説明

空調システム

【課題】室外機に異常が発生した場合に、簡便かつ迅速に異常のある室外機を特定することができる空調システムを提供する。
【解決手段】マルチエアコンシステムは、それぞれ室外機ファン13を含む複数の室外機11と、各室外機11に接続された複数の室内機12と、室外機11のいずれかに異常が発生した場合に、異常が発生した室外機11の室外機ファン13を予め定められた間隔で間欠運転させる制御装置15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関し、より詳しくは、同じ場所に複数の室外機が並んで配置された空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1台の室外機に複数の室内機が接続されたマルチエアコンシステムは、オフィスや各種商業施設等に広く設置されている。また、近年のマルチエアコンシステムとしては、少数の大型の室外機を用いるシステムからやや小型の室外機を多数用いるシステムにシフトしてきており、システムに異常(故障)が発生したときに異常箇所を特定することが難しい場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、オペレータの操作の負担を軽減し、室外機、室内機の故障状態を一目で確認できるようにするため、運転状態データとは独立にかつ同時に故障状態データを集中管理装置の表示部に表示させる空調機システムが開示されている。また、特許文献2には、ハードウェア故障が発生しても、どこが悪いのかを的確に指摘し、修理時間を短縮して使用者の不快感をなくし、サービスマンへの負担を軽減できる故障診断付き空気調和装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐170047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各特許文献の技術によれば、システムに異常が発生したときに、点検作業者等の負担軽減が期待できる。しかしながら、上記各特許文献の技術では、室外機に異常が発生した場合に、異常のある室外機を簡便かつ迅速に特定するための対策は十分に講じられていない。
【0006】
つまり、一般的な従来のマルチエアコンシステムにおいて、室外機のいずれかに異常が発生した場合、対応する室内機の操作リモコン等に、異常コードおよび異常発生元の室外機アドレスが表示されるが、当該アドレスは室外機の内部にある制御盤に付されているため、室外機のカバーを1台ずつ開けて確認する必要があり点検作業者の負担は大きい。
【0007】
即ち、本発明は、室外機に異常が発生した場合に、簡便かつ迅速に異常のある室外機を特定することができる空調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空調システムは、ファンを含む室外機と、室外機に接続された複数の室内機と、を備える空調システムにおいて、室外機に異常が発生した場合に、異常が発生した室外機のファンを予め定められた間隔で間欠運転させる制御装置を含むことを特徴とする。
当該構成によれば、異常が発生した室外機のファンを予め定められた間隔で間欠運転させるという簡便な方法によって、異常発生元の室外機を容易に特定することができる。また、警報灯などの新たなハードウェアを備える必要がなく、例えば、制御装置の制御プログラムを書き換えるという簡便で安価な改良により、異常発生時に室外機ファンの間欠運転を実行させることができる。
【0009】
また、本発明に係る空調システムは、室内機に接続された操作リモコンを備え、制御装置は、室外機に異常が発生した場合に、対応する操作リモコンに室外機の異常を表示させる構成であることが好ましい。
【0010】
また、操作リモコンは、点検釦を含み、制御装置は、点検釦が操作されたときに、異常が発生した室外機のファンを予め定められた間隔で間欠運転させる構成であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る空調システムは、例えば、それぞれファンを含む複数の室外機と、各室外機に接続された複数の室内機と、を備える空調システムにおいて、室外機のいずれかに異常が発生した場合に、異常が発生した室外機のファンを予め定められた間隔で間欠運転させる制御装置を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る空調システムの制御装置は、例えば、それぞれファンを含む複数の室外機と、各室外機に接続された複数の室内機と、を備える空調システムの制御装置において、室外機のいずれかに異常が発生した場合に、異常が発生した室外機のファンを予め定められた間隔で間欠運転させることを特徴とする。
当該構成によれば、異常が発生した室外機のファンを予め定められた間隔で間欠運転させるという簡便な方法によって、複数の室外機の中から異常発生元の室外機を容易に特定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る空調システムによれば、室外機に異常が発生した場合に、簡便かつ迅速に異常のある室外機を特定することができる。つまり、本発明に係る空調システムは、点検作業者の作業負荷を軽減でき、また、点検作業時間の短縮が可能であるため利用者にとっても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である空調システムの構成を示す図である。
【図2】図1のシステムを構成する1つの室外機および室内機を示す図である。
