説明

空調システム

【課題】大きな空間全体にわたって大きな循環気流を作り出すようにして、部屋全体の温度ムラを小さくする。
【解決手段】同一空間内に配置された複数の空調室内機11〜16と、当該複数の空調室内機と通信網で接続され、当該複数の空調室内機の動作を制御するコントローラから構成される空調システムであって、前記複数の空調室内機の各々は、空調空気を発生させる熱交換器及びファンと、周囲の複数の方向に前記空調空気を吹き出すように、複数の方向ごとに開閉可能な吹き出し口を有する吹き出し部と、前記吹き出し部を制御する制御部とを備え、空調機が空調空気を吹き出す方向の指示を出す制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一室内に複数の室内機を有する場合に好適な空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗やオフィスなどフロア面積の広い部屋に空調室内機を取り付ける場合、図2のような周囲の4方向に吹き出し口を、中央に吸い込み口を設けた矩形または正方形の室内機を、その最大能力に応じた間隔で規則的に天井に埋め込み配置することが多い。このような空調システムによる部屋の気流制御は、室内機毎に付属のリモコンで単純に各室内機の風量や風向きをユーザが手動設定するに留まるものから、例えば、特許文献1に示されるように、全室内機を制御できる管理装置により複数の室内機の気流を部屋全体の温度分布に対応して自動制御するものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−27395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、4方向吹出し型の室内機を複数配するような大部屋の場合、大抵は天井も高く、天井埋め込み型の室内機が吹き出した気流の届かない空調死角が室内機と室内機の間に出来てしまう。また、死角部分の温度や人を検知して、その死角域をカバーするほど強い風量や温度設定で空調空気を吹き出せば、今度は、直接風が当たる人の不快感が増すなどの事情もある。このように従来の空調システムでは、大会議室のような空間を均一に適温にするような場合の温度ムラの調節を十分に行うことができなかった。本発明の目的は、室内機の一斉運転を一時的または恒常的に実施することにより、ある程度大きな空間全体にわたって大きな循環気流を作り出すようにして、部屋全体の温度ムラを小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、その一例として特許請求の範囲に記載の構成により達成できる。
【発明の効果】
【0006】
複数の室内機を含む任意の大きさの空調空間において、空調機の複数の吹出口の一部を閉じて運転するという手軽な手段により該空間全体に渡る気流を発生させることが出来、空調空間内の温度ムラを低減する空調システムを比較的安価に提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例である空調制御システムを設置したオフィスの図である。
【図2】本発明の一実施例である空調制御システムの接続図である。
【図3】本発明の室内機の機能構成図である。
【図4】本発明の室内機の機能構成図である。
【図5】本発明の集中リモコンのハードウェア構成である。
【図6】本発明のコントローラの空調室内機気流登録プログラムのフローチャートである。
【図7】集中リモコンの表示パネル画面の例である。
【図8】集中リモコンの表示パネル画面の例である。
【図9】集中リモコンの表示パネル画面の例である。
【図10】集中リモコンの表示パネル画面の例である。
【図11】個別運転気流の例である。
【図12】一斉運転気流の例である。
【図13】一斉運転気流の例である。
【図14】本発明のコントローラの室内機運転制御プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1と図2は本発明の一実施例の空調システムの概略構成を示す図である。複数の室内機を接続できるマルチ型の空調室外機O1とO2が建屋屋外に、建屋内の大きな会議室には4方向に空調空気を吹き出し可能な天井設置型の室内機I1〜I6が6個並んで設置されている。会議室には他に、各々室内機I1〜I6をコントロールするリモコンC1〜C6と、部屋全体の室内機I1〜I6全てを同時制御できる集中リモコンR1が設置されている。室内機と室外機は冷媒配管P1によって結ばれ、また、室内機と室外機とリモコンR1〜R6及び集中リモコンC1などの空調機器は制御信通信網N1で結ばれ通信ネットワークを成している。なお、リモコンC1〜C6には各々に室内温度センサが付いているものとする。
