空気は、フィルタ151が設けられた吸気口150から、第4送風ファン134の吸引力によって、空調機110に引き込まれる。吸気口150と空調機110とを結ぶダクトの間には第3ダンパー143が設けられ、屋外からの空気の取り込み量などが制御される。
【0030】
ここで、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210内、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220内におけるフィンのレイアウトについて説明する。このようなフィンは、各吹き出し口から吹き出される空気の流れを決めるものである。図4は本発明の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、及び、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220のフィン配置を説明する図である。なお、フィンの枚数は図示されるものに限定されるものではない。
【0031】
図4に示すように、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210内には、パンチングメタルやメッシュなどの複数の細孔を有する制風部材215が設けられており、この制風部材215によって、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出される空気は、図3に示すように鉛直下方に向けられた均一な一方向流となる。
【0032】
また、図4に示すように、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に設けられるフィン225は、鉛直下方の方向に対して所定の角度θ0をなすように配されて
いる。これにより、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出される空気は、図3に示すように、手術台205がない方向に向けられた一方向流となる。
【0033】
次に、以上のように構成される本発明に係る空調システム100のCFD解析結果について説明する。今回、本発明に係る空調システム100による効果を確認するために、(従来例)、(比較例)、(本発明)の3つの場合でCFD解析を行った。CFD解析を行った対象となる各空調システムの特徴点について説明する。
【0034】
(従来例)は手術室天井面ほぼ全面に、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口を設けたケースである。HEPAフィルタ内蔵吹き出し口は33.5m2とした。
【0035】
(比較例)は手術台205が設置された位置の天井部に、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210を設け、その周囲にHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220を配置し、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速が、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より速くなるように設定したケースである。(比較例)においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の面積は8.64m2とし、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の面
積は2.56m2とした。また、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空
気の風速は0.35m/sとし、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速は0.77m/sとした。
【0036】
(本発明)は手術台205が設置された位置の天井部に、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210を設け、その周囲にHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220を配置し、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速が、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より遅くなるように設定したケースである。(本発明)においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の面積は8.64m2とし、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の面
積は2.56m2とした。また、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空
気の風速は0.45m/sとし、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速は0.3m/sとした。
【0037】
以上の特徴点を除いて、以下に示すものは、(従来例)、(比較例)、(本発明)の各CFD解析で共通な諸条件である。
手術室面積:72m2
(1)手術室内設置物による発熱条件
LED無影灯(大) 70W
LED無影灯(小) 60W
監視モニター(17インチ) 400W
電子カルテ用モニター(42インチ) 330W
モニター(42インチ) 330W
(2)手術室内人員による発熱条件
7人×78W/人 546W
(3)発塵量
3人(400,000個/min・人)
図5は以上のような条件でCFD解析を行った結果を示す図であり、図5(A)は(従来例)の条件に基づく結果であり、図5(B)は(比較例)の条件に基づく結果であり、図5(C)は(本発明)の条件に基づく結果である。
【0038】
図5(A)の(従来例)の結果を参照すると、床面の一部に塵埃の密度が高いエリアが存在するのみであり、手術室内全体にわたって良好な清浄度が保たれていることがわかる。ただ、比較的大面積のHEPAフィルタ内蔵吹き出し口からの送風を維持するために、エネルギー効率が悪く、メンテナンスコストもかかることとなる。
【0039】
図5(B)の(比較例)の結果を参照すると、無影灯の下部から手術台にわたる重要な領域において、清浄度が損なわれていることがわかる。(比較例)のようにHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より遅くするように設定すると、術野において良好な清浄度が保てないことがわかる。
【0040】
図5(C)の(本発明)の結果を参照すると、床面の一部に塵埃の密度が高いエリアが存在し、さらに手術台と離れたところで比較的塵埃の密度が高いエリアが存在するが、無影灯の下部から手術台にわたる重要なエリアにおける清浄度は高いことがわかる。(本発明)のようにHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出す空気の風速を、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出す空気の風速より速くするように設定すると、術野において良好な清浄度が保てることがわかる。
【0041】