【図3】図1のシステムにおいて、室外機の異常発生から異常発生元を特定するまでの制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を用いて、本発明に係る空調システムの実施形態につき、以下詳細に説明する。
なお、実施形態では、図示しない集中コントローラにより、複数の室外機11および複数の室内機12を一括管理できるマルチエアコンシステム10を例示するが、本発明の適用はこれに限定されず、例えば、同じ場所(屋上等)に並んで設置された複数の室外機11がそれぞれ独立したマルチエアコンシステムを構成するものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、マルチエアコンシステム10は、それぞれ室外機ファン13を含む複数の室外機11と、各室外機11に接続された複数の室内機12とを備え、詳しくは後述するように、室外機11の異常点検を簡便かつ迅速に行なうことができるシステムである。室外機11と各室内機12とは、配管14により接続されており、配管14を流れる冷媒の圧力を変化させて冷媒の吸熱、放熱により空調を行う。図1では、10台の室外機11が屋上に並んで設置されており、各室外機11には、3台の室内機12が接続されているが、これは単なる例示であって、一般的に、フロア面積の大きなオフィスビル等ではより多くの室外機11および室内機12が設置される。
【0016】
各室外機11は、上記のように、室外熱交換器に風(空気)を送る室外機ファン13を備える。また、各室外機11は、内部を通過する冷媒と空気との間で熱交換を行う室外熱交換器、冷媒を圧縮し加圧する圧縮機、運転状況(冷房・暖房)に応じて配管経路の切り替えを行う四方切換弁、および冷媒の流量を制御する膨張弁等(いずれも図示せず)を有する。
【0017】
また、各室外機11は、後述の操作リモコン16や図示しない集中コントローラからの信号等に基づいて、室外機11の各構成要素の動作を制御する制御装置15(室外機制御基盤)を有する。また、各室外機11には、フィードバック制御や異常検出等を行うために、圧力計、温度計、フローメータ、及び電流計等の各種センサが設置されている。
【0018】
室内機12は、内部を通過する冷媒と空気との間で熱交換を行う室内熱交換器、室内熱交換器に空気を送り熱交換させ、熱交換させた空気を室内に送る室内機ファン、および冷媒の流量を制御する膨張弁等(いずれも図示せず)を有する。なお、室内機12にも、後述の操作リモコン16や図示しない集中コントローラからの信号等に基づいて、室内機12の各構成要素の動作を制御する室内機制御基盤が設けられる。
【0019】
ここで、図2を参照して、マルチエアコンシステム10の構成を更に詳説する。なお、図2は、図1のシステムを構成する1つの室外機11および室内機12を示す図である。
【0020】
図2に示すように、マルチエアコンシステム10は、室内機12毎又は幾つかの室内機12毎に接続された操作リモコン16を備える。操作リモコン16は、一般使用者に操作されるコントローラであって、運転条件や室温、後述する異常コード等を表示する表示部17、室内機12のON/OFFや設定温度等の操作を行うための操作部18、および室外機11の異常点検時に点検作業者により操作される点検釦19を含んでいる。例えば、一般利用者が操作部18を操作すると、その操作信号(例えば、設定温度等の情報)が室内制御基盤および室外制御基盤にあたる制御装置15に送信され、室外機11および室内機12の各構成要素の動作が当該操作信号に基づいて調整される。
【0021】
点検釦19は、室外機11に異常が発生し、表示部17に異常コード等が表示された場合に、後述の間欠運転を開始させるための操作部であって、通常、点検作業者によって操作される。図2に例示する形態では、点検釦19が操作リモコン16の正面部に設けられているが、その設置場所や釦形状等は特に限定されない。なお、室外機11の異常発生時以外に点検釦19を操作しても間欠運転は実行されない。
【0022】
マルチエアコンシステム10は、上記のように、室外機11の異常点検を簡便かつ迅速に行なうことができるシステムであって、室外機11の異常が発生したときに、異常発生元の室外機11を容易に特定可能なシステムである。当該機能を実施するための手段(モジュール)として、マルチエアコンシステム10の制御装置15は、異常検知手段20、異常表示手段21、および間欠運転手段22を有する。
【0023】
なお、制御装置15は、CPUと、制御パラメータ等の入力部と、制御パラメータ、制御プログラムなどを記憶する記録部と、入出力ポートなどを備える装置である。上記各手段の機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。例えば、入力ポートから上記各手段を含むソフトウェアを入力することで、既存のシステム(既存のハードウェア)においても上記各手段の機能を実現できる。
【0024】
異常検知手段20は、室外機11に設置された各種センサ等の検出値に基づいて、室外機11に発生する異常(故障)を検知する機能を有する。具体的に、異常検知手段20は、各センサから入力される検出値と、検出値が正常か異常かを判定するための予め設定された基準値とを比較して、各構成要素について異常の有無を判定する。そして、異常が確認された場合には、当該異常に対応して予め決められた異常コードを、異常表示手段21に出力する。
【0025】
室外機11に発生する異常としては、例えば、圧力異常(高圧圧力異常、低圧圧力異常)、冷媒不足・過充填異常、圧縮機シェル温度異常、制御弁不良、インバータ異常などが例示できる。なお、各異常について、上記異常コードが設定されている。
【0026】
