説明

空調制御システムおよびこれに利用する給気切替コントローラ、空調制御方法

【課題】 新たな空調機の設備構成の追加を必要とせず、快適性の維持と省エネ効果の向上とを両立させた空調制御を効率よく行うことが可能な、空調制御システムおよびこれに利用する給気切替コントローラ、空調制御方法を提供する。
【解決手段】 空調制御対象の室内Xに設置されたCO2濃度計30から受信した計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較して計測値が適正範囲内にあるか否かを判断し、計測値が適正範囲を超えていると判断したときには外気の取り込み量を調整する第1ダンパー12を開くとともに室内からの還気の取り込み量を調整する第2ダンパー13を閉じることで外気を空調機10に取り込ませて外気制御を実行させ、計測値が適正範囲以下であると判断したときには第1ダンパー12を閉じるとともに第2ダンパー13を開くことで当該室内からの還気を空調機10に取り込ませて還気制御を実行させる給気切替コントローラ40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスや病院等の空調を制御する空調制御システムおよびこれに利用する給気切替コントローラ、空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の温熱感には、室温、室内湿度、平均輻射温度、活動量、着衣量、気流速度など、複数の因子が影響を与えている。
【0003】
しかし通常事務所ビル内の人の居る場所においては、気流速度は0.1m/s以下であるので温熱感への影響がほとんどない。また、着衣量は夏や冬等の季節により固定され、活動量は事務用ビルやデパート等のようにビル用途によりある程度決まっている。さらに、平均輻射温度は、窓側以外ではほぼ室温に追従する。
【0004】
従って、上記の各因子について検討すると、室温を除けば、湿度が人の快適性に大きく影響することになる。
【0005】
人が感じる快適性を満たすための室温と湿度との関係を、図5に示す。この図5では、人が感じる快適性を数値で示した快適性指数(PMV)が快適範囲内である0.3〜0.5(省エネを考慮した夏季冷房時)を満たすための、室温と湿度との組み合わせを範囲Aで示している。
【0006】
この範囲Aで示すように、湿度をある程度下げることで、室温を必要以上に下げることなく快適性を得ることができる。
【0007】
しかし、多くの事務所ビル等の空調制御は、ほとんどが室温制御のみであって、湿度については何ら考慮されていないのが実情である。
【0008】
なぜならば、冷房時に湿度も制御しようとした場合、冷水コイルにて処理対象空気が減湿される際には温度が過剰に冷却されるため、給気温度を調整するために加熱コイルにおける空気の再熱サイクル過程が必要となり、結果として温度制御だけの場合に比べて非常に大きなエネルギーを消費する為である。
【0009】
そこで、以上のような問題を解決するために、空調機に外気の除湿を行う直膨コイルを付加した空調制御装置が特許文献1に提案されている。
【0010】
この空調機は、図6に示すように、外気を導入して除湿する直膨コイル61と、空調制御された室内からのリターン空気(還気)を取り込んで温度を調整する冷温水コイル62と、直膨コイル61で除湿された外気と冷温水コイル62で調整された還気との混合空気を空調制御対象の室内へ供給する給気ファン63とを備えて外気の除湿と還気の冷却とを独立して行うことにより、省エネルギー化を図りつつ、快適性を維持した空調制御を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−292300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記の特許文献1の技術を利用した空調機は、直膨コイルの追加、及びそれに伴う空気ダクト、水配管等の変更・追加が必要であり、従来の空調機をそのまま使うことができずコストがかかるという問題があった。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、新たな空調機の設備構成の追加を必要とせず、快適性の維持と省エネ効果の向上とを両立させた空調制御を効率よく行うことが可能な、空調制御システムおよびこれに利用する給気切替コントローラ、空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の空調制御システムは、空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計と、制御対象の空気を取り込んで空調処理を行い、当該室内あるいは室内の制御ゾーンに供給する空調機と、室外空間と前記空調機とを連結する空気配管に設置され、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーと、当該空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーンの空間と前記空調機とを連結する空気配管に設置され、前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーと、前記CO2濃度計で計測された計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断する適正範囲比較部と、前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記第1ダンパーを開くとともに前記第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーを閉じるとともに前記第2ダンパーを開くことで当該室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気を前記空調機に取り込ませて還気の空調処理を実行させるダンパー制御部とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他の形態の空調制御システムは、空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計と、制御対象の空気を取り込んで空調処理を行い、当該室内あるいは室内の制御ゾーンに供給する空調機と、室外空間と前記空調機とを連結する空気配管に設置され、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーと、当該空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーンの空間と前記空調機とを連結する空気配管に設置され、前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーと、前記CO2濃度計で計測された計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断する適正範囲比較部と、前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記第1ダンパーを開くとともに前記第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーおよび第2ダンパーを閉じて前記空調機の空調処理を休止させるダンパー制御部とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の給気切替コントローラは、空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーン毎に対応して設置され空調処理を行う空調機と、前記室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計とに接続され、前記CO2濃度計から計測値を受信し、この受信した計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断する適正範囲比較部と、前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーを開くとともに前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーを閉じるとともに前記第2ダンパーを開くことで当該室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気を、前記空調機に取り込ませて還気の空調処理を実行させるダンパー制御部とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の形態の給気切替コントローラは、空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーン毎に対応して設置され空調処理を行う空調機と、前記室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計とに接続され、前記CO2濃度計から計測値を受信し、この受信した計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断する適正範囲比較部と、前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーを開くとともに前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーおよび第2ダンパーを閉じて前記空調機における空調処理を休止させるダンパー制御部とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の空調制御方法は、空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーン毎に対応して設置され空調処理を行う空調機と、前記室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計とに接続された給気切替コントローラが、前記CO2濃度計で計測された二酸化炭素濃度の計測値を受信し、受信された計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較して、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断し、前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーを開くとともに前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーを閉じるとともに前記第2ダンパーを開くことで当該室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気を、前記空調機に取り込ませて還気の空調処理を実行させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の他の形態の空調制御方法は、空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーン毎に対応して設置され空調処理を行う空調機と、前記室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計とに接続された給気切替コントローラが、前記CO2濃度計で計測された二酸化炭素濃度の計測値を受信し、受信された計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較して、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断し、前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーを開くとともに前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーおよび第2ダンパーを閉じて前記空調機における空調処理を休止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の空調制御システムおよびこれに利用する給気切替コントローラ、空調制御方法によれば、直膨コイル等の新たな空調機の設備構成の追加を必要とせず、快適性の維持と省エネ効果の向上とを両立させた空調制御を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による空調制御システムの構成を示す全体図である。
【図2】本発明の一実施形態による空調制御システムの給気切替コントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による空調制御システムの給気切替コントローラの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による空調制御システムの空調制御対象の室内のCO2濃度の計測値の変化を示すグラフである。
【図5】従来の快適性(PMV0.3〜0.5)を満たすための室温と湿度との関係を示すグラフである。
【図6】従来の温度と湿度を独立に制御できる空調機の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の給気切替コントローラを利用した空調制御システムの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、最近の多くのオフィスビル等は断熱性が良くPCやOA機器が多いため、年間を通して冷房モードであるので、以下の各実施形態においては冷房モードで空調制御を行う場合について説明する。