以上のように、本発明の空調システム100は、手術台205の面積を含む程度の広さで、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出すHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210と、このHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出すHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220と、を有しており、このような本発明の空調システム100によれば、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設ける必要がなく、エネルギー効率が向上する。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタが必要でないため、メンテナンスコストが安価となる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態は、先の実施形態とHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220内におけるフィンの配置が相違するのみであるので、以下、このような相違点について説明する。図6は本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、及び、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220のフィン配置を説明する図である。
【0043】
図6に示すように、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210内には、パンチングメタルやメッシュなどの複数の細孔を有する制風部材215が設けられており、この制風部材215によって、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出される空気は、図3に示すように鉛直下方に向けられた均一な一方向流となる。このHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の吹き出し口については先の実施形態と同様のものである。
【0044】
これに対して、また、図6に示すように、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に設けられるフィン225は、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されている。より具体的にはフィン225が鉛直線となす角度を図示のように定義すると、θ1
<θ2<θ3<θ4・・・となるようにフィン225の配置が決められている。このような
フィン225の配置によっても、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出される空気は、図3に示すように、手術台205がない方向に向けられた一方向流となり、さらに、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の鉛直下方のエリアで発生した塵埃は、当該エリアを囲む弱いエアーカーテンのエリアに排出されやすい傾向となり、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。なお、フィンの枚数は図示されるものに限定されるものではない。
【0045】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態は、先の実施形態とHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の構成が異なるので、以下、この点について説明する。図7は本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、及びHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の構成を説明する図である。
【0046】
本実施形態においては、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220は、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210に近い内周側の第1の区画と、その外周の第2の区画とに分かれており、第1の区画から吹き出される空気の風速をV2、第1の区画から吹
き出される空気の風速をV3としている。なお、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210
の構成は、これまでの実施形態と同様であり、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から吹き出される空気の風速はV1であり、V1>V2、V1>V3の関係が維持されている。
【0047】
本実施形態では、さらにHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220に形成された区画における風速の関係として、V2>V3の関係が成立するように風速が設定されている。すなわち、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220が複数の吹き出し区画を有しており、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定される。なお、図7に示す実施形態では、区画数は2であるが、これより多く設定しても良い。また、本実施形態においても、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220は、手術台205がない方向に向けられた一方向流を形成するように不図示のフィンが配置されている。
【0048】
図7に示すような風速の設定によっても、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の鉛直下方のエリアで発生した塵埃は、当該エリアを囲む弱いエアーカーテンのエリアに排出されやすい傾向となり、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0049】
以上、本発明の空調システム100は、手術台205の面積を含む程度の広さであり、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口(HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210)と、この第1吹き出し口(HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210)の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口(HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220)と、を有しており、このような本発明の空調システム100によれば、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設ける必要がなく、エネルギー効率が向上する。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタが必要でないため、メンテナンスコストが安価となる。