【0009】
図3と図4は、図1の室内機I1〜I6の構成を示す図である。当該室内機は、天井設置型であり、4方向に空調空気を吹き出す開閉可能な吹出口を有する。当該室内機は、天井に埋没させて設置する箱状の室内機本体101と、該室内機本体101の下端開口側に装着される矩形平板状の室内パネル102とを備える。室内パネル102には、その中央部に位置する矩形開口状の室内空気を吸い込む吸込口103と、該吸込口103の外側周辺の室内パネルの周縁に平行して、空調空気を吹出す長矩形の開口上の吹出口104a、104b、104c、104dが設けられている。なお、吹出口104aには、一斉運転のための吹出口方向を登録する際に使用する方位基準マークが付いている。
【0010】
本体101内には熱交換器105と吸込口から吹出口に至る通風の流れを作出す遠心式ファン106があり、吸込口にはフィルタ107が、各吹出口には空調空気の吹出し方向を調節する調節羽108が設けられている。なお、この調節羽108は本システムの全体気流運転の際は、方向を調節するのみならず、吹出口を閉じる場合の蓋の役割も兼ねるものである。また、吹出口には吹出温度センサ110、吸込口には吸込温度センサ111が備えられている。
【0011】
ファン106により吸込口103からフィルタ107を経て吸込まれた室内空気は、熱交換器105により熱交換された空調空気となって吹出口104から調節羽108の導く方向に吹出されていく。そして、これら室内機内の機器を制御する室内機制御部109がある。室内機制御部109は制御通信網N1を通じて室外機やリモコンと繋がっており、例えば、リモコンCでユーザが運転開始ボタンを押すと、リモコンは運転開始要求コマンドを該当の室内機宛に送り、該コマンドを受信した室内機制御部109は室内機の電源を入れて駆動させ、設定温度に従い、風量や風向きを設定し、設定に従ってファン106の回転数や調節羽108の角度等を調節して空調を開始する。
【0012】
このようにして、本発明の、空間全体に渡る気流を発生させる一斉運転制御は、集中リモコンR1からの一斉運転を行なうための要求コマンドを制御通信網N1経由で各室内機の室内制御部109が受信し、実行することにより実現される。
【0013】
図5は、集中リモコンR1の機能構成図である。集中リモコンR1は、ユーザが設定や指示を行ったり現在の室内機の運転状態を参照したりするための表示パネルと入力ボタンからなるユーザ入出力IF部11、制御通信網N1で結ばれた他の機器との通信を行う通信IF部12、該通信IF部を通じて各室内機やリモコン等からの情報を取得する機器情報受信部13と該通信IF部を通じて各機器に運転制御や情報要求を送る要求コマンド送信部14、ユーザ入出力IF部11のユーザ入力を電気信号として受信するユーザ入力受信部16、ユーザ入出力IF部11の表示パネルに情報を表示する表示制御部17、前記集中リモコンR1内の全ての機能を制御する制御マイコン10からなる。
【0014】
制御マイコン10は、本例ではCPU及びCPUが処理実行するソフトウェアやデータを格納するROMとCPUがプログラムを実行する際のワークエリアとなるRAM、各種外部入出力ポート等を搭載した汎用ワンチップマイコンであり、本発明の一斉運転を行なうための設定や要求コマンドを送信する処理は、制御マイコン10のROMに格納された一斉運転プログラムにより実行される。
【0015】
図6は、ユーザ所望の一斉運転を行なうに必要な各種設定を登録するための一斉運転登録の処理を示すフローチャートである。ユーザは該登録処理において、温度ムラを無くすための任意の大きさの空調空間(以下ゾーンと称する)を、その範囲に含まれる空調室内機を指定して登録し、登録したゾーン毎に、所望のタイミングで所望の気流が発生するよう設定を行なう。以下図6を使ってその手順を述べる。
【0016】
まず、集中コントローラR1の表示パネルは、通常図5のように制御通信網N1に接続する各室内機の運転状況や設定値の一覧画面を示す。ユーザがゾーン一斉の設定画面表示を選択すると(ステップ1001)、CPUは記憶部15から既に登録されているゾーンと一斉運転設定情報を読み出し、図7のような一覧メニュー画面として表示する(ステップ1002)。図7の例では、図1の大部屋の窓側の4つの室内機I2,I3,I5,I6が「ゾーン1」という一つの空間エリアを成している。ユーザはこの画面で、ゾーンを構成する室内機の登録を行なう場合は、登録する室内機を選択指定し、どれかのゾーンの一斉運転の設定登録を行なう場合は対象ゾーンを選択指定する(1003)。