【0023】
〈一実施形態による空調制御システムの構成〉
本発明の一実施形態による空調制御システム1の全体図を、図1に示す。
【0024】
なお、大型ビルの場合、室内が大きいので室内を複数の制御ゾーンに分けて、それぞれの制御ゾーン毎に対応して、複数の空調機を室内の近傍の機械室に設置する。このような場合でも以下では簡略のため各制御ゾーンも室内と呼ぶことにする。
【0025】
空調制御システム1は空調対象の室内Xの空調を制御するものであり、制御対象の空気を調整して室内Xに供給する空調機10と、冷水を一括製造管理して各空調機10へ供給する中央熱源装置20と、室内Xの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計30と、制御対象の空気を外気と室内Xの還気とで切り替えるダンパー制御部としての給気切替コントローラ40とを有する。
【0026】
空調機10は、制御対象の空気の除湿・冷却処理を行う温湿度調整コイルとしての冷水コイル11と、室外空間と冷水コイル11とを連結する空気配管に設置され、外気の取り込み量を調整する第1ダンパー12と、室内Xの空間と冷水コイル11とを連結する空気配管に設置され、室内Xからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパー13と、室内Xの空間と室外空間とを連結する空気配管に設置され、室内Xから室外空間へ放出する排気の量を調整する第3ダンパー14とを有する。
【0027】
中央熱源装置20は、冷却水を利用して空調機10に提供する冷水を生成する冷凍機21と、冷凍機21を冷却して温度が上昇した冷却水を、再利用するため空気で冷却する冷却塔22とを有する。また、図示しないが、これらの冷凍機21や冷却塔22において冷水や冷却水を駆動するポンプ、冷却塔22において外気を取り込むファン、および空調機10に供給する冷水の流量を調整するバルブも有している。
【0028】
CO2濃度計30は、所定時間間隔で室内XのCO2濃度を計測し、計測値を給気切替コントローラ40に送信する。このCO2濃度を計測する時間間隔は、在室者による室内XのCO2濃度の変化を把握可能な程度の時間間隔であり、例えば1分間隔である。
【0029】
給気切替コントローラ40は、図2に示すように、CO2濃度計測値受信部41と、ダンパー制御部42と、適正範囲比較部43とを有する。
【0030】
CO2濃度計測値受信部41は、CO2濃度計30で所定時間間隔で計測されたCO2濃度の計測値を順次受信する。
【0031】
ダンパー制御部42は、空調機10のダンパー12〜14の開度を調整することで、空調機10に取り込まれる制御対象の空気を外気と還気とで切り替えさせる。具体的には、空調機10に外気を取り込ませるときには第1ダンパー12および第3ダンパー14を必要に応じた開度で開くとともに第2ダンパー13を閉じるように調整し、空調機10に還気を取り込ませるときには第1ダンパー12を閉じるとともに第2ダンパー13および第3ダンパー14を必要に応じた開度で開くように調整することで、必要量の外気または還気を空調機10へ取り込ませる。
【0032】
適正範囲比較部43は、CO2濃度計測値受信部41で受信されたCO2濃度の計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、計測値が適正範囲内であるか否かを判断する。
【0033】
〈一実施形態による空調制御システムの動作〉
本実施形態における空調制御システム1の動作について説明する。図3は、本実施形態における給気切替コントローラ40の動作を示すフローチャートである。
【0034】
本実施形態において、CO2濃度計30では所定時間間隔(例えば1分間隔)で室内XのCO2濃度が計測されている。
【0035】
CO2濃度計30で室内XのCO2濃度が計測されている状態で、ユーザにより空調機10の電源が投入されると、空調機10による室内Xの空調制御が開始されるとともに、給気切替コントローラ40においてこの電源の投入が検知される(ステップS1の「YES」)。
【0036】
空調機10の電源が投入されたことが検知されると、給気切替コントローラ40のCO2濃度計測値受信部41においてCO2濃度計30からのCO2濃度の計測値の受信が開始される(S2)。図4は、室内Xの空調制御が開始されてから、CO2濃度計測値受信部41で受信されたCO2濃度の計測値の変化を示すグラフである。
【0037】
ここで、事務所の始業時刻前などに空調機10の電源が投入されたとき(図3の時刻t1)は、室内にほとんど人がおらずCO2濃度が低いためまだ外気で換気する必要がなく、電源の投入から一定期間(図3の期間[A])は室内Xの還気のみを対象とした制御を行うことで省エネを図った空調制御が行われるように、ダンパー制御部42により空調機10のダンパー12〜14の開度が調整される(S3)。
【0038】
具体的には、還気制御が行われるときには、第1ダンパー12が閉じられるとともに、室内Xへの給気量に基づいて第2ダンパー13および第3ダンパー14がそれぞれ所定の開度で開くように調整され、室内Xの還気が空調機10に取り込まれる。この空調機10に取り込まれた還気は、冷水コイル11に供給される。
【0039】
冷水コイル11では、取り込まれた室内Xの還気が、中央熱源装置20から供給された冷水により所定温度に冷却されることで還気制御が実行され、給気として再度室内Xに供給される。
【0040】
このとき冷水コイル11には、還気制御に必要な流量の冷水が中央熱源装置20の冷凍機21から供給される。通常、還気は既に温度および湿度の調整が行われているため、還気制御ではエネルギー消費量の多い湿度制御は行わず、温度制御のみを行うこととする。つまり、ここでは温度制御に必要な量の冷水のみが供給されることで、温度制御および湿度制御を行うときよりもエネルギー消費量が抑えられる。
【0041】
次に、空調機10の電源投入から一定期間(期間[A])が経過すると(S4の「YES」;時刻t2)、空調機10による空調制御を、外気を対象とした外気制御に切り替えるように、ダンパー制御部42により空調機10のダンパー12〜14の開度が調整される(S5)。
【0042】
具体的には、外気制御が行われるときには、第1ダンパー12および第3ダンパー14が必要に応じた開度で開かれるとともに第2ダンパー13が閉じられるように調整され、室外の外気が空調機10に取り込まれる。この空調機10に取り込まれた還気は、冷水コイル11に供給される。
【0043】
冷水コイル11では、取り込まれた外気が、中央熱源装置20から供給された冷水により所定湿度への除湿および所定温度への調整が行われることで外気制御が実行され、給気として室内Xに供給される。
【0044】