【0050】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。以下において説明する実施形態は、特許請求の範囲の請求項7乃至請求項12に対応するものである。
【0051】
本実施形態は、これまで説明した実施形態とHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の構成が異なるので、以下、この点について説明する。図8は本発明の他の実施形態に係る空調システムにおけるHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、及びHEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の構成を説明する図である。
【0052】
本実施形態においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210は内周側の第1の区画と、その外周の第2の区画とに分かれており、第1の区画から吹き出される空気の風速をV1、第2の区画から吹き出される空気の風速をV2としている。なお、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の構成は、これまでの実施形態と同様である。本実施形態においては、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出される空気の風速をV3としている。
【0053】
また、特許請求の範囲の請求項7乃至請求項12においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1の区画に対応する吹き出し口を「第1吹き出し口」、HEPAフィ
ルタ内蔵吹き出し口210の第2の区画に対応する吹き出し口を「第2吹き出し口」、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220を「第3吹き出し口」として表現している。
【0054】
本実施形態では、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1の区画から吹き出される空気の風速V1と、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第2の区画から吹き出さ
れる空気の風速V2と、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き
出される空気の風速V3との間にV1>V2>V3の関係が成立するように風速が設定されている。
【0055】
本実施形態においては上記のような風速の関係の他に、
図9は本発明の他の実施形態に係る空調システムにおける手術台205、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220の配置関係を示す図である。図9に示すように、鉛直方向の投影を行ったとき、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1区画が形成するHEPAフィルタ内蔵吹き出し口投影面は、手術台205が形成する手術台投影面を含むようにされている。本発明に係る空調システム100においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1区画の吹き出し面積としては、手術台の面積を含む程度であればよく、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口を天井面ほぼ全面に相当する面積とする必要はない。したがって、本発明に係る空調システム100によれば、エネルギー効率が向上し、メンテナンスコストが安価となるのである。
【0056】
上記のようなHEPAフィルタ内蔵吹き出し口210に第1区画と第2区画とを設けるようにした実施形態に対し、これまで説明してきた各実施形態を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図10は本発明の他の実施形態に係る空調システムが適用された手術室の概略を示す図である。図10に示す手術室は、図9に示した実施形態の空調システムが適用された例である。さらに、本実施形態においては、手術台205の天面より下方に複数の下部排気口230aが配されると共に、手術台205の天面より上方に複数の上部排気口230bが配されることを特徴としている。上部排気口230bの総開口面積は、下部排気口230aの総開口面積の1/4程度が好ましい。このような手術台205の天面より上方に上部排気口230bが設けられることで、手術室における手術台205設置箇所以外の上方空間に停滞しがちな塵埃を効果的に排気することができる。なお、本実施形態においては、上部排気口230bを手術室の側壁に設けるようにしたが、本発明では、上部排気口230bは手術台205の天面より上方であれば、どこに設置してもよく、例えばこれを天井面に設けるようにしてもよい。
【0058】
(実施例)
図10に示す実施形態に係る空調システムが適用された手術室のモックアップを実際に作製し、測定を行った。なお、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口220については、図4に示す構造のものを採用した。
【0059】
図11に実施例に係る空調システムが適用された手術室の平面図・断面図を示す図である。また、本実施例で設定した緒元を表1に示す。
【0060】
【表1】
室内寸法はW5.9m×D7.3m×H3mであり、容積は129m3である。天井部
にHEPAフィルタ内蔵吹き出し口(210)、HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口(220)が、また、壁面下部に下部排気口230aが設けられている。吹出口はユニットであり、「術野上部(中央部)」(手術台205の上部)と「術野外側(周辺部)」とで別系統になっており、別々の風量(吹出風速)を設定することができるようになっている。「術野上部」吹出口は術野の清浄化を目的としており、吹出口には整流及び外観上のためパンチングパネルが設置されている。一方、「術野外側」吹出口は、エアーカーテンを形成することによって外部から内部清浄エリアへの気流の侵入、すなわち、微粒子の侵入を防止することを目的としており、その効果を高めるためのルーバーが設置されている。
【0061】
(測定方法)
●内部発塵負荷時の清浄度
手術台205近傍で発塵が生じた場合の清浄度を評価した。発塵負荷としては、術者3人分を想定した。発塵量は、一人当たり40万個/min(0.5μm以上)とした。術者3人分の発塵負荷は、外気を室内へ導入して与えた。発塵点は、術者の立つ位置を想定し、高さは1.5mとした。発塵点では、穴が空けられたアルミ缶から外気が放出される。術野における清浄度の判定は、所定の鉛直面における術野上部の測定点、すなわち、床からの高さ1.0m〜2.0m、手術台中心から長手方向0.5m幅の範囲内の計9点の測定値を対象にして行なった。なお、各測定点の粒子濃度は、測定値を正規化したものとした。
●立ち上がり清浄度
手術室の清浄度回復性能を、「回復性能特性値」と「1/100回復時間」の双方で評価した。「回復性能特性値」は、所定清浄度の10倍程度の濃度から、所定清浄度に至る濃度変化を測定し、所定清浄度における濃度変化の傾き(粒子濃度変化率)を利用して評価するものである。一方、「1/100回復時間」は、所定の清浄度からの100倍以上の濃度を初期レベルとして、100倍の値から所定清浄度まで下がるのに要する時間である。
本実験では、室内粒子濃度が約10万個/cf(0.5μm以上)の初期状態から空調システムの運転を開始し、濃度減衰の経時変化を測定した。術野(床から高さ1m)と室内排出口(室内の平均粒子濃度に相当)の2点を測定した。試験前に室内粒子濃度を高めることは、室内へ外気を導入し、室内に設置した扇風機2台で室内空気を攪拌することによって行なった。
【0062】
(測定結果)
●内部発塵負荷時の清浄度
図12に、術野上部の断面風速分布を示す。2つの無影灯間を抜ける風速は0.7m/sになっており、高速化されているのが確認できる。術野(手術台上部近傍)の風速は0.2〜0.52m/sになっており、清浄気流が到達している。
図13に清浄度の測定結果を示す。個数濃度は0〜72個/cfとなっており、クラス100が達成されている。
【0063】
なお、図13においては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210の第1の区画から吹き出される空気の風速V1=0.7m/sであり、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口21
0の第2の区画から吹き出される空気の風速V2=0.4m/sであり、HEPAフィル
タ内蔵エアーカーテン吹き出し口220から吹き出される空気の風速V3と=0.3m/
sである。
●立ち上がり清浄度
図14に下部排気口230aと上部排気口230bの寸法と排気風量を示す。初期のモックアップ手術室では、下部排気口230aにおおよそ245mm×225mmの開口を複数個設けるようしていた。しかしながら、下部排気口230aのみでは、壁近傍上部に汚染空気(粒子濃度の高い空気)が滞留することがわかった。そこで、壁近傍上部に滞留する汚染空気を効率良く室外へ排出するため、上部排気口230bに開口を設けた実施例に係る空調システムが適用された手術室を作製した。なお、本例では開口を壁上部四隅に開けたが、設ける開口は壁上部のうち必ずしも四隅とする必要はなく、開口を天井部に開けるようにしてもよい。
【0064】
図15は上部排気口230bが設けられていない場合の比較例に係る測定結果を示す図である。図15は空調システムをオンとした後における特定の下部排気口230aでの0.5μm以上の粒子濃度を示している。「回復性能特性値」を比較すると、粒子濃度変化率が大きい順に、「術野」>「理論値」>「排気口」となっており、術野の回復性能は
理論値よりも高く、排気口の回復性能は理論値よりも低い。術野の回復性能が高い理由としては、HEPAフィルタ内蔵吹き出し口210から術野へ到達した清浄気流が、術野に元々あった汚染空気を下流へ押出したためと考えられる。一方、排気口230aの回復性能が低い理由としては、完全混合を仮定した理論値よりも低いことから、高濃度域と低濃度域が偏在し、高濃度域から低濃度域への微粒子の侵入が定常的に起こっていたと推測される。例えば、排気口230aにおける粒子濃度は、減衰速度(傾き)が理論値より遅く、1時間以上経っても10個/cfであり、ゼロにならない。室内壁際上部に滞留していると推測される高濃度空気(気流可視化から推測される)が影響していると考えられる。「1/100回復時間」(10000個/cfから100個/cfになるまでに要する時間)を比較すると、「術野」では約2分、「理論値」では約3分、「排気口」では約6分である。
【0065】
図16は上部排気口230bが設けられた実施例に係るに係る測定結果を示す図である。図16は空調システムをオンとした後における特定の下部排気口230aでの0.5μm以上の粒子濃度を示している。「回復性能特性値」を比較すると、粒子濃度変化率が大きい順に、「術野」>「理論値」=「排気口」となっており、排気口粒子濃度の減衰速度(傾き)がほぼ理論値と等しくなっている。「1/100回復時間」(10000個/cfから100個/cfになるまでに要する時間)を比較すると、「術野」では約1.5分、「理論値」と「排気口」では約3分となっており、図15に比べて短くなっている。経過時間10分以降では、術野ではほとんどカウントされず、排気口230aでは粒子の個数・頻度ともに少ない。上部排気口230bを設けたことによって、周辺部の高濃度空気の排出が促進され、室全体の清浄度が改善されたと考えられる。
【0066】
以上、本発明の空調システムは、手術台の面積を含む程度の広さであり、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、この第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口と、を有しており、このような本発明の空調システムによれば、天井面ほぼ全面にHEPAフィルタを取り付けた吹き出し口を設ける必要がなく、エネルギー効率が向上する。また、天井面ほぼ全面に相当する面積のHEPAフィルタが必要でなく、HEPAフィルタ面積を縮小できるため、メンテナンスコストが安価となる。
【符号の説明】
【0067】
100・・・空調システム、110・・・空調機、120・・・フィルタ、131・・・第1送風ファン、132・・・第2送風ファン、133・・・第3送風ファン、134・・・第4送風ファン、141・・・第1ダンパー、142・・・第2ダンパー、143・・・第3ダンパー、150・・・吸気口、151・・・フィルタ、160・・・排気口、205・・・手術台、210・・・HEPAフィルタ内蔵吹き出し口、211・・・HEPAフィルタ、215・・・制風部材、225・・・フィン、220・・・HEPAフィルタ内蔵エアーカーテン吹き出し口、221・・・HEPAフィルタ、230・・・換気口、230a・・・下部排気口、230b・・・上部排気口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術台が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、
前記手術台の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、
前記第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口と、を有し、
鉛直方向の投影を行ったとき、前記第1吹き出し口が形成する第1吹き出し口投影面が、前記手術台が形成する手術台投影面を含むことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記第1吹き出し口から吹き出される空気は、鉛直下方に向けられた一方向流であることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第2吹き出し口から吹き出される空気は、前記手術台がない方向に向けられた一方向流であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第2吹き出し口に設けられるフィンは、鉛直下方の方向に対して所定の角度をなすように配されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項5】
前記第2吹き出し口に設けられるフィンは、前記第1吹き出し口から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の空調システム。
【請求項6】