【0017】
ステップ1003で室内機を指定選択した場合は、ステップ1004で指定した室内機の現在の登録内容が記憶部15から読み出され、図8のように表示される。各室内機の登録情報は、所属するゾーン区別、室内機の前記包囲基準マーク100の方向がゾーン内においてどの方位にあたるかを定義する方位基準、及び該室内機専用の個別リモコンの温度センサ情報をゾーンの一斉運転のために使うか否か(有効か無効か)の3項目である。
【0018】
前述のように、ゾーン区別は一斉運転する室内機のグループであり、例えば図1の例の場合なら、部屋全体の温度ムラをなくすにはI1〜I6全て一つのゾーンにするのが適当ということになり、また部屋がパーティションで区切られて空調機I1だけ別室にあるような状況になっていればI2〜I6でゾーン1を構成するのが適当ということになる。
【0019】
方位基準は一斉運転の際の風向き方向を合わせる為に必要な情報で、ゾーン毎にそのゾーンにおける便宜的な東西南北を定義し(実際の方位と合っている必要は無い)、該ゾーンの各々の室内機において包囲基準マーク100の指す方向が該便宜的東西南北のどの方向かを登録する。例えば、図1の例でI1〜I6全てが一つのゾーンに属する場合、部屋の窓のある方向を南とすると、全室内機の包囲基準マーク100は窓のある壁面の方向を指しているので、I1〜I6方位基準設定は全て南になる。
【0020】
またリモコンの温度センサの値に関しては、同じく図1の部屋全体の一斉運転では、リモコンC1〜C6は全て室内(一斉運転するゾーン内)にあるため、リモコン温度は有効として後述するゾーン内温度ムラの判定に使用するのが適当ということになる。
【0021】
ステップ1005〜ステップ1009で上記3項目を設定し登録する。例えば、上述した図1の部屋全体一斉運転登録なら、室内機I1〜I6の設定は全て図9のようになる。
【0022】
ステップ1003で、あるゾーンを選択指定すると、該ゾーンの現在の一斉運転の登録情報が読み出され、図10のように表示される。各ゾーンにおける一斉運転の登録情報は、該ゾーンで一斉運転を実施するか否か(有効か無効か)の区別と、一斉運転の開始条件、気流方向、一斉運転時の温度設定の4項目である。
【0023】
運転開始条件は、スケージュールタイマによる定刻運転と、ゾーン内の温度センサ情報からゾーン内温度ムラを検知した際に自動的に運転開始する温度差自動の2種類があり、両方を設定してもよい。タイマ運転の場合は運転時刻を、温度差自動の場合は閾値となる温度差を入力指定する。
【0024】
気流方向は、一斉運転の際の各室内機の吹き出す風の向き、すなわちゾーン内の対流の方向を東西南北で指定する。自動サイクルは4方向の対流を順次行なっていく運転である。例えば、上記図1の部屋全体で窓方向を南とした例の場合、通常図11のような個別運転を行なっているが、気流方向「南」の一斉運転を指定すると図12のようになる。また自動サイクルは図13にように一定時間毎に対流方向が変化していく運転である。なお、自動サイクルを指定した場合は方向切り替え時間も指定入力する。
【0025】
一斉運転時の温度設定は、各々個別運転の場合の温度設定をそのまま使用するか、個別運転の場合の温度設定の平均値を用いるか、あるいは絶対温度を指定する。
【0026】
ステップ1012〜ステップ1016で上記4項目を設定登録し一斉運転が行なわれることになる。
【0027】
図14は、集中リモコンR1が一斉運転を実行する処理を示すフローチャートである。
【0028】
集中リモコンR1は、常時、制御通信網N1に接続された機器から定期的に(本例の場合は10秒毎)情報を収集している(ステップ2001、ステップ2002)。そして、情報取得の度に一斉運転が有効となっている全ゾーンの一斉運転開始または停止の判定と実施を行う(ステップ2003)。まず、ステップ2004で判定ゾーンを構成する各室内機の吸込温度と有効リモコンのセンサ温度の中で、最大値と最小値の差を算出して温度差自動の閾値が登録されていた場合は該閾値と比較し、閾値より温度差が大きく、かつまだ一斉運転でない場合は、一斉運転を開始する(ステップ2005、2013)。また閾値より温度差が小さくかつ一斉運転である場合は、一斉運転を停止し個別運転に戻す(ステップ2014)。
【0029】