このとき冷水コイル11には、外気制御に必要な流量の冷水が中央熱源装置20の冷凍機21から供給される。
【0045】
このように外気制御が行われている間(期間[B])、給気切替コントローラ40の適正範囲比較部43では、CO2濃度計測値受信部41で順次受信されたCO2濃度が、予め設定されたCO2濃度の適正範囲内であるか否かが監視される。
【0046】
ここで「CO2濃度の適正範囲」は、空調制御対象の室内のCO2濃度がビル管理法等によるCO2の許容基準濃度(1000ppm)を常に超えないようにするため、上限値(図3のn)として例えば900ppmが設定され、また、一般的な外気のCO2濃度(約500ppm)を理想とし、下限値(図3のm)として例えば700ppmが設定される。
【0047】
室内Xに十分な外気が取り込まれて換気され、適正範囲比較部43において、CO2濃度計測値受信部41で受信されたCO2濃度が適正範囲の下限値m(本実施形態においては700ppm)以下になったと判断されると(S6の「YES」;時刻t3)、空調機10による空調制御を還気制御に切り替えるように、ダンパー制御部42により空調機10のダンパー12〜14の開度が調整される(S7)。
【0048】
このようにして還気制御が行われている間(期間[C])、適正範囲比較部43では、CO2濃度計測値受信部41で順次受信されたCO2濃度が、予め設定されたCO2濃度の適正範囲内であるか否かが監視される。
【0049】
室内Xに在室者がいることにより、適正範囲比較部43において、CO2濃度計測値受信部41で受信されたCO2濃度が適正範囲の上限値n(本実施形態においては900ppm)を超えたと判断されると(S8の「YES」;時刻t4)、ステップS5に戻り空調機10による空調制御を外気制御に切り替えるように、ダンパー制御部42により空調機10のダンパー12〜14の開度が調整される(S5)。
【0050】
以降、ステップS5〜ステップS8が繰り返されることにより、室内XのCO2濃度が適正に保たれながら給気切替コントローラ40で還気制御と外気制御とが切り替えられて空調制御が行われるため、既存の空調機の設備構成を利用して快適性の維持と省エネ効果の向上とを両立させた空調制御を効率よく行うことができる。
【0051】
また他の実施形態として、室内Xと外気との温度差があまり大きくないときには、ステップS6において適正範囲比較部43でCO2濃度が適正範囲の下限値m以下になったと判断されたときに、ステップS7において還気制御を行わずに空調機10の空調制御処理および室内Xへの給気処理を休止させるようにし、休止後に適正範囲比較部43においてCO2濃度が適正範囲の上限値nを超えたと判断されたとき(S8の「YES」)に、ステップS5に戻り外気制御が行われるようにして、ステップS5〜S8が繰り返されるようにしてもよい。
【0052】
このように制御することにより、快適性を維持しつつさらに省エネ効果の高い空調制御を効率よく行うことができる。
【0053】
なお、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できるものである。例えば本実施形態においては、CO2濃度の測定を1分間隔で行う場合について説明したが、必要に応じて測定間隔をこれより短くしたり長くしたりしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…空調制御システム
10…空調機
11…冷水コイル
12…第1ダンパー
13…第2ダンパー
14…第3ダンパー
20…中央熱源装置
21…冷凍機
22…冷却塔
30…CO2濃度計
40…給気切替コントローラ
41…CO2濃度計測値受信部
42…ダンパー制御部
43…適正範囲比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計と、
制御対象の空気を取り込んで空調処理を行い、当該室内あるいは室内の制御ゾーンに供給する空調機と、
室外空間と前記空調機とを連結する空気配管に設置され、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーと、
当該空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーンの空間と前記空調機とを連結する空気配管に設置され、前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーと、
前記CO2濃度計で計測された計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断する適正範囲比較部と、
前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記第1ダンパーを開くとともに前記第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、
前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーを閉じるとともに前記第2ダンパーを開くことで当該室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気を前記空調機に取り込ませて還気の空調処理を実行させるダンパー制御部と
を備えることを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
前記空調機は、
外気の空調処理を行うときには、取り込んだ外気の温度および湿度の調整処理を行い、
還気の空調処理を行うときには、取り込んだ還気の温度の調整処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計と、
制御対象の空気を取り込んで空調処理を行い、当該室内あるいは室内の制御ゾーンに供給する空調機と、
室外空間と前記空調機とを連結する空気配管に設置され、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーと、
当該空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーンの空間と前記空調機とを連結する空気配管に設置され、前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーと、
前記CO2濃度計で計測された計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断する適正範囲比較部と、
前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記第1ダンパーを開くとともに前記第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、