前記第2吹き出し口が複数の吹き出し区画を有しており、前記第1吹き出し口から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の空調システム。
【請求項7】
手術台が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、
前記手術台の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、
前記第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第2吹き出し口と、
前記第2吹き出し口の周囲に設置され、前記第2の風速より遅い第3の風速で空気を吹き出す第3吹き出し口と、を有し、
鉛直方向の投影を行ったとき、前記第1吹き出し口が形成する第1吹き出し口投影面が、前記手術台が形成する手術台投影面を含むことを特徴とする空調システム。
【請求項8】
前記第1吹き出し口及び前記第2吹き出し口から吹き出される空気は、鉛直下方に向けられた一方向流であることを特徴とする請求項7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記第3吹き出し口から吹き出される空気は、前記手術台がない方向に向けられた一方向流であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記第3吹き出し口に設けられるフィンは、鉛直下方の方向に対して所定の角度をなすように配されることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の空調システム。
【請求項11】
前記第3吹き出し口に設けられるフィンは、前記第1吹き出し口から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の空調システム。
【請求項12】
前記第3吹き出し口が複数の吹き出し区画を有しており、前記第1吹き出し口から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定されることを特徴とする請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の空調システム。
【請求項13】
前記手術台の天面より下方に配される下部排気口と、前記手術台の天面より上方に配される上部排気口と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の空調システム。
【請求項1】
手術台が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、
前記手術台の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、
前記第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速で空気を吹き出す第2吹き出し口と、を有し、
鉛直方向の投影を行ったとき、前記第1吹き出し口が形成する第1吹き出し口投影面が、前記手術台が形成する手術台投影面を含むことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記第1吹き出し口から吹き出される空気は、鉛直下方に向けられた一方向流であることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第2吹き出し口から吹き出される空気は、前記手術台がない方向に向けられた一方向流であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第2吹き出し口に設けられるフィンは、鉛直下方の方向に対して所定の角度をなすように配されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項5】
前記第2吹き出し口に設けられるフィンは、前記第1吹き出し口から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の空調システム。
【請求項6】
前記第2吹き出し口が複数の吹き出し区画を有しており、前記第1吹き出し口から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の空調システム。
【請求項7】
手術台が設置された手術室の空調を行うための空調システムであって、
前記手術台の天井部に設置され、第1の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第1吹き出し口と、
前記第1吹き出し口の周囲に設置され、前記第1の風速より遅い第2の風速でHEPAフィルタによって浄化された空気を吹き出す第2吹き出し口と、
前記第2吹き出し口の周囲に設置され、前記第2の風速より遅い第3の風速で空気を吹き出す第3吹き出し口と、を有し、
鉛直方向の投影を行ったとき、前記第1吹き出し口が形成する第1吹き出し口投影面が、前記手術台が形成する手術台投影面を含むことを特徴とする空調システム。
【請求項8】
前記第1吹き出し口及び前記第2吹き出し口から吹き出される空気は、鉛直下方に向けられた一方向流であることを特徴とする請求項7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記第3吹き出し口から吹き出される空気は、前記手術台がない方向に向けられた一方向流であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記第3吹き出し口に設けられるフィンは、鉛直下方の方向に対して所定の角度をなすように配されることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の空調システム。
【請求項11】
前記第3吹き出し口に設けられるフィンは、前記第1吹き出し口から離れた位置に配されるものほど、鉛直下方の方向に対して大きな角度をなすように配されることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の空調システム。
【請求項12】
前記第3吹き出し口が複数の吹き出し区画を有しており、前記第1吹き出し口から離れた吹き出し区画からから吹き出される空気の風速ほど遅くなるように設定されることを特徴とする請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の空調システム。
【請求項13】
前記手術台の天面より下方に配される下部排気口と、前記手術台の天面より上方に配される上部排気口と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の空調システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図2】
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【図15】
【図16】
【図5】
【公開番号】特開2011−226770(P2011−226770A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70660(P2011−70660)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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