異常表示手段21は、異常コードを取得すると、当該異常コードに異常発生元の室外機11のアドレスを付して、対応する操作リモコン16に送信する機能を有する。そして、操作リモコン16の表示部17に異常コードおよび異常発生元の室外機アドレスが表示さる。対応する操作リモコン16とは、異常発生元の室外機11に接続された室内機12を操作する操作リモコン16、つまり室内機12を介して異常発生元の室外機11に接続された操作リモコン16を意味する。また、異常表示手段21は、図示しない集中リモコンに対しても異常表示を行うことが好ましい。なお、空調システムの設計配置図面等が整備されている場合には、表示された室外機アドレスにより異常のある室外機11を特定できる場合もある。
【0027】
間欠運転手段22は、表示部17に異常表示がなされ点検釦19が操作されたときに、異常が発生した室外機11の室外機ファン13を予め定められた間隔で間欠運転させる機能を有する。つまり、間欠運転手段22は、点検釦19の操作信号を取得することを条件として、異常発生元の室外機11の室外機ファン13を間欠運転させる。間欠運転の設定、例えば、運転・停止の間隔等としては、特に限定されないが、多数並んで配置された室外機11の中から、正常な室外機11の室外機ファン13の動作と識別でき、異常のある室外機11を容易に特定できる設定とする必要がある。例えば、10秒毎に室外機ファン13の運転・停止を繰り返す設定が例示できる。
【0028】
ここで、図3のフローチャートを参照して、マルチエアコンシステム10による室外機11の異常発生時の制御方法を説明する。
【0029】
まず初めに、各室外機11に設置された複数のセンサから取得される検出値に基づいて、各室外機11に異常があるかの判定(異常判定)を行う(S10)。この手順は、異常検知手段20の機能によって実行され、室外機11のいずれかに異常が確認された場合には、当該異常に対応する異常コードが当該異常発生元の異常表示手段21に出力される。
【0030】
S10において、室外機11のいずれかに異常が確認されたときには、対応する操作リモコン16の表示部17に異常コードを表示させる(S11)。この手順は、異常表示手段21の機能によって実行される。なお、異常表示手段21は、異常コードと共に、異常発生元の室外機アドレスを表示させる。
【0031】
S11において、表示部17に異常コード等が表示された操作リモコン16の点検釦19の操作信号を取得し(S12)、異常発生元の室外機11の室外機ファン13を予め定められた間隔で間欠運転させる。この手順は、間欠運転手段22の機能によって実行される。つまり、間欠運転手段22は、点検釦19の操作信号を取得したことを条件として、対応する室外機ファン13を間欠運転させる。
【0032】
以上のように、マルチエアコンシステム10によれば、室外機11のいずれかに異常が発生した場合に、異常が発生した室外機11の室外機ファン13を予め定められた間隔で間欠運転させる、つまり通常運転の室外機ファン13とは異なる特殊な動作をさせることができるので、新たなハードウェアを追加することなく、簡便で安価な改良によって、多数並んで設置された室外機11の中から異常発生元の室外機11を容易に特定することができる。
【0033】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で設計変更することができる。
【0034】
例えば、上記では、点検釦19が操作されたことを条件に室外機ファン13を間欠運転させるものとして説明したが、対応する操作リモコン16の表示部17に異常コードが表示された時点、或いは異常検知手段20により室外機11の異常が確認された時点で、異常発生元の室外機11の室外機ファン13を間欠運転させてもよい。
また、上記では、室外機制御盤にあたる制御装置15が間欠運転手段22等を有するものとして説明したが、室内機制御盤、或いは他の場所に設置される制御装置が間欠運転手段22等を有していてもよい。
また、上記では、室外機11の異常表示として、異常コートおよび室外機アドレスを表示部17に表示するものとして説明したが、例えば、異常コードのみを表示してもよく、異常コードの代わりに「圧縮機シェル温度異常」等の文言を表示してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 マルチエアコンシステム、11 室外機、12 室内機、13 室外機ファン、14 配管、15 制御装置、16 操作リモコン、17 表示部、18 操作部、19 点検釦、20 異常検知手段、21 異常表示手段、22 間欠運転手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを含む室外機と、
室外機に接続された複数の室内機と、
を備える空調システムにおいて、
室外機に異常が発生した場合に、異常が発生した室外機のファンを予め定められた間隔で間欠運転させる制御装置を含むことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空調システムにおいて、
室内機に接続された操作リモコンを備え、
制御装置は、室外機に異常が発生した場合に、対応する操作リモコンに室外機の異常を表示させることを特徴とする空調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の空調システムにおいて、
操作リモコンは、点検釦を含み、
制御装置は、点検釦が操作されたときに、異常が発生した室外機のファンを予め定められた間隔で間欠運転させることを特徴とする空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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