前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーおよび第2ダンパーを閉じて前記空調機の空調処理を休止させるダンパー制御部と
を備えることを特徴とする空調制御システム。
【請求項4】
前記ダンパー制御部は、
前記空調機の電源が投入されてから予め設定された一定期間は、前記第1ダンパーを閉じるとともに前記第2ダンパーを開くことで当該室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気を前記空調機に取り込ませて還気の空調処理を実行させる
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の空調制御システム。
【請求項5】
空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーン毎に対応して設置され空調処理を行う空調機と、前記室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計とに接続され、
前記CO2濃度計から計測値を受信し、この受信した計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断する適正範囲比較部と、
前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーを開くとともに前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、
前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーを閉じるとともに前記第2ダンパーを開くことで当該室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気を、前記空調機に取り込ませて還気の空調処理を実行させるダンパー制御部と
を備えることを特徴とする給気切替コントローラ。
【請求項6】
前記空調機は、
外気還気の空調処理を行うときには、取り込んだ外気の温度および湿度の調整処理を行い、
還気還気の空調処理を行うときには、取り込んだ還気の温度の調整処理を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の給気切替コントローラ。
【請求項7】
空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーン毎に対応して設置され空調処理を行う空調機と、前記室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計とに接続され、
前記CO2濃度計から計測値を受信し、この受信した計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較し、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断する適正範囲比較部と、
前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーを開くとともに前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、
前記適正範囲比較部において前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーおよび第2ダンパーを閉じて前記空調機における空調処理を休止させるダンパー制御部と
を備えることを特徴とする給気切替コントローラ。
【請求項8】
前記ダンパー制御部は、
前記空調機の電源が投入されてから予め設定された一定期間は、前記第1ダンパーを閉じるとともに前記第2ダンパーを開くことで当該室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気を前記空調機に取り込ませて還気の空調処理を実行させる
ことを特徴とする請求項5〜7いずれか1項に記載の給気切替コントローラ。
【請求項9】
空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーン毎に対応して設置され空調処理を行う空調機と、前記室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計とに接続された給気切替コントローラが、
前記CO2濃度計で計測された二酸化炭素濃度の計測値を受信し、
受信された計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較して、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断し、
前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーを開くとともに前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、
前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーを閉じるとともに前記第2ダンパーを開くことで当該室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気を、前記空調機に取り込ませて還気の空調処理を実行させる
ことを特徴とする空調制御方法。
【請求項10】
空調制御対象の室内あるいは室内の制御ゾーン毎に対応して設置され空調処理を行う空調機と、前記室内あるいは室内の制御ゾーンの二酸化炭素濃度を計測するCO2濃度計とに接続された給気切替コントローラが、
前記CO2濃度計で計測された二酸化炭素濃度の計測値を受信し、
受信された計測値と予め設定されたCO2濃度の適正範囲とを比較して、前記計測値が前記適正範囲内にあるか否かを判断し、
前記計測値が前記適正範囲を超えていると判断されたときには、前記空調機への外気の取り込み量を調整する第1ダンパーを開くとともに前記空調機への前記室内あるいは室内の制御ゾーンからの還気の取り込み量を調整する第2ダンパーを閉じることで外気を前記空調機に取り込ませて外気の空調処理を実行させ、
前記計測値が前記適正範囲以下であると判断されたときには、前記第1ダンパーおよび第2ダンパーを閉じて前記空調機における空調処理を休止させる
ことを特徴とする空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−190480(P2010−190480A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34935(P2009−34935)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】