また、該当ゾーンでタイマが設定されていた場合は時刻を確認し、一斉運転を行なうべき時間帯で、かつまだ一斉運転でない場合は一斉運転を開始する(ステップ2006)。逆に一斉運転を行なうべき時間帯ではなく、かつ一斉運転の場合は一斉運転を停止する(ステップ2011)。
【0030】
一斉運転の開始は、まず、該等ゾーンの室内機全ての個別運転を停止し、気流方向がサイクルに設定されている場合は、該個別運転を停止した時刻を気流運転変更時刻として記憶する(ステップ2007)。そして、気流方向が指定されている場合は、指定された方向以外の吹き出し口を全て閉じて運転する要求コマンドを各室内機に送信する(ステップ2012)。この時温度設定や平均温度での運転が登録されていれば同時に温度も指定する。該要求コマンドを受け取った室内機制御部109は、該当の吹き出し口の調節羽108に吹き出し口を塞いで運転するよう制御する。また、風を吹き出す吹き出し口の調節羽108は、天井に沿って風が吹き出される向きとし、最大風速で出来るだけ遠くまで風を送るよう制御する。これにより、一斉運転が開始される。
【0031】
サイクル設定の場合は、東西南北順に方向を切り替えるため、まず開始時は風向き東で同様に一斉運転を開始し、現在時刻に切り替え間隔を加えた時刻を気流運転変更時刻として記憶する(ステップ2010)。タイマ設定時刻と同様に気流運転変更時刻を定期的に確認し、気流方向を切り替えることになる(ステップ2009)。
【0032】
以上のようにして、本発明システムによれば、空間全体にわたって大きな循環気流を作り出すように室内機の一斉運転を実施し、部屋全体の温度ムラを小さくできる。
【符号の説明】
【0033】
I1〜I6…室内機、O1、O2…室外機、C1〜C6…個別リモコン、R1…集中リモコン、N1…制御通信網、P1…冷媒配管、10…CPU、11…RAM、12…ROM、13…HDD、14…表示部、15…入力部、16…IP通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一空間内に配置された複数の空調室内機と、当該複数の空調室内機と通信網で接続され、当該複数の空調室内機の動作を制御するコントローラから構成される空調システムであって、
前記複数の空調室内機の各々は、
空調空気を発生させる熱交換器及びファンと、
周囲の複数の方向に前記空調空気を吹き出すように、複数の方向ごとに開閉可能な吹き出し口を有する吹き出し部と、
前記吹き出し部を制御する制御部と、を備え、
前記コントローラは、
ユーザが前記同一空間内の所定空間内に属する空調室内機、当該所定空間内に属する空調室内機が空調空気を吹き出す方向、及び、当該所定空間内に属する空調室内機を一斉に運転させるための条件を設定登録するユーザIF部と、
前記ユーザIF部で設定登録された条件に従って、設定登録された空調室内機に、動作の指示を出す制御部を備え、
前記設定登録された空調室内機の制御部が、コントローラの制御部の指示に従い、前記吹き出し部を制御することにより、前記吹き出し部が、設定登録された方向以外の方向の吹き出し口を閉口し、設定登録された空調室内機の全てが一斉に設定登録された同じ方向に空調空気を吹き出すことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記コントローラは、時間を設定するタイマをさらに備え、
前記所定空間内に属する空調室内機を一斉に運転させるための条件は、前記タイマで設定される所定時間であることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記複数の空調室内機の各々は、温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記所定空間内に属する空調室内機を一斉に運転させるための条件は、前記温度センサで測定された複数の温度のうち、最大値と最小値の差が所定温度以上であることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記ユーザIF部において、所定空間内に属する空調室内機が空調空気を吹き出す方向として、複数の方向を順に切り替えるサイクル動作と、サイクル動作の切り替え時間を設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−184868(P2012−184868A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47104(P2011−47104)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】